説明

信号機

【課題】発光ダイオードと導光板を用いた信号機において、冬季の発光面の視認性を確保すること。
【解決手段】本発明に係る信号機は、端面から入射した光の向きを変え、前面より出光させる導光板21と、導光板21の端面に面して配置される複数の発光ダイオード221と、導光板21の背面の少なくとも一部分である接触領域において接触し、発光ダイオード221からの発熱を導光板21に伝える伝熱部材22と、を備える灯器2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、信号機において、低消費電力、長寿命、視認性の高さといった利点を得るため、光源を従来の電球に代え、発光ダイオードを使用したものが使用されている。これら発光ダイオード式信号機では、多数の発光ダイオードが信号機の発光面上に平面的に配置されている。このような発光ダイオード式信号機では、発光ダイオードの素子あたりの発光輝度が向上すると、発光ダイオードの総数を削減することができるが、発光ダイオードの数が減少すると、発光面を観た際の粒状感が増すことが予想される。
【0003】
これに対し、発光ダイオードからの光線を導光板を使用して平面的に拡散することにより、少ない発光ダイオードであっても違和感のない平面発光が得られると考えられる。
【0004】
特許文献1には、交通標識の表示が付された交通標識であって、白色発光のLEDを導光板の入光端面に配置し、導光板の出光面に取り付けられた表示を面発光させるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3103972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、発光ダイオード式信号機ではそもそも消費電力が従来の電球を使用した信号機に比して低いため、その発熱量は小さいものとなる。加えて、導光板を使用した形式とすると、発熱源である発光ダイオードが発光面外に配置されることとなるため、発光面の温度上昇は極めて低いものに留まる。
【0007】
このような信号機を寒冷地に設置すると、冬季に発光面に付着した雪や氷が解けることなく残存し、発光面が視認できなくなってしまう。さりとて、氷雪を融解するためにヒータ等の発熱源を設けることは、信号機のコスト増を招くほか、そもそも発光ダイオードを採用した契機である低消費電力という利点を損なうことになる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、発光ダイオードと導光板を用いた信号機において、冬季の発光面の視認性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る信号機は、端面から入射した光の向きを変え、前面より出光させる導光板と、前記導光板の端面に面して配置される複数の発光ダイオードと、前記導光板の背面の少なくとも一部分である接触領域において接触し、前記発光ダイオードからの発熱を前記導光板に伝える伝熱部材と、を備える灯器を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明によれば、発光ダイオードと導光板を用いた信号機において、冬季の発光面の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る信号機の正面斜視図である。
【図2】信号機の背面分解斜視図である。
【図3】灯器の正面分解斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線による信号機の部分断面図である。
【図5】伝熱部材の変形例を示す正面図である。
【図6】伝熱部材のさらなる変形例を示す正面図である。
【図7】変換回路基板の変形例を示す灯器の正面分解斜視図である。
【図8】西日等の強い外光による反射光を抑制した信号機の変形例を示す正面斜視図である。
