説明

信号処理装置

【課題】粗悪なHDMIケーブルの物理的欠陥に基づくデジタル信号通信のエラーレートを低減する。
【解決手段】受信されたTMDS信号の電圧振幅がHDMIケーブルによって減衰された場合は、送信時にTMDS信号の電圧振幅を予め増大するように、また、受信されたTMDS信号にHDMIケーブルによってスキューが生じている場合は、送信時にTMDS信号に補正用スキューを予めつけるように、受信装置が送信装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDMI規格またはUDI規格に準拠したデジタル信号伝送の信号処理装置に関し、特に、エラーレートを低減するデジタル信号処理装置に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
周知のように、デジタル家電の分野ではデジタル形式の信号を伝送するためのデジタルインターフェース規格としてHDMI(HIGH−Definition Multimedia Interface)規格を採用した民生機器が急速に普及してきており、例えば送信装置ではハードディスクレコーダなど、受信装置ではデジタルテレビなどの電子装置が代表的である。また、HDMI規格をPC(Personal Computer)向けに最適化したUDI(Unified Display Interface)規格も策定され、広く一般に公開されている。
【0003】
非特許文献1に記述されているように、HDMI規格では3対のデータ用差動信号と1対のクロック用差動信号からなるTMDS(Transition Minimized Differential Signal)信号でデジタル映像信号を伝送し、そのクロック伝送速度は最大340MHz、伝送帯域は最大10.2Gbpsまで規定されている。またこのデジタル映像信号のブランキング期間中にはデータ・アイランド・ピリオドと呼ばれる期間が定められ、この期間にデジタル音声信号等を多重化して伝送を行うことが可能である。このデータ・アイランド・ピリオドのデータに受信装置において、伝送誤りを訂正するために用いる誤り訂正符号を送信装置にて付加することが可能である。
【0004】
また、HDMI規格では一方の電子装置から他方の電子装置をリモートで操作できるプロトコルであるCEC(Consumer Electronic Control)についても規格化され、HDMIの機能の一つとして搭載することが可能になっている。更に、一方の電子装置から他方の電子装置にデジタル信号を伝送する場合、送信装置が受信装置からEDID(Extended Display IDentification)データを取得することにより、受信装置が有するディスプレイの受信仕様に合わせた形態で信号を出力する事ができるようになっている。
上述のようにHDMI規格では送信装置と受信装置とを接続するHDMIケーブル上で非常に高い周波数で大容量のデータが伝送される。この周波数はこれまでの民生機器における他のデジタルインターフェース規格における周波数と比べて約10倍も高いものである。それゆえ、これまでと比べて、信号品質の劣化を防止するためにケーブルに対する要求が非常に厳しくなっている。そのため、HDMIケーブルは金属部分に金メッキを用いたり、ケーブル内にイコライザを搭載したりする必要が生じてきており、これまでの民生機器における他のデジタルインターフェース規格で使用されるケーブルと比べて高品位のものが必要となり、非常に高価なものになってきている。しかしながら、近年では、公式な認証テストを受けていない粗悪なHDMIケーブルも市場に出回っており、粗悪なHDMIケーブルを用いて伝送された映像・音声信号はエラーを起こす可能性が高い。
【0005】
粗悪なHDMIケーブルで伝送された映像・音声信号がエラーを起こす要因としては以下のような場合が挙げられる。一つはHDMIケーブルのコストダウンのため金属部や銅線に安価な素材を用いて製造されたために、伝導する信号の電圧振幅がHDMI規格で定められた値よりも減衰してしまい、受信装置で信号を受信する際に振幅が不足し、データを取りこぼしてしまう場合がある。またはケーブル製作時のコストダウンの結果、ケーブル内に複数本あるそれぞれの信号線の長さが不揃いになっており、その信号線を通った信号にスキューがついてしまい、HDMIの3対の信号線と1本のクロック線のそれぞれの同期関係がHDMI規格で定められる以上にずれてしまい、受信装置が正常なタイミングでデータを受け取れない場合等がある。
【0006】
