説明

信号検出装置及び信号検出方法

【課題】電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる信号検出装置及び信号検出方法を提供すること。
【解決手段】信号検出装置100にて、乗算器102が、受信信号が分配された第1分配信号と第1乗算信号とを乗算し、積分器104が、乗算器102にて得られた乗算結果を積分期間にて積分することにより第1相関値を算出する。乗算器103が、受信信号が分配された第2分配信号と第2乗算信号とを乗算し、積分器105が、乗算器103にて得られた乗算結果を積分期間にて積分することにより第2相関値を算出する。遅延部101が、第1分配信号又は第2分配信号を時間T1遅延させることにより第1乗算信号を形成し、時間T2(T2>T1)遅延させることにより第2乗算信号を形成する。判定部108が、第1相関値及び第2相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号検出装置及び信号検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、60GHz帯を使用するミリ波無線通信において、複数の無線通信規格が策定もしくは検討されている。免許を受ける必要が無い主要な無線LAN/無線PAN規格としては、例えば、WiGig、IEEE802.15.3C、Wireless HD、ECMA-387がある。また、IEEE802.11ad規格の策定も進められている。
【0003】
さらに、各規格内においても、目的とするアプリケーションに応じた複数の無線方式(例えば、シングルキャリア方式、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式)が併存している。
【0004】
複数の無線通信規格のそれぞれに対応するシステムが併存し、各システム内においても複数の無線方式が併存する。ミリ波無線通信が普及した場合には、異なる複数の無線方式が近接した状況において使用されることが多くなると考えられる。各システムが周波数チャネルを使い分けることにより、複数のシステムが同一空間において同時に通信できる。
【0005】
しかしながら、60GHz帯において利用可能な周波数チャネルは、3チャネル乃至4チャネルに限定されている。ミリ波無線通信が普及した場合には、異なる複数のシステムが同一周波数チャネルを使用してしまうケースが少なからず発生することが予想される。システム間における干渉が発生し、各システムにおける通信性能が低下することが懸念される。
【0006】
干渉を回避するためには、まず、対象システムに対する異種システムからの干渉信号を検出することが必要になる。従来、信号検出方法として、電力によるキャリアセンス(以下、単にキャリアセンスと表記)が広く用いられている。キャリアセンスは、電力を検出することによって、信号を検出する方法である。
【0007】
具体的には、キャリアセンスにおいては、受信された信号の電力が測定され、測定された電力値が所定の閾値を上回った場合に、信号が検出されたと認識される。キャリアセンスの特長は、信号の種別によらず広く適用できることである。これに対して、キャリアセンスには、次のような欠点がある。
【0008】
すなわち、電力によってはノイズと信号との区別がつかない。検出感度を良くしようとして所定の閾値を低く設定すると、ノイズを信号として誤って検出してしまう誤検出が生じやすくなる。一方、誤検出を防ぐために所定の閾値を高めに設定すると、検出感度が悪くなってしまう。
【0009】
前述の欠点を持つキャリアセンスによっては、近年利用される機会が増大されている多値変調によって変調された信号を受信する場合に要求される、干渉検出感度のレベルを満足させることが困難である可能性が高い。
【0010】
すなわち、近年の無線通信においては、伝送速度の高速化が進んでいることに伴い、多値変調が利用されることが多い。多値変調が用いられる通信においては、弱いレベルの干渉によっても、データ誤りが発生しやすい。干渉を効果的に回避するためには、弱いレベルの干渉も的確に検出する必要がある。
【0011】
キャリアセンスよりも信号検出感度の良い信号検出方法として、信号間の相関を利用する技術がある。前述の技術においては、受信信号に含まれるプリアンブル部分と、プリアンブル部分に用いられる既知のパターン信号候補との相関値に基づいて検出対象信号を検出する相互相関方法と、受信信号を複製した第1信号と第2信号とのプリアンブル部分同士の相関値に基づいて検出対象信号を検出する自己相関方法とに大きく分類される。
【0012】
プリアンブル部分には、特定の信号パターンが繰り返される周期信号が用いられることが多い。自己相関方法では、周期信号の周期性が信号検出に利用される。自己相関方法の信号検出感度は、一般的に、相互相関検出に比べて低いが、キャリアセンスに比べると高い。自己相関方法の信号検出感度は、周期信号の周期性によって、ノイズと信号とを区別できるためである。
【0013】
また、自己相関方法においては、自己相関方法と異なり、上記した特定の信号パターンを受信側が知っている必要がない。従って、簡易な構成によって受信側の装置を実現できる。また、自己相関方法においては、波形の周期性が検出されればよいので、干渉信号のシンボルレートに合わせた受信信号処理をする必要が無い。自己相関方法には、シンボルレート又は変調方式が異なる異種システムの信号検出に対しても適用しやすいというメリットがある。
【0014】
上記したミリ波無線通信に関わる複数の無線通信規格のそれぞれにおいて、プリアンブル部分に用いられる周期信号の信号パターンが定められている。しかし、いくつかの無線通信規格間では、利用される信号パターンの周期が共通している。プリアンブル部分に用いられる周期信号の周期のバリエーション数は、信号パターンのバリエーション数に比べて比較的少ない。従って、主要な周期に対する自己相関検出器を受信側の装置に設けることによって、受信側装置は、多種多様な異種システムからの干渉信号を広く検出できる。
【0015】
図1は、自己相関方法の説明に供する図である。図1Aは、自己相関検出器の基本構成を示す。また、図1Bは、自己相関の処理をイメージ的に示した図である。
【0016】
図1Aに示す自己相関検出器において、受信信号が分配された第1信号及び第2信号の内の第2信号は、遅延器(delay)によって、所定時間が遅延される。所定時間は、検出対象信号のプリアンブル部分に用いられる周期信号の周期に相当する。第1信号と遅延された第2信号とが乗算器において乗算される。図1Aの自己相関検出器においては、単純な乗算器が設けられているが、複素乗算器としてもよい。これは、一般的に、複素ベースバンド信号が扱われ、複素共役の乗算が実行されるためである。
【0017】
乗算器において得られた乗算結果は、積分器において所定期間に亘って積分される。これにより、相関値が得られる。
【0018】
得られた相関値の絶対値が、絶対値算出部によって算出される。比較器において、算出された相関値の絶対値と所定の閾値(threshold)とが比較され、比較結果に応じた信号が出力される。
【0019】
