説明

保護フィルムおよび保護フィルム付偏光板

【課題】偏光板の反りを良好に抑制可能な保護フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の保護フィルムは、第1の樹脂層11と、接着層13と、第2の樹脂層12とをこの順で有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な画像表示装置である液晶表示装置では、その画像形成方式に起因して、液晶セルの両側に偏光板が貼り合わされる。偏光板は、力学的、光学的な耐久性を向上させる等の観点から、通常、偏光性能を有する偏光子の少なくとも片側に保護層が積層されて構成されている。しかし、偏光板には、偏光子と保護層との線膨張率や熱収縮率の違い等によって、反りが発生しやすいという問題がある。このような偏光板の反りは、例えば、液晶セルに貼り合わされることにより解消され得るが、製造工程(例えば、他の光学部材との積層工程、液晶セルへの貼り合せ工程)における不具合の原因となる。
【0003】
ところで、上記製造工程において、通常、偏光板(偏光板中間体を含む)には、保護フィルムが貼り合わされている(例えば、特許文献1参照)。このような保護フィルムの貼り合わせにより、上記偏光板の反りを抑制することが提案されているが、偏光板の構成によっては、反りの抑制が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3368524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、偏光板の反りを良好に抑制可能な保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の保護フィルムは、偏光板の保護フィルムであって、第1の樹脂層と、接着層と、第2の樹脂層とをこの順で有する。
好ましい実施形態においては、上記第1の樹脂層の厚みと上記第2の樹脂層の厚みの和に対する上記接着層の厚みの比の値が、0.40以下である。
好ましい実施形態においては、上記接着層の厚みが2μm〜25μmである。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層がポリエステル系樹脂フィルムである。
好ましい実施形態においては、上記樹脂層の弾性率が4.0kN/mm〜4.7kN/mmである。
好ましい実施形態においては、上記接着層の23℃における貯蔵弾性率が8.0×10Pa以上1.0×10Pa未満である。
好ましい実施形態においては、弾性率が3.5kN/mm〜3.8kN/mmである。
本発明の別の局面によれば、保護フィルム付偏光板が提供される。この保護フィルム付偏光板は、偏光板と、該偏光板表面に剥離可能に貼り合わされた上記保護フィルムとを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着層を介して樹脂層を積層することにより、樹脂層単独よりも偏光板の反りを良好に抑制可能な保護フィルムを提供することができる。樹脂層単独よりも断面2次モーメントが高く、弾性率を低下させ得ることが、その要因の1つとして考えられる。また、弾性率の低下により、一定の張力を加えた際の収縮量を増加させることができるので、保護フィルムの貼り合わせに際して張力を加える場合、設備への負担を軽減させることができる。さらに、このような構成の保護フィルムは屈曲性に優れ、剥離性(偏光板から取り除かれる際の)にも優れることから、製造効率の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態による保護フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による保護フィルム付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.保護フィルム
図1は、本発明の好ましい実施形態による保護フィルムの概略断面図である。保護フィルム10は、第1の樹脂層11と、接着層13と、第2の樹脂層12とをこの順で有する。保護フィルム10は、第1の樹脂層11と第2の樹脂層12とを接着層13を介して積層した積層体10’である。実用的には、保護フィルム10は、その第2の樹脂層12の接着層13とは反対側に設けられた粘着剤層20を有し、この粘着剤層20により偏光板に貼り合わされる。なお、図示しないが、偏光板に貼り合わされるまでは、粘着剤層20表面にセパレーターが貼り合わされる。
【0011】
上記積層体の厚みは、代表的には12μm〜230μm、好ましくは50μm〜110μmである。
【0012】
積層体とすることで、樹脂層単独の形態(少なくとも一方の樹脂層)よりも弾性率を低下させることができる。樹脂層単独の弾性率と保護フィルムの弾性率との差は、好ましくは0.2kN/mm以上である。一方、樹脂層単独の弾性率と保護フィルムの弾性率との差は、好ましくは1.0kN/mm以下である。保護フィルムの弾性率は、好ましくは3.5kN/mm〜3.8kN/mmである。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0013】
積層体とすることで、樹脂層単独の形態(少なくとも一方の樹脂層)よりも引張伸度を増加させることができる。なお、引張伸度は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0014】
A−1.樹脂層
樹脂層は、好ましくは、樹脂フィルムで構成される。樹脂層の厚みは、代表的には5μm〜100μm、好ましくは25μm〜50μmである。
【0015】
樹脂層の弾性率は、任意の適切な値に設定され得る。樹脂層の弾性率(少なくとも一方の樹脂層の弾性率)は、好ましくは4.0kN/mm〜4.7kN/mmである。
【0016】
樹脂層の形成材料としては、好ましくは、ポリエステル系樹脂が用いられる。
【0017】
なお、第1の樹脂層および第2の樹脂層の構成(例えば、厚み、形成材料、弾性率、引張伸度等)は、同一であっても異なっていてもよく、適宜、選択され得る。
【0018】
A−2.接着層
本明細書において、「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。接着層を形成する材料としては、例えば、粘着剤、接着剤、アンカーコート剤が挙げられる。接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。
【0019】