このような粗悪なケーブルを購入し、それを用いて電子装置を接続したユーザは、粗悪なHDMIケーブルのもたらす上記のような要因が元で、例えばデジタルテレビなどの受信装置において正常な映像や音声を得ることができないという不利益を被る問題が起こっている。この不利益を被ったユーザはこの問題を、デジタルテレビなどの装置の不具合によるものであると誤認識してしまう可能性がある。つまり、粗悪なHDMIケーブルは装置の製造業者にとっても不利益をもたらしてしまう。それゆえ民生機器において、送信装置の出力する信号品質の改善がこれまで以上に問われるようになっている。
【0007】
上記に関連して、特許文献1(特開2003−259241)は、映像処理装置及びテレビジョン受像機に係る発明を開示している。
特許文献1では上記問題を解決するために以下のような構成が記載されている。図1に示されるように、受信装置200で受信したデジタル映像信号は音声分離回路202を介して切換制御回路208に供給される。そのデータのエラーレートを検出し、切換制御回路208は、検出エラーレートが所定の閾値よりも大きい場合は低い解像度のフォーマット情報を保持する第2のEDID回路212を選択するようスイッチ213を制御し、選択されたフォーマット情報を、インターフェース403を介して送信装置100に送信する。送信装置100は、そのフォーマット情報に従い、それまでの映像信号よりも走査線数及び/または水平解像度が少ないデジタル映像信号を発生する。これによりケーブルを通るデータの伝送レートを下げることができ、その結果としてエラーレートの低減を図っている。さらにOSD表示にてノイズの原因が装置自身の問題ではなく、ケーブルの品質の問題であることを知らせる機能を有している。
【0008】
【特許文献1】特開2003−259241
【非特許文献1】High−Definition Multimedia Interface Specification Version 1.3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の発明ではエラーレートの低減のために送信装置は映像の解像度を下げてデジタル映像信号を伝送してしまうため、ユーザは受信装置において本来所望されるべき解像度で映像を見ることができないという欠点があり、ユーザが粗悪なHDMIケーブルを使用した場合、画質劣化を免れることができないという問題がある。
本発明の目的は、粗悪なHDMI用ケーブルを介してHDMIを搭載した電子装置同士が接続されたときに、ケーブルでの信号品質の劣化が原因で受信装置にてデータのエラーレートが大きくなり、正常な映像・音声をユーザが得られない場合、映像の解像度を下げることなくエラーレートを低減し、ユーザに対して所望の高品位な映像を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の信号処理装置は、デジタル信号を送信する送信装置(1)と、送信装置に接続されてデジタル信号を受信する受信装置(2)とを具備する。ここで、送信装置(1)は、デジタル信号を送信するデジタル信号送信部(17)と、デジタル信号を調節する信号調節部(18、81)とを具備する。受信装置(2)は、前記デジタル信号を受信するデジタル信号受信部(21)と、デジタル信号のエラーレートを検出するエラーレート検出部(26)と、エラーレートに基づくエラーレート情報を前記送信装置(1)に向けて送信する受信側制御部(27)とを具備する。送信装置(1)は、受信側制御部(27)からエラーレート情報を受信して、エラーレート情報に基づいて信号調節部(18、81)を制御する送信側制御部(19)を更に具備する。
【0012】
本発明の送信装置(1)は、外部の受信装置(2)に接続されて、外部の受信装置(2)に向けてデジタル信号を送信するデジタル信号送信部(17)と、デジタル信号を調節する信号調節部(18、81)と、受信側制御部(27)からエラーレート情報を受信して、エラーレート情報に基づいて信号調節部(18、81)を制御する送信側制御部(19)とを具備する。
【0013】
本発明の受信装置(2)は、外部の送信装置(1)に接続されて、外部の送信装置(1)から送信されたデジタル信号を受信するデジタル信号受信部(21)と、デジタル信号のエラーレートを検出するエラーレート検出部(26)と、前記エラーレートに基づくエラーレート情報を送信装置(1)に向けて送信する受信側制御部(27)とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の信号処理装置は、エラーレートを低減するために映像信号の解像度を落とさずに、所望の高品質な映像を保つことができる。
本発明の信号処理装置は、受信装置におけるエラーレートを低減させることができる。
