説明

保湿マスク

【課題】確実に喉の保湿をすることができ、例えば睡眠時のような長時間使用でもトラブルが生じない保湿マスクを提供する。
【解決手段】マスク本体2が通気性のシート状素材から形成され、口と対面する領域Aの左右部に、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口4が設けられ、上記両第1息抜き開口4の間の口と対面する領域Aには、息抜き用の穴や開口が設けられていない。これにより、装着した状態で、口の前面は、通気性のシート状素材から形成されたマスク本体2で覆われるため、呼気がマスク内に充満してその湿気により喉の乾燥が防止されて保湿される。また、吸気の際には上記第1息抜き開口4から空気が自然に導入され、息苦しさを全く感じず、長時間使用による保湿性能の低下の心配もない。したがって、例えば睡眠中であっても、無意識に外してしまうトラブルが避けられ、確実に喉を保湿して守ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鼻炎時等のように口呼吸となってしまうときに装着することにより喉の乾燥を防止する保湿マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鼻炎や花粉症のときのように、鼻での呼吸がしづらいときは、どうしても口で呼吸してしまうこととなる。このような口呼吸となりやすいとき、起きているときであれば、適宜水分を摂取したり吸入器を用いたりして喉を湿らせることができるが、睡眠時にはそのようにはいかず、どうしても喉が乾燥して痛めやすいという問題がある。
【0003】
このような喉の乾燥を防止するマスクとして、例えば、下記の特許文献1および2に示すものが開示されている。
【0004】
上記特許文献1に記載の加湿マスクは、内マスク半体と外マスク半体の2重構造とし、内マスク半体および外マスク半体の鼻孔や口に対応する部分に呼吸孔をあけ、上記呼吸孔の部分における内マスク半体と外マスク半体の間に、水分を含浸させた保水性の通気シートを挟んで構成したものである。
【0005】
上記特許文献2に記載のマスクは、折畳可能な嘴状のカップ体に形成され、カップ体における鼻孔や口に対面する頂部に、フィルタおよび小孔を形成するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−262161号公報
【特許文献2】特開平6−335535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の加湿マスクでは、水分を含浸させた保水性の通気シートを挟むことにより加湿性能をもたせたものである。このため、保水のための水分があるあいだは、どうしても通気性が悪く、息苦しくなりやすいという問題がある。したがって、睡眠中、無意識のうちに外してしまい、結局喉の保護ができないという問題が生じる。また、水分が残っているあいだは加湿することができるものの、通気シートが乾燥してしまうと、加湿性能が得られない。加えて、鼻孔や口に対応する部分に呼吸孔があるため、通気シートが乾いてしまうと、呼吸孔から呼気が逃げてしまうため、呼気が含む水蒸気による保湿効果もあまり期待できない。このため、外してしまうことがなくても、睡眠のような長時間使用の間に通気シートが乾いてしまい、結局喉の保護ができないという問題が生じる。さらに、内マスク半体と外マスク半体の2重構造としたうえ、通気シートを挟むという複雑な構造を呈しており、製造コストを引き上げてしまうというのも問題視される。
【0008】
上記特許文献2に記載のマスクは、鼻孔や口に対面する頂部に小孔が形成されているため、呼吸孔から呼気が逃げてしまうため、呼気が含む水蒸気による保湿効果があまり期待できず、結局喉の保護効果が低いことが問題視される。さらに、折畳可能な嘴状のカップ体に形成したうえ、フィルタを取り付けるなど、加工が複雑で、製造コストを引き上げてしまうという問題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、確実に喉の保湿をすることができ、例えば睡眠時のような長時間使用でもトラブルが生じない保湿マスクを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の保湿マスクは、マスク本体が通気性のシート状素材から形成され、口と対面する領域の左右部に、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口が設けられ、上記両第1息抜き開口の間の口と対面する領域には、息抜き用の穴や開口が設けられていないことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保湿マスクは、マスク本体が通気性のシート状素材から形成され、口と対面する領域には、息抜き用の穴や開口が設けられていないため、装着した状態で、口の前面は、通気性のシート状素材から形成されたマスク本体で覆われるため、呼気がマスク内に充満してその湿気により喉の乾燥が防止されて保湿される。
