説明

修飾電極及び電気化学表示素子

【課題】繰り返し駆動での特性変化の少ない電極を提供することであり、また簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰り返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い電気化学表示素子を提供することにある。
【解決手段】基板上に電極材料を有し、該電極材料上に化学結合を介して固定化されているレドックスポリマー化合物を備えている修飾電極であって、前記レドックスポリマー化合物は、2種以上のレドックスモノマーのコポリマーであることを特徴とする修飾電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元化合物が固定化された新規な修飾電極及び新規修飾電極を用いた電気化学表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電極材料である金属、炭素、半導体の表面を機能性化合物で修飾し、下地金属等にない性質、機能を付与させた電極を修飾電極と言う。特に機能性化合物として、酸化還元性の化合物で修飾した修飾電極は、エレクトロクロミック表示素子等の表示素子用電極、あるいはラジカル電池等各種二次電池用電極、バイオセンサー等各種センサーや不斉電解用の電極として、幅広い用途で用いられている。
【0003】
これら修飾電極は安定かつ長時間の使用に耐えることが必須であり、高度の修飾技術が求められている。機能性物質の電極への固定化法には、直接的化学結合法、間接的化学結合法、吸着法等がある。化学的安定性、耐久性等の実用面からは直接的または間接的化学結合法が優れているが、未だ充分な耐久性は得られていない。
【0004】
電極の修飾層の分類では単分子層以下(例えばアイランド状)、単分子層、多分子層に分けられる。各種センサー等分子認識の発現には、単分子から数分子層の修飾で機能を発現し得るが、表示素子用の電極あるいは二次電池用電極、電解合成用の電極としては機能性物質を高密度修飾する必要が有る。しかしながらこれら多分子層を修飾させた修飾電極では繰り返し駆動での劣化が大きかった。
【0005】
一方、本発明の修飾電極の用途としては、電子ペーパー等反射型ディスプレイ用の電極への応用が考えられる。中でも、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)が注目されて来ている。EC方式は、3V以下の低電圧でフルカラー表示が可能で、簡易なセル構成、白品質で優れる等の利点があり、ED方式もまた、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0006】
上記ED方式やEC方式の課題として繰り返し駆動させた時に、電極の特性が変化する課題があった。例えばEC方式の表示素子において、対向電極にフェロセンポリマーを物理吸着で固定化する技術が知られている(例えば特許文献6)。しかし、物理吸着では電解質中に溶解する可能性があり、繰り返し駆動した時の耐久性が十分ではない。またED方式は白のコントラストや黒品質の点で優れるものの、表示電極側のみならず、対向電極側でも、金属または金属塩の溶解析出が生じるため、EC方式に比べ電極の劣化が生じ易く、より一層の耐久性改良技術が求められていた。また、レドックス基の自由度が小さいポリマーを固定化した場合は、酸化還元反応を繰り返すと詳細な理由は不明であるが、酸化還元能が極端に低下する。そのため繰り返し駆動した時の耐久性が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第04/068231号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/067673号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献4】特許第3428603号公報
【特許文献5】特開2007−72368号公報
【特許文献6】特開2008−111941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は繰り返し駆動での特性変化の少ない修飾電極を提供することであり、また簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰り返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い電気化学表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.基板上に電極材料を有し、該電極材料上に化学結合を介して固定化されているレドックスポリマー化合物を備えている修飾電極であって、前記レドックスポリマー化合物は、2種以上のレドックスモノマーのコポリマーであることを特徴とする修飾電極。
【0011】