本発明の信号処理装置は、エラーの原因が電圧減衰であってもスキューであっても、エラーレートを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
粗悪なHDMIケーブルで伝送された映像・音声信号がエラーを起こし、正常に映像・音声を再生できない要因としては、HDMIケーブルを通る信号の電圧振幅が減衰してしまい、受信装置で信号を受信する際に十分な電圧で振幅していないため、信号を取りこぼしてしまう場合と、TMDS信号線の距離がばらばらになっており信号にスキューがついてしまい、受信装置で正常なタイミングで信号を取れないという場合がある。
第1の実施形態では上記の電圧の振幅の減衰による信号のエラーを低減させることができ、第2の実施形態では上記のスキューによる信号のエラーを低減させることができる。
【0016】
つまり第1、第2の実施形態はそれぞれ受信装置における信号のエラーを映像信号の解像度を落とすことなく減少させるという同一の課題を解決するための2つの異なる手段を提供している。もちろん、一つの送信装置に両方の実施形態を共に組み合わせて実施しても良い。
【0017】
添付図面を参照して、本発明による信号処理装置を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は本実施形態における装置の構成図である。
図3は本実施形態における各装置内のブロック図である。以下、本実施形態の構成について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本実施形態では送信装置1となるHDD(Hard Disc Drive)レコーダがHDMIケーブル3で受信装置2のデジタルテレビと接続されている。送信装置1、受信装置2はそれぞれDVDプレーヤやオーディオアンプなど他の装置であっても良い。
【0020】
送信装置1は、HDD部11と、MPEGデコード部12と、送信側映像信号処理部13と、送信側音声信号処理部14と、誤り訂正符号化部15と、映像・音声多重化部16と、TMDS送信部17と、電圧振幅調節部18と、送信側制御部19とを具備している。
受信装置2は、TMDS受信部21と、映像・音声分離化部22と、受信側映像信号処理部23と、誤り訂正部24と、受信側音声信号処理部25と、エラーレート検出部26と、受信側制御部27と、ディスプレイ28と、スピーカー29とを具備している。
HDMIケーブル3は、TMDS信号線群32と、CEC信号線33とを具備している。
【0021】
HDD部11は、MPEGデコード部12に接続されている。MPEGデコード部12は、送信側映像信号処理部13および送信側音声信号処理部14に接続されている。送信側音声信号処理部14は、誤り訂正符号化部15に接続されている。送信側映像信号処理部13および誤り訂正符号化部15は、映像・音声多重化部16に接続されている。映像・音声多重化部16は、TMDS送信部17に接続されている。TMDS送信部17は、電圧調節部18に接続されている。電圧調節部18は、TMDS信号線群32を介してTMDS受信部21に接続されている。TMDS受信部21は、映像・音声分離部22に接続されている。映像・音声分離部22は、受信側映像信号処理部23および誤り訂正部24に接続されている。受信側映像信号処理部23は、ディスプレイ28に接続されている。誤り訂正部24は、受信側音声信号処理部25およびエラーレート検出部26に接続されている。受信側音声信号処理部25は、スピーカー29に接続されている。エラーレート検出部26は、受信側制御部27に接続されている。受信側制御部27は、CEC信号線33を介して送信側制御部19に接続されている。送信側制御部19は、電圧調節部18に接続されている。
【0022】
送信装置1のHDDレコーダにおいて、HDD部11で保存されているMPEG2−TS(Moving Picture Experts Group Phase 2−Transport Stream)信号をMPEGデコード部12でデジタル映像信号とデジタル音声信号に変換し、送信側映像信号処理部13と送信側音声信号処理部14それぞれ入力される。送信側映像信号処理部13では映像信号の解像度を変更したり、送信側音声信号処理部14では音声信号にヘッダをつけたりしてHDMI規格に準拠した信号形式に処理される。送信側音声処理部14で処理された音声信号は誤り訂正符号化部15で符号化されて、映像信号と共に映像・音声多重化部16に入力され、映像信号のブランキング期間中に音声信号が多重化される。この信号はTMDS送信部17でTMDS信号に変換され、電圧調節部18を通り、HDMIケーブル3内のTMDS信号線群32へ出力される。電圧調節部18は送信側制御部19から制御を受け動作する。