一方、口と対面する領域の左右部には、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口が設けられていることから、吸気の際には上記第1息抜き開口から空気が自然に導入され、息苦しさを全く感じない。また、長時間使用による保湿性能の低下の心配もない。したがって、例えば睡眠中であっても、無意識に外してしまうようなトラブルが避けられ、確実に喉を保湿して守ることができる。
また、老年期においては間接の動きが悪くなり、開口状態で口呼吸することが多くなる傾向にある。このような口呼吸によって、老齢者の口腔内は乾燥して唾液による自浄作用が低下し、粘膜に細菌が定着しやすく、増殖してしまうことになる。このように口腔内の細菌が増殖すると、誤嚥によって高濃度の菌が肺に転移し、誤嚥性肺炎を引き起こすこととなる。本発明の保湿マスクは、口腔内の乾燥を有効に防止し、上述した誤嚥性肺炎のような老齢者の二次的発病を有効に防止することができる。
【0012】
本発明において、上記両第1息抜き開口の口と対面する領域側に、上記第1息抜き開口に沿って上下に延びる第1形状保持部材が取り付けられている場合には、
上記第1形状保持部材で口と対面する領域の両側の形状を保持することにより、マスク本体と口との直接接触を有効に防止し、使用感の悪化を防ぐとともに、第1息抜き開口が塞がって息苦しくなるのが防止される。これにより、無意識に外してしまうことが有効に防止される。さらに、マスク本体を清潔に保つこともできる。
【0013】
本発明において、上記両第1息抜き開口の間の、口と対面する領域の上部に、左右に細長く延びる第2息抜き開口が設けられている場合には、
鼻での呼吸を行う際に、第2息抜き開口から空気が自然に導入され、息苦しさを全く感じない。したがって、例えば睡眠中であっても、無意識に外してしまうようなトラブルが避けられ、確実に喉を保湿して守ることができる。
この場合において、上記第1形状保持部材で口と対面する領域の両側の形状を保持することにより、第2息抜き開口の開口状態を保持することができ、第2息抜き開口が塞がって息苦しくなるのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における保湿マスクの全体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の保湿マスクの実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の保湿マスク1の全体構造を示す図である。(A)は使用前の平たい状態、(B)は使用するために顔に沿って変形させた状態、(C)は中央部の縦断面を示す。
【0017】
この例では、全体として長方形に形成されたマスク本体2の左右の短辺部に、ゴムひも製の耳紐3が取り付けられて構成されている。
【0018】
上記マスク本体2は、マスク本体2が通気性のシート状素材から形成されている。上記通気性のシート状素材としては、例えば、不織布、ガーゼ、紙、ニット、織布、フェルト、多孔性樹脂フィルム等、呼吸による通気性をある程度確保しうるものであれば各種のものを用いることができる。
【0019】
上記マスク本体2には、口と対面する領域Aの左右部に、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口4が設けられている。上記第1息抜き開口4は、使用前の平たい状態では切れ込みとして形成することができ、使用するために顔に沿って変形させることにより、略スリット状の開口を形成することができる。なお、使用前の平たい状態でスリット状の開口とすることもできる。
【0020】
そして、上記両第1息抜き開口4の間の口と対面する領域Aには、息抜き用の穴や開口が設けられていない。
【0021】
上記口と対面する領域Aには、この例では、左右に延びる複数のプリーツ8が設けられている。上記プリーツ8は、マスク本体2を構成するシート状素材を同じ方向に折り曲げて形成することもできるし、異なる方向に折り曲げて形成することもできる。好ましくは、(C)に示すように、口と対面する領域Aの外側に膨らむプリーツ部が形成されるように、上部のプリーツ8を上向きの山折、下部のプリーツ8を下きの山折として互いに反対向けの山折とするのが好ましい。
【0022】
また、上記両第1息抜き開口4の口と対面する領域A側に、上記第1息抜き開口4に沿って上下に延びる第1形状保持部材5が取り付けられている。
【0023】
上記第1形状保持部材5としては、例えば細長い針金や樹脂製の細線材等、塑性変形によりある程度の曲げ形状を保持できるものであれば、各種のものを用いることができる。上記第1形状保持部材5は、接着剤、溶着等の手法によりマスク本体2に取り付けることができる。
【0024】
上記両第1形状保持部材5を折り曲げることにより、マスク本体2の口と対面する領域Aが口と直接接触しないように保持するとともに、第1息抜き開口4の開口状態を保持するようになっている。このとき、上述したように、上下のプリーツ8を互いに反対向けの山折としておけば、口と対面する領域Aを口と接触させず、第1息抜き開口4の開口状態を維持するようマスク本体2の形状を保持しやすくなる。
【0025】
