説明

修飾電極、その製造方法及びそれを用いた電気化学表示素子

【課題】繰り返し駆動での特性変化の少ない電極及びその製造方法を提供し、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い表示素子を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤から形成されるシロキサンマトリックスで修飾された修飾電極において、該シランカップリング剤は分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換されており、かつ、該シロキサンマトリックスは予め支持塩が含有されている事を特徴とする修飾電極及びその製造方法並びに電気化学表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元化合物の固定化された新規な修飾電極及びその製造方法、並びに新規修飾電極を用いた電気化学表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電極材料である金属、炭素、半導体の表面を機能性化合物で修飾し、下地金属等にない性質、機能を付与させた電極を修飾電極と言う。特に機能性化合物として、酸化還元性の化合物で修飾した修飾電極は、エレクトロクロミック表示素子等の表示素子用電極、或いはラジカル電池等各種二次電池用電極、バイオセンサー等各種センサーや不斉電解用の電極として、幅広い用途で用いられている。
【0003】
これら修飾電極は安定かつ長時間の使用に耐える事が必須であり、高度の修飾技術が求められている。機能性物質の電極への固定化法には、直接的化学結合法、間接的化学結合法、吸着法等がある。化学的安定性、耐久性などの実用面からは直接的或いは間接的化学結合法が優れているが、未だ充分な耐久性は得られていない。
【0004】
電極の修飾層の分類では単分子層以下(例えばアイランド状)、単分子層、多分子層に分けられる。各種センサー等分子認識の発現には、単分子から数分子層の修飾で機能を発現し得るが、表示素子用の電極或いは二次電池用電極、電解合成用の電極としては機能性物質を高密度かつ高質量修飾する必要が有る。しかしながらこれら多分子層を修飾させた修飾電極では繰り返しでの劣化が大きかった。
【0005】
一方、修飾電極の用途としては、電子ペーパー等反射型ディスプレイ用の電極への応用が考えられる。中でも、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)が注目されて来ている。EC方式は、3V以下の低電圧でフルカラー表示が可能で、簡易なセル構成、白品質で優れる等の利点があり、ED方式もまた、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0006】
上記ED方式やEC方式の課題として繰返し駆動させたときに電極の特性が変化する課題があった。EC方式の表示素子において、対向電極にフェロセンポリマーを物理吸着で固定化する技術が知られている(例えば特許文献6)。しかし、物理吸着では電解質中に溶解する可能性があり、繰り返し駆動させたときの耐久性が十分ではない。またED方式黒は白のコントラストや黒品質の点ですぐれるものの、表示電極側のみならず、対向電極側でも、金属または金属塩の溶解析出が生じるため、EC方式に比べ電極の劣化が生じ易く、より一層の耐久性改良技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/068231号パンフレット
【特許文献2】WO2004/067673号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献4】特許第3428603号公報
【特許文献5】特開2007−72368号公報
【特許文献6】特開2008−111941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は繰り返し駆動での特性変化の少ない電極及びその製造方法を提供することであり、また簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0010】
1.シランカップリング剤から形成されるシロキサンマトリックスで修飾された修飾電極において、該シランカップリング剤は分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換されており、かつ、該シロキサンマトリックスは予め支持塩が含有されていることを特徴とする修飾電極。
【0011】
2.前記支持塩がイオン性液体であることを特徴とする前記1に記載の修飾電極。
【0012】
3.前記電気化学的に酸化還元され得る有機基が、メタロセン誘導体若しくはN−オキシル誘導体であることを特徴とする前記1又は2に記載の修飾電極。
【0013】
4.対向する一対の電極のうち、少なくとも一方に前記1〜3のいずれか1項に記載の修飾電極を用いたことを特徴とする電気化学表示素子。
【0014】
5.銀塩の電気化学的還元析出による発色、及び電気化学的酸化溶解による消色を利用して白及び黒を表示することを特徴とする前記4に記載の電気化学表示素子。
【0015】
6.前記1〜3のいずれか1項に記載の修飾電極の製造方法であって、該製造方法が、分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換されたシランカップリング剤と、支持塩の存在下でゾル−ゲル反応する事によって、電極上に該シランカップリング剤及び該支持塩を固定化することを特徴とする修飾電極の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、繰り返し駆動での特性変化の少ない電極、及び簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を更に詳しく説明する。
【0018】
[シランカップリング剤]
本発明に用いられるシランカップリング剤は、分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換した有機珪素化合物であり、好ましくは更に加水分解性基の置換した有機珪素化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0019】
一般式(1) A−Si(R)n(X)m
式中、Aは電気化学的に酸化還元され得る化合物から成る有機基を表し、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、Xはアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。nは0,1,2を表し、mは1,2,3を表すが、n+mは3である。n及びmが2以上の場合、複数のR及びXは同じであっても、異なっていても良い。
【0020】
一般式(1)において、Aで表される、電気化学的に酸化還元され得る有機基とは、電圧を印加する事で電極との間での電子授受が生じ、酸化還元される有機基ならば特に限定はされないが、EC方式及びED方式の表示素子への適用を考えた場合、後述するプロモーター化合物から成る有機基である事が好ましく、特に±3V以下の印加電圧で酸化還元が生じる化合物、とりわけメタロセン誘導体若しくはN−オキシル誘導体から成る有機基が好ましい。
【0021】
一般式(1)においてRはアルキル基、又はアリール基を表す。Rで表されるアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であっても良く、環状であっても良い。またこれらアルキル基は置換基を有していても良い。Rで表されるアルキル基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、メチル基若しくはエチル基が好ましい。Rで表されるアリール基としては、置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。nは0,1,2を表し、nが2を表す場合、2つのRは同じであっても、異なっていても良い。nとしては0乃至は1が好ましい。
【0022】
一般式(1)においてXはアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。Xで表されるアルコキシ基としては、直鎖状であっても分岐状であっても良く、環状であっても良い。またこれらアルコキシ基は更に置換基を有していても良い。Xで表されるアルコキシ基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、メトキシ基若しくはエトキシ基が好ましい。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、塩素原子が好ましい。mは1,2,3を表すが、2乃至3が好ましく、特に3が好ましい。
【0023】
また一般式(1)において、−Si(R)n(X)mで表される置換基は、Aで示される有機基に複数置換していても良い。
【0024】
以下、前記一般式(1)で示される化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
[支持塩]
本発明において用いられる支持塩としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類が使用できる。
【0029】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0030】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0031】
またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CH9)NBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF、さらには、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化4】

