説明

信号処理装置及び信号処理方法

【課題】変調信号の復調を実行する際の消費電力を低減し、かつ実装コストを抑制することが可能であり、また入力される信号から精度良く変調成分を抽出することを可能とする信号処理装置及び信号処理方法を提供する。
【解決手段】PLL451は、ベースバンド周波数の信号であるI信号及びQ信号のそれぞれの位相差を算出し、合成することで合成位相差信号を生成する。また、合成位相差信号に基づいて、復調信号を生成する。AFC46は、復調信号に基づいて生成されるAFC用信号に基づいて、DDC421で周波数変換する際に用いた乗算信号の乗算周波数が適切なものか否かを判断し、AFC信号を生成する。そして、乗算周波数を設定するための信号であるAFC信号をDDC421に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調された変調信号を復調する信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数変調(FM:Frequency Modulation)された変調信号を位相同期ループ(以下、PLL(Phase Locked Loop)とする)方式を用いて復調する復調装置が提案されている(特許文献1参照)。従来の復調装置の構成について図面を参照して説明する。図12は、従来の復調装置を示すブロック図である。
【0003】
図12に示すように、復調装置100は、周波数変調されたアナログの信号をデジタルの信号に変換するADC(Analog Digital Converter)101と、ADC101から出力されるデジタルの信号をベースバンド周波数の信号に周波数変換して互いに直交する信号(同相成分を示すI信号及び直交成分を示すQ信号)を出力するDDC(Digital Down Converter)102と、DDC102から出力されるI信号及びQ信号のそれぞれのゲインを調整するAGC(Automatic Gain Control)103と、AGC103から出力されるI信号及びQ信号のそれぞれに対してノイズ低減などの各種処理を施す各種処理部104と、ノイズ低減処理部104から出力されるI信号及びQ信号をキャリア周波数fを用いて合成して高周波数の信号に変換するDUC(Digital Up Converter)105と、DUC105から出力される信号を検波して復調信号を得るPLL(Phase Locked Loop)106と、を備える。
【0004】
DUC105の構成について図面を参照して説明する。図13は、DUCの構成を示すブロック図である。なお、図13ではI信号をcos(δ)、Q信号をsin(δ)で表す。
【0005】
図13に示すように、DUC105は、三角波状の信号を出力する位相信号供給部105aと、位相信号供給部105aから出力される信号(位相信号)に基づいた余弦波の信号cos(f)を出力するcos出力部105bと、位相信号供給部105aから出力される信号(位相信号)に基づいた正弦波の信号sin(f)を出力するsin出力部105cと、I信号cos(δ)とcos出力部105bから出力される信号cos(f)とを乗算して出力する乗算器105dと、Q信号sin(δ)とsin出力部105cから出力される信号sin(f)とを乗算して出力する乗算器105eと、乗算器105dから出力される信号cos(f)cos(δ)から乗算器105eから出力される信号sin(f)sin(δ)を減算して出力する減算器105fと、を備える。なお、減算器105fから出力される信号は、cos(f)cos(δ)−sin(f)sin(δ)=cos(f+δ)となる。そして、この信号がDUC105から出力される信号となる。
【0006】
PLL106の構成について図面を参照して説明する。図14は、PLLの構成を示すブロック図である。なお、図14では説明を簡単にするために、上述のDUC105から出力される信号を2×cos(f+δ)とする。
【0007】
図14に示すように、PLL106は、DUC105から出力される信号2×cos(f+δ)とリファレンス信号に基づいて比較信号を生成する位相比較器106aと、位相比較器106aから出力される比較信号の高周波成分を除去することで復調信号を生成するループフィルタ106bと、ループフィルタ106bから出力される復調信号に基づいてリファレンス信号を生成するNCO(数値制限発振器:Numerical Controlled Oscillator)106cと、を備える。
【0008】
NCO106cは、ループフィルタ106bから出力される復調信号に応じたリファレンス信号sin(f+α)を生成し、位相比較器106aに入力する。位相比較器106aは、DCU105から出力される信号2×cos(f+δ)とNCO106cから出力されるリファレンス信号sin(f+α)との位相比較(乗算)を行って、比較信号2×cos(f+δ)×sin(f+α)を出力する。なお、この比較信号2×cos(f+δ)×sin(f+α)は、下記式(1)のように変形することが可能である。
【0009】
2×cos(f+δ)×sin(f+α)
=sin(2f+α+δ)+sin(α−δ) ・・・(1)
【0010】
ループフィルタ106bは、位相比較器106aから出力される上記式(1)の比較信号から、高周波成分(sin(2f+α+δ))を除去する。これにより、ループフィルタ106bからsin(α−δ)となる信号が出力される。また、この信号sin(α−δ)が、PLL106から出力される復調信号となる。
【0011】
周波数変調されたFM波は、周波数が絶えず変化するものとなる。この変化は、PLL106に入力される信号2×cos(f+δ)のδとして現れる。PLL106は、入力される信号2×cos(f+δ)の周波数とNCO106cが出力するリファレンス信号sin(f+α)との位相差を検出して、位相差に応じた電圧の変化(振幅の変化)を有する復調信号sin(α−δ)を生成する。
【0012】
【特許文献1】特開2002−151964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の復調装置100では、PLL106に入力される信号2×cos(f+δ)が、キャリア周波数fを用いて変調された高周波数の信号となる。よって、PLL106において十分な性能を得るために、高速の処理機能(例えば、サンプリング周波数fsがキャリア周波数fの2倍以上)が必要となる。そのため、例えばハードウェアで動作させる場合、消費電力が大きくなる問題が生じる。一方、PLL106をソフトウェアによって構成する場合、高性能の演算処理が必要となるため、実装コストが大きくなることが問題となる。
【0014】
