説明

保護シート供給装置および保護シート供給方法

【課題】複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層の保護シートを取得する際の確実性を向上する。
【解決手段】複数枚の保護シートAが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体Bから、最上層の保護シートAを取得してシート積層体Bから分離させ、この分離した保護シートAを、ガラス基板Gの表面Gaに配置させるように構成された保護シート供給装置1である。この装置1は、最上層の保護シートAの一隅部Acを上方から吸着保持して持ち上げる吸着手段としての吸着ヘッド11と、吸着ヘッド11の持ち上げにより生じた保護シートAの一隅部Acの下方隙間Cに挿脱可能なセパレータ12とを備え、セパレータ12が、下方隙間Cに挿入された状態から保護シートAの一隅部Acに連なる端縁部Adに沿って略水平方向に移動することにより、保護シートAの端縁部Adの下方に補助隙間C1が生じるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板表面への保護シート供給技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板の他、太陽電池用のガラス基板等、所定サイズに切断された矩形のガラス基板は、パレット上に縦姿勢(略鉛直姿勢)又は横姿勢(略水平姿勢)で積層して梱包された上で保管や輸送に供される。
【0003】
ただし、ガラス基板のみを積層させると、ガラス基板同士の接触に伴って個々のガラス基板の有効部位にキズ等の欠陥が形成され易くなり、後工程等においてガラス基板が使用不能となるような重大問題が生じ得る。そこで、ガラス基板の製造ラインの最終段階等において、ガラス基板を積層させるときには、積層時の姿勢が縦姿勢であるか横姿勢であるかを問わず、ガラス基板相互間にガラス基板と略同寸の保護シートを介設する処理が実行される。これにより、ガラス基板同士の接触に起因して生じるキズ等の欠陥の発生確率を大幅に低減することができる。なお、ガラス基板相互間にガラス基板と略同寸の保護シートを介設する(ガラス基板と保護シートとを交互に積層させる)ための処理は、安全性の確保や生産性向上を目的として種々の機械設備等を用いて自動で実行されるのが一般的である。また、保護シートとしては、一般に、紙シートや発泡樹脂シートが使用される。
【0004】
例えば下記の特許文献1には、上記の処理を自動で実行するための具体的手段が記載されており、詳しくは、コンベアに沿って搬送されてくるガラス基板の縦姿勢でのパレットへの積み込みと、パレットに縦姿勢で積み込まれた(パレットに立て掛けられた)ガラス基板表面上への保護シートの供給と、を交互に実行するように構成された装置である。この装置において、パレットに積み込まれたガラス基板上への保護シートの供給は、概ね次のようにして行われる。まず、複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体のうち、最上層に位置する保護シートの一辺に沿った端縁部の表面を、水平方向移動及び水平軸回りに回動可能なアームの先端部に設けられた複数の吸着ノズルで吸着する。次いで、アームを水平方向移動させることにより、シート積層体の最上層に位置する保護シートを水平方向に引出してシート積層体から分離させる。そして、アームを下方に回動させて、シート積層体から分離させた保護シートをパレットに立て掛けられたガラス基板の表面側に配置した後、吸着ノズルによる保護シートの吸着を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−53563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数枚の保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、一枚の保護シートを取得してシート積層体から分離させる際、上記特許文献1に記載されているように、シート積層体の最上層に位置する保護シート(以下、第1シートという)を水平方向に引出すようにした場合、第1シートのみならず、第1シートの下層に位置した一又は複数枚の保護シート(以下、第2シート等という)が第1シートと同時に引出される場合がある。かかる事態は、保護シートが大判化するほど、上下に積層された保護シート相互間の密着力が高まるため発生し易くなる。第1シートの水平方向への引出しによってシート積層体から第1シートのみを取得するには、保護シート相互間の密着力を上回るようなせん断力を作用させるようにして第1シートを水平方向に引出さなければならないが、特許文献1に記載の装置の構成上、これを適切に実行することは容易ではない。
