説明

保管治具

【課題】頑丈で、多くのパイプを纏めて安定した状態で保管することができ、鋼管のように高重量で一度に多く消費されるパイプの保管に適しており、その上、保管するパイプ同士の間にデッドスペースが形成されず倉庫のスペースを有効利用することができ、製造コストが安価なパイプ用の保管治具を提供する。
【解決手段】保管治具1は、中央の部分が下向きに屈曲した“舟形”になっている。また、底面プレート4の左右両側に、それぞれ、傾斜面プレート5,5が、左右対称となるように設置されており、各傾斜面プレート5,5の表面が、底面プレートの表面に対して、120°の角度を成している。そして、底面プレート4および傾斜面プレート5,5によってパイプ載置部Sが形成されており、前面プレート2、後面プレート3の前後の各連結部分c,cおよび上面プレート6,6によって連結部L,Lが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管等の長尺で重量の大きなパイプを保管するための保管治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺な円柱状のパイプを保管する方法としては、従来、平行な水平板によって仕切られた棚の中に寝かせた状態で載置する方法や、図9の如く、同じ数の鋼管を束ねたユニットU,U・・を材木Wの上に平行に設置し、その上に別個の材木Wを載置して、さらにその材木Wの上に同じ数の鋼管を束ねたユニットU,U・・を載置する方法等が採用されていた。また、パイプを整列させて収納・保管するための保管治具として、上面に所定間隔で円弧状の凹部を形成してなる長尺状の保管治具が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特表平3−505077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、棚の中に寝かせた状態でパイプを保管する方法は、パイプが長尺になると、それに併せて大きな棚が必要となるため、コストがかかる。その上、パイプの在庫が少なくなった場合に、倉庫内のスペースを有効利用することができない、という不具合もある。また、複数本のパイプのユニットU,U・・を材木Wの上に平行に設置する方法では、高く積み上げると不安定になる上、隣り合うユニットU,U・・同士の間にデッドスペースが形成されるため、倉庫のスペースを有効利用することができない、という不具合がある。一方、特許文献1の如き保管治具を用いる方法では、多くのパイプを保管するには、多くの保管治具が必要となり、コスト高になってしまう上、隣り合うパイプ同士の間にデッドスペースが形成されるため、倉庫のスペースを有効利用することができない、という不具合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来のパイプの保管治具の問題点を解消し、頑丈で、多くのパイプを纏めて安定した状態で保管することができ、鋼管のように高重量で一度に多く消費されるパイプの保管に適しており、その上、保管するパイプ同士の間にデッドスペースが形成されず倉庫のスペースを有効利用することができ、製造コストが安価なパイプ用の保管治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明は、パイプを載置した状態で保持するための保管治具であって、一定幅の帯状体を舟形に形成してなるパイプ載置部と、そのパイプ載置部の左右の両側に設けられた連結部とからなることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、パイプ載置部が、水平面と、その水平面の左右両端に、水平面に対して120度の角度を成すように左右対称に設けられた2つの傾斜面とを有するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載された保管治具は、頑丈で、複数のパイプを纏めて保管することができ、鋼管のように高重量で一度に多く消費されるパイプの保管に適している上、製造コストが安価である。また、保管するパイプ同士の間にデッドスペースが形成されないので、倉庫のスペースを有効利用することができる。さらに、請求項2に記載された保管治具によれば、多くのパイプを安定した状態で保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る保管治具の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、保管治具を示したものである。保管治具1は、鋼鉄製の前面プレート2、後面プレート3、底面プレート4、傾斜面プレート5,5、上面プレート6,6、水平部補強プレート7,7、および連結部補強プレート8,8を溶接することによって一体的に形成されている。なお、各プレートとも厚さ約4.5mmの鉄板によって形成されている。
