説明

保水性ブロック

【課題】 廃棄物であるペーパースラッジ焼却灰の有効利用を図りつつ、道路舗装用インターロッキングブロックとしての性能を満たすことが可能で、従来のインターロッキングブロックと同様の製造方法で製造可能な実用的な保水性ブロックを提供する。
【解決手段】 セメント、ペーパースラッジ焼却灰、及び少なくとも一部が軽量骨材からなる骨材を含む保水性ブロックである。軽量骨材としては、軽石の破砕物あるいはパーライト粒などを用いる。また、天然骨材、再生骨材、スラグ骨材などを併用する。単位セメント量は250〜450kg/m3、単位ペーパースラッジ焼却灰量は30〜700kg/m3、単位軽量骨材量は、150〜700kg/m3が望ましい。ペーパースラッジ焼却灰としては、遊離石灰が2〜10%含まれているペーパースラッジ焼却灰を用いることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や歩道などに用いる舗装用ブロックに関するものであり、詳しくは路面温度上昇に対し優れた抑制効果を有する保水性ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象による都市部での異常気温上昇が問題化され、この異常気温上昇を抑えるべく様々な検討がなされている。その一つとして保水性舗装がある。
【0003】
保水性舗装の主たる考え方は、「舗装面に保水性を有する材料を含む舗装材を敷設し、降雨などによりこの舗装材内に保水した水分を利用し、晴天時や気温上昇時に保水した水分が蒸発することにより発生する気化熱により舗装面の熱を奪い、舗装面の温度上昇を抑制することにより気温上昇を抑制する。」というものである。そして、この考え方による実用的な方法が種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、排水性インターロッキングブロックを用いた透水性舗装において、路床が製紙スラッジ焼却灰と再生コンクリート砕石を含む保水性路床であるものが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、高炉水滓スラグや焼却灰を含む保水性のインターロッキングブロックが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、粒子径5〜1000μmで主要成分がSiO2とAl23からなり最大吸水率が30%以上の製紙スラッジ焼却灰を含む保水性機能を有するインターロッキングブロック等の舗装体が記載されている。
【0007】
さらには、特許文献4には、セッコウあるいはセッコウとセメント類を結合材とし、粗骨材に軽石、細骨材に焼却灰を用いた保水性舗装が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−073307号公報
【特許文献2】実用新案登録第3072360号公報
【特許文献3】特開2005−048403号公報
【特許文献4】特開2006−052589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ペーパースラッジ焼却灰は微細な空隙を多数有する構造であり、保水力が優れているため様々の用途が検討されているが、多くは土壌改良材や焼結部材の原料であり、保水性舗装への適用は多くはない。
【0010】
特に、セメントを結合材とした舗装用の保水性ブロックに適用する場合、ブロック中に多量に混入することにより保水力は向上するものの、実用面で十分な強度や耐久性が得られないため、実用的な舗装ブロックは開発されていない。
【0011】
また、上記特許文献3に記載されているインターロッキングブロック等の舗装体は、該舗装体の空隙に保水性注入材を注入してなるものであるから、手間がかかるとともに注入が不十分な場合は十分な保水性が得られないといった問題が生ずる。
【0012】
本発明は、廃棄物であるペーパースラッジ焼却灰の有効利用を図りつつ、舗装用インターロッキングブロックとしての性能を満たすことが可能で、従来のインターロッキングブロックと同様の製造方法でも製造可能な保水性ブロックを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、ペーパースラッジ焼却灰に対し、軽量骨材と天然骨材等の一般骨材とからなる特定の骨材を併用すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
請求項1に係る保水性ブロックは、セメント、ペーパースラッジ焼却灰、及び少なくとも一部が軽量骨材からなる骨材を含むことを特徴とする。
【0015】
ペーパースラッジ焼却灰と、少なくとも一部を軽量骨材とした骨材を併用することで、高い保水性を保持しながらも、舗装体として実用的強度や耐久性を有する保水性ブロックが得られる。
