説明

修飾ポリヌクレオチドを作製する方法および配列決定する方法

【課題】核酸(例えば、DNA)の新規な配列決定法、ならびに核酸(例えば、DNA)の直接的配列決定を実施するための改善された方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングし、および、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、前記プライマーを伸長し、修飾ポリヌクレオチド配列を作製する。少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、前記修飾ヌクレオチド配列が、ホスホロチオレート結合を含む。3’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列、あるいは5’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/694,783号(2005年6月28日出願)の優先権を主張する。上記出願の教示全体は、本明細書中で参考として援用される。
政府支援
本発明は、合衆国国立衛生研究所からの助成金HG00357により、全体または一部が支援された。該政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、ヒトゲノムならびに種々の他の生物のゲノム配列を決定するために広範な努力がなされている。ゲノミクスの出現は、正確かつ効率的なDNA配列決定技法に依存しており、遺伝子のヌクレオチド配列を決定する能力は、依然として分子遺伝学研究の必須な要素である。生物学的研究におけるDNA配列決定の広範な使用にとって、従来より一般に使用されている技法よりも簡便で効率的である新規なDNA配列決定技法の開発が必要である。
【0003】
Sangerの鎖停止反応法(非特許文献1;参照として本明細書に組み込まれている)およびMaxamおよびGilbertの化学的開裂法(非特許文献2;参照として本明細書に組み込まれている)などの古典的DNA配列決定技法では、これらの両アプローチが、ヌクレオチド配列を導き出すために研究者が多数の反応を実施することを必要とするので、いくらか厄介で、非効率的である。単一のDNA増幅/合成反応と配列分析とを合わせることによるDNA配列決定を単純化する試み(すなわち、直接配列決定)は、これらの技法が、しばしばDNA損傷および/または分解(非特許文献3)、ならびに正確性の低いDNA合成(非特許文献4;非特許文献5;特許文献1;特許文献2;および特許文献3)をもたらすことから部分的な成功にとどまることが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,939,292号明細書
【特許文献2】米国特許第6,329,178号明細書
【特許文献2】米国特許第6,887,690号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sanger,F.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467頁(1977年)
【非特許文献2】Maxam,A.M.およびGilbert,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560−564頁(1977年)
【非特許文献3】Dasら、Physiol Genomics 6:57−80頁(2001年)
【非特許文献4】Linら、Biochemistry 40:8749−8755頁(2001年)
【非特許文献5】Xiaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:6597−6602頁(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、改善されたDNAの配列決定法の開発が求められていることは明白である。さらに具体的には、正確なDNA配列情報を与える、信頼性があり、かつ効率的な直接的配列決定技法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
当該出願の発明は、核酸(例えば、DNA)の新規な配列決定法、ならびに核酸(例えば、DNA)の直接的配列決定を実施するための改善された方法を提供する。本発明は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)が、チオールヌクレオシドトリホスフェート(例えば、5’チオール−ヌクレオシドトリホスフェート、3’チオール−ヌクレオシドトリホスフェート)を、伸長中のポリヌクレオチド鎖に組込んで、少なくとも1つのホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチド配列を作出できるという発見に一部基づいている。
【0008】
したがって、本発明は、(1つ以上)のホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法を包含する。該方法は、少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、および1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で該プライマーを伸長させることを含み、ホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチド配列が作製されるように、ここで、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが修飾されている。
【0009】
特定の一実施形態において、本発明は、3’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法を提供する。該方法は、少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、および1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下でプライマーを伸長させることを含み、ここで、少なくとも1種の修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列が作製されるように、該混合物中の少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートは、一般構造[I]:
【0010】
【化11】

を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートである。修飾ポリヌクレオチド配列は、3’ホスホロチオレート結合を含み、一般構造[II]:
【0011】
【化12】

により示される。
【0012】
一般構造[I]におけるRは、例えば、水素(−H)、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基、またはRであり得、Rは、例えば、−SH、または−SRであり得、Rは、例えば、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であり得る。特定の実施形態において、Rは、−SCHである。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、5’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法を提供する。該方法は、少なくとも1種のプライマーを、テンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で該プライマーを伸長させることを含み、修飾ポリヌクレオチド配列が作製されるように、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートは、一般構造[III]:
【0014】
【化13】

を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートである。修飾ポリヌクレオチド配列は、一般構造[IV]:
【0015】
【化14】

により示される5’ホスホロチオレート結合を含む。
【0016】
本発明は、複数のプライマーを複数のテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが修飾されるヌクレオシドトリホスフェート存在下で、複数のプライマーを伸長させることを含み、それによって、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含む複数の伸長産物を作製することを含む、ポリヌクレオチド配列を決定する方法(例えば、塩基配列決定法)も包含する。伸長産物におけるホスホロチオレート結合は、複数の断片が作製される条件下で開裂される。ポリヌクレオチド配列を決定できるように、プライマーを含む断片が同定され、プライマーを含む各断片の3’末端におけるヌクレオチドが同定される。
【0017】
当業者であれば判るように、例えば、プライマーを含む断片を、(例えば、プライマー上のタグを用いて)同定および分析(例えば、ゲルなどの固体支持体上で)でき、ポリヌクレオチドの配列を、(例えば、その3’末端におけるヌクレオチドが既知である断片長を検出することによって;3’末端におけるヌクレオチド上に存在するタグを検出することにより、3’末端におけるヌクレオチドを同定することによって)決定できる。プライマーに結合された断片は、例えば、各プライマー上のタグに結合および/または認識する単離手段を用いることによるなど、当該分野において先に記載された1つ以上の種々の技法を用いて直接的または間接的に同定できる。ポリヌクレオチド配列を決定する方法において、ホスホロチオレート結合は、例えば、Ag、Hg2+および/またはCu2+を用いて開裂できる。特定の実施形態において、該方法は、約7.0のpHおよび約22℃から約37℃までの温度でAgを用いてホスホロチオレート結合を開裂することを含む。
【0018】
特定の実施形態において、1つ以上の修飾ヌクレオシドトリホスフェートは、一般構造[I]:
【0019】
【化15】

を含み、その結果、作製される修飾ヌクレオチド配列が、一般構造[II]:
【0020】
【化16】

を含み、前記一般構造[II]は、少なくとも1つの3’ホスホロチオレート結合を含む。
【0021】
一般構造[I]におけるRは、水素(−H)、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基、またはRであり、Rは、例えば、−SH、または−SRであり得、Rは、例えば、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であり得る。特定の実施形態において、Rは−SCHである。
【0022】
別の実施形態において、1つ以上のヌクレオシドトリホスフェートは、一般構造[III]:
【0023】
【化17】

を含み、その結果、作製される修飾ヌクレオチド配列が、一般構造[IV]:
【0024】
【化18】

を含み、前記一般構造[IV]は、少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合を含む。
【0025】
さらなる実施形態において、ポリヌクレオチド配列を決定する方法はさらに、ポリヌクレオチド長を同定する前にプライマーを含む開裂断片を単離すること、それによって、伸長反応に用いられる修飾ヌクレオチドによって断片の3’末端におけるヌクレオチドを同定すること、またはヌクレオチド上のタグを検出することによって断片の3’末端におけるヌクレオチドを同定することを含む。特定の実施形態において、プライマーを含む断片は、断片上のタグを特異的に認識する単離手段を用いて(例えば、単離手段を各プライマー上のタグに結合させることによって)単離される。本明細書に用いられる用語「単離断片」とは、限定はしないが、プライマー、緩衝液、塩類、金属イオン類、組込まれないヌクレオチド、核酸テンプレートおよび酵素に結合していない開裂断片など、伸長反応および/または開裂反応からの他の成分から精製されるか、あるいは実質的に他の成分を含まない、断片の調製のことである。本明細書に用いられる用語「単離手段」とは、単離される物質上のパートナー部分を特異的に認識し、それに結合する部分を含む、固体支持体などの手段のことである。
【0026】
本発明はさらに、複数の第一のプライマーおよび複数の第二のプライマーを、センスヌクレオチド鎖およびアンチセンスヌクレオチド鎖を含む複数のテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすることを含む、1種以上の正方向伸長産物を1種以上の逆方向伸長産物から分離する方法に関するものであり、該第一のプライマーは、センス鎖にアニールし、該第二のプライマーは、アンチセンス鎖にアニールし、少なくとも1種のプライマー(例えば、第一のプライマー、第二のプライマー)はタグを含む。第一のプライマーおよび第二のプライマーを、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが修飾されている1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で伸長させ、それによって、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含む、複数の伸長産物を作製する。詳細には、当業者であれば判るように、センスヌクレオチド鎖にアニールされた第一のプライマーの伸長は、逆方向伸長産物を作製し、アンチセンスヌクレオチド鎖にアニールされた第二のプライマーの伸長は、正方向伸長産物を作製する。修飾ヌクレオチド配列におけるホスホロチオレート結合は、逆方向伸長産物の複数の断片および正方向伸長産物の複数の断片が作製される条件下で開裂される。次に、第一のプライマーを含む逆方向伸長産物の断片を、第二のプライマーを含む正方向伸長産物の断片から(例えば、第一および/または第二のプライマー上のタグを用いて)分離し、それによって、正方向および逆方向伸長産物を分離する。例えば、ビオチンタグを含む第一のプライマーを含む1種以上の逆方向伸長産物を、例えば、ストレプトアビジンに結合することによってビオチンタグを含まない第二のプライマーを含む正方向伸長産物の断片から分離する。
【0027】
特定の実施形態において、第一のプライマーおよび第二のプライマーの各々は、タグを含み、該第一のプライマー上のタグは、該第二のプライマー上のタグとは異なる。したがって、第一のプライマーを含む逆方向伸長産物の断片は、第一および第二のプライマー上の互いに異なるタグを用いて、第二のプライマーを含む正方向伸長産物の断片から分離できる。
【0028】
本発明はさらに、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートおよび核酸ポリメラーゼを含むキットを包含し、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートは、修飾チオール−ヌクレオシドトリホスフェートである。
【0029】
特定の実施形態において、少なくとも1種の修飾チオール−ヌクレオシドトリホスフェートは、
一般構造[I]:
【0030】
【化19】