【図9】図3のIX−IX線における部分拡大水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る信号機1の正面斜視図である。図示した信号機1は赤黄緑の3色を発光する一般的な縦型信号機であり、ケース10の前面に設けられた開口11から、3つの発光面12が見えている。なお、本明細書で「発光面」とは、信号機1の発光が視認される面を指しており、図示した信号機1において、上側に配置される発光面12は赤色に、中央に配置される発光面12は黄色に、下側に配置される発光面12は緑色に発光する。また、各発光面12の上部から両側部にかけては、庇13が設けられる。
【0013】
なお、本実施形態では、信号機1として3灯式の縦型信号機を示したが、これに限定するものでなく、発光面12の数及びその発色は任意であり、また、複数の発光面12が水平方向に配置される横型信号機であってもよい。また、図示の発光面12は円形であるが、これに限定するものではなく、他の形状、例えば角型であってもよい。
【0014】
図2は、信号機1の背面分解斜視図である。ケース10は、前ケース10F及び後ケース10Rからなっており、その内部に発光面12の数に対応した数の灯器2を収容している。灯器2の数は本実施形態では3台である。ケース10の材質は特に限定されないが、本実施形態では金属、例えば鋼板により製造されている。庇13は前ケース10Fに溶接或いはネジ止め等の適宜の方法で取り付けられている。また、前ケース10Fには、灯器2を固定するための灯器固定部14が適宜設けられている。本実施形態では、灯器2はネジ止めにより前ケース10Fに固定されるため、灯器固定部14は雌ネジである。また、後ケース10Rには、灯器2から延びる電気配線をケース10の外部に引き出すための配線孔15が設けられている。
【0015】
なお、本明細書において、「灯器」とは、一の発光面12(図1参照)に対応して設けられる一単位の発光器具を指すものとする。従って、複数の発光面12を有する信号機1は、発光面12に応じた数の灯器2を有することになる。
【0016】
図3は、灯器2の正面分解斜視図である。本実施形態では、灯器2は、発光ダイオードの発色光が異なること、また発色光の異なる発光ダイオードの輝度に応じて発光ダイオードの数及び配置密度が変更されることを除いては、全て同じ構造であるため、ここでは、図2の下側に配置された緑色に発光する灯器2を代表として示した。
【0017】
灯器2は、前面から、ガスケット20、導光板21、伝熱部材22、変換回路基板23及び断熱部材24をこの順に配置し、ハウジング25内に収容した構造となっている。なお、同図では、電気配線や電子部品の類は図示を省略している。
【0018】
ガスケット20は、導光板21の前面外周縁に配置され、導光板21と前ケース10F(図2参照)の間に挟み込まれることで、前ケース10Fと導光板21との隙間を液密に封止する。ガスケット20の材質や配置方法は特に限定されないが、本実施形態では、黒色のゴム製の輪である。ガスケット20としては、一般的なOリング等の環状シール材を用いてもよいし、導光板21又は図2に示す前ケース10Fの開口11の周縁に適宜のコーキング材等のシール材を塗布することによりガスケット20としてもよい。なお、本実施形態のガスケット20が黒色であるのは、耐候性に優れること、導光板21の前面への光の漏れ出しを防止できることによるが、特にその色を限定するものではない。
【0019】
導光板21は、側面である外周の端面から入射した光の向きを変え、前面からおおむね均一に出光させる光学部材であり、透明な合成樹脂製の板状をしている。本実施形態では、アクリル樹脂製の円板である。そして、導光板21の背面には、導光板21内部を全反射を繰り返して進む光線の反射方向を前面に向かう方向に変えるための適宜の光反射構造が設けられている。かかる光反射構造として、本実施形態では、反射インクを適宜のパターンで導光板21に印刷しているが、これに換え、溝あるいはディンプル等の立体構造を設けてもよい。また、導光板21の前面は平坦面であってもよいし、導光板21から出向する光の向きを制御する適宜の構造を設けるようにしてもよい。本実施形態では、導光板21の前面には、正面方向の発光輝度を向上するための表面構造が設けられている。また、図1に示した通り、本実施形態では、導光板21はケース10の開口11内に露出しており、導光板21の前面が発光面12となっている。
【0020】
