説明

保温構造

【課題】断熱性を効果的に維持できる保温構造を提供する。
【解決手段】保温構造は、被保温体10と、前記被保温体10を覆う第一の保温材20と、前記第一の保温材20を覆う、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた第二の保温材30と、を有する。前記被保温体は、内部に流体が流通する配管であり、前記第一の保温材は、前記配管の外周を覆い、前記第二の保温材は、前記第一の保温材の外周を覆う。前記第二の保温材は、断熱性を有する基材層と、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた樹脂フィルム層と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温構造に関し、特に、保温構造における断熱性の維持に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、配管の外周を保温材で覆い、さらに当該保温材の外周を金属板からなる保護カバーで覆うことが記載されている。
【特許文献1】特開平8−19830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、例えば、雨によって保護カバーの継ぎ目から水が浸入した場合には、保温材が水を含み、その結果、当該保温材の断熱性が低下することがあった。そして、この場合、水を含んだ保温材を、乾燥した新たな保温材と交換する必要があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、断熱性を効果的に維持できる保温構造を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る保温構造は、被保温体と、前記被保温体を覆う第一の保温材と、前記第一の保温材を覆う、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた第二の保温材と、を有することを特徴とする。本発明によれば、断熱性を効果的に維持できる保温構造を提供することができる。
【0006】
また、前記被保温体は、内部に流体が流通する配管であり、前記第一の保温材は、前記配管の外周を覆い、前記第二の保温材は、前記第一の保温材の外周を覆うこととしてもよい。こうすれば、断熱性を効果的に維持できる配管構造を提供することができる。また、前記第二の保温材は、基材層と、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた樹脂フィルム層とからなることとしてもよい。こうすれば、保温構造の断熱性をより効果的に維持することができる。さらに、前記配管構造は、前記第二の保温材の外周を覆う金属性の外装材を有する構造でることとしても良い。こうすれば、断熱性を効果的に維持できるとともに、前記第一の保温材を物理的に保護することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の一実施形態に係る保温構造(以下、「本構造」という。)について説明する。本実施形態においては、本構造が、保温の対象となる構造体である被保温体として配管を有する配管構造である例について主に説明する。
【0008】
図1は、本構造1の一例についての斜視図であり、図2は、当該本構造1の断面図である。図1及び図2に示すように、本構造1は、内部に流体が流通する配管10と、当該配管10の外周を覆う第一の保温材20と、当該第一の保温材20の外周を覆う第二の保温材30と、を有している。なお、図1においては、説明の便宜のために、配管10の外周を覆う第一の保温材20及び第二の保温材30の一部を省略して、当該配管10、第一の保温材20及び第二の保温材30をそれぞれ露出させて図示している。
【0009】
配管10は、本構造1が配置される環境の外気温度より高い温度の液体又は気体を輸送するために設置されている。この配管10は、例えば、炭素鋼やステンレス等の金属製である。配管10の内部に形成された中空部10aには、輸送すべき液体又は気体が流通する。
【0010】
第一の保温材20は、配管10の外気による冷却を抑制するために設けられた断熱材である。第一の保温材20として用いることのできる断熱材は、目的に応じた適切な断熱性を有する部材であれば特に限られないが、例えば、けい酸カルシウム(ゾノライト系けい酸カルシウム等)、パーライト等の断熱性無機多孔質成形体や、グラスウール、ロックウール等の断熱性無機繊維体を好ましく用いることができる。また、第一の保温材20としては、例えば、配管10への施工に先立って、円周方向において複数に分割可能な円筒成形体として形成されたものを用いることもできる。
【0011】
また、第一の保温材20としては、その撥水性を高める処理が施された多孔質成形体又は無機繊維体を用いることができる。ただし、このような撥水化処理によって保温材20に非透水性を付与することはできず、当該保温材20は透水性を有するものとなる。
【0012】
第二の保温材30は、断熱性、水蒸気透過性及び非透水性を備えている。すなわち、第二の保温材30は、第一の保温材20の内部の温度を上昇させることのできる断熱性を有している。
【0013】