を含み、
一般構造[I]におけるRは、例えば、水素(−H)、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基、あるいはRであり、Rは、例えば、−SH、または−SRであり、Rは、例えば、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であり得る。特定の実施形態において、Rは−SCHである。
【0031】
別の実施形態において、少なくとも1種の修飾チオール−ヌクレオシドトリホスフェートは、一般構造[III]:
【0032】
【化20】

を含む。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、および、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、前記プライマーを伸長することを含む、修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法であって、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、前記修飾ヌクレオチド配列が、ホスホロチオレート結合を含み、それによって修飾ヌクレオチド配列を作製する、方法。
(項目2)
前記ホスホロチオレート結合が、3’結合である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ホスホロチオレート結合が、5’結合である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記プライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目1に記載の方法。
(項目5)
修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法であって、
a) 少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、前記プライマーを伸長させることにより、少なくとも1種の修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製することであって、
ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが、一般構造[I]:
【化1】


を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートであり、
式中、Rは、水素、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基、またはRであり、
は、−SH、または−SRであり、
は、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であり、
ここで、前記修飾ポリヌクレオチド配列は、一般構造[II]:
【化2】


を含み、前記一般構造[II]が、3’ホスホロチオレート結合を含む、方法。
(項目6)
が、水素(−H)または−SCHである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記テンプレートポリヌクレオチド配列が、センスおよびアンチセンス鎖を含み、少なくとも1種のプライマーが、ステップ(b)の前に各鎖にアニールされる、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記プライマーが、少なくとも1つのタグを含む、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記タグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、タグを含む、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記タグが、ピリミジン塩基の5位の炭素、またはプリン塩基の7デアザ位の炭素に存在する、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記タグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目10に記載の方法。
(項目13)
一般構造[I]における前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目14)
前記少なくとも1種のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目5に記載の方法。
(項目15)
修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法であって、
a) 少なくとも1種のプライマーをテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、
b) ヌクレオシドトリホスフェート混合物の存在下で前記プライマーを伸長させ、それによって、少なくとも1種の修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製することであって、
ここで、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが、一般構造[III]:
【化3】


を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートであり、
ここで、前記修飾ヌクレオチド配列は、一般構造[IV]:
【化4】


を含み、
前記一般構造[IV]が、5’ホスホロチオレート結合を含む、方法。
(項目16)
前記テンプレートポリヌクレオチド配列が、センスおよびアンチセンス鎖を含み、少なくとも1種のプライマーが、ステップ(b)の前に各鎖にアニールされる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記少なくとも1種のプライマーが、第一のタグを含む、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記第一のタグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記少なくとも1種のプライマーが、第二のタグをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記第二のタグが、ピリミジン塩基の5位の炭素、またはプリン塩基の7デアザ位の炭素に存在する、項目19に記載の方法。
(項目21)前記第二のタグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目19に記載の方法。
(項目22)
一般構造[III]における塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記少なくとも1種のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目15に記載の方法。
(項目24)
ポリヌクレオチド配列を決定する方法であって、
a) 複数のプライマーを複数のテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で前記複数のプライマーを伸長させ、それによって、複数の伸長産物を作製することであって、ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、ここで、前記複数の伸長産物が、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含むこと、
c) 複数の断片が作製される条件下、前記伸長産物における前記ホスホロチオレート結合を開裂すること、
d) c)において作製された断片の中から、前記プライマーを含む断片を同定すること、および
e) d)において同定された断片の3’末端におけるヌクレオチドを同定すること、を含み、
それによってポリヌクレオチド配列を決定する方法。
(項目25)
前記複数のプライマーにおける各プライマーが、第一のタグを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記第一のタグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、タグを含む、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記タグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、各塩基に対して互いに異なるタグを含み、前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目30)
前記複数のプライマーにおける各プライマーが、第二のタグをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目31)
前記第二のタグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記ホスホロチオレート結合が、Ag、Hg2+またはCu2+により開裂される、項目24に記載の方法。
(項目33)
前記ホスホロチオレート結合が、約7のpHおよび約22℃から約37℃までの温度で開裂される、項目32に記載の方法。
(項目34)
ステップe)の前に、プライマーを含む前記断片が単離される、項目25に記載の方法。
(項目35)
プライマーを含む前記断片が単離手段を用いて単離され、前記単離手段が前記プライマー上のタグに結合する、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記複数のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目24に記載の方法。
(項目37)
ポリヌクレオチド配列を決定する方法であって、
a) 複数のプライマーを複数のテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、前記複数のプライマーを伸長させ、
それによって、修飾ポリヌクレオチド配列を含む複数の伸長産物を作製することであって、
ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが、一般構造[I]:
【化5】


を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートであり、
式中、Rは、水素、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基、またはRであり、
は、−SH、または−SRであり、
は、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基であり、
ここで、前記修飾ポリヌクレオチド配列は、一般構造[II]:
【化6】


を含み、前記一般構造[II]が、少なくとも1つの3’ホスホロチオレート結合を含むこと、
c) 複数の断片が作製される条件下、前記伸長産物において前記少なくとも1つの3’ホスホロチオレート結合を開裂すること、
d) c)において作製された断片の中から、前記プライマーを含む断片を同定すること、および
e) d)において同定された断片の3’末端におけるヌクレオチドを同定すること、を含み、
それによってポリヌクレオチド配列を決定する方法。
(項目38)
が、水素(−H)または−SCHである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記複数のテンプレートポリヌクレオチド配列における各テンプレートポリヌクレオチド配列が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、少なくとも1種のプライマーが、ステップ(b)の前に各鎖にアニールされる、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記複数のプライマーにおける各プライマーが、タグを含む、項目37に記載の方法。
(項目41)
前記タグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、タグを含む、項目37に記載の方法。
(項目43)
前記タグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目42に記載の方法。
(項目44)
一般構造[I]における前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目45)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、各塩基に対して互いに異なるタグを含み、前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目46)
前記少なくとも1つの3’ホスホロチオレート結合が、Ag、Hg2+またはCu2+により開裂される、項目37に記載の方法。
(項目47)
前記少なくとも1つのホスホロチオレート結合が、約7のpHおよび約22℃から約37℃までの温度で開裂される、項目46に記載の方法。
(項目48)
ステップ(e)の前に、プライマーを含む前記断片が単離される、項目37に記載の方法。
(項目49)
プライマーを含む前記断片が単離手段を用いて単離され、前記単離手段が前記プライマー上のタグに結合する、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記複数のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目37に記載の方法。
(項目51)
ポリヌクレオチド配列を決定する方法であって、
a) 複数のプライマーを、複数のテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすることであって、前記複数のプライマー中の各プライマーが、第一のタグを含むこと、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で前記複数のプライマーを伸長させ、それによって、複数の伸長産物を作製することであって、
ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが、一般構造[III]:
【化7】

を含む修飾ヌクレオシドトリホスフェートであり、
ここで、前記複数の伸長産物が、一般構造[IV]:
【化8】

を有する修飾ポリヌクレオチド配列を含み、
前記一般構造[IV]が、少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合を含むこと、
c) 複数の断片が作製される条件下、前記伸長産物において少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合を開裂すること、
d) c)において作製された断片の中から、プライマーを含む断片を同定すること、および
e) d)において同定された断片の3’末端におけるヌクレオチドを同定すること、を含み、
それによってポリヌクレオチド配列を決定する方法。
(項目52)
前記複数のテンプレートポリヌクレオチド配列における各テンプレートポリヌクレオチド配列が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、少なくとも1種のプライマーが、ステップ(b)の前に各鎖にアニールされる、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記第一のタグが、アフィニティータグである、項目51に記載の方法。
(項目54)
前記アフィニティータグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記複数のプライマーにおける各プライマーが、第二のタグをさらに含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記第二のタグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目55に記載の方法。
(項目57)
一般構造[III]における前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目51に記載の方法。
(項目58)
前記少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合が、Ag、Hg2+またはCu2+により開裂される、項目51に記載の方法。
(項目59)
前記少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合が、約7のpHおよび約22℃から約37℃までの温度で開裂される、項目58に記載の方法。
(項目60)
ステップ(e)の前に、プライマーを含む前記断片が単離される、項目51に記載の方法。
(項目61)
プライマーを含む前記断片が単離手段を用いて単離され、前記単離手段が前記プライマー上のタグに結合する、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記複数のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目51に記載の方法。
(項目63)
1種以上の正方向伸長産物を、1種以上の逆方向伸長産物から分離する方法であって、
a) 第一のプライマーおよび第二のプライマーを、センスヌクレオチド鎖およびアンチセンスヌクレオチド鎖を含むテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすることであって、前記第一のプライマーが、前記センス鎖にアニールし、前記第二のプライマーが、前記アンチセンス鎖にアニールし、少なくとも1種のプライマーが第一のタグを含むこと、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーを伸長させ、それによって、少なくとも1種の正方向伸長産物および少なくとも1種の逆方向伸長産物を作製することであって、ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、前記少なくとも1種の正方向伸長産物および前記少なくとも1種の逆方向伸長産物が、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含むこと、
c) 複数の断片が作製される条件下、少なくとも1種の正方向伸長産物および少なくとも1種の逆方向伸長産物における1つ以上のホスホロチオレート結合を開裂すること、
d) c)において作製された断片の中から、第一のプライマーを含む1つ以上の断片および第二のプライマーを含む1つ以上の断片を同定すること、および
e) 第一のプライマーを含む1つ以上の断片を、第二のプライマーを含む1つ以上の断片から分離すること、を含み、
それによって1種以上の正方向伸長産物を、1種以上の逆方向伸長産物から分離する方法。
(項目64)
第一のプライマーを含む前記1つ以上の断片および第二のプライマーを含む前記1つ以上の断片が、第一のタグを用いて分離される、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記第一のタグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目63に記載の方法。
(項目66)
前記1つ以上のヌクレオシドトリホスフェートが、タグをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目67)
前記タグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目66に記載の方法。
(項目68)
第一のタグを含む前記少なくとも1種のプライマーが、第二のタグをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目69)
前記第二のタグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、各塩基に対して互いに異なるタグを含み、前記塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目63に記載の方法。
(項目71)
前記1つ以上のホスホロチオレート結合が、Ag、Hg2+またはCu2+により開裂される、項目63に記載の方法。
(項目72)
前記1つ以上のホスホロチオレート結合が、約7のpHおよび約22℃から約37℃までの温度で開裂される、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーが、核酸ポリメラーゼの存在下で伸長される、項目63に記載の方法。
(項目74)
1種以上の前方向伸長産物を、1種以上の逆方向伸長産物から分離する方法であって、
a) 第一のプライマーおよび第二のプライマーを、センスヌクレオチド鎖およびアンチセンスヌクレオチド鎖を含むテンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすることであって、前記第一のプライマーが、前記センス鎖にアニールし、前記第二のプライマーが、前記アンチセンス鎖にアニールし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーが各々、タグを含み、前記第一のプライマー上のタグが、前記第二のプライマー上のタグとは異なっていること、
b) 1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーを伸長させ、それによって、少なくとも1種の正方向伸長産物および少なくとも1種の逆方向伸長産物を作製することであって、ここで、少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、前記少なくとも1種の正方向伸長産物および前記少なくとも1種の逆方向伸長産物が、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含むこと、
c) 複数の断片が作製される条件下、前記少なくとも1種の正方向伸長産物および前記少なくとも1種の逆方向伸長産物における1つ以上のホスホロチオレート結合を開裂すること、
d) c)において作製された断片の中から、第一のプライマーを含む1つ以上の断片および第二のプライマーを含む1つ以上の断片を同定すること、および
e) 第一のプライマーを含む前記1つ以上の断片を、第二のプライマーを含む前記1つ以上の断片から分離すること、を含み、
それによって1種以上の正方向伸長産物を、1種以上の逆方向伸長産物から分離する方法。
(項目75)
第一のプライマーを含む前記1つ以上の断片および第二のプライマーを含む前記1つ以上の断片が、各プライマー上の互いに異なるタグを用いて分離される、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記互いに異なるタグが、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、リガンド、ペプチドおよび核酸よりなる群から選択される、項目74に記載の方法。
(項目77)
前記修飾ヌクレオチドが、タグをさらに含む、項目74に記載の方法。
(項目78)
前記タグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記第一のプライマーおよび/または前記第二のプライマーが、追加のタグをさらに含む、項目74に記載の方法。
(項目80)
前記追加のタグが、蛍光体、質量タグまたは電気泳動タグである、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記1種以上のヌクレオシドトリホスフェートが、各々の塩基に対して互いに異なるタグを含み、各々の塩基が、グアニン、アデニン、チミン、シトシン、ウラシル、イノシンおよび7−デアザ−グアニンよりなる群から選択される、項目74に記載の方法。
(項目82)
前記1つ以上のホスホロチオレート結合が、Ag、Hg2+またはCu2+により開裂される、項目74に記載の方法。
(項目83)
前記1つ以上のホスホロチオレート結合が、約7のpHおよび約22℃から約37℃までの温度で開裂される、項目82に記載の方法。
(項目84)
少なくとも1種の前記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾チオール−ヌクレオシドトリホスフェートである1種以上のヌクレオシドトリホスフェート、および核酸ポリメラーゼを含む、キット。
(項目85)
前記修飾チオールヌクレオシドトリホスフェートが、一般構造[III]:
【化9】