【0007】
第1シートと同時に第2シート等が引出されるような場合であっても、第1シートの引出し開始から引出し完了に至るまで、第2シート等が第1シートと一体的に引出され、かつこれらが一体的にガラス基板の表面側に配置されるのであれば、保護シートが余分に使用されるという改善されるべき無駄はあるものの、ライン停止等の重大問題は生じ難い。これに対し、例えば、第1シートがシート積層体からある程度引出された時点で第2シート等の引出しが開始されたような場合には、引出して取得した第1シートを移送している最中に、第1シートから第2シート等が分離・落下等し易くなる。そのため、次サイクル以降における保護シートの供給精度の低下や、ライン停止等の重大問題が生じ易くなる。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、保護シート、特に大判の保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層に位置する保護シートを取得してシート積層体から分離させる際の確実性を向上し、これにより、保護シートをガラス基板の表面上に適切に配置可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層の保護シートを取得してシート積層体から分離させ、この分離した保護シートを、シート積層体の側方に配設されたガラス基板の表面に配置させるように構成された保護シート供給装置において、最上層の保護シートの一隅部を上方から吸着保持して持ち上げる吸着手段と、吸着手段の持ち上げにより生じた最上層の保護シートの一隅部の下方隙間に挿脱可能なセパレータとを備え、セパレータが、下方隙間に挿入された状態から最上層の保護シートの一隅部に連なる端縁部に沿って略水平方向に移動することにより、最上層の保護シートの端縁部の下方に補助隙間を生じさせるように構成したことを特徴とする。
【0010】
このような構成を備えた保護シート供給装置によれば、最上層の保護シートと、シート積層体(下層に位置する保護シート)との間の密着力が効率的に弱められ、ひいては両者間の密着状態が解消される。そのため、シート積層体から、最上層の保護シートを取得してシート積層体から分離させる際に、その下層に位置する一又は複数枚の保護シートも併せて取得される可能性が従来の装置に比べて大幅に減じられる。これにより、ライン停止等の重大問題が生じる可能性を効果的に減じることができる。また、吸着手段としては、最上層の保護シートの一隅部を吸着保持して持ち上げることができるだけの小さな吸着力を発生させ得るものであれば足りるため、(真空)吸引ポンプ等を含めた設備の簡素化を達成することができる。
【0011】
上記構成において、セパレータの移動方向後方側で、最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持する挟持手段をさらに備えるものとすることができる。
【0012】
このような構成によれば、下方隙間に挿入されたセパレータが最上層の保護シートの端縁部に沿って略水平方向に移動することで最上層の保護シート端縁部の下方に生じさせられる補助隙間を利用して、最上層の保護シートの端縁部を所定の高さ位置に保持することができる。そのため、シート積層体からの部分的な分離が達成された最上層の保護シートが、シート積層体と再度密着状態になるのを効果的に防止することができる。
【0013】
上記の挟持手段は、最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持することで取得する取得位置と、この取得位置にて取得した最上層の保護シートをガラス基板の表面側に配置させる供給位置との間を往復動可能に構成されたものとすることができる。
【0014】
