説明

修飾イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ

【課題】 修飾イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼを提供すること。
【解決手段】 本発明は、修飾IMPDHポリペプチドに関する。このIMPDHポリペプチドは、ヒスチジンタグを有し、かつIMPDHポリペプチドのサブドメインは、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型IMPDHポリペプチドと対比して保持されるように修飾されている。本発明はまた、そのようなヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを産生するための方法、核酸分子、ベクター、および宿主細胞、ならびにヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼに関する。より特定的には、本発明は、野生型イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼと対比して安定化された活性を有するヒスチジンタグ付き修飾イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
イノシン-5'-一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH; EC 1.1.1.205)は、プリンのde novo合成における主要な酵素である。IMPDHは、イノシン-5'-一リン酸(IMP)からキサントシン-5'-一リン酸(XMP)へのNAD依存性酸化を触媒し、NADHおよびXMPを産生させる。IMPDHにより触媒されるIMPからXMPへの酸化は、グアニンヌクレオチド合成の律速段階である。
【0003】
IMPDHは、ホモテトラマーとして存在する(すなわち、この酵素は、4つのサブユニットを有し、各サブユニットがIMPDHポリペプチドを含む)。多くの種において、IMPDHの2種のアイソフォームが報告されている。これらは、I型およびII型IMPDHと呼ばれる。ヒトI型およびII型IMPDHが同定され配列決定されている。ヒトIMPDHのI型およびII型は、いずれも、514アミノ酸の長さであり、それらは84%の配列同一性を共有する。ヒトI型IMPDHのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、Natsumeda, Y., et al., J. Biol. Chem. 265:5292-5295 (1990)に開示されており、ヒトII型IMPDHのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、Natsumeda, Y., et al., J. Biol. Chem. 265:5292-5295 (1990)、Collart, F.R. and Hubermann, E., J. Biol. Chem. 263:15769-15772 (1988)、および米国特許第5,665,583号に開示されている。IMPDHホモテトラマーを構成するヒトIMPDHのI型およびII型のサブユニットは、それぞれ、56kDaのサブユニット分子量を有する。ヒトII型IMPDHは、触媒コアドメイン(アミノ酸1〜109および245〜514)と、機能が未知であるサブドメイン(アミノ酸110〜244)とを有する。
【0004】
IMPDHは、抗腫瘍(たとえば、抗白血病)療法および免疫抑制化学療法の標的である。IMPDHは、新生物細胞および分化中の細胞でアップレギュレートされる。さらに、増殖中のBおよびTリンパ球では、グアニンヌクレオチド合成はサルベージ経路ではなくde novo経路に依存し、グアニンヌクレオチド合成が阻害されるとDNA合成が阻害される。したがって、IMPDHは、BおよびT細胞増殖に重要な酵素であり、IMPDH活性が阻害されるとBおよびT細胞増殖の両方が阻害されるので、IMPDHは免疫抑制化学療法の重要な標的となる。
【0005】
ミコフェノール酸(MPA)は、ヒトI型およびII型IMPDHの非競合阻害剤であり、MPAは、NADHの放出後かつXMPの産生前にIMPDHに結合する。MPAは、エステルプロドラッグミコフェノール酸モフェチル(CellCept; MMF)のin vivo活性代謝物である。MMFは、BおよびT細胞増殖を阻止する免疫抑制剤であり、MMFは、腎臓および心臓移植拒絶反応の治療に用いることが承認されている。MMFはまた、癌およびウイルス感染症を治療するために臨床的に使用され、抗血管過増殖剤、抗乾癬剤、抗菌剤、抗真菌剤として使用され、さらに自己免疫性疾患の治療に使用されてきた。
【0006】
MMFは、in vivoでMPAに加水分解されるので、in vivoにおけるMPAレベルのモニタリングによりMMF投与量のモニタリングが可能である。MPAレベルのモニタリングにより、治療効力が改善され(たとえば、適切な免疫抑制に必要な最適MMFレベルを決定することができる)、薬剤の有害な副作用が最小限に抑えられるので、MMFで治療された患者のMPAレベルの測定は、臨床上重要である。MMFで治療された患者のMPAレベルを測定するアッセイにおいて、たとえば、米国特許第6,107,052号および同第6,524,808号に記載されているアッセイにおいて、単離された組換えIMPDHが使用されてきた。
【0007】
大量の安定な組換えIMPDH(たとえば、凝集が最小限に抑えられたIMPDH)を産生および単離する能力は、MMFで治療された患者のMPAレベルをモニターするアッセイに使用するうえでまたは任意の他の治療上有用なIMPDH阻害剤の患者サンプル中レベルをモニターするアッセイに使用するうえで重要である。IMPDHの他の阻害剤は、Anderson, J. H. et al., J. Biol. Chem. 243:4762-4768 (1968)、ならびに米国特許第5,380,879号、同第5,444,072号、および同第5,807,876号、ならびにPCT公開WO 94/01105およびWO 94/12184に記載されている。
【0008】
また、大量の安定な組換えIMPDHを産生および単離する能力は、癌療法および免疫抑制療法に有用な新しいIMPDH阻害剤の同定およびデザインならびにそれらの阻害剤に対するIMPDHの感受性の決定のような他の臨床用途および研究用途にも重要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、修飾組換えIMPDHポリペプチド、およびこの修飾組換えIMPDHポリペプチドをコードする単離された修飾核酸分子に関する。本発明はまた、そのような修飾組換えIMPDHポリペプチドを産生するための方法、ベクター、および宿主細胞、ならびに修飾IMPDHポリペプチドを含むキットに関する。ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーにより精製するためのヒスチジンタグを含有するように、組換えIMPDHポリペプチドを修飾し、さらに、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型IMPDHポリペプチドと対比して保持されるように、ポリペプチドのサブドメイン領域で修飾する。
【0010】
一実施形態では、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、配列番号14、16、18、20、または22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、配列番号12で示される位置116〜250のアミノ酸の1つ以上を、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドにおいて、負に荷電したアミノ酸で置換する。さらに他の実施形態では、配列番号12で示される位置130、132、134、140、142、143、155、159、167、173、177、187、188、201、209、211、212、214、230、234、235、237、244、247、または248の正に荷電したアミノ酸の1つ以上を、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドにおいて、負に荷電したアミノ酸で置換する。他の実施形態では、配列番号12で示される位置130、132、134、140、142、155、159、167、または173の正に荷電したアミノ酸の1つ以上を、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドにおいて、負に荷電したアミノ酸で置換する。
【0011】
ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする単離された核酸分子もまた、提供される。したがって、本明細書に提供される単離された核酸分子は、修飾IMPDHポリペプチドがヒスチジンタグを有し、かつ野生型IMPDHポリペプチドと対比してヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が保持されるようにIMPDHポリペプチドのサブドメインが修飾されている修飾I型またはII型IMPDHポリペプチドをコードする。一実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、およびそれらの相補的配列よりなる群から選択される配列を含みうる。他の実施形態では、単離された核酸分子の相補的配列がストリンジェントな条件下で配列番号13、15、17、19、または21で示されるヌクレオチド配列のいずれか1つにハイブリダイズする単離された核酸分子が提供される。
【0012】
さらに他の実施形態では、単離された核酸分子の相補的配列がストリンジェントな条件下で配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21よりなる群から選択される配列のヌクレオチド346〜750にハイブリダイズする単離された核酸分子が提供される。さらに他の実施形態では、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21よりなる群から選択される配列のヌクレオチド346〜750を含む単離された核酸分子が提供される。他の実施形態では、コードされたIMPDHポリペプチドが配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、および配列番号22よりなる群から選択されるアミノ配列を含む単離された核酸分子が提供される。さらに他の実施形態では、E. coli H712から取得可能でありかつそれぞれATCC受託番号PTA-5786、PTA-5782、PTA-5784、PTA-5785、およびPTA-5783を有する配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、または配列番号21の単離された核酸分子を含むベクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、野生型IMPDHポリペプチドの触媒コア領域およびサブドメイン領域を示す野生型IMPDHポリペプチドの概略図である。本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチド中で行われるアミノ酸置換の位置については、図9AおよびB、11AおよびB、13AおよびB、15AおよびB、ならびに17AおよびBを参照されたい。
