説明

保温性に優れた透湿防水フィルム

【課題】透湿性及び防水性に優れ、更には保温性にも優れており、アウトドアウェア、レインウェア、スキーウェア等のスポーツ用アウターウェアや、各種作業用衣服等の服地として有利に用いられ得る透湿防水フィルムを提供すること。
【解決手段】透湿度が5000(g/m2 )・24hr以上であり、且つ耐水圧が500mmH2O 以上である多孔性樹脂フィルムの片面に、気相堆積法に従い、チタンを5〜80μg/cm2 付着せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿防水フィルムに係り、特に、アウトドアウェア、レインウェア、スキーウェア等のスポーツ用アウターウェアや、各種作業用衣服等の服地として有利に用いられ得る、軽くて薄い、保温性に優れた透湿防水フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アウトドアウェア、レインウェア、スキーウェア等のアウターウェアや、各種作業用衣服等には、一般に、軽量であること、薄いこと、蒸れないこと、動きやすいこと等が要求されることから、それら各種の衣服に用いられる服地には、軽量で、防水性及び透湿性に優れ、更には保温性にも優れたものが要求される。かかる要求に応えるべく、従来より様々な構成を有する服地が提案され、使用されている。
【0003】
例えば、裏地として起毛品を使用することにより、保温性を向上せしめた服地が知られているが、かかる服地は、透湿性及び防水性の点において不十分であるという問題があった。また、透湿性及び防水性を有する生地と、保温材としての金属付着不織布等の各種生地とを、縫合乃至は接着せしめてなる複合生地も使用されているが、従来の複合生地は肉厚なものが多く、上述の如きアウターウェア等の服地として採用し難いという問題があった。
【0004】
一方、透湿性及び防水性を有する生地に保温性を付与せしめる手法として、かかる生地の表面に、金属粉末等を分散してなる塗工液を塗布し、乾燥することにより塗工膜を形成せしめる手法が知られている。しかしながら、そのようにして得られる生地にあっても、その厚さが比較的厚くなるという問題があった。特に、近年、上述のアウターウェア等の服地として用いられる生地に対しては、より優れた機能性、具体的には、従来以上に軽量であり、透湿性、防水性及び保温性が求められているのであり、それら各機能を高いレベルで兼ね備えた生地の開発が望まれているのである。
【0005】
なお、特許文献1(特開平6-10262号公報)においてはエラストマー金属化生地及びその製造方法が、また、特許文献2(特許第3251694号公報)においては弾性金属化フィルム及びその製造方法が、各々、提案されている。しかしながら、それら特許文献にて開示の技術は、現在では広く一般的に知られ、使用されているものであり、また、それら特許文献においては、そこにおける金属化が生地やフィルムの透湿性及び防水性に与える影響について、何等明らかにされていないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-10262号公報
【特許文献2】特許第3251694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、透湿性及び防水性に優れていると共に保温性にも優れた、軽量な透湿防水フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明者等が、上述の課題を解決すべく透湿防水フィルムについて鋭意研究を重ねたところ、所定以上の透湿性及び防水性を有する多孔性樹脂フィルムに対して、気相堆積法により、所定量のチタンを付着せしめてなる樹脂フィルムにあっては、上述の課題を有利に解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。即ち、本発明は、透湿度が5000(g/m2 )・24hr以上であり、且つ耐水圧が500mmH2O 以上である多孔性樹脂フィルムの片面に、気相堆積法に従い、チタンを5〜80μg/cm2 付着せしめてなる透湿防水フィルムを、その要旨とするものである。
【0009】
なお、かかる本発明に従う透湿防水フィルムの好ましい態様の一つにおいては、前記気相堆積法がスパッタリング法である。
【0010】
また、本発明の透湿防水フィルムにおける好ましい態様の他の一つにおいては、前記多孔性樹脂フィルムが、厚さ:10〜100μmのポリウレタンフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に従う透湿防水フィルムにあっては、透湿度及び耐水圧がそれぞれ所定の値以上である多孔性樹脂フィルムの片面に、気相堆積法に従って所定量のチタンを付着せしめてなるものであるところから、チタンが付着される前の樹脂フィルムが有する透湿性及び防水性を損なうことなく、保温性が向上せしめられたものとなっているのである。
【0012】
また、本発明の透湿防水フィルムにおいては、チタンの付着量が極めて少量であることから、本発明に係る透湿防水フィルムと同程度の保温性を有する従来の生地と比較して、軽量であり、またその厚さも薄いものとなっているのである。
【0013】
そのような効果は、スパッタリング法にてチタンを付着せしめることによって、また、チタンを付着せしめる多孔性樹脂フィルムとして、厚さ:10〜100μmのポリウレタンフィルムを用いることにより、より有利に享受することが可能である。
【0014】
