説明

保護ダクト切断工具

【課題】変形しやすいを配線・配管材保護ダクトを好適に切断することができる保護ダクト切断工具を提供する。
【解決手段】切断時に受け部3を挟んで刃軸1aと対向する位置に、切断刃1が切断されるべき保護ダクトDWのカバー部Dbに切り込む際に、その切断力によって外方向に変形をするカバー部Dbの天壁Dbbを該天壁Dbbの形状に沿って受け部3との相対的位置を保持しつつ受け止める天壁変形防止部4Bと、カバー部DBの側壁Dbaを該側壁Dbaの形状に沿って受け部3との相対的位置を保持しつつ受け止める側壁変形防止部4Aとからなる変形防止部4を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面等に接触する当接面を備えた本体部と、相互に弾性変形することで前記本体部に着脱可能に装着される矩形外形形状のカバー部とを備え、内部に配線・配管材を収容可能な配線・配管材保護ダクトを切断する保護ダクト切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配線・配管材保護ダクトや塩化ビニール製パイプなどを切断するための切断工具は種々提案されている。
【0003】
図15は、本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図である。
【0004】
この切断工具20は、切断軸11aを中心に回動する切断刃11と、被切断材(大径パイプ)P1を受ける受け部12と、切断軸11aと同じ回動軸15aを中心に回動して、被切断材P1を切断刃11から被切断材P1の軸方向に所定間隔離れた位置で抑える保持アーム15と、これら切断刃11、受け部12等を備えた工具本体16と、切断刃11を回動切断動作させるための固定側ハンドル17Aと移動側ハンドル17Bとからなる操作部17とを備えている。
【0005】
この切断工具20は、円弧形状の受け部12に対して、切断軸11aと同軸で被切断材P1を押さえる保持アーム15を設け、小さな被切断材(小径パイプ)P2も切断でき、また、保持アーム15が切断刃11から被切断材P1の軸方向に所定間隔離れた位置で被切断材P1、P2を押さえるので、切り口を直角にできる(特許文献1の段落[0022]、[0023])、という効果があるというものである。
【0006】
しかしながら、この保持アーム15を備えた切断工具20のは、上述のような変形しにくい塩化ビニール製パイプの切断には好適ではあるが、この保持アーム15は、被切断材を周方向には部分的にのみ押さえるものであり、このような切断工具20は、本体部にカバー部を弾性変形により装着するような、変形しやすい配線・配管材保護ダクトを切断するには適さないものであった。
【特許文献1】特開2003−10571号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、変形しやすいを配線・配管材保護ダクトを好適に切断することができる保護ダクト切断工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の保護ダクト切断工具によれば、壁面等に接触する当接面を備えた本体部と、相互に弾性変形することで前記本体部に着脱可能に装着される矩形外形形状のカバー部とを備え、内部に配線・配管材を収容可能な配線・配管材保護ダクトを切断する保護ダクト切断工具であって、
前記本体部の当接面を受ける受け部と、この受け部に、前記本体部に前記カバー部が装着された状態で受けられた保護ダクトを前記受け部に対して位置固定された刃軸を中心に回動して切断する切断刃とを備え、
更に、切断時に前記受け部を挟んで前記刃軸と対向する位置に、前記切断刃が切断されるべき保護ダクトのカバー部に切り込む際に、その切断力によって外方向に変形をする前記カバー部の天壁を該天壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める天壁変形防止部と、前記カバー部の側壁を該側壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める側壁変形防止部とからなる変形防止部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の保護ダクト切断工具は、請求項1に従属し、変形防止部は、受け部に連続して設けられ、天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、切断されるカバー部の反刃軸側の側壁及び天壁に沿ったL字形状をなすことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の保護ダクト切断工具は、請求項1または2に従属し、天壁変形防止部の長さは、受け止めるべき保護ダクトのカバー部の天壁の切断長さの半分以上の長さで該カバー部を受け止める長さとなっていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の保護ダクト切断工具は、請求項1から3のいずれかに従属し、変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の保護ダクト切断工具は、請求項1から4のいずれかに従属し、変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部と、更に受け部とが、保護ダクト保持部として一体化され、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の保護ダクト切断工具は、請求項5に従属し、保護ダクト保持部を切断刃から遠ざかるように回動させると、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が使用可能となることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の保護ダクト切断工具は、請求項1から4のいずれかに従属し、受け部に、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の保護ダクト切断工具は、壁面等に接触する当接面を備えた本体部と、相互に弾性変形することで前記本体部に着脱可能に装着される矩形外形形状のカバー部とを備え、内部に配線・配管材を収容可能な配線・配管材保護ダクトを切断する保護ダクト切断工具であって、