【図2】図2は、プラスミドpKKll7の地図を示している。T5プロモーターおよびlacオペロン(PT5)は、pKKll7中のヌクレオチド30〜90に位置する。ヒトIMPDH IIコード配列(1545塩基対)は、プラスミド中のヌクレオチド141〜1685に位置する。これは、MunIおよびHindIIIの部位に挿入された。サブドメイン領域は、「エクストラドメイン」と記されている。転写終結領域(rrnBT1/T2)は、ヌクレオチド1842〜2268に位置する。アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)は、ヌクレオチド2359〜3219に位置する。複製起点(ColE1)は、pKKll7中のヌクレオチド3924〜4024に位置する。ヒスチジンタグ(6ヒスチジン)のコード配列は、pKKll7中のヌクレオチド144でATG開始コドンの後のヒト野生型IMPDH II型コード配列の5'末端に挿入された。
【図3】図3は、ヒト野生型IMPDH II型コード配列の5'末端にヒスチジンタグのコード配列を組み込むために使用したPCRプライマー((+)および(-))のヌクレオチド配列を示している(配列番号1および配列番号2)。図3はまた、アミノ酸130〜142(配列番号3および配列番号4)、155〜159(配列番号5および配列番号6)、ならびに167〜173(配列番号7および配列番号8)に対応するコード配列の領域でヒスチジンタグ付きヒト野生型IMPDH II型配列を部位限定突然変異誘発により突然変異させるために使用したPCRプライマー((+)および(-))のヌクレオチド配列をも示している。
【図4】図4は、ヒト野生型IMPDH II型のヌクレオチド配列を示している(配列番号9)。
【図5A】図5Aは、ヒト野生型IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号10)。サブドメインには下線が付されている。
【図5B】図5Bは、ヒト野生型IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号10)。サブドメインには下線が付されている。
【図6】図6は、コード配列の5'末端に組み込まれたヒスチジンタグのコード配列を有するヒト野生型IMPDH II型のヌクレオチド配列を示している(配列番号11)。
【図7A】図7Aは、ポリペプチドのアミノ末端に組み込まれたヒスチジンタグを有するヒト野生型IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号12)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸は、イタリック文字で記されている。
【図7B】図7Bは、ポリペプチドのアミノ末端に組み込まれたヒスチジンタグを有するヒト野生型IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号12)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸は、イタリック文字で記されている。
【図8】図8は、ヒトIMPDH II型Δ2B+AHクローンAのヌクレオチド配列を示している(配列番号13)。
【図9A】図9Aは、ヒトIMPDH II型Δ2B+AHクローンAの推定アミノ酸配列を示している(配列番号14)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図9B】図9Bは、ヒトIMPDH II型Δ2B+AHクローンAの推定アミノ酸配列を示している(配列番号14)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図10】図10は、ヒトIMPDH II型(Δ3+1A)+AHクローンAのヌクレオチド配列を示している(配列番号15)。
【図11A】図11Aは、ヒトIMPDH II型(Δ3+1A)+AHクローンAの推定アミノ酸配列を示している(配列番号16)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図11B】図11Bは、ヒトIMPDH II型(Δ3+1A)+AHクローンAの推定アミノ酸配列を示している(配列番号16)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図12】図12は、ヒトIMPDH II型Δ1,2A+AHクローンBのヌクレオチド配列を示している(配列番号17)。
【図13A】図13Aは、ヒトΔ1,2A+AHクローンB IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号18)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図13B】図13Bは、ヒトΔ1,2A+AHクローンB IMPDH II型の推定アミノ酸配列を示している(配列番号18)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図14】図14は、ヒトIMPDH II型Δ3B+AHクローンBのヌクレオチド配列を示している(配列番号19)。
【図15A】図15Aは、ヒトIMPDH II型Δ3B+AHクローンBの推定アミノ酸配列を示している(配列番号20)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図15B】図15Bは、ヒトIMPDH II型Δ3B+AHクローンBの推定アミノ酸配列を示している(配列番号20)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図16】図16は、ヒトIMPDH II型(Δ2+1A)+AHクローンBのヌクレオチド配列を示している(配列番号21)。
【図17A】図17Aは、ヒトIMPDH II型(Δ2+1A)+AHクローンBの推定アミノ酸配列を示している(配列番号22)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図17B】図17Bは、ヒトIMPDH II型(Δ2+1A)+AHクローンBの推定アミノ酸配列を示している(配列番号22)。サブドメインには下線が付されている。また、ヒスチジンタグをコードするアミノ酸およびサブドメイン中のアミノ酸置換は、イタリック文字で記されている。
【図18】図18は、ヒト野生型IMPDH II型の速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図19】図19は、ヒスチジンタグ付きヒトIMPDH II型の速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。ヒスチジンタグ付きIMPDH活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図20】図20は、IMPDH II型Δ2B+AHクローンAの速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH II型Δ2B+AHクローンA活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図21】図21は、ヒトIMPDH II型(Δ3+1A)+AHクローンAの速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH II型(Δ3+1A)+AHクローンA活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図22】図22は、ヒトIMPDH II型Δ1,2A+AHクローンBの速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH II型Δ1,2A+AHクローンB活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図23】図23は、ヒトIMPDH II型Δ3B+AHクローンBの速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH II型Δ3B+AHクローンB活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【図24】図24は、ヒトIMPDH II型(Δ2+1A)+AHクローンBの速度安定性データ(すなわち、残存IMPDH活性%/時間)を初期速度に対するパーセント(x軸)vs試験した日数(y軸)として示している。IMPDH II型(Δ2+1A)+AHクローンB活性は、緩衝系R1 C(1)(黒三角、□)またはR1 F(+、Ж)を用いて試験し、また4℃(黒三角、+)および25℃(□、Ж)で試験した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒスチジンタグ付き修飾組換えIMPDHポリペプチド、およびこのIMPDHポリペプチドをコードする単離された修飾核酸分子に関する。本発明はまた、そのようなヒスチジンタグ付き修飾組換えIMPDHポリペプチドを産生するための方法、ベクター、および宿主細胞、ならびに修飾IMPDHポリペプチドを含むキットに関する。ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーにより精製するためのヒスチジンタグを含有するように、組換えIMPDHポリペプチドを修飾し、さらに、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型IMPDHポリペプチドと対比して保持されるように、ポリペプチドのサブドメイン領域で修飾する(図1参照)。
【0015】
野生型IMPDH酵素の精製は、結果として、低い収率および低い純度をもたらす。したがって、多くの場合、精製時間を短縮し、収率および純度を増大させるために、6ヒスチジンタグのようなアフィニティータグが野生型IMPDHに組み込まれる。そのようなアフィニティータグを付加すると、溶液中におけるIMPDHの溶解性および安定性が低下する可能性がある。したがって、ポリペプチドのサブドメイン領域でアミノ酸置換をコードするように、ヒスチジンタグ付きヒトIMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を本明細書に記載の部位限定突然変異誘発により修飾した。このアミノ酸置換を行うと、野生型IMPDHポリペプチドと対比してヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が維持される(図18〜24参照)。
【0016】
