説明

保護部材

【課題】 上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、段差等を有する物品であっても、一部材で振動や衝撃によって該物品が破損、故障することを防止できる保護部材を提供すること。
【解決手段】 上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、該空洞に挿入して輸送による振動、衝撃から該物品を保護する保護部材であって、該保護部材は、シート材により上部に接する上面と下部に接する下面が略平行に形成されており、下面には、垂直に立設され、上面を支持するリブを備え、該リブには先端が上面よりも上方に位置する突出部が形成されていることを特徴とする保護部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空洞を有する物品が、輸送時等に被る衝撃や振動によって生じる破損や故障を防止する保護部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置、特に複写機では、省スペース化のために、画像が形成された用紙が装置本体内部に排出されるいわゆる胴内排紙型のものが主流となっている(例えば図4参照)。
【0003】
図4に示すような胴内排紙型の複写機(100)は、装置下部の画像形成部(101)と上部の画像読取部(102)の間に用紙を排出するための排紙部(103)となる大きな空洞を有しており、上部の画像読取部(102)は、装置右方と前方においては支持されておらず片持ち状態にある。
そのため輸送時に振動や衝撃等を受けると破損や故障を生じ易いといった問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、例えば空洞の端部(図4においては装置右方と前方)に嵌め込み振動による破損を防止する支持部材(特許文献1,2参照)や空洞に箱体を挿入して載置し、箱体の上面で上部の画像読取部(102)を支持する梱包方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
しかし近年、画像読取部(102)に付設された操作パネル(104)が、操作性やデザイン性向上のために画像形成部(101)より前方に張り出して配置されたものや、角度を自在に調節できるものとなってきており、画像読取部(102)との間に段差があるものが存在する。
これら操作パネル(104)のように、画像形成部(101)より前方に張り出したものや、可動式のものや、段差を有するものは、上記した支持部材や梱包方法では別の部材等の追加なしに振動等による破損や故障を保護しきれなくなってきている。
【0006】
可動部に嵌め込むスペーサや、段差を埋めるスペーサ等を追加して保護する方法もあるが、部材点数が増えると梱包作業や開梱作業が手間となる。また、このような輸送時にのみ使用される保護部材は、開梱された後不要となり廃棄されるため環境面を考慮しても部材点数は少なくしたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3810949号公報
【特許文献2】特許第4174390号公報
【特許文献3】特許第4097456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、段差等を有する物品であっても、一部材で振動や衝撃によって該物品が破損、故障することを防止できる保護部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、該空洞に挿入して輸送による振動、衝撃から該物品を保護する保護部材であって、該保護部材は、シート材により前記上部に接する上面と前記下部に接する下面が略平行に形成されており、前記下面には、垂直に立設され、前記上面を支持するリブを備え、該リブには先端が前記上面よりも上方に位置する突出部が形成されていることを特徴とする保護部材に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記上面の前記突出部が位置する部分には、直線状の基端部で上方に折れ曲がる切込み部が設けられ、該切込み部が前記突出部によって上方に持ち上げられていることを特徴とする請求項1に記載の保護部材に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記切込み部の前記基端部の反対側に、前記切込み部に連なって抜き穴が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の保護部材に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記シート材が、段ボールシートであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の保護部材に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記物品が、胴内排紙型の画像形成装置であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の保護部材に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、該空洞に挿入して輸送による振動、衝撃から該物品を保護する保護部材であって、該保護部材は、シート材により上部に接する上面と下部に接する下面が略平行に形成されており、下面には、垂直に立設され、上面を支持するリブを備え、該リブには先端が上面よりも上方に位置する突出部が形成されていることにより、上部に張り出しや段差等があっても、上面と突出部で支持することができるので、一部材で振動や衝撃による物品の破損や故障を防止できる。