説明

信号検出装置、信号検出方法、光受信器及び光受信方法

【課題】伝送速度が異なるデータを受信可能な光受信器を、伝送速度ごとに適した条件で動作させるための技術を提供する。
【解決手段】
信号検出装置は、受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号が入力され、電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出する信号電力検出手段と、光信号の伝送速度に基づいて閾値を設定する信号検出閾値設定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号検出装置、信号検出方法、光受信器及び光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代PON(Passive Optical Network)の一つである10G−EPON(10Gigabit Ethernet−PON)が、2009年9月にIEEE標準802.3avとして標準化された。IEEEは、米国電気電子学会(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc)の略称である。IEEE標準802.3avは、既に運用されているGE−PONと共存するために、ONUからOLTへの送信ビットレートとして1.25Gbps及び10.3125Gbpsの2種類のビットレートを定義している。ここで、GE−PONはGigabit Ethernet(登録商標)−PON、ONUはOptical Network Unit(加入者端末)、OLTはOptical Line Terminal(局舎側装置)である。なお、以下では特に区別する必要がない限り「1.25Gbps」及び「10.3125Gbps」をそれぞれ「1Gbps」及び「10Gbps」と記載する。
【0003】
図5は、本発明に関連する光受信器の構成を示す図である。光受信器100は、受光素子101、前置増幅器(transimpedance amplifier、TIA)102及びリミッティングアンプ(limitting amplifier、LIM−AMP)103を備える。
【0004】
受光素子101は、光−電気変換を行う受光素子であり、例えばフォトダイオードである。前置増幅器102は、受光素子から出力される電流を電圧に変換し、差動電圧信号(Data out+及びData out−)を出力する。リミッティングアンプ103は、前置増幅器102から出力される差動電圧信号をさらに増幅して、差動電圧信号(Data+及びData−)として出力する。ここで、リミッティングアンプ103から出力される差動電圧信号の振幅は、入力信号の振幅が所定の大きさ以上になると一定となる。すなわち、リミッティングアンプ103は、出力信号の振幅を制限(リミッティング)する。後段の信号処理回路は、リミッティングアンプ103の出力信号をそのまま処理する。
【0005】
リミッティングアンプ103は、入力された電圧の振幅が設定された閾値以下である場合に、受信断とみなしてLOS信号を出力するLOS(loss of signal、受信信号消失)検出回路104を備えている。LOS検出回路は、リミッティングアンプ103に入力される信号の振幅が所定の閾値以下になるとLOS信号を発出する。また、LOS信号の発出後、受信信号の振幅が増大して所定の閾値を超えると、LOS信号の発出は解除される。このように、LOS信号は、受信した光のレベルが、信号からデータを再生することが可能なレベルよりも低いことを示す。
【0006】
すなわち、図5に記載された光受信器100は、受信した光信号を受光素子101で光−電気変換する。そして、前置増幅器102は、光−電気変換された信号を増幅して差動出力信号として出力する。前置増幅器102から出力された差動出力信号は、リミッティングアンプ103に入力される。リミッティングアンプ103内にあるLOS検出回路104は、リミッティングアンプ103に入力された信号の振幅が所定の閾値以下であれば、LOS信号を出力する。
【0007】
ここで、光送信器と光受信器とが1対1で通信を行なう場合には、光信号は光送信器から連続して送信され、光受信器はその信号を連続して受信している。光信号が正常に受信されている状態から受信断となってLOS検出回路104がLOS信号を出すまでの時間は、MSA(Multi Source Agreement)で規格化されている。MSAとは機器を製造するメーカの間で互換性向上のために製品仕様を共通化する取り決めであり、LOSの発出及び解除に関しては、事象の発生から通常10〜100μsec以内程度でLOSを発出し、あるいは解除すれば良いとされている。
【0008】
本発明に関連して、特許文献1は、伝送速度が低い場合には高い変換利得が選択され、伝送速度が高い場合には低い変換利得が選択されるTIA回路を備えた光受信器の構成を記載している。また、特許文献2は、リミッティングアンプの前段に設けられた反転増幅器のゲインを可変とする光受信装置の構成を記載している。さらに、特許文献3は、設定情報に基づいて、受信信号の識別レベルを決定する光受信器の構成を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−300340号公報