前記本体部の当接面を受ける受け部と、この受け部に、前記本体部に前記カバー部が装着された状態で受けられた保護ダクトを前記受け部に対して位置固定された刃軸を中心に回動して切断する切断刃とを備え、
更に、切断時に前記受け部を挟んで前記刃軸と対向する位置に、前記切断刃が切断されるべき保護ダクトのカバー部に切り込む際に、その切断力によって外方向に変形をする前記カバー部の天壁を該天壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める天壁変形防止部と、前記カバー部の側壁を該側壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める側壁変形防止部とからなる変形防止部を備えたので、変形しやすいを配線・配管材保護ダクトを好適に切断することができる。
【0016】
請求項2記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項1の効果に加え、変形防止部は、受け部に連続して設けられ、天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、切断されるカバー部の反刃軸側の側壁及び天壁に沿ったL字形状をなすので、保護ダクトの変形を確実に防止することができる。
【0017】
請求項3記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項1または2の効果に加え、天壁変形防止部の長さは、受け止めるべき保護ダクトのカバー部の天壁の切断長さの半分以上の長さで該カバー部を受け止める長さとなっているので、保護ダクトのカバー部の変形がより確実に防止され、保護ダクトをより好適に切断することができる。
【0018】
請求項4記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項1から3のいずれかの効果に加え、変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられているので、切断対象である配管・配線材保護ダクトのセットがよりしやすい。
【0019】
請求項5記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項1から4のいずれかの効果に加え、変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部と、更に受け部とが、保護ダクト保持部として一体化され、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられているので、保護ダクト保持部の開口側に十分な空間がある状態で、配線・配管材保護ダクトのセットができ、そのセットがよりやりやすい。
【0020】
請求項6記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項5の効果に加え、保護ダクト保持部を切断刃から遠ざかるように回動させると、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が使用可能となるので、例えば、二列用の保護ダクトと単列用の保護ダクトなど、二種類の保護ダクトを好適に切断することができる。
【0021】
請求項7記載の保護ダクト切断工具によれば、請求項1から4のいずれかの効果に加え、受け部に、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が設けられているので、例えば、二列用の保護ダクトと単列用の保護ダクトなど、二種類の保護ダクトを好適に切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明の保護ダクト切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、図2(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図である。
【0023】
まず、この保護ダクト切断工具10の切断対象である配線・配管材保護ダクトDWについて図2(b)を用いて説明する。
【0024】
この配線・配管材保護ダクトDWは、配線・配管材を二列平行させて収容可能な二列用保護ダクトであって、合成樹脂製で可撓性があり、壁面等に接触する当接面Daaを備えた本体部Daと、この本体部Daに相互の可撓性によって着脱可能に装着されるカバー部Dbと、本体部Daに収容されるべき配線・配管材とカバー部Dbとの間に必要に応じて挿入される保護・断熱のための保護材Dcとを備えている。
【0025】
カバー部Dbの側部分を側壁Dba、反当接面Daa側、つまり、上面部分を天壁Dbbと称する。この配線・配管材保護ダクトDWは、保護材Dcを用いる場合と、用いない場合とがあるが、いずれにしても、図2(b)のような構成であるので、外部からの力に対して、撓みやすく変形しやすいものである。
【0026】
