説明

保護フィルムに包装された物品

起伏のある表側の面と、ほぼ平坦であるかまたはほぼ平坦な形態で示され得る裏面とを有する腕時計などの物品が、スキン包装プラスチック材料のぴったりした透明保護フィルムに密接に包装され得る。この包装は、物品の表側の面にわたって連続的に延び、第1の面または表側の面の輪郭に適合するようにスキン包装される。この包装は、物品の第2の裏面にわたって延び、その裏面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を有する。包装された物体をあたかも包装されていないように見せることができるように、この包装を実質的に見えない状態にできる。この包装により、包装された物品を、傷を付けたりまたは他の形で破損したりする危険性なく、運んだり触れたりすることができ、物品の表面を保護する必要がなくなったらこの包装を物品から容易に取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、持ち運び、店頭での陳列および展示の際に触れられ、かつ触れられた際に外観を損なわれやすい腕時計などの物体または物品の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計などの物体または物品は典型的には、持ち運び、店頭での陳列および展示(その際、購入見込み客に示されかつ購入見込み客によって触れられる)の際に触れられる。物体は触れられると、その外観が、例えば外面の微小な傷によって損なわれやすい。金のような柔らかい貴金属でできた高級時計または他の物体については、外面がわずかに破損しただけで、物体が不良品になるかまたは売り物にならなくなる。その結果、多くの傷が付いたかまたは他の形で破損された高級品は、新しい製品として販売するために再度流通できるように、表面の修繕のためにメーカーに返品される。
【0003】
米国特許第4,684,264号明細書には、傷が付いたり欠けたりするのを防止するために腕時計ガラスに接着剤を用いずに被着され得る透明の静電性の高いビニールの円形部でできた保護オーバーレイが開示されている。かかるフィルムは、時計ケースの裏面を保護するためにも被着されている。しかしながら、これは、時計ケースの側面またはバンドについては全く保護しない。
【0004】
米国特許第4,495,254号明細書および米国特許第4,533,605号明細書には、高周波(RF)スパッタリング技術によって表面フィルムとして被着された非金属のガラス質材料の恒久的な耐摩耗性のフィルムによる、貴金属の物品の保護が開示されているが、それによって特別な表面処理が必要となり、しかも処理された物品は、触れられた際に依然として破損されやすいことがある。
【0005】
プラスチックの下に製品を包装するための様々な方法が知られている。「クラムシェル」パックでは、透明のプラスチックのシェルに覆われた空洞に物体を入れる。これにより、物体を販売のために見えるようにすることができ、この物体は、通常、購入後にプラスチックのシェルを開ける購入者によって開封される。クラムシェルパックは広く用いられているが、プラスチックのシェルによって妨げられずに店頭で触れられる高級な腕時計のような品目には適していない。
【0006】
ストレッチ包装方法は、1つ以上の物体を支持体上に置く工程と、フィルムを伸長させて(stretch−applying)製品および支持体を覆うようにする工程とを含む。この方法は人気があるが、腕時計および高級品のための確実な保護としては役立たないであろう。
【0007】
いわゆる「スキンパック」方法による真空パックは、多くの品目のために広く用いられており、生鮮食品の包装用で、例えば、米国特許出願公開第2005/0199524−A1号明細書に記載されている。スキンパック方法では、典型的には、物体を多孔性のバッキングシート上に置き、予め加熱されたフィルムで覆った後、多孔性のバッキングシートに真空をかけて、製品に対しておよびバッキングシート上にフィルムをしっかりと保持する。あるいは、多孔性のシート材料の任意のフレームが製品を囲む状態で製品を2枚の真空をかけられたフィルム間に置く。いずれにしても、製品の表面に密接して貼着されるプラスチックフィルムの外皮で製品を被覆する。
【0008】
公知のスキンパック方法は、バッキングシートもしくは接合されたフィルムおよび任意のフレームが邪魔になる腕時計の包装には適しておらず、店頭での製品の陳列または取扱いに好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、持ち運びの際に、ならびに腕時計のような物体がショーウィンドウのディスプレーに陳列される際に、さらに、例えば、購入見込み客に、腕時計を手に取らせ、それを自身の手首に付けさせることによって、物体が店頭で触れられている際に、店頭での物体の所望の陳列または取扱いの妨げになる保護手段を用いずに、傷を付けることなどによる表面の破損から、腕時計のような触れられる物体を保護する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フィルムまたは透明保護フィルムで表面を被覆されるかまたは包装された物品を含む。