【0023】
受信装置2のデジタルテレビはTMDS信号線群32からTMDS信号を受信し、TMDS受信部21でTMDS信号を復号し映像・音声分離部22で映像信号と音声信号に分離する。この際音声信号にエラーが起きていても、軽微なエラーであればエラー箇所を検出し、訂正することができる。誤り訂正部24で検出されたエラーはエラーレート検出部26で音声信号におけるエラー信号の割合を算出することができる。算出されたエラーレートは受信側制御部27に送られる。受信側制御部27はHDMIケーブル3内のCEC信号線33で送信装置1内の制御部19に接続されている。CEC信号線ではお互いの装置をコントロールするための信号がやり取りされており、そのコマンドには例えば接続装置の電源を入れたり、接続装置に再生をさせたりするようなものがある。映像・音声分離化部22、誤り訂正部24から出力された映像信号と音声信号はそれぞれ受信側映像信号処理部23と受信側音声信号処理部25でディスプレイ28やスピーカー29での出力形式に対応するように信号フォーマット変換やアナログ変換などを施され、その映像がディスプレイ28で表示され、音声がスピーカー29で出力される。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。図5は、本発明の第1実施形態における動作を説明するためのHDMIケーブルの送信装置側端での信号波形の模式図である。以下、本実施形態の動作について図面2〜5を参照しつつ説明する。
【0025】
図4中の点線61より左側の領域62には送信装置1におけるステップが、点線61より右側の領域63には受信装置2におけるステップが、それぞれ記載されている。送信装置1側のステップS42にてTMDS送信部17から出力されたTMDS信号は電圧振幅調節部18で先ず、消費電力の節約のために最小電圧にて出力される。この信号を受信装置2側のステップS52にて受信する。ステップS53で、誤り訂正部24とエラーレート検出部26を用いエラーレートを検出する。ステップS54では受信側制御部27にてステップS53で得られたエラーレートがある決まった閾値以上かどうかを判断する。もし閾値以下ならばもう一度ステップS53に戻りエラーレート検出を繰り返す。もし、閾値以上ならば、ステップS55にて受信側制御部27は、ある決まった所定回以上エラーレート情報を送信したか判定する。このステップS55は必要以上にエラーレート情報を送信するような、無駄な動作を防止するために設けられている。もし所定回以上エラーレート情報を送信していたら、ステップS57にてOSD表示等でユーザにHDMIケーブルが原因で映像や音声が正常に再生できない事を知らせ、HDMIケーブルの交換を促す。もし所定回以上エラーレート情報を送信していないならば、ステップS56にて送信装置1の送信側制御部19に向けて受信側制御部27からCEC信号線33を通って、CECで規定されたVSC(Vendor Specific Commands)を用い、エラーレート情報を送信する。送信装置1の送信側制御部19はこのコマンドの意味を理解できるようにプログラムされていなければならない。
【0026】
ステップS43ではこの送信側制御部19でエラーレート情報を受信することで電圧振幅が不足していると判断し、ステップS44にてもし現在の電圧振幅が最大でないと判断されたならば、送信側制御部19は電圧振幅調節部18に一段階電圧を増加させて出力するように命令を送る。ステップS45ではこの命令を受けた電圧振幅調節部18は一段階電圧を増加させて出力する。この際のHDMIケーブルの送信装置1側端における信号波形の一部が図5に示されている。図5は、ある特定の一対の信号対の出力電圧と時間との関係をグラフ化したものである。他の信号対に関しても同様の電圧と時間の関係で信号が出力される。この差動信号のバイアス電圧をV0とする。この図ではある時刻71の指し示すタイミングで電圧振幅を増加させている。ある時刻71以前の振幅電圧は74と76とで示す±Vで、ある時刻71以降の振幅電圧は73と77とで示される±V’である。それぞれの電圧の絶対値の差72が増加した分の電圧振幅である。すなわちもしHDMIケーブル3内のTMDS信号線群32で減衰する電圧が72に示すV’−V分の電圧より小さいならば、受信装置2におけるエラーレートを低減させ、ある特定の閾値より下回る可能性が高い。但し、これはエラーが電圧振幅の減衰によって起こっていると仮定した場合である。