説明

個人認証つき手指洗浄システム

【課題】予めに登録された個人の生体情報に対して生体情報の照合を行って個人を認証する機能をもち、例えば食品工場などで、作業者の手指洗浄の遂行履歴データを取得することが可能な個人認証つき手指洗浄システムを得ることを目的とする。
【解決手段】任意の個人の生体情報を取得する機能を有する生体情報取得手段3と、液噴射手段5a〜5cと手指を検知するセンサ6a〜6cを有する洗浄器と、複数の認証比較情報と洗浄器の洗浄条件とが登録される事前情報記録手段10、カウンタ12、任意の個人の生体情報と複数の認証比較情報とを照合することによって個人を認証し、洗浄条件に基づいて手指洗浄の遂行がなされたかを判断する制御手段9および制御手段9による判断の結果が、認証された個人に対応するID番号に関連付けされて書き込まれる履歴記録手段11、を有する制御装置本体部2と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体情報の照合による個人を認証する機能を有する個人認証つき手指洗浄システムに関するものであり、特に食品工場や飲食店などで、作業者の手指洗浄の遂行履歴データを取得することが可能な個人認証つき手指洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手指消毒器は、本体ケースと、本体ケースの上部に内蔵される赤外線発光素子と赤外線受光素子とからなる赤外線センサと、制御装置と、薬液タンクと、ポンプとを備えている。
本体ケースには開口部が設けられて、開口部の上部には薬液噴射口が設置されている。また、ポンプは、薬液タンクおよび薬液噴出口とパイプを介して接続されており、ポンプが作動すると薬液タンクから消毒薬液を吸い上げ、薬液噴出口から消毒薬液が噴出される。
【0003】
開口部には、赤外線発光素子から、常時赤外線光が照射されており、開口部に手指が差し込まれたときには、赤外線受光素子は手指で反射された赤外線の反射光を検出して、検出信号を制御装置に出力する。制御装置は、赤外線センサからの検出信号を解析して、手指が開口部に差し込まれたと判断すると、制御信号を出力してポンプを作動させ、消毒薬液を薬液噴射口から一定時間噴射する。これにより、手指の消毒が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−60764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、食品工場や飲食店などでは手指の汚染に由来する食中毒を防ぐために、作業前、作業中の手洗いや、消毒、手袋着用などが、食品衛生法により義務付けられている。
従来の手指消毒器は、個人を特定するための個人認証機能が無いため、誰が手指の消毒をしたかの記録を確実に残すことはできない。特に、多くの作業者を雇用する食品工場などでは、作業者全員が日々行う洗浄消毒の遂行の有無を完全に把握するのは困難となる。
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、予め登録された個人の生体情報に対して任意の個人の生体情報の照合を行って個人を認証する機能をもち、例えば食品工場などで、作業者の手指洗浄の遂行履歴データを取得できる個人認証つき手指洗浄システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による個人認証つき手指洗浄システムは、任意の個人の生体情報を取得する機能を有する生体情報取得手段と、液噴射手段と上記液噴射手段に設けられた液噴射口から噴射される液の噴射方向近傍に手指が差し込まれたときに手指を検知するセンサを有する洗浄器と、上記生体情報取得手段で取得される上記個人の上記生体情報が上記個人に対応する上記ID番号に関連付けされた複数の認証比較情報と上記洗浄器の洗浄条件とが登録される事前情報記録手段、カウンタ、上記生体情報取得手段で上記任意の個人の生体情報が取得されたときに、複数の上記認証比較情報と照合することによって上記個人を認証し、上記センサによる手指の検知に連動して上記液噴射口からの液の噴射を制御すると同時に上記カウンタを制御し、上記カウンタからの情報を監視して上記洗浄条件に基づいて手指洗浄の遂行がなされたかを判断する制御手段および上記制御手段による手指洗浄の遂行がなされたかの判断の結果が、認証された上記個人に対応する上記ID番号に関連付けされて書き込まれる履歴記録手段、を有する制御装置本体部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、制御手段は、予め事前情報記録手段(第1のメモリ)に登録された複数の認証比較情報と生体情報取得手段で取得される任意の個人の生体情報とを照合し、合致する生体情報を検知することによって個人を認証することができる。
