説明

保温具

【課題】身体への負担を小さくして、身動きし易くし、また軽快に使用することができ、さらに、身体の内部まで暖めて、保温を一層効果的にすることができる保温具を提供する。
【解決手段】竹炭粉などの炭微粒子を担持させた不織布などの繊維素材からなる温熱シート1と、前記温熱シートの両面を覆う柔軟な外皮材2とからなる層構造を備えた保温具。外皮材2は二重シートからなる平面的な収納袋あるいは二重の筒状の立体的な収納袋とし、その収納袋内に、すなわり二重シートの間あるいは二重筒の内筒と外筒の間に温熱シート1を挿入する。保温具は衣料、寝具、履物などに適用することができる。衣料には、衣服のほか、肩掛け、レッグウォーマー、アームウォーマー、帽子、手袋など、身体に装着するすべてのものが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を保温する保温具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体を保温するのに、例えば重ね着、重ね布団、また重ね履きをする方法があるが、これらの方法は着膨れになったり、また嵩ばんで身動きが取り辛くなったりする。特に高齢者および要介護者にとっては、身動きが鈍るので、問題がある。そのため衣服に貼り付け可能な懐炉を使用したり、また電気毛布などを使用する方法もあるが、これらは皮膚乾燥や、低温火傷の問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、身体への負担を小さくして、身動きし易くし、また軽快に使用することができ、さらに、皮膚乾燥や低温火傷のおそれがなく、高齢者や要介護者でも安心して使用することができる保温具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の保温具(請求項1)は、炭微粒子を担持させた繊維素材からなる温熱シートと、前記温熱シートの両面を覆う柔軟な外皮材とからなる層構造を備えていることを特徴としている。
【0005】
前記外皮材が平面的な収納袋であり、その収納袋に前記温熱シートが挿入されているものが好ましい(請求項2)。
【0006】
また前記外皮材が内筒と外筒を備えた筒状の収納袋であり、その収納袋の内筒と外筒の間に前記温熱シートが挿入されているものであってもよい(請求項3)。
【0007】
前記収納袋が衣料用に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0008】
また前記収納袋が寝具用に形成されているものも好ましい(請求項5)。
【0009】
さらに前記収納袋が履物用に形成されているものであってもよい(請求項6)。
【0010】
また前記温熱シートが、前記収納袋の内面に着脱可能に取り付けられているのは一層、好ましい(請求項7)。
【0011】
また前記収納袋の一部を他部に連結するための連結部材が収納袋の表面または裏面に設けられているのは特に好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保温具(請求項1)は、温熱シートとこれを覆う外皮材による層構造になっているので、温熱シートは外皮材によって保護される。さらに外皮材の内部の空気層で保温効果が発揮される。温熱シートは炭の微粒子を担持させた繊維素材からなっているので、使用者が装着すると遠赤外線放射作用によって身体を構成する分子の運動が活発化し、細胞の活動も活発化する。そのため血行がよくなり、身体も暖まる。さらに低温火傷を起こすこともない。また湿気吸収作用によって適度な湿気を保つ。さらに炭火粒子の分解作用によって臭い成分を分解するので、消臭効果がある。こうした作用効果は温熱シートが炭の微粒子を担持させた繊維素材からなっているので長期間継続し、非常に経済的である。またこの温熱シートは柔軟であり、また外皮材も柔軟であるので、上記の保温具は身体に沿い易く、また優しく接触する。
【0013】
前記外皮材が平面的な収納袋で、その収納袋に前記温熱シートが収納されている場合(請求項2)、温熱シートの炭の微粒子が繊維素材から脱落しても、収納袋によって受け止められ、落下するのを防止する。したがって、安心して使用することができる。
【0014】
前記外皮材が内筒と外筒とを備えた筒状の収納袋であり、その収納袋の内筒と外筒の間に前記温熱シートが挿入されている場合(請求項3)、つまりその収納袋の断面がドーナツ状に形成され、内筒と外筒の中空部が貫通孔や、一端が閉じた袋状となっている場合、前記内筒に身体の一部を挿入することによって、その周囲全体が温熱シートに取り囲まれる。そのため身体への装着性がよく、かつ効率的に温熱作用を受けて、保温される。
【0015】