このような構成によれば、挟持手段を、取得した(最上層の)保護シートをガラス基板の表面側に移載するために用いる移載手段の一部として活用することができるので、設備や制御系を簡素化することができるというメリットがある。また、吸着手段によって最上層の保護シートの一隅部を吸着する時、仮に複数枚の保護シートが吸着されたとしても、これら複数枚の保護シートをそのままガラス基板の表面側に配置することが可能となる。従って、複数枚の保護シートが同時に取得された場合における保護シートの相互分離によるライン停止等の重大問題の発生を可及的に防止することができる。
【0015】
以上の構成において、セパレータは、少なくとも移動方向前方側に向けてエアーを噴射するエアー噴射口を有するものとすることができる。
【0016】
このようにすれば、大型のセパレータを用いずとも、また、必ずしも、最上層の保護シートやその下層に位置する保護シートにセパレータを接触(摺動接触)させずとも、補助隙間を効率的に生じさせることができる。そのため、セパレータが前進移動するのに伴ってセパレータと保護シートの間に生じる摩擦力により、保護シートが所定位置から位置ずれ等するのを可及的に防止することができ、保護シートの安定供給を達成することができる。なお、エアーは、セパレータの移動方向前方側のみならず、セパレータの移動方向と直交する方向に噴射するようにしても良い。このようにすれば、上記の効果を一層有効に享受することができる。エアーは、別途のエアー噴射手段を用いて噴射するようにしても構わないが、セパレータがエアー噴射口を有していれば、別途のエアー噴射手段を用いる必要がなくなり、設備構成を簡素化することができる。
【0017】
以上の構成において、保護シートは、対向する二辺の組のうち、少なくとも一方が2mを超えるものとすることができる。すなわち、本発明に係る保護シート供給装置は、大型のガラス基板の表面側に保護シートを配置(供給)する際に好ましく使用することができる。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、本発明では、複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層の保護シートを取得してシート積層体から分離させ、この分離した保護シートを、シート積層体の側方に配設されたガラス基板の表面側に配置させる保護シート供給方法において、最上層の保護シートの一隅部を上方から吸着手段により吸着保持して持ち上げた状態で、最上層の保護シートの一隅部の下方隙間にセパレータを挿入し、このセパレータを最上層の保護シートの一隅部に連なる端縁部に沿って略水平方向に移動させることにより、最上層の保護シートの端縁部の下方に補助隙間を生じさせる隙間形成工程を有し、この隙間形成工程で生じた補助隙間を利用して最上層の保護シートを取得することを特徴とする保護シート供給方法を提供する。
【0019】
このような構成を備えた保護シート供給方法によれば、上記した本発明に係る保護シート供給装置を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
上記の保護シート供給方法において、隙間形成工程で生じた補助隙間を利用して、最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持手段が挟持することにより最上層の保護シートを取得し、その取得後に挟持手段が移動することにより、最上層の保護シートをシート積層体から分離させてガラス基板の表面側に配置させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に示すように、本発明によれば、シート積層体の最上層に位置する保護シートを取得する際の確実性を増し、保護シートをガラス基板の表面上に適切に配置することが可能となる。これにより、ライン停止等の重大問題が生じる可能性を効果的に減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る保護シート供給装置の要部概略平面図である。
【図2】同要部概略側面図である。
【図3】セパレータの概略斜視図である。
【図4】吸着手段としての吸着ヘッドの動作軌跡を概念的に示す図である。
【図5】挟持手段としての爪チャックの動作軌跡を概念的に示す図である。