保護ダクト切断工具10は、本体部Daの当接面Daaを受ける回動受け部3と、この回動受け部3に、本体部Daにカバー部Dbが装着された状態で受けられた保護ダクトDWを受け部3に対して位置固定された刃軸1aを中心に回動して切断する切断刃1とを備えている。
【0027】
その特徴は、切断時に回動受け部3を挟んで刃軸1aと対向する位置に、切断刃1が切断されるべき保護ダクトDWのカバー部Dbに切り込む際に、その切断力によって外方向に変形をするカバー部Dbの天壁Dbbを該天壁Dbbの形状に沿って受け部3との相対的位置を保持しつつ受け止める天壁変形防止部4Bと、カバー部Dbの側壁Dbaを該側壁Dbaの形状に沿って受け部3との相対的位置を保持しつつ受け止める側壁変形防止部4Aとからなる変形防止部4を備えたことにある。
【0028】
本発明では、この相対的に形状変化しない回動側受け部3と変形防止部4とが特徴であり、両者を纏めて、保護ダクト保持部5と称し、その詳細は後述する。一方、工具本体6側は、例えば、特開2005−312522号公報(本出願人によるもの)に記載された保護ダクト切断工具と同様なので詳細は省略するが、以下のような構成である。
【0029】
刃軸1aには切断刃1を開方向に付勢するスプリング1bが設けられ、切断刃1の刃軸1aを挟んで反対側には、順次切断刃1を回動させるためのラチェット歯1cが設けられている。ラチェットレバー1dは、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。
【0030】
ロックレバー1eも、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。操作部7は、固定側の固定ハンドル7Aと、ハンドル軸7aを中心に回動する回動ハンドル7Bとを備えている。
【0031】
作動側ラチェットレバー7bは、回動ハンドル7Bの操作に伴い、図2の切断刃1の全開状態から、順にラチェット歯1cを反時計周りに回動させるものである。その際、固定ハンドル7Aの内側のラチェットレバー1dは、切断刃1が時計周りに戻らないようにしている。
【0032】
また、固定ハンドル7Aの外側のロックレバー1eは、内側のラチェットレバー1dによるロックが効かない程度に切断刃1が反時計回りに回動した際のロックの役割をしている。なお、フックレバー7cは、この保護ダクト切断工具10の不使用時に、固定ハンドル7Aに対して回動ハンドル7Bを引っ掻けて、操作部7の閉状態を維持するためのものである。
【0033】
このような構成で、この保護ダクト切断工具10は、切断刃1を、図2の全開の状態から図1の全閉の状態までこれらの図上で反時計周りに回動させ、また、ラチェットレバー1d、ロックレバー1e等の操作により、図2の全開状態とすることができるものである。
【0034】
保護ダクト保持部5は、回動側受け部3と変形防止部4とを全体として「コ」字状、より具体的には、この保護ダクト切断工具10の主たる切断対象の配線・配管材保護ダクトDWである二列形保護ダクト(図3参照)の当接面Daa、側壁Dba、天壁Dbbに接触する形状となっており、本体側受け部2の刃軸1aと対峙する端部分に設けられた受け部軸5aを中心として、全体として回動するようになっている。
【0035】
つまり、変形防止部4の天壁変形防止部4Bと側壁変形防止部4Aと、更に回動側受け部3とが、保護ダクト保持部5として一体化され、刃軸1aに対して回動受け部3で受けられる保護ダクトDWを挟んで対向した位置にある受け部軸5aを中心に共回動可能に設けられている。
【0036】
また、配線・配管材保護ダクト保持部5は、図1(b)に示すように、受け部軸5aの近傍では連結されてはいるが、他の部分では、切断刃1を間に通過させるような両側一対の二股構成となっていて、これにより、配線・配管材保護ダクト保持部5に配線・配管材保護ダクトDWを保持しながら、切断刃1で切断できるようになっている。
【0037】
これらの切断刃1の刃軸1aを中心とする回動と、保護ダクト保持部5の受け部軸5aを中心とする回動との関係は、図2(a)の全開状態では相互に離れて重なる部分はなく、図1の全閉状態では、切断刃1は、二股状態の配線・配管材保護ダクト保持部5に入り込んで、更に、二股状態となっている本体側受け部2の位置まで達するようになるものである。
【0038】
本体側受け部2は、回動側受け部3を介して配線・配管材保護ダクトDWを受け止めるもので、その刃軸1aに近い側には、より小さい配線・配管材保護ダクトDS(図10参照)を受ける小受け部2aが設けられている。
【0039】
変形防止部4の側壁変形防止部4Aは、回動側受け部3から直角に立ち上がっており、天壁変形防止部4Bは、この側壁変形防止部4Aに傾斜部分を経て直角方向に連設され、回動側受け部3に平行なものとなっている。
【0040】
つまり、変形防止部4は、回動側受け部3に連続して設けられ、天壁変形防止部4Bと側壁変形防止部4Aとは、切断されるカバー部Dbの反刃軸1a側の側壁Dba及び天壁Dbbに沿ったL字形状をなしている。更に、この保護ダクト保持部5は、側壁変形防止部4Aから天壁変形防止部4Bへの傾斜連設部分を含めて、切断対象である配線・配管材保護ダクトDWの外形形状に沿ったものとなっており、変形防止性を高めている。
【0041】
これより、この保護ダクト切断工具10を用いて、配線・配管材保護ダクトDW(二列形保護ダクト)を切断する状態を、図3から図9を用いて説明する。なお、これより既に説明した部分と同じ部分については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
図3は、図1の保護ダクト切断工具により配線・配管材保護ダクトを切断する態様を示すもので、(a)は開いた保護ダクト保持部に配線・配管材保護ダクトをセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から保護ダクト保持部を閉じて、切断する前の状態を示す斜視図である。