また、制御手段は、カウンタ、センサの情報を監視することによって、認証された個人が洗浄器の洗浄条件に対して手指洗浄を完全に遂行したか否かの判断を行うことができるので、手指洗浄が完全に遂行されたのか不完全であったのかの履歴データを認証された個人のID番号に関連付けさせて、履歴記録手段(第2のメモリ)に保存させることができる。また、必要に応じて手指洗浄の遂行履歴データの確認を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明に係る個人認証つき手指洗浄システムの構成を示す説明図、図2はこの発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、利用者のそれぞれに割り振られたID番号に関連付けさせて指紋データを登録する動作を説明するためのフロー図、図3はこの発明に係る個人認証つき手指洗浄システムの洗浄器の洗浄条件を設定する動作を説明するためのフロー図、図4〜図6はこの発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、作業者が行う手指洗浄の動作と、手指洗浄の遂行履歴データの取得方法を説明するためのフロー図である。
【0010】
この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムは、洗浄器1、制御装置本体部2および生体情報取得手段3によって構成される。
【0011】
洗浄器1は、洗剤液噴射手段5a、水噴射手段5b、消毒液噴射手段5c、センサとしての第1のセンサ6a〜第3のセンサ6c、スピーカ8、洗剤液タンク(図示せず)、水タンク(図示せず)および消毒液タンク(図示せず)を有している。
ここで、洗剤液噴射手段5a、水噴射手段5b、消毒液噴射手段5cのそれぞれを液噴射手段と定義する。
洗剤液噴射手段5aは、洗剤液タンクにパイプ(図示せず)を介して接続され、洗剤液噴射手段5aに設けられた洗剤液噴射口7aから洗剤液の噴射が可能となっている。また、洗剤液噴射手段5aには、洗剤液の噴射が可能な開弁状態と噴射が不能な閉弁状態との切換えを電気的に行うことができる電磁切換弁(図示せず)が設けられている。
水噴射手段5bは、水タンクにパイプを介して接続されて、水噴射手段5bに設けられた水噴射口7bから、水の噴射が可能となっている。また、水噴射手段5bには、水の噴射が可能な開弁状態と噴射が不能な閉弁状態との切換えを電気的に行うことができる電磁切換弁(図示せず)が設けられている。
【0012】
消毒液噴射手段5cは消毒液タンクにパイプを介して接続されて、消毒液噴射手段5cに設けられた消毒液噴射口7cから、消毒液の噴射が可能となっている。また、消毒液噴射手段5cには、消毒液の噴射が可能な開弁状態と消毒液の噴射が不能な閉弁状態との切換えを電気的に行うことができる電磁切換弁(図示せず)が設けられている。
【0013】
さらに、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cが洗剤液噴射口7a、水噴射口7b、消毒液噴射口7cの液噴射方向の近傍にそれぞれ設けられて、洗剤液噴射口7a、水噴射口7b、消毒液噴射口7cの何れかの液噴射方向に手指を近づけたときに検知するようになっている。ここで、洗剤液噴射口7a、水噴射口7b、消毒液噴射口7cのそれぞれを液噴射口と定義するとともに液噴射口から噴射される洗剤液、水、消毒液のそれぞれを液と定義する。また、手指を検知したときに第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cはONであり、検知していないときをOFFとする。さらに、洗浄器1には、スピーカ8が配設され、後述の制御手段9によって制御されて、所望のアナウンスを流すことが出来る。
【0014】
生体情報取得手段3は、例えば非接触型の紋像読取装置15、第1のディスプレイ16およびテンキー17などで構成される。
制御装置本体部2は、制御手段9、事前情報記録手段としての第1のメモリ10、履歴記録手段としての第2のメモリ11、カウンタ12および制御装置本体部2の内部と外部との間のデータのやりとりを媒介する通信手段13を有している。
第1のメモリ10は、データの読み出しおよび書き込みが可能なRAMまたはハードディスクなどを用いることができる。
第2のメモリ11は、データの読み出しおよび書き込みが可能なRAMまたはハードディスクなどを用いることができる。
【0015】
制御手段9は、CPU、第3のメモリ14としてのRAMおよび制御プログラムが書き込まれたROMなどが備えられて、データ処理やデータの送受信などを行うとともに、後述するように洗浄器1における電磁弁の開閉、生体情報取得手段3の第1のディスプレイ16の表示内容などの制御を行うことができる。