前記収納袋が衣料用に形成されている場合(請求項4)、保温具は温熱・消臭作用を有する衣料として使用することができる。すなわちこの衣料を着用していることによって、人体から放出される汗、臭いなどは、温熱シートの炭微粒子の分解・吸着作用によって消臭されるので、爽快感を得ることができる。また皮膚の深部が温熱シートの遠赤外線作用によって温まるので、血液の循環作用にも良い効果をもたらすことができる。又この衣料は全体が柔軟であるから、違和感がない。
【0016】
前記収納袋が寝具用に形成されている場合(請求項5)、保温具は、温熱・消臭作用を有する寝具として使用することができる。例えば敷布、掛け布また枕カバーは就寝中、身体に長時間、継続して接触しているので、人体から放出される汗、臭いなどは、温熱シートの作用によって吸収される。この敷布や掛け布は身体の全身を暖めることが可能であるから、重ね布団など煩雑にならなくても済む。また、身動きがし易い。また就寝中の身体は血流が悪くなり易いが、全身が前記温熱シートの作用によって血液の循環を改善することができる。
【0017】
また前記収納袋が履物用に形成されている場合(請求項6)、保温具を温熱・消臭作用を有する履物として使用することができる。例えば靴やスリッパなどの使用は足裏に汗をかいたり、また悪臭がでたりするが、これらは温熱シートの作用によって吸収される。また足の血管は末端なので、収縮し易いが、温熱シートの作用によって、血液の循環を良くする。
【0018】
前記温熱シートが、前記収納袋の内面に着脱可能に取り付けられている場合(請求項7)、温熱シートは収納袋から取り外すことができる。両者は洗濯の方法が異なっているので、上記のように分離することによって個別に洗濯することができる。したがって収納袋を洗濯する場合、温熱シートはこれより取り外されているので、洗濯による温熱シートへの影響はなく、炭微粒子の落下および効能低下は防止される。
【0019】
前記収納袋の一部を他部に連結するための連結部材が収納袋の表面または裏面に設けられている場合(請求項8)、収納袋の一部を他部に連結することによって、保温具の形状あるいは大きさを変形あるいは変更することができる。したがって保温具を最適な形状あるいは大きさにして、身体から脱落しにくいように安定させることができる。このように保温具を身体に安定した状態で接触させておくことによって、使用者は保温具を軽快に使用することができるし、また確かな、温熱シートの作用効果を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図面を参照しながら本発明の保温具の実施形態を説明する。図1は本発明の保温具の層構造の一実施形態を示す断面図、図2は図1の拡大図、図3は温熱シートの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図、図4は図3の温熱シートの断面図、図5は温熱シートに用いる竹炭粉末の製造法の一例を示す工程図、図6は図3の温熱シートの製造法を示す工程図、図7は温熱シートの他の実施形態を示す一部切り欠き斜視図、図8は保温具の層構造のその他の実施形態を示す断面図、図9は図8の拡大図、図10a、図10bおよび図10cは本発明の保温具の一実施形態であるひざ掛けの表面図、裏面図および縦断面図、図11は他の実施形態である枕カバーの斜視図、図12a、図12bおよび図12cはさらに他の実施形態である肩掛けの表面図、裏面図、および縦断面図、図13はさらに他の実施形態である靴形の足カバーの斜視図、図14はさらに他の実施形態であるスリッパの斜視図、図15はさらに他の実施形態である筒状のカバーを示す斜視図である。
【0021】
図1に示す保温具の層構造は、一枚の温熱シート1の上下面に外皮材2、2を設けた三層構造になっている。但し二枚の温熱シート1を入れるなど、四層以上にしてもよい。この温熱シート1は、図2に示す炭の微粉末を含有するシートからなるのが好ましい。炭の微粉末としては竹炭粉末がとくに好ましい。竹炭粉末は、原料の竹の生長が早く、再生サイクルが早いので、木炭に比べて、製品供給の安定化に繋がる。また竹炭は特有の抗菌力をもっており、雑菌の繁殖による臭気の抑制に効果的である。また木炭よりも吸着力に優れており、脱臭・浄化機能を有し、また空気中のマイナスイオンを増幅する機能も有しているので、健康増進にも役立つ。さらに竹炭は、天日干しなどの外部エネルギーが加わると、吸着していたものを放出する還元性を持っているので、竹炭の微粉末を含有する温熱シートは、手入れをすることによって半永久的に使用することができる。
なお、竹炭よりも効能は劣るが、遠赤外線効果および吸着効果を有するものであれば、多数の微小孔を有する木炭、椰子殻炭、ケナフ炭、マングローブ炭、活性炭なども温熱シートに使用することはできる。
【0022】