【0011】
本発明は、(a)物品の表側の面にわたっておよびそれを越えて透明保護フィルムを被着させる工程と、(b)フィルムを表側の面の輪郭に適合させ、表側の面から延びている保護フィルムの側部を残すように、真空をかけることによってフィルムを表側の面に対してスキン包装する工程と、(c)透明フィルムの側部を折って、フィルム内に物品を包装し、物品の裏面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を形成する工程とを含む方法も含む。
【0012】
物品を包装するために、支持された物品に真空を伝達するための支持体も含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この物品は、一般に、起伏のある表側の面と、ほぼ平坦もしくは実質的に平坦であるかまたはほぼ平坦な形態で示され得る裏面とを有する、触れられる物品である。この物品は、(a)物品の表側の面にわたって連続的に延び、表側の面の輪郭に適合するようにスキン包装され、(b)物品の裏面にわたって延び、その裏面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を有し、(c)包装された物体をあたかも包装されていないように見せることができるように、実質的に見えない状態に保たれ、(d)包装された物品を、その表面に傷を付けたりまたは他の形で破損したりする危険性なく、運んだり触れたりすることができるようにするか、あるいは(e)物品の表面を保護する必要がなくなったら、物品から容易に取り外すことができるスキン包装プラスチック材料のぴったりした透明保護フィルムで包装することが可能である。
【0014】
この物品は、例えば、腕時計などの時計、バンド、皮革もしくは皮革を含有する物品、キーリングのような貴金属製の物品、ライターまたはメダル、宝石品、または携帯電話もしくは通信機器、あるいはそれらの2つ以上の組合せであり得る。この物品は、高級品または上述した携帯電話(保護された状態のまま、可撓性フィルムがキーパッドキーを作動させ得る)などの非高級品の消費者製品であり得る。一般に、この物品は、ほとんど目視できないスキン包装フィルムによって傷および他の破損から保護され得る、保護対象の規則的または不規則な形状の外面と、真空をかけるために対応する支持体上に置くことができるようにほぼ平坦もしくは実質的に平坦であるかまたはほぼ平坦もしくは実質的に平坦な状態で示され得る裏面(例えば、可撓性バンドストラップ)とを有する。物品の裏面におけるフィルムの重なっているかまたは重なっていない縁部は、目立つことがあるが、このことは、物品を用いる際に裏面は通常見えないため欠点ではない。
【0015】
図1Aおよび1Bは、包装方法の第1の工程において第1の支持体20に取り付けられた腕時計10を示す。腕時計10は、互いに接合可能な2つの部分のバンド14を有する時計ケース12を有する。時計10は、図1Cに示された表側の面を有し、時計ケースは、片側に通常の竜頭16を有する。図示された時計ケース12は、典型的には、金のような貴金属で作製または被覆され、例えば円形である。バンド14は、皮革、金属でできているかまたは結合された構造をとっていてもよく、通常の端部の留め金または他の留め具(図示せず)を有する。時計ケース12およびバンド14の部分は、宝石で飾られていることがある。時計またはバンドの外面は、典型的には、傷が付くことなどで破損されやすいつやのある部分を有する。
【0016】
支持体20は、包装される時計10の形状に対応する形状を有する。支持体は、平底22、および時計10を支持するための上面、すなわち時計ケース12の下側を支持する平坦な中央部分24、およびバンド14を支持する2つの下向きに傾斜した上側側面部分26を有する。支持体は側壁28も有し、この側壁の表面は、バンド14に合わせて、図1Bに示されるように側部に、長手方向にテーパを付けられている。支持体20は、真空を伝達する材料で作製されるか、またはその上面に真空を伝達するための穿孔34(図4Aおよび4Bを参照)を有し得る。
【0017】
次に、支持体20に取り付けられた時計10を、商業用のスキン包装機に入れ、図2Aに示されるように、この機械の真空付加シートまたは基板30上に置く。公知の方法で、保護プラスチック材料のフィルム32が時計10の上に来るようにして、フィルム32の上の熱源から熱Hを加える。熱によりフィルム32が軟化して時計10の上に弛むように加える熱を調節する。
【0018】
次に、支持体20および時計10とともにシート30を方向D(図3A)に持ち上げ、図3Aおよび3Bに示されるように、軟化されたフィルム32を時計10の上部と接触させる。