ここで、複素ベースバンド信号から得られた相関値は、複素数である。しかし、受信信号に含まれるプリアンブル部分に用いられる周期信号の周期と遅延器において第2信号に与えられる遅延時間とが完全に一致している理想状態においては、得られる相関値は正の実数になる。
【0020】
これに対して、例えば、クロック偏差の誤差要因によって位相回転が生じると、得られる相関値は、必ずしも正の実数にならない場合がある。ここでは、積分器において得られた相関値が直接的に判定に使用されるのではなく、相関値の絶対値が判定に使用される。ただし、誤差要因が十分に小さいことが保証されている場合には、相関成分は、実数成分に略一致し、虚数成分は、例えば、ノイズに起因する。相関値の絶対値が判定に用いられる代わりに、相関値の実数成分が判定に用いられてもよい。
【0021】
すなわち、比較器には相関値の絶対値又は相関値の実数成分が入力され、所定の閾値と比較され、入力値が所定の閾値より大きい場合には、比較器によって信号が検出されたと判定される。
【0022】
自己相関検出器において、誤検出をできるだけ少なくしながら、弱い信号を確実に高感度に検出するためには、閾値(threshold)が適切に設定される必要がある。誤検出とは、検出対象信号を受信していないにも関わらず、ノイズを検出対象信号として誤って検出してしまうことである。
【0023】
ここで、閾値を固定にすると、背景雑音が変動した場合に誤検出が発生する。背景雑音のレベルには、例えば、高周波アナログ回路のばらつき、温度特性、及び経時変動、又は、内部のクロック回路に起因する雑音によって、大きなばらつき及び変動が発生する。また、自動利得制御(AGC)を用いる受信機では、入力信号レベルに応じて、ベースバンド信号レベルとベースバンド信号の中のノイズ成分のレベルとが、大きく変動する。
【0024】
特に、伝送フレームとしてパケット状の信号が伝送されるシステムにおいては、伝送フレームの先頭部において、AGCによる受信信号レベルの時間変動が激しい。従って、閾値を固定する場合に誤検出を防止するためには、閾値が十分大きな値に設定される必要がある。そうすると、上述の通り、弱い信号が検出されなくなり、自己相関検出器の検出感度が劣化してしまう。
【0025】
誤検出を防止しつつ検出感度を良好に保つための方法として、測定された受信電力に基づいて閾値の値を設定する方法、又は、測定された受信電力によって相関値を正規化し、正規化された相関値に基づいて信号の有無を判定する方法(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0026】
図2は、特許文献1に開示されている自己相関検出器の説明に供する図である。図2Aは、特許文献1における自己相関検出器の構成を示す。図2Bは、自己相関検出器における処理をイメージ的に示した図である。図2Bにおいて、周期信号の1周期目部分はS1により表され、2周期目部分はS2により表されている。
【0027】
図2Bに示すように、受信信号が分配された第1信号と第2信号との相関がとられる。第1信号のS1部分及びS2部分、並びに、第2信号のS1部分及びS2部分が、相関演算処理の対象である。ただし、第2信号には周期信号の1周期分の遅延が与えられているので、第1信号と第2信号との相関演算が行われる場合、実際には、第1信号のS2部分と、第2信号のS1部分との相関演算が行われることになる。
【0028】
一方、相関演算の処理対象は第1信号のS1部分及びS2部分、並びに、第2信号のS1部分及びS2部分なので、正規化に用いられる電力の観測期間もS1及びS2の両方に対応する期間となる。電力観測期間における電力の平均値によって相関値が正規化され、正規化された相関値に基づいて信号の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2004−221940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、上記した従来の自己相関検出器においては、電力の観測期間中に信号レベルに変動が生じると、観測期間におけるタイミングによって電力の平均値に対する影響に偏りが生じ、電力の平均値によって正規化された相関値に対する影響もタイミングによって偏りが生じる。結果として、信号検出精度が劣化する問題がある。
【0031】
図3は、信号検出精度が劣化する現象の説明に供する図である。図3Aに示すように、信号が無い状態から信号が有る状態に切り替わるフレームの先頭部分においては、AGCが動作することにより、AGC処理が施された後のベースバンド信号のレベルは、激しく変動する。すなわち、図3Aに示すように、典型的には、フレーム先頭部分において電力レベルが大きくなり、その後、急激に電力レベルが低下する。従って、フレームの先頭部に設けられるプリアンブル部分においては、電力レベルに急激な変動が生じることが多い。
【0032】
ここで、プリアンブル信号として2周期から成る周期信号が採用される場合について考える。説明を簡単にするために、周期信号の1周期目部分の信号レベルは一定値Aであり、2周期目部分の信号レベルは、一定値B(B<A)であると仮定する。
【0033】
平均電力Pは、(A2+B2)/2によって求められる。また、相関値Rは、A・Bに比例するので、r・A・B(rは相関係数)によって求められる。正規化された相関値は、R/Pによって求められる。
【0034】
電力レベルに変動が無い場合には、A=Bとなるので、正規化された相関値R/Pは、rとなる。一方、電力レベルに変動がある場合には、例えば、A=10,B=1とすると、正規化された相関値R/Pは、r・10/50.5≒0.2rとなる。すなわち、電力レベルに変動がある場合には、電力レベルに変動が無い場合に比べて、正規化された相関値が小さくなり、検出感度が悪くなってしまう。
【0035】
本発明の目的は、電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる信号検出装置及び信号検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の一態様の信号検出装置は、受信信号が分配された第1の分配信号と第1の乗算信号とを乗算する第1の乗算器と、前記第1の乗算器において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第1の相関値を算出する第1の積分器と、前記受信信号が分配された第2の分配信号と第2の乗算信号とを乗算する第2の乗算器と、前記第2の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第2の相関値を算出する第2の積分器と、前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T1遅延させることにより前記第1の乗算信号を形成し、時間T2(T2>T1)遅延させることにより前記第2の乗算信号を形成する遅延部と、前記第1の相関値及び前記第2の相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する判定部と、を具備する。
【0037】