このように、本発明に係る透湿防水フィルムは、透湿性及び防水性に加えて、保温性においても非常に優れたものであることから、アウトドアウェア、レインウェア、スキーウェア等のスポーツ用アウターウェアや、各種作業用衣服等の服地として、有利に用いられ得るのである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、本発明に従う透湿防水フィルムを製造するに際しては、先ず、透湿度が5000(g/m2 )・24hr以上であり、且つ耐水圧が500mmH2O 以上である多孔性樹脂フィルムが準備されることとなる。
【0016】
ここで、本願明細書及び特許請求の範囲において、「透湿度[(g/m2 )・24hr]」とは、JIS−L−1099:1993「繊維製品の透湿度試験法」に規定される塩化カルシウム法(A−1法)に従い、恒温・恒湿装置内での載置時間を24時間とした場合に測定される透湿度を意味する。また、「耐水圧(mmH2O )」とは、JIS−L−1092:2009「繊維製品の防水性試験方法」に規定される耐水度試験のB法(高水圧法)に準じて測定された耐水圧:X’(kPa)を用いて、下記式(1)より換算されたX(mmH2O )を意味するものである。
X=X’×102.064・・・(1)
【0017】
本発明においては、上述の如く定義される透湿度及び耐水圧が所定の値以上、即ち、透湿度が5000(g/m2 )・24hr以上であり、且つ耐水圧が500mmH2O 以上である多孔性樹脂フィルムが、基材として用いられる。透湿度が5000(g/m2 )・24hr未満では十分な透湿性が発揮されず、また、耐水圧が500mmH2O 未満では十分な防水性が発揮され得ないからである。
【0018】
透湿度及び耐水圧がそれぞれ所定の値以上の多孔性樹脂フィルムであれば、本発明においては、如何なるものであっても使用することが可能である。また、多孔性フィルムを構成する樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルやポリテトラフルオロエチレン等を例示することができるが、それらの中でも、特に多孔性のポリウレタンフィルムが有利に用いられる。
【0019】
なお、そのような多孔性樹脂フィルムを製造するに際しては、従来より公知の各種手法を採用することが出来る。例えば、多孔性ポリウレタンフィルムの製造には、湿式コーティング製膜法による微多孔形成技術が有利に採用される。この湿式コーティング製膜法とは、ポリウレタンポリマーを溶媒に溶解し、その溶液を所定の基材の表面にコーティングした後、かかる基材を直ちに凝固液中に浸漬せしめて、皮膜(フィルム)を形成せしめる手法であり、凝固条件を適宜に選択することにより、微細な孔が多数開口してなる多孔性ポリウレタンフィルムを得る方法である。なお、ポリウレタンポリマーを溶解せしめる溶剤としては、ジメチルホルムアミドが有利に用いられる。
【0020】
本発明の透湿防水フィルムにおいて、その基材たる多孔性樹脂フィルムの厚さは、服地或いは服地用素材として要求される特性等に応じて、適宜に決定されることとなるが、一般には、10〜100μmとされる。多孔性樹脂フィルムの厚さが10μm未満の場合、最終的に得られる透湿防水フィルムにおいて、強度が不足する、テンションにより伸びが生じて寸法安定性に欠ける、後の工程での加工性が悪化して取扱いが困難となる等の問題が発生する恐れがある。一方、厚さが100μmを超える多孔性樹脂フィルムは生産性が悪く、そのために本発明の透湿防水フィルムが高価格になる恐れがある。
【0021】
上述の如き多孔性樹脂フィルムの片面に、気相堆積法に従ってチタンを付着せしめることにより、本発明に係る透湿防水フィルムが得られる。
【0022】
ここで、気相堆積法とは、気相中において、多孔性樹脂フィルムの表面に金属(本発明においてはチタン)の微粒子を付着せしめる方法であり、本発明においては、従来より公知の気相堆積法の何れをも採用することが可能である。具体的には、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等のスパッタリング法、電子ビーム蒸着等の真空蒸着法、イオンプレーティング法、低圧プラズマCVD法や大気圧プラズマCVD法等のCVD法等を、例示することが出来る。それら公知の気相堆積法の中でも、特に優れた耐久性が得られるとの観点から、スパッタリング法が有利に採用される。
【0023】
なお、各気相堆積法を実施する際の各種条件は、用いる装置等に応じて適宜に決定される。また、本発明の目的を阻害しない範囲において、チタン微粒子と多孔性樹脂フィルムとの間の密着性を向上させることを目的として、気相堆積法にてチタンを付着せしめる前に、多孔性樹脂フィルムの表面に、予め気相堆積法又は所定の化学処理(以下、前処理という)を施すことによりアンダーコートを付着させておくことも可能である。かかる前処理としては、コロナ処理、プラズマ処理やUV照射等を挙げることが出来る。
【0024】
そのような気相堆積法に従って、上述の多孔性樹脂フィルムの片面にチタンが付着せしめられることとなるが、その付着量は、5〜80μg/cm2 、好ましくは10〜35μg/cm2 とされる。チタンの付着量が少なすぎると、優れた保温性を発揮し得ない恐れがあり、その一方、チタンの付着量が多すぎると、基材たる多孔性樹脂フィルムが有する透湿性を著しく悪化させ、最終的に得られる透湿防水フィルムにおいて十分な透湿性を発揮しない恐れがあるからである。なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、チタンの付着量は、蛍光X線法に従って測定されたものである。
【0025】
