説明

保護フィルム

【課題】 異物の混入による液晶パネルの生産歩留を悪化させることがなく、コストへの負荷が少なく、液晶セルのガラス面に密着して簡便に剥れることができる保護フィルムを提供する。
【解決手段】 片面にシリコーン塗布層を有するポリエステルフィルムであり、下記式を満足することを特徴とするガラスの表面保護フィルム。
−Rmax÷2≦ds−Rmax≦2×Rmax
(上記式中、Rmaxはポリエステルフィルム表面の最大高さ(μm)、dsはシリコーン塗布層の厚み(μm)を意味する)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルムに関するものであり、詳しくは、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイ(以下、PDPと略記する)等、ガラスを表示部材の主体に使用する光学用途における、ガラスの表面の保護に用いられる保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LCDの主要部分は液晶セルと呼ばれる。液晶セルは2枚のガラス板を用い、その隙間に液晶、配向膜、スペーサーなどを配置した構成となっているが、外部と接する面はガラス面である。この液晶セルの両面に偏光板が粘着剤を介して設置されて、液晶モジュールに組み込まれる最終製品となる。これを液晶パネルと呼ぶ。液晶セルの生産メーカーと偏光板の生産メーカーは別メーカーであることが通常であり、液晶セルと偏光板は液晶モジュール組み立てメーカーにて貼り合わされ、液晶パネルとなることが行われている。
【0003】
近年、LCDテレビは大画面化されており、液晶セルもそれに伴い大型化されていく。もし、液晶セルの表面であるガラス面に傷などが入ると、その液晶セルは使用できなくなり、製造歩留に大きな影響を及ぼす。従来、液晶セルの輸送には、液晶セルのガラス面が接触しないように工夫された専用のボックスが使用されるのみで、保護フィルムなどは設置されなかった。しかしながら、前述したように液晶セルの1枚のロスが製造歩留に大きな影響を及ぼす状況になってきたため、液晶セルのガラス面を保護するための保護フィルムを貼り合わせることも最近では検討されている。
【0004】
ガラスの表面を保護する保護フィルムとしては、窓ガラスなどに使用されている微粘着性を持つポリエチレンフィルムなどが代表的であるが、これらのフィルムは光学用途として生産されていないため、異物などの混入が多い。異物が液晶セルの表面に残ると、最終製品のLCDとした時に輝点となってしまい問題となるため、ポリエチレンフィルムなどの使用は好ましくない。
【0005】
また、液晶パネルは、液晶セルの両面に偏光板が貼り合わされた構成を持つ。その偏光板の表面を保護する保護フィルムとして粘着剤を塗布されたポリエステルフィルムが使用されている。ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるが、粘着剤を塗布したポリエステルフィルムは単価が高く、液晶セルの表面を保護するだけの工程紙としての役割しか持たない保護フィルムに使用するには適さない。
【0006】
ところで、異物の混入に関しては、液晶パネルに貼り合わせる偏光板の粘着剤を保護するために用いられている離型フィルムが、液晶パネルの生産歩留に問題とならないレベルに異物が少ないという実績を持つ。離型フィルムはポリエステルフィルムの片面に離型層としてシリコーンを塗布された構成をもつフィルムであることが多い。加えて、シリコーンが塗布されているだけなので、粘着剤をポリエステルフィルムに塗布した保護フィルムよりコストパフォーマンスに優れる。しかしながら、離型フィルムのため、ガラスとの密着性がなく液晶セルの保護フィルムには使用することができない。
【0007】
液晶セルのガラス面を保護するフィルムとしては、異物の混入の危険が少なく、かつ液晶パネルの製造コストに負荷をかけることが少なく、なおかつ、ガラスに密着しながらも簡便に剥れることが要求される。従来、このような保護フィルムは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−334911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、異物の混入に関して液晶パネルの生産歩留を悪化させることがなく、コストへの負荷が少なく、かつ、液晶セルのガラス面に密着して簡便に剥れることができる保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、片面にシリコーン塗布層を有するポリエステルフィルムであり、下記式を満足することを特徴とするガラスの表面保護フィルム。
【0012】
−Rmax÷2≦ds−Rmax≦2×Rmax
(上記式中、Rmaxはポリエステルフィルム表面の最大高さ(μm)、dsはシリコーン塗布層の厚み(μm)を意味する)
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で言うポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸、熱処理を施したフィルムである。
【0014】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。
【0015】
かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
【0016】
本発明で得られるポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
【0017】
フィルム中に配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンおよび特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。これら粒子を添加するフィルム層の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.6重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程において、表面のキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれることがある。
【0018】
ポリエステルフィルム中の粒子の平均粒径は、通常0.02〜5μmであり、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜1.8μmの範囲である。粒径が0.2μm未満の場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。粒径が5μmを超える場合には、偏光板離型用フィルムとして用いられた場合、輝点となり異物検査に支障を来す恐れがある。
【0019】
一方、フィルムの透明性を向上させるため、2層以上の積層フィルムとした場合、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか1層であり、もちろん表裏両層に粒子を配合することもできる。
【0020】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0021】
なお、本発明で用いるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施したものでもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
【0022】