図3に戻り、伝熱部材22は、熱伝導に優れた材料、例えば、アルミなどの金属製の部材であり、導光板21の更に外側に配置され、導光板21の外周をとり囲むとともに、その内面に複数の発光ダイオード221を有するリム部222と、リム部222の後ろ側から内周に向かって伸び、導光板21の背面に接触する伝熱部223を備えた形状をしている。伝熱部材22は、発光ダイオード221の発光時の発熱をリム部222から伝熱部223に伝え、さらに、導光板21の背面に伝える機能を有する。これにより、発光ダイオード221からの発熱を利用して導光板21を温め、特に冬季において、発光面12すなわち導光板21の前面に付着した氷雪を溶融しあるいは付着を防止することにより、発光面12の視認性を確保する。なお、以降本明細書では、伝熱部223と導光板21の背面が接触している領域を接触領域と呼ぶこととする。導光板21は合成樹脂製であり、薄い平板形状であるので、その厚さ方向に比べ、面内方向での熱伝導はあまり生じない。従って、導光板21は、接触領域においては温められるが、接触領域以外の部分ではあまり温められないことになる。
【0021】
接触領域は、導光板21の背面の少なくとも一部分であればよく、本実施形態では、導光板21の背面の一部分であって、かつ、環状の形状となっている。これについて説明すると、特に条件の厳しい寒冷地であって、気温がセ氏0度を大きく下回る状況においては、発光ダイオード221による総発熱量が不足するため、導光板21の全面を水の融点であるセ氏0度以上に昇温することができない場合が生じる。この場合には、導光板21の前面に付着した氷雪を融解できず、導光板21の前面に付着した氷雪により、信号機1の発光面12が視認できなくなる。そこで、接触領域を導光板21の背面の一部分とすることにより、接触領域に発光ダイオード221からの熱を集中させ、導光板21の一部分を水の融点以上に加温することにより、当該一部分においては氷雪を融解除去する。それにより、少なくとも接触領域においては発光面12が視認できるようになり、発光面12の全面が氷雪におおわれ全く視認できないという状況は回避される。なお、以上の説明より明らかなように、信号機1の設置環境によっては、寒さがあまり厳しくなく、発光ダイオード221の総発熱量が導光板21の全面を水の融点まで昇温できる場合もあり得る。この場合には、接触領域を、導光板21の背面全てを覆うものとしてもよい。
【0022】
また、本実施形態では接触領域は導光板21の外周を環状に縁取る形状である。この形状では、接触領域以外の部分、すなわち、環状の領域の中央部に分厚く氷雪が付着した場合においても、信号機1をどの方向から見ても導光板21の手前側の外周部が露出し、付着した氷雪に覆い隠されることがないので、発光面12の発光を視認することができる。
【0023】
なお、伝熱部材22の伝熱部223の前面は、鏡面又は白色面等の光を反射する反射面となっている。これにより、導光板21の背面側に漏れ出た光は再度導光板21に入射するから、光の利用効率が高められる。しかしながらこの構成は必須のものでなく、灯器2に入光した外光、例えば西日の光線が灯器2内部で反射し、灯器2が点灯しているかのように見えるいわゆる疑似点灯が問題となる場合には、伝熱部223の前面を光を反射させず吸収する吸収面としてもよい。反射面、吸収面の可視光線の反射率は特に限定されず、合目的的に設定してよいが、本明細書では便宜的に、入射光の90%以上を反射する面を反射面、入射光の50%以上を吸収する面を吸収面とする。
【0024】
また、伝熱部材22の伝熱部223と導光板21との間の熱的接触を確保するため、両者の間には、熱伝導グリース等を塗布するとよい。
【0025】
変換回路基板23は、外部の制御盤から信号機1に送られる交流電流を、発光ダイオード221の点灯に適した直流電流に変換する変換回路が実装された基板である。変換回路基板23自体の形状は、かかる変換回路の実装ができればどのようなものであってもよいが、本実施形態では、接触領域において伝熱部材22の伝熱部223に熱的に接触する形状、具体的には、正面視において伝熱部223と同形状となっている。これは、発光ダイオード221には及ばないものの、変換回路もまた発熱源であるため、その熱を伝熱部223に伝え、さらに導光板21に伝えるためである。この構造は、厳しい寒さが予想される寒冷地での使用に適している。
【0026】