野生型IMPDHポリペプチドと対比してヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が維持されるとは、4℃におけるヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型IMPDHポリペプチドの速度安定性の少なくとも約80%、野生型IMPDHポリペプチドの速度安定性の少なくとも約85%、野生型IMPDHポリペプチドの速度安定性の少なくとも約95%、または野生型IMPDHポリペプチドの速度安定性の少なくとも約98%であることを意味する。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「修飾IMPDHポリペプチド」という用語は、通常はサブドメイン中に存在する少なくとも1つのアミノ酸を通常は存在しないアミノ酸で置換することにより修飾された野生型IMPDHポリペプチドのIMPDHサブドメイン(すなわち、内部非触媒サブドメイン)を有するIMPDHポリペプチドを意味する。「修飾IMPDHポリペプチド」は、触媒機能を有し、多量体(たとえば、ホモテトラマー)を形成することが可能であり、これもまた、本発明に係る「修飾IMPDHポリペプチド」である。本明細書に記載の「修飾IMPDHポリペプチド」は、典型的には、組み換えられたものであるが、合成されたものであってもよい。
【0018】
本明細書中で使用する場合、「相補的配列」という用語は、プリンおよびピリミジンのヌクレオチドの配列が水素結合により会合して二本鎖核酸分子を形成する能力を意味する。グアニンとシトシン、アデニンとチミン、およびアデニンとウラシルは、相補的であり、2つの核酸分子が「相補的」配列を有する場合、水素結合により会合して二本鎖核酸分子を形成することができる。相補的配列は、DNA配列であってもRNA配列であってもよい。
【0019】
本明細書中で使用する場合、「単離された」核酸分子とは、異なるポリペプチドをコードする他の汚染物質の核酸分子から実質的に分離された核酸分子である。
【0020】
アミノ酸の一文字コードは次のとおりである:A=アラニン、R=アルギニン、N=アスパラギン、D=アスパラギン酸、C=システイン、Q=グルタミン、E=グルタミン酸、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、L=ロイシン、K=リシン、M=メチオニン、F=フェニルアラニン、P=プロリン、S=セリン、T=トレオニン、W=トリプトファン、Y=チロシン、およびV=バリン。
【0021】
I型およびII型IMPDHポリペプチドは、N末端触媒ドメイン、内部非触媒サブドメイン、およびC末端触媒ドメインを含む(図1参照)。本明細書に記載されているように、さまざまな種に由来するI型またはII型IMPDHポリペプチドにヒスチジンタグを付け、ポリペプチドのサブドメイン領域で修飾することにより、安定化されたヒスチジンタグ付き組換えIMPDHポリペプチドを高い収率および純度で産生および単離することができる。ヒスチジンタグは、ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーによるタンパク質の精製に有用である任意の長さをとりうる。
【0022】
ヒスチジンタグを含有しかつIMPDHサブドメインで修飾された本明細書に提供されるI型またはII型IMPDHポリペプチドは、得られる発現IMPDHポリペプチドまたはその断片が本明細書に例示されたヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドと同一のIMPDH活性を実質的に保持するかぎり、他のポリペプチドによるさらなる置換、欠失、末端切断、もしくは融合、またはそれらの組合せを行うことができる。これらの置換、欠失、末端切断、もしくは融合が行われたポリペプチドは、例示された修飾IMPDHポリペプチドの等価物であるとみなされ、本発明の範囲内にある。
【0023】
「さらなる置換」とは、1つ以上のアミノ酸置換により等価物が本明細書に記載のIMPDHポリペプチドと異なることを意味し、さらなる置換は、保存的であっても非保存的であってもよく、さらなる置換は、アミノ酸類似体による置換であってもよい。特定の原核または真核宿主細胞における修飾IMPDHポリペプチドの産生レベルを最適化するように、さらなる置換を行うこともできる(すなわち、コドン選択変異体)。さらなる置換は、サブドメインまたはIMPDHポリペプチドの任意の他の部分(たとえば、N末端触媒ドメインもしくはC末端触媒ドメイン)のいずれにおいても行うことができる。
【0024】
一実施形態では、修飾I型またはII IMPDHポリペプチドが提供される。修飾IMPDHポリペプチドは、ヒスチジンタグを有し、かつIMPDHポリペプチドのサブドメインは、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型IMPDHポリペプチドと対比して保持されるように修飾されている。他の実施形態では、修飾IMPDHポリペプチドは、配列番号14、16、18、20、または22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有する。配列番号14で示される実施形態では、位置155および159の各アルギニン(配列番号12参照)が、グルタミン酸(配列番号14の位置155および159)で置換されている。配列番号16で示される実施形態では、位置167のアルギニン、位置173のリシン、および位置390のバリン(配列番号12参照)が、それぞれ、グルタミン酸、グルタミン酸、およびアスパラギン酸(配列番号16の位置167、173、および390)で置換されている。配列番号18で示される実施形態では、位置140のリシンおよび位置142のアルギニン(配列番号12参照)が、グルタミン酸(配列番号18の位置140および142)で置換されている。配列番号20で示される実施形態では、位置167のアルギニンおよび位置173のリシン(配列番号12参照)が、グルタミン酸(配列番号20の位置167および173)で置換されている。配列番号22で示される実施形態では、位置130のリシン、位置132のアルギニン、位置134のアルギニン、位置140のリシン、位置142のアルギニン、位置155のアルギニン、および位置159のアルギニン(配列番号12参照)が、それぞれ、グルタミン酸(配列番号22の位置130、132、134、140、142、155、および159)で置換されている。
【0025】
さらに他の実施形態では、配列番号12で示される位置116〜250のアミノ酸の1つ以上が、修飾IMPDHポリペプチドにおいて、アスパラギン酸またはグルタミン酸のような負に荷電したアミノ酸で置換されている。さらに他の実施形態では、配列番号12で示される位置130、132、134、140、142、143、155、159、167、173、177、187、188、201、209、211、212、214、230、234、235、237、244、247、または248の正に荷電したアミノ酸の1つ以上が、修飾IMPDHポリペプチドにおいて、負に荷電したアミノ酸で置換されている。他の実施形態では、配列番号12で示される位置130、132、134、140、142、155、159、167、または173の正に荷電したアミノ酸の1つ以上が、修飾IMPDHポリペプチドにおいて、負に荷電したアミノ酸で置換されている。
【0026】
核酸分子のIMPDHサブドメインコード領域で修飾することができ、かつ本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを産生するために使用することができるI型またはII型IMPDHをコードする核酸分子の例としては、ヒト起源もしくは他の哺乳動物起源または細菌、真菌、酵母、もしくは植物起源のIMPDHコード核酸が挙げられる。また、野生型IMPDHポリペプチドと対比してヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が保持されるようにサブドメイン領域で修飾されたヒスチジンタグ付きI型またはII型IMPDHポリペプチドを産生するために、真核生物または原核生物起源の任意の他のI型またはII型IMPDHコード核酸分子を使用することもできる。
【0027】
一実施形態では、たとえば、細菌、真菌、または酵母のようなとくに高いIMPDH活性を呈する単離された微生物から得られる核酸分子を使用することができる。他の実施形態では、発現されるIMPDH核酸分子は、異種核酸分子であってよく、さらに他の実施形態では、発現されるIMPDH核酸分子は、同種核酸分子であってよい。異種核酸分子とは、本明細書中では、核酸分子の発現に使用される種とは異なる種に由来する核酸分子として定義される。同種核酸分子とは、本明細書中では、核分子の発現に使用されるものと同一の種に由来する核酸分子として定義される。
【0028】
使用することのできるIMPDHの代表的な核酸配列またはアミノ酸配列は、Natsumeda et al., J. Biol. Chem. 265:5292-5295 (1990)、Collart, F. R. and Hubermann, E., J. Biol. Chem. 263:15769-15772 (1988)、米国特許第5,665,583号、Gu et al., J. Biol. Chem. 272:4458-4466 (1997)、Dayton et al., J. Immunol. 152:984 (1994)、Zimmermann et al., J. Biol. Chem. 270:6808-6814 (1995)、およびGlesne et al., Biochem. And Biophys. Res. Comm. 537-544 (1994)に記載されている。
【0029】
ヒスチジンタグのコード配列を含有するように修飾され、かつ核酸分子のIMPDHサブドメインコード領域で修飾されたI型またはII型IMPDHコード核酸分子に、他の核酸分子によるさらなる置換、欠失、末端切断、および/または融合を行って、得られる発現IMPDHポリペプチドまたはその断片が、本明細書に例示されたヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドと同一のIMPDH活性を実質的に保持する場合、例示されたヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの等価物であるとみなされ、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
このほかに本発明の範囲に含まれるのは、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子に相補的な核酸分子およびこの相補的な核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子である。典型的なストリンジェントな条件としては、たとえば、5×SSPEおよび50%ホルムアミド中における50℃〜65℃でのハイブリダイゼーションならびに0.5×SSPE中における50℃〜65℃での洗浄、または0.1% SDSおよび1×SSC中における65℃でのハイブリダイゼーションが挙げられる。他のストリンジェントな条件は、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。この文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子は、DNAであってもRNAであってもよく、組み換えられたものであっても合成されたものであってもよい。一実施形態では、核酸分子は、放射性同位体、蛍光性化合物、生物発光性化合物、化学発光性化合物、金属キレート化剤、または酵素のような検出可能なマーカーで標識化され、プローブとして使用される。
【0031】
