説明

保護テープ切断方法およびこれを用いた装置

【課題】 カッタ刃に粘着剤が付着残留するのを防止して良好な切れ味を長く維持できるようにする保護テープ切断方法およびこれを用いた装置を提供する。
【解決手段】 第1温度制御装置36により冷却ノズル32からカッタ刃12に吹き付ける冷却空気の温度や流量、および電熱ヒータ31によるカッタ刃12の加熱を調整し、カッタ刃12を常温以下に保ちながら保護テープTを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの外周に沿ってカッタ刃を相対走行させて半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープをウエハ外形に沿って切り抜くための保護テープ切断方法およびこれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保護テープの切断手段としては、テーブルに載置保持されたウエハの表面に保護テープを供給し、貼付けローラを転動移動させて保護テープをウエハの表面に貼付ける。その後に保護テープにカッタ刃を突き刺した状態で、テーブルを回転させることでウエハの外周に沿ってカッタ刃を相対走行させ、保護テープをウエハ外周に沿って切断するよう構成したものが知られている。また、保護テープの種類によっては、切断時にカッタ刃を加熱することも行われている。
【特許文献1】特開平1−43458号公報(第7頁、左上欄第13〜18行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カッタ刃で保護テープを切断する場合、保護テープの粘着剤がカッタ刃の側面に付着残留することがあり、この粘着剤の付着が進行することで切断性能が短時間で低下する。特に、保護テープの切断を容易にするためにカッタ刃を加熱すると、カッタ刃の熱を受けて軟化した粘着剤が一層カッタ刃の側面に付着残留しやすくなる。
【0004】
また、カッタ刃を加熱すると、保護テープの種類によってはカッタ刃が保護テープに突き刺された際に、その突き刺し箇所で保護テープが溶融変形して仕上がりが悪化することもある。
【0005】
また、保護テープをウエハの外周縁に的確に沿って切断するために、カッタ刃はウエハ外周縁に弾性的に押し付けられる。このために、カッタ刃がウエハ外周縁に摺接しながら走行することになる。この摺接によって発生した摩擦熱で刃先付近の温度が一層高いものとなって、粘着剤の付着が発生しやすくなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、カッタ刃に粘着剤が付着残留するのを防止し、良好な切れ味を長く維持できるようにする保護テープ切断方法およびこれを用いた装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような手段を講じる。
【0008】
第1の発明は、パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを、半導体ウエハの外周に沿ってカッタ刃を移動させることにより切断する保護テープ切断方法であって、
冷却手段により前記カッタ刃を冷却しながら前記保護テープを切断することを特徴とする。
【0009】
(作用・効果) この方法によれば、カッタ刃の熱あるいはカッタ刃とウエハ外周縁との摺接によって発生した熱で保護テープの粘着剤が軟化することが抑制され、カッタ刃への粘着剤の付着しにくい保護テープ切断が可能となる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明方法において、
冷却手段により前記カッタ刃を冷却するとともに、加熱手段により当該カッタ刃を加熱して刃先の温度を常温以下となるように温度調節することを特徴とする。
【0011】
(作用・効果) この方法によれば、冷却具合を加減することで、カッタ刃の温度を、保護テープの切断に好適で、かつ、粘着剤が付着しにくい常温以下の所定温度で切断処理を行なうことができる。
【0012】
第3の発明は、パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを、半導体ウエハの外周に沿ってカッタ刃を移動させることにより切断する保護テープ切断方法であって、
冷却手段により前記保護テープを冷却しながら切断することを特徴とする。
【0013】
(作用・効果) この方法によれば、保護テープの粘着剤が冷却硬化されてカッタ刃に付着しにくい状態となる。また、カッタ刃が保護テープに突き刺された時に、冷却される保護テープは、カッタ刃の熱で溶融したり変形したりするようなことがない。すなわち、仕上がりの良好な切断が行われる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明方法において、