【0033】
またハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、および(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0034】
本発明で用いられる支持塩としては、イオン性液体である事が好ましい。イオン性液体は常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
【0035】
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
【0036】
本発明で用いるイオン性液体とは、式Qで表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。さらに、式中Q+で表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
【0037】
[修飾電極]
電極材料としては、導電性の物質であれば良く、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属、ITO、SnO、TiO、ZnO等の酸化物半導体、或いは炭素の何れであっても良い。これらの電極材料の表面には、水酸基或いはアミノ基等の官能基が存在しており、一般式(1)で表される置換基と反応し共有結合を形成する。
【0038】
本発明ではこれら金属、炭素、酸化物半導体からなる電極基板表面に直接酸化還元性され得る化合物を修飾しても良く、また上記金属、酸化物半導体或いは炭素(例えばカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等)から成る導電性微粒子の表面に、酸化還元性され得る化合物を修飾した後、電極基板上にナノ多孔質電極層を形成させた複合電極であっても良い。
【0039】
表示素子用電極として利用する場合、酸化還元され得る化合物を高密度かつ高質量修飾する必要が有るため、ナノ多孔質電極を形成させた複合電極が好ましい。この場合用いる微粒子としてはITO、TiO等の酸化物半導体微粒子が好ましく、特にITO微粒子が好ましい。
【0040】
[固定化方法]
本発明における修飾電極の作製方法としては、ゾル−ゲル法が好ましい。ゾル−ゲル法とは、よく知られているように、加水分解性の官能基を有する無機酸化物前駆体を出発物質とし、ゾル−ゲル反応、すなわち、加水分解とその後の重縮合反応により、無機酸化物を得る方法である。本発明においては、酸化還元されうる化合物中に含まれる、一般式(1)で表される化合物が加水分解、重縮合反応を受ける事によって、シロキサン結合が形成され、電極表面への固定化が行われシロキサンマトリックスが形成される。
【0041】
このシロキサンマトリックスは、支持塩の存在下でゾル−ゲル反応させるので、シロキサンマトリックス内部に該支持塩が取り込まれ、分子内細孔をなしていると推定する。
【0042】
一般にシリコンアルコキシドの場合、ゾルのpH値によって加水分解速度と重縮合反応速度が大きく変わることが知られている。ゾルのpH値が8以上のアルカリ側に有る場合は、加水分解も重縮合反応も速い為、球状のシリカ粒子に成長し易く、電極へ固定化する上で好ましくない。電極上に固定化する上ではpH7付近の中性領域、若しくは酸性領域で反応させる事が好ましい。pHを調整する上で、塩酸、硫酸、或いは酢酸、蟻酸等の酸類を用いることが出来る。
【0043】
反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒であっても良く、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒であっても良いが、非プロトン性溶媒が好ましく、特にトルエン若しくはテトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンが好ましく、脱水処理したものを用いることが更に好ましい。
【0044】
本発明における修飾電極の作製法の特徴は、前記ゾル−ゲル反応を行う際に、支持塩を加えておき、ゾル−ゲル反応の結果形成されるシロキサン結合による3次元マトリックス中に、支持塩を予め固定化させた事にある。ゾル−ゲル反応を行う上で支持塩は必須の化合物では無いが、支持塩無しでゾル−ゲル反応を行って作製した修飾電極に比較して、支持塩共存下に作製した修飾電極では、繰り返し駆動での耐久性が顕著に改善されていた。
【0045】
本発明における修飾電極の好ましい作製方法としては、脱水処理を施した非プロトン性溶媒中に、ITO等の導電性微粒子及び支持塩及び、一般式(1)で示される化合物を加えて、反応した後、更に水若しくは前記、酸類の水溶液を添加してゾル−ゲル反応を継続させる2段階で固定化する方法が好ましい。
【0046】
反応温度としては、特に制限は無いが室温から用いる溶媒の沸点の範囲で反応を行う事が好ましく、120℃以下で反応させる事が好ましい。
【0047】
上記のようにして作製した酸化還元性化合物で修飾された導電性微粒子は、スピンコート等定法に従って電極基板上に塗布した後、乾燥・洗浄する事で酸化還元化合物の修飾された複合電極が得られる。
【0048】
<表示素子>
[表示素子の基本構成]
本発明の表示素子においては、表示部には、対応する1つの対向電極が設けられている。表示部に近い電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には導電性電極が設けられている。電極1と電極2との間に、本発明に係わる有機溶媒、支持電解質、及び白色散乱物を含有した電解質層を有している。
【0049】
EC方式の表示素子の場合は、更にエレクトロクロミック化合物を上記電解質層中に含有させるか、若しくは電極1上に固定化させる。またED方式の表示素子の場合は、金属塩化合物及び金属塩溶剤化合物を上記電解質中に含有させる。更には、EC方式とED方式を組み合わせた方式であっても良い。本発明では、上記電極1若しくは電極2の少なくとも一方の電極に前記修飾電極を用いる事を特徴とするが、表示部と対向する電極2として、前記修飾電極を用いることが好ましい。
【0050】
<電解質組成物>
〔有機溶媒〕
本発明に係る電解質には、有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては沸点が120〜300℃の範囲にあることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。
【0051】
〔支持電解質〕
本発明の電解質組成物において用いることができる支持電解質としては、前述の支持塩に加えて、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される酸類及びアルカリ類も使用できる。