そのため、作業に手間がかからず、しかも不要になった後の廃棄物も少なくなり環境面においても優れる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、上面の突出部が位置する部分には、直線状の基端部で上方に折れ曲がる切込み部が設けられ、切込み部が突出部によって上方に持ち上げられていることにより、リブに形成された突出部で上部を支持する場合に比して、広い接触面積で支持するので安定して支持でき、より破損や故障を生じ難い。また、突出部にかかる負荷が分散するので、突出部が傷み難く長時間の輸送に使用することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、切込み部の基端部の反対側に、切込み部に連なって抜き穴が設けられていることにより、抜き穴を把手とすることができ、保護部材の挿脱を容易に行うことができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、シート材が、段ボールシートであることにより、軽量で容易に折り曲げることができ作業性が良く且つ十分な強度の保護部材とすることができる。
また、不要となった後にはリサイクルも可能であり環境面において優れる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、胴内排紙型の画像形成装置の画像読取部と操作パネルを一部材で同時に支持することができ、輸送時の振動や衝撃による破損や故障を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る保護部材の一実施形態を展開して示す展開図である。
【図2】本発明に係る保護部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る保護部材の一実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る保護部材が適用される物品の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る保護部材の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る保護部材の一実施形態を展開して示す展開図である。
図2は、本発明に係る保護部材の一実施形態を示す斜視図である。
図3は、本発明に係る保護部材の一実施形態を示す正面図である。
本明細書中、図1における下側を前方とし、図2は前方右上方から見た図、図3は前方から見た図である。
図1において実線は外形線及び切込み線を示し、一点鎖線は紙面手前に山折り、二点鎖線は紙面手前に谷折りする折曲げ線を示す。
図2、3に示す保護部材(1)は、図1に示す1枚のシート材(10)を折曲げ線に沿って折り曲げることにより組み立てられて形成される。
なお、本発明に係る保護部材は、本実施形態では1枚のシート材(10)により形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば本体と蓋のように2枚のシート材を組み合わせても良く、3枚以上のシート材を組み合わせて形成しても良い。
【0021】
シート材(10)は、板紙や樹脂薄板等特に限定されないが、段ボールシートであることが好ましい。
軽量で容易に折り曲げることができ作業性が良く、且つ十分な強度を得ることができるからである。
また、不要となった後にはリサイクルや焼却処理も可能であり環境面において優れるからでもある。
【0022】
保護部材(1)を組み立てた時に下面に位置するシート材(10)の下面(11)には、折曲げ線(A)、(B)に沿って谷折りされ、垂直に立てられる2つのリブ(2)が切込み線によって形成されている。
2つのリブ(2)のうち前方に位置するリブ(2)には、先端に突出部(21)が形成されている。また、2つのリブ(2)には、嵌合部(22)が形成されていることが好ましい。
なお、リブ(2)は、本実施形態では2個であるがこれに限定されず、1個でも良いし、3個以上であっても良い。また、突出部(21)は前方のリブ(2)にのみ2箇所形成されているがこれに限定されず、全てのリブ(2)に設けられていても良いし、1箇所又は3箇所以上に形成されていても良い。
【0023】
保護部材(1)を組み立てた時に上面に位置するシート材(10)の上面(12)には、折曲げ線(C)、(D)を基端部として上方(図1では紙面裏側)へ折れ曲がる切込み部(3)が切込み線によって形成されている。
切込み部(3)は、シート材(10)を折り曲げて保護部材(1)を組み立てた時の突出部(21)の位置に合せて突出部(21)と同数設けられている。
図1において右側の切込み部(3)の折曲げ線(D)と反対側に切込み部(3)の切込み線を延長して切込み部(3)に連なる抜き穴(31)が設けられていることが好ましい。
保護部材(1)を組み立てた時に、抜き穴(31)を把手とすることができ、保護部材(1)の物品への挿脱を容易に行うことができるからである。
抜き穴(31)は図1では2つの切込み部(3)のうちの一方にのみ設けられているがこれに限定されず、全ての切込み部(3)に設けられていても良い。
【0024】
保護部材(1)を組み立てた時に上面と下面の間に位置するシート材(10)の中板(13)には、リブ(2)を狭持する挿入溝(4)と、下面(11)に形成された掛止孔(51)に掛止する掛止突起(52)が設けられていることが好ましい。
組み立てられて保護部材(1)となった時に、リブ(2)を狭持していることでリブ(2)が倒れ難く、強度が増すからである。