冷却手段により前記保護テープを冷却するとともに、加熱手段により前記カッタ刃を加熱し、当該カッタ刃の接触部位が常温以下となるように温度調節しながら保護テープを切断することを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) この方法によれば、カッタ刃からの熱が保護テープの粘着剤に伝わっても、直ちに冷却硬化されて、カッタ刃に付着しにくい状態となる。また、カッタ刃が保護テープに突き刺された時に、冷却される保護テープは、カッタ刃の熱で溶融したり変形したりするようなことがない。すなわち、仕上がりの良好な切断が行われる。
【0016】
第5の発明は、パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断装置であって、
前記半導体ウエハを載置保持する保持手段と、
前記保持手段により載置保持された半導体ウエハ表面に保護テープを貼り付ける保護テープ貼付手段と、
カッタ刃を備え、当該カッタ刃を前記保護テープに貫通させて前記半導体ウエハの外周に沿って移動させることにより、半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断手段と、
前記保護テープ切断手段のカッタ刃を冷却するカッタ刃冷却手段と、
切断後の不要な保護テープを回収するテープ回収手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
(作用・効果) この構成によれば、保持手段に載置保持された半導体ウエハに貼り付けられた保護テープを、カッタ刃によってウエハ外周に沿って切断するときに、冷却手段によりカッタ刃を冷却した状態で切断することができる。すなわち、上記第1の発明方法を好適に実現することができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明装置において、
前記カッタ刃冷却手段は、カッタ刃に冷却気体を吹き付けて冷却する冷却ノズルであることを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) この構成によれば、カッタ刃をテープ切断に好適な温度に冷却することができるとともに、その周辺に流動した冷気によって保護テープをも適度に冷却して粘着剤の軟化を抑制することができる。
【0020】
第7の発明は、第5の発明装置において、
前記カッタ刃冷却手段は、電子冷却素子であることを特徴とする。
【0021】
(作用・効果) この構成によれば、電子冷却素子への通電制御などによって冷却機能を任意に調整することができる。つまり、保護テープの種類などに応じた最適のカッタ刃冷却を行なうことができる。
【0022】
第8の発明は、第5ないし第7のいずれかの発明装置において、
前記カッタ刃を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段および前記冷却手段を操作してカッタ刃の温度調節を行なう第1温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
(作用・効果) この構成よれば、加熱と冷却の組み合わせによってカッタ刃の温度をきめ細かく設定することが容易となる。
【0024】
第9の発明は、パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断装置であって、
前記半導体ウエハを載置保持する保持手段と、
前記保持手段により吸着保持された半導体ウエハ表面に保護テープを貼り付ける保護テープ貼付手段と、
カッタ刃を備え、当該カッタ刃を前記保護テープに貫通させて前記半導体ウエハの外周に沿って移動させることにより、半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断手段と、
前記保護テープを冷却するテープ冷却手段と、
切断後の不要な保護テープを回収するテープ回収手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0025】
(作用・効果) この構成によれば、保持手段に載置保持された半導体ウエハに貼り付けられた保護テープを、カッタ刃によってウエハ外周に沿って切断するとき、冷却手段により保護テープを冷却した状態で切断することができる。すなわち、上記第3の発明方法を好適に実現することができる。
【0026】
第10の発明は、第9の発明装置において、
前記テープ冷却手段は、前記カッタ刃との接触部位を含む近傍領域の保護テープに冷却気体を吹き付けて冷却する冷却ノズルであることを特徴とする。
【0027】
(作用・効果) この構成によれば、冷却ノズルの向き調整によって冷却部位を任意に設定することができ、保護テープの種類や切断速度などの切断条件に適合した好適なテープ冷却のもとで切断処理を行なうことができる。
【0028】
第11の発明は、第9または第10の発明装置において、
