説明

倉庫の出入庫口気密装置

【課題】パットの軟質ポリウレタンフォームがランプの熱で溶融してガスが発生しないようにした倉庫の出入庫口気密装置とする。
【解決手段】パット12の前面に、燃えにくく熱を伝えにくいと共に、変形し易く、元の形状に復元し易い遮蔽体20を設け、荷室14がパット12の前面に押しつけられた時にランプが遮蔽体20に接し、そのランプの熱がパット12の軟質ポリウレタンフォームに伝わることが抑制され、その軟質ポリウレタンフォームがランプの熱で溶融してガスを発生しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵倉庫、冷凍倉庫などの出入庫口とトラックの荷室との間を気密する倉庫の出入庫口気密装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍倉庫の出入庫口とトラックの荷室との間に隙間があると、トラックの荷室内に倉庫内の荷物を積み込んだり、トラックの荷室内の荷物を倉庫内に積み卸しするなどの荷役作業時に倉庫内の冷気が前述の隙間から外部に流出してしまう。
このことを防止するために、出入庫口とトラックの荷室との間に隙間が生じることがないようにした倉庫の出入庫口気密装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された倉庫の出入庫口気密装置が提案されている。
具体的には、出入庫口の周縁に、ヘッドパット、左右のサイドパッド、ボトムパットを四周連続して取付け、トラックの荷室の後端部を各パットの前面に押しつけて出入庫口とトラックの荷室との間に隙間が生じないようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−82050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の倉庫の出入庫口気密装置を用いた倉庫においては、そのパットが燃焼することで火災を発生することがあった。
例えば、トラックの荷室が隙間なくパットに接触するために、各パットを、軟質ポリウレタンフォームを芯材とし、その外面を難燃性樹脂のシートで覆った弾性が優れたパットを用いた出入庫口気密装置を何年も使用した場合に、トラックの荷室を各パレットに長時間連続して押し付けたところ、そのパットが燃焼して火災が発生した。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、軟質ポリウレタンフォームを芯材として弾性が優れたパットを用いながら、そのパットが燃焼して火災を発生することがない倉庫の出入庫口気密装置を提供することである。
【0007】
本発明者等は、前述の火災発生の原因について鋭意研究・実験した結果、次のことを見出した。
図8に示すように、パット1は軟質ポリウレタンフォームの芯材2の外面を難燃性樹脂のシート3で被覆したもので、このパット1にトラックの荷室が押しつけられると、その荷室に取付けたテールランプ、サイドランプ等のランプ4がパット1に押しつけられてシート3、芯材2が凹み変形する。
この状態でランプ4が点灯していると、そのランプ4の熱によってシート3、芯材2が加熱され、シート3で密閉された芯材2が次第に蓄熱して温度上昇して軟質ポリウレタンフォームが溶融し、含有していたガスを放出する。
前記軟質ポリウレタンフォームはフリブル構造で空気が流通し易いから、設置したばかりの新しい出入庫口気密装置の場合には、前述のガスが軟質ポリウレタンフォームの内部を通り、シートの長手方向両端面などの穴から外部に逃げ、軟質ポリウレタンフォームの内部にガスが溜ることがない。
【0008】
しかしながら、設置してから何年も経過した出入庫口気密装置の場合には、その芯材2である軟質ポリウレタンフォームが繰り返して押し込み作用とランプの熱を受けるため軟質ポリウレタンフォームが疲労劣化し、その材質が圧縮した密度の高い材質(つまり、空気が流通し難い状態)に変化する。
このために、前述のように荷室の後端部がパット1の前面に押しつけられると、軟質ポリウレタンフォームがランプ4の熱で溶融し、含有していたガスを放出すると共に、前記シート3、芯材2の溶けたものがランプ4の表面とシート3の溶けない部分に付着してシート3のランプ4が押しつけられた部分に穴があくことがない。
よって、発生したガスが軟質ポリウレタンフォームの内部を通って前述のように外部に放出されないし、シート3のランプ4が押しつけられた部分から外部に放出されないので、軟質ポリウレタンフォームの内部にガス溜りが発生する。
この後にトラックが発進して荷室がパット1から離れる際にシート3がランプ4によって引張られて破れ、空気が流入してガス溜りのガスと接触して引火し、フラッシュバックと呼ばれる現象が発生して芯材2(軟質ポリウレタンフォーム)が急激に燃焼し、火災が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前述の火災発生の原因に基づき鋭意研究・実験した結果、次のことを見出し、本発明に到った。
すなわち、軟質ポリウレタンフォームが溶融してガスを発生しなければガス溜りが発生せずに火災が発生しないのであるから、トラックの荷室をパットに押しつけている時間を短かくして軟質ポリウレタンフォームが溶融してガスが発生しないようにすれば火災の発生を防止できる。
しかし、このようにしたのでは連続して作業できる荷役時間が短かく、トラックの荷室をパットに押しつけたり、離して温度低下させたりを何回か繰り返して行なうことになるから、荷役作業効率が悪い。