【図6】図1に示す保護シート供給装置を他の製造ラインに適用した場合を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係る保護シート供給装置1の要部概略平面図および要部概略側面図をそれぞれ示す。この実施形態は、搬送コンベア9に沿って上流側から下流側(図中矢印X1方向)に横姿勢で搬送され、シート載置ステーション9aで一時的に下流側への搬送が停止された略矩形(長方形)のガラス基板Gの表面Ga上に保護シートを配置する場合を示している。すなわち、後述する保護シート供給装置1の1サイクル動作が完了すると、表面Ga上に保護シートが配置されたガラス基板Gは搬送コンベア9に沿ってさらに下流側に搬送され、これと同時に、シート載置ステーション9aの上流側にあるガラス基板Gがシート載置ステーション9aに導入され、この導入されたガラス基板Gに対して保護シート供給装置1による保護シート供給のための1サイクル動作が実行される。ガラス基板Gの長手方向寸法(長辺寸法)および幅方向寸法(短辺寸法)は、例えば、それぞれ2.5m、1.5mとされる。
【0025】
なお、ガラス基板Gの表面Ga上に保護シートが配置された後には、例えば図示外の静電気発生器を作動させることによって、保護シートがガラス基板Gの表面Gaに隙間無く密着させられる。これにより、表面Ga上に保護シートAが配置されたガラス基板Gが搬送コンベア9に沿ってさらに下流側に搬送される最中や、ロボットアーム等を用いることによって、表面Ga上に保護シートAが配置されたガラス基板Gを搬送コンベア9からパレットに移載する最中などに、ガラス基板Gから保護シートAが剥がれ落ちるような事態が可及的に防止される。
【0026】
保護シート供給装置1は、複数枚の保護シートAが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体Bを保持したシート保持部2と、シート積層体Bの最上層に位置する保護シートA(以下「第1シートA1」ともいう)を取得し、取得した第1シートA1をシート積層体Bから分離させて、シート載置ステーション9a上で静止したガラス基板Gの表面Ga上に配置するシート取得兼供給部10とを備える。保護シートAは、ガラス基板Gと略同寸の長辺Aaおよび短辺Abを有する平面視長方形状を呈するものであり、例えば紙シートや発泡樹脂シートが使用される。
【0027】
シート保持部2は、シート積層体Bを支持した支持台3と、シート積層体Bの崩れを可及的に防止すべく支持台3の外周部に所定間隔で立設された複数のガイド部材4とで主要部が構成される。支持台3は、図示外の弾性部材によって上方に付勢されている。従って、支持台3は、シート積層体Bから最上層の保護シートA(第1シートA1)が順次取得され、シート積層体Bの全体重量が軽くなるにつれて徐々に上昇移動する。これにより、シート取得兼供給部10は、常にほぼ同じ高さ位置で第1シートA1を取得することができるようになっている。
【0028】
シート取得兼供給部10は、その主要部全体がシート積層体Bの上方に設けられており、下面に開口した吸入口を有し、図示外の真空ポンプが接続された吸着手段としての吸着ヘッド11と、保護シートAの長辺Aaに沿って水平方向に往復動(上流側から下流側への前進移動、及び下流側から上流側への後退移動)するセパレータ12と、保護シートAの長辺Aaに沿って所定間隔で複数設けられた挟持手段としての爪チャック14とを備える。本実施形態では、保護シートAの長辺Aaに沿った4箇所に爪チャック14(以下、上流側から下流側に向かって、順に、第1爪チャック14A〜第4爪チャック14Dともいう。)を設けているが、爪チャック14の設置個数は、保護シートAの長辺寸法や個々の爪チャック14の能力等に応じて適宜変更することができる。従って、爪チャック14は、保護シートAの長辺Aaに沿った2〜3箇所、又は5箇所以上に設けることも可能である。
【0029】