つぎに図3〜4を参照して前述の炭の微粉末を含有するシート(以下、炭含有シートという)10を説明する。この炭含有シート10は、基材11と、その上に散布された竹炭粉末12と、その上を覆っている覆い層13とから構成されている。この炭含有シート10は、全体としては、カレンダー加工などにより、覆い層13が竹炭粉末12を挟んで基材11上に熱接合されている。そして周辺部14では、加圧加熱により扁平に圧着されている。圧着する周辺部14は一辺あるいは2〜3辺でもよいが、炭含有シート10の全周に設けるほうがよい。この炭含有シート10は実質的に接着剤が使用されていない。
【0023】
前記基材11としては、坪量10〜100g/m2、より好ましくは20〜50g/m2の不織布が用いられる。不織布を構成する繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂の繊維で、長さ当たり重量が1〜6デシテックス程度の繊維が用いられる。
【0024】
前記基材11は上記の熱可塑性樹脂から前述の絡合ないし抄造など、通常の製造方法で製造され、さらに加圧し、あるいは加熱加圧して形成する。とくに、熱可塑性樹脂の短繊維ないし繊維粉末をベルトコンベア上に吹き出して重ねながら絡合させ、2〜4個の熱ロールを用いたカレンダー加工で厚さ0.5〜2mm程度に成形したものが好ましい。ただし熱可塑性樹脂をノズルから噴出させながら板状部材の表面に重ねて絡合させた乾式不織布や、水などの媒体内で絡合させ、乾燥させた湿式不織布でもよい。それにより比較的強度が高い強靱な不織布が得られる。そして坪量10〜100g/m2程度であるので、充分に柔軟である。
【0025】
前記竹炭粉末12としては、竹炭を製造して粉砕機ないし微粉砕機で粉砕し、さらにふるいにかけて、平均径0.1〜1mm程度、平均長さ0.1〜10mm程度に揃えたものを用いる。すなわち平均径が1mmより大きい場合、あるいは平均長さが10mmを超える場合は、竹炭粉末12が基材11や覆い層12に付着しにくい。そのため、全体の付着量が少なくなりがちである。逆に平均径や平均長さが0.1mmより小さい場合は、基材11などの表面に充分に付着するが、薄く付着することになり、竹炭粉末12の付着量が全体として少なくなりがちである。
【0026】
なお、竹炭粉末の粒子を細かく見ると、竹の繊維の細長い形状が残っているものがある。このような細長い粉末は、さらに細かく粉砕してもよいが、むしろ細長いほうが不織布の繊維の目に絡まりやすく、不織布を通過して脱落するのを防ぐことができる。そのため、これらの細長い竹炭粒子を排除したり細かく粉砕したりせず、そのまま利用するのが好ましい。上記のように、平均径が0.1〜1mm、平均長さが0.1〜10mmと、径と長さの範囲を代えているのは上記の理由による。なお、竹炭粒子の平均長さを平均径の2〜10倍程度、あるいは3〜10倍程度の細長い粒子のみを選別するようにしてもよい。
【0027】
上記の竹炭粉末を選別するには、目の粗いふるいを通過し、目の細かなふるいを通過しないものを選別するなどによる。その場合、たとえば径1mm以上の竹短繊維を通すスリット状のふるいと、粒子径が0.1mmより小さい竹炭粒子を通過させるふるいとを組み合わせるなどの方法が用いられる。細長いものだけを選別する場合は、たとえば長さ0.2mm未満、あるいは0.3mm未満の竹炭粉末を通過させるふるいを用いる。ただしふるいで選別しても、厳密には所定の範囲のものだけにするのは困難であるが、ある程度は選別することにより、不織布の繊維に絡合させやすくなる。
【0028】
竹炭の材料の生竹としては、孟宗竹、真竹、淡竹など、微小な孔を多数有するものが好ましく、生育年数が3〜5年の竹がとくに好ましい。このような生竹15は乾燥させ、図5に示すように、炭焼き用の焼成炉16中で、500〜750℃あるいはそれ以上で蒸し焼きにして竹炭とする(第1ステップS1)。そのとき、焼成炉16は空気取り入れ口に調整弁17を備えたものが用いられる。そして焼成炉16の下部に入れた廃竹18をガスバーナー19で着火させ、敷石20などからなる緩衝材を温め、その緩衝材の上に積み込んだ釜内の生竹15を蒸し焼きにして炭化させていく。
【0029】
なお、焼成炉16で焼くと、0〜100℃程度の範囲では、温度が緩やかに上昇する。ついで100〜350℃程度では、0〜100℃の範囲よりも温度上昇が急になる。そして350〜500℃で、再び温度上昇が穏やかに急になる。そして500〜750℃の範囲あるいはそれ以上では、350〜500℃の範囲よりも温度上昇が急になる。このように温度が段階的に変化するのは、つぎのような工程があるためと考えられる。すなわち、始めの0〜100℃の段階では、焼成炉16内の竹が敷石19の余熱で着火するまでの温度と考えられる。つぎの100〜350℃は、焼成炉16内の竹から水分が蒸発し、竹酢液が抽出される温度と考えられる。つぎの350〜500℃の段階では、焼成炉内の糧の有機物が分解される温度と考えられる。500〜750℃あるいはそれ以上は、竹の有機物が完全になくなり、炭化による竹炭の効能を引き出す温度と考えられる。したがって炭焼きの最終温度は少なくとも750℃以上とするのが好ましい。