【0019】
次に、シート30の下から真空Vをかける(図4A)。真空がシート30および支持体20の一連の穿孔34を通って作用し、その結果、真空はフィルム32の下側に作用して、このフィルム32を吸い付けて時計10の上側面および支持体20の側面28にも接触させ、フィルム32の縁部38がシート30の上側面に対して被着された状態にする。
【0020】
次に、フィルムの縁部38をCにおいて切り取り(図5A)、時計10を矢印Lによって示されるように持ち上げる。この段階で、支持体20の側壁に対応するフィルムの下側に向いた部分36によって延長された真空をかけられたフィルム32によって時計10の上側面を被覆し、時計10の下部が被覆されていない状態にしておく。時計10または他の包装される物品のサイズに対応する所望のサイズの折り曲げられたフラップを形成するように側壁28の寸法を選択することができ、側壁28の高さを包装される物品10の幅に合わせることによって、フラップのこのサイズを決定することができる。テーパを付けられた時計バンド14の所与の例では、側壁28の高さは、バンド14に沿って、対応して減少する。
【0021】
次に、部分36によって延長された表面フィルム32を有する時計10を、図6Aの矢印Rによって示されるように引っくり返して、その被覆された表側の面を、スキン包装機の真空付加シート30上の第2の支持体40に置く。図6Aおよび6Bに示されるように、支持体40は、側壁42、および時計ケース12の表側の面を収容するための中央凹部44を有する。図6Bに示されるように、フィルム部分36の、中央に向かって傾斜している上部の自由端が上向きに突出した状態で、時計10は逆さまにこの支持体40に支持される。部分36のこの傾斜は、支持体20の側壁28の傾斜の結果として、自己形成される。
【0022】
図6Cは(7Cも)被覆される前の時計10の裏側を示し、上側に突出したフィルム36の四隅において、矢印Kのように概略的に示されるナイフを用いることによって形成される4つの切れ目35も示される。これらの4つの切れ目35は、フィルム部分38を、次の工程で折り畳まれる一連のフラップに分割する。
【0023】
次に、耐熱性フィルム50を、支持体40上の時計10の上部にわたって被着させ、HおよびVで示されるように熱および真空をかける。加熱を真空と組み合わせると、まずフィルム部分/フラップ36が傾斜され、図7Bに示されるように内側に徐々に折れるとすぐに、時計10および支持体40はシート30によって持ち上げられて、図8Bに示されるように折り曲げ動作を完了させるが、これは、図8aにおいてHによって示されるように熱を加えることによって、および任意に、図8Cに示されるように、時計の裏面の部分36の重なっている縁部をしっかりと形成するように耐熱性のフィルム50に圧力を加えることによって行われるのが好ましい。
【0024】
時計10または別の物品がこのように包装されるとき、保護フィルム32は、時計の表側の面にわたって連続的に延び、時計およびバンドの表面形状に、たとえそれが複雑であっても密接にしたがって、表側の面の輪郭に適合するようにスキン包装される。フィルム32はまた、時計の裏面にわたって延び、図8Cに示されるように、その裏面上に重なっている縁部を有する。あるいは、これらの縁部は、例えば追加のシートが介挿された状態で、重なっていないことがある。包装されたフィルム32は、包装された時計10/32をあたかも包装されていないように見せることができるように、時計の表側から実質的に見えない状態に保たれ、それにより、包装された時計10/32の表側の面を、傷を付けたりまたは他の形で破損したりする危険性なく、運んだり触れたりすることができる。包装されたフィルム32は、時計10の周りの実際に見えない可撓性のエンベロープとなり、見込みユーザが時計10を包装されたままの状態で試しに付けることができるように、バンド14を留めたり外したりするのを可能にする。最後に、フィルム32は、その表面を保護する必要がなくなったとき、例えば、時計が販売され持ち主が所有した後に、時計10から容易に取り外すことができる。
【0025】
時計を包装したまま、竜頭16(またはさらに一般には任意の機能制御部材)に触れる必要がある場合、図5Bの矢印Sによって概略的に示されるように、触れることができるように竜頭または機能制御部材の周りでスキン包装フィルムを切り取ることが可能である。この切り取りを助け、かついかなる傷/破損も避けるために、竜頭をプラスチック(例えばPTFE)の円形部で覆うことが可能であり、図5Bの39で示されるようなこの円形部は、フィルム32の対応する部分とともに、または別個に取り外すことが可能である。
【0026】
任意に、必要に応じてフィルムを後に取り外すのを容易にするために、時計10の裏側のフィルムの重なっている縁部に引張り片(pull−strip)が含まれていてもよい。
【0027】