本発明においては、通常のオリゴマー含有量のポリエステルからなる層の少なくとも片側の表面に、かかるオリゴマー含有量の少ないポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、かかる構造を有する場合、本発明で得られる離型フィルム用ポリエステルフィルムにおいて、オリゴマー析出による輝点を防止する効果が得られ、特に好ましい。
【0023】
本発明のフィルムの総厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で有れば特に限定されるものではないが、通常4〜100μm、好ましくは9〜50μmの範囲である。
【0024】
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0025】
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応を行い、その生成物を重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
【0026】
本発明で使用するポリエステルの極限粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45から0.80、さらに好ましくは0.50〜0.70の範囲である。極限粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷がかかったり、製造コストがかかったりする等の問題が生じる場合がある。
【0027】
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良、耐候性および表面硬度の向上等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としてはオフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【0029】
本発明における保護フィルムはシリコーン層とポリエステルフィルムとの塗膜密着性を良好とするためにシランアルコキシオリゴマーを塗布層として塗布してもよい。
【0030】
シランアルコキシオリゴマーは、下記平均組成式(1)で表され、例えば、特開2002−88155号公開公報、特開2005−8755号公開公報等に記載されているものを例示することができる。
【0031】
Si(OR(4−k−m−n)/2 … (1)
(上記式中、Rは非置換または置換のアルキル基およびアリール基から選択された1種あるいは2種類以上の基、Rは脂肪族不飽和二重結合含有基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2もしくは3のアシル基、または炭素数3〜5のアルコキシアルキル基を表し、k、mおよびnは以下の関係式を同時に満足する数である:0≦k<1.5、0.01≦m≦1、0.5≦k+m≦1.8、0.01≦n≦2.5、1≦k+m+n≦3)
【0032】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デジル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等、シアノ基で置換したシアノエチル基等、エポキシ基で置換したグリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基等、( メタ) アクリル基で置換したメタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基等、アミノ基で置換したアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基等、メルカプト基で置換したメルカプトプロピル基等が例示される。
【0033】
の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などの脂肪族系、2−シクヘキセニル基、3−シクヘキセニル基、2−ビニルシクロヘキセニル基等の脂環式系、2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、2−アリルフェニル基等の芳香族系、3−(メタ)アクリロクシプロピル基等の置換基を含有する等が例示される。
【0034】
の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基から選択されるアルキル基、アセチル基等のアシル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基等のアルコキシアルキル基が例示される。
【0035】
市販の製品事例として、信越化学工業社製KR−401N,X−40−9227,X−40−9247,KR−510,KR−9218,KR−213,KR−217,X−41−1053,X−40−1056,X−41−1805,X−41−1810,X−40−2651,X−40−2652B,X−40−2655A,X−40−2761,X−40−2672等が挙げられる。
【0036】
本発明において塗布層を形成する際に使用する有機溶剤に関しては特に限定されるわけではなく、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、2 − プロパノール等、従来公知の有機溶剤を使用することができる。使用する有機溶剤は一種類のみでもよく、適宜、二種類以上を使用してもよい。
【0037】
また、塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、架橋剤(C)を併用してもよく、具体例としてはメチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネートカップリング剤等が挙げられる。
【0038】
さらに塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、無機系粒子(D)を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。
【0039】
また、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0040】
本発明における保護フィルムを構成するポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥後)は、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗布量が0.005g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、離型層の密着性が十分でなくなる場合がある。一方、1g/mを超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0041】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは120〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0042】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
【0043】
次に本発明におけるシリコーン層の形成について説明する。
本発明における保護フィルムを構成するシリコーン層は一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用するのが良い。
【0044】
