説明

修正液

【課題】 ボール径が0.5mm以下の極細のボールペンで筆記してもが塗膜が剥がれることのない修正液を提供すること。
【解決手段】 酸化チタンと、炭化水素系溶剤と、該溶剤に可溶な樹脂とより少なくともなり、基材となる試験紙面上に、厚さ30μm以上50μm以下の乾燥塗膜を形成して検体とし、直径0.5mmの円柱に沿って180°まで折り曲げるとき、塗膜表面に割れの発生する角度が90°以上である修正液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤字などを隠蔽消去する修正液に関し、特に、厚く塗布した際の再筆記性に優れた修正液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンなどの隠蔽材と、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤と、該溶剤に可溶なアクリルなどの樹脂とより少なくともなる修正液が知られている(特許文献1参照)。
また、修正液は誤字などを隠蔽修正して、その塗膜上に再筆記することがあり、定着性が高い方が好ましい。
【特許文献1】特開昭57−024765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、ボールペンは細い文字の書ける極細タイプのものが使われるようになり、そこに使用されるボールは直径が0.5mm以下の極小のもので、0.25mm以下のボールペンまで発売されている。また、径の小さいボールになると、ボールの単位面積あたりに掛かる荷重は従来の大きい径のボールを使用したボールペンに比べ、はるかに大きくなる。そのため、修正液の塗膜にこの極細タイプのボールペンで筆記した場合に塗膜が割れてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この改善策として、本発明は、酸化チタンと、炭化水素系溶剤と、該溶剤に可溶な樹脂とより少なくともなり、基材となる試験紙面上に、厚さ30μm以上50μm以下の乾燥塗膜を形成して検体とし、直径0.5mmの円柱に沿って180°まで折り曲げるとき、塗膜表面に割れの発生する角度が90°以上である修正液を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
厚さ30μm以上50μm以下の乾燥塗膜を形成して検体とし、直径0.5mmの円柱に沿って180°まで折り曲げるとき、塗膜表面に割れの発生する角度が90°以上である修正液は、筆圧でペン先と塗膜が接した部分がのびる様に凹むだけで塗膜が割れるようなことが起こりにくいと言え、極細ボールペンでの筆記に対しても強い塗膜ということができる。尚、上記角度が90°以上である修正液は、配合組成中に、高い分子量の樹脂を使用する、50℃以下のガラス転移点の樹脂を使用する、樹脂などの固形分の配合割合を多くする、可塑剤を添加して柔軟性を付与する、四面体の中心から4頂点方向に突起が延びた形状の粒子を組み合わせるなどして得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
酸化チタンは、紙面として最も多い白色を考慮し、また、修正液として下地を覆い隠すために最も隠蔽力の高い白色顔料である。商品の具体例としては、TITONE SR−1(比重4.1)、同R−650(比重4.1)、同R−62N(比重3.9)、同R−42(比重4.1)、同R−7E(比重3.9)、同R−21(比重4.0)(以上、堺化学工業(株)製)、クロノスKR−310(比重4.2)、同KR−380(比重4.2)、同480(比重4.2)(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900(比重4.0)、同R−902(比重4.0)、同R−960(比重3.9)、同R−931(比重3.6)(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド製)、TITANIX JR−301(比重4.1)、同JR−805(比重3.9)、同JR−603(比重4.0)、同JR800(比重3.9)、同JR−403(比重4.0)、JR701(比重4.1)(以上、テイカ(株)製)などが挙げられる。酸化チタンの添加量はインキ全量に対し30〜60重量%が好ましい。
【0007】
炭化水素系溶剤は、塗膜の乾燥性を考慮すると沸点40〜150℃の溶剤が好ましい。具体的には、
ノルマルペンタン(沸点36.0℃)、シクロペンタン(沸点49.2℃)、メチルシクロペンタン(沸点71.8℃)ノルマルヘキサン(沸点68.7℃)、イソヘキサン(沸点62℃)、ノルマルヘプタン(沸点98.4℃)、ノルマルオクタンなど脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン(沸点80.0℃)、メチルシクロヘキサン(沸点100.9℃)、エチルシクロヘキサン(沸点132℃)等の他、エクソールDSP 100/140(初留点102℃、乾点138℃)(以上エクソン化学(株)製)等の脂肪族炭化水素系溶剤の混合品などが挙げられる。これらは、単独もしくは混合して使用可能である。溶剤使用量はインキ全量に対して30〜60重量%が好ましい。
【0008】
上記炭化水素系溶剤に可溶な樹脂は、顔料の分散や修正液の紙面等への定着をもたらすものであり、一例を挙げると。アルキッド樹脂、熱可塑性エラストマーなども使用できるが、顔料分散性、紙面への定着性などを考慮するとアクリル系の樹脂が好ましい。