【0016】
請求項2は、請求項1に係る保水性ブロックにおいて、前記ペーパースラッジ焼却灰中に、遊離石灰が2〜10%含まれている場合を限定したものである。
【0017】
遊離石灰は、水と接すると反応して発熱しながら水酸化カルシウムを生成し、製品強度を高める効果がある。ペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰の量は、ペーパースラッジ焼却灰の成分、焼成条件等により異なるが、遊離石灰が2%に満たないと、必要な強度が得られない場合がある。遊離石灰が10%を超えると、異常膨脹やホップアウトの原因となる場合がある。
【0018】
さらに、遊離石灰と水との反応による発熱でブロックの温度が上昇することにより、ブロックの早期強度を発現するとともに、蒸気養生をする場合は、養生槽の温度を下げることが可能となり、養生時のエネルギーの削減も可能となる。
【0019】
請求項2はそのような観点から遊離石灰が2〜10%含まれている場合を限定したものである。
【0020】
なお、ペーパースラッジ焼却灰の配合量が多い場合では、異常膨脹やホップアウトを考慮した場合、1m3中に遊離石灰量が30kg/m3以下程度に抑えることが望ましい。
【0021】
請求項3は、請求項1又は2に係る保水性ブロックにおいて、前記軽量骨材が、軽石の破砕物又はパーライト粒のいずれか一つ以上である場合を限定したものである。
【0022】
これらの軽量骨材は、ブロックの強度を損なうことなく保水性を確保できる他、汎用的材料であり安価で容易に入手できる。
【0023】
請求項4は、請求項3に係る保水性ブロックにおいて、前記軽量骨材である軽石の破砕物は、吸水率が30〜50%である場合を限定したものである。
【0024】
軽石の破砕物の吸水率が30%に満たないと、保水性が十分保てない場合がある。軽石の破砕物の吸水率が50%を超えると、保水性は確保できてもブロックの強度が低下する場合がある。
【0025】
請求項5は、請求項3に係る保水性ブロックにおいて、前記軽量骨材であるパーライト粒は、真珠岩及び/又は黒曜石を700℃以下、150℃以上の温度で熱処理したものである場合を限定したものである。
【0026】
一般に、パーライト粒は、真珠岩及び/又は黒曜石を800〜1000℃で熱処理を行い発泡させて用いる。発泡させたパーライトは保水させる機能を持つが、強度が著しく低下するので好ましくない。したがって、本発明では、700℃以下の温度で熱処理し、真珠岩及び/又は黒曜石を十分あるいはほとんど発泡させないで用いることを特徴とする。
【0027】
請求項6は、請求項1〜5に係る保水性ブロックにおいて、骨材として、前記軽量骨材と併用する一般骨材を、天然骨材、再生骨材、又はスラグ骨材の一種以上を含む場合を限定したものである。
【0028】
軽量骨材のみでは実用的強度が十分に得られない場合があるので、強度増進の点からこれらの骨材を併用することが好ましい。
【0029】
請求項7は、請求項6に係る保水性ブロックにおいて、前記スラグ骨材が、下水汚泥溶融スラグである場合を限定したものである。
【0030】
スラグ骨材も強度増進の点から好ましいが、中でも下水汚泥溶融スラグは有害重金属の溶出の危険が少ないことおよび強度増進が期待できる他に、廃棄物の有効利用の点から特に好ましい。
【0031】
請求項8は、請求項1、6又は7に係る保水性ブロックにおいて、前記骨材の粒径が8mm以下である場合を限定したものである。
【0032】
骨材の粒径が8mmを超えると、骨材自体の保水性や強度にバラツキが生じやすくなるとともに即脱成形も困難となるので一定性能の保水性ブロックが得難くなる。
【0033】
請求項9は、請求項1〜8に係る保水性ブロックにおいて、前記保水ブロック中、単位セメント量が250〜450kg/m3、単位ペーパースラッジ焼却灰量が30〜700kg/m3、単位軽量骨材量が150〜700kg/m3である場合を限定したものである。
【0034】
単位セメント量が250kg/m3に満たないと、強度が不足する場合がある。一方、単位セメント量が450kg/m3を超えると、保水性を持つ材料の必要使用量を確保できず、十分な保水性が得られない場合がある。
【0035】
ペーパースラッジ焼却灰については、単位ペーパースラッジ焼却灰量が30kg/m3に満たないと、十分な保水性を確保できない場合がある。また、ペーパースラッジ焼却灰の水和反応が期待できないため、軽量骨材の用い方によっては十分な強度が得られない場合がある。単位ペーパースラッジ焼却灰量が700kg/m3を超えると、流動性が低下し、単位水量が増加する場合がある。
【0036】