エラーレートがある所定の閾値を下回るとステップS56でのエラーレート情報の送信を行なわなくなるので、送信装置ではこれ以上ステップS45で電圧振幅を増加させることは無く、電圧振幅調節部18は現状の電圧振幅で送信し続ける。一方もしHDMIケーブル3内のTMDS信号線群32で減衰する電圧が72に示されるV’−V分の電圧よりまだ十分大きいならば、エラーレートは閾値よりも依然として大きいままの可能性がある。この場合ステップS56で再びエラーレート情報の送信が行なわれるので、送信装置ではステップS43から45までの手順はエラーレートがある所定の閾値を下回る、もしくはステップS44で電圧振幅が最大であると判断されるまで繰り返される。ステップS44で電圧振幅が最大であると判断されると電圧振幅調節部18はステップS46にて最大電圧振幅で送信し続ける。
【0027】
送信装置と受信装置とが粗悪なHDMIケーブルで接続されている際にHDMIケーブル中で伝送される映像・音声信号の電圧振幅がケーブルの品質が低いために減衰してしまい、信号のエラーが引き起こされ、受信装置が正常にデータを受け取ることができず、受信された映像や音声を正常に再生することができない場合、公知技術は送信装置の送信する映像信号の解像度を落とすことで信号のエラーを減らしている。
【0028】
本実施形態は、上記の状況において送信装置のHDMIから出力するTMDS信号の電圧振幅を増加し、HDMIケーブルでの電圧振幅の減衰による信号のエラーを減らすことで、解像度を落とすことなく映像や音声の乱れを減らすことができる。
【0029】
上記効果を得るために本実施形態は受信装置において、HDMIで伝送された信号のエラーレートを演算する手段と、エラーレートがある所定の閾値を超えると送信装置にエラーレート情報を通知するようなCECコマンドを所定回数だけ送る手段とを備えている。
【0030】
また送信装置は、受信装置からエラーレートがある所定の閾値を超えたときにエラーレート情報を通知するCECコマンドを受け取る手段と、そのエラーレート情報を元に受信装置に向けて送信しているTMDS信号の電圧振幅を値調節する手段とを備えている。
【0031】
受信装置はエラーレートがある所定の閾値を超えると、エラーレート情報を通知するようなCECコマンドを送信装置に送信する。送信装置は受け取ったエラーレート情報を元に、送信装置内の振幅調節手段でTMDS信号の電圧振幅を大きくする。
【0032】
この際、送信装置は通常より高い電圧振幅でHDMIケーブル内のTMDS信号線群にTMDS信号を出力するため、TMDS信号は粗悪なHDMIケーブルの悪影響によって引き起こされる電圧振幅の減衰を予め補完した電圧振幅で伝送される。それゆえ、本実施形態は受信装置が受信する信号のエラーレートを低減することができ、映像の解像度を落とすことなく映像や音声の乱れを改善することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図7は本発明の第2の実施形態のブロック図を示す。装置の構成は図2に記載した場合と同一である。図2、図3と同一の部分は同じ番号を附してその説明は省略する。ここでは第1の実施形態の電圧振幅調節部18に代わり、信号遅延部81を設けることで受信装置2が受信するTMDS信号のエラーレートを低減することを特徴としている。
【0034】
図6は、HDMIケーブル3内を通る各信号線を表した図である。図6に示されるように、TMDS信号線群32は32a〜32hまでの8本のTMDS信号線と4本のTMDSシールド線を具備する。さらに32a〜32hまでの8本のTMDS信号線は32aと32b、32cと32d、32eと32f、32gと32hという4対の差動の信号線対により構成されている。本実施形態では図7の信号遅延部81は例えば上記の4対のペア毎の信号伝送にかかる時間にある一定の遅延時間を与えることができる手段である。つまり本実施例の信号遅延部81は4対のペア間の信号にそれぞれスキューをつけることができ、ペアを構成するそれぞれ2本の信号線同士は同一の遅延時間を持って伝送する。本実施形態では示されないが、信号遅延部81は他にも4対のペアになっているそれぞれ2本の信号線に対してそれぞれ遅延時間をつけるような手段であっても良い。つまり信号遅延部81はペア内の信号にそれぞれスキューをつけるような手段であっても良い。更に信号遅延部81が与える遅延時間は段階的に設定可能であっても良い。
【0035】
図8は本発明の第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。図9は本発明の第2の実施形態における動作を説明するためのHDMIケーブルの送信装置側端での信号波形の模式図である。以下、本実施例の動作について図面6〜9を参照しつつ説明する。図2〜5と同一の部分は同じ番号を附してその説明は省略する。