本発明の一態様の信号検出方法は、受信信号が分配された第1の分配信号と第1の乗算信号とを乗算し、前記第1の乗算器において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第1の相関値を算出し、前記受信信号が分配された第2の分配信号と第2の乗算信号とを乗算し、前記第2の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第2の相関値を算出し、前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T1遅延させることにより前記第1の乗算信号を形成し、前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T2(T2>T1)遅延させることにより前記第2の乗算信号を形成し、前記第1の相関値及び前記第2の相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる信号検出装置及び信号検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】自己相関方法の説明に供する図
【図2】従来の自己相関検出器の説明に供する図
【図3】信号検出精度が劣化する現象の説明に供する図
【図4】本発明の実施の形態1に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
【図5】信号検出処理の説明に供する図
【図6】遅延部の構成バリエーションを示す図
【図7】本発明の実施の形態2に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
【図8】判定部の構成を示すブロック図
【図9】基準値の分布を示す図
【図10】本発明の実施の形態3に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態4に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
【図12】他の実施の形態に係る信号検出装置の構成を示すブロック図
【図13】信号検出装置の動作説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0041】
[実施の形態1]
[システムの概要]
本発明の実施の形態では、複数のミリ波無線通信規格のそれぞれに対応する複数の通信システムが混在している状況を前提とする。各通信システムにおいては、送信装置(例えば、アクセスポイント)が、各通信システムにおいて設定されている周期信号をプリアンブル部分に配置して送信する。本発明の実施の形態1に係る信号検出装置は、上記した複数の通信システムの内のいずれかにおいて通信する受信装置(例えば、端末装置)に搭載される。
【0042】
信号検出装置は、搭載されている受信装置が通信する通信システム(以下では、「自システム」と呼ばれることがある)以外の複数の通信システム(以下では、「他システム」と呼ばれることがある)からのプリアンブル信号を検出する。なお、以下では、信号検出装置が複数の他システムのプリアンブル信号を検出することを前提に説明するが、検出対象のプリアンブル信号に自システムのプリアンブル信号が含まれてもよい。
【0043】
[信号検出装置100の構成]
図4は、本発明の実施の形態1に係る信号検出装置100の構成を示す。上述の通り、信号検出装置100は、複数のミリ波無線通信規格のそれぞれに対応する複数の通信システムの内のいずれかの通信システムと通信する受信装置に搭載される。信号検出装置100は、受信装置においてアンテナを介して受信された無線受信信号が無線受信処理(例えば、ダウンコンバート、アナログディジタル変換)を施された後に得られる受信信号(つまり、ベースバンド信号)を入力とする。入力された受信信号が分配(つまり、複製)されることにより、複数の分配信号が形成される。
【0044】
図4において、信号検出装置100は、遅延部101と、乗算器102,103と、積分器104,105と、絶対値算出部106,107と、判定部108とを有する。
【0045】
乗算器102は、第1分配信号と第1乗算信号とを乗算し、乗算結果を積分器104へ出力する。
【0046】
乗算器103は、第2分配信号と第2乗算信号とを乗算し、乗算結果を積分器105へ出力する。
【0047】
積分器104は、乗算器102から出力された乗算結果を所定の期間において積分し、積分結果(つまり、第1分配信号と第1乗算信号との相関値(以下では、「第1相関値」と呼ばれることがある))を絶対値算出部106へ出力する。
【0048】
積分器105は、乗算器103から出力された乗算結果を所定の期間において積分し、積分結果(つまり、第2分配信号と第2乗算信号との相関値(以下では、「第2相関値」と呼ばれることがある))を絶対値算出部107へ出力する。
【0049】
絶対値算出部106は、第1相関値の絶対値を算出し、判定部108へ出力する。
【0050】
絶対値算出部107は、第2相関値の絶対値を算出し、判定部108へ出力する。
【0051】
遅延部101は、複数の分配信号の少なくとも1つを用いて、第1乗算信号及び第2乗算信号を形成する。具体的には、遅延部101は、遅延器111と、遅延器112とを有する。遅延器111は、第1分配信号がさらに分配された信号に対してT1分の遅延処理を施すことにより第1乗算信号を形成し、乗算器102へ出力する。また、遅延器112は、第2分配信号がさらに分配された信号に対してT2分の遅延処理を施すことにより第2乗算信号を形成し、乗算器103へ出力する。
【0052】
すなわち、第1乗算信号と第2乗算信号とは、(T2−T1)分が相対的にずらされている。ここで、T1及びT2は、信号検出装置100が検出対象としているプリアンブル信号に用いられている周期信号の周期にそれぞれ対応する。ここでは、T2>T1であり、且つ、T1>(T2−T1)であることを前提としている。
【0053】
判定部108は、絶対値算出部106において得られた第1相関値の絶対値(R1)及び絶対値算出部107において得られた第2相関値の絶対値(R2)に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。
【0054】
具体的には、判定部108は、第1相関値の絶対値(R1)と第2相関値の絶対値(R2)との相対値と、信号検出判定閾値との、大小関係に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。
【0055】
詳細には、判定部108は、R1/R2が信号検出判定閾値以上では、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。一方、判定部108は、R2/R1が信号検出判定閾値以上では、周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。
【0056】