いかなる所与の包装される物品(図示された例では腕時計)についても、第1の支持体20および第2の支持体40は、特定の物品の形状および寸法に適合されるそれらの形状および寸法を有し、同じ物品を包装するために複数回同じ支持体を用いることができる。支持体は、様々な形状の物品を収容するために平坦なまたは窪んだ部分を有し得る。
【0028】
好ましくは、図1Aに示されるように、支持体20の様々な側壁28は、図7Bおよび8Bに示されるようなフラップの適切な折り曲げを容易にするために、フィルムの対応する部分36が様々な角度になるように様々な角度で傾斜している。
【0029】
保護材料のフィルム32は、透明性、表面硬度、穿刺抵抗、耐摩耗性、可撓性、および/または熱成形特性を兼ね備えた材料から選択され得る。かかる材料としては、酸コポリマー、アイオノマー、およびメタロセンポリエチレン(mPE)が挙げられる。
【0030】
酸コポリマーは、エチレンと、アクリル酸およびメタクリル酸を含むα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸とから誘導される繰返し単位を含む。例えば、「エチレンメタクリル酸(EMAA)」は、エチレン(E)とメタクリル酸(MAA)とのコポリマーを意味し、「エチレンアクリル酸(EAA)」は、エチレンとアクリル酸とのコポリマー(EAA)を意味する。米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington、Delaware、USA)のE.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)から市販されているNucrel(登録商標)などの酸コポリマーが当業者に周知である。
【0031】
アイオノマーは、カルボン酸基またはその一部がナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウム、またはそれらの2つ以上の組合せなどの1つ以上の金属カチオンで中和されている酸コポリマーであり得る。アイオノマーは、そのカルボン酸基の約10〜約99.9%、約10〜約70%、または約35〜約70%が中和されていてもよい。米国特許第3,264,272号明細書に開示されているものなどのアイオノマーおよびそれらの製造方法が当業者に周知である。商業用のアイオノマーとしては、DuPont製のSurlyn(登録商標)またはExxon Chemical Company(Exxon)製のLotek(登録商標)が挙げられる。アイオノマーは、架橋ポリマーに典型的な固体特性および非架橋熱可塑性ポリマーに典型的な溶融加工特性を有することが可能であり、包装に広く用いられ、耐引っ掻き特性が知られている。
【0032】
任意に、フィルム32は、時計10または他の物品と接触している内層が光沢を抑えた外観特性を有する多層フィルムである。DuPont製のSurlyn(登録商標)NWLなどのかかる多層樹脂が市販されている。かかるフィルムは、光沢面上の「むらのある」外観の形成を防止することが可能である。また、フィルム32は、エチレンポリマーであり得る。本明細書で用いられる「エチレンポリマー」という用語は、エチレンモノマーまたはコモノマーから誘導される−CH2CH2−繰返し単位を50モル%超含む任意のポリマーを指す。
【0033】
エチレンポリマーとしては、ホモポリマーかコポリマーかにかかわらず上記の定義内の任意のエチレン含有ポリマーが挙げられる。例としては、限定されないが、低密度ポリエチレン(LDPE)、不均一に分枝したエチレン/α−オレフィンインターポリマー(例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、実質的に線状のエチレンポリマー(SLEP))、および均一に分枝したエチレンポリマーなどの、エチレンホモポリマーおよびエチレンインターポリマーが挙げられる。エチレンポリマーの他の例は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合生成物をベースとしたエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)である。
【0034】
エチレンと重合してエチレンポリマーを形成するのに有用な不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエンなどが挙げられる。コモノマーの例としては、限定されないが、C3〜C8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;直鎖状または分枝状C3〜C20アルキルエステルあるいはC1〜C8直鎖状または分枝状アルキルエステルなどの、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のエステル誘導体が挙げられる。
【0035】
他のコモノマーとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、スチレン、ハロ−またはアルキル−置換スチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの、直鎖状または分枝状C3〜C20α−オレフィン;ならびにシクロアルケン、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン;酢酸ビニル;それらの2つ以上の組合せなどが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いられるエチレンコポリマーは、エチレンと、(メタ)アクリル酸またはC1〜C8アルキル(メタ)アクリレート、あるいはそれらの2つ以上の組合せなどの、不飽和カルボン酸またはそのエステルとから誘導される繰返し単位を含むものを指す。「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリルおよび/またはメタクリルあるいはアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを指す。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが挙げられる。例えば、「エチレン/メチルアクリレート(EMA)」はエチレンとメチルアクリレート(MA)とのコポリマーを意味し、「エチレン/エチルアクリレート(EEA)」はエチレンとエチルアクリレート(EA)とのコポリマーを意味し、「エチレン/ブチルアクリレート(EBA)」はエチレンとブチルアクリレート(BA)とのコポリマーを意味し、ならびにそれらの2つ以上の組合せである。2つ以上のコモノマーの例も含まれる。例えば「エチレン/イソブチルアクリレートメタクリル酸(E/iBA/MAA)」は、エチレンと、イソ−ブチルアクリレート(iBA)と、メタクリル酸(MAA)とのターポリマーを意味する。
【0037】
エチレンコポリマーに組み込まれるアルキル(メタ)アクリル酸またはアルキル(メタ)アクリレートコモノマーは、全コポリマーの0.01または5から40重量%程度まで、あるいは5〜30、または10〜25重量%などのさらに高い割合まで変動し得る。
【0038】
また、エチレンコポリマーには、一酸化炭素、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、およびグリシジルビニルエーテル、あるいはそれらの2つ以上の組合せなどの別のコモノマーが含まれ得る。
【0039】
エチレンコポリマーは、オートクレーブまたは管型反応器のいずれかを用いてポリマー業界で周知の方法によって製造可能である。米国特許第3,264,272号明細書、同第4,351,931号明細書、同第4,248,990号明細書、および同第5,028,674号明細書に開示されているように、オートクレーブ内で、連続法として共重合を行うことが可能である。
【0040】
DuPont製のElvaloy(登録商標)およびElvax(登録商標)、Exxon製のExact(登録商標)、Mitsui Petrochemical Corporation製のTafmer(登録商標)、Dow Chemical Company製のAffinity(登録商標)およびEngage(登録商標)などのエチレンコポリマーが市販されている。
【0041】
上記に開示したコポリマーは、約10以下の分率(約4.3〜約8g/10分など)で数値的にメルトインデックスによって示される分子量で変動され得る。
【0042】
ポリマーは、任意に、熱および紫外線(UV)安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、加工助剤、蛍光増白剤、顔料、潤滑剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの従来の成分は、通常0.01〜20重量パーセント、または0.1〜15重量パーセントである量で、本発明に用いられる組成物中に存在してもよい。
【0043】
添加剤の任意の混入は、例えば、乾式混合、様々な成分の混合物の押出、従来のマスターバッチ法などの任意の公知の方法によって行うことが可能である。
【0044】
保護されるフィルムは、上記に開示したポリマーのうちの1つ以上を含む単層または多層フィルムであり得る。アイオノマーから製造されるかまたはアイオノマーを含むフィルム層は、通常、クリアまたは透明である。
【0045】
スキン包装プラスチック材料のぴったりした透明保護フィルムに物品を包装または被覆するために、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。物品へのフィルムの被着は、例えば、物品の浸漬、あるいは上記に開示したポリマーのうちの1つ以上から作製されたフィルム溶液で物品にはけ塗りまたは塗布または吹付けすることなどの当業者に公知の任意の手段によって行うことができる。