および一般構造[I]:
【化10】

よりなる群から選択され、
式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはRであり、
は、−SH、または−SRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール、
およびそれらの組合わせである、項目84に記載のキット。
(項目86)
前記修飾チオールヌクレオシドトリホスフェートが標識されている、項目84に記載のキット。
(項目87)
伸長用緩衝液、少なくとも1種のプライマーおよび製造元の取扱い説明書よりなる群から選択される1種以上の追加の構成要素をさらに含む、項目84に記載のキット。
(項目88)
前記少なくとも1種のプライマーが、少なくとも1種のタグを含む、項目87に記載のキット。
(項目89)
前記伸長用緩衝液が、マグネシウムイオン源を含む、項目87に記載のキット。
(項目90)
ピロホスフェートをさらに含む、項目87に記載のキット。
(項目91)
開裂用緩衝液をさらに含む、項目90に記載のキット。
(項目92)
前記開裂用緩衝液が、少なくとも1種の金属イオン源を含む、項目91に記載のキット。
(項目93)
前記少なくとも1種の金属イオンが、銀イオン源である、項目92に記載のキット。
(項目94)
前記銀イオン源が、AgNOである、項目93に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1枚の図面が含まれる。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求して必要な手数料を納付すれば受理官庁より入手できるであろう。
【図1】図1A〜図1Dは、プライマー伸長産物を作製すること、開裂することおよび単離することに関与するステップを例示する概略図であり、プライマー伸長産物の各々は、その3’末端に標識3’チオールヌクレオチドを含有する。図1Aは、未修飾ヌクレオシドトリホスフェート(pppN、本明細書においてdNTPとも呼ばれる)および修飾3’−チオール−ヌクレオシドトリホスフェート(pppAs、pppTs、pppGs、およびpppCs、本明細書においてpppA−s、pppT−s、pppG−s、pppC−s、sdATP、sdTTP、sdGTP、sdCTP、dAsTP、dTsTP、dGsTP、dCsTP、As、Ts、GsおよびCsとも呼ばれる)の混合物を用いてDNAテンプレートのプライマー伸長を示す概略図である。4種の3’−チオール−ヌクレオシドトリホスフェートの各々は、カラー星印により示されている互いに異なる蛍光体により標識される。DNAプライマー(赤色)は、プライマーの5’末端に灰色五角形構造として示されているアフィニティープローブまたはタグに結合される。図1Bは、DNAテンプレート(下部鎖)上のDNAポリメラーゼによるプライマー伸長後の、複数の標識3’−チオールヌクレオチド(As、Ts、Gs、Cs)が組み込まれたDNA鎖(上部)を示す概略図である。図1Cは、AgNOの存在下での、3’−チオールヌクレオチドを含有するDNA鎖の選択的開裂を示す概略図である。開裂は、各修飾3’−チオールヌクレオチドの3’末端に生じ、幾つかの標識開裂産物の作出をもたらす。図1Dは、3’−チオールヌクレオチドを含有するDNA鎖のAgNO誘導開裂後の、幾つかの異なる5’伸長産物の精製を示す概略図である。DNA開裂産物を、プライマー(灰色五角形)上のアフィニティータグに結合する分子(青色十字)を含有する固体支持体(赤色円)を用いて単離する。したがって、プライマー配列を含む最も5’側のDNA断片だけが回収される。他の標識断片の全てが洗い流される。
【図2】図2A〜図2Cは、正方向および逆方向プライマー伸長産物を作製すること、開裂することおよび単離することに関与するステップを例示する概略図であり、それらの各々は、その3’末端に標識3’チオールヌクレオチドを含有する。図2Aは、未修飾ヌクレオシドトリホスフェート(pppN)および修飾3’−チオール−ヌクレオシドトリホスフェート(pppA−s、pppT−s、pppG−s、およびpppC−s)の混合物を用いてDNAの二方向性PCR増幅を示す概略図である。4種の3’−チオール−ヌクレオシドトリホスフェートは、異なるカラーの星印により示された互いに異なる蛍光体により異なって標識される。正方向DNAプライマー(赤色)および逆方向DNAプライマー(緑色)は、灰色五角形(正方向プライマー)または紫色五角形(逆方向プライマー)として示されている異なるアフィニティープローブに結合される。図面の下部におけるDNA二重鎖は、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長後の、複数の標識3’−チオールヌクレオチド(As、Ts、Gs、Cs)が組み込まれている。図2Bは、AgNOの存在下での、3’−チオールヌクレオチドを含有するDNA鎖の選択的開裂を示す概略図である。開裂は、各修飾3’−チオールヌクレオチドの3’末端に生じ、幾つかの標識開裂産物の作出をもたらす。図2Cは、3’−チオールヌクレオチドを含有する正方向および逆方向プライム化DNA鎖のAgNO誘導開裂後の、5’伸長産物の精製を示す概略図である。正方向プライム化鎖から作出されたDNA開裂産物は、プライマー上のアフィニティータグ(灰色五角形)に結合する分子(青色十字)を含有する固体支持体(赤色円)を用いて単離される。逆プライム化鎖から作出されたDNA開裂産物は、逆プライマー上のアフィニティータグ(紫色五角形)に結合する分子(青色太陽)を含有する固体支持体(赤色円)を用いて単離される。したがって、正方向鎖および逆方向鎖の双方向から最も5’側のDNA断片をそれぞれ回収し、配列を決定するために分析できる。
【図3】図3A〜図3Eは、3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)の、DNAポリメラーゼによる伸長DNA鎖への組み込みを示す。図3Aは、3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)の化学構造を示す。図3Bは、磁気ビーズに結合された二重ビオチン標識DNAテンプレートを示す図である。該テンプレートは、Cy5で標識されるプライマーにハイブリダイズされる。5つのアデニン(A)ヌクレオチドは、プライマー配列に相補的であるテンプレート配列部分の下流に配置される。図3Cは、図3Bに示されたCy5標識プライマーにより作出された蛍光プロフィールを示す。蛍光強度はY軸に沿って示され、標識産物のサイズはX軸上に示され、単位0、1、2、3、4および5は、プライマーが、それぞれ0、1、2、3、4、または5つのさらなるヌクレオチドにより伸長されたことを示している。プライマー上の標識から生じた蛍光は、青色ピークにより示される。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。図3Dは、DNA合成が、5μM濃度の3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTTP)の存在下で実施される場合に作出されたDNA伸長産物の蛍光プロフィールを示す。蛍光強度はY軸に沿って示され、一方、標識産物のサイズはX軸上に示され、単位0、1、2、3、4および5は、プライマーが、それぞれ0、1、2、3、4、または5つのさらなるヌクレオチドを組み込んでいることを示している。プライマー上の標識から生じた蛍光は、青色ピークにより示される。この反応からの産物は、どこかに0から5つの修飾チミジン残基を含有しており、この産物の大部分は、0または1つの修飾ヌクレオチドを含有する。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。図3Eは、DNA合成が、1.0mM濃度の3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)の存在下で実施される場合に作出されたDNA伸長産物の蛍光プロフィールを示す。蛍光強度はY軸に沿って示され、標識産物のサイズはX軸上に示され、単位0、1、2、3、4および5は、プライマーが、それぞれ0、1、2、3、4、または5つのさらなるヌクレオチドを組み込んでいることを示している。プライマー上の標識から生じた蛍光は、青色ピークにより示される。この反応からの産物のほぼ全ては、5つの修飾チミジンヌクレオチドを組込んでいる。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。
【図4】図4A〜図4Eは、3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)ヌクレオチドの、プライマー伸長産物への組み込みの後の、銀の存在下でのヌクレオチドの開裂を示す。図4Aは、50μMの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)ヌクレオシドトリホスフェートの存在下で作出された未開裂プライマー伸長産物の蛍光プロフィール(青色)を示す。図4Bは、AgNOによる処理後の、50μMの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)ヌクレオシドトリホスフェートの存在下で作出された開裂プライマー伸長産物の蛍光プロフィール(青色ピーク)を示す。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。図4Cは、500μMの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)ヌクレオシドトリホスフェートの存在下で作出された未開裂プライマー伸長産物の蛍光プロフィール(青色)を示す。図4Dは、AgNOによる処理後の、500μMの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)ヌクレオシドトリホスフェートの存在下で作出された開裂プライマー伸長産物の蛍光プロフィール(青色ピーク)を示す。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。図4Eは、標識プライマー単独により作出された蛍光プロフィールを示す。プライマー上の標識から生じた蛍光は、青色ピークにより示される。橙色ピークは、サイズ標品の蛍光プロフィールを表す。
【図5】図5は、3’ホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチドの化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸ポリメラーゼが、チオール−ヌクレオシドトリホスフェートを、1つ以上のホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチドを作出するために伸長中のポリヌクレオチド鎖に組み込むことができるという出願人の発見に一部基づく。したがって、ホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチドは、化学的に合成されるよりもむしろポリメラーゼを用いて酵素的に合成され得る。したがって、本発明は、修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法を提供し、該修飾ポリヌクレオチド配列は、(1つ以上の)切断可能なヌクレオシド間結合を含む。本明細書に用いられる「切断可能なヌクレオシド間結合」または「切断可能な結合」とは、実質的にホスホジエステル結合を開裂しない条件下で開裂できるヌクレオシド間結合のことである。本明細書に記載される核酸ポリメラーゼは、1つ以上の切断可能なヌクレオシド間結合を含むポリヌクレオチドを作出するために使用できる。特定の実施形態において、切断可能なヌクレオシド間結合は、(1つ以上の)ホスホロチオレート結合である。
【0035】
したがって、本発明は、修飾ポリヌクレオチド配列を作製する方法を提供する。本明細書に用いられる用語「修飾ポリヌクレオチド配列」とは、1つ以上のホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチド配列のことである。該方法は、少なくとも1種のプライマーを、テンプレートポリヌクレオチド配列にアニーリングすること、および1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、プライマーを伸長させることを含み、ここで、少なくとも1種の上記ヌクレオシドトリホスフェートが修飾される。本明細書に用いられる語句「修飾ヌクレオシドトリホスフェート」または「修飾されるヌクレオシドトリホスフェート」とは、核酸ポリメラーゼにより新生ポリヌクレオチドに組み込むことができ、それによって、1つ以上のホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作製する、チオール−ヌクレオシドトリホスフェートのことである。本明細書に用いられる用語「ホスホロチオレート結合」とは、硫黄原子とリン原子との間の共有結合のことである。本明細書に用いられる語句「ホスホロチオレート結合を含むポリヌクレオチド配列」とは、硫黄−リン共有結合を含むポリヌクレオチド配列のことである。特に、ホスホロチオレート結合は、硫黄原子により、ホスホジエステル結合内の架橋酸素原子の1つを置換する場合に生じる。
【0036】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、3’ホスホロチオレート結合を含み、一般構造[II]:
【0037】
【化21】