また、判定部108は、R1/R2及びR2/R1の両方が信号検出判定閾値未満では、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号及び周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号のいずれも検出していないと判定する。
【0057】
なお、第1相関値の絶対値(R1)と第2相関値の絶対値(R2)との相対値として、両者の比を用いているが、本発明はこれに限定されず、両者の差を相対値として用いてもよい。すなわち、判定部108は、R1−R2が信号検出判定閾値以上では、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。R2が基準値として用いられる。
【0058】
判定部108は、R2−R1が信号検出判定閾値以上では、周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。R1が基準値として用いられる。判定部108は、R1とR2との差分(|R1−R2|)が信号検出判定閾値未満である場合には、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号及び周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号のいずれも検出していないと判定する。
【0059】
通常、R1、R2を真値により表現した場合には、相対値として両者の比が用いられ、R1、R2を、例えば、デシベルの対数値により表現した場合には、相対値として両者の差が用いられるのが適切である。
【0060】
[信号検出装置100の動作]
以上の構成を有する信号検出装置100の動作について説明する。図5は、信号検出装置100における信号検出処理の説明に供する図である。
【0061】
図5Aには、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を受信した場合の、相関検出処理をイメージ的に示した図である。
【0062】
乗算器102において乗算される第1分配信号と第1乗算信号とは、相対的にT1分のずれがある。周期信号を構成する1周期(T1)分信号の先頭タイミングが合わさった状態において、第1分配信号と第1乗算信号とが乗算される(図5A上図参照)。従って、積分器104において得られる相関値は、大きくなる。
【0063】
また、乗算器103において乗算される第2分配信号と第2乗算信号とは、相対的にT2分のずれがある。周期信号を構成する1周期(T1)分信号の先頭タイミングがずれた状態において、第2分配信号と第2乗算信号とが乗算される(図5A下図参照)。従って、積分器105において得られる相関値は、小さくなる。
【0064】
R1/R2の値も大きくなるので、R1/R2の値は信号検出判定閾値よりも大きくなる。従って、判定部108は、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。
【0065】
図5Bには、周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号を受信した場合の、相関検出処理をイメージ的に示した図である。
【0066】
乗算器102において乗算される第1分配信号と第1乗算信号とは、相対的にT1分のずれがある。周期信号を構成する1周期(T2)分信号の先頭タイミングがずれた状態において、第1分配信号と第1乗算信号とが乗算される(図5B上図参照)。従って、積分器104において得られる相関値は、小さくなる。
【0067】
また、乗算器103において乗算される第2分配信号と第2乗算信号とは、相対的にT2分のずれがある。周期信号を構成する1周期(T2)分信号の先頭タイミングが合わさった状態において、第2分配信号と第2乗算信号とが乗算される(図5B下図参照)。従って、積分器105において得られる相関値は、大きくなる。
【0068】
R2/R1の値も大きくなるので、R2/R1の値は信号検出判定閾値よりも大きくなる。従って、判定部108は、周期T2の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。
【0069】
こうして、異種システムからの干渉信号を検出した場合には、受信装置は、検出のレベル又は頻度に応じて、干渉を回避するための動作を開始する。干渉を回避するための一般的な動作としては、例えば、周波数チャネルの変更、送信タイミングの変更、送信電力制御、およびアンテナ指向性制御がある。
【0070】
本実施の形態によれば、信号検出装置100において、乗算器102が、受信信号が分配された第1分配信号と第1乗算信号とを乗算し、積分器104が、乗算器102において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第1相関値を算出する。また、乗算器103が、受信信号が分配された第2分配信号と第2乗算信号とを乗算し、積分器105が、乗算器103において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第2相関値を算出する。
【0071】
遅延部101が、第1分配信号又は第2分配信号を時間T1遅延させることにより第1乗算信号を形成し、時間T2(T2>T1)遅延させることにより第2乗算信号を形成する。判定部108が、第1相関値及び第2相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する。
【0072】
すなわち、信号検出装置100は、相対的に(T2−T1)分がずらされた第1乗算信号及び第2乗算信号のそれぞれを用いた自己相関処理によって得られた第1相関値及び第2相関値に基づいて信号検出判定を行う。受信信号において大きな電力レベル変動が生じていても、受信信号の変動が反映された第1相関値及び第2相関値に基づいて信号検出判定できるので、電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる。
【0073】
具体的には、判定部108は、第1相関値と第2相関値との相対値と、信号検出判定閾値とに基づいて、検出対象信号の有無を判定する。第1相関値と第2相関値との相対値は、第1相関値と第2相関値との比、又は、第1相関値と第2相関値との差である。
【0074】
なお、以上において説明した遅延部101の構成は一例であり、例えば、図6に示す構成であってもよい。図6は、遅延部101Aを含む信号検出装置100Aの構成を示す。図6において、遅延部101Aは、遅延器111Aと、遅延器112Aとを有する。遅延器111Aは、第2分配信号がさらに分配された信号に対してT1分の遅延処理を施すことにより得られた信号を第1乗算信号として乗算器102へ出力し、遅延器112Aにも出力する。
【0075】
遅延器112Aは、遅延器111Aから出力された信号に対して(T2−T1)分の遅延処理を施すことにより得られた信号を第2乗算信号として乗算器103へ出力する。すなわち、乗算器103に入力される第2乗算信号は、合計T2分の遅延がされている。
【0076】