【0030】
炭化処理が完了すると、得られた竹炭にブラシをかけて洗浄するなどにより灰などの炭化処理工程でできる不純物を取り除く(第2ステップS2)。そして前述のように微粉砕機などで粉砕し(第3ステップS3)、ついで所定の平均粒径、あるいは所定の平均径および平均長さのものを選別する(第4ステップS4)。
【0031】
炭焼きのための時間は使用する生竹15の重量により異なるが、通常は10〜25時間程度、より好ましくは20時間程度である。焼成炉16の内部では生竹15の炭化の過程で一酸化炭素が発生し、その一酸化炭素がさらに燃焼して二酸化炭素に変化するので、充分に空気を供給する必要がある。ただし最終工程では調整弁17を調節して酸素濃度を低い状態に維持し、竹炭が灰になることを防ぐ。
【0032】
上記のように高温で焼くことにより、タールや竹酢液などが分離され、炭素純度が高い竹炭が得られる。この場合の竹炭の表面の電気抵抗は50Ω/cm以下、とくに10Ω/cm以下のものが好ましい。電気抵抗がそれより高い場合は、純度が低く、タールなどの不純物が多いので、竹炭粉末12の微細な孔が詰まり、吸着作用が低くなる。竹炭の電気抵抗は、テスターの2本の電極棒19を数センチメートルの間隔で竹炭の表面に当てて測定する。ちなみに生竹15のままでは通電しない。
【0033】
前記覆い層13としては、基材11と同様の不織布が用いられる。坪量も同程度か、いくらか軽い不織布、たとえば坪量10〜100g/m2、より好ましくは10〜50g/m2の不織布が用いられる。また、強く加圧せずにふんわりと起毛した状態で用いるのが好ましい。覆い層13の不織布の製造法も、基材の製造法と同様の方法、たとえば熱可塑性樹脂の短繊維ないし繊維粉末をベルトコンベア上に吹き出して重ねながら絡合させ、2〜4個の熱ロールを用いたカレンダー加工で厚さ0.5〜2mm程度に成形する方法などが採用される。ただし通常の乾式不織布や、湿式不織布でもよい。不織布を構成する繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂の繊維で、1〜6デシテックスの繊維が用いられる。
【0034】
図3に示す炭含有シート10は、前述のように周辺部14では、覆い層13が竹炭粉末12を挟んで基材11上に圧着されているが、その周辺部14の幅は1〜15mm、とくに5〜10mmが好ましい。1mm未満であれば熱圧着の処理が難しくなり、15mmを超えると熱圧着されていない中央部21を充分に広くとることができなくなる。また、上記の範囲であれば、シートを切断するときに、同時に熱接合することも容易である。たとえば、中央に円板状の切刃を備え、その切刃の両側に熱ローラを備えた切断ローラによって、熱圧着と切断を同時に行うと効率的である。ただしカッターなどで切断した後、アイロンなどで熱圧着するようにしてもよい。炭含有シート10の厚さはたとえば0.5〜2mm程度のものが好ましい。その場合、周辺部14は厚さ0.2〜2mm程度、とくに0.3〜0.5mm程度に加熱加圧するのが好ましい。
【0035】
周辺部14を加熱加圧することにより、覆い層13が扁平に圧着され、竹炭粉末12を挟んで基材11に対して密に接合される。それにより周縁からほとんど竹炭粉末が脱落しない。この場合も接着剤を用いない。中央部21は、覆い層13が加圧されていないので、前述のふんわりした触感が維持されており、黒色の竹炭粉末12の色もそれほど目立たない。
【0036】
前述の基材11、竹炭粉末12および覆い層13は、たとえば図6に示す工程で炭含有シート10に加工される。まず、第1ノズル22から熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維23をベルトコンベア24の上に吹き付け、ヒータ25で加熱して所定の厚さの繊維層26を形成する(第11工程S11)。そのとき、熱ローラ27で加圧して不織布(基材)にしてもよい。ついでベルトコンベア23で繊維層25ないし不織布を長手方向に移動させながら、第2ノズル28から竹炭粉末12を所定量、散布ないし吹き付けていく(第12工程S12)。 ベルトコンベア24は金属製のもの、とくにヒータ25の熱が通り易いように、目の細かい金網状のものが好ましい。
【0037】
