説明

保温鍋

【課題】ユーザーの関与を必要としない保温鍋を提供する。
【解決手段】保温鍋100は、鍋本体110と、鍋本体の底面を覆う保温カバー部材130と、鍋本体の底面に対して回動可能である開口開閉部材140と、バイメタル150と、からなる。保温カバー部材には第一開口部135が形成されており、開口開閉部材には第二開口部141が形成されている。バイメタル150は、所定の温度未満の温度においては、第二開口部が前記第一開口部と重なり合うような位置に開口開閉部材を位置し、所定の温度以上の温度においては、第一開口部が開口開閉部材により遮蔽されるような位置に前記開口開閉部材を回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱を停止した後も保温機能を有する保温鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱を停止した後も保温機能を有する保温鍋については、これまでに種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、実開平3−10817号公報(特許文献1)は、外鍋と内鍋からなる二重鍋であって、外鍋と内鍋との間に形状記憶合金が配置され、この形状記憶合金は所定の温度に加熱されたときに、内鍋を上方に押し上げる形状を記憶していることを特徴とする二重鍋を提案している。
【0004】
この二重鍋の内鍋に上方から外力を加えると、形状記憶合金が変形して外鍋と内鍋との間の間隔が小さくなる。加熱されるにつれて形状記憶合金は元の形状に戻り、外鍋と内鍋との間の間隔は元の間隔に戻る。
【0005】
この二重鍋を用いて料理を行う場合、当初、内鍋に上方から外力を加えることにより、形状記憶合金を変形させ、外鍋と内鍋との間の間隔を小さくしておく。このため、初期状態においては、外鍋と内鍋との間の間隔が小さいため、内鍋に熱が十分に伝わり、料理を行うことができる。
【0006】
料理が終了する頃には、形状記憶合金が元の形状に戻り、外鍋と内鍋との間の間隔は元の間隔に戻る。このため、熱源からの熱は内鍋に伝わりにくくなり、料理を必要以上に加熱することを防止することができるとともに、外鍋と内鍋との間の空間に蓄えられた熱量により、料理を保温することができる。
【0007】
また、特開平3−60611号公報(特許文献2)は、鍋本体を外面部材と内面部材とからなる二重構造とし、両部材間の空間内に両部材よりも融点の低い熱媒体材料を封入したことを特徴とする調理用加熱器具を提案している。
【0008】
この調理用加熱器具においては、熱媒体材料が多量の熱を蓄積するため、鍋本体に入れられた調理品を保温することができるようになっている。
【特許文献1】実開平3−10817号公報(第1図、第2図)
【特許文献2】特開平3−60611号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された二重鍋においては、料理を開始する前に、ユーザーが二重鍋の操作を行う必要があった、すなわち、内鍋を上方から押して形状記憶合金を変形させておく必要があった。仮に、最初に内鍋を上方から押して形状記憶合金を変形させることを失念してしまったような場合には、外鍋と内鍋との間の間隔は大きいままに維持され、内鍋を加熱する効率が著しく低下するという問題点があった。
【0010】
また、特許文献2に開示された調理用加熱器具においては、熱媒体材料という余分な材料を必要とするという欠点があった。さらに、鍋本体を外面部材と内面部材とからなる二重構造とし、両部材間の空間内に熱媒体材料を封入するという構造は極めて製作が難しい構造であり、調理用加熱器具の製造効率を著しく低下させるという問題点もあった。
【0011】
本発明はこのような従来の鍋における問題点に鑑みてなされたものであり、ユーザーの関与を必要とせず、さらに、製作が難しい構造を排除した保温鍋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、鍋本体(110)と、前記鍋本体(110)の底面(111)との間に前記鍋本体(110)の高さ方向における間隔(134)を設けた状態で前記底面(111)を覆う保温カバー部材(130)と、前記底面(111)に対して回動可能である開口開閉部材(140)と、温度に応じて形状が変化する形状変化部材(150)と、からなる保温鍋(100)であって、前記保温カバー部材(130)には第一開口部(135)が形成されており、前記開口開閉部材(140)には第二開口部(141)が形成されており、前記形状変化部材(150)は、所定の温度未満の温度においては、前記第二開口部(141)が前記第一開口部(135)と重なり合うような位置に前記開口開閉部材(140)を位置し、前記所定の温度以上の温度においては、前記第一開口部(135)が前記開口開閉部材(140)により遮蔽されるような位置に前記開口開閉部材(140)を回動させるものである保温鍋(100)を提供する。
【0014】
例えば、前記形状変化部材(150)は一端を中心として他端が回動するバイメタル(150)からなり、前記バイメタル(150)の前記一端は前記鍋本体(110)に、前記他端は前記開口開閉部材(140)にそれぞれ取り付けられる。
【0015】
あるいは、前記形状変化部材(150)は形状記憶合金からなるものとすることもできる。
【0016】
前記保温カバー部材(130)は複数の第一開口部(135)を有し、前記開口開閉部材(140)は前記第一開口部(135)と同数の第二開口部(141)を有することが好ましい。
【0017】
例えば、前記第一開口部(135)及び前記第二開口部(141)は前記鍋本体(110)の前記底面の中心を中心として半径方向に延びる形状を有している。
【発明の効果】
【0018】