上記第1の樹脂層の厚みと上記第2の樹脂層の厚みの和に対する接着層の厚みの比の値は、好ましくは0.03以上である。このような範囲に設定することにより、屈曲性により優れ、極めて優れた剥離性を達成することができる。一方、各樹脂層の厚みの和に対する接着層の厚みの比の値は、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.30以下である。このような範囲に設定することにより、偏光板の反りを極めて良好に抑制することができる。
【0020】
接着層の厚みは、樹脂層の厚みよりも薄いことが好ましい。樹脂層の厚みと接着層の厚みとの差は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上である。この差が小さ過ぎると、樹脂層の厚みによっては、偏光板の反りの抑制効果が不十分となるおそれがある。接着層の厚みは、代表的には2μm〜30μmであり、好ましくは2μm〜25μm、より好ましくは5μm〜20μmである。厚みが厚すぎると、接着層の形成において不具合(例えば、糊欠け)が発生するおそれがある。
【0021】
接着層を設けることで、得られる保護フィルムの弾性率を低下させることができる。接着層は、23℃における貯蔵弾性率が、好ましくは8.0×10Pa以上1.0×10Pa未満である。なお、接着層の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hzの条件下で測定される。
【0022】
接着層は、代表的には、粘着剤で形成される。粘着剤としては、好ましくは、(メタ)アクリル系粘着剤が用いられる。(メタ)アクリル系粘着剤は、好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーとイソシアネート系化合物とを含有する。
【0023】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリレート系モノマーおよび/またはメタクリレート系モノマー(本明細書において(メタ)アクリレートという)から合成される重合体または共重合体をいう。(メタ)アクリル系ポリマーが共重合体である場合、その分子の配列状態は特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。好ましい分子配列状態は、ランダム共重合体である。
【0024】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを単独重合または共重合して得られる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18程度、さらに好ましくは1〜10である。
【0025】
上記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、iso−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、iso−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、iso−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ一トが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、上記アルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合体である。この場合、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6、特に好ましくは4〜6である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0027】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは、上記アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数よりも少ない。水酸基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは2である。このように、アルキル基の炭素数を調整することによって、後述するイソシアネート系化合物との反応性を向上させることができ、より一層、優れた粘着特性を有する粘着剤が得られ得る。
【0029】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートの共重合量は、好ましくは0.05モル%〜0.25モル%、より好ましくは0.10モル%〜0.22モル%、さらに好ましくは0.14モル%〜0.20モル%である。
【0030】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、上記アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートの他に、他の成分を共重合させて得ることもできる。他の成分としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が好ましく用いられる。他の成分の共重合量は、アルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して100重量部以下であることが好ましく、より好ましくは50重量部以下である。
【0031】
上記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは100万以上、さらに好ましくは120万〜300万、特に好ましくは120万〜250万である。
【0032】
上記イソシアネート系化合物としては、2,4−(または2,6−)トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー;これらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパン等の多価アルコールと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化合物;ビュレット型化合物;さらには任意の適切なポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0033】