単位軽量骨材量については、単位軽量骨材が150kg/m3に満たないと、高い保水性を維持できない場合がある。単位軽量骨材が700kg/m3を超えると必要強度が確保しがたくなるとともに一定性能のブロックが得がたくなる。
【0037】
請求項10は、請求項1〜9に係る保水性ブロックにおいて、前記保水性ブロックが、表層と基層からなるブロックであり、前記ペーパースラッジ焼却灰及び前記軽量骨材は基層のみに含まれる場合を限定したものである。
【0038】
保水性ブロックの表層については、意匠面や歩行時のスリップ防止など観点から、種々の要求があるが、そのような場合には、表層と基層を分け、目的に応じて異なる配合とすることが望ましい。ここでは、基層に保水性を持たせることとした。
【発明の効果】
【0039】
本発明の保水性ブロックは、高い保水性を保持しながらも、舗装体として実用的強度や耐久性を有しているため、従来のインターロッキングに代えてそのまま使用することができる。
【0040】
また、従来のインターロッキング製造方法を用いても製造できるため、特別の設備を必要としない。
【0041】
したがって、簡便にかつ低コストで保水性の高い舗装ブロックが得られ、これを敷設することにより、路面上昇温度を抑制しヒートアイランド現象の緩和が容易に図れる。
【0042】
さらに、廃棄物であるペーパースラッジ焼却灰及び下水汚泥溶融スラグ等のスラグの有効利用が図れるというメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0044】
A.使用材料
(1) セメント
本発明で用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、エコセメント等を用いることができるが、種類は特に限定しない。
【0045】
(2) ペーパースラッジ焼却灰
ペーパースラッジ焼却灰は、製紙工場で紙の製造工程で発生するスラッジの焼却灰である。ペーパースラッジ焼却灰の化学成分は、主にSiO2、Al23、CaOからなる。また、ペーパースラッジの主要構成化合物は、ゲーレナイト、アノーサイト、遊離石灰であり、その他ガラス相が含まれる。さらに、ペーパースラッジ焼却灰は微細空隙を有するため、吸水させることにより、ブロックに保水性を持たせることができる。
【0046】
一般的に、ゲーレナイトは高炉スラグを結晶化させたときに発生し、長期でゲーレナイト水和物を生成するものである。
【0047】
アノーサイトは長石に含有する化合物であり、水和反応はしない。アノーサイトはペーパースラッジ焼却灰の成分、焼却条件等によって含有しない場合があり、本発明では、特に規定しないが、含有しない方がより好ましい。
【0048】
ペーパースラッジ焼却灰中のガラス相は、ポゾラン反応をする。ガラス相の量や成分は、ペーパースラッジ焼却灰の成分、焼却条件等により異なる。本発明ではガラス相に関しては特に規定しないが存在する方が好ましい。
【0049】
本発明では、ペーパースラッジ焼却灰が遊離石灰を2%以上含有することが望ましい。遊離石灰が2%に満たないと、保水性ブロックの必要強度が確保できない場合がある。また、10%を超えると、ペーパースラッジ焼却灰の添加量によっては、流動性が悪くなり、ホップアウトのような異常膨脹の原因となりやすい。また、蒸気養生する場合に養生温度が高いと、遊離石灰の反応熱と合わさって温度が高くなりすぎる場合がある。
【0050】
遊離石灰は、水と接すると反応し、発熱しながら水酸化カルシウムを生成する。ペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰の量は、ペーパースラッジ焼却灰の成分、焼却条件等により異なる。
【0051】
ここで、遊離石灰はセメント協会試験方法「遊離カルシウム試験方法」に準拠した方法で測定した値である。ペーパースラッジ焼却灰中の酸化カルシウムのみではなく、ガラス相から溶出したカルシウムイオンの量も含む。
【0052】
(3) 軽量骨材
本発明で用いる軽量骨材は、軽石やパーライト粒、人工軽量骨材等の一般的に軽量コンクリートや軽量モルタルに使用されている骨材である。中でも軽石の破砕物やパーライト粒が好ましい。
【0053】
軽石は、火山噴出物の一種で、塊状で多孔質のものである。主に流紋岩質や安山岩質のマグマが地下深部から上昇し、減圧することによって揮発成分が発泡したため多孔質となったものである。岩種は特に限定しない。軽石の破砕物の吸水率は、30%に満たないと保水性が保てない場合があり、50%を超えると流動性が低下し、強度が低下する場合がある。
【0054】