前記カッタ刃を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段および前記テープ冷却手段を操作して切断部位の温度調節を行なう第2温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0029】
(作用・効果) この構成によれば、カッタ刃の加熱と保護テープの冷却の組み合わせによって切断部位の温度をきめ細かく調節設定することができ、カッタ刃への粘着剤の付着のない仕上がりの良好なテープ切断処理を行なうことができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係る保護テープ切断方法およびこれを用いた装置によると、カッタ刃に粘着剤が付着残留するのを防止して良好な切れ味を長く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施例説明する。
【0032】
図1は、保護テープ切断装置の全体構成を示す斜視図である。
【0033】
本実施例の保護テープ切断装置は、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wを収納したカセットCが装填されるウエハ供給/回収部1、ロボットアーム2を備えたウエハ搬送機構3、アライメントステージ4、ウエハWを載置して吸着保持するチャックテーブル5、ウエハWに向けて保護テープTを供給するテープ供給部6、テープ供給部6から供給されたセパレータ付きの保護テープTからセパレータsを剥離回収するセパレータ回収部7、チャックテーブル5に載置されて吸着保持されたウエハWに保護テープTを貼付ける貼付けユニット8、ウエハWに貼付けられた保護テープTをウエハWの外形に沿って切り抜き切断するテープ切断機構9、ウエハWに貼付けて切断処理した後の不要テープT’を剥離する剥離ユニット10、剥離ユニット10で剥離された不要テープT’を巻き取り回収するテープ回収部11、等が備えられている。以下、上記各部についての具体的な構成を説明する。
【0034】
ウエハ供給/回収部1には2台のカセットCを並列して装填可能であり、各カセットCには、配線パターン面を上向きにした多数枚のウエハWが多段に水平姿勢で差込み収納されている。
【0035】
ウエハ搬送機構3に備えられたロボットアーム2は、水平に進退移動可能に構成されるとともに、全体が駆動旋回および昇降可能となっている。そして、ロボットアーム2の先端には、馬蹄形をした真空吸着式のウエハ保持部2aが備えられており、カセットCに多段に収納されたウエハW同士の間隙にウエハ保持部2aを差し入れてウエハWを裏面から吸着保持し、吸着保持したウエハWをカセットCから引き出して、アライメントステージ4、チャックテーブル5、および、ウエハ供給/回収部1の順に搬送するようになっている。
【0036】
アライメントステージ4は、ウエハ搬送機構3によって搬入載置されたウエハWを、その外周に形成されたオリエンテーションフラットやノッチなどに基づいて位置合わせを行なうようになっている。
【0037】
チャックテーブル5は、ウエハ搬送機構6から移載されて所定の位置合わせ姿勢で載置されたウエハWを真空吸着するようになっている。また、このチャックテーブル5の上面には、図3に示すように、後述するテープ切断機構9に備えたカッタ刃12をウエハWの外形に沿って旋回移動させて保護テープTを切断するためにカッタ走行溝13が形成されている。なお、チャックテーブル5は、本発明の保持手段に相当する。
【0038】
テープ供給部6は、供給ボビン14から繰り出されたセパレータ付きの保護テープTをガイドローラ15群に巻回案内し、セパレータsを剥離した保護テープTを貼付けユニット8に導くよう構成されており、供給ボビン14に適度の回転抵抗を与えて過剰なテープ繰り出しが行われないように構成されている。
【0039】
セパレータ回収部7は、保護テープTから剥離されたセパレータsを巻き取る回収ボビン16が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。
【0040】
貼付けユニット8には貼付けローラ17が前向き水平に備えられており、スライド案内機構18よび図示されないネジ送り式の駆動機構によって左右水平に往復駆動されるようになっている。なお、貼付けユニット8は、本発明の保護テープ貼付手段に相当する。
【0041】
剥離ユニット10には剥離ローラ19が前向き水平に備えられており、前記スライド案内機構18および図示されないネジ送り式の駆動機構によって左右水平に往復駆動されるようになっている。
【0042】
テープ回収部11は、不要テープT’を巻き取る回収ボビン20が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。なお、テープ回収部11は、本発明のテープ部回収手段に相当する。
【0043】