により表される。
【0038】
3’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列は、1種以上の3’チオール−ヌクレオシドトリホスフェートを伸長中のポリヌクレオチド鎖に組み込むことによって作製できる。本明細書に用いられる「3’チオール−ヌクレオシドトリホスフェート」とは、一般構造[I]:
【0039】
【化22】

を有する分子のことであり、
は、水素、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基、またはRであり、
は、−SH、または−SRであり、
は、置換または非置換:アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である。
【0040】
本明細書に用いられる「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」とは、飽和または不飽和、直鎖、分枝鎖、または環式であり、それぞれ親のアルカン、アルケン、またはアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子の除去により誘導された炭化水素基から誘導される基を意味する。典型的なアルキル(例えば、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル)、アルケニル(例えば、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル)およびアルキニル(例えば、アルキニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキニル)基は、限定はしないが、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど、1個から12個までの飽和および/または不飽和炭素からなる。
【0041】
本明細書に用いられる「アリール」とは、親の芳香族環系の1個の炭素原子から1個の水素原子の除去により誘導された、6個から20個までの炭素原子の一価の芳香族炭化水素基を意味する。例えば、シクロアリールおよびヘテロアリール基を含む典型的なアリール基は、置換または非置換であり得、限定はしないが、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどの基が挙げられる。
【0042】
別の実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、5’ホスホロチオレート結合を含み、一般構造[IV]:
【0043】
【化23】

により表される。
【0044】
5’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列は、1種以上の5’チオール−ヌクレオシドトリホスフェートを伸長中のポリヌクレオチド鎖に組み込むことによって作製できる。本明細書に用いられる「5’チオール−ヌクレオシドトリホスフェート」とは、一般構造[III]:
【0045】
【化24】