吸水率の測定は、JIS A 1109「細骨材の密度及び吸水率試験方法」またはJIS A 1110「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に基づく方法で行う。軽量骨材についてはJIS A 1134「構造用軽量細骨材の密度及び吸水率試験方法」またはJIS A 1135「構造用軽量粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に基づく方法で行う。
【0055】
軽石の粒度は、特に規定しないが、8mm以下が好ましい。8mmを超えると、骨材自体の保水性や強度にバラツキが生じやすくなるので安定した性能の保水性ブロックが得られ難くなるとともに即脱成形も困難となる。粒度の調整は、従来からある方法で破砕してもよく、ふるい分けてもよい。
【0056】
パーライト粒は真珠岩、黒曜石の少なくとも一種類以上を熱処理したものをいう。一般にパーライトとは真珠岩、黒曜石を800〜1000℃以上で熱処理して発泡させ骨材中に空隙を生成させたものをいう。しかし、一般のパーライト粒では、保水性は確保されるものの吸水率が高くなりすぎ、ブロックの強度が低下するので、本発明では、800℃未満で熱処理した未発泡のものや不完全な発泡のものを用いる。好ましい熱処理温度は700℃以下で、より好ましくは400℃以下、150℃以上である。700℃以下の温度であれば、発泡が安定して抑制できるので、強度の低下のリスクが少なくなる。なお、150℃以上の温度があれば、真珠岩、黒曜石に含まれる自由水、付着水等が蒸発する。パーライト粒の粒度は、8mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
【0057】
(4) 軽量骨材以外の骨材(一般骨材)
一般骨材としては、川砂、川砂利、砕石、砕砂等の天然骨材、コンクリートやコンクリートブロック、モルタルブロック等から再生した再生骨材、水滓スラグや溶融スラグからなるスラグ骨材、石炭灰等のボトムクリンカなどを用いることができる。
【0058】
一般骨材は、軽量骨材のみでは実用的強度が得られないので、強度増進の点から使用することが好ましい。再生骨材は廃材の再利用の観点から好適に用いることができる。再生骨材は従来の方法で得ればよい。
【0059】
また、スラグ骨材を用いることも、強度増進の点から使用することが好ましいが、中でも下水汚泥溶融スラグは強度増進の点のみではなく廃棄物の有効利用の点から特に好ましい。下水汚泥溶融スラグは、下水汚泥焼却灰を溶融させたものである。
【0060】
これらの骨材の粒度は、8mm以下が好ましい。8mmを超えると、ブロックの大きさと比較して骨材が大きくなり安定した性能の保水性ブロックが得難くなる場合がある。
【0061】
(5) 混練水
混練水としては、水道水、回収水、地下水、工業用水等があるが、ブロックの品質を妨げない水であれば使用できる。
【0062】
(6) その他
必要に応じて、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、膨脹材等の混和材を添加してもよい。また、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、強度増進剤、急結剤等の化学混和剤を添加してもよい。
【0063】
B.配合割合
本発明におけるセメント量は、単位セメント量で250〜450kg/m3が好ましい。単位セメント量が250kg/m3に満たないと、強度が不足する場合がある。単位セメント量が450kg/m3を超えると、保水性を持つ材料の必要使用量が確保できず、十分な保水性が得られない場合がある。
【0064】
単位ペーパースラッジ焼却灰量は、30〜700kg/m3が好ましい。配合をセメントの内割で考えるか外割で考えるかによっても異なり、内割で考える場合は、30〜70kg/m3でよく、外割で考える場合は、700kg/m3まで用いることができる。単位ペーパースラッジ焼却灰量が30kg/m3に満たないと、十分な保水性を確保できない場合がある。また、ペーパースラッジ焼却灰の水和反応が期待できないため、軽量骨材の用い方によっては十分な強度が得られない場合がある。単位ペーパースラッジ焼却灰量が700kg/m3を超えると、流動性が低下し、単位水量が増加する場合がある。
【0065】
また、ペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰の量によっても、保水性ブロックの強度を維持するためにペーパースラッジ焼却灰の添加量を調整する。たとえば、ペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰の量が少ない場合は、ペーパースラッジ焼却灰の添加量を増加すればよく、逆にペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰の量が多い場合は、添加量を少なくする。