【0036】
図8中の点線64より左側の領域65には送信装置1におけるステップが、64より右側の領域66には受信装置2におけるステップがそれぞれ記載されている。領域66の受信装置2における各ステップについては第1の実施形態と同一の動作のため、その説明は省略する。送信装置1は先ずステップS91にて信号遅延部81での遅延なしでTMDS信号を送信する。受信装置のステップS56にて受信側制御部27からエラーレート情報がCEC信号線33を通じて送信された場合は、送信装置はステップS43にて送信側制御部19でエラーレート情報を受信し、TMDS信号線群にスキューが生じていると判断する。次にステップS95にてもし現在、信号遅延部81にて4対の信号対にそれぞれある一定の遅延時間を与える組み合わせの全16通りが試されていないと判定されたならば、ステップS92にて制御部19は信号遅延部81に全16通りのうちのまだ試されていないある1通りの場合の遅延時間を与えて送信するように命令を送る。なお、ここで全16通りの組み合わせとは、4対の信号対のそれぞれについてスキューをつけるか否かを意味するが、全ての信号対にスキューをつけることはどの信号対にもスキューをつけないことと同等であるので、厳密には全15通りとも言える。この命令を受けた信号遅延部81はこの命令で指定された信号対に関してある一定の遅延時間を与え送信する。図9は例えばこの送信側制御部19から信号遅延部81への命令がチャンネル2の信号対32aと32bに対してのみ遅延時間を与える組み合わせを指定しているときの信号遅延部81の出力するHDMIケーブルの送信装置側端における信号波形の時間と電圧の関係を示している。この図では例えば時刻34の示すタイミングでチャンネル2の信号対32aと32bの信号のみ遅延時間が付けられたとする。時刻35でのチャンネル2以外の信号対32c〜32hの信号と時間36でのチャンネル2での信号対32aと32bの信号が対応している。つまりTMDS信号線群32内のチャンネル2の信号線対32aと32bのみが他のTMDS信号線対と比べて距離が長く、チャンネル2の信号が他の信号対の信号に対してスキューがついていたとすると、その距離と伝送速度との関係(与える遅延時間=信号対のケーブル長の距離の差/伝送速度)が一致すれば、スキューが解消され、受信装置2で受信するTMDS信号のエラーレートを低減させることができる。但し、これは信号のエラーがHDMIケーブル3内のTMDS信号線対の長さの違いによるスキューのみに起因していると仮定した場合である。
【0037】
ステップS92にて全16通りのうち現在まで試していない組み合わせで遅延をつけるとステップS93に進む。もしステップS93で受信装置2からエラーレート情報が送られてこないならば、信号線対間の信号のスキューは解消されたと見なして、ステップS96にて信号遅延部81はエラーレート情報が受信されなくなった遅延の組み合わせで送信を続ける。一方ステップS92でもしエラーレート情報が受信されたならば、スキューのついている信号対の組み合わせが違うと判断し、ステップS94にて制御部19で現在の遅延の組み合わせにおけるエラーレート情報を記録し、ステップS95に進む。このステップS95からステップS94を繰り返し、もしステップS95にて全16通りの組み合わせで遅延をつけたと判定されたら、ステップS97にて制御部19はこれまでステップS94で記録された全16通りの遅延におけるエラーレートの値が最小になった組み合わせを探し、そのエラーレートの値が最小になる信号線対の遅延の組み合わせで送信するように信号遅延部81に命令する。
【0038】
送信装置と受信装置を粗悪なHDMIケーブルで接続した際にHDMIケーブル中のTMDS信号線対同士の長さの違いにより、信号にスキューがついてしまい受信装置で正しく受信することができず信号のエラーを引き起こし受信した映像や音声を正常に再生できない場合、公知技術では送信装置の送信する映像信号の解像度を落とすことで信号のエラーを減らしている。
【0039】
本実施形態によれば上記の状況において、4対のTMDS信号線対に対しある一定の遅延時間をあらゆる組み合わせで付加し、受信装置のエラーレートがある所定の閾値を超えなくなる信号線対の遅延の組み合わせ、もしくはエラーレートの値が最も小さくなる信号線対の遅延の組み合わせを探索し、これを満たす信号線対の組み合わせで送信することでTMDS信号線対同士の長さの違いにより生じる信号のスキューを低減することができ、解像度を落とすことなく、映像や音声の乱れを減らすことができる。