具体的に、第一の保温材20においては、配管10側の表面(図2に示す、配管10の径方向内側の内面21)の温度に比べて、反対側の表面(図2に示す、配管10の径方向外側の外面22)の温度は低くなる。この点、第一の保温材20の外周(すなわち外面22)を第二の保温材30で覆うことにより、当該第二の保温材30で覆わない場合に比べて、当該第一の保温材20の外面22の温度を上昇させることができる。この結果、第一の保温材20において、外面22付近の温度と内面21付近の温度との差が低減されて、当該第一の保温材20の内部の全域において温度を上昇させることができる。
【0014】
また、第二の保温材30は、第一の保温材20で発生した水蒸気(すなわち、気体状態の水)が透過することのできる水蒸気透過性も有している。さらに、第二の保温材30は、強い雨や風に晒された場合であっても液体状の水が透過することのできない非透水性をも有している。
【0015】
第二の保温材30としては、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた断熱材を用いることができ、例えば、所定の厚みを有するPTFEやPFAからなるシート状体を好ましく用いることができる。
【0016】
また、第二の保温材は、基材層と樹脂層とからなることとすることもできる。基材層に用いることのできる部材としては、目的に応じた適切な断熱性を有する部材であれば特に限られないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維など樹脂繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維等のセラミックス繊維からなる不織布や織布、または軟質ウレタンフォームやフェノールフォーム等の多孔質成形体のシート状体を用いることができる。
【0017】
樹脂層に用いられる部材としては、例えば、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、
ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン等のフィルム状物が用いられるが、水蒸気透過性と非透水性を有する樹脂フィルムであれば特に限られない。
【0018】
また、第二の保温材は、基材層と樹脂層との一体成形したものを用いることもできる。
この場合、一体成形する方法としては、熱融着性の粉末接着剤を基材層と樹脂層との間に適度に散布し、加熱・圧着する方法を用いることができる。
【0019】
上記一体成形に用いられる樹脂粉末としては、目的に応じた適切な熱融着性を有する樹脂であれば特に限られないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。中でもポリエチレン系樹脂が低価格、低融点のため好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのホモポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂などのエチレン系共重合樹脂、およびこれらのブレンド物などを用いることができる。
【0020】
その他一体成形する方法としては、スプレー状の接着剤で基材層と樹脂層とを接着させる方法も用いることができる。
【0021】
スプレー状の接着剤に用いられる樹脂としては、目的に応じた適切な接着性を有する樹脂であれば特に限られないが、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ウレタン系、アクリル系の樹脂が用いられる。
【0022】
また、第二の保温材30としては、既設の配管構造1の第一の保温材20よりも断熱性が高いものを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、その熱伝導率が、第一の保温材20の熱伝導率よりも低い第二の保温材30を好ましく用いることができる。
【0023】
また、第二の保温材30は、適度な可撓性を有することが好ましい。すなわち、第二の保温材30としては、第一の保温材20の外周に沿って巻き付けることのできる柔軟性を備えたシート状体を用いることができる。
【0024】
本構造1においては、その断熱性を効果的に維持することができる。すなわち、例えば、第一の保温材20が上述したような多孔質成形体や無機繊維体である場合、本構造1の外部から当該第一の保温材20に水が浸入すると、当該第一の保温材20が水を保持してしまい、その結果、当該第一の保温材20の断熱性が低下することとなる。
【0025】
これに対し、本構造1においては、最外層を構成する第二の保温材30が非透水性を有しているため、例えば、本構造1が雨や雪に晒された場合においても、本構造1の内部に水が浸入して第一の保温材20に水が含まれることを効果的に防止することができる。
【0026】
したがって、第二の保温材30で第一の保温材20を被覆することによって、当該第一の保温材20の断熱性を効果的に維持することができる。もちろん、第二の保温材20は、それ自身が非透水性であるため、その断熱性を効果的に維持することができる。
【0027】