【0010】
前面プレート2、および後面プレート3は、50mm幅の長尺な帯状に形成されており、中央が水平になっている。そして、その水平部分aの左右の外側には、それぞれ、傾斜部分b,bが、左右対称に設けられており、それらの傾斜部分b,bの外側には、他の保管治具1と接続するための連結部分c,cが形成されている。また、各連結部分c,cには、それぞれ、2個ずつネジ孔9が穿設されている。
【0011】
一方、底面プレート4および各傾斜面プレート5,5は、いずれも120mm幅の長方形状に形成されており、295mmの長さを有している。また、各上面プレート6,6は、底面プレート4および各傾斜面プレート5,5と同様に、120mm幅の長方形状に形成されており、それぞれ、169mmの長さを有している。また、各連結部補強プレート8,8および各水平部補強プレート7,7は、いずれも長方形状に形成されており、前後の長さ×左右の長さが、それぞれ、160mm×150mm,160mm×120mmになっている。
【0012】
保管治具1の本体部分は、前面プレート2の水平部分aと後面プレート3の水平部分aとの上端縁同士の間に、底面プレート4を溶接し、前面プレート2の各傾斜部分bと後面プレート3の各傾斜部分bとの上端縁同士の間に、それぞれ、傾斜面プレート5を溶接し、前面プレート2の各連結部分cおよび後面プレート3の各連結部分cの上端縁同士の間に、それぞれ、上面プレート6を溶接するとともに、底面プレート4と傾斜面プレート5との間、および、傾斜面プレート5と上面プレート6との間を溶接することによって、断面コ字状で前後幅120mmの屈曲した長尺状に形成されている。
【0013】
さらに、前面プレート2の水平部分aと後面プレート3の水平部分aとの下端縁同士の間には、2枚の水平部補強プレート7が溶接されており、前面プレート2の連結部分cと後面プレート3の連結部分cとの下端縁同士の間には、それぞれ、連結部補強プレート8が溶接されている。そして、それらの水平部補強プレート7,7および連結部補強プレート8,8の前後の部分が、前面プレート2および後面プレート3から外側に20mm幅で突出した状態になっている。
【0014】
上記の如く構成された保管治具1は、正面から見ると、中央の部分が下向きに屈曲した状態になっており、所謂“舟形”になっている。また、底面プレート4の左右両側に、それぞれ、傾斜面プレート5,5が、左右対称となるように設置されており、各傾斜面プレート5,5の表面が、底面プレート4の表面(水平面)に対して、120°の角度を成している。そして、底面プレート4および傾斜面プレート5,5によってパイプを載置するためのパイプ載置部Sが形成された状態になっている。また、前面プレート2、後面プレート3の前後の各連結部分c,cおよび上面プレート6,6によって連結部L,Lが形成された状態になっている。
【0015】
かかる保管治具1は、図4の如く、2個あるいは3個以上を前後に平行に配置させることにより、鋼管P,P・・を纏めて載置して保管することができる。また、図5の如く、前面プレート2および後面プレート3の連結部分に穿設されたネジ孔9,9・・を利用し、横長な長方形状の接続プレート(左右に2個ずつネジ孔を穿設したもの)C、ボルトB,B・・およびナット(図示せず)を用いて、2個以上を左右方向に連結することができる(なお、接続プレートCを用いて連結した場合には、片方の上縁の基端から他方の上縁の基端までの長さが、前面プレート2および後面プレート3の水平部分aの下端の長さと同一になるように設計されている)。そして、それらの連結した各保管治具1,1の上に鋼管P,P・・を載置して保管することができる。
【0016】
さらに、左右に連結した各保管治具1,1・・の上に、直径約114.3mmφの鋼管P,P・・を19本ずつ載置してバンドT等で束ねるとともに、先に連結された保管治具1,1・・の上に、図6の如く、保管治具1,1・・を載置して連結し、それらの各保管治具1,1・・の上に直径約114.3mmφの鋼管を19本ずつ載置する方法を繰り返し、保管治具1,1・・によってラックを形成することにより、図7の如く、多くの鋼管P,P・・を隙間なく保管することもできる。
【0017】
保管治具1は、上記の如く、一定幅の帯状体を舟形に形成してなるパイプ載置部Sと、そのパイプ載置部Sの左右の両側に設けられた連結部L,Lとからなるものであるため、頑丈で、複数のパイプP,P・・を纏めて保管することができ、鋼管のように高重量で一度に多く消費されるパイプの保管に適している上、製造コストが安価である。また、保管するパイプP,P・・同士の間にデッドスペースが形成されないので、倉庫のスペースを有効利用することができる。
【0018】
また、保管治具1は、パイプ載置部Sが、水平面(底面プレート4)と、その水平面の左右両端に、水平面に対して120度の角度を成すように左右対称に設けられた2つの傾斜面(傾斜面プレート5,5)とを有するものであるため、多くのパイプP,P・・を安定した状態で保管することができる。