上記イソシアネート系化合物として、市販品がそのまま用いられ得る。市販のイソシアネート系化合物としては、例えば、三井武田ケミカル(株)製のタケネートシリーズ(商品名「D−110N,500,600,700」等)、日本ポリウレタン工業(株)製のコロネートシリーズ(例えば、商品名「L,MR,EH,HL」等)が挙げられる。
【0034】
上記イソシアネート系化合物の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.10重量部〜1.5重量部、さらに好ましくは0.3重量部〜1.0重量部、特に好ましくは0.4重量部〜0.8重量部である。このような含有量とすることにより、過酷な(高温,多湿)環境下でも、密着性が良好となり得る。
【0035】
上記(メタ)アクリル系粘着剤は、好ましくは、シランカップリング剤をさらに含有する。シランカップリング剤としては、例えば、任意の適切な官能基を有するものが選択され得る。当該官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、アセトアセチル基、イソシアネート基、スチリル基、ポリスルフィド基等が挙げられる。上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、エポキシ基を有するシランカップリング剤であり、さらに好ましくはγ−グリドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0036】
上記シランカップリング剤として、市販品がそのまま用いられ得る。市販品としては、例えば、信越シリコーン(株)製のKAシリーズ(商品名「KA−1003」等)、KBMシリーズ(商品名「KBM−303,KBM−403,KBM−503」等)およびKBEシリーズ(商品名「KBE−402,KBE−502,KBE−903」等)、東レ(株)製のSHシリーズ(商品名「SH6020,SH6040,SH6062」等)およびSZシリーズ(商品名「SZ6030,SZ6032,SZ6300」等)が挙げられる。
【0037】
上記シランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリレート系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001重量部〜2.0重量部であり、より好ましくは0.005重量部〜2.0重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部〜1.0重量部であり、特に好ましくは0.02重量部〜0.5重量部である。このような含有量とすることにより、過酷な(高温,多湿)環境下でも、剥がれや気泡の発生が抑制され得る。
【0038】
A−3.積層方法
第1の樹脂層と第2の樹脂層との積層方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましい実施形態においては、片方の樹脂層に接着層を形成し、当該接着層上にもう片方の樹脂層を積層する方法が採用される。接着層の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、接着層は、樹脂層に上記(メタ)アクリル系粘着剤を塗工し、加熱することにより形成される。塗工に際し、上記(メタ)アクリル系粘着剤のポリマー濃度は、溶剤(例えば、酢酸エチル、トルエン)により、適宜、調整されていることが好ましい。加熱温度は、好ましくは20℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃である。
【0039】
A−4.その他
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤で形成される。粘着剤としては、代表的には、(メタ)アクリル系粘着剤が用いられる。粘着剤層の厚みは、好ましくは15μm〜25μmである。上記セパレーターとしては、代表的には、剥離性付与層が形成された樹脂フィルム(例えば、ポリエステル系樹脂フィルム)が用いられる。
【0040】
A−5.貼り合わせ方法
本発明の保護フィルムは、好ましくは、反りが生じている偏光板の凸面に貼り合わされる。なお、例えば、偏光子の片側にのみ保護層が配置されている場合は、保護層側に凸の反りが発生する傾向にある。保護フィルムの貼り合わせに際し、保護フィルムに張力を加えながら偏光板に貼り合わせることが好ましい。このような操作により、保護フィルムに残留収縮応力を発生させ得るからである。張力は、貼り合わせ後に偏光板の偏光子の吸収軸方向と対応する方向に加えることが好ましい。張力は、保護フィルムの構成(例えば、厚み、形成材料、弾性率、引張伸度等)に応じて、適宜、設定され得る。
【0041】
B.保護フィルム付偏光板
図2は、本発明の好ましい実施形態による保護フィルム付偏光板の概略断面図である。保護フィルム付偏光板100は、偏光板30と、偏光板30の表面に粘着剤層20により貼り合わされた保護フィルム10とを有する。偏光板30は、偏光子31と、偏光子31の片側に配置された保護層32および光学部材33と、偏光子31のもう片側に配置された光学部材34およびセパレーター35とを有する。保護フィルム10は、偏光子31に対して、保護層32が配置されている側に貼り合わされる。セパレーター35は、使用に供する際(例えば、液晶セルに保護フィルム付偏光板を貼り合わせる際)に取り外される。なお、偏光板を構成する各層の積層には、任意の適切な粘着剤または接着剤が用いられる。
【0042】
本発明の保護フィルム付偏光板は、偏光板の構成が変化しても、反りが良好に抑制されている。具体例として、保護フィルム付偏光板からセパレーターが取り外された場合、反りの向きが反転する場合があるが(特に、張力を加えて保護フィルムを貼り合わせた場合)、本発明の保護フィルムによれば、このような反りも良好に抑制することができる。本発明の保護フィルムは、樹脂層単独よりも断面2次モーメントが高く、弾性率が低く張力を除去した際の収縮量が大きいことが、その要因の1つとして考えられる。
【0043】
上記偏光板は、偏光子と偏光子の少なくとも片側に配置された保護層とを有する。偏光板の薄型化・軽量化の観点から、偏光子の片側にのみ保護層を配置させる構成が好ましいが、このような偏光子に対して非対称な構成では、反りの発生が顕著となり得る。
【0044】
上記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着配向させたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着配向させた偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。