【0040】
上記効果を得るために本実施形態は受信装置において、HDMIで伝送された信号のエラーレートを演算する手段と、エラーレートがある所定の閾値を超えると、送信装置にエラーレート情報を通知するようなCECコマンドを所定回数だけ送る手段とを備えている。
【0041】
また送信装置において受信装置からエラーレートがある所定の閾値を超えたときにエラーレート情報を通知するCECコマンドを受けつける手段と、そのエラーレート情報を元に受信装置に向けて送信しているTMDS信号対に遅延をつける手段とを備えている。
【0042】
受信装置はエラーレートがある所定の閾値を超えると、エラーレート情報を送信装置に通知するようなCECコマンドを送信する。送信装置は受け取ったエラーレート情報を元に、送信装置内の信号遅延手段で4対のTMDS信号線対にあらゆる組み合わせでそれぞれ遅延をつける。
【0043】
この際、送信装置は受信装置のエラーレートがある所定の閾値を超えなくなる信号線対の遅延の組み合わせ、もしくはエラーレートの値が最も小さくなる信号線対の遅延の組み合わせで遅延を付けて送信するため、TMDS信号は粗悪なHDMIケーブルの悪影響によって引き起こされるTMDS信号線対の長さの違いによる信号のスキューを予め補った時間遅延をつけて伝送される。それゆえ受信装置が受信する信号のエラーレートを低減することができ、映像の解像度を落とすことなく映像や音声の乱れを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は特許文献1に記載の従来技術のブロック図である。
【図2】図2は本発明の第1または第2の実施形態による装置の構成図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態による装置内のブロック図である。
【図4】図4は本発明の第1の実施形態による動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態による動作を説明するための、HDMIケーブルの送信装置側端での信号波形の模式図である。
【図6】図6はHDMIケーブル内の信号線の表である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態による装置内のブロック図である。
【図8】図8は本発明の第2の実施形態による動作を説明するフローチャートである。
【図9】図9は本発明の第2の実施形態による動作を説明するための、HDMIケーブルの送信装置側端での信号波形の模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 送信装置
2 受信装置
3 HDMIケーブル
11 HDD部
12 MPEGデコード部
13 送信側映像信号処理部
14 送信側音声信号処理部
15 誤り訂正符号化部
16 映像・音声多重化部
17 TMDS送信部
18 電圧調節部
19 送信側制御部
21 TMDS受信部
22 映像・音声分離部
23 受信側映像信号処理部
24 誤り訂正部
25 受信側音声信号処理部
26 エラーレート検出部
27 受信側制御部
28 ディスプレイ
29 スピーカー
32 TMDS信号線群
32a TMDS信号線
32b TMDS信号線
32c TMDS信号線
32d TMDS信号線
32e TMDS信号線
32f TMDS信号線
32g TMDS信号線
32h TMDS信号線
33 CEC信号線
34 遅延時間付与時刻
35 遅延時間開始時刻
36 遅延時間
81 信号遅延部
100 送信装置
101 映像信号源
102 音声信号源
103 音声重畳部
104 送信部
106 スキャンコンバータ
107 解像度制御部
200 受信装置
201 受信部
202 音声分離部
204 表示部
205 D/A付音声処理部
207 スピーカ
208 切換制御回路
209 OSD部
211 第1のEDID回路
212 第2のEDID回路
213 スイッチ
214 スイッチ
215 スキャンコンバータ
403 インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を送信する送信装置と、
前記送信装置に接続されて前記デジタル信号を受信する受信装置と
を具備し、
前記送信装置は、
前記デジタル信号を送信するデジタル信号送信部と、
前記デジタル信号を調節する信号調節部と
を具備し、
前記受信装置は、
前記デジタル信号を受信するデジタル信号受信部と、
前記デジタル信号のエラーレートを検出するエラーレート検出部と、