第一に、従来の保温鍋(特許文献1)はユーザーの関与を必要としていたが、本発明に係る保温鍋はユーザーの関与は全く必要としない。本発明に係る保温鍋を加熱すれば、形状変化部材の温度に応じて、第一開口部と第二開口部とが相互に重なり合い、あるいは、相互に遮蔽し合うため、ユーザーとは無関係に、すなわち、ユーザーの関与がなくても、被調理品の保温が行われる。
【0019】
第二に、従来の保温鍋(特許文献2)は二つの部材の間に熱媒体部材を封入するという製作が難しい構造を有していたが、本発明に係る保温鍋はそのような構造を有することなく、被調理品の保温を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る保温鍋100の底面図、図2は図1のA−A線における断面図である。
【0021】
本実施形態に係る保温鍋100は、ステンレス製の鍋本体110と、鍋本体110に取り付けられた把っ手120と、保温カバー部材130と、開口開閉部材140と、バイメタル150と、から構成されている。
【0022】
図2に示すように、保温カバー部材130は、円形の底面131と、その底面131の周縁から直立したリング状の側壁132と、からなる。
【0023】
鍋本体110の底面111には、底面111から下方に突出している柱状の4個の突出部112が形成されており、保温カバー部材130はその底面131においてネジ133でこれらの突出部112にネジ止めされることにより、鍋本体110に対して固定されている。
【0024】
このため、鍋本体110の底面111と保温カバー部材130の底面131との間には、鍋本体110の高さ方向において保温カバー部材130の側壁132の高さにほぼ等しい高さの空間134が形成されている。
【0025】
また、図1に示すように、保温カバー部材130の底面131には複数個の第一開口部135が形成されている。第一開口部135は、保温カバー部材130に対して鉛直方向から見たときに、鍋本体110の底面111の中心を中心として半径方向に延びる水滴型の形状をなしている。
【0026】
図2に示すように、開口開閉部材140は、空間134の内部において、保温カバー部材130の底面131に接して、あるいは、保温カバー部材130の底面131の直上に配置されている。
【0027】
開口開閉部材140は円形のプレートからなり、後述するように、バイメタル150の一端に取り付けられており、鍋本体110の底面111の中心を中心として回動可能であるように形成されている。
【0028】
開口開閉部材140には第一開口部135と同数個の第二開口部141が形成されている。第二開口部141は、開口開閉部材140に対して鉛直方向から見たときに、第一開口部135と同心であるとともに、第一開口部135と同一の形状をなしており、かつ、第一開口部135と同じように配置されている。このため、第一開口部135と第二開口部141とが相互に重なり合った場合には、鍋本体110の底面111と保温カバー部材130との間に形成された空間134は保温鍋110の外部と連通するようになっている。
【0029】
図1は、第一開口部135と第二開口部141とが相互に重なり合った状態を示している。
【0030】
さらに、相互に隣接する第二開口部141の間の領域は第一開口部135を覆い隠すのに十分な広さを有しており、開口開閉部材140が保温カバー部材130に対して回動すると、開口開閉部材140の第二開口部141以外の領域によって、保温カバー部材130の第一開口部135が覆い隠される。
【0031】
図3は、開口開閉部材140が保温カバー部材130に対して図1に示す位置から回動し、第一開口部135が開口開閉部材140の第二開口部141以外の領域によって覆い隠された状態を示している。
【0032】
図1に示すように、バイメタル150は渦巻き形状をなしており、予め定まったある温度以上の温度になると、渦巻きの中心近くに位置する一端を中心として、他端が所定の角度θ(図3参照)だけ回動する。
【0033】
図2に示すように、鍋本体110の底面111の中心には、下方に突出する突出部112が形成されており、バイメタル150の渦巻きの中心近くに位置する一端は突出部112に固定されている。
【0034】
また、図1及び図2に示すように、開口開閉部材140には任意の位置において上方に突出する突出部142が形成されており、バイメタル150の他端は突出部142に固定されている。
【0035】
なお、突出部142の位置は、バイメタル150の渦の巻き数、必要な開口開閉部材140の回動角度(θ)、バイメタル150の伸縮量などの様々なパラメータに応じて、決定される。
【0036】
バイメタル150は、所定の温度(例えば、摂氏100度)未満の温度においては、伸縮し、その所定の温度以上の温度においては、伸長し、他端(開口開閉部材140に固定されている端部)が一端(鍋本体110に固定されている端部)に対して角度θだけ回動するように形成されている。
【0037】
このため、バイメタル150は、所定の温度(例えば、摂氏100度)未満の温度においては、第二開口部141が第一開口部135と重なり合うような位置(図1に示す位置)に開口開閉部材140を位置し、所定の温度以上の温度においては、開口開閉部材140を角度θだけ回動させる。この開口開閉部材140の角度θの回動により、第一開口部135は開口開閉部材140(すなわち、隣接する第二開口部141の間の領域)により遮蔽される。
【0038】
以上のような構造を有する本実施形態に係る保温鍋100は以下のように用いられる。
【0039】
まず、鍋本体110に被調理品を入れ、保温鍋100を底面111の側から加熱する。
【0040】
バイメタル150の温度が所定の温度(例えば、摂氏100度)未満であるときは、バイメタル150は収縮状態にあるため、開口開閉部材140は回動せず、このため、第二開口部141は第一開口部135と重なり合うような位置(図1に示す位置)にある。
【0041】