【0045】
偏光子の厚みは、代表的には1μm〜80μm程度であり、好ましくは5μm〜40μmである。
【0046】
上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで構成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0047】
保護層の厚みは、好ましくは5μm〜200μm、より好ましくは10μm〜100μmである。なお、保護層が光学補償層として機能してもよい。
【0048】
上記光学部材としては、例えば、光学補償層(位相差層)、輝度向上フィルム等が挙げられる。セパレーターについては、A−4項で説明したとおりである。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
1.厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC−351C」)を用いて測定した。
2.弾性率および引張伸度
JIS K 6781に準拠し、引張試験機(島津製作所社製、製品名:オートグラフ)を用いて測定した。
【0050】
[実施例1]
(粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート100重量部と、アクリル酸5.0重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.075重量部と、2,2’アゾビスイソニトリル0.3重量部と、酢酸エチルとを加え、窒素ガス気流下で攪拌しながら60℃で6時間反応させて、重量平均分子量163万のアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液のポリマー固形分100重量部に対して、イソシアネート系多官能性化合物(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL)0.6重量部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM403)0.08重量部とを添加して、粘着剤を調製した。
【0051】
ポリエステル系樹脂フィルム(三菱樹脂社製、商品名:T100F、厚み:38μm、弾性率:4090N/mm、引張伸度:59%)上に、上記粘着剤を塗工し、90℃で加熱して厚み12μmの接着層を形成した。得られた接着層の23℃における貯蔵弾性率は1.0×10Paであった。
その後、接着層上に、ポリエステル系樹脂フィルム(日東電工社製、商品名:RP301、厚み:38μm、弾性率:4050N/mm、引張伸度:58%)を積層して、厚み88μmの保護フィルムを得た。得られた保護フィルムの弾性率は3.6kN/mmであり、引張伸度は91%であった。
【0052】
[実施例2]
厚み9μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.7kN/mmであり、引張伸度は89%であった。
【0053】
[実施例3]
厚み3μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.7kN/mmであり、引張伸度は80%であった。
【0054】
[実施例4]
厚み20μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.6kN/mmであり、引張伸度は98%であった。
【0055】
[実施例5]
厚み25μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.5kN/mmであり、引張伸度は105%であった。
【0056】
[実施例6]
厚み30μmの接着層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.5kN/mmであり、引張伸度は109%であった。
【0057】
[実施例7]
厚み38μmのポリエステル系樹脂フィルム(商品名:T100F)のかわりに、厚み25μmのポリエステル系樹脂フィルム(三菱樹脂社製、商品名:T100−25B、弾性率:3510N/mm、引張伸度:101%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.5kN/mmであり、引張伸度は92%であった。
【0058】
[実施例8]
厚み9μmの接着層を形成したこと以外は実施例7と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.6kN/mmであり、引張伸度は91%であった。
【0059】
[実施例9]
厚み3μmの接着層を形成したこと以外は実施例7と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.8kN/mmであり、引張伸度は80%であった。
【0060】
[実施例10]
厚み15μmの接着層を形成したこと以外は実施例7と同様にして、保護フィルムを作製した。得られた保護フィルムの弾性率は3.5kN/mmであり、引張伸度は90%であった。
【0061】
(比較例1)
保護フィルムとして、ポリエステル系樹脂フィルム(日東電工社製、商品名:RP207F、厚み:38μm、弾性率:4050N/mm、引張伸度:58%)を用いた。
【0062】
(比較例2)
保護フィルムとして、ポリエステル系樹脂フィルム(藤森工業社製、商品名:TC−815、厚み:111μm、弾性率:4630N/mm、引張伸度:102%)を用いた。
【0063】
実施例および比較例の保護フィルムによる偏光板の反りの抑制度合いを評価した。また、保護フィルムの剥離性を評価した。評価方法の詳細は以下の通りである。
【0064】
(偏光子の作製)
厚み60μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(クラレ社製、商品名:VF−PE−A NO.6000)を、下記(1)〜(5)の条件の5浴に、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して、6.2倍となるように延伸した。この延伸フィルムを40℃の空気循環式乾燥オーブン内で1分間乾燥させて、厚み22μmの偏光子を作製した。
<条件>
(1)膨潤浴:30℃の純水。