以下アクリル系樹脂について説明する。使用可能なモノマーはアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ノルマルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、オレイルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。カチオン性のモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジシクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,Nジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらのモノマー以外にも酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレートなどの共重合可能なビニルモノマーを含有することもできる。
【0009】
尚、塗膜の紙への密着性を考慮すると、上記炭化水素系溶剤に可溶な樹脂のガラス転移点は−70℃〜50℃が好ましい。ガラス転移点とは高分子物質がガラス状からゴム状に変化する温度である。ガラス転移点は構成される樹脂モノマーのホモポリマーのガラス転移温度とその重量分率から下記の(数1)の式により算出される。
【0010】
【数1】

【0011】
更に、四面体の中心から4頂点方向に突起が延びた形状の粒子、具体例としては、テトラポット形ウィスカーで酸化亜鉛よりなるパナテトラWZ−0501,同WZ−0511,同WZ−0531、同WZ−05E1、同WZ−05F1(以上、(株)アムテック製)や、チタン酸カリウムや炭酸カルシウムの針状粒子を添加することにより塗膜に強度を付与することができる。その他、マイカやタルクなどの板状粒子、シリカや炭酸カルシウムなどの塊状の粒子も使用できる。その添加量は3〜15重量%が好ましい。
【0012】
また、顔料分散安定性の為に、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリカルボン酸高分子などの陰イオン性界面活性剤、ポリエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩などの分散剤を添加することが出来る。
【0013】
インキは上記各成分をボールミル、アトライター、サンドグラインダー、インペラー等の攪拌分散機を使用して分散混合することによって得られる。
【0014】
樹脂製造例
(製造条件)
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、還流コンデンサーを設備した500mlの反応容器に下記表1に示した物質を仕込み、窒素ガス気流中、80℃にて7時間攪拌しながら重合し、透明で粘稠性を有するポリマー成分(アクリル樹脂)を得た。得られた樹脂溶液の固形分と重量平均分子量及びガラス転移温度も表1に示した。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例1
TITANIX JR701(酸化チタン、テイカ(株)製) 40.0重量部
樹脂1 23.2重量部
メチルシクロヘキサン 35.8重量部
Disperbyk−108(界面活性剤、BYK−Chemie(独国)製)
1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0017】
実施例2
TITANIX JR701(前述) 40.0重量部
樹脂2 23.4重量部
メチルシクロヘキサン 35.6重量部
Disperbyk−180(界面活性剤、BYK−CHEMIE(独国)製)
1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0018】
実施例3
TITANIX JR701(前述) 35.0重量部
樹脂3 23.2重量部
メチルシクロヘキサン 39.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0019】
実施例4
TITANIX JR701(前述) 40.0重量部
樹脂4 24.0重量部
メチルシクロヘキサン 35.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0020】
実施例5
TITANIX JR701(前述) 40.0重量部
樹脂5 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 36.0重量部
MAR−N(可塑剤、大八化学(株)製) 3.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0021】
実施例6
TITANIX JR701(前述) 35.0重量部
樹脂6 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 36.0重量部
パナテトラWZ−0501(四面体の中心から4頂点方向に突起が延びた形状の粒子可塑剤、(株)アムテック製) 8.0重量部
BYK405(界面活性剤、BYK−CHEMIE(独国)製) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0022】
実施例7
TITANIX JR800(酸化チタン、テイカ(株)製) 35.0重量部