断熱部材24は、伝熱部材22とハウジング25を熱的に絶縁し、伝熱部材22が持つ熱がハウジング25に伝わり散逸しないようにするための構造である。本実施形態では、断熱部材24は白色の発泡スチロール樹脂の成形品であり、伝熱部材22のリム部222の外周側と、伝熱部223の背面側を覆う形状となっている。また、断熱部材24の中央には配線を通すための穴241が設けられている。さらに、断熱部材24の下端には、後述するハウジング25の伝熱突起253を収容する切欠242が設けられている。なお、断熱部材24の材質としては、他にCRゴムスポンジなどが挙げられる。
【0027】
なお、断熱部材24の構造や形状はここで図示したものに限定されない。例えば、断熱部材24を一体のものでなく、複数の部材に分割してもよいし、不定型状の断熱材(例えばグラスウール)を伝熱部材22とハウジング25の間に詰めるようにしてもよい。或いは、断熱部材24を省略し、伝熱部材22を適宜のスペーサで支持するなどして、伝熱部材22とハウジング25が直接接触せず、空間で隔てられるようにしてもよい。
【0028】
ハウジング25は、以上説明したガスケット20、導光板21、伝熱部材22、変換回路基板23及び断熱部材24を収容する容器である。ハウジング25の材質は特に限定されず、ポリカーボネート、ABS樹脂などの合成樹脂や、鋼板などの金属で形成される。しかし、灯器2の後方への断熱性を考慮すれば、合成樹脂などの熱伝導性の低い材質で形成されるのがより好ましい。ハウジング25が開口している前面側の周縁には、フランジ251が設けられ、さらにフランジ251の適宜の位置に、ハウジング取付部252が設けられている。ハウジング取付部252は、本実施形態ではネジ止めのための穴を有する突起であり、図2に示す前ケース10Fの灯器固定部14に図示しないネジによりネジ止めされる。また、ハウジング25の内側面は概ね円筒形であるが、最も下側に位置する縁に、ハウジング25の内面側に突出する伝熱突起253が設けられている。伝熱突起253は、伝熱部材22と接触し、この部分において伝熱部材22とハウジング25を熱的に接触させる伝熱構造である。したがって、図3では伝熱突起253はハウジング25の一部分が突出している部分として示されているが、ハウジング25が合成樹脂等の熱伝導性の低い材質で形成されている場合、伝熱突起253が形成されている部分に金属部材を設けるなどして、伝熱構造の熱伝導性を高めるようにしてもよい。さらに、背面に設けられた穴254は、ハウジング25外部から電気配線を内部に引き込むためのものである。
【0029】
図4は、図1のIV−IV線による信号機1の部分断面図である。なお、同図では、後ケース10Rは図示を省略した。
【0030】
ハウジング25は、前ケース10Fの背面にフランジ251が密着するよう固定される。また、ハウジング25の前面と、ガスケット20の前面は、前後方向に略同じか、ガスケット20の前面の方が若干前面側に配置されるため、灯器2を前ケース10Fに取り付けると、ガスケット20は前ケース10Fと導光板21の間に挟まれ圧縮されるため、灯器2は前ケース10Fに液密に取り付けられる。発光ダイオード221は、直接リム部222の内面に配置してもよいが、本実施形態では、発光ダイオード221を適宜の間隔をおいて実装したテープ状のフレキシブル基板224をリム部222の内面に貼り付け、導光板21の端面に面するように配置されている。また、伝熱部材22の伝熱部223の背面には変換回路基板23が配置され、伝熱部材22及び変換回路基板23は断熱部材24によりハウジング25と隔てられている。
【0031】
なお、ここで挙げた信号機1の構成は、一実施形態を示すものであり、信号機1の設置環境その他に応じて適宜変形あるいは他の部材を追加してもよい。
【0032】
例えば、伝熱領域以外の部分において、断熱部材24の前面側でかつ導光板21の背面側に、反射シート等の反射面を有する部材を配置してもよい。これにより、光の利用効率が高められる。あるいは、導光板21の前面側に他のシート状部材、例えば、拡散シート、プリズムシート等の光学シートや、導光板21や光学シートを保護するための透明な保護カバーを設けてもよい。なお、導光板21の前面側に各種シート類を配置すると、導光板21からの熱がそれらシート類に伝わりづらくなり、発光面12の表面温度が低下する。従って、これら各種シート類を追加する際には、発光面12の表面温度が氷雪を溶解できる程度に高温となるよう留意しなければならない。