【0043】
まず、切断する際には、保護ダクト保持部5と切断刃1とを全開した状態で、配線・配管材保護ダクトDWを保護ダクト保持部5の開口側から保護ダクト保持部5に入れる。この際、保護ダクト保持部5と切断刃1とは大きく空間を置いて離れているので、この空間を用いて長さのある配線・配管材保護ダクトDWを、その長手軸方向に直交する方向に移動させて、簡単に入れることができる。
【0044】
つまり、周囲の空間に、配線・配管材保護ダクトDWを長手軸方向に移動させる空間がない場合でも、切断へのセット作業ができる。また、この際、本体部Daの当接面Daaが回動側受け部3に、カバー部Dbの天壁Dbbと側壁Dbaが変形防止部4に接触して保持される。
【0045】
ついで、配線・配管材保護ダクトDWを収容した保護ダクト保持部5を図3(b)のように閉じ状態とし、回動ハンドル7Bの回動操作を繰り返すと、順次、切断刃1が回動して配線・配管材保護ダクトDWに近づき、接触する。図4は、図3(b)の状態を、配線・配管材保護ダクトの手前側から見た正面図である。
【0046】
ここで、図4に示すように、天壁変形防止部4Bの長さ4Lは、受け止めるべき保護ダクトDWのカバー部Dbの天壁Dbbの切断長さDLの半分以上の長さでカバー部Dbを受け止める長さとなっている。このようにすると、保護ダクトDWのカバー部Dbの変形がより確実に防止され、保護ダクトDWをより好適に切断することができる。
【0047】
また、この天壁Dbbの切断長さDLの半分の部分というのは、切断刃1の切断力が作用した際に、最も大きく外側へ湾曲して変形しようとする部分であり、天壁変形防止部4Bの長さ4Lをその部分に達するようにすることで、変形防止機能がより良く発揮されるものである。
【0048】
図5は、図4の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに切り込んだ状態を示す正面図、図6は、図5の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図、図7は、図6の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図、図8は、切断刃による配線・配管材保護ダクトの切断が完了した状態を示す正面図である。
【0049】
ここで、図5の状態に注目されたい。変形防止部4(側壁変形防止部4Aと天壁変形防止部4B)がカバー部Dbをその形状に合わせてしっかり変形しないように受けているので、それがなければ、切断刃1の力を受けて外側へ移動・変形しようとするカバー部Dbの移動・変形を阻止している。
【0050】
また、図6の状態にも注目されたい。更に、切断刃1の回動が進んで、保護材Dcを切断し、本体部Daの上部部分を切断し始めても、この部分がそれほど変形していない。これは、本体部Daの当接面Daaが回動側受け部3で受けられ、カバー部Dbの側壁Dbaと天壁Dbbとが変形防止部4(側壁変形防止部4Aと天壁変形防止部4B)で受け止められているためと思われる。
【0051】
図9(a)は、図1の保護ダクト切断工具で切断した配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図、(b)は、変形防止部を備えていない保護ダクト切断工具で切断した配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図である。
【0052】
本発明の保護ダクト保持部5(変形防止部4)を備えた保護ダクト切断工具10によって、切断した図9(a)の配線・配管材保護ダクトDWは、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcのいずれも配線・配管材保護ダクトDWの軸方向に直角に凹凸無く切断されている。
【0053】
これに比べ、このような変形防止部4のない保護ダクト切断工具で切断した配線・配管材保護ダクトDWは、本出願人の試験によれば、図9(b)に示すように、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcの切断面が凸凹になっていて、このままでは、使用することができない。
【0054】
また、この切断過程から解るように、この保護ダクト切断工具10によれば、切断中、切断刃1に回動側受け部3が押され、したがって、これに共回動する変形防止部4も、間違っても動くことがなく、配線・配管材保護ダクトDWを受け止め、その移動・変形を防止することができる。
【0055】
つまり、この保護ダクト切断工具10によれば、切断時に配線・配管材保護ダクトDWの変形が防止されて、変形しやすいを配線・配管材保護ダクトを好適に切断することができる。
【0056】
更に、変形防止部4(側壁変形防止部4Aと天壁変形防止部4B)は配線・配管材保護ダクトDWの側壁Dbaと天壁Dbbの形状に対応したL字状のものであるので、その変形を確実に防止することができる。一方、この例では、変形防止部4と回動受け部3とは一体化されて保護ダクト保持部5として共回動するが、後述するように、このような共回動は、保護ダクト保持部5への配線・配管材保護ダクトDW、DSのセットをしやすくするためのもので、変形を防止するための必須の要件ではない。
【0057】
図10(a)は図3に示した配線・配管材保護ダクトより小型の配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図、(b)は(a)の配線・配管材保護ダクトを図1の保護ダクト切断工具で切断する場合の態様を示す正面図である。
【0058】