【0046】
本発明に含まれる方法は、(a)物品の表側の面の上およびそれを越えて実質的に透明な保護フィルムを被着する工程と、(b)フィルムを真空スキンパックする工程と、(c)透明フィルムの側部を折って、フィルムに物品を包装し、物品の第2の面または裏面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を形成する工程とを含み得る。
【0047】
真空スキンパック工程は、フィルムを第1の面または表側の面の輪郭に適合させ、第1の面または表側の面から延在する保護フィルムの側部を残すように、真空をかけることによって第1の面または表側の面に対してフィルムをスキン包装する工程を含む。
【0048】
フィルムの作製方法は、当業者に周知のような様々な方法によって配向(一軸または二軸のいずれか)を含めて、鋳造され、押出され、同時押出され、積層されるなどが可能である。例えば、この方法は、冷間ロールと接触するごとに、100〜約1000フィート、または約300〜約800フィートの速度で移動しているポリマーまたはポリマーブレンドの溶融カーテンを置くことを含み得る。溶融カーテンは、フラットダイを通してポリマーを押し出すことによって形成可能である。ダイを出るときのエチレンコポリマー組成物の温度は、約300〜340℃、または約310〜約330℃であり得る。ダイ出口と冷間ロールとの間の空隙は、典型的には、約3〜15インチ、または約5〜約10インチである。
【0049】
このフィルムは、配向されていなくても、一軸方向(例えば縦方向)に配向されていても、または二軸方向(例えば縦方向および横方向)に配向されていてもよい。フィルムを、フィルムの面における2つの互いに垂直な方向に引くことによって二軸配向して、機械的および物理的特性の十分な両立を実現することが可能である。例えば、米国特許第3,278,663号明細書、同第3,337,665号明細書、同第3,456,044号明細書、同第4,590,106号明細書、同第4,760,116号明細書、4,769,421号明細書、同第4,797,235号明細書および同第4,886,634号明細書を参照されたい。様々なフィルムの作製方法が当業者に周知であるため、その説明は、本明細書においては簡略化のために省略される。
【0050】
このフィルムは、コロナ放電、オゾンまたは当業界において標準的な他の手段によって処理されてもよい。このフィルムは、エチレンコポリマー組成物を接着層として用いて金属化されたフィルム基材に積層され、多層構造が与えられる。多層構造の接着は、エチレンコポリマー層の厚さを増大させることによって向上され得る。エチレン/アルキルアクリレート層の厚さは、約10〜約40μ(0.4ミル〜1.6ミル)、または約15〜約30μ(0.6〜1.2ミル)の厚さであり得る。
【0051】
例えば、フィルムの個別のシートであり、同一であってもまたは異なっていてもよい1つまたは2つのフィルムウェブを用いることが可能である。容易な被着のためにフィルムを軟化させることが可能である。2つのウェブにおいては、物品の上部のための一方のウェブは、包装される品物が見えるようにクリア(透明)であってもよく、他方は、不透明であるかおよび/または着色されて背景となってもよく、あるいはウェブは両方ともクリアであってもよい。また、一方または両方のウェブに、デザイン、ロゴ、英数字の文字を印刷してパッケージに見栄えのよい外観を与えたり、および/または消費者に情報を与えたりしてもよい。また、単一ウェブのフィルムをそれ自体で折り畳んで、2つの重なっているウェブとするか、またはフィルムのチューブを形成して、チューブの2つの重なっている部分がフィルムの2つのウェブの同等物となるようにしてもよい。
【0052】
包装される物品を2つのウェブ間に置き、このパッケージに真空をかけ、2つのウェブの周囲をヒートシールなどで互いに接着することによってシールを形成することができる。パッケージの周囲をシールする方法は、介在する第3のポリマーフィルムの使用によって間接的に2つのフィルムウェブをヒートシールすることなどによる任意の方法、またはシールされたパッケージを形成するために開発され得る任意の方法であってもよい。真空をかける前に、熱を加えてフィルムを軟化させる。
【0053】
さらに含まれるのは、プラスチック材料のぴったりした透明保護フィルムに物品をスキン包装するために、支持される物品に真空を伝達するための支持体であり、この支持体は、真空源上に置くための平底を有する、真空を伝達する材料でできた本体と、スキン包装される物品を支持するための上部と、真空をかけた後に支持体の側壁にわたって延びているフィルムの側部を支持するための側壁とを含むことができ、この側壁の寸法は、側壁にわたって延びているフィルムの対応する側部が、物体を支持体から取り外した後に物体の周りに包装され得るようにされる。
【0054】