特に、上記のPLL106のような復調回路を、ALUアレイを用いたリコンフィギュラブル回路(例えば、特開2005−275698号公報など)を用いて実現する場合に問題となる。このようなリコンフィギュラブル回路は、高い周波数で動作することができない。そのため、実現すること自体が困難となることが問題となる。
【0015】
また、FM波の変調成分を精度良く抽出して復調信号を生成することも課題となっている。具体的には、上記のDDC102においてI信号及びQ信号を生成する際に、変調成分以外の不要な成分(例えば、直流成分)が残留することが課題となる。このような不要な成分が存在するI信号及びQ信号から生成される復調信号を再生等する場合、再生され
る信号(例えば、音や映像)が劣化したものとなる。
【0016】
そこで、本発明は、PLL方式を用いて復調を実行する際、消費電力を低減し、かつ実装コストを抑制することが可能であり、また入力される信号から精度良く変調成分を抽出することを可能とする信号処理装置及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明における信号処理装置は、周波数変調された信号を復調する信号処理装置であって、互いにほぼ直交して周波数がともに乗算周波数となる第1及び第2の乗算信号を生成し、かつ、入力される信号に対して前記第1及び第2の乗算信号を乗算し、さらに高周波成分を除去することで、ベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号と、を生成する周波数変換部と、前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、復調信号を生成する復調信号生成部と、前記復調信号に基づいて、前記第1乗算信号及び前記第2乗算信号の前記乗算周波数を設定するための設定信号を生成し、当該設定信号を前記周波数変換部に入力する周波数制御部と、を備え、前記復調信号生成部が、互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する発振器と、前記第1信号と前記第1リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を生成する第1位相比較器と、前記第2信号と前記第2リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を生成する第2位相比較器と、前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を生成する合成部と、を備え、前記合成部で生成される信号を前記復調信号として出力するとともに、前記発振器への入力として用いることを特徴とする。
【0018】
このように構成すると、ベースバンド周波数である第1信号及び第2信号が、別々に第1リファレンス信号及び第2リファレンス信号と位相比較されることとなる。また、復調信号に基づいて、第1乗算信号及び第2乗算信号の乗算周波数が設定されることとなる。
【0019】
なお、以下の実施形態では、周波数変換部の一例としてDDCを挙げ、復調信号生成部の一例としてPLLを挙げ、周波数制御部の一例としてAFC及びAFC用信号生成部を挙げて、それぞれ説明している。さらに、発振器の一例としてNCOを挙げ、第1及び第2位相比較器の一例として乗算器を挙げ、合成部の一例として減算器を挙げて、それぞれ説明している。
【0020】
また、上記構成の信号処理装置において、前記周波数制御部が、前記周波数変換部に入力される信号の周波数とほぼ等しい前記乗算周波数を設定する設定信号を生成することとしても構わない。
【0021】
このように構成すると、周波数変換部に入力される信号の周波数と乗算周波数とのずれに起因する成分が、第1信号及び第2信号に重畳することを効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
また、上記構成の信号処理装置において、前記復調信号生成部の前記合成部が、前記合成位相差信号の高周波成分を除去するフィルタをさらに備え、前記フィルタにより高周波成分が除去された信号を前記復調信号として前記復調信号生成部から出力し、前記復調信号が、前記発振器への入力として用いられることとしても構わない。
【0023】
なお、合成部を例えば、以下の実施形態における減算器とループフィルタとを含むものとして解釈しても構わない。
【0024】
また、上記構成の信号処理装置において、前記周波数制御部が、前記復調信号の値に応じて周波数が決定される三角波状の信号である設定用信号を生成する設定用信号生成部と、前記設定用信号の周波数に基づいて前記設定信号を生成する設定信号生成部と、を備えることとしても構わない。
【0025】
なお、以下の実施形態において、設定用信号生成部の一例としてAFC用信号生成部を挙げ、設定信号生成部の一例としてAFCを挙げて、それぞれ説明している。
【0026】
また、本発明の信号処理方法は、周波数変調された信号を復調する信号処理方法であって、互いにほぼ直交して周波数がともに乗算周波数となる第1及び第2の乗算信号を生成する第1ステップと、入力される信号に対して前記第1及び第2の乗算信号を乗算し、さらに高周波成分を除去することで、ベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号と、を生成する第2ステップと、前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、復調信号を生成する第3ステップと、前記復調信号に基づいて、前記第1乗算信号及び前記第2乗算信号の前記乗算周波数を設定するための設定信号を生成する第4ステップと、を備え、前記第3ステップが、互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する第5ステップと、前記第1信号と前記第1リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を生成する第6ステップと、前記第2信号と前記第2リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を生成する第7ステップと、前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を生成する第8ステップと、を備え、前記第8ステップで生成される信号を前記復調信号とするとともに、当該復調信号が、前記第5ステップで前記第1リファレンス信号および前記第2リファレンス信号を生成する際に用いられ、前記第4ステップで生成される前記設定信号が、前記第1ステップで前記第1及び第2乗算信号の前記乗算周波数を設定する際に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の構成とすると、ベースバンド周波数に変換された信号のまま、PLL方式を用いて復調することが可能となる。そのため、実装する演算処理機能の動作速度を低減することが可能となる。したがって、消費電力や実装コストを抑制することが可能となる。