そして、このようにして得られた透湿防水フィルムにあっては、透湿度及び耐水圧が所定の値以上である、透湿性及び防水性に優れた多孔性樹脂フィルムの片面に、所定量のチタンが付着せしめられて構成されているところから、多孔性樹脂フィルムが有する優れた透湿性及び防水性を損なうことなく、保温性が効果的に付与せしめられたものである。また、チタンの付着量も少量であることから、軽量なフィルムである。このため、本発明に従う透湿防水フィルムは、アウトドアウェア、レインウェア、スキーウェア等のスポーツ用アウターウェアや、各種作業用衣服等の服地や服地用素材として有利に用いられ得るのである。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0027】
なお、以下の実施例及び比較例において、「通気度(cm3/cm2・s)」は、JIS−L−1096:1999「一般織物試験法」に規定される「通気性 A法(フラジール形法)」に従って測定されたものである。
【0028】
また、「着用適性」については、以下の如くして評価した。即ち、先ず、製造したフィルムをナイロンタフタに点接着せしめ、ラミネートすることにより生地を作製した。かかる生地を用いてウインドブレーカーを縫製し、このウインドブレーカーを所定時間、被験者に着用してもらい、その際に感じた蒸れ感を以下に示す基準に従って評価した。
○:蒸れ感をほとんど感じなかった。
△:多少の蒸れ感を感じた。
×:著しい蒸れ感を感じた。
【0029】
さらに、「保温率(%)」とは、カトーテック株式会社製の精密迅速熱物性測定装置(タイプ:KES-F7)を用いた測定結果より、算出した。具体的には、チャンバー内に、室温より10℃高い温度を保つ熱源を設置し、かかる熱源の上に試料(フィルム)を載置し、試料上面(熱源と接する面と反対側の面)に、チャンバー上方よりファンモータにて外気を吹き付け、その際の熱損失(ΔB)を測定する。予め、熱源の上に試料を載置していない状態でチャンバー上方よりファンモータにて外気を吹き付け、その際の熱損失(ΔA)を測定しておき、ΔA及びΔBを用いて、下記式(2)より、保温率:Q(%)を算出した。
Q=[(ΔA−ΔB)/ΔA]×100・・・(2)
【0030】
−実施例1−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を調製し、この溶液を所定の基材(基布)上に塗布した。その後、直ちに基材(基布)を水中に浸漬せしめて、多孔性ポリウレタンフィルムとした。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が12000(g/m2 )・24hr、耐水圧が500mmH2O 、厚さが20μmであった。
【0031】
得られたフィルムを乾燥して、所定の水分率以下とした後、スパッタリング装置の密閉チャンバ内にセットし、チャンバ内を一旦、真空にした後にアルゴンガスを導入して、低圧アルゴンガス雰囲気とした。そして、直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(実施例1)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は35μg/cm2 であった。また、通気度は0cm3/cm2・sであり、防水性に優れていることが確認された。
【0032】
−実施例2−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液に添加する界面活性剤の種類を変更した以外は実施例1と同様の手順に従い、多孔性ポリウレタンフィルムを得た。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が9000(g/m2 )・24hr、耐水圧が1000mmH2O 、厚さが30μmであった。
【0033】
かかる多孔性ポリウレタンフィルムに対して、実施例1と同様に直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(実施例2)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は36μg/cm2 であった。また、通気度は0cm3/cm2・sであり、防水性に優れていることが確認された。
【0034】
−比較例1−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液に添加する界面活性剤の種類及びその添加量を変更した以外は実施例1と同様の手順に従い、多孔性ポリウレタンフィルムを得た。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が8000(g/m2 )・24hr、耐水圧が350mmH2O 、厚さが25μmであった。
【0035】
かかる多孔性ポリウレタンフィルムに対して、実施例1と同様に直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(比較例1)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は34μg/cm2 であった。また、通気度は0.5cm3/cm2・sであり、防水性に劣るものであることが確認された。
【0036】
−実施例3−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を調製し、この溶液を所定の基材(基布)上に塗布した。その後、直ちに基材(基布)を水中に浸漬せしめて、多孔性ポリウレタンフィルムとした。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が5000(g/m2 )・24hr、耐水圧が15000mmH2O 、厚さが28μmであった。