前記エラーレートに基づくエラーレート情報を前記送信装置に向けて送信する受信側制御部と
を具備し、
前記送信装置は、
前記受信側制御部から前記エラーレート情報を受信して、前記エラーレート情報に基づいて前記信号調節部を制御する送信側制御部
を更に具備する
信号処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の信号処理装置において、
前記信号調節部は、前記デジタル信号の電圧振幅を調節する
信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号処理装置において、
前記信号調節部は、前記デジタル信号の遅延を調節する
信号処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の信号処理装置において、
前記送信装置および前記受信装置は、HDMI(High Definition Multimedia Interface)規格にそれぞれ準拠する
信号処理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の信号処理装置において、
前記送信装置および前記受信装置は、UDI(Unified Display Interface)規格にそれぞれ準拠する
信号処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の信号処理装置において、
前記送信装置から前記受信装置に向けて送信されるデジタル信号は、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)信号である
信号処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の信号処理装置において、
前記エラーレート情報は、CEC(Consumer Electronics Control)コマンドとして前記受信装置から前記送信装置に向けて送信される
信号処理装置。
【請求項8】
外部の受信装置に接続されて、
前記受信装置に向けてデジタル信号を送信するデジタル信号送信部と、
前記デジタル信号を調節する信号調節部と、
前記受信側制御部から前記エラーレート情報を受信して、前記エラーレート情報に基づいて前記信号調節部を制御する送信側制御部と
を具備する
送信装置。
【請求項9】
請求項8記載の送信装置において、
前記信号調節部は、前記デジタル信号の電圧振幅を調節する
送信装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の送信装置において、
前記信号調節部は、前記デジタル信号の遅延を調節する
送信装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の送信装置は、
HDMI規格に準拠する
送信装置。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の送信装置は、
UDI規格に準拠する
送信装置。
【請求項13】
外部の送信装置に接続されて、
前記外部の送信装置から送信された前記デジタル信号を受信するデジタル信号受信部と、
前記デジタル信号のエラーレートを検出するエラーレート検出部と、
前記エラーレートに基づくエラーレート情報を前記送信装置に向けて送信する受信側制御部と
を具備する
受信装置。
【請求項14】
請求項13記載の受信装置において、
前記エラーレート情報は、前記送信装置が前記デジタル信号の電圧振幅を調節するための情報を具備する
受信装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の受信装置において、
前記エラーレート情報は、前記送信装置が前記デジタル信号の遅延を調節するための情報を具備する
受信装置。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれかに記載の受信装置は、
HDMI規格に準拠する
受信装置。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれかに記載の受信装置は、
UDI規格に準拠する
受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−199175(P2008−199175A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30453(P2007−30453)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】