さらに、上記マスク本体2には、上記両第1息抜き開口4の間の、口と対面する領域Aの上部に、左右に細長く延びる第2息抜き開口6が設けられている。上記第2息抜き開口6は、使用前の平たい状態では切れ込みとして形成することができ、使用するために顔に沿って変形させることにより、略スリット状の開口を形成することができる。なお、使用前の平たい状態でスリット状の開口とすることもできる。
【0026】
また、上記第2息抜き開口6の口と対面する領域Aと反対側に、上記第2息抜き開口6に沿って左右に延びる第2形状保持部材7が取り付けられている。上記第2形状保持部材7の材質や取り付け方法は、第1形状保持部材5と同様のものを採用することができる。
【0027】
そして、上記第2形状保持部材7を顔に沿って折り曲げることにより、マスク本体2の口と対面する領域Aが口と直接接触しないように保持するとともに、第2息抜き開口6の開口状態を保持するようになっている。
【0028】
以上のように、本実施形態の保湿マスク1は、マスク本体2が通気性のシート状素材から形成され、口と対面する領域Aには、息抜き用の穴や開口が設けられていないため、装着した状態で、口の前面は、通気性のシート状素材から形成されたマスク本体2で覆われるため、呼気がマスク内に充満してその湿気により喉の乾燥が防止されて保湿される。
一方、口と対面する領域Aの左右部には、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口4が設けられていることから、吸気の際には上記第1息抜き開口4から空気が自然に導入され、息苦しさを全く感じない。また、長時間使用による保湿性能の低下の心配もない。したがって、例えば睡眠中であっても、無意識に外してしまうようなトラブルが避けられ、確実に喉を保湿して守ることができる。
また、老年期においては間接の動きが悪くなり、開口状態で口呼吸することが多くなる傾向にある。このような口呼吸によって、老齢者の口腔内は乾燥して唾液による自浄作用が低下し、粘膜に細菌が定着しやすく、増殖してしまうことになる。このように口腔内の細菌が増殖すると、誤嚥によって高濃度の菌が肺に転移し、誤嚥性肺炎を引き起こすこととなる。本発明の保湿マスクは、口腔内の乾燥を有効に防止し、上述した誤嚥性肺炎のような老齢者の二次的発病を有効に防止することができる。
【0029】
また、上記両第1息抜き開口4の口と対面する領域A側に、上記第1息抜き開口4に沿って上下に延びる第1形状保持部材5が取り付けられている場合には、
上記第1形状保持部材5で口と対面する領域Aの両側の形状を保持することにより、マスク本体2と口との直接接触を有効に防止し、使用感の悪化を防ぐとともに、第1息抜き開口4が塞がって息苦しくなるのが防止される。これにより、無意識に外してしまうことが有効に防止される。さらに、マスク本体2を清潔に保つこともできる。
【0030】
また、上記両第1息抜き開口4の間の、口と対面する領域Aの上部に、左右に細長く延びる第2息抜き開口6が設けられている場合には、
鼻での呼吸を行う際に、第2息抜き開口6から空気が自然に導入され、息苦しさを全く感じない。したがって、例えば睡眠中であっても、無意識に外してしまうようなトラブルが避けられ、確実に喉を保湿して守ることができる。
この場合において、上記第1形状保持部材5で口と対面する領域Aの両側の形状を保持することにより、第2息抜き開口6の開口状態を保持することができ、第2息抜き開口6が塞がって息苦しくなるのが防止される。
【0031】
なお、上述した実施形態では、マスク本体2を長方形としたが、これに限定するものではなく、ひし形や楕円形等の任意の形状とすることもできる。また、マスク本体2に耳紐3を取り付けるようにしたが、マスク本体を大きめに形成して切れ込みや開口を形成することにより、耳掛け部を形成するようにしてもよい。また、耳紐3を耳に掛けたときに耳が痛くならないように耳紐3を太くしたり、耳に掛ける耳紐3ではなく、後頭部で結ぶ紐や、後頭部で接合するテープとすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1:保湿マスク
2:マスク本体
3:耳紐
4:第1息抜き開口
5:第1形状保持部材
6:第2息抜き開口
7:第2形状保持部材
8:プリーツ
A:口と対面する領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体が通気性のシート状素材から形成され、口と対面する領域の左右部に、それぞれ上下に細長く延びる第1息抜き開口が設けられ、上記両第1息抜き開口の間の口と対面する領域には、息抜き用の穴や開口が設けられていないことを特徴とする保湿マスク。
【請求項2】
上記両第1息抜き開口の口と対面する領域側に、上記第1息抜き開口に沿って上下に延びる形状保持部材が取り付けられている請求項1記載の保湿マスク。
【請求項3】
上記両第1息抜き開口の間の、口と対面する領域の上部に、左右に細長く延びる第2息抜き開口が設けられている請求項1または2記載の保湿マスク。

【図1】
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