【0052】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0053】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0054】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0055】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0056】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0057】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0059】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0060】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0061】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0062】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0063】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0064】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0065】
〔エレクトロクロミック化合物〕
エレクトロクロミック化合物としては、ビオローゲン系色素、フェノチアジン系色素、スチリル系色素、フェロセン系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、フタロシアニン系色素、イミダゾール系色素等の有機色素、ポリスチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリベンジン、ポリイソチアナフテン、等の導電性高分子化合物類、(テレ)フタル酸エステル誘導体、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物、などが挙げられるが、イミダゾール系色素が好ましい。
【0066】
〔金属塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀である。
【0067】
〔銀塩化合物〕
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0068】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホンイミド銀、AgBF、AgClO、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができるが、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホンイミド銀が好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホンイミド銀が好ましい。
【0069】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0070】
〔ハロゲンイオン、金属イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0071】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0072】
〔金属塩溶剤化合物〕
本発明に於いては金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い供給結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0073】
特に下記一般式(G1)または一般式(G2)で表される化合物の少なくとも1種を含有する事が好ましい。
【0074】
〔一般式(G1)で表される化合物〕
一般式(G1)Rg11−S−Rg12
式中、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには脂肪族の直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0075】
以下、本発明に係る一般式(G1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0076】
G1−1:CHSCHCHOH
G1−2:HOCHCHSCHCHOH
G1−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
G1−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
G1−7:HCSCHCHCOOH
G1−8:HOOCCHSCHCOOH
G1−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
G1−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
G1−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
G1−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−14:HCSCHCHCHNH
G1−15:HNCHCHSCHCHNH
G1−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
G1−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
G1−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
G1−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
G1−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
G1−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
G1−24:HNC(=O)CHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
G1−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(O=)NH
G1−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
G1−27:HC(O=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(O=)CH
G1−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
G1−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
G1−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
G1−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
G1−32:HN(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
G1−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
G1−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH2+・2Cl
【0077】
【化5】