また、本構造1においては、第一の保温材20の断熱性が低下した場合であっても、その断熱性を効果的に回復させることができる。すなわち、例えば、第一の保温材20の外周に、シート状の第二の保温材30を巻き付けることにより本構造1を製造した場合には、当該第二の保温材30の一部に継ぎ目(不図示)が形成されることとなる。
【0028】
この場合、本構造1に対して雨や雪が強く吹き付けられることにより、第二の保温材30の継ぎ目の隙間から、当該第二の保温材30と第一の保温材20との間に水が浸入し、当該第一の保温材20が水を含むこととなる場合がある。
【0029】
しかしながら、本構造1においては、第一の保温材20から水を効果的に排出させることができる。すなわち、上述のとおり、本構造1においては、第一の保温材20は第二の保温材30によって覆われているため、当該第一の保温材20の内部の温度は、内面21から外面22までの全範囲において、配管10の温度に近い範囲で維持することができる。したがって、第一の保温材20に水が浸入した場合には、この水を当該第一の保温材20の内部で効果的に蒸発させることができる。
【0030】
そして、第一の保温材20を覆う第二の保温材30は、気化した水が透過できる水蒸気透過性を有しているため、第一の保温材20に含まれていた水の蒸発により発生した水蒸気は、当該第二の保温材30を透過して、本構造1の外部に効果的に排出される。すなわち、第一の保温材20の内部で発生した水蒸気は、第二の保温材30の当該第一の保温材20側の表面(図2に示す内面31)から、当該第二の保温材30の外気中に露出した表面(図2に示す外面32)まで、当該第二の保温材30の内部を通過して、当該外気中に排出される。
【0031】
このように、本構造1においては、断熱性、水蒸気透過性及び非透水性を備えた第二の保温材30により第一の保温材20が覆われているため、当該第一の保温材20に浸入した水を蒸発させるとともに、当該第二の保温材30を介して排出し、当該第一の保温材20を再び乾燥させることができる。すなわち、本構造1は、断熱性の自己回復能力を備えている。
【0032】
また、本構造1においては、第二の保温材30の外周をさらに金属製の外装材で覆うこととしてもよい。図3は、この場合の本構造1の一例についての斜視図であり、図4は、当該本構造1の断面図である。
【0033】
図3及び図4に示す例において、本構造1は、配管10、第一の保温材20、及び第二の保温材30に加えて、さらに当該第二の保温材30の外周を覆う金属製の外装材40を有している。
【0034】
したがって、この本構造1においては、第二の保温材30と外装材40とによって第一の保温材20を被覆するため、外部から当該第一の保温材20に水が浸入することをより効果的に防止することができる。
【0035】
また、本構造1は、最外層として金属製の外装材40を有することによって、その力学的強度を向上させることができる。このため、例えば、作業者が本構造1の上(すなわち、外装材40の上)に乗って所定の作業を行うこともできる。
【0036】
なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。すなわち、本発明に係る保温構造は、上述したような配管構造に限られない。例えば、保温材で覆われた、横型又は縦型の既設の機器の胴体部や境部もまた、本方法による補修の対象となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る保温構造の一例についての斜視図である。
【図2】図1に示す保温構造の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る保温構造の他の例についての斜視図である。
【図4】図3に示す保温構造の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 保温構造、10 配管、10a 中空部、20 第一の保温材、21 第一の保温材の内面、22 第一の保温材の外面、30 第二の保温材、31 第二の保温材の内面、32 第二の保温材の外面、40 外装材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保温体と、
前記被保温体を覆う第一の保温材と、
前記第一の保温材を覆う、水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた第二の保温材と、
を有することを特徴とする保温構造。
【請求項2】
前記被保温体は、内部に流体が流通する配管であり、
前記第一の保温材は、前記配管の外周を覆い、
前記第二の保温材は、前記第一の保温材の外周を覆う
ことを特徴とする請求項1に記載された保温構造。
【請求項3】
前記第二の保温材は、断熱性を有する基材層と、
水蒸気透過性と非透水性とを兼ね備えた樹脂フィルム層と、
からなることを特徴とする請求項1または2に記載された保温構造。
【請求項4】
前記第二の保温材は、前記基材層と、前記樹脂フィルム層とが、
一体に成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載された保温構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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