吸着ヘッド11は、図示外の駆動手段の駆動力を受けてシート積層体Bに対して接近および離反移動し、シート積層体Bに対して接近移動したときには、第1シートA1の一隅部(具体的には、第1シートA1のうち、搬送コンベア9に接近した側の長辺Aaと、上流側に位置する短辺Abとが交わる隅部)Acを上方から吸着することができるようになっている。この吸着ヘッド11の原点位置(シート積層体Bに対して離反した状態での静止位置)は、シート積層体Bに対して接近移動したときの位置からシート積層体Bの中央側にずれている。そのため、吸着ヘッド11は、第1シートA1の取得時、斜行移動又は円弧移動することでシート積層体Bに対して接近し、この接近位置で第1シートA1の一隅部Acを上方から吸着した後には、第1シートA1の取得時とは逆の経路を辿るように斜行移動又は円弧移動することで原点復帰する。なお、本実施形態では、図1および図4中に白抜き矢印で示す態様で斜行移動する。
【0030】
シート積層体Bの上方には、吸着ヘッド11が原点復帰したこと、さらに詳しくは、吸着ヘッド11が第1シートA1の一隅部Acを吸着保持して持ち上げたことを検出するための検出器15が設けられている。検出器15は、リミットスイッチのような接触型を用いても良いし、近接センサのような非接触型を用いても良い。また、吸着ヘッド11が第1シートA1の一隅部Acを吸着保持して持ち上げたことをより確実に検知するため、第1シートA1の吸着の有無によって変動する吸引圧を、別途設けた図示外の圧力センサで検知するようにしている。
【0031】
セパレータ12は、図3に拡大して示すように、所定の厚みを有する板状部材であり、保護シートAの長辺Aaに沿って水平方向に往復動可能に構成されている。このセパレータ12の移動方向前方側に臨む面12a、およびこれに繋がった搬送コンベア9から離反する側の面12bにはエアー噴射口13が連続的に開口しており、このエアー噴射口13からは、図示外のエアー源から供給されたエアーが噴射される。上記の両面12a,12bは滑らかな円弧面を介して繋がっている。
【0032】
なお、セパレータ12は、その基端部を、例えば保護シートAの長辺Aaと平行に設置した図示外のリニアモーションガイドレールに沿って案内移動される可動部材に取り付けることによって水平方向に往復動する。可動部材を水平方向に往復動させるための駆動手段は、可変電動機や無端状歯付ベルト(ボールねじでも代替可)等を組み合わせて構成される。これにより、セパレータ12の移動速度は、矢印X1で示す上流側から下流側へと向かう前進移動時よりも、矢印X2で示す下流側から上流側へと向かう後退移動(原点復帰)時を高速に設定することができる。
【0033】
各爪チャック14は、上下方向で開閉動作する上爪14aと下爪14bを備えており、第1シートA1の一隅部Acを吸着した吸着ヘッド11が原点復帰して第1シートA1の一隅部Acが持ち上げられたとき、第1シートA1の一隅部Acに連なる端縁部Adを上爪14aおよび下爪14bで上下両側から挟持し得る高さ位置、さらに言えば、セパレータ12の上面が描く動作軌跡と略等しい高さ位置にて上爪14aと下爪14bとが衝合するように設けられている(図2参照)。動作タイミングについては後に詳述するが、各爪チャック14は、最も上流側に位置する第1爪チャック14Aが最初に閉動作して第1シートA1の端縁部Adを挟持し、その後、第2爪チャック14B→第3爪チャック14C→第4爪チャック14Dの順に閉動作して第1シートA1の端縁部Adを上流側から下流側に向けて順次挟持するように構成されている。また、各爪チャック14は、保護シートAの長辺Aaに沿って平行移動するセパレータ12との相互干渉を避けるため、セパレータ12の前進移動時および後退移動時には第1シートA1の端縁部Adから所定量離隔した場所に位置するように構成されている。
【0034】
上記の態様で動作する爪チャック14は、シート積層体Bの上方と、シート載置ステーション9aの上方との間を往復動する図示外の移載手段に取り付けられている。そのため、爪チャック14は、図5に示すように、第1シートA1の端縁部Adを上下両側から挟持することで取得する取得位置と、取得位置にて取得した第1シートA1をシート載置ステーション9a上で静止したガラス基板Gの表面Ga上に配置させる供給位置との間を往復動する。
【0035】
保護シート供給装置1は主に以上の構成を有し、以下に示す態様で動作することにより、シート積層体Bの最上層に位置する保護シートA(第1シートA1)を取得してシート積層体Bから分離させ、この第1シートA1を、搬送コンベア9のシート載置ステーション9a上で静止しているガラス基板Gの表面Ga上に配置させる。