この支持体は、穿孔されるか、または物品の第2の面または裏面に真空をかけることが可能な材料で作製されることが可能である。
【0055】
上記に開示された方法は、様々な形状および寸法の物品または物体を包装するのに用いることが可能であり、所与の形状および寸法の各物体のために、対応する支持体が使用される。中央部分を含む少なくとも1つの支持体を用いるとき、上壁が、長手方向のテーパ付きで、かつ中央部分の各側からわずかに下方向に傾斜して延び、側壁が、上壁のテーパに適合しており、その高さは上壁の端部に向かって減少する。支持体の中央部分の上部は、平坦であるかまたは窪んでいることがある。上記に開示された工程(a)および(b)は、物体の裏面および表側の面の形状に概ね適合する支持体に物品の第2の面または裏面が置かれた状態で行うことが可能であり、支持体は、工程(b)の終わりにおいて支持体の側壁にわたって延びているフィルムの側部を支持するための側壁を有する。必要に応じて、所望の寸法の側部を形成するためにフィルムを切り取ることによる工程(b)が後に続き、支持体から物体を取り外した後に折り畳み工程(c)が行われる。工程(c)は、取り外し可能なシートに真空をかけるかまたは圧力をかけることによって行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A−1C】それぞれ、腕時計の包装方法の第1の工程における、特別な支持体に取り付けられた腕時計の側面図、端面図および平面図である。
【図2A−2B】それぞれ、本方法の熱を加える第2の工程における、支持体に取り付けられた腕時計の側面図および端面図である。
【図3A−3B】それぞれ、本方法の第3の工程における、熱で軟化したフィルムに対して押し上げられた、支持体に取り付けられた腕時計の側面図および端面図である。
【図4A−4B】それぞれ、本方法の真空をかける第4の工程における、支持体に取り付けられた腕時計の側面図および端面図である。
【図5A−5B】それぞれ、フィルムを切り取り、竜頭の周りで切り取った後の、本方法の第5の工程における、支持体から取り外された腕時計の側面図および端面図である。
【図6A−6C】それぞれ、隅部を切断することを含む、本方法の第6の工程における、裏返されて、別の特別な支持体に再度取り付けられた腕時計の側面図、端面図および平面図である。
【図7A−7C】それぞれ、本方法の熱を加えかつ真空をかける第7の工程における、他の支持体に再度取り付けられた、裏返された腕時計の側面図、端面図および平面図である。
【図8A−8B】それぞれ、本方法の圧力および熱を加える第8の工程における、他の支持体に再度取り付けられた、裏返された腕時計の側面図および端面図である。
【図8C】縁部が折り曲げられた、仕上がった包装された腕時計の裏面を示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図7A】

【図7B】

【図7C】

【図8A】

【図8B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムで表面を被覆されるかまたはフィルムで包装された物品であって、前記物品が、時計、バンド、皮革または皮革を含有する物品、貴金属製の物品、ライター、メダル、宝石品、携帯電話または通信機器、あるいはそれらの2つ以上の組合せを含み、前記フィルムが、アイオノマー、エチレンポリマー、エチレンコポリマー、またはそれらの2つ以上の組合せを含むかまたはそれから製造され、前記エチレンポリマーが、エチレンから誘導される繰返し単位を含み、前記エチレンコポリマーが、エチレン酸コポリマーを含み、かつエチレンと1つ以上のコモノマーとから誘導される繰返し単位を含み、前記コモノマーが、α,β−不飽和C〜Cカルボン酸、C〜C20アルキルエステル、C〜Cアルキルエステル、C〜C20α−オレフィン、またはそれらの2つ以上の組合せを含み、前記アイオノマーが、前記カルボン酸の約1〜約99.9%が1つ以上の金属カチオンで中和される前記酸コポリマーから誘導される物品。
【請求項2】
前記物品が、起伏のある表側の面とほぼ平坦な裏面とを有する、触れられる物体であり、前記物体が、(a)前記物品の表側の面にわたって連続的に延び、前記表側の面の輪郭に適合するようにスキン包装され、(b)前記物品の裏面にわたって延び、前記裏面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を有し、(c)前記物品をあたかも包装されていないように見せることができるように、実質的に見えない状態に保たれ、(d)前記物品を、前記物体の表面に傷を付けたりまたは他の形で破損したりする危険性なく、運んだり触れたりすることができるようにし、そして(e)物体の表面を保護する必要がなくなったら、前記物体から容易に取り外すことができるスキン包装プラスチック材料のぴったりした透明保護フィルムであるフィルムで包装される請