2.前記レドックスモノマーのうち少なくとも一つは、レドックス基と、重合を引き起こしうる反応性基との間にスペーサーを有することを特徴とする前記1に記載の修飾電極。
【0012】
3.前記レドックスモノマーはメタロセンモノマーであることを特徴とする前記1または2に記載の修飾電極。
【0013】
4.前記メタロセンモノマーがフェロセン誘導体であることを特徴とする前記3に記載の修飾電極。
【0014】
5.前記レドックスポリマー化合物が、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)、−NCOまたは−Si(R3−n(OR(R、Rはアルキル基を表し、nは1から3の整数を表す)基を有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の修飾電極。
【0015】
6.対向する一対の電極のうち、少なくとも一方に前記1〜5のいずれか1項に記載の修飾電極を用いたことを特徴とする電気化学表示素子。
【0016】
7.金属塩の電気化学的還元析出による発色、及び電気化学的酸化溶解による消色を利用して白及び黒を表示することを特徴とする前記6に記載の電気化学表示素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰り返し駆動での特性変化が少ない修飾電極を提供することができた。また簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰り返し駆動での特性変化が少なく、書き換え速度が速い電気化学表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基板上に電極材料を有し、該電極材料上に化学結合を介して固定化されているレドックスポリマー化合物を備えている修飾電極であって、前記レドックスポリマー化合物が、2種以上のレドックスモノマーのコポリマーである修飾電極により、簡便な部材構成、低電圧で駆動可能で、繰り返し駆動での特性変化が少ない修飾電極が得られることを見出し、本発明に至った。
【0019】
このような効果が発現されるのは、このレドックスポリマー化合物は分子内に反応性基を有しているため、電極への密着性に優れ、繰り返し駆動の安定性に優れる。また、レドックスポリマー化合物として、構造の異なるレドックスモノマーを2種類以上共重合した化合物としたため、レドックスポリマー化合物のレドックス部分の自由度が増し、電解質中のイオンの移動度を保持することができ、耐久性がさらに向上したものと推定している。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
〔レドックスポリマー化合物〕
電気化学表示素子においては、対向電極上での金属または金属塩の溶解析出を防止するために、対向電極上を被覆する必要があり、ポリマーは膜厚を制御して形成できるので、容易に所望の電気量を設定できる。
【0022】
本発明の修飾電極は、電極材料上に化学結合を介して固定化されているレドックスポリマー化合物が、2種以上のレドックスモノマーのコポリマーであることが特徴である。以下、レドックスモノマーのコポリマーであるこのレドックスポリマー化合物を、本発明のレドックスポリマー化合物ともいう。
【0023】
本発明のレドックスポリマー化合物は、レドックスモノマーの重合反応により合成される。レドックスモノマーは、レドックス基と、重合を引き起こしうる反応性基からなり、その間にスペーサーを有することが好ましい。
【0024】
レドックス基は電気的に可逆的な酸化還元反応を起こしうるものであれば特に限定されない。中でもニトロキシルラジカル基、キノン基、メタロセン基が好ましく、特にメタロセン基が好ましい。さらに、メタロセン基はフェロセン誘導体であることが好ましい。
【0025】
また、レドックスポリマー化合物は、上記レドックスモノマー以外にレドックス基を持たないモノマー単位が含まれていてもよい。レドックス基を持たないモノマー体としては、アクリル基、ビニル基、スチリル基等の重合性基を持つシラン化合物、カルボン酸化合物、燐酸化合物等が挙げられる。
【0026】
レドックスポリマー化合物は、電極表面と化学結合をするために反応性基を有している。反応性基としては−COOH、−P−O(OH)、−OP=O(OH)、−NCO及び−Si(R3−n(OR(R、Rはアルキル基を表し、nは1から3の整数を表す)が好ましい。中でも表示素子の繰り返し駆動の安定性を向上させる上で、より強固な結合を形成する−Si(ORが特に好ましい。
【0027】
一般的に高分子化合物を多孔質電極に担持させる手法としては、電解重合法、電解析出法、ディップ、スピン、キャスト等のコーティング方法が挙げられ、本発明ではどの手法を用いてもよい。
【0028】
本発明のレドックスポリマー化合物のレドックス基がメタロセン基である場合は、下記一般式(1)で表される構造を適用できる。
【0029】
【化1】