また、本発明における保護フィルムを構成するシリコーン層は硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0045】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213、GE東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、SM3200、SM3030、東レ・ダウコーニング(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、SRX357、SRX211、SD7220、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、SP7268S、SP7265S、LTC1000M、LTC1050L、SYLOFF7900、SYLOFF7198、SYLOFF22A等が例示される。さらにシリコーン層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0046】
本発明において、ポリエステルフィルム上にシリコーン層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングによりシリコーン層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。尚、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。
【0047】
本発明において塗布層上にシリコーン層を設ける場合、塗布層を設けた後、連続して、シリコーン層を塗布層上に設けるのが良い。順次、連続して塗布層、シリコーン層を設ける事で、単位時間あたりの生産量が増えるので好ましい。
【0048】
本発明において、ポリエステルフィルムに塗布層、およびシリコーン層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式があるが、どのような塗工方式を用いても良い。
【0049】
本発明の保護フィルムのシリコーンコート面のベースフィルムの表面粗さとシリコーンコート厚さの関係は下記式(1)を満足する必要があり、下記式(2)を満足することが好ましい。
−Rmax÷2≦ds−Rmax≦2×Rmax …(1)
−Rmax/3≦ds−Rmax≦1.5×Rmax …(2)
(上記式中、Rmaxはポリエステルフィルム表面の最大高さ(μm)、dsはシリコーン塗布層の厚み(μm)を意味する)
【0050】
シリコーン塗布層の厚み(ds)からベースフィルムの表面粗さの最大高さ(Rmax)を引いた値がマイナス値であり、最大高さ(Rmax)の半分より絶対値が大きい場合は、剥離性は十分にあるが、ガラスとの密着性がなくなってしまい問題である。一方、シリコーン塗布層の厚み(ds)からベースフィルムの表面粗さの最大高さ(Rmax)を引いた値がプラス値であり、最大高さ(Rmax)の2倍となる場合は、剥離性、密着性ともに問題ないが、保護フィルムをロール保管した際にブロッキングを起こしてしまい問題となる。
【0051】
本発明のシリコーン塗布層の塗工量は、通常0.05〜1g/m、好ましくは0.1〜0.5g/mの範囲である。塗工量が0.05g/m未満の場合、シリコーンコート面の表面粗さとシリコーンコート厚さとの関係を要求される範囲にするために、特殊なポリエステルフィルムを用いなければならず、コスト面から好ましくない。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には、シリコーン層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0052】
本発明における保護フィルムに関して、シリコーン層が設けられていない面には本発明の主旨を損なわない範囲において、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
【0053】
また、保護フィルムを構成するポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、異物の混入に関して液晶パネルの生産歩留が現状より悪化させることがなく、コストへの負荷が少なく、かつ、液晶セルのガラス面に密着して簡便に剥れることができる保護フィルムを提供することができ、工業的価値は大いに高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおり
である。
【0056】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0057】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0058】
(3)シリコーン層の塗布量
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。
【0059】
次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出し、シリコーンゴムの比重(0.95)で除して、コート厚さ(nm)を求めた。
【0060】
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
【0061】
(4)保護フィルムのガラスとの密着性
保護フィルムのシリコーンコート面をLCDパネルに用いられるガラス面に、ゴムローラーで重ね合わせ試験片を採取する。当該試験片を垂直に立て、恒温恒湿に管理された部屋の中に24時間放置し、ガラス面から保護フィルムが剥れるかどうかを観察し、剥れない場合を密着性良好とする。剥れが認められた場合は不良とする。
【0062】
次に密着性良好のサンプルにおいて、ガラス面側から手で軽く10回叩いた時に、保護フィルムが剥れるかどうかを観察する。剥れない場合を密着性が非常に良好とする。
【0063】
(5)異物個数の測定
保護フィルムをクリーン度が100クラスのクリーンルーム内に設置された暗幕室にてハロゲンライト投光を行い、目視による異物検査を10m行い、検出された全異物の大きさを、光学顕微鏡を用いて測定し、目視にて異物の個数を数える。長軸が100μm以上の異物が10個以下である場合を○、10個を越える場合を×と判定する。
【0064】
(6)シリコーンとPETとの密着性
保護フィルムにシリコーンをコートした後、コート面を指で擦る。10回擦ってもコート層の脱落が見られない場合を○、さらに擦ってもコート層が脱落しない場合を◎とする。
【0065】
(7)保護フィルムのブロッキング
保護フィルムのシリコーンコート面に保護フィルムのPET面が接触するように2枚の保護フィルムを重ね合わせ、油圧式熱プレス機を用いて60℃ 1MPaの条件下で2時間プレスした後、常温に1時間放置し、試験片を得る。得られた試験片の保護フィルムを手で引き剥がす時、特に異音や異常を感じずに剥れた場合を◎、異音を発しながらでも剥れた場合を○、フィルムが密着してしまい、フィルムを剥がす際に異音を発し、安定して剥れないような場合を×とする。
【0066】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(A)を得た。この、ポリエステルの極限粘度は0.63であった。
【0067】
<ポリエステル(B)の製造>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.7μmの合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は極限粘度0.63であった。
【0068】
<ポリエステル(C)の製造>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径1.5μmの合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は極限粘度0.63であった。