テープ切断機構9は、図2に示すように、駆動昇降可能な可動台21の下部に、チャックテーブル5の中心上に位置する縦軸心X周りに駆動旋回可能に一対の支持アーム22が並列装備されている。また、支持アーム22の遊端側に備えたカッタホルダ23に、刃先を下向きにしたカッタ刃12が装着され、支持アーム22が縦軸心X周りに所定方向に旋回移動することでカッタ刃12がウエハWの外周に沿って走行して保護シートTを切り抜くよう構成されている。なお、前記可動台21は、モータ24を正逆回転駆動することで縦レール25に沿ってねじ送り昇降されるようになっている。また、この可動台21の遊端部に縦軸心X周りに回動可能に装備された回動軸26が、可動台21の上に配備されたモータ27に2本のベルト28を介して減速連動され、モータ27の作動によって回動軸26が所定の方向に低速で回動されるようになっている。そして、この回動軸26から下方に延出された支持部材29の下端部に、支持アーム22が水平方向スライド調節可能に貫通支持されており、支持アーム22のスライド調節によってカッタ刃12の縦軸心Xからの距離、つまり、カッタ刃12の旋回半径をウエハ径に対応して変更調節することが可能となっている。また、詳細な構造の説明は省略するが、カッタ刃12は、その切断進行方向に対する刃面の切込み角度、および、ウエハWの周縁に対する刃面の傾斜角度が調節可能となっている。なお、テープ切断機構9は、本発明の保護テープ切断手段に相当する。
【0044】
次に、上記装置を用いて保護テープTをウエハWの表面に貼り付けて切り抜くための一連の基本動作を図3〜図6に基づいて説明する。
【0045】
貼り付け指令が出されると、先ず、ウエハ搬送機構3におけるロボットアーム2がカセット台に載置装填されたカセットCに向けて移動され、ウエハ保持部2aがカセットCに収容されているウエハ同士の隙間に挿入される。そして、ウエハ保持部2aでウエハWを裏面(下面)から吸着保持して搬出し、取り出したウエハWをアライメントステージ4に移載する。
【0046】
アライメントステージ4に載置されたウエハWは、ウエハWの外周に形成されているノッチを利用して位置合わせされ、位置合わせのすんだウエハWは再びロボットアーム2によって搬出されてチャックテーブル5に載置される。
【0047】
チャックテーブル5に載置されたウエハWは、その中心がチャックテーブル5の中心上にあるように位置合わせされた状態で吸着保持される。この時、図3に示すように、貼付けユニット8と剥離ユニット10は左側の初期位置に、また、テープ切断機構9のカッタ刃12は上方の初期位置でそれぞれ待機している。
【0048】
次に、図3中の仮想線で示すように、貼付けユニット8の貼付けローラ17が下降されるとともに、この貼付けローラ17で保護テープTを下方に押圧しながらウエハW上を前方(図では右方向)に転動する。これによって保護テープTがウエハWの表面全体に貼付けられる。
【0049】
次に、図4に示すように、貼付けユニット8が終端位置に達すると、図5に示すように、上方に待機していたカッタ刃12が下降されて、チャックテーブル5のカッタ走行溝13において保護テープTに突き刺される。
【0050】
カッタ刃12が所定の切断高さ位置まで下降されて停止すると、カッタ刃12が縦軸心X周りに旋回移動して保護テープTがウエハ外形に沿って切断される。この場合、カッタ刃12は付勢力によってウエハWの外周に適度に押し付けられながら走行し、ウエハWの外形に沿ったテープ切断が行われる。
【0051】
ウエハWの外周に沿ったテープ切断が終了すると、図6に示すように、カッタ刃12は上方の待機位置まで上昇される。次いで、剥離ユニット10が前方へ移動しながらウエハW上で切り抜き切断されて残った不要テープT’を巻き上げ剥離する。
【0052】
剥離ユニット10が剥離作業の終了位置に達すると、剥離ユニット10と貼付けユニット8とが逆方向に移動して初期位置に復帰する。この時、不要テープT’が回収ボビン20に巻き取られるとともに、一定量の保護テープTがシート供給部6から繰り出される。
【0053】
テープ貼付け切断作動が終了すると、チャックテーブル5における吸着が解除された後、貼付け処理のすんだウエハWはロボットアーム2のウエハ保持部2aに移載されてウエハ供給/回収部1のカセットCに差込み回収される。
【0054】
以上で1回のシート貼り付け切断処理が完了し、以後、上記作動を順次に繰り返して行なう。
【0055】
以上のように構成され作動するテープ切断機構9において、本発明では切断性能を高めるための構造が付加されており、以下にその具体例のいくつかを示す。
【0056】
〔第1例〕
【0057】
図7に示すように、カッタホルダ23にはカッタ刃12を加熱する電熱ヒータ31が組み付けられるとともに、電子冷却素子を利用して冷却した空気を冷却ノズル32から吹き出す冷却器33が装備され、冷却ノズル32から吹き出された冷却空気がカッタ刃12に吹きつけられるようになっている。このとき、冷却ノズル32から吹き出す冷却空気の流量や温度が調整されている。また、電熱ヒータ31および冷却器33は第1温度制御装置34に接続されており、電熱ヒータ31および冷却器33への通電制御によってカッタ刃12の温度を設定温度に維持するようになっている。また、第1温度制御装置34には温度設定器35が接続されており、保護テープTの種類等に応じて任意に設定温度を調整することが可能となっている。本第1例の場合、カッタ刃12の温度が常温以下になるよに設定することが好ましい。さらに好ましくは、−10〜0℃の範囲である。すなわち、常温以下にカッタ刃12の温度を保つことで、保護テープTの粘着剤が軟化してカッタ刃12に付着しづらくすることができる。なお、冷却ノズル32は、本発明のカッタ刃冷却手段に、第1温度制御装置34は第1温度制御手段に相当する。