図10(a)の配線・配管材保護ダクトDSは、図3の配線・配管材保護ダクトDWに比べ、配線・配管材を単列収容する単列用保護ダクトであり、同様の合成樹脂製であり、可撓性があるが、その可撓性の程度は小さいものであり、同様な本体部Dd、カバー部De、保護材Dfを備えている。
【0059】
このような小型の配線・配管材保護ダクトDSを切断する場合は、保護ダクト保持部5を開いて、本体側受け部2を覗かせ、その小受け部2aに配線・配管材保護ダクトDSを図10(b)で示すように載せて、切断する。この場合、変形防止部のようなものがなくとも、配線・配管材保護ダクトDSの撓みが少ないので、その切断面は、その長手軸方向に直角で、凹凸のないものとなる。
【0060】
つまり、この保護ダクト切断工具10によれば、大きくてより撓みやすく変形しやすい配線・配管材保護ダクトDWは、保護ダクト保持部(変形防止部4)5を用いることで好適に、小さくて撓みの少ない配線・配管材保護ダクトDSは、配線・配管材保護ダクト保持部(変形防止部)5を用いることなく、小受け部2aで好適に切断することができる。
【0061】
なお、変形防止部4(側壁変形防止部4Aと天壁変形防止部4B)の形状は、この例示のものに限定されず、切断対象の外径形状に合わせて、曲線を含むものであってもよい。つまり、例えば、天壁が緩やかな突曲面の場合にはそれに合わせた曲面とするのがよく、側壁と天壁との間が曲面で連結されている場合には、それに合わせたコーナー部分を設けるのがよい。
【0062】
<実施形態2>
図11は、本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0063】
この保護ダクト切断工具10Aは、図1の保護ダクト切断工具10に比べ、保護ダクト保持部5Aの回動側受け部3Aが短寸のものとなり、切断時には、本体側受け部2Aと共同して、配線・配管材保護ダクトDWの当接面Daaを受けるようになっている点が異なっている。
【0064】
また、小受け部2bも、本体側受け部2Aが、回動側受け部3Aと同一面を形成するように、配線・配管材保護ダクトDW側により高くなっているのに対応して、切断工具10の小受け部2Aがより深いものとなっている点が異なっている。
【0065】
このような構成の保護ダクト切断工具10Aによれば、図1〜図10の保護ダクト切断工具10と同様に、変形防止部4を備え、回動側受け部3Aは共回動するので、保護ダクト切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<実施形態3>
図12は、本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、図13(a)、(b)は、図12の保護ダクト切断工具の使用態様を示す正面図である。
【0067】
この保護ダクト切断工具10Bは、図1の保護ダクト切断工具10に比べ、保護ダクト保持部5Bの回動側受け部が無くなり、切断時には、本体側受け部2Bが、配線・配管材保護ダクトDWの当接面Daaを受け、小受け部が設けられていない点が異なっている。
【0068】
このような構成の保護ダクト切断工具10Aによれば、図1〜図10の保護ダクト切断工具10と同様に、変形防止部4を備え、図13(a)に示すように、保護ダクト保持部5Bは保護ダクトDWを受けた状態で回動するので、保護ダクト切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
また、小型の配線・配管材保護ダクトDSについては、図13(b)に示すように、変形防止部4にそのカバー部Deが接するようにすることで、好適に切断することができる。
【0070】
<実施形態3>
図14は、本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0071】
この保護ダクト切断工具10Cは、図12の保護ダクト切断工具10Bに比べ、保護ダクト保持部5Cのが、本体側受け部2Cに対して、固定手段5bにより回動しないように固定されている点が異なっている。
【0072】
このような構成の保護ダクト切断工具10によれば、図1〜図10の保護ダクト切断工具10と同様に、変形防止部4を備えているので、保護ダクト切断工具10と同様の変形防止効果を発揮することができる。
【0073】
一方、保護ダクト保持部5Cは回動しないので、配線・配管材保護ダクトDW、DSをセットする際には、保護ダクトDW、DSをその軸方向に移動して、保護ダクト保持部5C内に入れるようにする必要がある。
【0074】
本発明の保護ダクト切断工具は、上記の実施態様に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施態様の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、本発明の技術的範囲には、これらの変形例、組み合わせも含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の保護ダクト切断工具は、変形しやすいを配線・配管材保護ダクトを好適に切断することができることが要請される産業上の分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の保護ダクト切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図2】(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図
【図3】図1の保護ダクト切断工具により配線・配管材保護ダクトを切断する態様を示すもので、(a)は開いた保護ダクト保持部に配線・配管材保護ダクトをセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から保護ダクト保持部を閉じて、切断する前の状態を示す斜視図