(2)染色浴:水100重量部に対し、0.035重量部のヨウ素と、水100重量部に対し、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液。
(3)第1の架橋浴:3重量%のヨウ化カリウムと、3重量%のホウ酸とを含む、40℃の水溶液。
(4)第2の架橋浴:5重量%のヨウ化カリウムと、4重量%のホウ酸とを含む、60℃の水溶液。
(5)水洗浴:3重量%のヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液。
【0065】
(保護層の作製)
[下記一般式(1)中、Rは水素原子、RおよびRはメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂{共重合モノマー重量比=メタクリル酸メチル/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2、ラクトン環化率約100%、ラクトン環構造の含有割合19.4%、重量平均分子量133000、メルトフローレート6.5g/10分(240℃、10kgf)、Tg131℃}90重量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{トーヨーAS AS20、東洋スチレン社製}10重量部との混合物;Tg127℃]のペレットを二軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、厚み40μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この未延伸シートを、160℃の温度条件下、縦2.0倍、横2.4倍に延伸して厚み20μmの保護層を得た。
【0066】
【化1】

【0067】
(偏光板の作製)
上記偏光子の片側に上記保護層をポリビニルアルコール系接着剤で積層し、もう片側に厚み22μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層表面に厚み38μmのセパレーターを貼り合わせた。このようにして偏光板を作製した。
【0068】
(保護フィルム付偏光板の作製)
各実施例および比較例の保護フィルムの片側(実施例の保護フィルムにおいては第2の樹脂層側)に粘着剤層(厚み:23μm)を設け、得られた偏光板の保護層側に貼り合わせて、保護フィルム付偏光板を得た。貼り合わせに際し、保護フィルムに、貼り合わせ後に偏光板の偏光子の吸収軸方向と対応する方向に190gf/10mmの張力を加えた。
【0069】
(反りの測定)
セパレーターの剥離前後における、反りを測定した。反りの測定方法は、偏光板から、偏光子の吸収軸方向が1辺となるように、縦10cm×横6cmの試験片を切り出した。得られた試験片をその凸面が下側になるようにガラス板に載置し、ガラス板から試験片の4つの角の高さをそれぞれ測定した。4角のうち一番大きい値で評価した。測定結果を表1にまとめる。なお、偏光子に対し保護層側に凸の反りを+で示し、偏光子に対して保護層が配置されていない側に凸の反りを−で示す。
【0070】
(剥離性)
得られた保護フィルム付偏光板の保護フィルムに、セロハンテープを貼り合わせ、このセロハンテープの端部を持って剥離し、保護フィルムの剥離性を評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1にまとめる。
(評価基準)
◎:極めて良好(容易に剥離できる)
○:良好
×:剥離ミスあり(セロハンテープのみが剥がれて保護フィルムが残っている)
【0071】
【表1】

【0072】
積層構造を有する各実施例の保護フィルムは、反りを良好に抑制し、かつ、剥離性に優れていた。厚みの大きい比較例2の保護フィルムは、反りを良好に抑制できたものの、剥離性が悪かった。これは、高い断面2次モーメントが影響したこと、弾性率が大きかったこと等により、屈曲性が低下したことが原因の1つとして考えられる。なお、実施例4では接着層に糊欠けが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の保護フィルムは、偏光板の保護フィルムとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
10 保護フィルム
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
13 接着層
20 粘着剤層
30 偏光板
31 偏光子
32 保護層
100 保護フィルム付偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂層と、接着層と、第2の樹脂層とをこの順で有する、偏光板の保護フィルム。
【請求項2】
前記第1の樹脂層の厚みと前記第2の樹脂層の厚みの和に対する前記接着層の厚みの比の値が、0.40以下である、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記接着層の厚みが2μm〜25μmである、請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層がポリエステル系樹脂フィルムである、請求項1から3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層の弾性率が4.0kN/mm〜4.7kN/mmである、請求項1から4のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記接着層の23℃における貯蔵弾性率が8.0×10Pa以上1.0×10Pa未満である、請求項1から5のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項7】
弾性率が3.5kN/mm〜3.8kN/mmである、請求項1から6のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項8】
偏光板と、該偏光板表面に剥離可能に貼り合わされた請求項1から8のいずれかに記載の保護フィルムとを有する、保護フィルム付偏光板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68942(P2013−68942A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193014(P2012−193014)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】