【0036】
まず、原点位置にある吸着ヘッド11を下方に斜行移動させることによって第1シートA1に接近させ、図示外の吸引ポンプを作動させる。これにより、吸着ヘッド11の下面に第1シートA1の一隅部Acが吸着保持される。そして、この状態のまま、吸着ヘッド11を上方に斜行移動させて原点復帰させると、第1シートA1の一隅部Acが持ち上げられて第1シートA1の一隅部Acがシート積層体Bから分離し、第1シートA1の一隅部Acの下方に下方隙間Cが形成される(図2を参照)。
【0037】
吸着ヘッド11が適切に第1シートA1を吸着保持していることを図示外の圧力センサが検知した状態で、第1シートA1の一隅部Acを吸着保持した吸着ヘッド11が原点復帰したことを検出器15が検出すると、セパレータ12が矢印X1方向への前進移動を開始して下方隙間Cに挿入される。その状態から、セパレータ12が第1シートA1の端縁部Adに沿って水平方向に前進移動すると、これに伴って下方隙間Cの形成範囲が徐々に拡大、すなわち、第1シートA1の端縁部Adの下方に補助隙間C1が徐々に形成される。このような隙間形成工程を実行する際、セパレータ12が下方隙間Cに挿入されると、図示外のエアー源が駆動され、セパレータ12に設けたエアー噴射口13からのエアー噴射が開始される。そのため、セパレータ12が第1シートA1の端縁部Adに沿って水平方向に前進移動するときには、セパレータ12の移動方向前方側および移動方向と直交する方向に向けてのエアー噴射が実行され(図1および図3を参照)、このエアー噴射は、セパレータ12が前進限に到達するまで継続される。
【0038】
セパレータ12の水平方向への前進移動が進行し、下方隙間Cの形成範囲が徐々に拡大する(補助隙間C1が徐々に生じる)のに伴って、爪チャック14(第1爪チャック14A〜第4爪チャック14D)を順次第1シートA1に対して接近移動させると共に閉動作させ、第1シートA1の端縁部Adを第1爪チャック14A〜第4爪チャック14Dで挟持する。具体的には、セパレータ12が第1爪チャック14Aの設置位置を通過すると、第1爪チャック14Aが第1シートA1に対して接近移動し、その後閉動作して第1シートA1の端縁部Adを上下両側から挟持する。以降、セパレータ12が第2爪チャック14B〜第4爪チャック14Dの設置位置をそれぞれ通過する毎に、セパレータ12の移動方向後方側で爪チャック14B〜14Dが第1シートA1に対して接近移動し、その後閉動作する。これにより、セパレータ12が前進限まで到達し、第1シートA1の端縁部Adの全長に亘る補助隙間C1が端縁部Adの下方に形成されたときには、第1シートA1の端縁部Adの長手方向4箇所が爪チャック14A〜14Dで上下両側から挟持された状態となる。
【0039】
なお、吸着ヘッド11による第1シートA1の一隅部Acの吸着を解除するタイミングは任意に設定することができ、例えば、第1爪チャック14Aによって第1シートA1の端縁部Adが上下両側から挟持された時点で解除するようにしても良いし、第1爪チャック14A〜第4爪チャック14Dの全てによる端縁部Adの挟持が完了した時点で解除するようにしても良い。
【0040】
以上のようにして、端縁部Adの下方に生じた補助隙間C1を利用して第1シートA1の端縁部Adの長手方向4箇所が第1爪チャック14A〜第4爪チャック14Dで挟持された後、爪チャック14を有する図示外の移載手段を駆動して、爪チャック14を供給位置まで移動させる(図5を参照)。爪チャック14が供給位置まで移動した後、全ての爪チャック14を開動作させ、第1シートA1の端縁部Adの挟持状態を解除し、第1シートA1をシート載置ステーション9a上にあるガラス基板Gの表面Ga上に配置させる。
【0041】
以降、上述した動作が繰り返し行われることにより、シート載置ステーション9aに順次導入されるガラス基板Gの表面Ga上に保護シートA(第1シートA1)が供給される。
【0042】