【0016】
次に、各構成の主な接続状態について説明する。
制御手段9は、第1のメモリ10、第2のメモリ11、カウンタ12に電気的に接続されている。また、制御手段9は、通信手段13を介して洗浄器1の洗剤液噴射手段5a、水噴射手段5b、消毒液噴射手段5c、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6c、スピーカ8、生体情報取得手段3に電気的に接続されている。
【0017】
このように構成された個人認証つき手指洗浄システムにおいて、制御手段9は、第1のメモリ10および第2のメモリ11に対してデータの書き込みと読み込みを任意に行うことができる。また、制御手段9では、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cのONまたはOFFを検知することができる。制御手段9は、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cのONまたはOFFの検知に対応させて、洗剤液噴射手段5a、水噴射手段5b、消毒液噴射手段5cのそれぞれに設けられた電磁切替弁の開閉制御を行うことができる。
【0018】
また、制御手段9は、スピーカ8を制御して所望のアナウンスを流すことができる。例えば、「洗剤液噴射口7aの下部に手指を挿入してください。」などのアナウンスをすることによって、個人認証つき手指洗浄システムの利用者に手指洗浄を促すことができる。
さらに、カウンタ12は、制御手段9からの制御信号によってカウントが開始される。例えば、制御手段9が第1のセンサ6aのONの検知と洗剤液噴射口7aからの洗剤液の噴射を連動させ、同時にカウンタ12の動作を開始させることによって、第1のセンサ6aのONの継続時間がそのまま洗剤液噴射口7aからの洗剤液噴射時間としてカウントされる。
【0019】
同様に、第2のセンサ6bまたは第3のセンサ6cによるONの検知と水噴射口7bからの水の噴射または消毒液噴射口7cからの消毒液の噴射を連動させ、同時にカウンタ12の動作を開始させれば、水噴射時間または消毒液噴射時間をカウントすることができる。ここで、洗剤液噴射時間、水噴射時間および消毒液噴射時間のそれぞれを液噴射時間と定義する。
また、カウンタ12によってカウントされる時間の情報は、制御手段9で監視される。さらに、カウンタ12は複数の状態をカウントできるようになっており、他の状態をカウントしたいときにも、制御手段9からの制御によってカウントを始めることもできる。
【0020】
また、生体情報取得手段3では、個人のID番号の登録が行われ、登録したID番号に対して生体情報としての指紋データを取得することができる。取得したID番号と指紋データは制御手段9で関連付けされて、第1のメモリ10に書き込まれる。以下、その動作について説明する。
生体情報取得手段3の第1のディスプレイ16への表示内容は、制御手段9によって制御される。制御手段9は、個人認証つき手指洗浄システムの利用者に、ID番号の登録を促す表示を第1のディスプレイ16に表示させることができる。利用者が、テンキー17を操作して、各個人に対応したID番号を打ち込むと、ID番号データが第3のメモリ14に書き込まれる。
【0021】
ID番号データが第3のメモリ14に書き込まれると、制御手段9は第1のディスプレイ16に対してID番号を表示させ、個人の指紋データの取得を促すようになっている。そして、非接触型の紋像読取装置15によって、個人の指紋データが取得されると、取得された指紋データは、第3のメモリ14に書き込まれる。制御手段9は、ID番号と指紋データとを関連付けさせて、第1のメモリ10への書き込みを行い登録する。個人認証つき手指洗浄システムの利用者全員に対して指紋データを取得して、ID番号と関連付けさせて指紋データを第1のメモリ10に登録することが可能であり、第1のメモリ10にはID番号に関連付けされた指紋データのデータベースが構築される。ここで、ID番号と関連付けされた指紋データを認証比較情報と定義する。また、非接触型の紋像読取装置15を使用して指紋を取得することにより、細菌などが装置を介して他人に移る可能性を排除できる。
【0022】
また、制御手段9は、第1のディスプレイ16に任意の個人の指紋データの取得を促すこともでき、紋像読取装置15で取得した任意の個人の指紋データは第3のメモリ14に書き込まれるようになっている。
したがって、生体情報取得手段3で取得される任意の個人の指紋データを、予め第1のメモリ10にデータベース化されて複数登録されている認証比較情報と照合することによって個人の認証を行うことが可能となる。また、個人が認証されたならば、制御手段9は、個人に対応するID番号を第2のメモリ11に書き込むようになっている。