【0025】
保護部材(1)を組み立てた時に右側面に位置するシート材(10)の右側面(14)には、折曲げ線(h)、(i)上にガイド板(6)が設けられていることが好ましい。
保護部材(1)を物品に挿入する時に容易に位置決めできるからである。
【0026】
シート材(10)の折曲げ線(f)を横切って嵌合部(22)と嵌め合わされる被嵌合部(7)が設けられていることが好ましい。
リブ(2)と嵌合するのでリブ(2)が倒れ難くなり、保護部材(1)の強度が増すからである。
【0027】
保護部材(1)の組立て手順は、以下の通りである。
図1において2つのリブ(2)を折曲げ線(A),(B)に沿って谷折りにし、垂直に立て、シート材(1)の左方から折曲げ線(a)〜(e)を順に谷折りして夫々90°折り曲げる。
折曲げ線(e)を折り曲げる時に、掛止突起(52)を掛止孔(51)に掛止させ、リブ(2)は挿入溝(4)へ挿入する。
この時、図3に示すように中板(13)は、下面(11)と上面(12)の間に下面(11)及び上面(12)に略平行に配置され、リブ(2)を狭持する。
上面(12)は図3に示すように、リブ(2)に支持されるとともに、図2、3に示すように、突出部(21)は上面(12)より上方に突き出し、突出部(21)によって切込み部(3)は上方に持ち上げられる。
【0028】
次に、シート材(1)の右方から折曲げ線(f)〜(i)を順に谷折りして夫々90°折り曲げる。
折曲げ線(i)を折り曲げる時に、嵌合部(22)を被嵌合部(7)に嵌め込む。
【0029】
このようにして組み立てられた保護部材(1)を、上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時に、該空洞に挿入することにより、物品の上部に張り出しや段差等があっても下面(11)に略平行な上面(12)と突出部(21)に持ち上げられた切込み部(3)によって上部を支持することができるので、一部材のみで、振動や衝撃による物品の破損や故障を防止できる。そのため、梱包や開梱作業に手間がかからず、しかも不要になった後の廃棄物も少なくなり環境面においても優れる。
【0030】
なお、切込み部(3)を設けずに突出部(21)が上面(12)を貫通できる穴やスリットを設けて、上面(12)と突出部(21)で上部を支持する構成としても良いが、切込み部(3)が設けられていることで、突出部(21)で直に上部を支持する場合に比して、広い接触面積で上部を支持するので安定して支持でき、より破損や故障を生じ難い。また、突出部(21)にかかる負荷が分散するので、突出部(21)が傷み難く長時間の輸送に使用することができる。
【0031】
保護部材(1)は、上部と下部の間に空洞を有する物品の輸送時において有効であるが、特に図4に示す胴内排出型複写機(100)の輸送時に好適に利用できる。
上面(12)で画像読取部(102)を、突出部(21)に持ち上げられた切込み部(3)で操作パネル(104)を同時に支持することができ、一部材で輸送時の振動や衝撃による破損や故障を防止することができる。
【0032】
本発明に係る保護部材は、上記した構成に限定されることはなく、1枚のシート材を折曲げることで上面と下面を略平行に配置して形成され、下面には上面を支持し且つ先端が上面より上方に位置する突出部を備える保護部材であれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、胴内排紙型の複写機等、上部と下部の間に空洞を有する一の物品が輸送時に被る衝撃や振動によって生じる破損や故障を防止する保護部材に対して利用されるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 保護部材
10 シート材
2 リブ
21 突出部
3 切込み部
31 抜き穴
100 胴内排紙型複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部と下部の間に空洞を有する一の物品の輸送時において、該空洞に挿入して輸送による振動、衝撃から該物品を保護する保護部材であって、
該保護部材は、シート材により前記上部に接する上面と前記下部に接する下面が略平行に形成されており、
前記下面には、垂直に立設され、前記上面を支持するリブを備え、該リブには先端が前記上面よりも上方に位置する突出部が形成されていることを特徴とする保護部材。
【請求項2】
前記上面の前記突出部が位置する部分には、直線状の基端部で上方に折れ曲がる切込み部が設けられ、該切込み部が前記突出部によって上方に持ち上げられていることを特徴とする請求項1に記載の保護部材。
【請求項3】
前記切込み部の前記基端部の反対側に、前記切込み部に連なって抜き穴が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の保護部材。
【請求項4】
前記シート材が、段ボールシートであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の保護部材。
【請求項5】
前記物品が、胴内排紙型の画像形成装置であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の保護部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195426(P2010−195426A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43026(P2009−43026)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】