他の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子は、一本鎖DNAまたはRNAに特異的に結合するペプチド核酸(PNA)またはホスホロチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、およびメチルホスホネートのような誘導体を包含する(Goodchild, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:4143-4146 (1986))。
【0032】
さらに他の実施形態では、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子は、単離されている。当技術分野で公知の方法を用いることにより、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を単離することができる。そのような方法は、以下に、より詳細に記載されている。また、核酸分子を単離する他の方法は、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)に記載されている。
【0033】
たとえば、野生型IMPDHタンパク質をコードするcDNAクローンを単離することにより、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を生成させることができる。その後、IMPDHサブドメイン中でアミノ酸置換をコードするように、かつヒスチジンタグのコード配列を、たとえば、IMPDHコード配列の5'末端に組み込むように、組換えDNA技術を用いてcDNA配列を改変することができる。cDNA配列の改変は、たとえば、部位限定突然変異誘発PCRを用いてIMPDHサブドメイン中でアミノ酸置換をコードするようにcDNA配列を改変することにより、またはPCRを用いてIMPDHコード配列の5'末端にヒスチジンタグのコード配列を挿入することにより、達成することができる(参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第4,603,102号を参照されたい)。
【0034】
類似の方法を用いて、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を単離した。配列番号1および2の配列を有するPCRプライマー(図3参照)を用いて、プラスミドpKKll7(図2参照)中の野生型ヒトII型IMPDHコード配列の5'末端にヒスチジンタグのコード配列を挿入した。配列番号3〜8の配列を有するPCRプライマー(図3参照)を用いて、5'末端にヒスチジンタグのコード配列を有するpKKll7中のヒトII型IMPDH配列を改変することにより、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子(すなわち、IMPDHサブドメイン中にアミノ酸置換を有する核酸分子)を産生させた。
【0035】
得られた核酸分子およびヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、Δ2B+AHクローンA、(Δ3+1A)+AHクローンA、Δ1,2A+AHクローンB、Δ3B+AHクローンB、および(Δ2+1A)+AHクローンBと記されている。これらのクローンは、それぞれ、配列番号13、15、17、19、および21で示されるヌクレオチド配列(図8、10、12、14、および16)、ならびにそれぞれ、配列番号14、16、18、20、および22で示される推定アミノ酸配列(図9AおよびB、11AおよびB、13AおよびB、15AおよびB、ならびに17AおよびB参照)を有する。ヒト野生型IMPDH II型コード配列は、配列番号9の配列(図4)および配列番号10の推定アミノ酸配列(図5AおよびB)を有する。分子の5'末端に組み込まれたヒスチジンタグのコード配列を有するヒト野生型IMPDH II型のコード配列は、配列番号11のヌクレオチド配列(図6)および配列番号12の推定アミノ酸配列(図7 AおよびB)を有する。
【0036】
ヒスチジンタグ付き野生型IMPDHコード核酸分子およびヒスチジンタグ付き修飾IMPDHコード核酸分子はすべて、American Type Culture Collection, 10801 University Blvd., Manassas, Va.に寄託されている。これらの各核酸分子をpKKll7中に挿入し、インサートを有するベクターをE. coli H712中にトランスフォームした。分子の5'末端に組み込まれたヒスチジンタグのコード配列を有するヒト野生型IMPDH II型DNAを含有するクローン、ならびにΔ2B+AHクローンA、(Δ3+1A)+AHクローンA、Δ1,2A+AHクローンB、Δ3B+AHクローンB、および(Δ2+1A)+AHクローンBと記されたクローンは、それぞれ、ATCC受託番号PTA-5787、PTA-5786、PTA-5782、PTA-5784、PTA-5785、およびPTA-5783を有する。
【0037】
したがって、単離された核酸分子が提供される。単離された核酸分子は、IMPDHポリペプチドがヒスチジンタグを有し、かつ野生型IMPDHポリペプチドと対比してヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が保持されるようにIMPDHポリペプチドのサブドメインが修飾されている修飾I型またはII型IMPDHポリペプチドをコードする。一実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、およびそれらの相補的配列よりなる群から選択される配列を含みうる。他の実施形態では、単離された核酸分子の相補的配列がストリンジェントな条件下で配列番号13、15、17、19、または21で示されるヌクレオチド配列のいずれか1つにハイブリダイズする単離された核酸分子が提供される。
【0038】
さらに他の実施形態では、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21よりなる群から選択される配列のヌクレオチド346〜750を含む単離された核酸分子が提供される。他の実施形態では、コードされたIMPDHポリペプチドが配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、および配列番号22よりなる群から選択されるアミノ配列を含む単離された核酸分子が提供される。さらに他の実施形態では、E. coli H712から取得可能でありかつそれぞれATCC受託番号PTA-5786、PTA-5782、PTA-5784、PTA-5785、およびPTA-5783を有する配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、または配列番号21の単離された核酸分子を含むベクターが提供される。
【0039】
本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを発現するために、当業者に公知の任意の原核または真核宿主細胞ベクター系を使用することができる。たとえば、ベクターが自律的に複製されるかまたは宿主ゲノム中に一体化される系を使用することができる。ベクターという用語には、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、および修飾ウイルスベクターが包含されるが、これらに限定されるものではない。原核生物発現ベクターの具体例は、BLUESCRIPT(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke, et al., J. Biol. Chem. 264:5503-5509 (1989)、参照により本明細書に組み入れられるものとする)、E. coli中で発現させるためのpET24a(Novagen, Inc., Madison, Wisconsin)、および本明細書に記載のpKKll7である。真核生物発現ベクターの具体例は、真核細胞中で発現させるためのアデノウイルス発現ベクター(Logan, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655-59 (1984)、参照により本明細書に組み入れられるものとする)である。
【0040】
一実施形態では、ベクターは、核酸分子を挿入するための制限エンドヌクレアーゼ切断部位および宿主細胞形質転換体を選択するための遺伝子マーカー(たとえば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、またはネオマイシンに対する耐性マーカー)を有する。発現ベクターでは、特定の宿主細胞ベクター系でIMPDHポリペプチドの発現を指令することのできるプロモーターにIMPDHコード核酸分子を機能しうる形で結合することができる。代表的な原核生物プロモーターとしては、構成プロモーター(たとえば、3-ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターまたはα因子プロモーター)および誘導プロモーター(たとえば、ADH2、GAL-1-10、GAL 7、PHO5、T7、T5、またはメタロチオニンプロモーター)が挙げられる。また、転写を調節するために、プロモーター-オペレーターの組合せを使用することができる。
【0041】
代表的な真核生物プロモーターとしては、CMVプロモーター、ASVプロモーター、RSV-LTRプロモーター、MMTV-LTRプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、他のウイルスプロモーター、解糖酵素を合成するためのプロモーター、ならびにhMTIIプロモーターが挙げられる。他の実施形態では、リボソーム結合部位配列もまた存在する。他のプロモーター系は、Chang et al., Nature 198:1056 (1977), Goeddel, et al., Nucleic Acids Res. 8:4057 (1980)およびShimatake, et al., Nature 292:128 (1981)に記載されている。これらの各文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0042】
他の一般に使用される調節配列をベクターに組み込むことができる。たとえば、一実施形態では、IMPDHコード核酸は、転写終結のためのターミネーター配列(たとえば、rrnBT1/T2またはHSP150ターミネーター)を有する。他の実施形態では、IMPDHコード核酸分子は、転写エンハンサーエレメントによりインフレームでスプライシングされる。DNAの産生を容易にすべく細菌中でベクターを複製できるように、かつメッセンジャーRNAを安定化させる配列を組み込むことができるように、ベクターに細菌複製起点(たとえば、ColE1)を組み込むこともできる。
【0043】