【0058】
このように、カッタ刃12を冷却ノズル32から噴出す冷却空気によって常温以下に冷却するように設定すると、保護テープTの粘着剤がカッタ刃12に触れて硬化されるので、粘着剤がカッタ刃12の側面に付着残留することが防止される。また、カッタ刃12の側面がウエハWの周端縁に摺接して発生する摩擦熱によってカッタ刃12が昇温することが抑制される。また、保護テープTが刃先の突き刺し部位で溶融したり変形したりすることもなく仕上がりの良い切断が行われる。
【0059】
なお、冷却に使用する気体は、冷却空気に限定されず、他の気体のガス類なども使用することができる。
【0060】
上述の第1例の場合、カッタ刃12からの熱が保護テープTの粘着剤に伝わっても、冷却空気によって直ちに保護テープTの粘着剤が冷却硬化され、カッタ刃12に粘着剤が付着しにくい状態となる。また、切断部位周辺に流動した冷気によって保護テープTをも適度に冷却して粘着剤の軟化を抑制することができる。さらに、カッタ刃12が保護テープTに突き刺された時に、冷却される保護テープTは、カッタ刃12の熱で溶融したり変形したりするようなことがない。したがって、粘着剤の付着のない仕上がりの良好なテープ切断処理を行なうことができる。
【0061】
〔第2例〕
【0062】
図8に示すように、この例では、カッタ刃12が電熱ヒータ31で加熱されるとともに、冷却ノズル32から噴出する冷却空気が保護テープTに吹き付けられて、保護テープの切断部位付近が冷却されるように構成されている。なお、冷却空気を吹き付ける部分は、カッタ刃12の移動方向である前方の領域または切断部材を含む領域に冷却空気を吹き付けることが好ましい。また、電熱ヒータ31および冷却器33が第2温度制御装置36に接続されており、電熱ヒータ31および冷却器33への通電制御によってカッタ刃12の切断部位における温度を常温以下の所定温度に維持されるようになっている。なお、第2温度制御装置36は、本発明の第2温度制御手段に相当する。
【0063】
このように、カッタ刃12を加熱することで保護テープTの切断部位がカッタ刃12に触れて軟化することで切断が容易となる。また、保護テープTの切断部位は軟化状態が続くことなく冷却されて粘着剤も直ちに冷却硬化されるので、保護テープTが刃先の突き刺し部位で溶融したり変形したりすることが防止されるとともに、粘着剤の一部がカッタ刃12の側面に付着残留することが防止される。
【0064】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0065】
(1)冷却器33を装置の固定部位に設置して、冷却器33と冷却ノズル32とをホースや配管で接続することもできる。
【0066】
(2)カッタ刃12の温度を温度センサで検知して第1温度制御装置34あるいは第2温度制御装置36にフィードバックすることで一層安定した温度制御を行なうことができる。
【0067】
(3)上述の実施例では、冷却ノズル32の角度を所定角度に固定し、カッタ刃12と保護テープTのいずれかに冷却空気を吹き付けていたが、保護テープTを切断する最中に、冷却ノズル32の先端の角度を上下に揺動させてカッタ刃12と保護テープTの両方に冷却空気を適時に吹き付けるように構成してもよい。また、冷却ノズル32を複数本備え、各部位に同時または間欠的に冷却空気を吹き付けるように構成してもよい。また、カッタ刃周りの任意の位置および角度から冷却空気がカッタ刃12や保護テープTに吹き付けられるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】保護テープ切断装置の全体を示す斜視図である。
【図2】テープ切断機構を示す側面図である。
【図3】保護テープ貼付け工程を示す正面図である。
【図4】保護テープ貼付け工程を示す正面図である。
【図5】保護テープ貼付け工程を示す正面図である。
【図6】保護テープ貼付け工程を示す正面図である。
【図7】テープ切断機構の要部を示す第1例の正面図である。
【図8】テープ切断機構の要部を示す第2例の正面図である。
【符号の説明】
【0069】
12 … カッタ刃
31 … 電熱ヒータ
32 … 冷却ノズル
33 … 冷却器
34 … 第1温度制御装置
35 … 温度設定器
36 … 第2温度制御装置
T … 保護テープ
W … 半導体ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを、半導体ウエハの外周に沿ってカッタ刃を移動させることにより切断する保護テープ切断方法であって、