を有する分子のことである。
【0046】
「ヌクレオシド」は、糖分子に結合された窒素塩基を含む。本明細書に用いられる場合、この用語は、KornbergおよびBaker、DNA Replication、第二版(Freeman、サンフランシスコ、1992年)に記載された2’−デオキシおよび2’−ヒドロキシル形態の天然ヌクレオシド類およびヌクレオシド類縁体を含む。例えば、天然ヌクレオシド類としては、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、イノシン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジンが挙げられる。ヌクレオシド「類縁体」とは、例えば、Scheit、Nucleotide Analogs(John Wiley、ニューヨーク、1980年)により一般に記載されるように、修飾塩基部分および/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオシド類のことである。このような類縁体としては、結合性を増強し、縮重を減少させ、特異性を増加させるように設計された合成ヌクレオシド類などが挙げられる。ヌクレオシド類縁体としては、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、2−チオシチジンなどが挙げられる。ヌクレオシド類縁体は、本明細書に記載された任意の汎用塩基を含むことができる。
【0047】
本明細書に用いられる用語「塩基」とは、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体(例えば、プリン、ピリミジン、7−デアザプリン)のヘテロ環式窒素性塩基のことである。本発明の方法における使用に好適な塩基としては、限定はしないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、ヒポキサンチンおよび7−デアザ−グアニンが挙げられる。これらおよび他の好適な塩基は、該塩基を有するヌクレオチドがポリヌクレオチドの鎖または配列に酵素的に組み込まれることを可能にする。該塩基はまた、他のヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体上の塩基との水素結合を含んで塩基対を形成することもできる。該塩基対は、通例的な(標準的な)ワトソン−クリック塩基対でもあり得るし、非通例的な(非標準的な)非ワトソン−クリック塩基対、例えば、フーグスタイン(Hoogstein)塩基対または二座塩基対でもあり得る。
【0048】
本明細書に用いられる用語「ワトソン−クリック塩基対」とは、核酸の反対側の逆平行鎖上の水素結合した塩基の対のことである。ワトソンとクリックによって初めて立案された塩基対合の規則は当業者によく知られている。これらの規則によると、アデニン(A)はチミン(T)またはウラシル(U)と対合し、グアニン(G)はシトシン(C)と対合し、相補鎖が互いに逆平行になることが要求される。本明細書に用いられる用語「ワトソン−クリック塩基対」は、標準的なAT、AUまたはGC塩基対のみならず、標準的塩基または別の相補的な非標準的塩基と水素結合できるヌクレオチド類縁体の非標準的または修飾された塩基間に形成された塩基対も包含する。このような非標準的ワトソン−クリック塩基対合の一例は、ヌクレオチド類縁体であるイノシンを含む塩基対合であり、ここで、そのヒポキサンチン塩基は、他のヌクレオチドのアデニン、シトシンまたはウラシルと2つの水素結合を形成する。
【0049】
本明細書に用いられる用語「ポリヌクレオチド配列」とは、1つ以上の共有結合(例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオレート結合)により、単一の分子内に2つ以上のヌクレオシドトリホスフェートを組み込むことによって作製される核酸分子(例えば、DNA、RNA)のことである。「テンプレートポリヌクレオチド配列」は、本明細書に記載された方法を用いて、配列情報を生み出すか、または得ることが望ましい任意のヌクレオチド配列であり得る。テンプレートポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列(例えば、オリゴヌクレオチド配列)であってもよいし、一本鎖または二本鎖であってもよい。最初は二本鎖の形態で提供されるテンプレートを処理して、二本の鎖に分離することができる(例えば、DNAを変性させる)。テンプレートポリヌクレオチドはまた、天然のものでも、単離されたものでも合成されたものでもよい。好適なテンプレートの例としては、限定はしないが、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、相補的DNA(cDNA)、PCR産物および他の増幅ヌクレオチドが挙げられる。RNAもまたテンプレートとして使用できる。例えば、RT−PCRなどの当該分野に知られている方法を用いて、RNAを逆転写してcDNAを得ることができる。テンプレートポリヌクレオチド配列は、当該分野に知られている技法(例えば、単離、クローン化、増幅)によって、任意の簡便な形態で使用でき、所望の場合は、当該分野に知られている技法によって、配列決定反応のために調製できる。特定の一実施形態において、テンプレートポリヌクレオチド配列はDNAを含む。さらに一実施形態において、テンプレートポリヌクレオチド配列は、センスDNA鎖およびアンチセンスDNA鎖を含み、ここで、少なくとも1種のプライマーが、センス鎖およびアンチセンス鎖の少なくとも一方(例えば、センス鎖、アンチセンス鎖)または双方にアニールする。
【0050】
テンプレートポリヌクレオチドは、種々の供給源のいずれかから得ることができる。例えば、対象から得られ得るか、または誘導され得るサンプルからDNAを単離できる。「サンプル」という語は、広い意味で用いられ、配列決定が実施される任意のテンプレート源を表す。サンプル源は、任意のウィルス種、原核生物種、古細菌種、または真核生物種のものであり得る。該サンプルは、他のものの中でもとりわけ、細胞を含有する血液または他の体液;精子;および生検(例えば、組織)サンプルであり得る。
【0051】
本明細書に用いられる用語「プライマー」とは、テンプレートポリヌクレオチド配列に相補的であり、プライマー伸長産物の合成開始点として働くことができるオリゴヌクレオチドのことである。一実施形態において、プライマーはポリヌクレオチド配列のセンス鎖に相補的であり、正方向の伸長産物の合成開始点として働く。他の実施形態において、プライマーはポリヌクレオチド配列のアンチセンス鎖に相補的であり、逆方向の伸長産物の合成開始点として働く。プライマーは天然物でもよいし、精製された制限消化物でもよいし、合成的に作製されてもよい。プライマーの適切な長さは該プライマーの意図された使用法に依存するが、典型的には、約5ヌクレオチドから約200ヌクレオチド;約5ヌクレオチドから約100ヌクレオチド;約5ヌクレオチドから約75ヌクレオチド;約5ヌクレオチドから約50ヌクレオチド;約10ヌクレオチドから約35ヌクレオチド;約18ヌクレオチドから約22ヌクレオチドの範囲である。プライマーは該テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、プライマー伸長が生じるために、テンプレートにハイブリダイズする上で十分に相補的である必要がある。すなわち、プライマー伸長を可能にする条件下で該テンプレートに該プライマーがアニールするように、該プライマーは該テンプレートのポリヌクレオチド配列に十分に相補的である。本明細書に用いられる語句「プライマー伸長を可能にする条件」とは、所与のポリメラーゼ酵素がアニールされたプライマー伸長を触媒する条件、例えば、とりわけ、塩濃度(金属塩および非金属塩)、pH、温度、および必要な補因子の濃度を称する。広範囲のポリメラーゼ酵素のプライマー伸長活性に関する条件は当該分野に知られている。一例として、Taqポリメラーゼによる核酸プライマー伸長を可能にする条件としては、以下のものが挙げられる(任意の所与の酵素に関して、このような条件は1組より多い場合があり、しばしば1組より多い):50mMのKCl、10mMのトリス(pH 8.3)、4mMのMgCl、(実施されているプライマー伸長または配列決定のタイプに依存して、200μMの1種以上のdNTP類および/または鎖停止剤が含まれ得る)を含有する緩衝液中で反応が行われ、反応は72℃で実施される。
【0052】
C−G対合ではより多くの水素結合が利用できるため、プライマーのサイズおよびハイブリダイゼーションの安定性は、A−T塩基対合対C−G塩基対合の比率にある程度依存することは当業者には明らかであろう。さらに、当業者は、伸長プライマーと増幅された配列の他の部分との間の相同性の程度を考慮し、それに従ってストリンジェンシーの程度を選択するであろう。このようなルーチン実験の指針は、文献、例えば、Sambrook,J.,Fritsch E.F.およびManiatis,T.によるMolecular Cloning:A Laboratory Manual(1989年)に見ることができる。
【0053】
本発明の方法において、ポリペプチド配列の作製および/または配列決定を促進するために、タグが使用できる。本明細書に用いられる「タグ」または「標識」は交換可能に用いられ、(例えば、単離手段(例えば、相手の部分)に結合させることによって)直接的または間接的に特異的に検出されることが可能であり、したがって、該タグを含むポリヌクレオチド配列を同定および/または単離するために使用できる、任意の部分を称する。本発明の方法に使用される好適なタグは、プライマー、修飾ポリヌクレオチド配列、テンプレートの上に、または1種以上のヌクレオシドトリホスフェート(例えば、非修飾または標準的ヌクレオシドトリホスフェート類、修飾ヌクレオシドトリホスフェート類)の上に存在でき、とりわけ、アフィニティータグ(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン)、ハプテン、リガンド、ペプチド:核酸、蛍光体、発色団、および抗体(例えば、ジゴキシゲニン(DIG)、赤血球凝集素(HA)、myc、FLAG)により認識されるエピトープタグが挙げられる(PCR2:A Practical Approach、オックスフォード大学出版、オックスフォード、39−54頁のAndrus,A.‘‘Chemical methods for 5’non−isotopic labelling of PCR probes and primers’’(1995))。他の好適なタグとしては、限定はしないが、発色団、蛍光体、ハプテン、放射性核種(例えば、32P、33P、35S)、蛍光消光剤、酵素、酵素基質、アフィニティータグ(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンなど)、質量タグ、電気泳動タグ、および抗体により認識されるエピトープタグが挙げられる。一定の実施形態において、該標識は、ピリミジン塩基の5位の炭素上に、またはプリン塩基の3デアザ位の炭素上に存在する。特定の一実施形態において、該プライマーは少なくとも1種のタグまたは標識を含む。
【0054】
さらなる一実施形態において、該プライマーは少なくとも1種のアフィニティータグを含む。本明細書に定義された「アフィニティータグ」とは、相手の部分によって特異的に結合され得る、ヌクレオシドまたはヌクレオシド類縁体に結合できる部分のことである。アフィニティータグとその相手との相互作用によって、アフィニティータグを有する分子の単離(すなわち、特異的捕捉および精製)が可能になる。好適な例としては、限定はしないが、ビオチンまたはイミノビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジンが挙げられる。アフィニティータグの1つのサブクラスは、抗体またはその抗原結合断片により認識され特異的に結合されるタグを称する「エピトープタグ」である。エピトープタグの例としては、モノクローナル抗Myc抗体によって認識されるMycタグ;抗FLAG(商標)抗体によって認識されるFLAG(商標)タグ、および抗ジゴキシゲニン抗体によって認識されるジゴキシゲニンが挙げられる。一実施形態において、該プライマーはビオチンタグを含む。他の実施形態において、該プライマーはジゴキシゲニンタグを含む。
【0055】
他の実施形態において、該プライマーは、蛍光体であるタグ(例えば、標識)を含む。好適な蛍光体は、限定はしないが、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor350、Alexa Fluor488、Alexa Fluor532、Alexa
Fluor546、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor633、Alexa Fluor660およびAlexa Fluor680)、AMCA、AMCA−S、BODIPY色素(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、CAL色素、カルボキシルホダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、カスケードブルー、カスケードイエロー、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ−フルオレセイン、DM−NERF、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、カルボキシ−フルオレセイン(FAM)、ヒドロキシクマリン、IR色素(IRD40、IRD700、IRD800)、JOE、リサミンローダミンB、マリンブルー、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、オイスター色素、パシフィックブルー、PyMPO、ピレン、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ロードルグリーン、2’,4’,5’,7’−テトラ−ブロモスルホン−フルオレセイン、テトラメチル−ローダミン(TMR)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、およびテキサスレッド−Xが挙げられる蛍光色素として提供され得る。他の実施形態において、該標識は質量タグまたは電気泳動タグである。
【0056】
上記の種々の検出可能な部分に加えて、本発明は、オリゴヌクレオチドプライマーに直接結合されるか、またはポリマーマトリックスに埋め込まれるか、もしくはポリマーマトリックスに結合され、次いで、該プライマーに結合され得る、スペクトル分析可能な量子ドット、金属ナノ粒子またはナノクラスターなどのタグまたは標識の使用も包含する。上記のとおり、検出可能部分は、それら自体が直接検出可能である必要はない。例えば、それらは検出される基質に作用し得るか、またはそれらは検出可能になるために修飾を必要とし得る。
【0057】
本明細書に記載されるように、該プライマーおよびヌクレオチドトリホスフェートは、1種以上のタグまたは標識(例えば、第1のタグ、第2のタグ、第3のタグ、第4のタグ、第5のタグ、第6のタグ、第7のタグ、第8のタグ)を含み得る。該方法に使用される種々のタグは、同じであっても異なっていても(別個であっても)よい。特定の一実施形態において、該方法に2種以上のタグが用いられる場合、該プライマーまたはヌクレオシドトリホスフェートが、別個の1種以上のタグを用いて互いに分離できるように、該タグ(例えば、第1、第2)は、異なっている(別個である)。
【0058】
通常の当業者であれば分かることであるが、テンプレート、プライマーなどの記述は一般に、単一の分子ではなく、関連領域内の実質的に同一な核酸分子の集団またはプールを意味する。したがって、例えば、「テンプレート」とは一般に、複数の実質的に同一なテンプレート分子を意味する。
【0059】
本発明の方法により、プライマー伸長は、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で実施される。一実施形態において、該ヌクレオシドトリホスフェートは、標準的なデオキシヌクレオシドトリホスフェート類(本明細書において、dNTP類(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、dUTP)とも称される)およびpppN類(例えば、pppA、pppC、pppG、pppT)ならびに修飾チオール−デオキシヌクレオシドトリホスフェート類(例えば、3’および5’チオール−デオキシヌクレオシドトリホスフェート類(本明細書において、sdNTP類(例えば、sdATP、sdCTP、sdGTP、sdTTP、sdUTP)およびdNsTP類(例えば、dAsTP、dCsTP、dGsTP、dTsTP、dUsTP)とも称される)の混合物である。特定の一実施形態において、ヌクレオシドトリホスフェートの混合物は、4種の標準的なデオキシヌクレオチドトリホスフェートおよび1種以上のチオール−ヌクレオシドトリホスフェートを含む。好適なチオール−ヌクレオシドトリホスフェートとしては、限定はしないが、アデニン、シトシン、チミン、グアニンまたはウラシルである塩基を含むものが挙げられる。本発明の方法の特定の実施形態において、当業者であれば分かるように、修飾dNTPの組込みが標準的dNTPの組込みよりも頻度が低くなるように、標準的dNTPの各々は、対応する修飾dNTPよりも高濃度で存在する(例えば、混合物中のdCTPは、同じ混合物中の修飾チオール−dCTPよりも高濃度で存在する)。
【0060】
ヌクレオシドトリホスフェートの混合物中の修飾チオール−ヌクレオシドトリホスフェートは、非標識であってもよいし、本明細書に記載された1種以上の標識を含んでもよい。特定の一実施形態において、ヌクレオシドの混合物は、4種の標識チオール−ヌクレオシドトリホスフェート(例えば、sdCTP、sdTTP、sdATP、およびsdGTP)を含む。特定の一実施形態において、4種のチオール−ヌクレオシドトリホスフェートの各々は、該混合物中の他のいずれのヌクレオチド上にも存在しない別個の標識を含む。したがって、一定の実施形態において、ピリミジン塩基の5位の炭素上に、またはプリン塩基の7デアザ位の炭素上に該標識が存在する。当業者であれば分かることであるが、4種の通例的なヌクレオシドトリホスフェートと4種の修飾3’チオール−ヌクレオシドトリホスフェートの混合物であって、4種の修飾3’チオール−ヌクレオシドトリホスフェートの各々が混合物中の他のいずれのヌクレオチド上にも存在しない別個の標識を含む混合物を利用する単一反応を実施することにより、本発明の方法によってポリヌクレオチド配列を決定できる。
【0061】
標準的(dNTP類)および修飾チオールデオキシヌクレオチド(sdNTP類)の双方を、伸長する核酸鎖内に酵素的に組み込むことのできる核酸ポリメラーゼを用いて、プライマーの伸長(例えば、DNA合成)を達成できる。本明細書に用いられる語句「核酸ポリメラーゼ酵素」とは、ヌクレオシドトリホスフェートのテンプレート依存性重合を触媒して、テンプレート核酸配列の核酸鎖の一方に相補的なプライマー伸長産物を形成する(例えば、天然の、組換えの、合成の)酵素のことである。多数の核酸ポリメラーゼが当該分野に知られており、市販されている。熱安定性、すなわち、相補的核酸のアニールされた鎖を変性させる上で十分な温度に供された後でも機能を保持する核酸ポリメラーゼは、本発明の方法にとって特に有用である。
【0062】
本発明の方法に好適なポリメラーゼとしては、標準的なデオキシヌクレオチドの認識および組込みにとって有用であることが当該分野に知られている任意のポリメラーゼが挙げられる。このようなポリメラーゼの例は、米国特許第6,858,393号の表1に開示されており、その内容は参照として本明細書に組み込まれている。多くのポリメラーゼがプルーフリーディング活性またはエキソヌクレオリティック活性を有し、プライマー伸長に利用できる3’端の消化をもたらし得ることは当業者に知られている。この潜在的問題を避けるために、この活性を欠くポリメラーゼ酵素(例えば、本明細書でエキソポリメラーゼと称されるエキソヌクレアーゼ欠失ポリメラーゼ)を使用することが望ましいと考えられる。このようなポリメラーゼは当業者によく知られており、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、シークエナーゼ、エキソ−サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼおよびエキソ−バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼが挙げられる。特定の一実施形態において、DNA内への修飾チオールデオキシヌクレオチド類(sdNTP類)の組込みは、PCRなどのDNA増幅反応を用いて達成される。したがって、本発明の方法にとって特に好適なポリメラーゼとしては、高温で安定であり機能するもの(すなわち、PCR熱サイクルに有用な熱安定性ポリメラーゼ)が挙げられる。そのようなポリメラーゼの例としては、限定はしないが、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、TaqFS DNAポリメラーゼ、サーモシークエナーゼ、サーミネーターDNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼおよびVent(エキソ)DNAポリメラーゼが挙げられる。他の実施形態において、RNA内への修飾チオールヌクレオシドトリホスフェートの組込みは、RNAポリメラーゼを用いて達成される。RNAポリメラーゼの例としては、限定はしないが、大腸菌RNAポリメラーゼ、T7RNAポリメラーゼおよびT3RNAポリメラーゼが挙げられる。
【0063】
本発明は、複数のテンプレートポリヌクレオチド配列に複数のプライマーをアニーリングすること;および少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが修飾されている1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で、複数のプライマーを伸長させ、それによって、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含む複数の伸長産物を作製すること、を含む、ポリヌクレオチド配列の全体または一部を決定する方法も包含する。該伸長産物におけるホスホロチオレート結合は、複数の断片が作製される条件下で開裂され、次いで、プライマーを含む該伸長産物の断片が(例えば、タグ、標識、固体支持体および本明細書に記載された他の手段を用いて)同定され、引き続いて、該断片の3’端におけるヌクレオチドが同定され、その結果、該ポリヌクレオチド配列が決定できる。
【0064】
一実施形態において、少なくとも1種の修飾ヌクレオチドは、一般構造[I]:
【0065】
【化25】