【0033】
また、灯器2の下部では、ハウジング25の伝熱突起253が伝熱部材22のリム部222に接触している。これにより、灯器2の下部において、発光ダイオード221の熱の一部は、伝熱部材22及び伝熱突起253を通して、前ケース10Fに伝えられる。すなわち、灯器2の下側において、前ケース10Fがわずかながらも温められることになる。このことにより、灯器2の発光面12で溶融するなどして前ケース10Fの下部に流れ落ちた水が再度氷結することによる氷柱の形成が抑制される。なお、この伝熱突起253を含む伝熱構造は必須のものではなく、氷柱の形成が問題とならなければ省略してもよい。また、図2に示すように、複数の灯器2が縦に配置される形式の信号機1では、最も下側に配置される灯器2において伝熱構造を有していればよく、他の灯器2では伝熱構造を省略してもよい。さらに、伝熱構造の具体的構成は、伝熱部材22からハウジング25の下部に熱を伝えるものであればどのようなものであってもよく、例えば、伝熱突起253に換えて、板ばね等の弾性金属部材により両者を接触させるようにするなどしてもよい。
【0034】
以上説明した実施形態に係る信号機1は、種々の変形が可能である。以下それらの変形のうち、好適なものを説明する。
【0035】
まず、以上の説明に係る実施形態では、伝熱部材22の伝熱部223の形状を、導光板21の外周を環状に縁取る形状としたが(図3参照)、伝熱部223の形状は次のようなものであってもよい。
【0036】
図5は、伝熱部材22の変形例を示す正面図である。また、同図下方向が鉛直下方となる。この変形例では、伝熱部223は導光板21(図3参照)の下側の部分を覆う形状であり、伝熱領域は導光板21の下側の部分である。なお、図5では、伝熱部223を明示するため、伝熱部223にはハッチングを施して示した。
【0037】
この伝熱部223の形状が意図しているのは、導光板21表面に付着した氷雪を容易に脱落させることである。すなわち、導光板21の前面に付着した氷雪は、伝熱領域においては、導光板21と接している部分が溶融するので、重力により導光板21の表面を下方に滑り落ちて脱落する。このとき、伝熱領域のさらに下方に導光板21が加熱されない領域があり、その部分において氷雪が導光板21の前面に強固に付着したならば、伝熱領域において付着した氷雪が下方の氷雪に支えられて滑り落ちることができず、結局導光板21表面に付着した氷雪を脱落させることができないと考えられる。従って、伝熱領域のさらに下方に伝熱領域でない領域があってはならないことになる。すなわち、伝熱領域は導光板21の下側の部分である、ということは、伝熱領域の鉛直上方に伝熱領域でない領域が存在し、且つ、伝熱領域の鉛直下方に伝熱領域でない領域が存在しない、ということを意味する。
【0038】
なお、図5で示した変形例では、伝熱部223は半円形状であるが、伝熱領域が導光板21の下側の部分でありさえすれば、かかる形状は特に限定されない。伝熱領域と伝熱領域でない領域との境界線の位置は信号機1の設置環境等に応じて適宜選択すればよく、また、境界線の向きも必ずしも水平方向でなくともよい。
【0039】
図6は、伝熱部材22のさらなる変形例を示す正面図である。同図においても、下方向が鉛直下方であり、また、伝熱部223には同部を明瞭に示すためハッチングを施して示した。
【0040】
この変形例では、伝熱領域は、伝熱部223が示すように、鉛直方向に延びる帯状の領域である。このようにしても、伝熱領域の鉛直下方に伝熱領域でない領域は存在しないため、氷雪を容易に脱落させることができる。また、この変形例では、伝熱領域は左右端を含む2か所に設けられている。すなわち、伝熱領域は灯器2の発光面12の左右における帯状の領域である。このようにすれば、伝熱領域でない領域、すなわち、発光面12の中央の帯状の領域に分厚く氷雪が付着した場合に、信号機1を左右いずれの斜め方向から見ても、発光面12の左右いずれかにおける帯状の領域は氷雪に隠されることなく視認できることになる。
【0041】