本発明に係る保護シート供給装置1が以上で説明した構成を具備し、かつ以上で示す態様で動作することから、シート積層体Bの最上層に位置する保護シートA(第1シートA1)の取得動作が開始されると、第1シートA1と、その下層に位置する保護シートA(第2シートA2)との間の密着力が効率的に弱められ、ひいては両シートA1,A2間の密着状態が解消される。そのため、シート積層体Bから第1シートA1を取得してシート積層体Bから分離させる際に、第2シートA2等も併せて取得される可能性が従来の装置に比べて大幅に減じられる。これにより、ライン停止等の重大問題が生じる可能性を効果的に減じることができる。また、吸着ヘッド11として、第1シートA1の一隅部Acを吸着保持して持ち上げるものを採用したことにより、小さな吸着力であっても第1シートA1の一隅部Acの下方に効率的に下方隙間Cを形成することができる。従って、真空ポンプ等を含めた設備の簡素化を達成することができる。
【0043】
また、セパレータ12が、その移動方向前方側に臨む面12a、およびこれに繋がった搬送コンベア9から離反する側の面12bに連続的に開口したエアー噴射口13を有し、このエアー噴射口13からは、セパレータ12の移動方向前方側等に向けてエアーが噴射されることから、大型のセパレータ12を用いずとも、また、必ずしも第1シートA1や第2シートA2にセパレータ12を接触させずとも下方隙間Cを効率的に拡大することが、すなわち補助隙間C1を効率的に生じさせることができる。そのため、セパレータ12が水平方向に前進移動するのに伴ってセパレータ12と保護シートA(第1シートA1及び/又は第2シートA2)の間に生じる摩擦力により、保護シートAが所定位置から位置ずれ等するのを可及的に防止することができ、保護シートAの安定供給が達成される。
【0044】
また、セパレータ12が前進移動し、第1シートA1の端縁部Adの下方に補助隙間C1が徐々に形成されるのに伴って、セパレータ12の移動方向後方側で、第1シートA1の端縁部Adを挟持手段としての爪チャック14(第1爪チャック14A〜第4爪チャック14D)で上下両側から順次挟持するようにした。このようにすれば、第1シートA1の端縁部Adを所定の高さ位置に保持することができる。そのため、シート積層体Bからの部分的な分離が達成された保護シートA(第1シートA1)が下降し、再度シート積層体Bと密着状態になるのを効果的に防止することができる。また、吸着ヘッド11による第1シートA1の一隅部Acの吸着時に、仮に複数枚の保護シートAが吸着ヘッド11に吸着されたとしても、複数枚の保護シートAが供給位置へ移載されている最中などに相互に分離するのを可及的に防止することができる。
【0045】
以上では、第1シートA1の長辺Aaに沿ってセパレータ12を水平方向に前進移動させることにより補助隙間C1を生じさせるようにしたが、第1シートA1の短辺Abに沿ってセパレータ12を水平方向に前進移動させることにより補助隙間C1を生じさせるようにしても良い。なお、この場合には、挟持手段としての爪チャック14も、第1シートA1の短辺Abに沿って配置する。
【0046】
以上では、搬送コンベア9に沿って上流側から下流側に横姿勢で搬送され、シート載置ステーション9aで一時的に下流側への搬送が停止されたガラス基板Gの表面Ga上に保護シートAを配置(供給)する場合に本発明に係る保護シート供給装置1を使用したが、本発明に係る保護シート供給装置1は、例えば図6に示すように、パレット20上に横姿勢で載置されたガラス基板Gの表面Ga上に保護シートAを供給する場合にも好ましく使用することができる。
【0047】
また、以上では、搬送コンベア9に沿って横姿勢で下流側に搬送されてくる、もしくはパレット20上に横姿勢で載置されたガラス基板Gの表面Ga側に保護シートAを配置する際に本発明に係る保護シート供給装置1を使用したが、本発明に係る保護シート供給装置1は、縦姿勢(厳密には鉛直方向に対して所定角度傾倒した姿勢)で搬送コンベア9に沿って下流側に搬送されてくる、もしくはパレット20上に縦姿勢で載置されたガラス基板Gの表面Ga側に保護シートAを配置する際にも好ましく使用することができる。
【0048】
また、以上では、長辺寸法が2.5m、短辺寸法が1.5mのガラス基板Gの表面Ga側に、このガラス基板Gと略同寸の保護シートAを供給する際に本発明に係る保護シート供給装置1を使用した。本発明の構成上、本発明に係る保護シート供給装置1は、対向する二辺の組のうち、少なくとも一方が2mを超えるような大判のガラス基板Gの表面Ga側にこれと略同寸の保護シートAを配置(供給)する際に特に好ましく使用することができるが、もちろん、対向する二辺の組の双方が2mを下回るようなガラス基板Gの表面Ga側に、これと略同寸の保護シートAを配置する際にも好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 保護シート供給装置