【0023】
第1のメモリには予め、後述する洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間および制御停止時間が登録されている。ここで、洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間および制御停止時間を洗浄条件と定義する。さらに、洗浄条件のうち、洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間を噴射継続時間と定義する。洗浄条件は、主に個人認証つき手指洗浄システムの管理者によって登録されるものである。
【0024】
噴射継続時間について説明する。噴射継続時間は、洗剤液噴射口7a、水噴射口7b、消毒液噴射口7cの液噴射方向の近傍にそれぞれ設けられた第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cのいずれかがONであると制御手段9が判断したときに、ONであると判断された第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cのいずれかに対応する洗剤液噴射口7a、水噴射口7b、消毒液噴射口7cから洗剤液、水、消毒液を噴射する際の継続時間を規定するためのデータである。
【0025】
次に、制御停止時間について説明する。例えば第1のセンサ6aが一旦ONすると、制御手段9は、ONした第1のセンサ6aに対応させて洗剤液を洗剤液噴射口7aから噴射させる。ここで制御手段9は、ONした第1のセンサ6aがOFFになったと判断すると、中断時間カウンタとしてカウンタ12を動作させて中断時間をカウントする。制御手段9が、中断時間を監視し、中断時間が制御停止時間以上に経過したと判断すると、洗剤液洗浄が不完全であったとの判断を下す。
【0026】
また、第1のセンサ6aがONとなる前でも、例えば洗浄動作の最初に、スピーカ8によって洗浄を促すと同時に中断時間カウンタとしてのカウンタ12を動作させて中断時間をカウントし、第1のセンサ6aがOFFのまま、中断時間が制御停止時間以上に経過したときは、制御手段9が、洗剤液洗浄が不完全であったとの判断を下す。このように、制御停止時間は、洗剤液洗浄が完全に遂行されたかの判断基準として使用される。
同様に、制御停止時間は、水によるすすぎ洗浄や消毒液洗浄が完全に遂行されたかの判断基準として使用される。
ここで、液噴射手段5a〜5cによる洗浄過程において、スピーカ8などによって、最初に洗浄を促した時間を洗浄動作開始時とする。
【0027】
また、予め第1のメモリ10に洗浄条件が登録されていない場合や、変更したい場合は、制御手段9および第1のメモリ10に通信手段13を介して接続され、第2のディスプレイ18およびキーボード19などを備える設定登録手段4を操作して洗浄条件を登録または変更することができる。制御手段9は、設定登録手段4の第2のディスプレイ18の表示内容を制御して、洗浄条件の登録または変更を促す表示をさせることができる。そして個人認証つき手指洗浄システムの管理者がキーボード19を操作して洗浄条件の設定を行うと、洗浄条件は第1のメモリ10に書き込まれるようになっている。
【0028】
上記のように、制御手段9は、カウンタ12、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cの情報を監視することによって、洗浄器1の洗浄条件に対して、認証された個人が手指洗浄を完全に遂行したかどうかの判断を行うことができる。さらに、制御手段9は、手指洗浄が完全に遂行されたのか不完全であったのかの履歴データを、認証された個人に対応するID番号に関連付けして第2のメモリ11に保存できる。
個人認証つき手指洗浄システムの利用者全員に対して、手指洗浄の遂行が完全であった人や、不完全だった人の履歴データを、認証された個人に対応するID番号に関連付けして残すことができ、必要に応じて手指洗浄の履歴データの確認を行うことが可能となる。
【0029】
次に、上記のように構成された個人認証つき手指洗浄システムの動作について図2〜図4のフロー図を参照しつつ説明する。なお、図2〜図4中、本文中のステップ101〜346を便宜上S101〜S346と記す。
【0030】
例えば、食品工場などの作業者が、個人認証つき手指洗浄システムを利用するものとする。
まず、図2において作業者のそれぞれに割り振られたID番号に関連付けさせて指紋データを第1のメモリ10に登録する動作を説明する。