自己相関処理を行う2つの系統において遅延器の一部を共有することにより、回路規模を削減できる。同様に、自己相関処理を行う系統が3つ以上でも、遅延器の一部を共有できる。検出対象である周期信号の内において最も長い周期に対応するトータル遅延時間を有する遅延器群が設けられればよい。
【0077】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る信号検出装置200の構成を示す。図7において、信号検出装置200は、遅延部201と、乗算器202と、積分器203と、絶対値算出部204と、判定部205とを有する。遅延部201は、遅延器111と、遅延器112と、遅延器211とを有する。
【0078】
乗算器202は、第3分配信号と第3乗算信号とを乗算し、乗算結果を積分器203へ出力する。
【0079】
積分器203は、乗算器202から出力された乗算結果を所定の期間において積分し、積分結果(つまり、第3分配信号と第3乗算信号との相関値(以下では、「第3相関値」と呼ばれることがある))を絶対値算出部204へ出力する。
【0080】
絶対値算出部204は、第3相関値の絶対値を算出し、判定部205へ出力する。
【0081】
遅延部201は、複数の分配信号の少なくとも1つを用いて、第1乗算信号、第2乗算信号、及び第3乗算信号を形成する。具体的には、遅延器211は、第3分配信号がさらに分配された信号に対してT3分の遅延処理を施すことにより第3乗算信号を形成し、乗算器202へ出力する。
【0082】
すなわち、第1乗算信号と第2乗算信号とは、(T2−T1)分が相対的にずらされている。第1乗算信号と第3乗算信号とは、(T3−T1)分が相対的にずらされている。第2乗算信号と第3乗算信号とは、(T3−T2)分が相対的にずらされている。
【0083】
ここで、T1、T2、及びT3は、信号検出装置100が検出対象としているプリアンブル信号に用いられている周期信号の周期にそれぞれ対応する。ここでは、T3>T2>T1、T1>(T2−T1)、T1>(T3−T1)、T2>(T3−T2)の全てが満たされることを前提としている。
【0084】
判定部205は、第1相関値の絶対値(R1)、第2相関値の絶対値(R2)、及び第3相関値の絶対値(R3)に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。具体的には、判定部205は、第1相関値の絶対値(R1)、第2相関値の絶対値(R2)、及び第3相関値の絶対値(R3)の内の2つを用いて構成される各ペアの平均値と、各ペアに含まれない残りの1つの相関値の絶対値とに基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。
【0085】
図8は、判定部205の構成を示す。図8において、判定部205は、判定ユニット221と、判定ユニット222と、判定ユニット223とを有する。判定ユニット221は、平均部231と、判定処理部232とを有する。判定ユニット222は、平均部241と、判定処理部242とを有する。判定ユニット223は、平均部251と、判定処理部252とを有する。
【0086】
判定ユニット221は、第1相関値の絶対値(R1)と、第2相関値の絶対値(R2)及び第3相関値の絶対値(R3)の平均値とに基づいて、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したか否かを判定する。
【0087】
具体的には、判定ユニット221において、平均部231は、第2相関値の絶対値(R2)及び第3相関値の絶対値(R3)の平均値を算出する。判定処理部232は、第1相関値の絶対値(R1)と第2相関値の絶対値(R2)及び第3相関値の絶対値(R3)の平均値(つまり、基準値)との比又は差に基づいて、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したか否かを判定する。
【0088】
すなわち、判定ユニット221は、第1相関値の絶対値(R1)と基準値との比(つまり、R1/基準値)又は差(つまり、R1−基準値)が信号検出判定閾値以上では、周期T1の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。
【0089】
判定ユニット222及び判定ユニット223のそれぞれは、判定ユニット221と同じ構成を有している。但し、判定ユニット222においては、第1相関値の絶対値(R1)及び第3相関値の絶対値(R3)の平均値が算出され、判定ユニット222において算出された平均値と第2相関値の絶対値(R2)とに基づいて信号検出判定が行われる。
【0090】
また、判定ユニット223においては、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)の平均値が算出され、判定ユニット223において算出された平均値と第3相関値の絶対値(R3)とに基づいて信号検出判定が行われる。
【0091】
ここで、上記した比又は差を求める場合に用いられる基準値のレベルがたまたまゼロに近い小さな値になると、受信信号に周期信号が含まれていない場合でも、比又は差の値が大きくなることがある。比又は差の値が閾値を超えてしまうので、受信信号に周期信号が含まれていない場合でも、プリアンブル信号が検出されたと誤検出されてしまう可能性がある。
【0092】
逆に、基準値のレベルが平均的なレベルよりも大きくなると、受信信号に周期信号が含まれている場合でも、比又は差の値が小さくなることがある。比又は差の値が閾値を下回ってしまうので、受信信号に周期信号が含まれている場合でも、プリアンブル信号が検出されていないと判定される可能性がある。
【0093】
実施の形態1のように比又は差を求める場合に用いられる基準値が1つの相関処理系統から得られる1つの相関値である場合には、基準値は、例えば、ノイズの影響によってばらつくことがあり、基準値の分布は、図9Aのようになる。基準値のレベルがゼロに近くなる確率及び平均的なレベルよりも大きくなる確率が無視するのは困難なので、誤検出又は感度劣化が生じてしまう可能性がある。
【0094】
これに対して、本実施の形態のように、基準値として、複数の相関処理系統によって得られた複数の相関値の平均値を用いる場合には、図9Bに示すように、基準値のレベルのばらつきが小さくなる。特に、ゼロ付近の小さな値になる確率が減少し、誤検出が生じる確率を小さくできる。
【0095】
本実施の形態によれば、信号検出装置200において、判定部205は、第1相関値、第2相関値、及び第3相関値の内の2つを用いて構成される各ペアの平均値と、各ペアに含まれない残りの1つの相関値とに基づいて、周期T1の周期信号、周期T2の周期信号、又は周期T3の周期信号である検出対象信号の有無を判定する。
【0096】
各ペアの平均値を基準値として検出対象信号の有無を判定できる。各ペアの平均値の分布は、1つの相関値に比べて狭くなる。各ペアの平均値を基準値とすることにより、誤検出又は感度劣化を防止できる。
【0097】
なお、本実施の形態では、3種類の相関値を用いる場合について説明したが、4種類以上の相関値を用いる場合にも拡張可能である。たとえば、周期T1の周期信号を判定する場合には、第1相関値以外の3種類以上の相関値の絶対値の平均値を基準値とすることができる。