【0078】
【化6】

【0079】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物G1−3が好ましい。
【0080】
〔一般式(G2)で表される化合物〕
次いで、本発明に係る一般式(G2)で表される化合物について説明する。
【0081】
【化7】

【0082】
式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。n21は0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、n21が2以上の場合、それぞれのRg21は同じであっても、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0083】
一般式(G2)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0084】
一般式(G2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0085】
一般式(G2)のRg21で表される置換基としては、特に制限は無いが、例えば下記の様な置換基が挙げられる。
【0086】
水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0087】
次に、一般式(G2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0088】
【化8】

【0089】
【化9】

【0090】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物G2−12、G2−20が好ましい。
【0091】
[プロモーター]
本発明の表示素子に於いては、エレクトロクロミック材料の電気化学反応を促進するために、前記EC化合物に加え、酸化還元され得る補助化合物(以下、プロモーターと記す)を添加しても良い。プロモーターは酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでも良いし、変化するもの、即ち前記EC化合物で有っても良く、電極上に固定化されていても良く、電解質中に添加されていても良い。
【0092】
例えば、表示電極側でEC化合物を酸化(或いは還元)発色させる場合、対向電極側でプロモーターの還元(或いは酸化)反応を利用する事によって、低い駆動電圧で高い発色濃度を得る事が可能と成る。このようにプロモーターを対極反応物質として利用する場合、EC化合物を表示電極上に固定化し、EC化合物とは逆の酸化還元活性を有するプロモーターを、対向電極上に固定化して用いる事が好ましい。
【0093】
プロモーターを対極物質として用いる場合、プロモーターは酸化還元反応の結果として可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものが好ましい。但し、本発明の好ましい態様に於いて記載したように、表示素子中に白色散乱物を用いて、プロモーターによる発色を遮蔽するような態様の場合、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化するプロモーター、即ちEC化合物を用いても良い。このような構成の態様は、プロモーターの選択が容易と成り好ましい。また別の態様として、表示電極側のEC化合物と同色の発色を示すプロモーターを用いる事は、好ましい態様のひとつである。
【0094】
本発明に用いる事が出来る好ましいプロモーターとしては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0095】
1)TEMPO等に代表されるN−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等、N−O結合を有する化合物。
【0096】
2)ガルビノキシル等、0−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物。
【0097】
3)フェロセン等、メタロセン誘導体。
【0098】
4)ベンジル(ジフェニルエタンジオン)誘導体。
【0099】
5)テトラゾリウム塩/ホルマザン誘導体。
【0100】
6)フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物。
【0101】
7)ビオロゲン等ピリジニウム化合物。
【0102】
その他、ベンゾキノン誘導体、ベルダジル等ヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアリルアミン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、チアントレン誘導体等もプロモーターとして用いる事が出切る。
【0103】
本発明の表示素子においては、特に3)メタロセン誘導体若しくは1)N−オキシル誘導体が好ましい。
【0104】
(N−オキシル誘導体)
N−オキシル(ニトロキシドラジカルとも呼ばれる)とは、ヒドロキシルアミンの酸素−水素結合がラジカル的に開裂して生じた酸素中心ラジカルである。ニトロキシドラジカルは、下記スキームに示すように2つの可逆的な酸化還元対を有する事が知られている。ニトロキシドラジカルは1電子酸化によりオキソアンモニウムカチオンとなり、これが還元されてラジカルを再生する。またニトロキシドラジカルは1電子還元によりアミノキシアニオンとなり、これが酸化されてラジカルを再生する。従って、ニトロキシドラジカルはp型の対極反応物質、若しくはn型対極反応物質として機能する事が出来る。またオキソアンモニウムカチオンは高い酸化能を有しており、ロイコ色素等の酸化が可能である。
【0105】
【化10】