【0028】
また、本発明の信号処理装置は動作速度が低減されるため、信号処理装置の全部または一部を、リコンフィギュラブル回路やDSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)などによって容易に実現することが可能となる。特に、ソフトウェア処理によっても容易に実現することが可能となる。
【0029】
また、本発明の構成とすると、復調信号に基づいて設定された乗算周波数を有する第1及び第2乗算信号によって、信号処理装置に入力される信号の周波数変換が行われる。これにより、入力される信号の周波数(例えば中間周波数)と乗算周波数とがずれることによって、第1信号及び第2信号に不要な成分(例えば、ずれに起因する直流成分)が重畳することを、容易に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明における信号処理装置の一例である復調装置(復調部)について、図面を参照して説明する。最初に、この復調装置(復調部)を備える受信装置の構成例及び動作例について図面を参照して説明する。
【0031】
<<受信装置>>
図1は、受信装置の構成例の概略を示すブロック図である。図1に示すように、受信装置1は、空間を伝播するFM変調された無線信号(例えば、ラジオ放送などの放送信号)を受信するアンテナ2と、アンテナ2で受信した受信信号から所望の周波数帯域の信号を取得して出力するチューナ部3と、チューナ部3から出力される信号を復調して出力する復調部4と、復調部4から出力される信号(復調信号)に基づいてスピーカなどの再生装置(不図示)で再生可能となる再生信号を生成して出力する出力部5と、を備える。
【0032】
次に、受信装置1の動作について図1を参照して説明する。受信装置1は、アンテナ2を介して無線信号を受信する。チューナ部3は、アンテナ部2で受信された受信信号から所望の周波数帯域の信号を選択して取得し、取得した信号を出力する。また、チューナ部3は、取得した高周波数の信号をダウンコンバートして中間周波数fiの信号に変換したり、信号の強度を調整したりする処理を行う。なお、高周波数の信号のまま後段の復調部4に出力することとしても構わないが、以下では、チューナ部3において中間周波数fiに周波数変換する場合について説明する。
【0033】
復調部4は、チューナ部3から出力される信号を復調して復調信号を生成する。なお、復調部4の詳細については後述する。また、復調部4から出力される復調信号は、出力部5に入力されて再生装置などで再生可能な形式の信号である再生信号に変換される。そして、この再生信号が再生装置などに入力されることによって、音声などが再生される。
【0034】
<<復調部:第1実施例>>
<構成>
次に、図1に示した復調部4(復調装置)の第1実施例の構成について図面を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態に係る復調部の第1実施例の構成の概略を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すように、復調部4は、周波数変調されたアナログの入力信号をデジタルの信号に変換するADC41と、ADC41から出力されるデジタルの信号をベースバンド周波数の信号に周波数変換して互いに直交する信号(同相成分を示すI信号及び直交成分を示すQ信号)を出力するDDC42と、DDC42から出力されるI信号及びQ信号のそれぞれのゲインを調整するAGC43と、AGC43から出力されるI信号及びQ信号のそれぞれに対してノイズ低減などの各種処理を施す各種処理部44と、各種処理部44から出力される信号を検波して復調信号を生成するPLL45と、を備える。
【0036】
また、図3にDDC42の構成例を示す。図3では、ADC41から出力されてDDC42に入力されるデジタルの信号を、cos(fi+δ)として示している。なお、δは変調成分である。DDC42は、ADC41から入力される信号に第1乗算信号cos(fimul)を乗算して出力する乗算器42aと、ADC41から入力される信号に第2乗算信号sin(fimul)を乗算して出力する乗算器42bと、乗算器42aから出力される信号から高周波成分を除去するLPF(Low Pass Filter)42cと、乗算器42bから出力される信号から高周波成分を除去するLPF42dと、入力される位相信号に基づいて乗算器42aに第1乗算信号cos(fimul)を入力するcos出力部42fと、入力される位相信号に基づいて乗算器42bに第2乗算信号sin(fimul)の信号を入力するsin出力部42gと、cos出力部42f及びsin出力部42gに位相信号を供給する位相信号供給部42eと、を備える。なお、以下においてfimulを乗算周波数と呼ぶ。また、LPF42c,42dが、高周波成分を除去した後の信号のデータを間引く、リサンプリングを行うこととしても構わない。
【0037】
乗算器42aから出力される信号cos(fi+δ)×cos(fimul)は、
1/2{cos(fi+fimul+δ)+cos(fi−fimul+δ)}
となる。ここで、中間周波数fi=乗算周波数fimulであれば、
1/2{cos(2fi+δ)+cos(δ)}
となる。そのため、LPF42cからは低周波成分である1/2cos(δ)が出力される。
【0038】
同様に、乗算器42bから出力される信号cos(fi+δ)×sin(fimul)は、
1/2{sin(2fi+δ)−sin(δ)}
となる。そのため、LPF42dからは低周波成分である−1/2sin(δ)が出力される。
【0039】
以上のようにして、I信号とQ信号とが生成される。なお、乗算器42a及び乗算器42bにおいてADC41から出力される信号に乗算する第1乗算信号及び第2乗算信号は、位相がπ/2ずれており、周波数が略等しいものであればどのような信号であっても構わない。例えば、周波数が乗算周波数fimulとなる信号を供給する供給部と、供給部から出力される信号の位相をπ/2ずらす位相遅延部と、を備える構成としても構わない。この場合、供給部から出力される信号と、位相遅延部によって位相がπ/2だけずらされた信号と、が乗算器42aと乗算器42bとに入力される構成としても構わない。
【0040】