【0098】
つまり、4種以上の相関値のうち、少なくとも2つ以上の相関値の絶対値の平均値を基準値とすることができる。基準値に用いる相関値の数が多いほど、基準値のレベルのばらつきを小さくできる。
【0099】
また、基準値には、相関値の絶対値の平均値を用いるとしたが、具体的な処理は、平均操作によりばらつきを小さくする趣旨の機能を実現する範囲において、種々の変形が可能である。たとえば、基準値として、相関値の絶対値の二乗の平均値(いわゆる自乗平均)を用いて、判定したい周期の相関値の絶対値の二乗と比較してもよい。
【0100】
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3に係る信号検出装置300の構成を示す。図10において、信号検出装置300は、遅延部301と、乗算器302,303と、積分器304,305と、絶対値算出部306,307と、判定部308とを有する。
【0101】
乗算器302は、第3分配信号と第3乗算信号とを乗算し、乗算結果を積分器304へ出力する。
【0102】
乗算器303は、第4分配信号と第4乗算信号とを乗算し、乗算結果を積分器305へ出力する。
【0103】
積分器304は、乗算器302から出力された乗算結果を所定の期間において積分し、積分結果(つまり、第3分配信号と第3乗算信号との相関値(以下では、「第3相関値」と呼ばれることがある))を絶対値算出部306へ出力する。
【0104】
積分器305は、乗算器303から出力された乗算結果を所定の期間において積分し、積分結果(つまり、第4分配信号と第4乗算信号との相関値(以下では、「第4相関値」と呼ばれることがある))を絶対値算出部307へ出力する。
【0105】
絶対値算出部306は、第3相関値の絶対値を算出し、判定部308へ出力する。
【0106】
絶対値算出部307は、第4相関値の絶対値を算出し、判定部308へ出力する。
【0107】
遅延部301は、複数の分配信号の少なくとも1つを用いて、第3乗算信号及び第4乗算信号を形成する。具体的には、遅延部301は、遅延器311と、遅延器312とを有する。遅延器311は、第3分配信号がさらに分配された信号に対してT3分の遅延処理を施すことにより第3乗算信号を形成し、乗算器302へ出力する。また、遅延器312は、第4分配信号がさらに分配された信号に対してT4分の遅延処理を施すことにより第4乗算信号を形成し、乗算器303へ出力する。
【0108】
すなわち、第3乗算信号と第4乗算信号とは、(T4−T3)分が相対的にずらされている。ここで、T3及びT4は、信号検出装置300が検出対象としているプリアンブル信号に用いられている周期信号の周期にそれぞれ対応する。ここでは、T4>T3>T2>T1、T1>(T2−T1)、T3>(T4−T3)の全てが満たされることを前提としている。
【0109】
判定部308は、絶対値算出部306において得られた第3相関値の絶対値(R3)及び絶対値算出部307において得られた第4相関値の絶対値(R4)に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。
【0110】
具体的には、判定部308は、第3相関値の絶対値(R3)と第4相関値の絶対値(R4)との相対値と、信号検出判定閾値との、大小関係に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する。
【0111】
詳細には、判定部308は、R3/R4が信号検出判定閾値以上では、周期T3の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。一方、判定部308は、R4/R3が信号検出判定閾値以上では、周期T4の周期信号を含むプリアンブル信号を検出したと判定する。
【0112】
また、判定部308は、R3/R4及びR4/R3の両方が信号検出判定閾値未満では、周期T3の周期信号を含むプリアンブル信号及び周期T4の周期信号を含むプリアンブル信号のいずれも検出していないと判定する。
【0113】
なお、ここでは、第1相関値の絶対値(R1)と第2相関値の絶対値(R2)との相対値として、両者の比を用いているが、実施の形態1と同様に、本発明はこれに限定されず、両者の差を相対値として用いてもよい。
【0114】
また、以上の説明においては、遅延部101と遅延部301とを別の機能部として説明したが、本発明はこれに限定されず、単一の機能部であってもよい。また、判定部108と判定部308とも単一の機能部であってもよい。
【0115】
本実施の形態によれば、信号検出装置300において、判定部108が、第1相関値及び第2相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定し、判定部308が、第3相関値及び第4相関値に基づいて、周期T3の周期信号又は周期T4の周期信号である検出対象信号の有無を判定する。周期T1、周期T2、周期T3、及び周期T4は、周期T1、周期T2、周期T3、周期T4の順番に従い長くなる。
【0116】
周期の長さが近い検出対象信号同士をペアにして検出対象信号の有無を判定できるので、短時間のレベル変動に対する追従性を向上させることができる。
【0117】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の形態4に係る信号検出装置400の構成を示す。図11において、信号検出装置400は、電力検出部401と、閾値生成部402と、判定部403とを有する。
【0118】
電力検出部401は、受信信号の電力を検出し、検出電力値を閾値生成部402へ出力する。ここで、電力検出部401における電力検出には、上記した特許文献1と同様の方法がとられる。すなわち、相関演算の処理対象部分に対応する電力観測期間(つまり、背景技術における、S1及びS2の両方に対応する期間に相当)における電力の平均値が、電力検出部401から出力される。
【0119】
閾値生成部402は、検出電力値に基づいて、第2の信号検出判定閾値を生成する。具体的には、閾値生成部402は、乗算器411を具備する。乗算器411は、検出電力値と所定の係数とを乗算することにより、処理実行判定閾値を生成する。
【0120】
判定部403は、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)のそれぞれと、処理実行判定閾値との大小関係に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する判定処理(実施の形態1において説明されている)を実行するか否かを判定する。
【0121】
すなわち、判定部403は、第1相関値の絶対値(R1)が処理実行判定閾値以上において、R1/R2と信号検出判定閾値との大小比較判定を実行する。また、判定部403は、第1相関値の絶対値(R2)が処理実行判定閾値以上において、R2/R1と信号検出判定閾値との大小比較判定を実行する。
【0122】