【0106】
N−オキシル誘導体としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)を初め、各種置換基の置換した誘導体が市販されている。また公知の文献に従って、ポリマーを含め、各種誘導体を容易に合成する事が出来る。
【0107】
一般にニトロキシドラジカルのα位炭素に水素が置換している場合、容易にヒドロキシアミンとニトロンへ不均化してしまう事が知られている。このためTEMPOのN−オキシル基α位の4つのメチル基は、安定ラジカルとして存在する上での必須の構造と言えるが、逆にこれら4つのメチル基の立体障害によって、反応性が落ちる場合がある。これら活性低下を引き起こさない点で、アザアダマンタンN−オキシル誘導体、或いはアザビシクロN−オキシル誘導体が好ましい。
【0108】
(メタロセン誘導体)
メタロセンとは、シクロペンタジエニルアニオン2つを配位子としてもつ有機金属化合物の総称である。金属は必ずしも2配位である必要はなく、他の配位子が配位していてもよい。代表例としてフェロセンが挙げられる。フェロセンは飽和カロメル電極(SCE)に対し約0.5Vという低い電位で一電子酸化が進行し、かつきわめて安定な酸化還元特性を示すため、本発明に係わるプロモーターとして好ましい。
【0109】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0110】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、特開2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、特開2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、特開2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、特開2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、特開2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、特開2007−141658号公報に記載の固体電解質、特開2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0111】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0112】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0113】
本発明の表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0114】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0115】
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
【0116】
〔電極〕
以下電気化学表示素子一般に用いられる電極について説明する。尚、本発明では対向する一対の電極の少なくともひとつに、既に述べたとおり、前記一般式(1)で示される置換基を少なくとも1つ以上有する電気化学的に酸化還元される化合物、及び支持塩を含む組成物を固定化した修飾電極として用いる。
【0117】
表示側透明電極
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0118】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0119】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0120】
透明多孔質電極
透明電極として、上記電極層の上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0121】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0122】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0123】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0124】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
【0125】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0126】
対向電極
対向電極は、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。前記透明電極と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
【0127】
多孔質カーボン電極
吸着担持可能な多孔質炭素電極としては、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体や、ホウ素、窒素、りん等を炭素にドープして焼成した炭素化合物、等が挙げられる。炭素粒子の形状としては、メソフェーズ小球体、繊維状黒鉛が挙げられる。メソフェーズ小球体はコールタールピッチなどを350〜500℃で焼成することで得られ、これら小球体をさらに分級して高温焼成で黒鉛化すると良好な多孔質炭素電極が得られる。また、ピッチ系、PAN系、および気相成長繊維から、繊維状黒鉛を得ることができる。
【0128】
グリッド電極(補助電極)
本発明に係る対向電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0129】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0130】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0131】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0132】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィー法でパターニングしたり、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
【0133】
本発明の補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0134】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0135】
(電極製法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着するか、全面形成した後に、フォトリソグラフィー法でパターニングしてもよい。
【0136】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0137】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0138】
電極材料を塗布にて形成する場合は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0139】
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェットは高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
【0140】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電子絶縁層を設けることができる。
【0141】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0142】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0143】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0144】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0145】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0146】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0147】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0148】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0149】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0150】
実施例
(修飾電極及び表示素子の作製)
[修飾電極1の作製]
(ITO電極の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、スパッタ装置を用いて厚さ1000nmのITO層を形成した。その後、基板をNaOH2質量%水溶液に含浸し、超音波洗浄機(ブランソン製 3510J−MT)で2min洗浄した。続いて純水で洗浄を行った。
【0151】
(修飾微粒子の作製)
脱水したN−メチルピロリドン(NMP)20gと、ITO微粒子(シーアイ化成社製 ITO−C)10gを超音波分散機(UH−150、株式会社エスエムテー製)を用いてPULSE50% OUTPUT 2.0で2min分散して粒子分散液を作製した。
【0152】
一方、脱水NMP20g及び例示化合物(3)5g、p−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩3.8gを溶解した添加液を調製した。
【0153】
上記分散液3gに添加液1gを加え40℃で1時間加熱攪拌した後、室温まで放冷した。次いで酢酸1%水溶液0.1g添加し30分間、室温で混合した後、昇温し85℃で30分間、攪拌を継続し、例示化合物(3)及び支持塩が固定化された修飾微粒子のスピンコート液(A)を得た。
【0154】
先に作製したITO電極上にスピンナー(MIKASA社製 1H−DS)を用いて、スピンコート液(A)を塗布した(400rpmで5secの後、2000rpmで65sec)。次いで
アズワン製DO−450PAを用いて120℃で30分乾燥し、修飾電極1とした。
【0155】
[修飾電極2から4の作製]
修飾電極1の作製と同様の方法で、例示化合物及び支持塩の種類を変更して修飾電極1から6を作製した。尚、例示化合物及び支持塩の添加量は等モル置き換えとした。
【0156】
【表1】