ついでその上に第3ノズル29から覆い層13を形成するための熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維を吹き付けて、第2の繊維層30を形成する(第13工程S13)。さらにそれらを熱ローラ31で加圧し、所定の厚さに形成するカレンダー加工を施す(第14工程S14)。それにより基材11の繊維と覆い層13の繊維が絡合し、交点で融着するので、竹炭粉末12を脱落しにくいように閉じ込める。それにより風合を損なわない炭含有シート10が得られる。得られた炭含有シート10は、所定幅(たとえば300〜1000mm、とくに915mm程度)のロール状あるいは所定の長さに切断した長尺シートとして販売される。
【0038】
なお、カレンダー加工の後、さらに両側縁を加熱ローラで強く加圧して、幅1〜15mm程度の圧着した周辺部(図3の符号14)を形成してもよい。それにより両側縁が熱接合された長尺の炭含有シート10が得られる。また、長尺シートの場合は、切断した端縁を圧着するのが好ましい。ロールないし長尺シートで販売した場合は、使用者、たとえば建築施工業者が用途に合わせて所望の寸法に切断しながら加熱加圧して使用する。
【0039】
上記のように不織布を形成するときに同時に竹炭粉末を絡合させると効率的に炭含有シート10を得ることができる。しかしあらかじめ基材11を所定の幅のロールないし長尺シートで製造しておき、その基材11に前述の竹炭粉末を散布し(図6のS12)、その上に熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維を吹き付けて、覆い層13となる不織布の第2の繊維層30を形成(図6のS13)し、それらを熱ローラで加圧し(図6のS14)、所定の厚さに形成するカレンダー加工を施すようにしてもよい。さらに基材11と覆い層13をあらかじめ形成しておき、基材11の上に竹炭粉末を散布し、覆い層13を重ねてカレンダー加工を施すことによっても炭含有シート10を形成することができる。
【0040】
上記の炭含有シート10は、接着剤を用いていないため、竹炭粉末による有害ガス吸着効果が高く、接着剤やバインダーを用いる場合のような揮発成分の発生がほとんどない。また、接着剤を用いていないため、一定期間使用した後、水で付着物を洗い流すことにより、繰り返し使用することができる。
【0041】
図7に示す炭含有シート31は、周辺部を圧着していないほかは、図3の炭含有シート10と実質的に同一である。すなわち前記基材11と覆い層13とが、図6と同様の抄造により接合されており、基材11、竹炭粉末12および覆い層13の材質や密度、大きさなどは図3の炭含有シート10の場合と同様である。このものは周縁からは竹炭粉末が脱落しやすいが、竹炭粉末12を基材11と覆い層13の繊維内に充分に絡ませることにより、竹炭粉末が不織布を透過してシート表面から脱落することを防止しうる。このものは周辺部が圧着されていないため、全体として風合いのある炭含有シート31となる。
【0042】
前記いずれの炭含有シート10の場合でも、蒸留した竹酢液などを散布することにより、抗菌ないし殺菌効果を増大させることができる。
【0043】
また、図1の外皮材2は柔軟性かつ、適度な張り性を有する繊維素材が好ましく、特にポリエステル繊維の織物地であるフリースが保温作用があるので好ましい。前記温熱シート1(炭含有シート)の各種の作用は上記フリースを通じて身体への保温作用などの前記の作用を有効に発揮する。なお上記の外皮材は内側の外皮材と外側の外皮材が共通の素材からなっているが、それぞれの素材、或いは材質を変えることもできる。また上記フリースに変えて、ナイロン、木綿、麻、毛などの織物地を使用することもできる。この場合、目が詰まっているものが好ましい。
【0044】
また温熱シート1は非常に薄く形成することが可能となっている。したがって本発明の保温具の上記の層構造は、温熱シート1が上下のフリース地に馴染み易く、またこの三層は一体化し易い。さらにこの温熱シート1と外皮材2のフリースは異質の素材ではあるが、いずれも柔軟性と、適度の張り性を有する点では共通しているので、この三層構造は柔軟な一枚の生地のように滑らかな触感を有し、また三層構造の違和感がない。
【0045】
なお、この三層構造の他に図8および図9に示すように温熱シート1を二枚を一組として、その上下に外皮材2、2を設ける四層構造であってもよい。この場合の温熱シート1についても上記の実施形態と同様のものを使用し、また外皮材2についてもフリースが好ましい。この層構造は前実施形態の層構造よりも、炭含有シートが一枚増加していることから、一層、張り性を有している。しかし柔軟性は維持されているので、四層構造の場合においても、ほぼかわらない使用感を得ることができる。しかし保温作用などについては、一層、有効になっている。