【0010】
そこで、本発明は、パットの前面に、燃えにくく、熱を伝えにくい遮蔽体を設けることで、芯材である軟質ポリウレタンフォームがランプの熱によって溶融してガスが発生しないようにした。
【0011】
すなわち、本発明は、倉庫10の出入庫口11の周縁にパット12を取付け、このパット12の前面に運搬車の荷室14後端部を押しつけるようにした倉庫の出入庫口気密装置において、
前記パット12は、軟質ポリウレタンフォームの芯材40を難燃性樹脂系のシート41で被覆したものとし、
前記パット12の前面における少なくとも前記荷室14のランプと対向した部分に、燃えにくく、熱を伝えにくいと共に、変形し易く、かつ元の形状に復元し易い遮蔽体20を設けたことを特徴とする倉庫の出入庫口気密装置である。
【0012】
本発明においては、遮蔽体20の一端縁20aのみをパット12の前面に固着し、その一端縁20a以外の部分はパット12の前面から離れることができる状態とすることができる。
【0013】
このようにすれば、荷室14が遮蔽体20から離れた時に、その遮蔽体20がパット12の前面から離隔してパット12の前面に空気が流れ込むので、その空気によってパット12を冷却することができる。
【0014】
本発明においては、遮蔽体20を、アルミ箔21を難燃性樹脂系シート22と不燃性樹脂シート23とで挟持支持したものにできる。
【0015】
このようにすれば、アルミ箔21が変形し易く、元の形状に復元し易く、しかもコスト安であるから、遮蔽体20を変形し易く、元の形状に復元し易いと共に、安価なものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷室14をパット12の前面に押しつけた状態で、その荷室14のランプは遮蔽体20を介してパット12の前面に接するから、そのランプの熱がパット12に伝わることが抑制されてパット12の軟質ポリウレタンフォームがランプの熱によって溶融してガスが発生しないようにできる。
したがって、ランプの熱によってパット12が燃焼して火災を発生することがない。
【0017】
また、遮蔽体20は変形し易いので、荷室14が押しつけられることでパット12とともに遮蔽体20が変形し、荷室14と出入庫口11との間に隙間が生じないようにできる。
【0018】
また、遮蔽体20は元の形状に復元し易いので、その遮蔽体20に荷室14が押しつけられて変形した状態から荷室14が離れると、その遮蔽体20は直ちに元の形状に復元し、次に荷室14が押しつけられた時にはパット12とともに変形して離間が生じないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1、図2、図3に示すように、冷蔵倉庫、冷凍倉庫などの倉庫10の出入庫口11の庫外面における周縁にパット12が四周連続して取付けてある。
運搬車、例えば保冷車13の荷室14の後端部に、テールランプ15、サイドランプ16等のランプが取付けてある。
前記パット12は、ヘッドパット17と左右のサイドパット18とボトムパット19で矩形状としてある。
前記パット12の前面に、燃えにくく、熱を伝えにくいと共に、変形し易く、かつ元の形状に復元し易い遮蔽体20が前記テールランプ15、サイドランプ16等のランプと対向して設けてある。
図1に示す状態から保冷車13を後進して前記荷室14の後端部をパット12の前面に押しつけることで、出入庫口11と荷室14との間に隙間が生じないようにしていると共に、テールランプ15、サイドランプ16等のランプが遮蔽体20に接触する。
【0020】
前記ヘッドパット17、サイドパット18、ボトムパット19は、芯材40をシート41で被覆したもので、その背面側を出入庫口11の庫外面の周縁に沿って取付けてある。この実施の形態では矩形断面長尺形状で、ヘッドパット17とボトムパット19は横向きに取付けられ、サイドパット18は縦向きに取付けられる。
前記芯材40は軟質ポリウレタンフォームで、弾性が優れている。
前記シート41は難燃性樹脂系のシートである。
要するに、各パットは従来のパットと同様である。
【0021】
このようであるから、荷室14がパット12の前面に押しつけられた時に、テールランプ15、サイドランプ16等の熱がパット12に伝わることが遮蔽体20で抑制され、パット12の軟質ポリウレタンフォームが溶融してガスを発生することがないから、ランプの熱によって火災が発生することがない。
また、遮蔽板20は変形し易いので、荷室4が押しつけられた時に、その荷室14によってパット12とともに変形して出入庫口11と荷室14との間に隙間が生じないようにできる。
また、遮蔽体20は元の形状に復元し易いので、荷室14がパット12から離れえた時に元の形状にスムーズに復元し、次の荷室14が確実に押しつけられる。
【0022】
次に、各部材の詳細を説明する。
この実施の形態では、左右のサイドパット18の上部と下部、つまりサイドランプ16、テールランプ15と対向した部分にのみ遮蔽体20が設けられ、上下中間部分には燃えにくい補助遮蔽体30が設けてある。
これに限ることはなく、各パット17,18,19の前面に遮蔽体20をそれぞれ設けても良いし、補助遮蔽体30を設けなくとも良い。
要するに、パット12の前面における少なくともランプと対向した部分に遮蔽体20を設ければ良い。
また、前記パット12の前面とは荷室14が押しつけられると共に、ランプで加熱される面である。
【0023】