を含み、その結果、作製される修飾ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの3’ホスホロチオレート結合を含む一般構造[II]:
【0066】
【化26】

を含む。
【0067】
他の実施形態において、少なくとも1種の修飾ヌクレオチドは、一般構造[III]:
【0068】
【化27】

を含み、その結果、作製される修飾ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの5’ホスホロチオレート結合を含む一般構造[IV]:
【0069】
【化28】

を含む。
【0070】
当業者であれば分かることであるが、本発明の方法を用いてポリヌクレオチドの配列を決定するために、複数の伸長産物の開裂により、各断片がプライマーを含む、断片のラダーが作製できる。当業者であれば分かることであるが、4つの反応の各々で異なる修飾dNTP(例えば、チオールヌクレオシドトリホスフェート)が用いられる4つの別個の伸長反応が実施できる。伸長産物を開裂して種々のサイズの断片を作製し、該断片を分析する(例えば、ゲル上で)と、個々のラダーにおける各断片が、その3’端に同じ修飾ヌクレオチド(伸長反応に用いられた修飾ヌクレオチド)を有する、4種の別個のラダーが作製される。3’端に既知のヌクレオチドを有する各断片のサイズを判定し、4種の別個のラダーにおける該断片のサイズを比較することによって、該伸長産物の配列を決定することができる。伸長産物の配列が知られれば、伸長産物の配列の逆の相補体であるテンプレートポリヌクレオチドの配列を決定することができる。
【0071】
あるいは、4種の修飾dNTP(例えば、チオール−ヌクレオシドトリホスフェート)を含む単一伸長反応が、当業者に理解される。この単一伸長反応において、各反応は、4塩基に対応する4種の別個の標識(例えば、1種以上の修飾ヌクレオシドトリホスフェート上、1種以上のdNTP上、1種以上のプライマー上など、およびこれらの組み合わせ上の、異なる標識)を含み、ここで、この別個の標識の各々は、異なる塩基を表す単一の配列ラダーを作製するために、使用され得る。したがって、該ラダーは、完全長の伸長産物およびその種々の3’切断体を表す断片を含む。伸長産物の存在し得る全ての3’切断体が作製されて、該ポリヌクレオチドの完全な配列が決定できることが好ましい。断片のラダーを(例えば、ゲル上で)分析し、各断片の3’端におけるヌクレオチドを(例えば、該ヌクレオチド上の、蛍光体などの別個の標識またはタグを用いて)同定し、配列ラダーを(例えば、ゲル上で)読み取る(最短断片の3’端のヌクレオチドから始まり、最長断片の3’端のヌクレオチドで終わる)ことによって、該ポリヌクレオチドの配列を決定することができる。伸長産物の配列が知られれば、伸長産物の配列の逆の相補体であるテンプレートポリヌクレオチドの配列を決定することができる。
【0072】
ポリヌクレオチドに関連して、本明細書に用いられる語句「ポリヌクレオチド配列の決定」、「配列決定」などの用語は、ポリヌクレオチドの部分的ならびに完全な配列情報の決定を含む。すなわち、該用語は、標的ポリヌクレオチドについての配列比較、特性評価などのレベルの情報、ならびに対象領域内標的ポリヌクレオチドの各ヌクレオシドの明白な同定および順序決定を含む。本発明の一定の実施形態において、「ポリヌクレオチドの決定」は、単一ヌクレオチドの同定を含み、一方、他の実施形態においては、2つ以上のヌクレオチドが同定される。本発明の一定の実施形態において、単一サイクルそれ自体では任意のヌクレオチドを同定するために不十分である配列情報が、集められる。ヌクレオシド、ヌクレオチド、および/または塩基の同定は、本明細書では等価と考えられる。ポリヌクレオチドについての配列決定の実施により、完全に相補的な(100%相補的な)ポリヌクレオチドの配列に関して、典型的には等価な情報が得られ、したがって、完全に相補的なポリヌクレオチドに対して直接実施された配列決定と等価であることに留意されたい。本明細書に記載された方法により、部分的な配列決定、例えば、テンプレートにおいて互いに離れている個々のヌクレオチドの同定が可能になる。本発明の一定の実施形態において、より完全な情報を集めるために、複数の反応が実施される。
【0073】
本発明の一実施形態において、多型を検出する目的で、本明細書に記載された方法を用いて、1つ以上のヌクレオチドのアイデンティティが決定される。用語「多型」は、当該分野での通常の意味が与えられており、(例えば、同じ種の)個体間の、ヌクレオチド配列(例えば、ゲノム配列)の違いを称する。特定の一実施形態において、多型は、1箇所での多型を称する「単一ヌクレオチドの多型」(SNP)である。本発明の他の実施形態において、テンプレートポリヌクレオチド配列における複数のヌクレオチド(例えば、1つより多く)のアイデンティティを決定するためにポリヌクレオチド配列を決定するための方法が用いられる。
【0074】
特定の実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含む複数の伸長産物が作製される。PCRを実施するための方法は当該分野によく知られており、例えば、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,683,202号、米国特許第4,965,188号、およびDieffenbach,C.およびDveksler,GS、PCR Primer:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、2003年に記載されている。
【0075】
ポリヌクレオチド配列を決定するための方法は、複数のプライマーに結合した修飾ヌクレオチド配列の複数の断片が作製される条件下での伸長産物におけるホスホロチオレート結合の開裂を含む。そのような条件は、開裂断片がアニールされ、それによって、一本鎖ポリヌクレオチドが作製される、テンプレートポリヌクレオチド配列からの該開裂断片の分離ももたらし得ることが、当業者に理解される。ポリヌクレオチド配列におけるホスホロチオレート結合(3’または5’)は当該分野に知られた方法(Vyle,J.S.ら、Biochemistry 31:3012−3018頁(1992);Sontheimer,E.J.ら、Methods 18:29−37頁(1999);Mag,M.ら、Nucleic Acids Res.、19(7):1437−1441頁(1991年))によって効率的に開裂させることができる。例えば、ホスホロチオレート結合の開裂は、該ポリヌクレオチド配列を特定の金属剤に曝露する(例えば、接触させる)ことによって達成できる。該金属は、例えば、とりわけ、銀(Ag)、水銀(Hg)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)であり得る。Ag、Hg++、Cu++、Mn++、ZnまたはCdアニオンを提供する塩は特に有用である(他の酸化状態のイオンを提供する塩も使用できる)。ヨウ素(I)も使用できる。硝酸銀(AgNO)などの銀含有塩、またはAgイオンを提供する他の塩は、本発明の方法に特に有用である。
【0076】
ポリヌクレオチド配列に存在するホスホロチオレート結合を開裂するための好適な条件としては、限定はしないが、約4.0から約10.0、約5.0から約9.0、または約6.0から約8.0の範囲のpH、および約15℃から約50℃、約20℃から約45℃、約25℃から約40℃、約22℃から約37℃、約24℃から約32℃の範囲の温度で、Agイオンなどの金属剤と共にポリヌクレオチド配列をインキュベートすることが挙げられる。好適な具体的条件としては、例えば、約7.0のpH、約22℃から約37℃で少なくとも約10分間、50mMのAgNOの存在下でのインキュベーションが挙げられる。開裂反応のための条件の例は、実施例2に記載されている。このような条件は、開裂断片がアニールされるテンプレートポリヌクレオチド配列から該開裂断片が分離される追加ステップ(例えば、約90℃から約100℃の温度で、約30秒間から約60秒間のインキュベーション)を、ホスホロチオレート結合が開裂される前に、または同時に任意に含む。
【0077】
本発明のさらなる実施形態において、ポリヌクレオチド配列を決定する方法は、開裂反応に引き続いて、開裂断片の単離(例えば、単離手段を用いて)をさらに含む。特定の一実施形態において、単離される開裂断片は、伸長反応において伸長されたプライマーを含む。本明細書に用いられる用語「単離断片」とは、限定はしないが、プライマーに結合していない開裂断片、緩衝液、組み込まれなかったヌクレオチド、核酸テンプレートおよび酵素など、伸長反応および/または開裂反応からの他の成分から精製されるか、または実質的にそれらを含まない断片の調製物を称する。このような断片は、単離手段、例えば、タグ(例えば、プライマー上のタグ)を認識し、それに結合する部分を含む支持体(例えば、とりわけ、磁気ビーズ、アガロースビーズまたはセファロースビーズ)を用いて単離できる。本発明にとって好適な相手部分の対の例としては、限定はしないが、ビオチンとストレプトアビジン/アビジン、またはエピトープ(例えば、ジゴキシゲニン(DIG)と該エピトープを認識し結合する抗体(例えば、抗DIG抗体)が挙げられる。
【0078】
本明細書に用いられる「支持体」とは、核酸分子、微小粒子などを、上にまたは中に固定できる、例えば、それらが共有結合または非共有結合できるか、または、それらを上にまたは中に部分的にまたは完全に埋め込むことができ、その結果、それらが自由に拡散すること、または互いに関して移動することがほとんど、または全く防止されるマトリックスのことである。用語「微小粒子」は、本明細書では、50ミクロン以下、好ましくは、10ミクロン以下の最小断面直径を有する粒子を称するために用いられる。微小粒子は、限定はしないが、ガラス(例えば、制御多孔質ガラス)、シリカ、ジルコニア、架橋ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、二酸化チタン、ラテックス、ポリスチレンなどの種々の無機および有機材料から作製できる。種々の好適な材料および他の考察に関しては、例えば、米国特許第6,406,848号を参照されたい。磁気応答性の微小粒子を使用できる。特定の好ましい微小粒子の磁気応答性は、増幅後、微小粒子に結合したテンプレートの容易な回収および濃縮を可能にし、さらなるステップ(例えば、洗浄、試薬の除去など)を助ける。本発明の一定の実施形態において、異なる形状を有する(例えば、一部は球状であり、他は非球状である)微小粒子の集団が用いられる。基質に微小粒子またはテンプレートを結合させるために、一般に、互いにアフィニティーを示し、結合対を形成するような、任意の分子対が使用できる。該結合対の第1のメンバーが、基質に共有結合または非共有結合し、該結合対の第2のメンバーが、微小粒子またはテンプレートに共有結合または非共有結合する。
【0079】
本発明の他の実施形態において、ゲル内に固定された好適な増幅プライマーを有するゲルなどの半固体支持体におけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、該テンプレートが増幅される。テンプレート、追加の増幅プライマー、およびPCR反応に必要な試薬は、半固体支持体内に存在する。増幅プライマー対の一方または双方は、好適な結合部分、例えばアクリダイト基により半固体支持体に結合される。結合は重合の間に生じ得る。半固体支持体の形成前に(例えば、ゲル形成前の液体中に)、追加の試薬(例えば、テンプレート、第2の増幅プライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、補因子など)が存在してもよいし、半固体支持体の形成後に、1種以上の試薬を半固体支持体に拡散させてもよい。該半固体支持体の孔径は、このような拡散が可能であるように選択される。当該分野でよく知られているように、ポリアクリルアミドゲルの場合、孔径は主に、アクリルアミドモノマーの濃度によって、そして、それより低い程度ではあるが、架橋剤によって決定される。他の半固体支持体材料の場合にも同様な考慮がなされる。所望の孔径を得るために、適切な架橋剤および濃度を選択できる。