なお、炭含有シートが三層以上、また含有シートの上層の外皮材または下層の外皮材がそれぞれに2層以上の層構造のものであっても、全体が柔軟であり、かつ使用者が動き易く、また炭含有シートの作用が外皮材を通過して、身体を保温するものであれば、採用することができる。
【0046】
次に本発明の保温具を衣料、寝具、履物などに適用した実施形態について説明する。
図10a、図10bおよび図10cに示すひざ掛け34は、適当な大きさの表側生地35aと、この表側生地より丈が若干、短目の裏側生地35bによって形成された偏平な収納袋36の中に温熱シート37を収納したものである。この収納袋36は上部に収納口36aが段形成されており、他の周縁は表側生地35aと裏側生地35bとが縫い合わされて袋状になっている。また、図10cに示すように、裏側生地35bと同じ面上に、これと同じ素材からなる蓋38を設け、収納口36aを開閉可能にしている。またこの蓋38は裏側生地35bの収納口36aの周辺に重合させて閉口する。その重合部分のそれぞれの接触面には面ファスナー39a、39bを設けている。
図10bに示すようにこのひざ掛けは、収納口36aが閉口した状態において、収納袋36の裏面は、図10aの表面の外観とほとんど変らないので、一枚物の生地として外見される。なお、温熱シート33は収納袋32の全面に設けるようにしてもよいし、また部分的に設けてもよい。
【0047】
また収納袋36の裏側生地35bの内面とこれに当接する温熱シート37の面の間には面ファスナー39c、39dを設けている。なおこの面ファスナーは、温熱シート33を収納袋32の全面に設ける場合は、少なくとも収納口36a周辺の二箇所に設けるのが好ましい。したがって収納袋36と炭含有シート37は実質的に一体化し、また温熱シート37は収納袋36内で偏って収納されることが防止されるので、滑らかな一枚物のひざ掛けになる。またごわつき感がないので、心地よい使用感がある。また、このひざ掛け34は面全体が温熱シート37の炭粉末による遠赤外線作用および吸着作用などの各種の作用を発揮するので、身体、特にひざを長時間、継続して保温すると共に上述の各種の作用を享受できる。またひざ掛けを使用しない場合、適当な形状に折畳むことができるので、嵩低い状態で収納することができる。なお収納口36aの面ファスナー39a、39bに変えてスライドファスナーを設けてもよい。この場合、スライドファスナーは不外見のものを使用するのが好ましい。
【0048】
なお図10a乃至図10cのひざ掛けを大きくしたものを、寝具として使用することができる。例えば敷き布(または敷き毛布)、また掛け布(または掛け毛布)として使用する場合、温熱シート33は柔軟であるから、身体が敷き布に密着しても、また寝返りをうっても、ごわつきがない。また身体を上から優しく覆うことができるので、違和感はない。さらに温熱シートは繊維素材であるから、比較的、軽量なので、特に圧迫感もない。さらに両方を同時使用することによって、身体は温熱シートの炭微粉末の作用を全身に受けることは可能である。したがって就寝中においては、炭微粉末の作用を最も有効に受けることができるので、非常に効率的である。また、不使用時には、折畳んで、押し入れなどに収納することができる。また押し入れの中は他の寝具の湿気や悪臭がこの敷布また掛け布によって吸収されるので、毎晩、衛生的な寝具を使用することができる。
【0049】
また寝具の他の適用例として、図11に示す枕カバー40がある。
枕カバー40は全体が筒形になっている。この筒形の中心の貫通孔が枕の収納部41である。また収納部41のまわりは内側より裏側生地42b、炭を含有する温熱シート43そして表側生地42aの三層構造でなっている。またこの表側生地42aと裏側生地42bの両側の周縁を縫合して収納袋44を形成し、その収納袋44にこれとほぼ同じ大きさの温熱シート43を納めている。裏側生地42bの面には温熱シートを収納するための収納口45を設けると共にスライドフィァスナー46によって開閉可能にしている。また収納口45付近の裏側生地42bと温熱シート43との間には面ファスナー47を設けて、温熱シート44が偏ったり、捻じれたりするのを防止する。したがってこの枕カバーの収納部41に枕(図示外)を挿入した状態は、枕全体が温熱シート43によって囲繞されるので、就寝中は頭が温熱される以外に、血管が暖められて血行がよくなる。また枕の悪臭も吸収される。
なお、この枕カバーの形態と同じ構造でその大きさを変えることによって、例えば腹巻、レッグウォーマー、アームウォーマーなどの衣料に適用することができる。これらの場合は温熱シートの収納口を表側生地に設けるのが好ましい。