【図4】図3(b)の状態を、配線・配管材保護ダクトの手前側から見た正面図
【図5】図4の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに切り込んだ状態を示す正面図
【図6】図5の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図
【図7】図6の状態から更に切断刃が配線・配管材保護ダクトに3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図
【図8】切断刃による配線・配管材保護ダクトの切断が完了した状態を示す正面図
【図9】(a)は、図1の保護ダクト切断工具で切断した配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図、(b)は、変形防止部を備えていない保護ダクト切断工具で切断した配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図
【図10】(a)は図3に示した配線・配管材保護ダクトより小型の配線・配管材保護ダクトを示す外観斜視図、(b)は(a)の配線・配管材保護ダクトを図1の保護ダクト切断工具で切断する場合の態様を示す正面図
【図11】本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図12】本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図13】(a)、(b)は、図12の保護ダクト切断工具の使用態様を示す正面図
【図14】本発明の保護ダクト切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図15】本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図
【符号の説明】
【0077】
1 切断刃
1a 刃軸
2〜2C 本体側受け部
2a 小受け部
3〜3A 回動側受け部(受け部)
3a 小受け部
4 変形防止部
4A 側壁変形防止部
4B 天壁変形防止部
4L 天壁変形防止部の長さ
5〜5C 保護ダクト保持部
5a 受け部軸
6 工具本体
7 操作部
10〜10C 保護ダクト切断工具
Da 本体部
Daa 当接面
Db カバー部
Dba 側壁
Dbb 天壁
Dc 保護材
DL 天壁の切断長さ
DW 配線・配管材保護ダクト
DS 配線・配管材保護ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面等に接触する当接面を備えた本体部と、相互に弾性変形することで前記本体部に着脱可能に装着される矩形外形形状のカバー部とを備え、内部に配線・配管材を収容可能な配線・配管材保護ダクトを切断する保護ダクト切断工具であって、
前記本体部の当接面を受ける受け部と、この受け部に、前記本体部に前記カバー部が装着された状態で受けられた保護ダクトを前記受け部に対して位置固定された刃軸を中心に回動して切断する切断刃とを備え、
更に、切断時に前記受け部を挟んで前記刃軸と対向する位置に、前記切断刃が切断されるべき保護ダクトのカバー部に切り込む際に、その切断力によって外方向に変形をする前記カバー部の天壁を該天壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める天壁変形防止部と、前記カバー部の側壁を該側壁の形状に沿って前記受け部との相対的位置を保持しつつ受け止める側壁変形防止部とからなる変形防止部を備えたことを特徴とする保護ダクト切断工具。
【請求項2】
変形防止部は、受け部に連続して設けられ、天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、切断されるカバー部の反刃軸側の側壁及び天壁に沿ったL字形状をなすことを特徴とする請求項1記載の保護ダクト切断工具。
【請求項3】
天壁変形防止部の長さは、受け止めるべき保護ダクトのカバー部の天壁の切断長さの半分以上の長さで該カバー部を受け止める長さとなっていることを特徴とする請求項1または2記載の保護ダクト切断工具。
【請求項4】
変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部とは、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の保護ダクト切断工具。
【請求項5】
変形防止部の天壁変形防止部と側壁変形防止部と、更に受け部とが、保護ダクト保持部として一体化され、刃軸に対して受け部で受けられる保護ダクトを挟んで対向した位置にある受け部軸を中心に共回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の保護ダクト切断工具。
【請求項6】
保護ダクト保持部を切断刃から遠ざかるように回動させると、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が使用可能となることを特徴とする請求項5記載の保護ダクト切断工具。
【請求項7】
受け部に、より小形の配線・配管材保護ダクトを受ける小受け部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の保護ダクト切断工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−219678(P2009−219678A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67556(P2008−67556)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】