本実施の形態によれば、信号検出装置400において、判定部403が、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)のそれぞれと、処理実行判定閾値との大小関係に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する判定処理を実行するか否かを判定する。
【0123】
基準値として用いられる第1相関値の絶対値(R1)及び第1相関値の絶対値(R2)のそれぞれが小さい場合には、検出対象プリアンブル信号の有無を判定する処理を実行しない。
【0124】
基準値として用いられる第1相関値の絶対値(R1)及び第1相関値の絶対値(R2)のそれぞれが小さい場合には、上述の通り、誤検出が発生し易い。従って、第1相関値の絶対値(R1)及び第1相関値の絶対値(R2)のそれぞれが小さい場合に、上記した判定処理を実行しないため、無駄な処理を防止できる。
【0125】
なお、以上の説明においては、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)のそれぞれと、処理実行判定閾値との大小関係を、プリアンブル信号の有無についての判定処理を実行するか否かの判定基準として用いている。
【0126】
しかしながら、本発明は、これに限定されず、プリアンブル信号の有無を判定した後に、判定結果を有効な結果とするか否かの判定基準として、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)のそれぞれと、処理実行判定閾値との大小関係を用いてもよい。
【0127】
要は、判定部403が、第1相関値の絶対値(R1)及び第2相関値の絶対値(R2)のそれぞれと第2の信号検出判定閾値との大小関係、並びに、第1相関値の絶対値(R1)と第2相関値の絶対値(R2)との相対値と第1の信号検出判定閾値(実施の形態1において用いた閾値と同じ)との大小関係に基づいて、検出対象プリアンブル信号の有無を判定できればよい。
【0128】
また、以上の説明においては、実施の形態1において説明した信号検出装置100の構成に対して電力検出部401及び閾値生成部402を追加した構成について説明した。しかしながら、これに限定されず、本実施の形態において説明した技術は、実施の形態2及び実施の形態3のそれぞれに対しても適用できる。
【0129】
[他の実施の形態]
(1)上記各実施の形態においては、基本的には、自己相関処理を行う2つの系統のそれぞれにおいて求められる相関値に基づいて、プリアンブル信号の有無を判定している。電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる。しかしながら、図12に示すような構成を有する信号検出装置500によっても同様の効果を得ることができる。
【0130】
図12において、信号検出装置500は、電力検出部501と、閾値生成部502と、比較器503とを有する。
【0131】
電力検出部501は、実施の形態4における電力検出部401と同様に、受信信号の電力を検出する。ただし、電力検出部501は、電力検出部401と異なり、相乗平均によって平均電力を算出する。
【0132】
電力検出部501は、先ず、電力観測期間内に含まれる期間であって、それぞれが、周期信号の1周期に対応する期間である第1の期間及び第2の期間のそれぞれにおいて平均電力を算出する。
【0133】
電力検出部501は、第1の期間において算出された平均電力と、第2の期間において算出された平均電力との相乗平均を算出する。算出された相乗平均値が、閾値生成部502へ出力される。
【0134】
閾値生成部502は、検出電力値に基づいて、信号検出判定閾値を生成する。
【0135】
比較器503は、第1相関値と閾値生成部502によって生成された信号検出判定閾値とに基づいて、検出対象のプリアンブル信号の有無を判定する。
【0136】
以上の構成を有する信号検出装置500の動作について説明する。図13は、信号検出装置500の動作説明に供する図である。
【0137】
図13に示すように、電力検出部501は、信号S1及びS2の期間に渡って電力を平均するのではなく、S1の期間の平均電力P1とS2の期間の平均電力P2とを別々に算出し、さらに平均電力P1と平均電力P2との相乗平均を算出する。
【0138】
ここで、S1の部分の振幅がAであり、S2の部分の振幅がBであるとすると、相乗平均及び相関値Rは、次のように求めることができる。
相乗平均 = √(A2・B2) = A・B
相関値R = r・A・B (rは、相関係数)
【0139】
相乗平均及び相関値Rの両方とも、振幅Aと振幅Bとの積AS・Bに比例する値である。また、相乗平均と相関値Rとの比は、常に、rとなる。
【0140】
すなわち、Aの値とBの値とが等しい場合も、レベル変動により両者が異なる場合も、電力の相乗平均と相関値Rとの相対的な関係は維持される。従って、平均電力P1と平均電力P2との相乗平均に基づいて生成される信号検出判定閾値に基づいて信号検出を行うことにより、電力レベル変動への追従性を向上させることができる。
【0141】
なお、電力検出部501は、実施の形態4の信号検出装置400において電力検出部401の代わりに設けられてもよい。これにより、信号検出装置400における電力レベル変動への追従性をさらに向上させることができる。
【0142】
(2)上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現可能である。
【0143】
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、各機能ブロックの一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0144】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続、設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0145】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、別技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の信号検出装置及び信号検出方法は、電力レベル変動が大きい場合でも信号検出精度を維持できる信号検出装置及び信号検出方法として有用である。
【符号の説明】
【0147】
100,100A,200,300,400,500 信号検出装置
101,101A,201,301 遅延部
102,103,202,302,303 乗算器
104,105,203,304,305 積分器
106,107,204,306,307 絶対値算出部
108,205,308,403 判定部
111,111A,112,112A,211,311,312 遅延器
221,222,223 判定ユニット
231,241,251 平均部
232,242,252 判定処理部
401,501 電力検出部
402,502 閾値生成部
503 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号が分配された第1の分配信号と第1の乗算信号とを乗算する第1の乗算器と、