原核宿主細胞は、グラム陰性またはグラム陽性の細菌における発現を含む。真核宿主細胞の例としては、初代細胞であるか不死化細胞であるかにかかわらず任意の哺乳動物細胞(たとえば、COS、CHO、NIH/3T3、HeLa、Daudi、293、293-EBNA、およびVERO細胞)、S.cerevisiae、S.pombe、およびP.pastorisのような酵母細胞、ならびにSf9細胞のような昆虫細胞(Smith et al., J. Virol. 46:584 (1983)、Engelhard, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 91:3224-7 (1994)、および米国特許第4,215,051号、いずれも、参照により本明細書に組み入れられるものとする)、さらには真菌細胞(たとえば、トリコデルマ属)が挙げられる。タンパク質の適正な翻訳後修飾が保証されるように真核宿主細胞を選択することができる。種々の宿主細胞-ベクター系が、米国特許第6,451,572号およびPCT公開WO 01/36607 A1号に記載されている。いずれも、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0044】
他の実施形態では、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを発現するための宿主細胞-ベクター系は、本明細書に記載のpKKll7ベクター-E. coli H712系である。図2は、プラスミドpKKll7の地図を示している。pKKll7は、T5プロモーターおよびlacオペロン(PT5)を含有し、これらの調節配列は、pKKll7中のヌクレオチド30〜90に位置する。ヒトIMPDH IIコード配列(配列番号9; 1545塩基対)は、プラスミド中のヌクレオチド141〜1685に挿入された。転写終結領域(rrnBT1/T2)は、ヌクレオチド1842〜2268に位置し、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)は、ヌクレオチド2359〜3219に位置する。細菌中でpKKll7を複製するための複製起点(ColE1)は、ヌクレオチド3924〜4024に位置する。ヒスチジンタグのコード配列(配列番号1; 6ヒスチジン)は、pKKll7中のヌクレオチド144でATG開始コドンの後のヒト野生型IMPDH II型コード配列の5'末端に挿入された。本明細書に記載の実施例では、ヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチドのコード配列を含有するpKKll7で、PCRを用いる部位限定突然変異誘発を行った(PCRプライマーの配列については配列番号3〜8を参照されたい)。
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載の核酸分子を含む宿主細胞が提供される。宿主細胞は、細菌、酵母、哺乳動物細胞、真菌細胞、および昆虫細胞よりなる群から選択することができる。宿主細胞は、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする本明細書に記載の核酸分子またはその断片を含むベクター、プラスミド、ファージミド、またはコスミドを含む。他の実施形態では、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする本明細書に記載の核酸分子のいずれかまたはその断片を含むベクターが提供される。
【0046】
当業者に公知の任意のトランスフォーメーションまたはトランスフェクションの手順を用いて、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクター構築物を宿主細胞にトランスフォームまたはトランスフェクトすることができる。そのような手順としては、エレクトロポレーション、プロトプラストトランスフォーメーション、マイクロインジェクション、ウイルス媒介トランスフェクション、CaPO4媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、およびCaCl2ショックが挙げられる。宿主細胞-ベクター系の説明を含めて当技術分野で公知の他のトランスフォーメーションおよびトランスフェクションの手順ならびに他のクローニング方法については、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。トランスフォームまたはトランスフェクトされた原核細胞または真核細胞の増殖条件は、当技術分野で公知である。
【0047】
ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を有する宿主細胞は、当技術分野で周知の方法により同定することができる。たとえば、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を有する細菌宿主細胞は、単一のコロニーを産生するようにクローン化することができる。単一のコロニーを培養し、そしてたとえば、音波処理、熱、またはリゾチームや界面活性剤などによる化学的処理により培養物中の細菌宿主細胞を溶解させてDNAを放出させ、そしてホモジネートを遠心分離して細胞デブリを除去することができる。以下に、より詳細に記載されている方法を用いて、または当技術分野で公知の任意の他の方法を用いて、DNAを単離することができる。制限酵素分析または配列決定のような当技術分野で公知の方法により、単離されたDNAを分析し、DNAが所望のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードするインサートを含有するかを決定することができる。その後、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードするDNAを含有する細菌を培養し、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを発現させることができる。
【0048】
ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを発現するために、以下に、より詳細に記載されているように、発現に好適な条件下で宿主細胞を培養する。その後、たとえば、音波処理、熱、またはリゾチームや界面活性剤などによる化学的処理により培養細胞を溶解させて、発現されたポリペプチドを放出させ、そしてホモジネートを遠心分離して細胞デブリを除去する。ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの発現は、当技術分野で公知の方法により検出することができる。たとえば、SDS-PAGEゲルのクーマシー染色、IMPDHに結合する抗体を用いるイムノブロッティング、またはIMPDH活性のアッセイにより、修飾IMPDHポリペプチドを検出することができる。
【0049】
ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドおよびヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチドは、以下に記載されているようなニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーを単独で用いてまたは他の従来の精製方法と併用して、精製することができる。そのような精製方法としては、硫安沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-Sepharoseカラムクロマトグラフィー、IMPや抗IMPDH抗体などを用いるアフィニティクロマトグラフィー、溶媒-溶媒抽出、限外濾過、およびHPLCが挙げられる。ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーに続いて、エンテロキナーゼ切断のような当技術分野で公知の酵素をベースとした方法により、ヒスチジンタグを除去することができ、そして上記の従来技術のいずれかを用いて、修飾IMPDHポリペプチドを放出されたタグから精製することができる。例示的な実施形態では、精製とは、少なくとも約60%の純度、少なくとも約70〜80%の純度、少なくとも約90%の純度、または少なくとも約95%の純度を意味する。使用することのできるこのほかの精製方法については、R. Scopes, "Protein Purification, Principles and Practice," Third Edition, Springer-Verlag (1994)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい。当然のことながら、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドまたはヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチドを精製するための先に記載した精製方法は限定されるものではなく、当業者に公知の任意の精製方法を用いてヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドまたはヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチドを精製することができる。必要ならば、たとえば、限外濾過および接線流動濾過のような方法により、IMPDHポリペプチドを濃縮させることができる。
【0050】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを産生する方法が提供される。本方法は、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子でトランスフォームされた宿主細胞を培養するステップを含む。トランスフォームされた宿主細胞は、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを産生するのに好適な条件下で培養される。本方法は、上述したように、トランスフォームされた宿主細胞中で発現されたヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを回収するステップをさらに含む。この方法により産生されるヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドもまた提供される。
【0051】
野生型IMPDHポリペプチド、ヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチド、およびヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの活性は、本明細書に記載のin vitro法を用いて、またはCarr, et al., J. Biol. Chem. 268:27286-27290 (1993)およびXiang, et al., J. Biol. Chem. 271:1435-1440 (1996)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている方法のような当技術分野で公知の方法により、アッセイすることができる。たとえば、野生型IMPDHポリペプチド、ヒスチジンタグ付き野生型IMPDHポリペプチド、またはヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの活性は、分光光度測定により340nmで測定することができる。そのようなアッセイでは、単位時間あたりの340nmにおけるNADHの吸光度の変化を測定し、NADHの吸光度の変化をIMPDHによるNADHの生成速度に対応させる。他の実施形態では、HPLCおよび分光光度アッセイ(Montero, C. et al., Clinica Chemica Acta 238:169-178 (1995)(参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい)を用いてIMPおよびNADからのXMPおよびNADHの産生を測定することにより、IMPDHポリペプチドの活性をアッセイすることができる。