【0066】
ブロック1m3中に遊離石灰の量が30kg/m3以下、より好ましくは20kg/m3以下になるようにペーパースラッジ焼却灰の添加量を調整する。ブロック1m3中に遊離石灰の量を30kg/m3以下に調整後、さらにブロックの保水性を高める場合は、軽量骨材の添加量を増加する。
【0067】
単位軽量骨材量は、150〜700kg/m3が好ましい。軽量骨材が150kg/m3に満たないと、他の材料の配合によっては保水性を持たない場合がある。軽量骨材が700kg/m3を超えると必要強度が確保しがたくなるとともに一定性能のブロックが得難くなる。
【0068】
一般骨材の単位量は、ブロック中のセメント、ペーパースラッジ焼却灰、軽量骨材の単位量が満足すればよく、さらに実用的強度を十分確保しつつブロック1m3になるように配合できればよい。
【0069】
単位水量は、即脱できる程度の流動性が保てればよく、骨材によって吸水率が異なり、必要な水量が異なるため、特に限定しない。
【0070】
必要に応じて添加される前記混和材や化学混和剤の添加量は、保水性能や強度発現を阻害するものでなければ特に限定しない。
【0071】
C.保水性ブロックの製造方法
インターロッキングブロックの製造方法は、一般的に型枠を振動させながら成形し、加圧し成形し、養生する。本発明でも、同様の方法で製造することができる。
【0072】
養生方法は、気乾養生や蒸気養生があるが特に限定しない。ただし、蒸気養生の場合は、70℃を超えるとブロックにひびが入る可能性があるため、70℃以下が好ましい。蒸気養生した場合には、ペーパースラッジ焼却灰中のゲーレナイト、ガラス相の存在により、さらなる強度増進が期待できる。また、ペーパースラッジ焼却灰中の遊離石灰と水との反応熱により温度が上昇するため、蒸気養生時の養生温度が低減できる。
【0073】
保水性ブロックを、ペーパースラッジ焼却灰や軽量骨材を含まない表層とペーパースラッジ焼却灰や軽量骨材を含む基層とからなるブロックとしてもよい。この場合、表層についてはホワイトセメントと顔料を用いて着色してもよいし、ブラストで表面を加工してもよい。
【0074】
D.保水性ブロックの性能
(1) 保水量
インターロッキング舗装技術協会の保水ブロックの規格では、保水量は0.15g/cm3以上とあるが、0.20g/cm3以上が好ましい。これによって路面温度上昇の抑制が効果的に図れる。保水量は、絶乾状態のブロックを水に24時間吸水させたあとの質量の増加をブロックの体積で割ったものである。
【0075】
(2) 強度
JIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」付属書2「舗装・境界ブロック類推奨仕様2-3インターロッキングブロック」において透水性ブロックの曲げ強度の規定は、3.0N/mm2以上である。本発明の保水性ブロックにおいてもこれを満たすことが好ましい。
【0076】
(3) 吸い上げ高さ
インターロッキング舗装技術協会の保水ブロックの規格では、吸い上げ高さは70%以上とあるが、本発明では80%以上が好ましい。これによって路面温度上昇の抑制が効果的に図れる。吸い上げ高さは、絶乾状態のブロックの一面を水に浸し30分間吸水したときの質量と24時間吸水したときの質量の比をパーセント表示して求められる。
【0077】
E.インターロッキングブロックとしての利用
本発明の保水性ブロックは、インターロッキングブロックとして好適に用いることができる。表層と基層とからなる通常のインターロッキングブロックと同様のブロックの場合、本発明の保水性ブロックを前記基層とし、表層は通常の表層と同一でよい。寸法も従来どおりでよい。製造方法は、上記のとおり、従来のインターロッキングブロックの製造方法に準じて行えばよい。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例として行った実験について記載する。表1に使用材料を示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1中のPS1(密度2.27g/cm3、吸水率45.3%、遊離石灰3.3%)とPS2(密度2.27g/cm3、吸水率45.0%、遊離石灰0.4%)は異なる製紙工場から発生したペーパースラッジ焼却灰であり、再生砂(密度2.52g/cm3、吸水率6.21%)、再生砂利(密度2.46g/cm3、吸水率4.02%)はコンクリートブロックから再生した骨材である。パーライト粒(密度2.35g/cm3)は、黒曜石を200℃で乾燥させたものである。下水汚泥溶融スラグ(密度2.64g/cm3、吸水率0.18%)は、破砕後5mm以下にふるいわけしたものである。軽石(密度1.69g/cm3、吸水率44.8%)は、破砕後8mm以下にふるいわけをしたものである。その他、天然骨材として、川砂(密度2.54g/cm3、吸水率3.51%)、7号砂(密度2.64g/cm3、吸水率0.14%)を用いた。ペーパースラッジ焼却灰は絶乾状態で、骨材は表乾状態で使用した。