冷却手段により前記カッタ刃を冷却しながら前記保護テープを切断する
ことを特徴とする保護テープ切断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の保護テープ切断方法において、
冷却手段により前記カッタ刃を冷却するとともに、加熱手段により当該カッタ刃を加熱して刃先の温度を常温以下となるように温度調節する
ことを特徴とする保護テープ切断方法。
【請求項3】
パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを、半導体ウエハの外周に沿ってカッタ刃を移動させることにより切断する保護テープ切断方法であって、
冷却手段により前記保護テープを冷却しながら切断する
ことを特徴とする保護テープ切断方法。
【請求項4】
請求項3に記載の保護テープ切断方法において、
冷却手段により前記保護テープを冷却するとともに、加熱手段により前記カッタ刃を加熱し、当該カッタ刃の接触部位が常温以下となるように温度調節しながら保護テープを切断する
ことを特徴とする保護テープ切断方法。
【請求項5】
パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断装置であって、
前記半導体ウエハを載置保持する保持手段と、
前記保持手段により載置保持された半導体ウエハ表面に保護テープを貼り付ける保護テープ貼付手段と、
カッタ刃を備え、当該カッタ刃を前記保護テープに貫通させて前記半導体ウエハの外周に沿って移動させることにより、半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断手段と、
前記保護テープ切断手段のカッタ刃を冷却するカッタ刃冷却手段と、
切断後の不要な保護テープを回収するテープ回収手段と、
を備えたことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の保護テープ切断装置において、
前記カッタ刃冷却手段は、カッタ刃に冷却気体を吹き付けて冷却する冷却ノズルである
ことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項7】
請求項5に記載の保護テープ切断装置において、
前記カッタ刃冷却手段は、電子冷却素子である
ことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の保護テープ切断装置において、
前記カッタ刃を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段および前記冷却手段を操作してカッタ刃の温度調節を行なう第1温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項9】
パターンが形成された半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断装置であって、
前記半導体ウエハを載置保持する保持手段と、
前記保持手段により吸着保持された半導体ウエハ表面に保護テープを貼り付ける保護テープ貼付手段と、
カッタ刃を備え、当該カッタ刃を前記保護テープに貫通させて前記半導体ウエハの外周に沿って移動させることにより、半導体ウエハの表面に貼り付けられた保護テープを切断する保護テープ切断手段と、
前記保護テープを冷却するテープ冷却手段と、
切断後の不要な保護テープを回収するテープ回収手段と、
を備えたことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項10】
請求項9に記載の保護テープ切断装置において、
前記テープ冷却手段は、前記カッタ刃との接触部位を含む近傍領域の保護テープに冷却気体を吹き付けて冷却する冷却ノズルである
ことを特徴とする保護テープ切断装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の保護テープ切断装置において、
前記カッタ刃を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段および前記テープ冷却手段を操作して切断部位の温度調節を行なう第2温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする保護テープ切断装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−272505(P2006−272505A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94849(P2005−94849)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(394016601)日東精機株式会社 (79)
【Fターム(参考)】