【0157】
【化11】

【0158】
[比較電極1の作製]
支持塩(p−トルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム塩)を添加しない以外は、修飾電極1と同様にして、比較電極1を作製した。
【0159】
[比較電極2の作製]
特開2008−111941号公報の実施例[第二の対向電極構造体の作製]に記載されている方法に従って、比較電極2を作製した。
【0160】
[表示電極の作製]
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、スパッタ装置を用いて厚さ1000nmのITO層を形成した。その後、基板をNaOH2質量%水溶液に含浸し、超音波洗浄機(ブランソン製 3510J−MT)で2min洗浄した。続いて純水で洗浄を行った。
【0161】
《表示素子の作製》
〔電解液の作製〕
化合物(S1−4)2.5g中に、トリフルオロメタンスルホン酸銀0.1gと化合物(G1−4)0.2gとテトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム0.025g溶解させて電解液を調製した。
【0162】
〔表示素子の作製〕
(表示素子1の作製)
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした修飾電極1の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、石原産業社製二酸化チタンCR−90を20質量%添加し、超音波分散機で分散させた混和液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥させた。得られた二酸化チタン層上に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、修飾電極1と表示電極を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに上記電解液を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0163】
(表示素子2〜8の作製)
修飾電極1を、修飾電極2から6、及び比較電極1、2に変更した以外は、表示素子1と同様にして表示素子2〜8を作製した。
【0164】
《評価:表示素子1〜8の評価》
〔繰返し駆動させたときの反射率の安定性の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.6Vの電圧を2秒間印加した後に、−1.6Vの電圧を2秒間印加してグレーを表示させた。このときの波長550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動させ、得られた反射率の平均値をRave1とした。さらに1万回繰返し駆動させた後に同様な方法でRave2を求めた。RBK1=|Rave1−Rave2|とし、RBK1を繰返し駆動させたときの反射率の安定性の指標とした。ここでは、RBK1の値が小さいほど、繰返し駆動させたときの反射率の安定性に優れることになる。
【0165】
以上により得られた各表示素子の評価結果を、表2に示す。
【0166】
〔書換速度の評価〕
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、表示側の電極に+1.5Vの定電圧を0.5秒間印加してグレー表示させたときの波長550nm反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、得られた値をRBK2とした。ここでは、RBK2の値が小さいほど、黒表示の書換速度が速いことになる。
【0167】
以上により得られた各表示素子の評価結果を、表2に示す。
【0168】
【表2】

【0169】
表2から分かるように、本発明の表示素子1から6は、比較の表示素子7,8に比較してRBK1が小さく、繰り返し駆動させた時の反射率変化が小さいことがわかる。またRBK2も小さく、書換え速度が速い事が分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤から形成されるシロキサンマトリックスで修飾された修飾電極において、該シランカップリング剤は分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換されており、かつ、該シロキサンマトリックスは予め支持塩が含有されていることを特徴とする修飾電極。
【請求項2】
前記支持塩がイオン性液体であることを特徴とする請求項1に記載の修飾電極。
【請求項3】
前記電気化学的に酸化還元され得る有機基が、メタロセン誘導体若しくはN−オキシル誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の修飾電極。
【請求項4】
対向する一対の電極のうち、少なくとも一方に請求項1〜3のいずれか1項に記載の修飾電極を用いたことを特徴とする電気化学表示素子。
【請求項5】
銀塩の電気化学的還元析出による発色、及び電気化学的酸化溶解による消色を利用して白及び黒を表示することを特徴とする請求項4に記載の電気化学表示素子。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の修飾電極の製造方法であって、該製造方法が、分子内に電気化学的に酸化還元され得る有機基が置換されたシランカップリング剤と、支持塩の存在下でゾル−ゲル反応する事によって、電極上に該シランカップリング剤及び該支持塩を固定化することを特徴とする修飾電極の製造方法。

【公開番号】特開2010−169933(P2010−169933A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12894(P2009−12894)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】