図7は、変換回路基板23の変形例を示す灯器2の正面分解斜視図である。同図は、図2と対応したものであり、変換回路基板23以外の部材は、図2と同じである。
【0042】
本変形例では、変換回路基板23は、伝熱部材22の伝熱部223と重なり合わない形状となっており、伝熱部223の内側に入り込む形状である(図示のものでは、円形)。そして、変換回路基板23は、伝熱部223の内側で導光板21の背面に接触する。換言すれば、変換回路基板23は、接触領域を除く領域において導光板21に熱的に接触する形状である。このようにすれば、導光板21は、接触領域においては伝熱部材22を通じて発光ダイオード221からの発熱により温められ、接触領域を除く領域においては変換回路基板23と接触し変換回路からの発熱により温められることになる。前述したとおり、変換回路からの発熱は、発光ダイオード221からの総発熱量に比べると小さい。従って、本変形例では、導光板21は、接触領域において大きく昇温し、接触領域を除く領域においては接触領域に比して小さく昇温することになる。
【0043】
このような構成だと、冬季の気候条件により、それほど寒さが厳しくない条件では、接触領域を除く領域においても氷雪を溶融できるため、信号機1の発光面12の全面の視認性が確保できる一方、寒さが厳しくなる条件では、少なくとも接触領域において発光面12の視認性が確保されることになる。この構成は、例えば、年に数日程度非常に気温の下がる日があるが、大半の日はそれほど寒さが厳しくない気候条件においては、大半の日には信号機1の発光面12の全面の良好な視認性を確保しつつ、年に数日程度の寒さの厳しい日にも、少なくとも接触領域における発光面12の視認性を確保できることになる。
【0044】
続いて、信号機1の変形例を示す。図1に示した信号機1では、発光面12は平面となっている。この場合、設置環境によっては、強い外光、例えば、西日が発光面12にあたった場合、信号機1を観察する方向によっては、その反射により発光面12の発光色が視認できない状況が発生する可能性がある。図8は、西日等の強い外光による反射光を抑制した信号機1の変形例を示す正面斜視図である。図示のとおり、本変形例では、信号機1のケース10の前面及び各発光面12が曲面となっている。さらに詳しく言うと、ケース10の前面及び各発光面12は、鉛直方向に直線的であり、水平方向に曲線的となる曲面である。ここでは、ケース10の前面及び各発光面12は水平方向に対して、前側に凸となる曲面であるから、信号機1は全体として前面が凸となるかまぼこ型をしている。なお、図8では、各発光面12に十字線をいれ、その曲がり方を明示しているが、これは理解を容易にするためのものであり、実際にはかかる十字線は存在しない。
【0045】
このように、発光面12を曲面とすると、強い外光が発光面12にあたった場合にも、特定の方向に当該外光を反射することがないため、西日等の強い外光による反射光が抑制され発光面12の発光色が視認できる。一方で、冬季に発光面12に付着する氷雪を考慮すると、発光面12に付着した氷雪は脱落する際には鉛直方向に落下することから、発光面12が鉛直方向に曲がっていると、氷雪の脱落を妨げることになる。そこで、本変形例では、発光面12を鉛直方向に直線的であり、水平方向に曲線的となる曲面とし、氷雪の脱落を妨げず、かつ、西日等の強い外光による反射光を抑制するのである。
【0046】
さらに、導光板21の前面に設けられた正面方向の発光輝度を向上するための表面構造について説明する。
【0047】
図9は、図3のIX−IX線における部分拡大水平断面図である。図中、左が前面側、右が背面側となっている。同図に示すように、導光板21の前面には、多数の三角柱形状の突起である表面構造211が水平方向に並べられている。そして、この表面構造211は鉛直方向に延びる形状をしている。すなわち、導光板21を正面から見たならば、多数の表面構造211が縦縞となるように導光板21の前面に形成されていることになる。
【0048】
この多数の表面構造211は、光の出光方向を制御するプリズムとして機能しており、導光板21の背面から前面に向かう光をより正面に向かう方向へと屈折させることにより、導光板21から照射される光の正面輝度を向上させる。
【0049】