【0019】
なお、本発明に係る保管治具の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、前面プレート、後面プレート、底面プレート、傾斜面プレート、上面プレート、水平部補強プレート、連結部補強プレート等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0020】
たとえば、保管治具は、上記実施形態の如く、底面プレートと傾斜面プレートとが約120°の角度を成しているとともに底面プレートの長さと傾斜面プレートの長さとが同一であり、正六角形に束ねたパイプを1ユニットとして積み重ねて保管できるものに限定されず、図8の如く、傾斜面プレートの長さに比べて底面プレートの長さの方が長く、扁平な六角形に束ねたパイプを1ユニットとして積み重ねて保管できるもの等に変更することも可能である。
【0021】
また、保管治具は、底面プレート、傾斜面プレート、上面プレートを前面プレート、後面プレートに溶接することによって形成されたものに限定されず、折り曲げ形成や鋳造等の方法により形成したものでも良い。
【0022】
さらに、保管治具は、上記実施形態の如く、連結部L,Lにネジ孔を2個ずつ設けたものに限定されず、図9の如く、3個以上のネジ孔9,9・・を連結部L,Lに設けたものに変更することも可能である。かかる構成を採用した場合には、図10の如く、外側の2個のネジ孔9,9を利用し、接続プレートC、ボルトB,B・・、ナットを用いて左右方向の保管治具11,11と連結するとともに、内側の1個以上のネジ孔を利用し、接続プレートC、ボルトB,B・・、ナットを用いて、上下を反転して載置した保管治具11,11と連結することが可能となる。そのように、左右・上下に隣り合う保管治具11,11・・同士を互いに連結した場合には、保管治具11,11・・によって形成されるラックがきわめて頑丈なものとなり、ラック内部のパイプP,P・・出し入れが可能となる、というメリットがある(なお、2個ずつネジ孔を連結部L,Lに設けた保管治具を用い、外側の1個のネジ孔を利用して左右方向の保管治具と連結するとともに、内側の1個のネジ孔を利用して、上下を反転して載置した保管治具と連結することも可能であるが、2個以上のネジ孔を利用して左右に隣り合う保管治具同士を連結することにより、保管治具によって形成されるラックの強度が、飛躍的に高いものとなる)。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の保管治具は、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、各種のパイプの保管に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】保管治具の正面図である。
【図2】保管治具の平面図(a)、および(a)におけるA−A線端面図である。
【図3】保管治具の斜視図である。
【図4】保管治具の使用状態を示す説明図である(aは保管治具の正面側から見た状態であり、bは保管治具の側面側から見た状態である)。
【図5】保管治具を連結した状態を示す説明図である。
【図6】連結した保管治具の上に保管治具を載置した状態を示す説明図である。
【図7】保管治具の使用状態を示す説明図である。
【図8】保管治具の変更例を示す説明図である。
【図9】従来のパイプの保管方法を示す説明図である。
【図10】保管治具の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1,11・・保管治具
4・・底面プレート
5・・傾斜面プレート
S・・パイプ載置部
L・・連結部
P・・パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを載置した状態で保持するための保管治具であって、
一定幅の帯状体を舟形に形成してなるパイプ載置部と、
そのパイプ載置部の左右の両側に設けられた連結部とからなる保管治具。
【請求項2】
パイプ載置部が、
水平面と、その水平面の左右両端に、水平面に対して120度の角度を成すように左右対称に設けられた2つの傾斜面とを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の保管治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−120239(P2009−120239A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297123(P2007−297123)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(392012238)
【Fターム(参考)】