【特許文献2】特開2009−219013号公報
【特許文献3】特開2009−303181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
10G−EPON用のOLTは、複数のONUからのバースト光信号を光カプラで合流させてTDM(time division multiplexing、時分割多重)で受信する。そして、IEEE標準802.3avに準拠したOLTには、ONUから受信する10Gbps及び1Gbpsのそれぞれのバースト信号毎にLOS信号を出力できることが求められる。ここで、本発明に関連する光受信器100をIEEE標準802.3avに準拠したOLTに適用するにあたっては、以下の課題がある。
【0011】
すなわち、LOS検出閾値がビットレートによらず固定であれば、LOS検出閾値は、一般的により高い受信光信号電力が要求される、高速な信号のための閾値で設定されてしまう。このため、本発明に関連する光受信器100では、より低速な信号に対するLOS検出レベルを下げることができない。
【0012】
上記の課題に関連して、特許文献1は、通信レートに基づいて、TIAにおいて利得を制御する構成を記載しているものの、LOS検出閾値を受信信号のビットレートごとに制御する構成に関しては何ら開示していない。
【0013】
また、特許文献2は、光受信装置のLOS検出方法について記載している。しかし、特許文献2に記載された構成は、信号の振幅をLOS検出閾値で検出可能な範囲に収まるように前段の増幅器の利得を調整することを必要としており、光受信器の制御が複雑になるという課題がある。さらに、特許文献3に記載された構成は、受信信号の論理レベルを識別するレベルを決定する構成に関するものであり、光受信器における受信信号の消失を検出するLOS検出機能に関しては何ら言及していない。
【0014】
[発明の目的]
本発明は、伝送速度が異なるデータを受信可能な光受信器を、伝送速度ごとに適した条件で動作させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の信号検出装置は、受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号が入力され、電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出する信号電力検出手段と、光信号の伝送速度に基づいて閾値を設定する信号検出閾値設定手段と、を備える。
【0016】
本発明の光受信器は、受信された光信号の振幅を示す電気信号を増幅する前置増幅器と、前置増幅器から出力される電気信号の振幅の平均値が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出する信号電力検出手段と、光信号の伝送速度に基づいて閾値を設定する信号検出閾値設定手段と、光信号の伝送速度に基づいて前置増幅器の利得及び帯域幅を制御する利得及び帯域幅制御回路と、を備える。
【0017】
本発明の信号検出方法は、受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号が入力され、電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出し、光信号の伝送速度に基づいて閾値を設定する。
【0018】
本発明の光受信方法は、受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号を増幅し、増幅された電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出し、光信号の伝送速度に基づいて閾値を設定し、光信号の伝送速度に基づいて増幅の際の利得及び帯域幅を制御する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、光受信器を、伝送速度ごとに適した条件で動作させることができるいう効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の光受信器の構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態の光受信器における受信BER特性の例。
【図3】光受信器において、速度が異なるバースト受信信号のバースト毎の振幅及びLOS検出閾値設定値の変化を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態の光受信器を示す図。