【0052】
精製されたヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの種々の製剤を調製することができる。修飾IMPDHポリペプチドは、公知の方法により、散剤や液剤などとして製剤化することができる。IMPDH酵素を緩衝溶液に添加し、化学物質(たとえば、グリセロール、ポリエチレングリコール、EDTA、他のタンパク質、界面活性剤など)の添加により安定化させることができる。修飾IMPDHポリペプチドは、4℃で保存することができるか、または保存のために凍結させることができるか、または凍結乾燥させることができる。
【0053】
一実施形態では、サンプル中のIMPDH阻害剤または他のアナライトの濃度を測定するのに有用なキットが提供される。IMPDH阻害剤は、薬剤、薬物誘導体、ホルモン、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドなどでありうる。ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、米国特許第6,107,052号および同第6,524,808号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されているようなアッセイで使用するためのキットの構成要素である。簡潔に述べると、これらのアッセイでは、たとえば、尿、全血、血漿、血清、唾液、精液、糞便、喀痰、脳脊髄液、涙、粘液などのようなサンプルを分析して、サンプル中のIMPDH阻害剤、阻害剤の代謝物、または他のアナライトのレベルを決定する。
【0054】
アッセイでは、単位時間あたりの340nmにおけるNADHの吸光度の変化を測定し、NADHの吸光度の変化をIMPDHによるNADHの生成速度に対応させる。MPAもしくはIMPDHの他の阻害剤または他のアナライトは、NADHの形成を阻害することができるので、サンプル中のMPA、MPA代謝物、またはIMPDHの他の阻害剤の濃度は、340nmにおけるNADHの吸光度に反比例する。したがって、そのようなアッセイを用いて、サンプル中のIMPDH阻害剤(たとえば、MPA)または他のアナライトのレベルを決定することができる。
【0055】
キットは、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチド、IMP基質、およびNADを含有しうる。IMPDH、IMP、およびNADは、一般的には、適切な緩衝剤および他の材料と組み合わされた後、パッケージ化される。一実施形態では、試薬は、液体形態を保持することができる。他の実施形態では、試薬を凍結乾燥させることができる。検量試薬をキットに組み込むこともできる。「検量試薬」とは、既知量の測定対象の阻害剤、たとえば、MPAもしくはその代謝物、他のIMPDH阻害剤または他のアナライトを含有する任意の標準物質または参照物質を意味する。阻害剤(たとえば、MPA)を含有すると推測されるサンプルおよび検量試薬は、類似の条件下でアッセイされる。その後、未知試料で得られた結果を標準系で得られた結果と比較することにより、阻害剤濃度を算出する。
【0056】
キットに組み込みうる他の物質は、たとえば、緩衝剤、アッセイ培地用安定化剤およびアッセイ成分、アルブミンのような追加のタンパク質、または界面活性剤、とくに非イオン性界面活性剤などである。
【0057】
本明細書中に記載されているヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、IMPDH阻害剤のレベルをモニターするためのアッセイだけに使用できるのではなく、他の臨床用途および研究用途にも重要である。たとえば、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、天然に存在するIMPDH阻害剤もしくは他のIMPDH結合性リガンドを同定するために、または癌療法および免疫抑制療法に有用である合成阻害剤をデザインするために、さらにはこれらの阻害剤に対するIMPDHの感受性を決定するために、使用することができる。
【0058】
モノクロナール抗体もしくはポリクロナール抗体またはそれらのフラグメント(たとえば、Fab、F(ab')2、Fvフラグメント、もしくは融合タンパク質)を当技術分野で公知の方法により誘導するために、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドを使用することも可能である。一実施形態では、治療用途のヒト化抗体を産生させることができる。他の実施形態では、診断的アッセイなどで使用するための検出可能なマーカーで抗体を標識化することが可能であるか、またはIMPDHを精製するために使用することが可能である。
【0059】
以下の実施例は、単に例示を目的としたものにすぎず、本発明の範囲をなんら限定しようとするものではない。
【実施例】
【0060】
特定の実施形態
以下の実施例では、太字の数字は、図面中の対応する構造を意味する。
【0061】
実施例1. 野生型ヒトII型IMPDHの修飾
当技術分野で公知のクローニング法により、野生型ヒトII型IMPDH配列(配列番号9)をpKKll7(pKK/T7とも記される; 図2参照)中の部位にクローン化した。配列番号1および配列番号2で示されるプライマーを用いるPCRによりATG開始コドンの後のpKKll7中の野生型IMPDH II配列中に配列番号1で示される配列を挿入することにより、野生型IMPDH II配列の5'末端に6ヒスチジンタグをコードするように、野生型IMPDH II配列を修飾した。QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を使用し、プライマーのデザインおよびPCRのプロトコールは、本質的に、QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キットの取扱説明書に記載されているとおりであった。プライマーは、Commonwealth Biotechnologies, Inc., Richmond, VAにより合成され精製された。
【0062】
簡潔に述べると、PCRプロトコールは以下のとおりであった。PCR反応系には、プラスミドに挿入されたIMPDH II配列を有する2μLの二本鎖pKKll7 DNA(この2μLの体積には、TE緩衝液中の5、10、20、または50ngのプラスミドDNAが含まれていた)、5μLの10×反応緩衝液、TE緩衝液中の125ngの各プライマー(各2μL)、1μLのdNTP混合物、およびddH2O(37μL)が含まれていた。50μLの最終体積になるようにPfuTurbo DNAポリメラーゼ(2.5U/μL; 1μL)を添加し、各反応系に30μLのミネラルオイルをオーバーレイした。温度サイクルパラメーターは、セグメント1のとき、95℃で30秒間のサイクルを1回、セグメント2のとき、95℃で30秒間および68℃で12分間のサイクルを18回であった。PCR反応後、反応混合物を4℃まで冷却させた。QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キットに提供されているpWhitescriptプラスミドおよびPCRプライマーを用いる対照反応も行った。
【0063】
その後、ミネラルオイルオーバーレイの下方にピペットを挿入して1μLのDpn Iを反応混合物に添加し、反応混合物を混合し、各反応混合物を37℃で1時間インキュベートしてプラスミドDNAを消化させることにより、Dpn IによるPCR産物の消化を行った。Dpn Iは、親の非突然変異プラスミドDNAは消化するが、突然変異プラスミドDNAは消化しない。
【0064】
PCR産物は、ニックの入った弛緩型dsDNAの形態である。XL-1 Blueスーパーコンピテント細胞(QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キットで提供される)は、ニックの入った弛緩型dsDNAを取り込んでニックを修復することができる。次のようにXL-1 Blueスーパーコンピテント細胞に突然変異プラスミドをトランスフォームした。XL-1 Blueスーパーコンピテント細胞を氷上で解凍し、4℃で保持した。スーパーコンピテント細胞を等分(50μL)してあらかじめ冷却されたFalcon 2059ポリプロピレンチューブに入れた。各対照およびサンプルチューブからのDpn I消化DNAのアリコート(1μL)を、スーパーコンピテント細胞の個々のアリコートに移した。トランスフォーメーション反応系を混合し、4℃で30分間インキュベートした。その後、反応混合物を42℃で45秒間加熱し、そして氷上で2分間インキュベートした。NZYブロス(42℃; 0.5ml)を各反応混合物に添加し、反応系を37℃で振盪(225〜250 rpm)させながら1時間インキュベートした。
【0065】
QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キットの取扱説明書に記載されているように調製した100μg/mLのアンピシリンと共に、トランスフォーメーション反応系を、X-galおよびIPTGを有するLB寒天プレート上に個々にプレーティングした(250μL)。プレートを37℃で少なくとも16時間インキュベートした。単一コロニーを採取し、100μg/mLのアンピシリンを有するLBブロス中、37℃において、225rpmで振盪させながら一晩増殖させ、培養物を増大させた。一晩培養物を4400×gで30分間遠心分離してペレット細胞にし、上清を廃棄した。
【0066】
細菌を溶解させ、キット取扱説明書に従ってQIAprep(登録商標)キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いてXL-1 Blue細胞からプラスミドDNAを単離した。制限酵素消化を行い、6ヒスチジンタグのコード配列が組み込まれたクローンを同定した。当技術分野で公知の手順に従って4〜20% TBEグラジエントゲル(厚さ1.0mm; Invitrogen Cat. No. EC62252)およびTBE実験緩衝液(Invitrogen Cat. Nos. LC6678およびLC2675)を用いて、得られた消化物を分析した。100bpラダー(Gibco Cat. No. 15628-019)およびDNA銀染色キット(Pharmacia Cat. No. 17-6000-30)を使用した。
【0067】
先に記載したものと類似のプロトコール(QuikChangeTM部位限定突然変異誘発キット)を用いて、本明細書に記載のヒスチジンタグ付き修飾IMPDHコードヌクレオチドのそれぞれのサブドメインを修飾した(すなわち、Δ2B+AHクローンA、(Δ3+1A)+AHクローンA、Δ1,2A+AHクローンB、Δ3B+AHクローンB、および(Δ2+1A)+AHクローンB)。PCRに使用したDNAは、QIAprep(登録商標)キットを用いてXL-1 Blue細胞から単離されたプラスミドDNAであった。IMPDH II配列の5'末端に6ヒスチジンタグをコードするように修飾された野生型IMPDH II配列を、PCRによりクローンのそれぞれのサブドメイン領域でさらに修飾した(pKKll7中で5'末端に6ヒスチジンタグをコードするように修飾されたIMPDH II配列および配列番号3〜8で示されるプライマーを用いて)。PCR反応の温度サイクルパラメーターが、セグメント2のとき、95℃で30秒間および64℃で12分間のサイクルを18回であったという点を除いて、プロトコールは先に記載したとおりであった。