【0080】
本発明の一定の実施形態において、カチオン性脂質、ポリアミン、ポリカチオンなどの添加剤が、重合前に該溶液中に含まれ、微小粒子の周囲にゲル内ミセルまたは凝集体を形成する。米国特許第5,705,628号、米国特許第5,898,071号および米国特許第6,534,262号、ならびに米国特許出願公開第2002/0106686号に開示された方法もまた使用でき、それらの各々は参照として本明細書に組み込まれている。例えば、クローンPCRに関し、ビーズの近くにDNAを密集させるために種々の「密集試薬」を使用できる。SPRI(登録商標)磁気ビーズ法および/または条件も使用できる。例えば、10%ポリエチレングリコール(PEG)の存在下で効果的なPCR増幅を示している米国特許第5,665,572号を参照されたい。本発明の方法の一定の実施形態において、増幅(例えばPCR)、結合、またはそれら双方が、ベタイン、ポリエチレングリコール、PVP−40などの試薬の存在下で実施される。これらの試薬は、溶液に添加してもよいし、乳濁液中に存在してもよいし、および/または半固体支持体内に拡散させてもよい。
【0081】
他の多数の支持体も当該分野に知られており、それらのいくつかは、米国特許第6,828,100号に記載されており、その内容は、参照として本明細書に組み込まれている。一般に、オリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、テンプレートなどの核酸を修飾するために、微小粒子または他の支持体または基質に対するこのような核酸の結合を助ける目的で、当該分野に知られている種々多様な方法を用いることができる。
【0082】
当業者であれば分かることであるが、単離された伸長産物は、多くの標準的で周知の検出の方法および/または技法のうちの1つを用いて、直接的または間接的に同定できる。このような方法および/または技法としては、限定はしないが、蛍光検出、分光光度的検出、化学的検出および/または電気泳動検出が挙げられる。一実施形態において、単離された伸長産物の検出を、例えば、高分解能変性ポリアクリルアミド/尿素ゲル電気泳動、毛細管分離などの手段、または他の分析手段により達成した後、例えば、走査分光光度計または蛍光光度計を用いて該断片を検出する。特定の一実施形態において、蛍光標識したプライマー伸長産物を、当該分野によく知られた手段に従って、ゲル電気泳動により分析し、引き続いて、標準的な蛍光光度計を用いてゲルにおいて検出する。
【0083】
単離された開裂断片の電気泳動分離により、各断片が、該プライマーから始まり、その3’端で、4種の修飾チオールヌクレオチドの1種で終わっている伸長断片の「ラダー」を生じる。テンプレートの配列を推定することのできる相補体(すなわち、プライマー伸長産物)の配列は、ゲル上の断片の順序から直接読み取られる。ゲル上の核酸断片を検出する方法は当該分野で十分知られている。さらに、検出の具体的な方法は分析される断片に含まれる特定の標識に依存することは、当業者であれば分かるであろう。例えば、該断片が蛍光体によって標識されているならば、ゲルにおける該断片の検出のために標準的な蛍光ベースの技法が利用できる。
【0084】
当業者であれば分かることであるが、4種の通例的ヌクレオシドトリホスフェートと4種の修飾3’チオールヌクレオシドトリホスフェートの混合物であって、4種の修飾3’チオールヌクレオシドトリホスフェートの各々が、該混合物中の他のいずれのヌクレオチド上にも存在しない別個の標識を含む混合物を利用する単一反応(例えば、4色配列決定)を実施することにより、本発明の方法に従って、ポリヌクレオチドの配列を決定できる。
【0085】
あるいは、当業者であれば分かるであろうが、1つ以上の5’ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチド配列を作出するために5’チオールヌクレオシドトリホスフェートを利用する場合、テンプレートのヌクレオチド配列を決定するために4つの別個の反応を実施することにより、本発明の方法に従って、ポリヌクレオチドの配列を決定できる。特定の一実施形態において、4つの反応の各々は、4種の通例的なヌクレオシドトリホスフェートおよび4種の修飾5’チオールヌクレオシドトリホスフェート、例えば、sdCTP、sdATP、sdGTP、またはsdTTPのうちの1種のみを含む。同じテンプレートポリヌクレオチド配列を用い、各々4種の修飾5’チオールヌクレオシドトリホスフェート、例えば、sdCTP、sdATP、sdGTPまたはsdTTPのうちの1種を用いて4つの反応が実施される場合、それらの反応の産物は、本発明に記載された方法に従って開裂、検出でき、テンプレートポリヌクレオチドの配列を決定するために分析される(例えば、Sanger,F.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467頁(1977年)およびMaxam,A.M.およびGibert,W.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560−564頁(1977年)を参照されたい。各々の内容は参照として本明細書に組み込まれている)。
【0086】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載された方法は、センスおよびアンチセンスヌクレオチド鎖および2種のプライマー、正プライマーおよび逆プライマーを含むテンプレートポリヌクレオチド配列を用いて実施することができ、その結果、テンプレートポリヌクレオチド配列のセンス鎖とアンチセンス鎖双方に関する配列情報を決定することができる。一実施形態において、各プライマーは、他のプライマー上には存在しない少なくとも1種の別個の標識を含む。プライマー伸長を実施して、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ポリヌクレオチド配列を含む伸長産物を作製し、引き続いて、修飾ポリヌクレオチド配列におけるホスホロチオレート結合の開裂を行うが、双方とも本明細書に記載された方法に従って実施される。その後、やはり本明細書に記載された方法に従って、開裂された伸長断片の2つの集団を単離することができる。第1の集団は、各々が正プライマーを含む開裂断片からなり、一方、第2の集団は、各々が逆プライマーを含む開裂断片からなる。これらの集団を互いに分離することができ、本明細書に記載されているとおり、正方向の伸長産物と逆方向の伸長産物の配列を決定することができ、その結果、テンプレートポリヌクレオチド配列のアンチセンス鎖とセンス鎖双方の配列を決定することができる。
【0087】
したがって、本発明は、センスヌクレオチド鎖およびアンチセンスヌクレオチド鎖を含む複数のテンプレートポリヌクレオチド配列に対する複数の第1のプライマーおよび複数の第2のプライマーのアニーリングであって、第1のプライマーがセンス鎖にアニールし、第2のプライマーがアンチセンスセンス鎖にアニールし、少なくとも1種のプライマーがタグを含むアニーリングを含む、1種以上の逆方向伸長産物から1種以上の正方向伸長産物を分離するための方法も提供する。第1のプライマーおよび第2のプライマーは、1種以上のヌクレオシドトリホスフェートの存在下で伸長されるが、ここで、少なくとも1種のヌクレオシドトリホスフェートが修飾されており、それによって、1つ以上のホスホロチオレート結合を有する修飾ヌクレオチド配列を含む複数の伸長産物が作製される。修飾伸長産物におけるホスホロチオレート結合を複数の断片が作製される条件下で開裂し;第1のプライマーに結合した断片を、第2のプライマーに結合した断片から分離する。
【0088】
特定の実施形態において、第1のプライマーと第2のプライマーは各々タグを含み、第1のプライマー上のタグは、第2のプライマー上のタグとは異なっている。したがって、第1のプライマー上と第2のプライマー上で別個のタグを用い、第1のプライマーを含む逆方向伸長産物の断片を、第2のプライマーを含む正方向伸長産物の断片から分離することができる。正方向および逆方向伸長産物の断片は、同時にまたは連続して同定できる。
【0089】
他の実施形態において、当該分野でよく知られた手順に従い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってテンプレートポリヌクレオチド配列を増幅するために、2種のプライマー、正プライマーおよび逆プライマーが使用される。少なくとも1つのホスホロチオレート結合を有し、配列がテンプレート配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれに対応する正および逆プライマー伸長産物が作出される。次いで、テンプレートポリヌクレオチドの配列を推定するために、本明細書に記載された方法に従い、これらの産物を開裂し、単離し、検出する。
【0090】
本発明は、1種以上の修飾チオールヌクレオシドトリホスフェート類(sdNTP類)、通例的なヌクレオシドトリホスフェート類(dNTP類)および/または核酸ポリメラーゼ(例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、シークエナーゼ、エキソ−サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼおよびエキソ−バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼ)を含み得るキットも包含する。修飾sdNTP類は標識されていてもよいし、標識されていなくてもよい。特定の一実施形態において、sdNTP類は蛍光標識(例えば、蛍光体)を含む。一定の実施形態において、検出可能な標識は、ピリミジン塩基の5位の炭素上に存在するか、プリン塩基の7デアザ位の炭素上に存在する。他の実施形態において、標準的および修飾ヌクレオチドは、限定はしないが、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、ヒポキサンチンまたは7−デアザ−グアニンなどの塩基を含む。このようなキットは、例えば、(例えば、1つ以上の)ホスホロチオレート結合を含む修飾ポリヌクレオチドの配列を作製および/または決定するために使用できる。
【0091】
該修飾チオールヌクレオチドは、3’チオールヌクレオチドまたは5’チオールヌクレオチドのいずれかであり得る。特定の一実施形態において、3’チオールヌクレオチドは、3’チオール基(−SH)または3’ジチオメチル基(−SSCH)を含み、例えば、3’−デオキシ−ジチオメチルチミジンである(図3Bを参照)。他の実施形態において、修飾5’チオールヌクレオチドは5’ホスホロチオレートdNTP類である。
【0092】
本発明のキットに好適な他の構成要素としては、限定はしないが、伸長緩衝液(例えば、緩衝液、塩類、マグネシウム(Mg))、開裂緩衝液、ピロホスフェート、伸長産物単離用の1種以上の支持体、サンプルクリーンアップ用の1種以上の試薬(例えば、CleanSeq、AmPure)および製造元の使用説明書が挙げられる。
【0093】
好適な開裂用緩衝液は、1種以上の金属イオン、例えば、銀、水銀または銅の供給源を含む。特定の一実施形態において、該開裂用緩衝液は、硝酸銀(AgNO)または酢酸銀などの銀イオン源を含む。さらなる一実施形態において、銀イオン源は、1〜100mMの範囲の濃度で提供される。なお、開裂用緩衝液は、マグネシウムイオン(Mg++)源をさらに含み得る。特定の一実施形態において、マグネシウムイオン源は酢酸マグネシウムである。
【実施例】
【0094】
実施例1:DNAポリメラーゼによるDNAの伸長鎖への3’チオールヌクレオシドトリホスフェートの組込み
材料および方法
5’端において二重ビオチンタグにより標識化し、磁気ビーズに結合させた一本鎖DNAテンプレート
【0095】
【数1】