【図5】本発明に関連する光受信器の構成を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態の信号検出回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の光受信器の構成を示す図である。光受信器200は、受光素子201、前置増幅器(TIA)202、リミッティングアンプ(LIM−AMP)203、利得及び帯域制御回路204、LOS閾値設定回路205を備える。受光素子201は、光−電気変換を行うフォトダイオードである。光受信器200がIEEE標準802.3avに準拠したOLTで使用される場合、光受信器200がONUから受信する光信号はONU毎に速度や振幅が異なるバースト光信号となる。前置増幅器202は、受光素子201が出力する受光電流を電圧に変換し、差動電圧信号(Data out+及びData out−)として出力する。リミッティングアンプ203は、前置増幅器が出力する信号を更に増幅するとともに、振幅の上限を制限して、電圧信号(Data+及びData−)として出力する。リミッティングアンプ203は、LOS検出回路206を備えている。LOS検出回路206は、リミッティングアンプ203に入力される差動電圧信号の振幅が設定されたLOS検出閾値以下である場合には、受信信号が断であると判断してLOS信号を出力する。
【0022】
また、利得及び帯域制御回路204は、Rate−SEL信号に基づいて前置増幅器202の利得と帯域を制御する。Rate−SEL信号は、光受信器200が受信する信号の伝送速度の情報を含む、光受信器200の外部から入力される信号である。さらに、LOS閾値設定回路205は、Rate−SEL信号に基づいてLOS検出回路206に設定されるLOS検出閾値を設定する。
【0023】
ここで、Rate−SEL信号について説明する。上に述べたように、Rate−SEL信号は、光受信器200が受信する信号の伝送速度の情報を含む。すなわち、光受信器200がIEEE標準802.3avに準拠したOLTで使用される場合、ONUからバースト光信号を受信しようとする際に、利得及び帯域制御回路204及びLOS閾値設定回路205に対して、受信しようとするバースト光信号の伝送速度の情報を通知する。このため、Rate−SEL信号は、OLTがONUを登録する際に決められたONUの送信タイミング情報を参照してもよい。
【0024】
PONシステムにおいてOLTがONUを登録するプロセスは、ディスカバリ手順として知られている。ディスカバリ手順においては、登録しようとするONUが送信するバースト光信号と既登録のONUが送信するバースト光信号とがOLTにおける受信時に衝突しないように、ONUがバースト光信号を送信するタイミングが設定される。そして、OLTは、ONU毎に設定されたタイミングで、それぞれのONUに対してバースト光信号を送信するように指示する。
【0025】
従って、OLTがディスカバリ手順を実行することによって、ONU毎に、ONUの情報とONUが送信するバースト光信号のOLTにおける受信タイミングの情報とがOLTに保存される。このため、OLTは、ディスカバリ手順で得られたバースト光信号の受信タイミングの情報及び対応するONUの伝送速度の情報に基づいて、Rate−SEL信号を生成することができる。生成されたRate−SEL信号は、バースト光信号の受信タイミングと同期して、そのバースト光信号の伝送速度を利得及び帯域制御回路204、及び、LOS閾値設定回路205に対して通知する。具体的には、Rate−SEL信号は、受信しようとするバースト光信号の直前のバースト光信号の受信が終了した後、受信しようとするバースト光信号の受信開始までの間に、バースト光信号の伝送速度の情報を必要に応じて変更する。そして、利得及び帯域制御回路204及びLOS閾値設定回路205は、バースト光信号の伝送速度の情報が変更された場合は、変更された速度に応じてそれぞれ前置増幅器202及びLOS検出回路206への制御内容を変更する。
【0026】
図1〜3を用いて、光受信器200の動作を説明する。受光素子201は、受信した光信号を電流に変換する。前置増幅器202は、光信号から変換された電流を、利得及び帯域制御回路204の制御により増幅し、差動電圧信号(Data out+及びData out−)として出力する。利得及び帯域制御回路204は、Rate−SEL信号に基づいて、前置増幅器202の利得及び帯域を制御する。
【0027】
利得及び帯域制御回路204は、Rate−SEL信号が示す受信信号の伝送速度が例えば10Gbpsである場合には、前置増幅器202の利得を下げて帯域を広げ、10Gbpsの信号に対して好適な受信感度が得られるようにする。
【0028】
また、利得及び帯域制御回路204は、Rate−SEL信号が示す受信信号の伝送速度が例えば1Gbpsである場合には、前置増幅器202の利得を上げて帯域を狭め、1Gbpsの信号に対して好適な受信感度が得られるようにする。
【0029】
前置増幅器202の出力信号は、差動電圧信号としてリミッティングアンプ203に入力される。LOS検出回路206は、リミッティングアンプ203に入力された差動電圧のpeak−to−peakの振幅がLOS閾値設定回路205で設定したLOS検出閾値以下であれば、受信信号消失を示すLOS信号を出力する。
【0030】