さらに、前記枕カバーは一端を重ねて閉じて底襠がない袋状に形成してもよい。また一端に底襠を設けて底襠付きの袋状に形成してもよい。この場合、底襠も裏側生地と表側生地によって温熱シートを納めるための収納袋を形成すると共に、裏側生地に収納口を開閉可能に形成する。温熱シートは収納袋の全面に設けてもよく、また一部に設けてもよい。
【0050】
次に衣料への適用例として、図12a、図12bおよび図12cに示す肩掛け50について説明する。この肩掛け50は略U字状に形成された表側生地51aと裏側生地51bの全周を縫合して収納袋52を形成すると共に、この収納袋52に温熱シート53を収納するための収納口54を裏側生地51bの一側に設け、スライドファスナー55によって開閉可能としている。温熱シート53は収納袋の内面の大きさに等しく、肩掛けの全面に温熱シート(炭含有シート)53が設けられている。ただし一部のみでもよい。また裏側生地51bと温熱シート53との間には適当数の面ファスナー55a、55bを設けて、温熱シート53を定着させる。
この肩掛けカバー50は表側生地51aのU字形の左側上方部50aに長目の雌方面ファスナー56aを設け、また裏側生地51bのU字形の右側上方部に雌方の面ファスナー56aに係合するための長目の雄方の面ファスナー56bが設けられている。したがってこの肩掛けカバー50は左右の面ファスナー56a、56bを係合することによって、図13に示す首まわり部57と前身ごろ部58と後身ごろ部59が形成される。前記の首まわり部、前身ごろ部そして後身ごろ部の大きさは前記面ファスナー56a、56bの係合位置によって若干、変えることができるので、肩掛け50は使用者の体形に合わせたり、また好みの大きさにしたりできる。こうして自分の身体Bに最も適切な形大に設定することによって、首周りから胸および背を保温すると共に、含有している炭微粉末の作用を享受することができる。
【0051】
次に履物への適用例として、図14に示すブーツ形の室内用の足カバー60、および図14に示すスリッパ70について説明する。図13の足カバー60は表側生地61aと裏側生地61bを重合させた状態で、ブーツ形の袋62を形成し、その袋の全面または一部に温熱シート(炭含有シート)63を設けている。また足の挿入口64はその前方部が左右に開くように形成され、その左側部65aと右側部65bを重ねて係合することによって挿入口64の大きさを調節できるようにしている。その左側部65aと右側部65bが係合する面または周辺には面ファスナー66a、66bを設けている。また右側部65bの側縁に舌片67を突設させることによって、挿入口64の開閉操作が簡単にできる。したがって足は、足先から足首の上方までの全体または一部が温熱シート63に覆われるようになっているので、その全体が温熱シートの作用によって保温されると共に含有している炭微粉末の作用を享受することができる。足は身体の末端部なので、この足カバーによる保温とその他の作用を同時に享受することで、足の血液循環に良い影響を与えることになる
【0052】
また図15のスリッパ70については、足裏が当接する底部71および覆い部72、あるいはそれらの一方に温熱シート(炭含有シート)73を設けることができる。底部71はソール本体74の上面に温熱シート73を全面的に、あるいは一部に設け、その上に外皮材75を設けている。また覆い部72は表側生地76と裏側生地77によって袋状に形成し、その中に温熱シート78を全面的に、あるいは部分的に設けている。温熱シート73、78は比較的薄く、一般的なスリッパの外観を保持しているので、違和感がない。このスリッパは使用状態において足裏と足先が温熱シート73の炭微粉末による温熱作用および吸着作用を享受することができる。なお底部71または覆い部72の温熱シート73の収納口79は、例えば底部の側面または覆い部の周縁に設けると共に、スライドファスナーによって開閉可能にする。
【0053】
さらに他の適用例としては、帽子、手袋などがある。帽子の場合、例えばキャップ部分を温熱シートを収納させるための収納袋に形成することによって、頭が炭を含有する温熱シートの温熱作用と吸着作用を享受するようにできる。また手袋の場合、いわゆるミトンの場合は手の表面側また裏面側のいずれか、また両方を袋状に形成して、その中に温熱シートを収納する。5本の指の収納部が形成されている手袋についても同様である。上記の温熱シートの収納口はキャップの場合は下縁が好ましく、また手袋は挿入口付近が好ましい。前記寝具、衣料、履き物に使用する温熱シートについても、竹炭粉末を含有する炭含有シートが好ましい。ただし活性炭など、他の炭粉末を用いることもできる。前記衣料には、衣服のほか、肩掛け、レッグウォーマー、アームウォーマー、ネックウォーマー、帽子、手袋など、身体に装着するすべてのものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は本発明の保温具の層構造の実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は図1の拡大図である。