前記第1の乗算器において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第1の相関値を算出する第1の積分器と、
前記受信信号が分配された第2の分配信号と第2の乗算信号とを乗算する第2の乗算器と、
前記第2の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第2の相関値を算出する第2の積分器と、
前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T1遅延させることにより前記第1の乗算信号を形成し、時間T2(T2>T1)遅延させることにより前記第2の乗算信号を形成する遅延部と、
前記第1の相関値及び前記第2の相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する判定部と、
を具備する信号検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1の相関値と前記第2の相関値との相対値と、信号検出判定閾値とに基づいて、前記検出対象信号の有無を判定する、
請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項3】
前記第1の相関値と前記第2の相関値との相対値は、前記第1の相関値と前記第2の相関値との比、又は、前記第1の相関値と前記第2の相関値との差である、
請求項2に記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記受信信号が分配された第3の分配信号と第3の乗算信号とを乗算する第3の乗算器と、
前記第3の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第3の相関値を算出する第3の積分器と、
をさらに具備し、
前記遅延部は、前記第1の分配信号、前記第2の分配信号、又は前記第3の分配信号を時間T3(T3>T2>T1)遅延させることにより前記第3の乗算信号を形成し、
前記判定部は、前記第1相関値、前記第2相関値、及び前記第3相関値の内の2つから構成される各ペアの平均値と、各ペアに含まれない残りの1つの相関値とに基づいて、周期T1の周期信号、周期T2の周期信号、又は周期T3の周期信号である検出対象信号の有無を判定する、
請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項5】
前記受信信号が分配された第3の分配信号と第3の乗算信号とを乗算する第3の乗算器と、
前記第3の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第3の相関値を算出する第3の積分器と、
前記受信信号が分配された第4の分配信号と第4の乗算信号とを乗算する第4の乗算器と、
前記第4の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第4の相関値を算出する第4の積分器と、
をさらに具備し、
前記遅延部は、前記第1の分配信号、前記第2の分配信号、又は前記第3の分配信号を時間T3(T3>T2>T1)遅延させることにより前記第3の乗算信号を形成し、前記第1の分配信号、前記第2の分配信号、前記第3の分配信号又は前記第4の分配信号を時間T4(T4>T3>T2>T1)遅延させることにより前記第4の乗算信号を形成し、
前記判定部は、前記第1相関値、前記第2相関値、前記第3相関値、又は前記第4相関値の内の少なくとも2つ以上から選択された相関値の平均値と、残りの相関値とに基づいて、周期T1の周期信号、周期T2の周期信号、周期T3の周期信号、又は周期T4の周期信号である検出対象信号の有無を判定する、
請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項6】
前記受信信号が分配された第3の分配信号と第3の乗算信号とを乗算する第3の乗算器と、
前記第3の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第3の相関値を算出する第3の積分器と、
前記受信信号が分配された第4の分配信号と第4の乗算信号とを乗算する第4の乗算器と、
前記第4の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第4の相関値を算出する第4の積分器と、
前記第1の分配信号、前記第2の分配信号、前記第3の分配信号、又は前記第4の分配信号を時間T3遅延させることにより前記第3の乗算信号を形成し、時間T4(T4>T3)遅延させることにより前記第4の乗算信号を形成する第2の遅延部と、
前記第3の相関値及び前記第4の相関値に基づいて、周期T3の周期信号又は周期T4の周期信号である検出対象信号の有無を判定する第2の判定部と、
をさらに具備し、
周期T1、周期T2、周期T3、及び周期T4は、周期T1、周期T2、周期T3、周期T4の順番で長くなる、
請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項7】
前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号の電力を検出する電力検出部と、
前記検出された電力値に基づいて、第2の信号検出判定閾値を生成する閾値生成部と、
をさらに具備し、
前記判定部は、前記第1の相関値と前記第2の相関値との相対値と前記第1の信号検出判定閾値との大小関係、及び、前記第1の相関値及び前記第2の相関値のそれぞれと、前記第2の信号検出判定閾値との大小関係に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する、
請求項1に記載の信号検出装置。
【請求項8】
受信信号が分配された第1の分配信号と第1の乗算信号とを乗算し、
前記第1の乗算器において得られた乗算結果を積分期間において積分することにより第1の相関値を算出し、
前記受信信号が分配された第2の分配信号と第2の乗算信号とを乗算し、
前記第2の乗算器において得られた乗算結果を前記積分期間において積分することにより第2の相関値を算出し、
前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T1遅延させることにより前記第1の乗算信号を形成し、
前記第1の分配信号又は前記第2の分配信号を時間T2(T2>T1)遅延させることにより前記第2の乗算信号を形成し、
前記第1の相関値及び前記第2の相関値に基づいて、周期T1の周期信号又は周期T2の周期信号である検出対象信号の有無を判定する、
信号検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−213027(P2012−213027A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77441(P2011−77441)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】