ここで、リミッティングアンプ203は、ある程度長い時間にわたる振幅のpeak−to−peak値の平均値をLOS検出回路206に入力する。これにより、差動電圧信号に含まれる雑音や信号データのビットパターンの偏りによる、差動電圧信号の振幅の一時的な変動を抑制することができる。その結果、雑音やパターン効果によってLOS信号が不必要に発出と停止とを繰り返すことを防止できる。
【0031】
図2は、第1の実施形態の光受信器における受信BER(bit error rate)特性の例である。図2に示すように、1Gbpsおよび10Gbpsの受信BER特性は異なっている。このため、LOS信号の発出条件を揃えるためにいずれの伝送速度でもほぼ同一のBERでLOS信号を発出しようとすると、1Gbps時と10Gbps時とで異なるLOS検出閾値を設定する必要がある。次に説明する図3では、LOS検出閾値は、1Gbps時には−36dBm、10Gbps時には−32dBmとしている。そして、LOS閾値設定回路205は、Rate−SEL信号が示すそれぞれの伝送速度において設定したいLOS検出閾値をLOS検出回路206に設定する。
【0032】
図3は、光受信器200において、1Gbps及び10Gbpsのバースト信号(a)〜(d)のバースト毎の振幅及びLOS検出閾値設定値の時間的な変化を示す図である。
【0033】
図3において、縦軸は信号(1)〜(6)のそれぞれの振幅あるいは設定される閾値、横軸は時間を示す。受信するバースト光信号の振幅変化(1)に従って、前置増幅器201から出力される差動電圧信号の振幅も同様に変化する(2)。LOS検出回路206は、リミッティングアンプ203に入力される差動電圧信号の振幅に基づいて、LOS信号を発出するかどうかを判定する。ここで、LOS閾値設定回路205は、外部から受信しているRate−SEL信号(3)に基づいてLOS検出回路206のLOS検出閾値を設定する。Rate−SEL信号は、受信中のバースト光信号の速度を示す情報を含んでいる。LOS検出回路206は、LOS閾値設定回路205の設定に従って、高速信号(10Gbps)受信時と低速信号(1Gbps)受信時とでLOS検出閾値を変更する(4)。
【0034】
図3に示した場合では、光受信器200が1Gbpsのバースト光信号(a)を受信している場合には、Rate−SEL信号は、受信中の信号の速度が1Gbpsであることを“L”レベルの信号としてLOS閾値設定回路205に通知する。そして、LOS閾値設定回路205は、Rate−SEL信号が“L”レベルであることから、バースト光信号(a)を受信中はLOS検出回路206のLOS検出閾値を−36dBmに相当する振幅に設定する。バースト光信号(a)の受信レベルは−33dBmであるので、受信レベルはLOS検出レベル(−36dBm)よりも高く、バースト光信号(a)の受信時にはLOS信号は発出されない。
【0035】
光受信器200が10Gbpsのバースト光信号(b)又は(c)を受信している場合には、Rate−SEL信号は“H”レベルとなる。そして、LOS閾値設定回路205は、Rate−SEL信号が“H”レベルであることから、LOS検出回路206のLOS検出閾値を−32dBmに相当する振幅に設定する。
【0036】
ここで、バースト光信号(b)の受信レベルは−30dBmであるので、受信レベルはLOS検出レベル(−32dBm)よりも高く、バースト光信号(b)の受信時にはLOS信号は発出されない。しかしながら、バースト光信号(c)の受信レベルは−33dBmであるので、受信レベルはLOS検出レベル(−32dBm)よりも低く、バースト光信号(c)の受信時にはLOS信号が発出される。
【0037】
光受信器200が1Gbpsのバースト光信号(d)を受信している場合には、Rate−SEL信号は、受信中の信号の速度が1Gbpsであることを“L”レベルの信号としてLOS閾値設定回路205に通知する。そして、LOS閾値設定回路205は、Rate−SEL信号が“L”レベルであることから、バースト光信号(d)を受信中はLOS検出回路206のLOS検出閾値を−36dBmに相当する振幅に設定する。ここで、バースト光信号(d)の受信レベルは直前のバースト光信号(c)よりも低下して−35dBmとなっている。しかしながら、LOS検出閾値はそれよりも低い−36dBmに変更されているので、受信レベルはLOS検出レベルよりも高い。従って、バースト光信号(d)の受信時にはLOS信号は発出されない。
【0038】
このように、LOS閾値設定回路205は、受信するバースト光信号毎に、その速度に応じてLOS検出閾値をLOSを検出する受信レベルに相当する振幅として設定する。そして、LOS検出回路206は、前置増幅器202の出力である差動電圧信号(Data OUT+及びData OUT−)の振幅と、LOS検出閾値として設定された振幅とを比較する。LOS検出回路206は、前置増幅器202の出力振幅がLOS検出閾値以下であれば、光受信器200で光信号が受信されていない(LOS)と判断して、LOS信号を出力する。
【0039】