【0037】
得られたフィルムを乾燥して、所定の水分率以下とした後、スパッタリング装置の密閉チャンバ内にセットし、チャンバ内を一旦、真空にした後にアルゴンガスを導入して、低圧アルゴンガス雰囲気とした。そして、直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(実施例3)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は36μg/cm2 であった。また、かかるフィルムを用いて縫製したウインドブレーカーについて、着用適性を評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0038】
−実施例4−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液に添加する界面活性剤の種類及びその添加量を変更した以外は実施例3と同様の手順に従い、多孔性ポリウレタンフィルムを得た。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が7000(g/m2 )・24hr、耐水圧が3500mmH2O 、厚さが25μmであった。
【0039】
かかる多孔性ポリウレタンフィルムに対して、実施例3と同様に直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(実施例4)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は36μg/cm2 であった。また、かかるフィルムを用いて縫製したウインドブレーカーについて、着用適性を評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0040】
−比較例2−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液に添加する界面活性剤の種類及びその添加量を変更した以外は実施例3と同様の手順に従い、多孔性ポリウレタンフィルムを得た。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が3000(g/m2 )・24hr、耐水圧が1500mmH2O 、厚さが28μmであった。
【0041】
かかる多孔性ポリウレタンフィルムに対して、実施例3と同様に直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルム(比較例2)を得た。得られたフィルムにおいて、チタンの付着量は35μg/cm2 であった。また、かかるフィルムを用いて縫製したウインドブレーカーについて、着用適性を評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明に従う透湿防湿フィルム(実施例3、4)を用いて縫製されたウインドブレーカーにあっては、蒸れ感が非常に少なく、着用適性に優れていることが確認された。
【0044】
−実施例5〜7、比較例3〜5−
ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を調製し、この溶液を所定の基材(基布)上に塗布した。その後、直ちに基材(基布)を水中に浸漬せしめて、多孔性ポリウレタンフィルムとした。得られた多孔性ポリウレタンフィルムは、透湿度が16608(g/m2 )・24hr、耐水圧が2140mmH2O 、厚さが15μmであった。
【0045】
得られた多孔性ポリウレタンフィルムを所定の水分率以下とした後、スパッタリング装置の密閉チャンバ内にセットし、チャンバ内を一旦、真空にした後にアルゴンガスを導入して、低圧アルゴンガス雰囲気とした。そして、直流スパッタリング法を実施することにより、多孔性ポリウレタンフィルムの表面にチタンが付着せしめられてなるフィルムであって付着量が異なるものを5種類(実施例5〜7、比較例4、5)、得た。なお、表面にチタンを付着せしめていない多孔性ポリウレタンフィルムを比較例3とした。それら6種類のフィルムについて、透湿度、耐水圧、通気度及び保温率を測定した。各測定結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
かかる表2の結果からも明らかなように、本発明に従うフィルム(実施例5〜7)にあっては、基材たる多孔性ポリウレタンフィルムが有する優れた透湿性及び防水性を損なうことなく、保温性が有利に向上せしめられたものであることが認められたのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿度が5000(g/m2 )・24hr以上であり、且つ耐水圧が500mmH2O 以上である多孔性樹脂フィルムの片面に、気相堆積法に従い、チタンを5〜80μg/cm2 付着せしめてなる透湿防水フィルム。
【請求項2】
前記気相堆積法がスパッタリング法である請求項1に記載の透湿防水フィルム。
【請求項3】
前記多孔性樹脂フィルムが、厚さ:10〜100μmのポリウレタンフィルムである請求項1又は請求項2に記載の透湿防水フィルム。


【公開番号】特開2011−11349(P2011−11349A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154853(P2009−154853)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(591158335)株式会社鈴寅 (20)
【Fターム(参考)】