【0069】
<ベースフィルム(I)の製造>
上記ポリエステル(A)チップと、ポリエステル(B)チップとを、表1に示す通りの割合で混合した混合原料を最外層(表層)および中間層の原料とし、2台の押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.9倍の横延伸を施した後、190℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に10%の弛緩を加えポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは40μm、それぞれの層厚みは4μm/32μm/4μmであった。
【0070】
<ベースフィルム(II)の製造>
上記ポリエステル(A)チップと、ポリエステル(C)チップとを、表1に示す通りの割合で混合した混合原料を最外層(表層)および中間層の原料とし、2台の押出機に各々供給する他はベースフィルム(I)の製造方法と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
<ベースフィルム(III)の製造>
上記ポリエステル(A)チップを、最外層(表層)および中間層の原料とし、2台の押出機に各々供給するほかはベースフィルム(I)の製造方法と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1:
ベースフィルム(I)に下記組成からなるシリコーン液を塗布量(乾燥後)が260nmになるようにロッドコータ方式により塗布し、120℃、50m/分の条件で乾燥、硬化させて保護フィルムを得た。
《シリコーン液組成》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製):99重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製):1重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度4重量%の塗布液を作製した。
【0073】
実施例2:
ベースフィルム(II)にシリコーン液を塗布する以外は実施例1と同様にして保護フィルムを得た。
【0074】
実施例3:
ベースフィルム(III)に下記組成からなるシリコーン液を塗布量(乾燥後)が130nmになるようにロッドコータ方式により塗布し、120℃、50m/分の条件で乾燥、硬化させ保護フィルムを得た。
《シリコーン液組成》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製):99重量%
硬化剤(PL−50T: 信越化学製):1重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度2重量%の塗布液を作製した。
【0075】
実施例4:
ベースフィルム(III)に下記組成からなるシリコーン液を塗布量(乾燥後)が180nmになるようにロッドコータ方式により塗布した以外は実施例3と同様にして保護フィルムを得た。
【0076】
実施例5:
ベースフィルム(I)に下記塗布剤を塗布量(乾燥後) が0.05g/mになるようにロッドコータ方式により塗布した後、100℃、ライン速度50m/分の条件で乾燥、硬化させた。
【0077】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ジルコニウムキレート化合物(A1):ジルコニウムトリス(アセチルアセトネ−ト)
・シランアルコキシオリゴマー(B1):X−41−1056(信越化学製)
《塗布剤組成》
ジルコニウムキレート化合物(A1):2重量%
シランアルコキシオリゴマー(B1):98重量%
上記塗布剤をトルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1)により希釈し、濃度1重量%の塗布液を作製した。
【0078】
次に塗布層上に続けて下記組成からなるシリコーン液を塗布量(乾燥後)が260nmになるようにロッドコータ方式により塗布し、120℃、50m/分の条件で乾燥、硬化させ保護フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製):99重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製):1重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度4重量%の塗布液を作製した。
【0079】
実施例6:
ベースフィルム(III)に下記塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.05g/mになるようにロッドコータ方式により塗布した後、100℃、ライン速度50m/分の条件で乾燥、硬化させた。
【0080】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・ジルコニウムキレート化合物(A1):ジルコニウムトリス(アセチルアセトネ−ト)
・シランアルコキシオリゴマー(B1):X−41−1056(信越化学製)
《塗布剤組成》
ジルコニウムキレート化合物(A1):2重量%
シランアルコキシオリゴマー(B1):98重量%
上記塗布剤をトルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1)により希釈し、濃度1重量%の塗布液を作製した。
【0081】
次に塗布層上に続けて下記組成からなるシリコーン液を塗布量(乾燥後)が130nmになるようにロッドコータ方式により塗布し、120℃、50m/分の条件で乾燥、硬化させ保護フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製):99重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製):1重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度2重量%の塗布液を作製した。
【0082】
比較例1:
実施例1においてシリコーン液を塗布量(乾燥後)が130nmになるように塗布層を設ける以外は実施例1と同様にして保護フィルムを得た。
【0083】
比較例2:
実施例1においてベースフィルムをベースフィルム(III)とする以外は実施例1と同様にして保護フィルムを得た。
【0084】
比較例3:
市販されているポリエチレンの微粘着保護フィルムを用いた。異物個数が多く、本用途には不適切と判断した。
【0085】
上記実施例と比較例で得られた各離型フィルムの特性をまとめて下記表2および3に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の保護フィルムは、例えば、液晶セルのガラス面に密着して簡便に剥れることができる保護フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面にシリコーン塗布層を有するポリエステルフィルムであり、下記式を満足することを特徴とするガラスの表面保護フィルム。
−Rmax÷2≦ds−Rmax≦2×Rmax
(上記式中、Rmaxはポリエステルフィルム表面の最大高さ(μm)、dsはシリコーン塗布層の厚み(μm)を意味する)

【公開番号】特開2010−221421(P2010−221421A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68558(P2009−68558)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】