樹脂6 18.8重量部
メチルシクロヘキサン 34.2重量部
パナテトラWZ−0501(前述) 5.0重量部
ウィスカルA(針状炭酸カルシウム、丸尾カルシウム(株)製) 5.0重量部
BYK405(前述) 1.0重量部
Disperbyk−108(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0023】
実施例8
TITANIX JR800(前述) 30.0重量部
樹脂6 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 33.0重量部
パナテトラWZ−0501(前述) 15.0重量部
BYK405(前述) 1.0重量部
Disperbyk−108(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0024】
実施例9
TITANIX JR800(前述) 35.0重量部
樹脂6 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 33.0重量部
パナテトラWZ−0501(前述) 2.0重量部
ウィスカルA(前述) 8.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
Disperbyk−108(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0025】
比較例1
TITANIX JR701(前述) 45.0重量部
樹脂1 15.0重量部
メチルシクロヘキサン 39.0重量部
BYK−108(界面活性剤、BYK−CHEMIE(独国)製) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0026】
比較例2
TITANIX JR701(前述) 40.0重量部
樹脂5 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 39.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0027】
比較例3
TITANIX JR800(前述) 46.0重量部
樹脂6 20.0重量部
メチルシクロヘキサン 33.0重量部
Disperbyk−180(前述) 1.0重量部
上記各成分をボールミルで24時間分散処理し、修正液を得た。
【0028】
試験紙作成方法
PPC用紙CR−KPA4−W((株)クラウン製)に、硬化型シリコーン樹脂KS−779H(信越化学製(株)製)100部、硬化剤CAT−PL−8(信越化学(株)製)1部、メチルエチルケトン(MEK)/トルエン混合溶媒系2200部より成る離型剤を塗布量が0.1g/mmになるように塗布して、室温で24時間放置して試験紙を得た。
【0029】
試験片作成方法
試験紙上に塗布した塗膜を、直径0.5mmの円柱に沿って180°まで折り曲げるとき、塗膜表面に割れの発生する角度を測定するための試験片は、以下のようにして作製する。
幅85mm、長さ115mmの前述の試験紙面上の長手方向端から約20mmの位置に実施例及び比較例の修正液を約2ミリリットル置き、これをアプリケーター(直径20mm、長さ50mmのステンレス製円柱が、円柱の中心軸が塗布面に対し水平に配置され、円柱面と塗布面の間が250μmに固定されている器具)にて長手方向反対側に引き伸ばすように塗布する。試験紙面上に塗布した修正液を約25℃で24時間以上放置し乾燥塗膜とする。尚、乾燥塗膜の乾燥状態は、添加した溶剤の95%以上が蒸発した状態を重量換算で確認する。
【0030】
塗膜厚測定
試験片とは別に、同じ方法で作製した乾燥塗膜を試験紙ごとシックネスゲージにて乾燥塗膜の膜厚を測定し、同じくシックネスゲージにて測定した試験紙の厚さとの差を塗膜厚さとし、膜厚が30mm以上、50mm以下であることを確認した。
【0031】
破断角度測定
JISK5600−5−1の円筒形マンドレル屈曲試験器を用いて、マンドレル部を直径0.5mmの円筒型(材質:ステンレス)に改造し、塗布面をマンドレル部と反対側にして90°/15秒で折り曲げ破断角度測定をした。
【0032】
ボールペン塗膜剥がれ試験
実施例、比較例で得た修正液をぺんてるペン修正液XZL61−W容器に充填し、上質紙に厚さ50〜100μmの塗膜を作製した。そこにぺんてる水性ゲルインキボールペンスリッチBG202−A(ボール径0.25mm)、BG203−A(ボール径0.3mm)、BG204−A(ボール径0.4mm)で筆記荷重300gにて2mm間隔で縦6本、横6本の線を引き、100平方ミリメートル中の塗膜剥がれを起こした面積を測定した。。
【0033】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンと、炭化水素系溶剤と、該溶剤に可溶な樹脂とより少なくともなり、基材となる試験紙面上に、厚さ30μm以上50μm以下の乾燥塗膜を形成して検体とし、直径0.5mmの円柱に沿って180°まで折り曲げるとき、塗膜表面に割れの発生する角度が90°以上である修正液。

【公開番号】特開2009−144050(P2009−144050A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322652(P2007−322652)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】