【0081】
表2に試作したブロックの配合を示す。単位はkg/m3である。表2中のNo.1〜7が実施例であり、No.8〜11が比較例である。なお、No.11は通常のインターロッキングブロックである。
【0082】
【表2】

【0083】
表2の配合で、通常のインターロッキングブロックの工場の実工程を利用して即脱成形を行った。200×100×60mmに成形後、14日間気乾養生したブロックについて試験を行った。なお、基層部分のみを成形し、試験を行った。
【0084】
表3に絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量試験結果(g/cm3)を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
表3より比較例のNo.10、11以外は、0.20g/cm3以上となり、本発明のブロックはいずれも保水量の目標値を満足した。インターロッキング舗装技術協会の保水ブロックの規格は0.15g/cm3である。
【0087】
表4に曲げ強度試験の結果(N/mm2)を示す。曲げ強度試験はJIS A 5371「プレキャスト無筋コンクリート製品」付属書2「舗装・境界ブロック類推奨仕様2-3インターロッキングブロック」に定められた方法に準じて行った。
【0088】
【表4】

【0089】
表4より比較例であるNo.8、9について、目標値3.0N/mm2を下回る結果となったが、これ以外は目標値を満足した。すなわち、インターロッキング舗装技術協会の保水ブロックの規格は3.0N/mm2以上であり、これを満足した。
【0090】
表5に吸い上げ高さの結果を示す。吸い上げ高さは、絶乾状態のブロックの一面を水に浸し、30分間吸水したときの質量と24時間吸水したときの質量の比をパーセント表示して求めた。
【0091】
【表5】

【0092】
表5より吸い上げ高さは、比較例のNo.10、11以外は、インターロッキング舗装技術協会の保水ブロックの規格である70%以上を満足した。
【0093】
以上の各試験結果から、本発明のものはいずれも保水性ブロックとして好ましい保水量、強度、吸い上げ高さにおける各目標値をクリアし、保水性及び強度に優れた舗装用ブロックとして実用的であることが確認された。また、従来の一般的なインターロッキングブロックに対しても実施例で、その優位性が確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、ペーパースラッジ焼却灰、及び少なくとも一部が軽量骨材からなる骨材を含む保水性ブロック。
【請求項2】
前記ペーパースラッジ焼却灰中には、遊離石灰が2〜10%含まれている請求項1記載の保水性ブロック。
【請求項3】
前記軽量骨材が、軽石の破砕物又はパーライト粒のいずれか一つ以上である請求項1又は2記載の保水性ブロック。
【請求項4】
前記軽量骨材である軽石の破砕物は、吸水率が30〜50%である請求項3記載の保水性ブロック
【請求項5】
前記軽量骨材であるパーライト粒は、真珠岩及び/又は黒曜石を700℃以下、150℃以上の温度で熱処理したものである請求項3記載の保水性ブロック
【請求項6】
骨材として、前記軽量骨材以外に、天然骨材、再生骨材、又はスラグ骨材の一種以上を含む請求項1〜5のいずれかの項に記載の保水性ブロック。
【請求項7】
前記スラグ骨材は、下水汚泥溶融スラグである請求項6記載の保水性ブロック。
【請求項8】
前記骨材の粒径が8mm以下である請求項1、6又は7記載の保水性ブロック。
【請求項9】
前記保水ブロック中、単位セメント量が250〜450kg/m3、単位ペーパースラッジ焼却灰量が30〜700kg/m3、単位軽量骨材量が150〜700kg/m3である請求項1〜8のいずれかの項に記載の保水性ブロック。
【請求項10】
前記保水性ブロックは、表層と基層からなるブロックであり、前記ペーパースラッジ焼却灰及び前記軽量骨材は基層のみに含まれる請求項1〜9のいずれかの項に記載の保水性ブロック。

【公開番号】特開2008−75270(P2008−75270A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252948(P2006−252948)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(592037907)株式会社デイ・シイ (36)
【Fターム(参考)】