位相信号供給部42eは、サンプリング周波数fsとなるクロック毎に2×fi/fsの値となる信号を出力する定値発生部const1と、入力される信号を1クロック分遅延させて出力する遅延部delay1と、定値発生部const1から出力される信号に遅延部delay1から出力された信号を加算して出力する加算器add1と、加算器add1から出力された信号に位相値πを乗じて出力する増幅部gain1と、を備える。加算器add1から出力される信号は、増幅部gain1の他に遅延部delay1にも入力される。
【0041】
増幅部gain1から出力される信号が、位相信号供給部42eから出力される信号となる。また、加算器add1から出力される信号の値はクロックの経過毎に増大する。この信号は、最小値(例えば−1)から最大値(例えば1)までの値をとる。この場合、加算器add1から出力される信号の値は、最小値(−1)から次第に増大する。そして、最大値(1)を超えようとする際にオーバーフローして、最小値(−1)に戻る。そのため、加算器add1から出力される信号は三角波状となる。
【0042】
DDC42において、中間周波数fiと乗算周波数fimulとが何らかの原因でずれる場合、LPF42c,42dから出力される信号に、ずれに起因した成分(例えば直流成分)が重畳する。そのため、中間周波数fiと乗算周波数fimulとを精度良く一致させて、ずれに起因した成分を抑制することとすると好ましい。
【0043】
また、図4にPLL45の構成例を示す。図4では、各種処理部44から出力されるI信号をcos(δ)、Q信号をsin(δ)として示している。PLL45は、各種処理部44から入力されるI信号cos(δ)に第1リファレンス信号sin(α)を乗算して出力する乗算器45aと、各種処理部44から入力されるQ信号sin(δ)に第2リファレンス信号cos(α)を乗算して出力する乗算器45bと、乗算器45bから出力される信号sin(δ)×cos(α)から乗算器45a出力される信号cos(δ)×sin(α)を減算して出力する減算器45cと、減算器45cから出力される信号sin(δ)×cos(α)−cos(δ)×sin(α)(=sin(δ−α))に含まれる高周波成分を除去することで復調信号sin(δ−α)を出力するループフィルタ45dと、ループフィルタ45dから出力される信号sin(δ−α)に基づいて乗算器45a及び乗算器45bに入力する第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)を生成して出力するNCO45eと、を備える。
【0044】
ループフィルタ45dは、減算器45cから入力される信号sin(δ−α)に定数g1を乗じて出力する増幅部gain2と、入力される信号を1クロック分遅延させて出力する遅延部delay2と、遅延部delay2から出力される信号に定数g2を乗じて出力する増幅部gain3と、増幅部gain2から出力される信号に増幅部gain3から出力される信号を加算して遅延部delay2に出力する加算器add2と、を備える。増幅部gain2,gain3において乗算される定数g1,g2は、予め設定された値でありg1+g2=1を満たす。また、定数g1,g2は、それぞれ1より小さい正の値となる。なお、遅延部delay2から出力される信号が、ループフィルタ45dから出力される信号となり、この信号がPLL45から出力される復調信号となる。
【0045】
NCO45eは、ループフィルタ45dから出力される復調信号の値に定数g3を乗じて出力する増幅部gain4と、入力される信号を1クロック分遅延させて出力する遅延部delay3と、増幅部gain4から出力される信号の値に遅延部delay3から出力される信号の値を加算して出力する加算器add3と、加算器add3から出力される信号に基づいて、一周期分(2π)のインデックスアドレスを生成して出力するインデックス生成部index1と、インデックス生成部index1から出力されるインデックスアドレスに応じて第1リファレンス信号sin(α)を生成して出力するROM(sin)R1と、インデックス生成部index1から出力されるインデックスアドレスに応じて第2リファレンス信号cos(α)を生成して出力するROM(cos)R2と、を備える。加算器add3から出力される信号は、インデックス生成部index1の他に遅延部delay3にも入力される。
【0046】
増幅部gain4において乗算される定数g3は、予め設定された値である。例えば、0.75などの1より小さい正の値となる。ROM(sin)R1は、インデックス生成部index1から出力されるインデックスアドレスに応じた位相差成分を示す正弦波の信号を、第1リファレンス信号として出力する。ROM(cos)R2は、インデックス生成部index1から出力されるインデックスアドレスに応じた位相差成分を示す余弦波の信号を、第2リファレンス信号として出力する。なお、ROM(sin)R1やROM(cos)R2には、正弦波関数の数値や余弦波関数の数値が予め記録されているものとする。
【0047】
NCO45eは、起動開始時などの信号が入力されない場合、自走周波数と呼ばれる周波数の信号が出力される。そのため、初めはPLL45に入力される信号に対して、NCO45eから出力される信号が同期していない。しかしながら、次第にNCO45eから出力される信号の周波数が、PLL45に入力される信号の周波数に近づき、同期がとられる。
【0048】
また、NCO45eは、ループフィルタ45dから出力される復調信号の値が“+”である場合、出力される第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)の周波数が高いものとなる。一方、ループフィルタ45dから出力される復調信号の値が“−”である場合、出力される第1リファレンス信号sin(α)及び第2ファレンス信号cos(α)の周波数が低いものとなる。さらに、ループフィルタ45dから出力される信号が“0(ゼロ)”で継続している場合、即ちPLL45において同期状態(ロック状態)が継続している場合、前回出力した周波数となる第1リファレンス信号及び第2リファレンス信号を繰り返し出力する。
【0049】
なお、ROM(sin)R1及びROM(cos)R2を、説明の便宜上別のROMとして示したが、同一のROMとしても構わない。また、この場合、同一のROMから正弦波及び余弦波の信号が出力される構成としても構わないし、一方の信号のみを出力するとともに、位相をずらすことで他方の信号を生成する構成としても構わない。
【0050】
また、変調成分を示すδや、NCO45eの出力信号の位相を示すαは、時間(t)に応じて変動する関数である。よって、詳細にはδ(t)、α(t)と示しても構わない。
【0051】
<動作>
次に、復調部4の動作について図面を参照して説明する。図5は、本発明の実施形態における復調部の第1実施例の動作を示すフローチャートである。また、以下の復調部4の動作の説明において、図1〜図4を適宜参照することとする。