LOS検出回路206は、前置増幅器202から出力される差動電圧信号のpeak−to−peakの振幅を検出し、その結果とLOS検出閾値とを比較してLOS検出を行う。差動電圧信号のpeak−to−peakの振幅は、例えば差動電圧信号を全波整流して得られた直流分の振幅から求めることができる。さらに、求めた直流分の振幅の変化をローパスフィルタ等により除去することにより、雑音等によりLOS信号が発出と停止を繰り返してしまう可能性を低減することができる。
【0040】
このようにして、LOS検出回路206は、受信するバースト信号毎にLOS検出閾値を受信速度に基づいて変更する。そして、LOS検出回路206は、バースト信号毎に、差動電圧信号のpeak−to−peakの振幅が設定されたLOS検出閾値を下回ったと判断した場合にLOS信号を出力する。
【0041】
すなわち、第1の実施形態の光受信器は、異なる受信速度において異なるLOS検出閾値を設定することができるので、光受信器を、伝送速度ごとに適した条件で動作させることができるという効果を奏する。
【0042】
そして、第1の実施形態で説明した構成でLOS検出回路を構成すれば、複数の速度に対応した光受信器において、前置増幅器の利得と帯域を調整し、さらにLOS検出閾値を個々のバーストで設定することにより、広い受光レベルでLOS検出閾値を設定することが可能となる。
【0043】
なお、第1の実施形態において、LOS検出回路206はリミッティングアンプ302の内部にあるとして説明した。しかし、LOS検出回路206は、前置増幅器202とリミッティングアンプ203との間に配置してもよい。この場合も、LOS検出回路206は、LOS閾値設定回路205によってLOS検出閾値が設定される。
【0044】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の光受信器の第2の実施形態を示す図である。図4に示す光受信器300においては、図2と同一の構成要素には同一の名称と参照符号を付し、同一の構成要素の説明は省略する。
【0045】
第2の実施形態の光受信器300は、受光素子201、前置増幅器(TIA)202、リミッティングアンプ(LIM−AMP)203、利得及び帯域制御回路204、LOS閾値設定回路205を備える。リミッティングアンプ203は、その入力の振幅が設定された閾値以下である場合に受信断と判断してLOS信号を出力するLOS検出回路206を備えている。
【0046】
前置増幅器202から出力される差動電圧信号の振幅は、前置増幅器202の入力換算雑音及び利得の温度特性により、受光レベルが一定であっても前置増幅器202から出力されてくる信号の振幅が変動する場合がある。さらに、電源電圧の変動によっても同様に前置増幅器202の出力振幅が変動する場合がある。
【0047】
温度や電源電圧の変動による性能の低下を防止するために、第2の実施形態の光受信器300には、第1の実施形態で説明した光受信器200と比較して、温度と電源電圧の変動をモニタし、モニタ値に合わせてLOS検出閾値を変化させる回路が追加されている。具体的には、第2の実施形態の光受信器300は、第1の実施形態で説明した光受信器200と比較して、さらに、EEPROM301、温度モニタ302、電源モニタ303及びコントローラ304を備えている。ここで、EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read Only Memory(電気的に消去可能かつ書き換え可能な読み出し専用メモリ)である。
【0048】
EEPROM301は、温度及び電源電圧に対するLOS検出閾値の設定電圧のデータをテーブルとして保存している。温度モニタ302及び電源モニタ303はそれぞれ温度及び電源電圧をモニタしてコントローラ304に出力する。
【0049】
コントローラ304は、温度モニタ302及び電源モニタ303から温度及び電源電圧のデータを収集する。コントローラ304は、EEPROM301に記憶されているテーブルから、収集した温度及び電源電圧に対応するLOS検出閾値の設定データを読み取る。そして、コントローラ304は、読み取ったLOS検出閾値によってLOS検出回路206がLOS検出を行うようにLOS閾値設定回路205を制御する。
【0050】
このように、第2の実施形態の光受信器300は、温度及び電源電圧を監視する機能を備えたことにより、温度や電源電圧の変動によるLOS検出閾値の変動を抑制できる。その結果、第2の実施形態の光受信器300は、第1の実施形態の効果に加えて、さらに、外部環境が変化しても安定してLOS検出が実行できるという効果を奏する。
【0051】
なお、第2の実施形態においても、LOS検出回路206はリミッティングアンプ203の内部にあるとして説明した。しかし、第1の実施形態と同様に、LOS検出回路206は、前置増幅器202とリミッティングアンプ203との間に配置してもよい。
【0052】
また、第1及び第2の実施形態において、前置増幅器201からの出力は差動出力(Data out+、Data out−)であるとして説明したが、前置増幅器201からの出力は差動出力でなくともよい。リミッティングアンプ203から出力される信号に関しても同様に、差動出力でなくともよい。