9 搬送コンベア
11 吸着ヘッド(吸着手段)
12 セパレータ
13 エアー噴射口
14 爪チャック(挟持手段)
20 パレット
A 保護シート
A1 第1シート
A2 第2シート
Ac 一隅部
Ad 端縁
B シート積層体
C 下方隙間
C1 補助隙間
G ガラス基板
Ga 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層の保護シートを取得して前記シート積層体から分離させ、該分離した保護シートを、前記シート積層体の側方に配設されたガラス基板の表面側に配置させるように構成された保護シート供給装置において、
前記最上層の保護シートの一隅部を上方から吸着保持して持ち上げる吸着手段と、該吸着手段の持ち上げにより生じた前記最上層の保護シートの一隅部の下方隙間に挿脱可能なセパレータとを備え、該セパレータが、前記下方隙間に挿入された状態から前記最上層の保護シートの一隅部に連なる端縁部に沿って略水平方向に移動することにより、前記最上層の保護シートの端縁部の下方に補助隙間を生じさせるように構成したことを特徴とする保護シート供給装置。
【請求項2】
前記セパレータの移動方向後方側で、前記最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持する挟持手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の保護シート供給装置。
【請求項3】
前記挟持手段は、前記最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持することで前記最上層の保護シートを取得する取得位置と、該取得位置にて取得した前記最上層の保護シートを前記ガラス基板の表面側に配置させる供給位置との間を往復動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の保護シート供給装置。
【請求項4】
前記セパレータは、少なくとも移動方向前方側に向けてエアーを噴射するエアー噴射口を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の保護シート供給装置。
【請求項5】
前記保護シートは、対向する二辺の組のうち、少なくとも一方が2mを超えるものである請求項1〜4の何れか一項に記載の保護シート供給装置。
【請求項6】
複数枚の略矩形をなす保護シートが平置き状態で上下に積層されてなるシート積層体から、最上層の保護シートを取得して前記シート積層体から分離させ、該分離した保護シートを、前記シート積層体の側方に配設されたガラス基板の表面側に配置させる保護シート供給方法において、
前記最上層の保護シートの一隅部を上方から吸着手段により吸着保持して持ち上げた状態で、前記最上層の保護シートの一隅部の下方隙間にセパレータを挿入し、該セパレータを前記最上層の保護シートの一隅部に連なる端縁部に沿って略水平方向に移動させることにより、前記最上層の保護シートの端縁部の下方に補助隙間を生じさせる隙間形成工程を有し、該隙間形成工程で生じた前記補助隙間を利用して前記最上層の保護シートを取得することを特徴とする保護シート供給方法。
【請求項7】
前記隙間形成工程で生じた前記補助隙間を利用して、前記最上層の保護シートの端縁部を上下両側から挟持手段が挟持することにより前記最上層の保護シートを取得し、その取得後に前記挟持手段が移動することにより、前記最上層の保護シートを前記シート積層体から分離させて前記ガラス基板の表面側に配置させることを特徴とする請求項6に記載の保護シート供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−148885(P2012−148885A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10898(P2011−10898)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】