ステップ101において、制御手段9は、第1のディスプレイ16に、ID番号の登録を個人認証つき手指洗浄システムの利用者(作業者)に促すように表示する。予め利用者のそれぞれに割り振られているID番号をテンキー17の操作を行って入力すると、ID番号は制御手段9の第3のメモリ14に書き込まれる(ステップ102)。
【0031】
次に、制御手段9は、ID番号を入力した利用者に対して、第1のディスプレイ16に、例えば利用者の人差し指の指紋データを採取することを促す表示をさせる(ステップ103)。利用者に紋像読取装置15によって指紋を読み取らせると、指紋データは第3のメモリ14に書き込まれる(ステップ104)。制御手段9は、読み取ったID番号と指紋データを関連付けし、ID番号に関連付けした指紋データを第1のメモリ10に書き込む(ステップ105)。
【0032】
個人認証つき手指洗浄システムを利用する作業者全員が、ステップ101〜ステップ105を行うことにより、第1のメモリ10には、作業者全員のID番号に関連付けされた指紋データ(認証比較情報)がデータベース化されて登録される。
【0033】
次に、洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間および制御停止時間の設定と登録について、図3を参照しつつ説明する。
制御手段9は、個人認証つき手指認証装置の管理者に第2のディスプレイ18を用いて、洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間を設定するように促す(ステップ201)。管理者は、キーボード19を操作して、所望の洗浄時間を設定する(ステップ202)、次に所望のすすぎ時間を設定する(ステップ203)。次に所望の消毒時間を設定する(ステップ204)。次に所望の制御停止時間を設定する(ステップ205)。例えば、洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間および制御停止時間のそれぞれを、10秒、20秒、20秒およびに30秒に設定することができる。
そして、設定された洗浄時間、すすぎ時間、消毒時間および制御停止時間のデータは、第1のメモリ10に書きこまれる(ステップ206)。
【0034】
次に、作業者が洗剤液洗浄、すすぎ洗浄、消毒液洗浄を行うときの動作および手指洗浄の遂行履歴データの取得フローについて、図4を参照しつつ説明する。
まず、制御手段9は第1のディスプレイ16に、作業者に対して、指紋データを取得することを促す表示をさせる(ステップ301)。
作業者は、ステップ104で読み取らせたのと同じ指の指紋を紋像読取装置15に読み取らせる(ステップ302)。取得された指紋データは、制御手段9に送られて第3のメモリ14に書き込まれる(ステップ303)。制御手段9は、第1のメモリ10に予め書き込まれている認証比較情報とステップ302で取得した指紋データとの照合を行い、合致するものが有るか否かを判断する(ステップ304)。
【0035】
認証比較情報の中に取得した指紋データと合致するデータが無い場合は、制御手段9は、第1のディスプレイ16に、「合致するデータがありません、管理者に連絡してください」等を表示させて利用者に、個人認証つき手指洗浄システムの管理者へ連絡することを促し(ステップ305)、制御手段9は、制御を停止する。
認証比較情報の中に取得した指紋データと合致するデータがあり、個人認証がなされた場合は、制御手段9は、認証した個人に対応するID番号を第2のメモリ11へ書き込む(ステップ306)。
【0036】
次に制御手段はスピーカ8から、「洗剤液噴射口7aの下部に手指を挿入してください」のアナウンスを流し、中断時間カウンタのカウントを開始する(ステップ307)。
次に、制御手段9は第1のセンサ6aがONしたかどうかの判断を行う(ステップ308)。
ステップ308で、第1のセンサ6aがONされていないと判断したら、制御手段9は中断時間が設定した制御停止時間以上に経過したかの判断を行う(ステップ309)。
ステップ309で中断時間が制御停止時間以上経過したと判断された場合、制御手段9は、ID番号に対応させて、洗剤洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ310)。
ステップ309で中断時間が制御停止時間以上に経過していないと判断された場合、ステップ308に戻る。
【0037】
ステップ308で、制御手段9が、第1のセンサ6aはONしたと判断したら、洗剤液を適量噴射して、カウンタ12を開始させて洗剤液噴射時間のカウントを監視するとともに、中断時間カウントをリセットする(ステップ311)。
次に、制御手段9は第1のセンサ6aがONしているかの判断を行う(ステップ312)。ステップ312で制御手段9が、第1のセンサ6aはONであると判断した場合は、ステップ318へ進む。