前記遮蔽体20は、その一端縁20aのみをサイドパット18の前面18a(パット12の前面)に固着し、その一端縁20a以外の部分はサイドパット18の前面18aから離れることができる状態である。
このようであるから、荷室14がサイドパット18の前面に押しつけられる時には、その荷室14によって遮蔽体20が押され、その遮蔽体20の全面がサイドパット18の前面に押しつけられるので、ランプの熱がサイドパット18に伝わることを抑制できる。
また、荷室14がサイドパット18の前面から離れる時には、荷室14が遮蔽体20と離れることで、その遮蔽体20は、一端縁20aを基準として風などの外力で振れ動き、そのサイドパット18の前面18aと遮蔽体20との間に空気が入り込み、サイドパット18の前面18aに空気が触れてサイドパット18を空気冷却することができる。
したがって、サイドパット18から荷室14が離れることによって、そのサイドパット18を直ちに冷却できる。
【0024】
例えば、遮蔽体20を矩形状とし、サイドパット18の前面に複数の遮蔽体20を上下方向(長手方向)に順次配設する共に、その遮蔽体20の上端縁(一端端20a)のみを縫い合わせなどで固着して取付ける。
そして、上下に隣接した遮蔽体20における上の遮蔽体20の下端縁20bを下の遮蔽体20の上端縁(一端縁)20aに重ね合わせる。
【0025】
前記遮蔽体20は、図4、図5に示すように外力で変形し易く、元の形状に復元し易い熱を伝えにくいシート状物、例えばアルミ箔21を難燃性樹脂系シート22と不燃性樹脂シート23で挟着支持したもので、その不燃性樹脂シート23がパット12の前面と対向して設ける。つまり、難燃性樹脂系シート22が表側のシートで、不燃性樹脂シート23が裏側のシートである。なお、シート状物としてはアルミ箔21に限ることはなく、セラミック系耐熱ペーパを用いることができる。また、難燃性樹脂系シート22の代わりに不燃性樹脂シート23を用いても良い。
【0026】
好ましくは、難燃性樹脂系シート22の周縁部分と不燃性樹脂シート23の周縁部分を縫い合わせして袋状とし、その内部にアルミ箔21を収容する。
このようにすれば、遮蔽体20をパット12の前面に取付ける際にアルミ箔21が脱落したりすることがない。
【0027】
前記アルミ箔21は外力で変形し易いと共に、その外力がなくなることで元の形状に復元し易く、しかもコスト安であるから、遮蔽体20を変形し易く、元の形状に復元し易いと共に、コスト安とすることができる。
このアルミ箔21は1枚〜5枚用いる。
前記アルミ箔21は厚さ0.05mm程度である。
【0028】
前記補助遮蔽体30は、図6に示すように、前述の難燃性樹脂系シート22のみとしてあるが、前述の不燃性樹脂シート23と難燃性樹脂系シート22を重ね合わせたものとしても良いし、不燃性樹脂シート23としても良い。
【0029】
前記遮蔽体20、補助遮蔽体30の表面には目印用のシート24,34が一直線状に連続するように設けてある。
この目印用のシート24,34は光が当ることで反射するもので、トラックを後進して荷室14をパット12に押しつける時に、その荷室14の押しつけの目印となる。
【0030】
前記遮蔽体20は図7に示すようにボトムパット19の前面に前述と同様に取付けても良い。
この場合には、遮蔽体20の縦辺部分が重ね合うように上端縁(一端縁20a)を固着して取付ける。また、前記遮蔽体20をヘッドパット17の前面に前述と同様に取付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態を示す運搬車と倉庫の出入庫口部分の側面図である。
【図2】パットの正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】遮蔽体の断面図である。
【図5】遮蔽体の斜視図である。
【図6】補助遮蔽体の斜視図である。
【図7】パットの第2の実施の形態を示す正面図である。
【図8】従来のパットの断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10…倉庫、11…出入庫口、12…パット、14…荷室、15…テールランプ、16…サイドランプ、17…ヘッドパット、18…サイドパット、19…ボトムパット、20…遮蔽体、20…アルミ箔、22…難燃性樹脂系シート、23…不燃性樹脂シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫10の出入庫口11の周縁にパット12を取付け、このパット12の前面に運搬車の荷室14後端部を押しつけるようにした倉庫の出入庫口気密装置において、
前記パット12は、軟質ポリウレタンフォームの芯材40を難燃性樹脂系のシート41で被覆したものとし、
前記パット12の前面における少なくとも前記荷室14のランプと対向した部分に、燃えにくく、熱を伝えにくいと共に、変形し易く、かつ元の形状に復元し易い遮蔽体20を設けたことを特徴とする倉庫の出入庫口気密装置。
【請求項2】
遮蔽体20の一端縁20aのみをパット12の前面に固着し、その一端縁20a以外の部分はパット12の前面から離れることができる状態とした請求項1記載の倉庫の出入庫口気密装置。
【請求項3】
遮蔽体20を、アルミ箔21を難燃性樹脂系シート22と不燃性樹脂シート23とで挟持支持したものとした請求項1又は2記載の倉庫の出入庫口気密装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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