(配列番号:1)上でDNA合成を実施した(図3B)。該DNAテンプレートの一部に相補的なプライマー
【0096】
【数2】

(配列番号:2)を用いて合成を開始させた。該プライマーは、5’端においてCy5により標識化した。該DNAテンプレートは、該プライマー配列のすぐ下流に5つのアデニンヌクレオチドを含んだ。500μmまたは50μmの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジン(dTsTP)を有する12.5Uエキソ大腸菌ポリメラーゼI、クレノウ断片(Epicentre)を用い、37℃で4.0分間、プライマー伸長反応を実施した。
結果
該反応の完了後、該DNA増幅産物に、5つまでの3’−デオキシ−ジチオメチルチミジンヌクレオチドが首尾よく組み込まれた。低濃度(5.0μm)で存在する場合、0、1、2、3、4、または5つの修飾チミジン残基を有するDNA産物を回収した(図3D)。しかし、大多数の反応産物は、0または1つの修飾ヌクレオチドを含んだ。より高濃度(1.0mM)で存在する場合、大多数の反応産物は5つの修飾チミジン残基を含んだ(図3E)。シークエナーゼ、エキソTaqポリメラーゼおよびエキソBstポリメラーゼなどの他のポリメラーゼを用いて反応を行った場合も同様な結果が得られた。これらのデータは、DNAポリメラーゼを含んだ合成反応の間に、修飾3’−デオキシ−ジチオメチルチミジンヌクレオチドを、伸長するDNA鎖に容易に組み込み得ることを示している。
実施例2:銀イオン存在下での3’チオール修飾ヌクレオチドを含むDNAの化学的開裂
開裂前に、1本鎖上に5つの3’チオール修飾チミジンヌクレオチド含む修飾ヌクレオチド(実施例1を参照)を25mMの酢酸マグネシウムで洗浄した。該産物を50μm(図4B)または500μm(図4D)の濃度の10μlの硝酸銀(AgNO)と共に、室温で15分間インキュベートすることにより、開裂を誘導した。非結合の開裂断片をdHO中で洗浄することにより除去し、該プライマーを含有する結合反応産物を標準的なゲル移動アッセイを用いて分析した。試験した双方の濃度のAgNOが、3’チオール修飾チミジンヌクレオチドを含有するDNA産物の開裂をもたらした(図4Bおよび図4D)。
実施例3:3’チオールヌクレオシドトリホスフェート(sdNTP類)を用いたプライマー伸長によるDNA合成および化学的に開裂した伸長産物回収の予想的実施例
非修飾ヌクレオシドトリホスフェートと修飾3’−チオールヌクレオシドトリホスフェート双方の存在下でDNAテンプレート上のプライマー伸長を行う(図1A)。修飾ヌクレオシドトリホスフェートが低濃度で用いられる場合、それらは、低頻度で、天然dNTP類の次に、伸長するDNA鎖にランダムに組み込まれる(図1B)。該DNAへのこれらの修飾ヌクレオチドの組込みにより、1つ以上の3’−ホスホロチオレート結合(図5)がDNA鎖に導入される。ホスホロチオレート結合の硫黄−リン結合は、銀イオン(Ag)への曝露により、特異的に速やかに開裂される。その結果、該反応物への硝酸銀(AgNO)の添加により、ホスホロチオレート結合を含む各鎖が、該鎖の中の3’−チオールヌクレオチドの数に依存して、2つ以上の断片に開裂されることが確実になる(図1C)。該反応に用いられるプライマーがビオチンなどのアフィニティータグによって標識化されるならば、アフィニティータグを有するプライマー配列を含む5’端の断片が、ストレプトアビジン磁気ビーズを用いて容易に単離される(図1D)。捕捉したら、残りの非タグ化断片を洗浄除去する。精製した断片をゲル電気泳動により分析し、断片ラダーを得ることができる。4つの3’チオールヌクレオチドトリホスフェートの各々を別個の蛍光体によって蛍光標識する場合、該産物を標準的な蛍光ベースの配列決定機器上で分析し、該鎖の配列を読み取る。さらに、各プライマーが異なるタグを含有する2種のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う場合(図2A〜図2B)、双方の鎖の5’端伸長産物を別個に回収し、双方の鎖の配列を分析できる(図2C)。
【0097】
参照として明白に組み込まれなかった本明細書に引用された全ての刊行物の関連教示は、参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。本発明をその特定の実施形態に関して具体的に示し説明したが、添付の請求項に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更がその中でなすことができることは、当業者であれば分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−155986(P2011−155986A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−87807(P2011−87807)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2008−519600(P2008−519600)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(508000353)アジェンコート パーソナル ジェノミクス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】