【0068】
スーパーコンピテントXL-1 Blue細胞のトランスフォーメーション、細菌細胞の溶解、およびQIAprep(登録商標)キットを用いるDNAの単離を含めて先に記載のものと同様のプロトコールを用いて、所望のIMPDH修飾に陽性のクローンを単離した。ただし、制限酵素消化によるのではなく、Qiagen, Bothell, WAにより行われた配列決定により、陽性クローンを確認した。
【0069】
実施例2. E. coli H712のトランスフォーメーション
E. coli H712 (Yale University)をトランスフォームして、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの発現ならびに野生型ポリペプチドおよびヒスチジンタグ付きポリペプチドの発現に使用した。E. coli H712のトランスフォーメーションに使用したDNAは、QIAprep(登録商標)キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて単離された陽性クローンまたは野生型ポリペプチドをコードするインサートを有するpKKll7プラスミドに由来するプラスミドDNAであった。
【0070】
Chung, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 86:2172 (1989)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)の方法に変更を加えて、E. coli H712をコンピテントにした。簡潔に述べると、LBブロス中のE. coli H712の新たな一晩培養物を加温されたLBブロス中に60mlの最終体積になるように1:50希釈した。培養物が約0.3〜0.4のOD600nmに達するまで、37℃において225rpmで振盪させながら培養物をインキュベートした。60mLの培養物を4100×gで15分間遠心分離し、ペレットを6mLの低温TSS(LBブロス、10% PEG(MW 8000)、5% DMSO、42mM MgCl2)中に再懸濁させた。再懸濁させた細胞のアリコート(0.1ml)を液体窒素の浴内のクライオバイアル中に調製し、細胞を-70℃で保存した。
【0071】
E. coli H712コンピテント細胞を次のようにトランスフォームした。コンピテント細胞の入ったチューブを氷上で解凍した。各精製プラスミドの1μLアリコートを別々のチューブに添加し、液体を穏やかに混合した。トランスフォーメーション混合物を氷上で30分間インキュベートした。前加熱(42℃)されたNZYMブロス(0.5ml)を添加し、細胞に42℃で2分間熱ショックを与えた。その後、ただちに細胞を2分間氷上に戻した。その後、前加熱(37℃)されたNZYMブロス(0.9ml)を添加し、液体を穏やかに混合した。トランスフォーメーション混合物を37℃において225rpmで振盪させながらインキュベートした(30分間)。その後、アリコート(20μL)を寒天プレート(LB寒天+100μg/mLのアンピシリン)上に拡げた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。コロニーを採取し、培養物を一晩増殖させ、グリセロールストックを調製した。
【0072】
実施例3. E. coli H712を用いるIMPDHの発現
37℃で振盪させながら一晩培養物を凍結されたグリセロールストックから増殖させた。Terrific Broth+M9 Minimal Medium Salts、2%グルコース、および100μg/mLのアンピシリン中で、細胞を増殖させた。次に、IPTG(0.5mM)を有する新たな培地中に細胞を1:1000希釈した。培養物を37℃で振盪させながら22時間増殖させた。細胞を遠心分離(4100×gで30分間)により採取し、0.9% NaClで洗浄し、再び遠心分離し、そして-70℃で保存した。
【0073】
細胞を解凍し、細胞1グラムあたり4.5mLの溶解緩衝液を添加することにより溶解させた。溶解緩衝液は、10mM Tris Base、7.5mM TCEP-HCl、推奨濃度のComplete EDTA-freeプロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics)、500mM KCl、および10mMイミダゾール、pH8.0であった。全ペレットが溶解状態になるまで、溶液を混合した。その後、リゾチーム20,000 U/mL(Epicenter Cat. No. R1810M)を添加し、溶液を30分間混合した。Benzonase(1μl/ml; Novagen lysis solution Cat. No. 70746)を添加し、溶液を30分間混合した。その後、溶解物1部あたり2部の溶解希釈緩衝液を添加した。溶解希釈緩衝液は、20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、6.0Mウレア、20mMイミダゾールおよび0.3% NP-40、pH8.0であった。溶解物を少なくとも30分間混合し、4℃よりも高い温度の冷気中に一晩保存した。溶解物を20,000×gで30分間遠心分離し、上清を保持し、pHを8.0に調整し、セルロースアセテートフィルターを用いて濾過した。
【0074】
実施例4. E. coli H712から単離されたIMPDHの精製
ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィーを行った後、当技術分野で公知の手順を用いて溶出タンパク質を脱塩カラムにかけることにより、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドおよび野生型ヒスチジンタグ付きIMPDHポリペプチドを精製した。
【0075】
ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィー
ニッケル樹脂は、たとえば、Pharmacia(XK 26カラム)およびQiagen(Valencia, CA; Ni-NTA Superflow Resin)から入手可能である。Pharmacia製またはQiagen製のニッケルキレートアフィニティ樹脂に、次の精製プロトコールを適用可能である。緩衝液はすべて、使用前に脱ガスした。
【0076】
緩衝液
サンプル希釈緩衝液:20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、6Mウレア、0.02Mイミダゾール、および0.3% NP-40、pH8.0。
平衡/結合/洗浄緩衝液:20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、4Mウレア、0.02Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
洗浄緩衝液(Qiagenのみ):20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、0.02Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
溶出緩衝液A(Qiagenのみ):20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、0.05Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
溶出緩衝液B:20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、0.1Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
溶出緩衝液C(Qiagenのみ):20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、0.2Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
溶出緩衝液D(Pharmaciaのみ):20mM NaPO4、7.5mM TCEP-HCl、0.5M KCl、0.2Mイミダゾール、および0.175% NP-40、pH8.0。
【0077】
精製手順
【表1】

【0078】
脱塩カラムクロマトグラフィー
材料
HiPrep 26/10脱塩カラム、Pharmacia (Cat. No. 17-5087-01)
脱塩緩衝液:0.437M TAPSO、25.8M酢酸カリウム、4.32mM IMP、7.5mM TCEP-HCl、0.2% Suttocide A、および0.175% NP-40、pH8.0。
【0079】
脱塩手順
緩衝液はすべて、使用前に脱ガスした。充填時、脱塩カラムは、十分に平衡化され、流動状態(ゼロ設定状態)でなければならない。ニッケルキレートアフィニティーカラムから溶出されたタンパク質を脱塩カラムに適用した際、5mL画分を収集するようにフラクションコレクターをセットした。酵素ピークがカラムから溶出した時、フラクションコレクターを停止させ、流れを排出に切り換えた。ピーク画分をプールし、アッセイした。溶出されたIMPDHの後にショルダーすなわち第2のピークが観測されたが、このショルダーには活性がなかったので、プールしなかった。実施例5に記載されているアッセイを用いて画分の酵素活性を測定することにより、IMPDHを有するカラム画分を同定した。精製されたIMPDHを4℃または-20℃で保存した。
【0080】
実施例5. IMPDH酵素活性アッセイ
カラム画分の酵素活性を次のようにアッセイした。精製IMPDHの比活性も決定した。酵素活性をタンパク質濃度測定と組み合わせることにより、分布集中度の指標である精製タンパク質の比活性を決定する手段が提供される。
【0081】
酵素アッセイ材料
希釈剤:100mM TAPSO、3.1mM TCEP-HCl、100mM KCl、0.2mM IMP、pH8.0。
反応緩衝液:100mM TAPSO、3.1mM TCEP-HCl、10mM KCl、0.2mM IMP、0.4mM NAD、pH8.0。
酵素アッセイ装置
Cary 50 BioSpec温度制御型UV/vis分光光度計
【0082】
酵素アッセイ手順
精製酵素を希釈してキュベットに入れ、キュベットをキュベットキャリヤーに入れ、溶液を37℃で平衡化させた。アッセイ反応緩衝液(990μL)を個々のキュベットに添加し、キュベットにカバーをしてキュベットキャリヤー中に配置した。溶液を37℃で平衡化させた。加温されたサンプル(115.5μL)を加温された反応緩衝液に添加し、反転させて溶液を混合し、分光光度計に戻した。ただちに、10秒毎に3分間にわたり吸光度を読み取ることにより、340nmにおいて反応をモニターした。酵素活性を次のように算出した:
【数1】

【0083】
Compat-AbleTM Protein Assay Preparation Reagent Set (Pierce Cat. No. 23215)またはProtein Assay ELC (Roche Diagnostics Cat. No. 1767003)を用いて、タンパク質レベルを決定した。比活性は、タンパク質の単位質量あたりの活性として定義され、修飾IMPDH IIポリペプチドでは約1単位/mgであった。