ここで、凹凸である表面構造211が導光板21の前面に形成されていると、導光板21の前面に付着した氷雪が表面構造211に引っ掛かり、その脱落が妨げられる恐れがある。そこで、本実施形態では、表面構造211を鉛直方向に延びる形状とすることで、氷雪の脱落を妨げないようにしている。
【0050】
なお、先に述べたとおり、導光板21の前面に直接表面構造211を形成する構成に代えて、市販のプリズムシートを導光板21の前側に配置するようにしてもよい。その場合には、最も前側に配置される前記光学シートの前面に形成される表面構造が、鉛直方向に延びる形状となるようプリズムシートを配置すると、かかる光学シートの前面に付着した氷雪の脱落が妨げられないので好ましい。
【0051】
以上説明した実施形態に示した具体的な構成は例示であり、当業者は種々の変形を行ってもよい。例えば、各部材の形状や寸法上の比率、発光ダイオードの配置密度や個数等は信号機に要求される性能・用途や設置環境に応じて適宜変更してよい。
【0052】
なお、以上説明した本発明の実施形態の一つの観点においては、接触領域は、導光板の背面の一部分である。これにより、発光ダイオードからの発熱を一部分に集中させ、厳しい寒冷地であっても当該一部分における冬季の発光面の視認性を確保することができる。
【0053】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、接触領域は環状である。これにより、環状の領域の中央において分厚く氷雪が付着しても、いずれの方向からでも発光面を視認することができる。
【0054】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、接触領域は、導光板の下側の部分である。こうすれば、発光面に付着した氷雪の脱落を妨げない。
【0055】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、接触領域は、鉛直方向に延びる帯状の領域である。こうすれば、発光面に付着した氷雪の脱落を妨げない。
【0056】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、接触領域は、灯器の発光面の左右における帯状の領域である。こうすれば、発光面の中央における帯状の領域に氷雪が分厚く付着した場合にも、左右いずれの方向からも発光面を視認できる。
【0057】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、灯器は、ハウジングと、伝熱部材と前記ハウジングの間に配置され、前記伝熱部材から前記ハウジングへの伝熱を妨げる断熱部材と、を備える。これにより、発光ダイオードからの発熱を効率よく導光板に伝えることができる。
【0058】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、灯器の下部において、伝熱部材の熱をハウジングに伝える伝熱構造を有する。これにより、氷柱が形成されにくくなる。
【0059】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、灯器は、交流電流を直流電流に変換する変換回路を有する変換回路基板を備え、前記変換回路基板は、接触領域において伝熱部材に熱的に接触する形状である。これにより、接触領域における導光板への伝熱量を増大させることができる。
【0060】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、灯器は、交流電流を直流電流に変換する変換回路を有する変換回路基板を備え、前記変換回路基板は、接触領域を除く領域において導光板に熱的に接触する形状である。これにより、寒さがそれほど厳しくない条件下で、接触領域を除く領域において発光面に氷雪が付着するのを防止できる。
【0061】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、伝熱部材の前面は、光を反射する反射面である。こうすれば、発光ダイオードからの光線の利用効率が高くなる。
【0062】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、導光板は、光の出光方向を制御する表面構造を前面に有し、前記表面構造は、鉛直方向に延びる形状である。こうすれば、表面構造が氷雪の脱落を妨げない。