【0030】
一般式(1)において、M、Mはメタロセン構造を形成可能な金属原子を表し、それぞれ同じ金属原子でも異なる金属原子でもよい。具体的には鉄、ルテニウム、ジルコニウム、チタン等が挙げられ、特に鉄であることが好ましい。
【0031】
式中、R〜R24は各々独立に水素原子または置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基を表す。
【0032】
、Sはそれぞれスペーサーを表し、有していてもいなくてもよいが、AユニットとBユニットで長さの異なるスペーサーを有していることが好ましい。スペーサー部分としては直鎖構造を有するものであればよく、分岐構造を含んでいてもよい。また、炭素−炭素結合以外の炭素原子−異種原子結合、異種原子結合−異種原子結合を含んでいてもよい。
【0033】
〜R24のうち少なくとも1つは部分構造として、下記反応性基を有することが好ましい。反応性基としては−COOH、−P−O(OH)、−OP=O(OH)、−NCO及び−Si(R3−n(OR(R、Rはアルキル基を表し、nは1から3の整数を表す)が挙げられる。
【0034】
式中n、mは重合度であり、全体の分子量が1000以上となるように設定される整数である。この重合度に特に制限はないが、重合度が高過ぎると溶媒への溶解性が低下するため、電極作製上問題となる。そのため適度な溶解性を持つ程度の分子量である1000以上、100000以下が好ましい。
【0035】
本発明はAユニットとBユニットの構造が異なっている点が特徴であり、好ましくはレドックス部分の構造が同じもので、スペーサーの長さが異なっているものが好ましい。
【0036】
(スペーサー)
スペーサーは、レドックス基と、重合を引き起こしうる反応性基の間に存在する。重合を引き起こしうる反応性基とは、主に二重結合、三重結合、エポキシ基等を示し、スチリル基のベンゼン環部分、アクリル基のエステル部分等、重合反応後に主鎖に組み込まれない部分はスペーサーとみなす。
【0037】
スペーサーは、少なくとも直鎖構造を有しているものであれば、直鎖構造のみからなるものであってもよく、分岐構造を有していてもよい。あるいは、直鎖構造と直鎖構造との間に環状構造を有していてもよい。また、炭素−炭素結合以外の炭素原子−異種原子結合、異種原子結合−異種原子結合を含んでいてもよい。炭素以外の異種原子を含む直鎖構造としては、具体的には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、チオエーテル結合、ウレア結合、カルバメート結合、カルボネート結合等が挙げられる。自由度の観点から、二重結合、三重結合等の剛直性の高い結合を含まない方が好ましい。
【0038】
以下に、本発明で用いることのできるレドックスポリマー化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。n、m、lは各組成分の重合度を表し、全体の分子量が1000以上、100000以下となる範囲の数字を取る。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
(レドックスポリマー化合物の合成)
例示化合物P−13の合成
10mlナスフラスコに脱気したTHF2ml、ビニルフェロセン0.53g、フェロセンカルボキシエトキシエチルアクリレート1.0g、アクリル酸−3−(トリメトキシシリル)プロピル117mg及びAIBN0.041gをこの順に加え、窒素雰囲気下75℃で8時間攪拌しながら還流した。反応終了後THF2mlを加え、反応液をメタノール60mlへ滴下し、橙色固体のP−13を1.3g得た。
【0057】
例示化合物P−13は、核磁気共鳴スペクトルで構造を確認した。ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography)システムを用いて分子量を測定した結果、Mn(数平均分子量)=6500、Mw(重量平均分子量)=22000であった。
【0058】
他の化合物も同様にして合成することができる。
【0059】
(化学結合)
化学結合を介して電極材料に結合固定される本発明のレドックスポリマー化合物は、官能基を介する修飾によって反応結合させてもよいし、あるいは、これらの官能基を有するスペーサー分子を介する反応によって結合させてもよい。
【0060】
例えば、次式
(RO)Si−R−NH
(式中、R及びRは各々炭化水素基を表す。)
で表わされるアミノアルキルトリアルコキシシランを電極の表面水酸基と反応させて、
A−O−Si(OR−R−NH(Aは、電極を表す。)結合を形成し、次いで、
−CO−OH
(式中、Rはメタロセンポリマー化合物を表す。)
で表わされるカルボキシ化合物を反応させて、アミド結合を有する、
A−O−Si(OR−R−NH−CO−Rの反応修飾を行うことが可能である。もちろん、この例示のような反応修飾に限定されることなく各種のものが考慮されてよい。
【0061】
上記反応においては、R(レドックスポリマー化合物)を有する化合物としてシランカップリング基をあらかじめ保持するものを用いて表面水酸基と反応させてよい。
【0062】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子においては、一対の対向する電極が設けられている。表示部に近い一対の対向する電極の1つである電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には導電性電極が設けられている。電極1と電極2との間に、有機溶媒、金属塩化合物と一般式(1)で表される本発明のレドックスポリマー化合物等を含有した電解質層を有し、一対の対向する電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、白表示と黒表示を可逆的に切り替えることができる。
【0063】
〔電解質組成物〕
(有機溶媒)
本発明に係る電解質には、有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては沸点が120〜300℃の範囲にあることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。
【0064】
(金属塩化合物)
本発明に係る金属塩化合物とは、対向する一対の電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向する一対の電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
【0065】
(銀塩化合物)
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0066】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸銀が好ましい。
【0067】
本発明に係る電解質に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
【0068】
(ハロゲンイオン、金属イオン濃度比)
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)とした時、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0069】
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X−→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0070】
(金属塩溶剤化合物)
本発明においては金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤としては、電解質中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い供給結合を生じさせたりするような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴があるので好ましい。
【0071】
特に、下記一般式(G1)または一般式(G2)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0072】
(一般式(G1)または一般式(G2)で表される化合物)
一般式(G1) Rg11−S−Rg12
(式中、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでもよく、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を形成してもよい。)
【0073】
【化19】