【0084】
実施例7. IMPDH速度安定性アッセイ
ヒスチジンタグ付き修飾IMPDH酵素の速度安定性(図20〜24)を測定し、ヒスチジンタグ付き修飾酵素(すなわち、サブドメインで修飾された酵素)の速度安定性をヒスチジンタグ付き野生型IMPDH酵素の速度安定性(図19)と比較した。タグのない野生型酵素の速度安定性も測定した(図18)。次のように速度安定性を測定した:
緩衝液
R1 C(1):0.437M TAPSO、0.0258M酢酸ナトリウム、2.35mM TCEP、4.32mM IMP、0.3mMジナトリウムEDTA、0.72mMリン酸ナトリウム、10.7mM KCl、および0.1% Suttocide A、pH8.0。代替的な緩衝液R1 C(1)処方は、0.437M TAPSO、25.8M酢酸カリウム、7.5mM TCEP、4.32mM IMP、0.175% NP40、および0.2% Suttocide A、pH8.0である。
R1 F:0.116M TAPSO、0.347M酢酸ナトリウム、2.35mM TCEP、4.32mM IMP、3.51mMジナトリウムEDTA、0.72mMリン酸ナトリウム、10.7mM KCl、および0.05% Suttocide A、pH8.0。
R2:2.5mM NAD、0.175% NP40、および0.05% Suttocide A、pH6.0。代替的なR2処方は、0.1M ACES、10mM NAD、7.5mM TCEP、0.175% NP40、および0.05% Suttocide A、pH6.0である。
ACES=N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸またはN-(カルバモイルメチル)-2-アミノエタンスルホン酸またはN-(カルバモイルメチル)タウリンまたは、2-(カルバモイルメチルアミノ)エタンスルホン酸。
TAPSO=N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノ-2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸または2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸。
TCEP=トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたは3,3',3''ホスフィニジントリプロピオン酸。
TCEP-HCl=トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリドまたは3,3',3''ホスフィニジントリプロピオン酸ヒドロクロリド。
【0085】
酵素アッセイ手順
速度安定性アッセイを4℃および37℃で行った。速度をt=0、4℃速度と比較した。また、緩衝液R1 C(1)またはR1 Fのいずれかを使用した。次のパラメーターを用いてHitachi 917アナライザーにより速度安定性アッセイを行った:
レートA、10分間、リードウィンドウ28〜33
主波長:340nm
副波長:700nm
サンプル体積:2μL
R1体積:167μL
R2体積:33μL
検量タイプ:スプライン
【0086】
先に述べたように、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDH酵素の速度安定性(図20〜24)を測定し、ヒスチジンタグ付き修飾酵素(すなわち、サブドメインで修飾された酵素)の速度安定性をヒスチジンタグ付き野生型IMPDH酵素の速度安定性(図19)と比較した。図18〜24に示される結果は、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドの速度安定性が野生型タンパク質のときとほぼ等しいことを示している(すなわち、ヒスチジンタグ付き修飾IMPDHポリペプチドは、サブドメインで修飾されていないヒスチジンタグ付きIMPDHポリペプチドで観測された速度安定性の低下を示さない)。したがって、本明細書に記載されているようにサブドメインでヒスチジンタグ付きIMPDHポリペプチドの修飾を行うと、野生型IMPDH酵素と対比して酵素の速度安定性が維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾イノシン-5'-一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)ポリペプチドであって、該IMPDHポリペプチドがヒスチジンタグを有し、かつ野生型IMPDHポリペプチドと対比して該ヒスチジンタグ付きIMPDHポリペプチドの速度安定性が保持されるように該IMPDHポリペプチドのサブドメインが修飾されている、上記修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項2】
前記修飾IMPDHポリペプチドがI型またはII型IMPDHである、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項3】
配列番号14、16、18、20、または22のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項4】
配列番号12に示される位置116〜250のアミノ酸の1つ以上が、負に荷電したアミノ酸で置換されている、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項5】
配列番号12に示される位置130、132、134、140、142、143、155、159、167、173、177、187、188、201、209、211、212、214、230、234、235、237、244、247、または248の正に荷電したアミノ酸の1つ以上が、負に荷電したアミノ酸で置換されている、請求項1に記載の修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の修飾IMPDHポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞であって、該宿主細胞が、細菌、酵母、哺乳動物細胞、真菌細胞、および昆虫細胞よりなる群から選択される上記宿主細胞。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の修飾IMPDHを産生するための方法であって、
(a)前記修飾IMPDHポリペプチドを産生するのに好適な条件下で請求項7のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養するステップと;
(b)産生された前記修飾IMPDHポリペプチドを回収するステップと;
を含む上記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法により産生される修飾IMPDHポリペプチド。
【請求項10】
修飾I型またはII型IMPDHポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、該IMPDHポリペプチドがヒスチジンタグを有し、かつ野生型IMPDHポリペプチドと対比して該ヒスチジンタグ付きIMPDHポリペプチドの速度安定性が保持されるように該IMPDHポリペプチドのサブドメインが修飾されている、上記単離された核酸分子。
【請求項11】
前記核酸がDNAまたはRNAである、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
前記単離された核酸分子の相補的配列が、ストリンジェントな条件下で、配列番号13、15、17、19、または21に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、およびそれらの相補的配列よりなる群から選択される配列を含む、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
プロモーターに機能しうる形で連結された請求項13に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項15に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主細胞が、細菌、酵母、哺乳動物細胞、真菌細胞、および昆虫細胞よりなる群から選択される、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記単離された核酸分子の相補的配列が、ストリンジェントな条件下で、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21よりなる群から選択される配列のヌクレオチド346〜750にハイブリダイズする、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項19】
プロモーターに機能しうる形で連結された請求項18に記載の単離された核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項20】
請求項18に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞が、細菌、酵母、哺乳動物細胞、真菌細胞、および昆虫細胞よりなる群から選択される、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記MPDHポリペプチドが、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、および配列番号22よりなる群から選択されるアミノ配列を含む、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項24】
配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、および配列番号21よりなる群から選択される配列のヌクレオチド346〜750を含む、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
ATCC受託番号PTA-5786、PTA-5782、PTA-5784、PTA-5785、またはPTA-5783を有するE. coli H712から取得可能な請求項13に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項26】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の修飾IMPDHポリペプチドを含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2010−119395(P2010−119395A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53103(P2010−53103)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【分割の表示】特願2005−19619(P2005−19619)の分割
【原出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】