【0052】
図5に示すように、復調部4は、まずチューナ部3から入力される信号を取得する(STEP1)。次に、取得した信号をADC41に入力し、アナログ信号からデジタル信号へと変換する(STEP2)。また、STEP2で生成したデジタル信号を、DDC42に入力する。
【0053】
DDC42は、入力される信号をベースバンド周波数の信号に変換する(STEP3)。このとき、まず乗算器42a,42bが、ADC41から入力される信号に対して第1乗算信号cos(fimul)と第2乗算信号sin(fimul)とのそれぞれを乗算する。そして、LPF42c,42dが、乗算後のそれぞれの信号から高周波成分を除去することで、I信号及びQ信号を生成する。
【0054】
STEP3で生成されるI信号及びQ信号に対して、AGC43や各種処理部44などが、各種処理を施す(STEP4)。具体的に例えば、AGC43が、I信号及びQ信号のそれぞれのゲイン(強度)を所定の大きさに調整する処理を行う。また、各種処理部44が、I信号及びQ信号のそれぞれに含まれるノイズを低減する処理を行う。
【0055】
STEP4で各種処理されたI信号及びQ信号は、PLL45に入力される。そして、乗算器45aがI信号に第1リファレンス信号sin(α)を乗算することで、第1位相差信号を生成する。同様に、乗算器45bがQ信号に第2リファレンス信号cos(α)を乗算することで、第2位相差信号を生成する(STEP5)。そして、減算器45cが、生成された第2位相差信号から第1位相差信号を減算することによって、合成位相差信号を生成する(STEP6)。
【0056】
そして、STEP6で生成された合成位相差信号に含まれる高周波成分をループフィルタ45dが除去して、復調信号を生成する(STEP7)。生成された復調信号は復調部4の出力信号となり、例えば後段の出力部5に出力される。
【0057】
また、復調部4の動作を終了するか否かの確認を行う(STEP8)。復調部4の動作を終了しない場合(STEP8、NO)、NCO45eがループフィルタ45dから出力される復調信号に基づいて第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)を生成する(STEP9)。そして、STEP1に戻り、次に入力される信号を取得する。なお、復調部4が次の信号を処理する際に、STEP9において生成した第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)を利用する。具体的には、STEP5において第1位相差信号及び第2位相差信号を生成する際に用いる。
【0058】
一方、復調部4の動作を終了する場合は(STEP8、YES)、終了する。
【0059】
<作用・効果>
復調部4によれば、PLL45にベースバンド周波数(例えば、20kHz)のI信号及びQ信号が入力される。また、I信号に第1リファレンス信号を乗算することで第1位相差信号が生成され、Q信号に第2リファレンス信号を乗算することで第2位相差信号を生成する。そして、第2位相差信号から第1位相差信号を減算することによって合成位相差信号が生成され、ループフィルタ45dを介して復調信号が生成される。
【0060】
このように、PLL45では、ベースバンド周波数の信号であるI信号及びQ信号を直接的に(キャリア周波数fで変調せずに)利用して、PLL方式の復調を行うことが可能となる。そのため、従来技術であればループフィルタ45dやNCO45eなどにおいて1.4〜8MHz程度の処理速度が必要であったところを、大きく低減(例えば、350〜700kHz程度に低減)することが可能となる。したがって、消費電力を低減することが可能となる。さらに、高速の処理機能を実現させるための回路を実装する必要がなくなるため、簡素な回路で足りるようになる。そのため、回路の実装コストを抑制することが可能となる。
【0061】
また、PLL45は、ベースバンド周波数に変換されたI信号及びQ信号に対してPLL方式による復調処理を行う。そのため、従来技術よりも処理速度を低減していながら、従来技術と同様の方法で復調処理を行うことが可能となる。したがって、従来技術に係るPLL106(図14参照)と同等の品質を確保することが可能となる。
【0062】
また、PLL45は、上述のように動作周波数を抑制したものとなるため、リコンフィギュラブル回路(リコンフィギュラブルプロセッサ)上でソフトウェアによって構成することも可能である。
【0063】
リコンフィギュラブル回路は、例えば、特開2005−275698号公報に開示されるように、ハードウェアを動的に再構成することが可能であり、近年、様々な分野で開発が進められている。このようなリコンフィギュラブル回路によれば、回路の変更を瞬時に行うことが可能となる。そのため、このリコンフィギュラブル回路による信号処理装置を、あるときは上述のようなFM受信装置(特に復調部4)として、あるときはAM(Amplitude Modulation)信号を受信するAM受信装置として、あるいは1セグメントの放送信号を受信するいわゆるワンセグ受信装置や、その他の受信装置として、瞬時に切り替えて使用することができる。したがって、これらの全体の機能を実現するそれぞれの専用回路を設けることが不要となるため、回路規模を小さいものとすることが可能となる。なお、本実施形態に係るPLL45を、周波数シンセサイザ、モータの制御回路などの他の装置において適用することとしても構わない。
【0064】
<<復調部:第2実施例>>
<構成>
次に、上述した復調部の第2実施例の構成について図面を参照して説明する。図6は、本発明の実施形態に係る復調部の第2実施例の構成の概略を示すブロック図である。なお、以下に説明する復調部の第2実施例とは、上述した復調部4の一部を変形したものである。そのため、図6に示す第2実施例の復調部4aについて、上述した第1実施例の復調部4と同様となる部分については、同じ符号を付してその詳細な説明については省略する。
【0065】
図6に示すように、復調部4aは、ADC41と、DDC421と、AGC43と、各種処理部44と、PLL451と、を備える。また、PLL451から出力されるAFC(Automatic Frequency Control)用信号に基づいてAFC信号を生成してDDC421に入力するAFC46を備える。なお、AFC46の詳細については後述する。
【0066】
図7に、PLL451の構成例を示す。図7においても図4と同様に、各種処理部44から出力されるI信号をcos(δ)、Q信号をsin(δ)として示している。PLL451は、乗算器45aと、乗算器45bと、減算器45cと、ループフィルタ45dと、NCO45eと、を備える。本例のPLL451は、ループフィルタから出力される復調信号に基づいてAFC用信号を生成して出力するAFC用信号生成部45fを、さらに備える。