ステップ312で制御手段9が、第1のセンサ6aはONでないと判断した場合は、中断時間カウントを開始し、洗剤液噴射時間のカウントを一時停止する(ステップ313)。
次に、制御手段9は、中断時間が制御停止時間以上経過したかを判断する(ステップ314)。
【0038】
ステップ314で中断時間が制御停止時間以上に経過していると判断された場合、制御手段9は、ID番号とともに、洗剤洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ315)。ステップ314で中断時間が制御停止時間上に経過していないと判断された場合、ステップ316へ進む。
ステップ316で、制御手段9は第1のセンサ6aがONしたかを判断する。
ステップ316で、制御手段9は第1のセンサ6aがONしていないと判断した場合、ステップ314に戻る。また、ステップ316で制御手段9は、第1のセンサ6aがONしたと判断した場合、中断時間カウントをリセットするとともに洗剤液噴射時間カウントを再開し(ステップ317)、ステップ318へ進む。
ステップ318で、制御手段9は、洗剤液噴射時間が設定した洗浄時間以上に経過したかを判断する。ステップ318で、洗剤液噴射時間が洗浄時間より経過していないと判断された場合、ステップ312に戻る。
【0039】
ステップ318で、制御手段9が、洗剤液噴射時間が洗浄時間以上に経過したと判断した場合、洗剤液の噴射を停止する(ステップ319)。そして、制御手段9は、スピーカ8を作動させて、「水噴射口7bの下に手を移してください」のアナウンスを行い、カウンタ12を動作させて中断時間のカウントを開始する(ステップ320)。
【0040】
次に、制御手段9は水噴射口7bの下方に設けられた第2のセンサ6bがONしたかの判断を行う(ステップ321)。
ステップ321で、第2のセンサ6bがONしていないと判断された場合、制御手段9は中断時間が設定した制御停止時間以上に経過したかの判断を行う(ステップ322)。
ステップ322で中断時間が制御停止時間以上経過したと判断された場合、制御手段9は、ID番号に対応させて、水によるすすぎ洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ323)。
ステップ322で中断時間が制御停止時間以上に経過していないと判断された場合、ステップ321に戻る。
【0041】
ステップ321で、制御手段9が第2のセンサ6bがONしたと判断したら、水を適量噴射して、カウンタ12を動作させて水噴射時間のカウントを開始するとともに、中断時間カウントをリセットする(ステップ324)。
次に、制御手段9は第2のセンサ6bがONしているかの判断を行う(ステップ325)。ステップ325で制御手段9が、第2のセンサ6bがONしていると判断した場合は、ステップ331へ進む。
ステップ325で制御手段9が、第2のセンサ6bはONしていないと判断した場合は、カウンタ12を動作させて中断時間カウントを開始し、水噴射時間カウントを停止する(ステップ326)。
次に、制御手段9は、中断時間が、制御停止時間以上経過したかを判断する(ステップ327)。
ステップ327で中断時間が制御停止時間以上に経過したと判断された場合、制御手段9は、ID番号に対応させて、すすぎ洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ328)。ステップ327で中断時間が制御停止時間上に経過していないと判断された場合、ステップ329へ進む。
ステップ329では、制御手段9は、第2のセンサ6bがONであるかを判断する。
ステップ329で、第2のセンサ6bがONでないと判断された場合、ステップ327に戻る。また、ステップ329で、第2のセンサ6bがONであると判断された場合、制御手段9は、中断時間カウントをリセットするとともに水噴射時間カウントを再開し(ステップ330)、ステップ331へ進む。
ステップ331で、制御手段9は、水噴射時間が設定したすすぎ時間以上経過したかを判断する。ステップ331で、水噴射時間がすすぎ時間以上に経過していないと判断された場合、ステップ325に戻る。
【0042】
ステップ331で、水噴射時間が、すすぎ時間以上に経過したと判断した場合、制御手段9は水の噴射を停止する(ステップ332)。そして、制御手段9は、スピーカ8を作動させて、「消毒液噴射口7cの下に手を移してください」のアナウンスを行い、中断時間のカウントを開始する(ステップ333)。
【0043】
次に、制御手段9は、消毒液噴射口7cの下方に設けられた第3のセンサ6cがONしたかの判断を行う(ステップ334)。
ステップ334で、第3のセンサ6cがONしていないと判断されたら、制御手段9は中断時間が設定した制御停止時間以上に経過したかの判断を行う(ステップ335)。