【0074】
(式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。)
前記一般式(G1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには芳香族の直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子を含んでもよく、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を形成してもよい。ただし、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。
【0075】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0076】
以下、本発明に係る一般式(G1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0077】
G1−1:CHSCHCHOH
G1−2:HOCHCHSCHCHOH
G1−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
G1−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
G1−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
G1−7:HCSCHCHCOOH
G1−8:HOOCCHSCHCOOH
G1−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
G1−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
G1−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
G1−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
G1−14:HCSCHCHCHNH
G1−15:HNCHCHSCHCHNH
G1−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
G1−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
G1−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
G1−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
G1−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
G1−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
G1−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
G1−24:HN(O=)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
G1−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(O=)NH
G1−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
G1−27:HC(O=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(O=)CH
G1−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
G1−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
G1−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
G1−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
G1−32:HN(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
G1−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
G1−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH2+・2Cl
【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物G1−3が好ましい。
【0081】
次いで、本発明に係る一般式(G2)で表される化合物について説明する。
【0082】
前記一般式(G2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は置換基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0083】
一般式(G2)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
【0084】
一般式(G2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0085】
一般式(G2)のRg21で表される置換基としては、特に制限はないが、例えば下記のような置換基が挙げられる。
【0086】
水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)を挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0087】
次に、一般式(G2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0088】
【化22】