【0067】
AFC用信号生成部45fは、ループフィルタ45dから出力される復調信号の値に定数g4を乗じて出力する増幅部gain5と、サンプリング周波数fsとなるクロック毎に2×fi/fsの値となる信号を出力する定値発生部const2と、入力される信号を1クロック分遅延させて出力する遅延部delay4と、増幅部gain4から出力される信号の値と遅延部delay4から出力される信号の値と定値発生部const2から出力される値とを加算して遅延部delay4に出力する加算器add4と、を備える。遅延部delay4から出力される信号は、加算器add4に出力されるだけでなく、AFC用信号としてAFC46にも出力される。
【0068】
増幅部gain5において乗算される定数g4は、予め設定された値である。例えば、1より小さい正の値としても構わない。また、遅延部delay4から出力される信号の値はクロックの経過毎に増大する。この信号は、最小値(例えば−1)から最大値(例えば1)までの値をとる。この場合、遅延部delay4から出力される信号の値は、最小値(−1)から次第に増大する。そして、最大値(1)を超えようとする際にオーバーフローして、最小値(−1)に戻る。そのため、遅延部delay4から出力される信号は三角波状となる。
【0069】
ここで、ループフィルタ45dから出力される信号の値が“+”である場合、加算器add4にクロック毎に入力される信号の値の和が大きいものとなる。そのため、オーバーフローするまでの時間が短くなり、AFC用信号の周波数が高くなる。一方、ループフィルタ45dから出力される信号の値が“−”である場合、加算器add4にクロック毎に入力される信号の値の和が小さいものとなる。そのため、オーバーフローするまでの時間が長くなり、AFC用信号の周波数が低くなる。
【0070】
PLL451から出力される復調信号とAFC用信号との具体例を、図8及び図9に示す。図8は、中間周波数が規定の値(10.7MHz)となる場合の一例であり、図9は、中間周波数が規定の値(10.7MHz)からずれている(10.8MHzとなる)場合の一例を示している。なお、図8(a)及び図9(a)のそれぞれが復調信号を示すグラフであり、図8(b)及び図9(b)のそれぞれがAFC用信号を示すグラフである。また、図8(a),(b)及び図9(a),(b)に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はそれぞれの信号の値である。なお、図8(a)と図9(a)とは同じ時間t1の間に発生する復調信号を示したものであり、図8(b)と図9(b)とは同じ時間t2の間に発生するAFC用信号を示したものである。
【0071】
図8及び図9に示すように、PLL451から出力される復調信号(ループフィルタ45dから出力される信号)の値が大きい図9の場合のAFC用信号の方が、図8の場合のAFC用信号の周波数よりも高いものとなる。
【0072】
上述のように、DDC421において中間周波数fiと乗算周波数fimulとがずれていれば、復調信号にずれに起因した成分が重畳する(図9参照)。AFC用信号生成部45fは、このずれに起因した成分に応じた周波数となるAFC用信号を生成し、当該信号をAFC46に出力する。AFC46は、AFC用信号の周波数を計数する(例えば、上記のように最小値−1、最大値1となる信号であれば、ゼロクロスする回数を計数する)ことによって、復調信号の状態を確認する。即ち、中間周波数fiと乗算周波数fimulとのずれの大きさを確認する。そして、このずれを補正するために、AFC46はずれの大きさに応じた値となるAFC信号を生成し、DDC421に出力する。
【0073】
また、図10にDDC421の構成例を示す。図10においても図3と同様に、ADC41から出力されるデジタルの信号を、cos(fi+δ)として示している。DDC421は、乗算器42aと、乗算器42bと、LPF42cと、LPF42dと、を備える。本例のDDC421は、図3に示した位相信号供給部42e、cos出力部42f及びsin出力部42gの代わりに、NCO42hを備える。なお、本例のDDC421では、NCO42hを、図4に示したPLL45に備えられるNCO45eと同様の構成としている。
【0074】
NCO42hは、AFC46から出力されるAFC信号の値に定数g5を乗じて出力する増幅部gain6と、入力される信号を1クロック分遅延させて出力する遅延部delay5と、増幅部gain6から出力される信号の値に遅延部delay5から出力される信号の値を加算して出力する加算器add5と、加算器add5から出力される信号に基づいて、一周期分(2π)のインデックスアドレスを生成して出力するインデックス生成部index2と、インデックス生成部index2から出力されるインデックスアドレスに応じて第1乗算信号cos(fimul)を生成して出力するROM(cos)R3と、インデックス生成部index2から出力されるインデックスアドレスに応じて第2乗算信号sin(fimul)を生成して出力するROM(sin)R4と、を備える。なお、加算器add5から出力される信号は、インデックス生成部index2の他に遅延部delay5にも入力される。
【0075】
増幅部gain6において乗算される定数g5は、予め設定された値である。例えば、1より小さい正の値としても構わない。また、ROM(cos)R3は、インデックス生成部index2から出力されるインデックスアドレスに応じた乗算周波数fimulの余弦波の信号である第1乗算信号cos(fimul)を出力する。ROM(sin)R4は、インデックス生成部index2から出力されるインデックスアドレスに応じた乗算周波数fimulの正弦波の信号となる第2乗算信号sin(fimul)を出力する。なお、ROM(cos)R3やROM(sin)R4には、正弦波関数の数値や余弦波関数の数値が予め記録されているものとする。
【0076】
本例のDDC421では、AFC46から、中間周波数fiと乗算周波数fimulとのずれを補正するAFC信号が入力される。NCO42hは、入力されるAFC信号に応じた乗算周波数fimulとなる第1乗算信号及び第2乗算信号を出力する。なお、NCO42hから乗算器42a,42bに出力される第1乗算信号及び第2乗算信号は、位相がπ/2ずれており乗算周波数fimulが中間周波数fiと略等しいものであれば、どのような信号であっても構わない。例えば、入力されるAFC信号に基づいて乗算周波数fimulが調整された乗算信号を供給する供給部と、位相をπ/2ずらす位相遅延部と、を備える構成としても構わない。この場合、供給部から出力される信号と、位相遅延部によって当該信号の位相をπ/2だけずらした信号と、が乗算器42aと乗算器42bとに入力されることとしても構わない。