ステップ335で中断時間が制御停止時間以上経過したと判断された場合、制御手段9は、ID番号に対応させて、消毒液による消毒液洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ336)。
ステップ335で中断時間が制御停止時間以上に経過していないと判断された場合、ステップ334に戻る。
【0044】
ステップ334で、制御手段9が第3のセンサ6cがONされていると判断したら、消毒液を適量噴射して、カウンタ12を動作させて消毒液噴射時間のカウントを開始するとともに、中断時間カウントをリセットする(ステップ337)。
次に、制御手段9は第3のセンサ6cがONであるかどうかの判断を行う(ステップ338)。ステップ338で制御手段9が、第3のセンサ6cがONであると判断した場合は、ステップ344へ進む。
ステップ338で制御手段9が、第3のセンサ6cはONでないと判断した場合は、中断時間カウントを開始し、消毒液噴射時間カウントを一時停止する(ステップ339)。
次に、制御手段9は、中断時間が、制御停止時間以上経過したかを判断する(ステップ340)。
ステップ340で中断時間が制御停止時間以上に経過したと判断された場合、制御手段9は、ID番号に対応させて、消毒液洗浄不完全の履歴データを第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ341)。ステップ340で中断時間が制御停止時間上に経過していないと判断された場合、ステップ342へ進む。
ステップ342では、制御手段9は、第3のセンサ6cがONしたかのの判断をする。
ステップ342で第3のセンサ6cがONしていないと判断された場合、ステップ340に戻る。
ステップ342で第3のセンサ6cがONしたと判断された場合、中断時間カウントをリセットするとともに消毒液噴射時間カウントを再開し(ステップ343)、ステップ344へ進む。
ステップ344では、制御手段9は、消毒液噴射時間が設定した消毒時間以上に経過したかを判断する。ステップ344で、消毒液噴射時間が消毒時間以上に経過していないと判断された場合、ステップ338に戻る。
【0045】
ステップ344で、消毒液噴射時間が、消毒時間以上に経過したと判断された場合、消毒液の噴射を停止する(ステップ345)。
そして、制御手段9は、洗剤液洗浄、すすぎ洗浄、消毒液洗浄を完了したことを示す洗浄完了データを、ID番号に対応させて第2のメモリ11に書き込み、制御を停止する(ステップ346)。
【0046】
この発明によれば、個人認証つき手指洗浄システムの利用者の指紋データを生体情報取得手段3で取得できる。そして個人認証つき手指洗浄システムの利用者のそれぞれに対応したID番号と関連付けさせた指紋データ(認証比較情報)を、予め第1のメモリ10に登録させることができる。さらに制御手段9は、予め第1のメモリ10にデータベース化されて複数登録されている認証比較情報と生体情報取得手段3で取得される任意の個人の指紋データとを照合し、合致する指紋データを検知することによって個人を認証することができる。
【0047】
また、制御手段9は、カウンタ12、第1のセンサ6a〜第3のセンサ6cの情報を監視することによって、認証された個人の手指洗浄が洗浄器の洗浄条件に対して完全に遂行されたのか不完全であったのかの判断を行うことができる。
さらに、制御手段9は、認証された個人のID番号に関連付けして、手指洗浄が完全に遂行されたのか不完全であったのかの履歴データを第2のメモリ11に保存できる。
個人認証つき手指洗浄システムの利用者全員に対して、ID番号に関連付けされた手指洗浄の遂行履歴データを取得でき、必要に応じて手指洗浄の遂行履歴データの確認を行うことが可能となる。
また、設定登録手段4を設けることによって洗浄器1の洗浄条件の登録、変更を任意に行うことができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、生体情報取得手段3で、指紋を取得するものとしたが、指紋を取得することに限定されるものではなく、声紋、顔型、虹彩、静脈など他の生体情報を取得してもよい。
また、洗剤液洗浄、すすぎ洗浄、消毒液洗浄の3つの洗浄過程を例にあげて説明したが、3つの過程を設けるものに限定されるものではなく、1つの洗浄過程や、さらに多くの洗浄過程を設けてもこの発明を適用できる。
また、ステップ307、ステップ320、ステップ333では、スピーカ8のアナウンスによって作業者に作業を促すものとしたが、例えば、作業者が、洗剤液、水、消毒液の順に洗浄すること、また、洗剤液、水、消毒液の噴射が終了したら次のステップに移ることを周知徹底させていれば特にスピーカ8を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムの構成を示す説明図である。