【図3】図3は温熱シートの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【図4】図4は図3の温熱シートの断面図である。
【図5】図5は温熱シートに用いる竹炭粉末の製造法の一例を示す工程図である。
【図6】図6は、図3の温熱シートの製造法を示す工程図である。
【図7】図7は温熱シートの他の実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【図8】図8は保温具の層構造のその他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図9は図8の拡大図である。
【図10】図10a、図10bおよび図10cは本発明の保温具の実施形態を示すひざ掛けの表面図、裏面図および断面図である。
【図11】図11は本発明の保温具の実施形態を示す枕カバーの斜視図である。
【図12】図12a、図12bおよび図12cは本発明の保温具の実施形態を示す肩掛けの表面図および裏面図である。
【図13】図13は図12の肩掛けの使用状態を示す正面図である。
【図14】図14は本発明の保温具の実施形態を示すブーツ形の足カバーの斜視図である。
【図15】図15は本発明の保温具の実施形態を示すスリッパの斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 温熱シート
2 外皮材
10 炭含有シート
11 基材
12 竹炭粉末
13 覆い層
14 周辺部
15 生竹
16 焼成炉
17 調整弁
18 廃竹
19 ガスバーナー
20 敷石
21 中央部
22 第1ノズル
23 短繊維
24 ベルトコンベア
25 ヒータ
26 繊維層
27 熱ローラ
28 第2ノズル
29 第3ノズル
30 第2の繊維層
31 熱ローラ
32 炭含有シート
34 ひざ掛け
35a 表側生地
35b 裏側生地
36 収納袋
36a 収納口
37 温熱シート
38 蓋
39a 面ファスナー
39b 面ファスナー
39c 面ファスナー
39d 面ファスナー
40 枕カバー
41 収納部
42a 表側生地
42b 裏側生地
43 温熱シート
44 収納袋
45 収納口
46 スライドファスナー
47 面ファスナー
50 肩掛け
51a 表側生地
51b 裏側生地
52 収納袋
53 温熱シート
54 収納口
55 スライドファスナー
56a 面ファスナー
56b 面ファスナー
57 首周り部
58 前みごろ部
59 後みごろ部
60 足カバー
61a 表側生地
61b 裏側生地
62 収納袋
63 温熱シート
64 挿入口
65a 左側部
65b 右側部
66a 面ファスナー
66b 面ファスナー
67 舌片
70 スリッパ
71 外皮材
72 覆い部
73 温熱シート
74 ソール本体
75 外皮材
76 表側生地
77 裏側生地
78 温熱シート
79 収納口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭微粒子を担持させた繊維素材からなる温熱シートと、前記温熱シートの両面を覆う柔軟な外皮材とからなる層構造を備えた保温具。
【請求項2】
前記外皮材が平面的な収納袋であり、その収納袋に前記温熱シートが挿入されている請求項1記載の保温具。
【請求項3】
前記外皮材が内筒と外筒を備えた筒状の収納袋であり、その収納袋の内筒と外筒の間に前記温熱シートが挿入されている請求項1記載の保温具。
【請求項4】
前記収納袋が衣料用に形成されている請求項2または3記載の保温具。
【請求項5】
前記収納袋が寝具用に形成されている請求項2または3記載の保温具。
【請求項6】
前記収納袋が履物用に形成されている請求項2または3記載の保温具。
【請求項7】
前記温熱シートが、前記収納袋の内面に着脱可能に取り付けられている請求項4、5または6記載の保温具。
【請求項8】
前記収納袋の一部を他部に連結するための連結部材が収納袋の表面または裏面に設けられている請求項2、3、4、5、6または7記載の保温具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−296104(P2007−296104A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126587(P2006−126587)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(597107593)株式会社タナック (8)
【Fターム(参考)】