【0077】
<動作>
次に、復調部4aの動作について図面を参照して説明する。図11は、本発明の実施形態における復調部の第2実施例の動作を示すフローチャートである。なお、図11は、第1実施例の復調部4の動作について示した図5に相当するものであり、図5と同様となる動作(STEP)については、同じ番号を付し、その詳細な説明については省略する。また、以下の復調部4aの動作の説明において、図6〜図10を適宜参照することとする。
【0078】
図11に示すように、復調部4aは、まず入力される信号を取得し(STEP1)、アナログ信号からデジタル信号へと変換する(STEP2)。そして、生成されたデジタル信号をDDC421に入力する。
【0079】
DDC421は、入力される信号をベースバンド周波数の信号に変換する(STEP3a)。このとき、まず乗算器42a,42bが、ADC41から入力される信号に第1乗算信号cos(fimul)と第2乗算信号sin(fimul)とのそれぞれを乗算する。第1乗算信号cos(fimul)及び第2乗算信号sin(fimul)の乗算周波数fimulは、上述のようにAFC46やNCO42hによって制御されたものとなる。そして、LPF42c,42dが、乗算後のそれぞれの信号から高周波成分を除去することで、I信号及びQ信号を生成する。
【0080】
STEP3で生成されるI信号及びQ信号に対して、AGC43や各種処理部44などが、各種処理を施す(STEP4)。そして、STEP4で各種処理されたI信号及びQ信号は、PLL451に入力される。PLL451では、乗算器45aがI信号に第1リファレンス信号sin(α)を乗算することで第1位相差信号を生成し、乗算器45bがQ信号に第2リファレンス信号cos(α)を乗算することで第2位相差信号を生成する(STEP5)。そして、減算器45cが、生成された第2位相差信号から第1位相差信号を減算することによって、合成位相差信号を生成する(STEP6)。また、STEP6で生成された合成位相差信号の高周波成分をループフィルタ45dが除去して、復調信号を生成する(STEP7)。
【0081】
また、復調部4aの動作を終了するか否かの確認を行う(STEP8)。復調部4aの動作を終了しない場合(STEP8、NO)、NCO45eがループフィルタ45dから出力される復調信号に基づいて第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)を生成する(STEP9)。
【0082】
さらに、AFC用信号生成部45fが、入力される復調信号に基づいてAFC用信号を生成する。そして、AFC46がAFC用信号に基づいてAFC信号を生成し、NCO42hが乗算周波数fimulを設定する(STEP10)。STEP10で設定される乗算周波数fimulとなる第1乗算信号cos(fimul)及び第2乗算信号sin(fimul)は、STEP3aにおいて乗算器42a,42bがADC41から入力される信号に乗算する信号として用いられる。
【0083】
そして、STEP1に戻り、次に入力される信号を取得する。なお、復調部4aが次に入力される信号を処理する際に、STEP9において生成した第1リファレンス信号sin(α)及び第2リファレンス信号cos(α)を利用する。具体的には、STEP5において第1位相差信号及び第2位相差信号を生成する際に用いる。
【0084】
一方、復調部4aの動作を終了する場合は(STEP8、YES)、終了する。
【0085】
<作用・効果>
復調部4aによれば、PLL451からAFC用信号が出力される。また、AFC46がAFC用信号に基づいてAFC信号を生成する。そして、DDC421のNCO42hが、入力されるAFC信号に基づいて乗算周波数fimulを設定する。特に、中間周波数fiと略等しくなるように、乗算周波数fimulを調整して設定する。
【0086】
このように、中間周波数fiと略等しい乗算周波数fimulを設定することによって、ベースバンド周波数の信号であるI信号及びQ信号に、中間周波数fiと乗算周波数fimulとのずれに起因した成分が重畳することを抑制することが可能となる。
【0087】
<<変形例>>
なお、上述した実施形態の作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0088】
例えば、上記のループフィルタ45dに代えて、ローパスフィルタを用いて本願発明の「フィルタ」を実現し、これにより減算器45cから出力された信号の高周波成分を除去しても構わない。
【0089】
あるいは、減算器45cから出力される信号に高周波成分が無い場合、あるいは復調信号として高周波成分が問題のない大きさである場合、ループフィルタ45d、及びローパスフィルタ等のフィルタを省略して、減算器45cから出力された信号を、PLL45,451の出力信号、あるいは、NCO45eへの入力信号としても構わない。
【0090】
また、上記のNCO45eに変えて、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いて本願発明の「発振器」を実現しても構わない。あるいは、上記実施形態のPLL45,451は、リコンフィギュラブル回路に代えて、DSPによって実現されることとしても構わない。
【0091】
また、上記実施形態では、本願発明の「位相比較器」の例として乗算器45a,45bを挙げたが、乗算器以外の回路を用いて位相比較器を実現しても構わない。
【0092】
また、本願発明の実施形態において、復調部4,4aの動作を、マイコンなどの制御装置が行うこととしても構わない。さらに、このような制御装置によって実現される機能の全部または一部をプログラムとして記述し、該プログラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機能の全部または一部を実現するようにしても構わない。
【0093】
また、上述した場合に限らず、図2や図6の復調部4,4a、図3や図10のDDC42,421、図4や図7のPLL45,451は、ハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現可能である。また、ソフトウェアを用いて復調部4,4aやDDC42,421、PLL45,451を構成する場合、ソフトウェアによって実現される部位についてのブロック図は、その部位の機能ブロック図を表すこととする。
【0094】