【0089】
【化23】

【0090】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物G2−12、G2−20が好ましい。
【0091】
〔支持電解質〕
本発明の電解質組成物において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野または電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0092】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩等が使用できる。
【0093】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
【0094】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、(CHNSOCF、(CNSOCF、(n−CNSOCF
さらには、
【0095】
【化24】

【0096】
等が挙げられる。
【0097】
また、ハロゲンイオン、SCN、ClO、BF、CFSO、(CFSO、(CSO、PF、AsF、CHCOO、CH(C)SO、及び(CSOから選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0098】
電解質塩の使用量は任意であるが、一般的には、電解質塩は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることが望ましい。
【0099】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱物を含有することが好ましく、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0100】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0101】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kg当たりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0102】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0103】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。さらに、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号公報の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号明細書、特開昭62−245260号公報等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SOM(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0104】
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
【0105】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号公報に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0106】
本発明の水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0107】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0108】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
【0109】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0110】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0111】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0112】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0113】
〔固体電解質、ゲル電解質〕
本発明に係る電解質は、溶媒やイオン性液体から成る溶液状の電解質以外にも、実質的に溶媒を含まない固体電解質や高分子化合物を含有した高粘度な電解質やゲル状の電解質(以下、ゲル電解質)を用いることができる。
【0114】
本発明に適用可能な固体電解質、ゲル電解質としては、例えば、特開2002−341387号公報に記載の固体電解質、同2002−341387号公報に記載のポリマー固体電解質、同2004−20928号公報に記載の高分子固体電解質、同2004−191945号公報に記載の高分子固体電解質、同2005−338204号公報に記載の固体高分子電解質、同2006−323022号公報に記載の高分子固体電解質、同2007−141658号公報に記載の固体電解質、同2007−163865号公報に記載の固体電解質、ゲル電解質等を挙げることができる。
【0115】
(電解質添加の増粘剤)
本発明の電気化学表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、増粘剤としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0116】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0117】
本発明の電気化学表示素子において、増粘剤として好ましいのは、平均重合度100〜500のポリエチレングリコールであり、電解質層の有機溶媒に対して質量比で5〜20%の範囲で添加するのが好ましい。
【0118】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィン等の高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板等が好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
【0119】
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板等不透明な基板を用いることもできる。
【0120】
〔電極〕
(表示側透明電極)
本発明に係る一対の対向する電極のうち、表示側に位置する電極としては、透明電極であることが好ましい。
【0121】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
【0122】
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、及びそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
【0123】
表示側には位置する電極としては、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の、透明導電性酸化物からなる電極であることが好ましい。
【0124】
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0125】
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
【0126】
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
【0127】
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法等で層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法等で電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法等が挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
【0128】
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
【0129】
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形等任意の形状のものを用いることができる。
【0130】
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
【0131】
(多孔質カーボン電極)
本発明においては、多孔質カーボン電極を用いることもできる。吸着担持可能な多孔質炭素電極としては、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体や、ホウ素、窒素、りん等を炭素にドープして焼成した炭素化合物、等が挙げられる。炭素粒子の形状としては、メソフェーズ小球体、繊維状黒鉛が挙げられる。メソフェーズ小球体はコールタールピッチ等を350〜500℃で焼成することで得られ、これら小球体をさらに分級して高温焼成で黒鉛化すると良好な多孔質炭素電極が得られる。また、ピッチ系、PAN系、及び気相成長繊維から、繊維状黒鉛を得ることができる。
【0132】
[修飾電極]
電極材料としては、導電性の物質であればよく、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属、ITO、SnO、TiO、ZnO等の酸化物半導体、あるいは炭素のいずれであってもよい。
【0133】
本発明ではこれら金属、炭素、酸化物半導体からなる電極基板表面に直接酸化還元性されうる化合物を修飾してもよく、また上記金属、酸化物半導体あるいは炭素(例えばカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等)から成る導電性微粒子の表面に、酸化還元されうる化合物を修飾した後、電極基板上にナノ多孔質電極層を形成させた複合電極であってもよい。
【0134】
表示素子用電極として利用する場合、酸化還元される化合物を高密度修飾する必要が有るため、ナノ多孔質電極を形成させた複合電極が好ましい。この場合用いる微粒子としてはITO、TiO等の酸化物半導体微粒子が好ましく、特にITO微粒子が好ましい。
【0135】
(補助電極)
本発明に係る一対の対向する電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
【0136】
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス等の金属及びそれらの合金等を好ましく用いることができる。
【0137】
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
【0138】
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形等、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
【0139】
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でもよい。
【0140】
本発明の補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0141】
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
【0142】
(電極の形成方法)
表示側電極及び対抗電極(補助電極)を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着するか、全面形成した後に、フォトリソグラフィ法でパターニングしてもよい。
【0143】
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
【0144】
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
【0145】
電極材料を塗布にて形成する場合は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
【0146】
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェットは高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、さらに好ましくは100mPa・s以上である。
【0147】
(静電インクジェット)
本発明の電気化学表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0148】
さらに前記ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
【0149】
また、前記凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して前記凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
【0150】
また、前記凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
【0151】
このような静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
【0152】
〔電子絶縁層〕
本発明の電気化学表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0153】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0154】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等の公報に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0155】
〔電気化学素子のその他の構成要素〕
本発明の電気化学表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0156】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0157】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0158】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0159】
〔電気化学表示素子の駆動方法〕
本発明の電気化学表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0160】
〔商品適用〕
本発明の電気化学表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0161】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0162】
実施例
《電気化学表示素子の作製》
〔電解液の調製〕
(電解液1の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、p−トルエンスルホン酸銀0.1gと化合物(G1−4)0.2gとテトラフルオロホウ酸スピロ−(1,1′)−ビピロリジニウム0.025gを溶解して、電解液1を得た。
【0163】
(電解液2の調製)
γ−ブチロラクトン2.5g中に、トリフルオロメタンスルホン酸銀0.1gと化合物(G1−4)0.2gとリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)0.025g溶解させて、電解液2を得た。
【0164】
〔電極の作製〕
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、透明電極(電極1)を得た。
【0165】
(電極2の作製)
電極1上に、ITOインク X−490CN27(住友金属鉱山社製、平均粒子径:20nm)に酸化亜鉛粒子(和光純薬社製、平均粒子径:20nm)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し混合液をスピンコート法により塗布した。180℃で焼成を行い、乾燥後、希硝酸(比重1.38の硝酸を10倍に希釈したもの)中に浸漬した後、洗浄、乾燥し、厚み0.4μmの電極2を得た。
【0166】
(電極3の作製)
電極2と下記H−1を用いて、特開2008−111941公報、段落[0053]に記載の手法で電極3を得た。
【0167】
【化25】

【0168】
(電極4の作製)
ITOインク X−490CN27(住友金属鉱山社製、平均粒子径:20nm)にジョンクリルエマルジョンPDX7696(BASF社製、平均粒子径:80nm)をITO粒子に対し15質量%になるように混合、撹拌し、混合液1L(総固形分量20質量%)を調整した。混合液中に下記H−2/THF液100mlを添加し、80℃で混合攪拌を24hr行った後、混合液をスピンコート法により基板ガラス上へのITO膜に塗布した。180℃焼成を行い乾燥後、1mol/Lの水酸化ナトリウム液に浸漬し、エマルジョンを洗い流した後、洗浄、乾燥し、厚み0.4μmの電極4を得た。
【0169】
【化26】