【0063】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、灯器は、導光板の前面に配置され、光の出光方向を制御する光学シートを備え、最も前側に配置される前記光学シートの前面に形成される表面構造は、鉛直方向に延びる形状である。こうすれば、表面構造が氷雪の脱落を妨げない。
【0064】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、導光板の前面は、鉛直方向に直線的であり、水平方向に曲線的となる曲面である。こうすれば、氷雪の脱落を妨げることなく西日等の強い外光による反射光を抑制できる。
【符号の説明】
【0065】
1 信号機、2 灯器、 10 ケース、10F 前ケース、10R 後ケース、11 開口、12 発光面、13 庇、14 灯器固定部、15 配線孔、 20 ガスケット、21 導光板、22 伝熱部材、23 変換回路基板、24 断熱部材、25 ハウジング、 211 表面構造、221 発光ダイオード、222 リム部、223 伝熱部、224 フレキシブル基板、241 穴、242 切欠、251 フランジ、252 ハウジング取付部、253 伝熱突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面から入射した光の向きを変え、前面より出光させる導光板と、
前記導光板の端面に面して配置される複数の発光ダイオードと、
前記導光板の背面の少なくとも一部分である接触領域において接触し、前記発光ダイオードからの発熱を前記導光板に伝える伝熱部材と、
を備える灯器を有する信号機。
【請求項2】
前記接触領域は、前記導光板の背面の一部分である請求項1記載の信号機。
【請求項3】
前記接触領域は環状である請求項2記載の信号機。
【請求項4】
前記接触領域は、前記導光板の下側の部分である請求項2記載の信号機。
【請求項5】
前記接触領域は、鉛直方向に延びる帯状の領域である請求項2記載の信号機。
【請求項6】
前記接触領域は、前記灯器の発光面の左右における帯状の領域である請求項5記載の信号機。
【請求項7】
前記灯器は、
ハウジングと、
前記伝熱部材と前記ハウジングの間に配置され、前記伝熱部材から前記ハウジングへの伝熱を妨げる断熱部材と、
を備える請求項1乃至6のいずれかに記載の信号機。
【請求項8】
前記灯器の下部において、前記伝熱部材の熱を前記ハウジングに伝える伝熱構造を有する請求項7記載の信号機。
【請求項9】
前記灯器は、
交流電流を直流電流に変換する変換回路を有する変換回路基板を備え、
前記変換回路基板は、前記接触領域において前記伝熱部材に熱的に接触する形状である請求項1乃至8のいずれかに記載の信号機。
【請求項10】
前記灯器は、
交流電流を直流電流に変換する変換回路を有する変換回路基板を備え、
前記変換回路基板は、前記接触領域を除く領域において前記導光板に熱的に接触する形状である請求項1乃至8のいずれかに記載の信号機。
【請求項11】
前記伝熱部材の前面は、光を反射する反射面である請求項1乃至10のいずれかに記載の信号機。
【請求項12】
前記導光板は、光の出光方向を制御する表面構造を前面に有し、
前記表面構造は、鉛直方向に延びる形状である請求項1乃至11のいずれかに記載の信号機。
【請求項13】
前記灯器は、
前記導光板の前面に配置され、光の出光方向を制御する光学シートを備え、
最も前側に配置される前記光学シートの前面に形成される表面構造は、鉛直方向に延びる形状である請求項1乃至11のいずれかに記載の信号機。
【請求項14】
前記導光板の前面は、鉛直方向に直線的であり、水平方向に曲線的となる曲面である請求項1乃至13のいずれかに記載の信号機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8528(P2013−8528A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139725(P2011−139725)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】