このため、熱源から発せられる熱は第一開口部135及び第二開口部141の双方を通過して空間134の内部に達し、鍋本体110をその底面111を介して加熱する。
【0042】
バイメタル150の温度が所定の温度(例えば、摂氏100度)に達すると、バイメタル150は伸長を開始し、このため、開口開閉部材140は回動する。バイメタル150が全伸長を終了した時点において、開口開閉部材140は角度θだけ回動している。この結果、図3に示すように、保温カバー部材130の第一開口部135は開口開閉部材140(すなわち、隣接する第二開口部141の間の領域)により遮蔽される。
【0043】
このため、既に空間134の内部に進入している熱がそのまま空間134の内部に蓄積されることになり、鍋本体110を保熱する。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る保温鍋100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0045】
第一に、従来の保温鍋(特許文献1)はユーザーの関与を必要としていたが、本実施形態に係る保温鍋100はユーザーの関与は全く必要としない。本実施形態に係る保温鍋100を加熱すれば、バイメタル150の温度に応じて、第一開口部135と第二開口部141とが相互に重なり合い、あるいは、相互に遮蔽し合うため、ユーザーから独立して、被調理品の保温が行われる。
【0046】
第二に、従来の保温鍋(特許文献2)は二つの部材の間に熱媒体部材を封入するという製作が難しい構造を有していたが、本実施形態に係る保温鍋100はそのような構造を有することなく、被調理品の保温を行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る保温鍋100の構造は上述の構造に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、本実施形態に係る保温鍋100においては、把っ手120は鍋本体110に固定的に取り付けられているが、把っ手120に代えて、フック式の把っ手のように容易に取り外し可能な把っ手を用いることも可能である。
【0049】
また、本実施形態に係る保温鍋100においては、バイメタル150を用いて開口開閉部材140の回動の制御を行ったが、バイメタル150以外の部材を用いることも可能である。温度に応じて形状が変化する形状変化部材であれば、その部材をバイメタル150に代えて用いることができる。例えば、温度に応じて形状が変化する形状記憶合金をバイメタル150の代わりに用いることも可能である。
【0050】
本実施形態に係る保温鍋100においては、保温カバー部材130は複数個の第一開口部135を有するものとして形成されているが、第一開口部135の個数は任意であり、1個とすることも可能である。例えば、第一開口部135の形状を1個の半円形状とし、同じく半円形状の第二開口部141が形成されている開口開閉部材140を180度回動させることにより、第一開口部135の開閉を行うこともできる。
【0051】
また、本実施形態に係る保温鍋100においては、第二開口部141の個数は第一開口部135の個数と同一に設定されているが、そのようにすることは必ずしも必要ではない。第二開口部141の個数は第一開口部135の個数よりも多くてもよく、あるいは、少なくすることも可能である。
【0052】
さらに、第一開口部135及び第二開口部141の形状も本実施形態における形状に限定されるものではなく、任意の形状を採用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る保温鍋の底面図(第一開口部と第二開口部とが重なり合った状態)である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る保温鍋の部分的な底面図(第一開口部と第二開口部とが重なり合っていない状態)である。
【符号の説明】
【0054】
100 本発明の一実施形態に係る保温鍋
110 鍋本体
111 鍋本体の底面
112 突出部
120 把っ手
130 保温カバー部材
131 保温カバー部材の底面
132 保温カバー部材の側壁
133 ネジ
134 空間
135 第一開口部
140 開口開閉部材
141 第二開口部
142 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体と、
前記鍋本体の底面との間に前記鍋本体の高さ方向における間隔を設けた状態で前記底面を覆う保温カバー部材と、
前記底面に対して回動可能である開口開閉部材と、
温度に応じて形状が変化する形状変化部材と、
からなる保温鍋であって、
前記保温カバー部材には第一開口部が形成されており、
前記開口開閉部材には第二開口部が形成されており、
前記形状変化部材は、所定の温度未満の温度においては、前記第二開口部が前記第一開口部と重なり合うような位置に前記開口開閉部材を位置し、前記所定の温度以上の温度においては、前記第一開口部が前記開口開閉部材により遮蔽されるような位置に前記開口開閉部材を回動させるものである保温鍋。
【請求項2】
前記形状変化部材は一端を中心として他端が回動するバイメタルからなり、前記バイメタルの前記一端は前記鍋本体に、前記他端は前記開口開閉部材にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の保温鍋。
【請求項3】
前記保温カバー部材は複数の第一開口部を有し、前記開口開閉部材は前記第一開口部と同数の第二開口部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の保温鍋。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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