【0170】
(電極5の作製)
電極3の作製において、H−2をP−3(Mn=8000、Mw=35600)に変更した以外は同様にして電極5を得た。
【0171】
(電極6の作製)
電極3の作製において、H−2をP−13(Mn=6500、Mw=22000)に変更した以外は同様にして電極6を得た。
【0172】
(電極7の作製)
電極3の作製において、H−2をP−19(Mn=9500、Mw=39600)に変更した以外は同様にして電極7を得た。
【0173】
(電極8の作製)
電極3の作製において、H−2をP−43(Mn=7000、Mw=26000)に変更した以外は同様にして電極8を得た。
【0174】
(電極9の作製)
電極3の作製において、H−2をP−48(Mn=10000、Mw=45100)に変更した以外は同様にして電極9を得た。
【0175】
(電極10の作製)
電極3の作製において、H−2をP−53(Mn=11000、Mw=50100)に変更した以外は同様にして電極10を得た。
【0176】
〔電気化学表示素子の作製〕
(電気化学表示素子1の作製)
周辺部を、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極2の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、石原産業社製二酸化チタンCR−90を20質量%添加し、超音波分散機で分散させた混和液を乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥させた。得られた二酸化チタン層上に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを散布した後に、電極2と電極1を貼り合わせ、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0177】
(電気化学表示素子2〜16の作製)
電気化学表示素子1の作製において、電解液と電極を表1に示す組み合わせに変更した以外は同様にして電気化学表示素子2〜16を作製した。
【0178】
《電気化学表示素子の評価》
作製した電気化学表示素子1〜20について、下記評価を行った。
【0179】
(反射率の安定性)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、+1.5Vの電圧を1.5秒間印加した後に−1.5Vの電圧を1秒間印加してグレーを表示させた時の波長550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。同様な駆動条件で合計10回駆動し、得られた反射率の平均値をRave1とした。さらに2万回繰り返し駆動した後に同様な方法で反射率の平均値Rave2を求めた。ΔRBK1=|Rave1−Rave2|とし、ΔRBK1を繰り返し駆動した時の反射率の安定性の指標とした。ここでは、ΔRBK1の値が小さいほど、繰り返し駆動した時の反射率の安定性に優れることになる。
【0180】
(書き換え速度)
定電圧電源の両端子に作製した表示素子の両電極を接続し、電流値の上限を1平方cm当たり10mAに制御して、表示側の電極に−1.5Vの定電圧を1秒間印加してグレー表示させた時の波長550nmの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定し、得られた値をRBK2とした。ここでは、RBK2の値が小さいほど、黒表示の書き換え速度が速いことになる。
【0181】
評価の結果を表1に示す。
【0182】
【表1】

【0183】
表より、本発明の電気化学表示素子は、繰り返し駆動した時の反射率の安定性及び書き換え速度に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極材料を有し、該電極材料上に化学結合を介して固定化されているレドックスポリマー化合物を備えている修飾電極であって、前記レドックスポリマー化合物は、2種以上のレドックスモノマーのコポリマーであることを特徴とする修飾電極。
【請求項2】
前記レドックスモノマーのうち少なくとも一つは、レドックス基と、重合を引き起こしうる反応性基との間にスペーサーを有することを特徴とする請求項1に記載の修飾電極。
【請求項3】
前記レドックスモノマーはメタロセンモノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の修飾電極。
【請求項4】
前記メタロセンモノマーがフェロセン誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の修飾電極。
【請求項5】
前記レドックスポリマー化合物が、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)、―NCOまたは−Si(R3−n(OR(R、Rはアルキル基を表し、nは1から3の整数を表す)基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の修飾電極。
【請求項6】
対向する一対の電極のうち、少なくとも一方に請求項1〜5のいずれか1項に記載の修飾電極を用いたことを特徴とする電気化学表示素子。
【請求項7】
金属塩の電気化学的還元析出による発色、及び電気化学的酸化溶解による消色を利用して白及び黒を表示することを特徴とする請求項6に記載の電気化学表示素子。

【公開番号】特開2010−243563(P2010−243563A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88878(P2009−88878)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】