以上、本発明における実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、周波数変調された変調信号を復調する信号処理装置及び信号処理方法に関する。特に、PLL方式によって復調を行う信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】は、受信装置の構成例の概略を示すブロック図である。
【図2】は、本発明の実施形態に係る復調部の第1実施例の構成の概略を示すブロック図である。
【図3】は、DDCの構成例を示すブロック図である。
【図4】は、PLLの構成例を示すブロック図である。
【図5】は、本発明の実施形態に係る復調部の第1実施例の動作を示すフローチャートである。
【図6】は、本発明の実施形態に係る復調部の第2実施例の構成の概略を示すブロック図である。
【図7】は、PLLの構成例を示すブロック図である。
【図8】は、復調信号とAFC用信号との一例を示すグラフである。
【図9】は、復調信号とAFC用信号との一例を示すグラフである。
【図10】は、DDCの構成例を示すブロック図である。
【図11】は、本発明の実施形態に係る復調部の第2実施例の動作を示すフローチャートである。
【図12】は、従来の復調装置の構成を示すブロック図である。
【図13】は、従来の復調装置に備えられるDUCの構成を示すブロック図である。
【図14】は、従来の復調装置に備えられるPLLの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0097】
1 受信装置
2 アンテナ
3 チューナ部
4 復調部
41 ADC
42,421 DDC
42a,42b 乗算器
42c,42d LPF
42e 位相信号供給部
42f cos出力部
42g sin出力部
43 AGC
44 各種処理部
45,451 PLL
45a,45b 乗算器
45c 減算器
45d ループフィルタ
45e NCO
45f AFC用信号生成部
46 AFC
5 出力部
add1〜add5 加算器
const1,const2 定値発生部
delay1〜delay5 遅延部
gain1〜gain6 増幅部
index1,index2 インデックス生成部
R1〜R4 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調された信号を復調する信号処理装置であって、
互いにほぼ直交して周波数がともに乗算周波数となる第1及び第2の乗算信号を生成し、かつ、入力される信号に対して前記第1及び第2の乗算信号を乗算し、さらに高周波成分を除去することで、ベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号と、を生成する周波数変換部と、
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、復調信号を生成する復調信号生成部と、
前記復調信号に基づいて、前記第1乗算信号及び前記第2乗算信号の前記乗算周波数を設定するための設定信号を生成し、当該設定信号を前記周波数変換部に入力する周波数制御部と、を備え、
前記復調信号生成部が、
互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する発振器と、
前記第1信号と前記第1リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を生成する第1位相比較器と、
前記第2信号と前記第2リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を生成する第2位相比較器と、
前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を生成する合成部と、を備え、
前記合成部で生成される信号を前記復調信号として出力するとともに、前記発振器への入力として用いることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記周波数制御部が、前記周波数変換部に入力される信号の周波数とほぼ等しい前記乗算周波数を設定する前記設定信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記復調信号生成部の前記合成部が、前記合成位相差信号の高周波成分を除去するフィルタをさらに備え、
前記フィルタにより高周波成分が除去された信号を前記復調信号として前記復調信号生成部から出力し、
前記復調信号が、前記発振器への入力として用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記周波数制御部が、
前記復調信号の値に応じて周波数が決定される三角波状の信号である設定用信号を生成する設定用信号生成部と、
前記設定用信号の周波数に基づいて前記設定信号を生成する設定信号生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項5】
周波数変調された信号を復調する信号処理方法であって、
互いにほぼ直交して周波数がともに乗算周波数となる第1及び第2の乗算信号を生成する第1ステップと、
入力される信号に対して前記第1及び第2の乗算信号を乗算し、さらに高周波成分を除去することで、ベースバンド周波数に変換された変調信号の同相成分を示す第1信号と、当該変調信号の直交成分を示す第2信号と、を生成する第2ステップと、
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、復調信号を生成する第3ステップと、
前記復調信号に基づいて、前記第1乗算信号及び前記第2乗算信号の前記乗算周波数を設定するための設定信号を生成する第4ステップと、を備え、
前記第3ステップが、
互いにほぼ直交する第1及び第2のリファレンス信号を生成する第5ステップと、
前記第1信号と前記第1リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第1位相差信号を生成する第6ステップと、
前記第2信号と前記第2リファレンス信号との位相比較を行って、比較結果に応じた位相差を示す第2位相差信号を生成する第7ステップと、
前記第2位相差信号から前記第1位相差信号を減算し、合成位相差信号を生成する第8ステップと、を備え、
前記第8ステップで生成される信号を前記復調信号とするとともに、当該復調信号が、前記第5ステップで前記第1リファレンス信号および前記第2リファレンス信号を生成する際に用いられ、
前記第4ステップで生成される前記設定信号が、前記第1ステップで前記第1及び第2乗算信号の前記乗算周波数を設定する際に用いられることを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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