【図2】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、利用者のそれぞれに割り振られたID番号に関連付けさせて指紋データを登録する動作を説明するためのフロー図である。
【図3】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムの洗浄器の洗浄条件を設定する動作を説明するためのフロー図である。
【図4】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、作業者が行う手指洗浄の動作と、手指洗浄の遂行履歴データの取得方法を説明するためのフロー図である。
【図5】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、作業者が行う手指洗浄の動作と、手指洗浄の遂行履歴データの取得方法を説明するためのフロー図である。
【図6】この発明に係る個人認証つき手指洗浄システムにおいて、作業者が行う手指洗浄の動作と、手指洗浄の遂行履歴データの取得方法を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
2 制御装置本体部、3 生体情報取得手段、4 設定登録手段、5a 洗剤液噴射手段(液噴射手段)、5b 水噴射手段(液噴射手段)、5c 消毒液噴射手段(液噴射手段)、6a 第1のセンサ(センサ)、6b 第2のセンサ(センサ)、6c 第3のセンサ(センサ)、7a 洗剤液噴射口(液噴射口)、7b 水噴射口(液噴射口)、7c 消毒液噴射口(液噴射口)、9 制御手段、10 第1のメモリ(事前情報記録手段)、11 第2のメモリ(履歴記録手段)、12 カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め個人に対応するID番号に関連付けして登録された生体情報に基づいて、手指洗浄時に任意の個人の認証処理を行い、認証された上記個人の手指洗浄の遂行履歴データを取得する機能を有する個人認証つき手指洗浄システムであって、
上記任意の個人の生体情報を取得する機能を有する生体情報取得手段と、
液噴射手段と上記液噴射手段に設けられた液噴射口から噴射される液の噴射方向近傍に手指が差し込まれたときに手指を検知するセンサを有する洗浄器と、
上記生体情報取得手段で取得される上記個人の上記生体情報が上記個人に対応する上記ID番号に関連付けされた複数の認証比較情報と上記洗浄器の洗浄条件とが登録される事前情報記録手段、カウンタ、上記生体情報取得手段で上記任意の個人の生体情報が取得されたときに、複数の上記認証比較情報と照合することによって上記個人を認証し、上記センサによる手指の検知に連動して上記液噴射口からの液の噴射を制御すると同時に上記カウンタを制御し、上記カウンタからの情報を監視して上記洗浄条件に基づいて手指洗浄の遂行がなされたかを判断する制御手段および上記制御手段による手指洗浄の遂行がなされたかの判断の結果が、認証された上記個人に対応する上記ID番号に関連付けされて書き込まれる履歴記録手段、を有する制御装置本体部と、
を備えることを特徴とする個人認証つき手指洗浄システム。
【請求項2】
上記洗浄条件は、上記液噴射口からの液噴射の継続時間を規定する噴射継続時間と手指洗浄が完全に遂行されたかの判断基準に使用される制御停止時間であって、上記制御手段は上記センサによる手指の検知に連動して上記液噴射口から液を噴射させるとともに上記カウンタを開始して液噴射時間を監視し、上記液噴射時間が上記噴射継続時間以上に経過した場合は手指洗浄が完全に遂行されたと判断し、また、上記制御手段は、洗浄動作開始時または上記センサが手指を検知した状態から検知しなくなった状態になったときにカウンタの動作を開始して中断時間を監視し、中断時間が制御停止時間以上に経過したときには手指洗浄の遂行が不完全であったと判断することを特徴とする請求項1に記載の個人認証つき手指洗浄システム。
【請求項3】
上記洗浄条件を任意に上記履歴記録手段に書き込むことができる設定登録手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の個人認証つき手指洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−115029(P2007−115029A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305903(P2005−305903)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】