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記物品が、突出している機能制御部材を有し、前記フィルムが、前記機能制御部材に手が届くように切り取られ、前記物品の裏面上の前記フィルムが、前記フィルムの取り外しを容易にするための引張り片を含む請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記フィルムが多層フィルムであり、前記物体と接触している前記フィルムの内層が光沢を抑えた外観特性を有する請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記物品が、前記時計、バンド、皮革または皮革を含有する物品、貴金属製の物品、ライター、メダル、宝石品、携帯電話または通信機器、あるいはそれらの2つ以上の組合せである請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
(a)物品の表側の面の上およびそれを越えてフィルムを被着する工程と、(b)前記物品を真空スキンパックする工程と、(b1)任意に、前記フィルムを切り取って、所望の寸法の側部を形成する工程と、(c)任意に取り外し可能なシートに真空または圧力をかけることによって、前記フィルムの側部を折って、前記物体を前記フィルムで包装し、前記物品の第2の面上に重なっているかまたは重なっていない縁部を形成する工程とを含む方法であって、前記物品および前記フィルムが各々請求項1、2、3、4、または5のいずれか一項で特徴付けられる通りであり、前記真空スキンパック工程が、真空をかけることによって前記表側の面に対して前記フィルムをスキン包装する工程であって、それによって、前記フィルムを前記第1の面の輪郭と適合させ、前記フィルムの側部を前記表側の面から延びたままにしておく工程を含む方法。
【請求項7】
工程(a)および工程(b)が、前記物品の裏面および表側の面の形状に概ね適合する支持体上に前記物品の裏面が置かれた状態で行われ、前記支持体が、工程(b)の終わりにおいて前記支持体の側壁にわたって延びている前記フィルムの側部を支持するための側壁を有し、前記支持体から前記物体を取り外した後に前記工程(c)で折り畳み工程が行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記支持体が、中央部分と、長手方向のテーパ付きで、かつ前記中央部分の各側からわずかに下方向に傾斜して延びている上壁と、前記上壁のテーパに適合しており、かつ高さが前記上壁の端部に向かって減少する側壁とを含み、様々な支持体が、様々な形状および寸法を有する物品に使用され、所与の形状および寸法の各物品のために、対応する支持体が使用され、任意に、前記支持体の中央部分の上部が平坦であるかまたは窪んでいる請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体が、穿孔されるか、または前記物品の裏面に真空をかけることが可能な材料で作製される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
真空をかける前に、熱を加えて前記フィルムを軟化させる請求項6、7、8、または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムが多層フィルムであり、前記物品と接触している前記フィルムの内層が光沢を抑えた外観特性を有する請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
物品を真空スキンパックまたは真空スキン包装するために真空を伝達するための支持体であって、真空源上に置くための平底を有する、真空を伝達する材料でできた本体と、包装される物体を支持するための上部と、真空をかけた後に前記支持体の側壁にわたって延びている前記フィルムの側部を支持するための側壁とを含み、前記側壁の寸法は、前記側壁にわたって延びている前記フィルムの対応する側部が、前記物品を前記支持体から取り外した後に前記物品の周りに包装され得るようにされ、前記支持体の上部が、任意に、前記支持体の平底より大きく、前記側壁が大きな上部から小さい底部にかけて傾斜している支持体。

【図8C】
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【公表番号】特表2009−530207(P2009−530207A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501557(P2009−501557)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/007130
【国際公開番号】WO2007/111947
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】