【0053】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態の信号検出装置の構成を示す図である。信号検出装置400は、信号電力検出回路401と、信号検出閾値設定回路402とを備える。信号電力検出回路401は、受信した光信号に基づいて生成された電気信号403の振幅の平均値を検出し、その振幅と所定の信号検出閾値とに基づいて、電気信号403の振幅の平均値が信号検出検出閾値を下回ったことを示す検出信号404を発出するかどうかを判定する。信号検出閾値設定回路402は、信号電力検出回路40に信号検出閾値を設定する。
【0054】
このような構成を備える信号検出装置400において、信号検出閾値設定回路402は、光信号の伝送速度に基づいて信号電力検出回路401に信号検出閾値を設定する。そして、信号電力検出回路401は、電気信号403の振幅が設定された信号検出閾値を下回ると検出信号404を発出する。
【0055】
このように、信号検出装置400は、電気信号403の振幅が設定された信号検出閾値を下回っているかどうかを示す検出信号404を出力する閾値を、データの伝送速度ごとに設定できる。そして、光受信器は、この検出信号を用いることで、伝送速度ごとに異なる受信条件の下で動作することが可能となる。
【0056】
すなわち、第3の実施形態の信号検出装置は、光受信器を、伝送速度ごとに適した条件で動作させることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0057】
100、200、300 光受信器
101、201 受光素子
102、202 前置増幅器
103、203 リミッティングアンプ
204 利得及び帯域制御回路
205 LOS閾値設定回路
206 LOS検出回路
301 EEPROM
302 温度モニタ
303 電源モニタ
304 コントローラ
400 信号検出装置
401 信号電力検出回路
402 信号検出閾値設定回路
403 電気信号
404 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号が入力され、前記電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出する信号電力検出手段と、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記閾値を設定する信号検出閾値設定手段と、
を備える信号検出装置。
【請求項2】
自装置の温度及び電源電圧に基づいて前記信号検出閾値設定手段が設定する閾値を変化させる制御部を備えた、請求項1に記載された信号検出装置。
【請求項3】
受信された光信号の振幅を示す電気信号を増幅する前置増幅器と、
前記前置増幅器から出力される電気信号の振幅の平均値が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出する信号電力検出手段と、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記閾値を設定する信号検出閾値設定手段と、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記前置増幅器の利得及び帯域幅を制御する利得及び帯域幅制御回路と、
を備える光受信器。
【請求項4】
前記利得及び帯域幅制御回路は、前記伝送速度が低いほど前記前置増幅器の利得を高めて帯域を広くするように前記前置増幅器を制御する、請求項3に記載された光受信器。
【請求項5】
自光受信器の温度及び電源電圧に基づいて前記信号検出閾値設定手段が設定する閾値を変化させる制御部を備えた、請求項3又は4に記載された光受信器。
【請求項6】
受信された光信号の振幅の平均値を示す電気信号が入力され、
前記電気信号の振幅が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出し、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記閾値を設定する、
信号検出方法。
【請求項7】
受信された光信号の振幅を示す電気信号を増幅し、
前記増幅された電気信号の振幅の平均値が所定の閾値を下回ると所定の信号を発出し、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記閾値を設定し、
前記光信号の伝送速度に基づいて前記増幅の際の利得及び帯域幅を制御する、
光受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175356(P2012−175356A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34785(P2011−34785)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】