説明

個人認証媒体、及び個人認証媒体の製造方法

【課題】良好な偽変造防止機能を持つ個人認証媒体を得る。
【解決手段】文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を、少なくとも一主面上に有する基材を含む個人認証媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、証券、商品券、IDカード,ICカード,クレジットカード,キャッシュカード,従業員証,身分証明証等の個人認証媒体に係り、特に、偽変造防止機能を有する個人認証媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、証券、商品券、IDカード,ICカード,クレジットカード,キャッシュカード,従業員証,身分証明証等、そのもの自体に付加価値が付いた、又は、偽変造防止するカード等の媒体が増加してきている。
【0003】
これらのカード等の媒体は不正使用を防止する必要があり、偽造が困難で、且つ、真偽判定が容易な偽変造防止技術が求められている。
【0004】
これらのカード等の媒体に対する公知の偽変造防止技術としては、ホログラム・エンボス加工・透かしなどがあるが、本発明のようなカード等の媒体表面に微細な凹凸を設けることによる偽変造防止技術としては、カード表面に0.05〜4.0μmの微細凹凸を持たせる貼り合わせIDカードおよびその製造方法がある(例えば、特許文献1参照)。このIDカードは、カードの表面粗さ(JIS−B−0601中心線平均粗さ(Ra))について規定しているものの、文字及び/または模様パターンは形成していない、且つ、その製造方法では微粒子を受容層に添加することにより表面性に凹凸を持たせているため、所望のパターンの凹凸を形成することができない。
【特許文献1】特開2003−246172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好な偽変造防止機能を持つ個人認証媒体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の個人認証媒体は、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を、少なくとも一主面上に有する基材を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の個人認証媒体の製造方法は、少なくとも一主面上に、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸が形成されたプレス板を用意し、該プレス板と基材とを当接してプレス加工を行うことにより、該基材表面に前記パターンに対応して配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る個人認証媒体は、基材表面にパターン化された微細な凹凸を有するために改ざんしにくく、改ざんしても、目視で容易に確認することが出来る。このようなことから、本発明に係る個人認証媒体は、偽変造防止機能が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の個人認証媒体は、基材と、保護層とを含み、基材は、少なくとも一主面上に、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を有する。
【0010】
基材表面の微細な凹凸の高さが0.01μm未満であると、目視での視認性が低下するという不利点があり、100μmを超えると、該当部分の受容層への印刷性、表面保護膜の転写性が低下するという不利点がある。
【0011】
また、基材表面には、例えば文字、絵柄、人物画像等の画像層を設けることができる。
【0012】
図1に本発明に係る個人認証媒体の一例を表す概略的な断面図を示す。
【0013】
図2に、図1の凹凸2を拡大した図を示す。
【0014】
図示するように、本発明の個人認証媒体10は、例えば基材1と、基材1表面の少なくとも一部に形成された微細な凹凸2と、基材1表面に設けられた印刷層3とを有する。
【0015】
本発明の個人認証媒体は、基材と保護層とを剥がして、貼り直しても、文字及び/または模様パターンの部分に隙間ができやすく、元に戻すことが困難である。文字及び/または模様パターンの部分の隙間は、直接目視で、あるいは、2倍程度以上のルーペを介してカード表面を目視することにより容易に確認し得る。このように、本発明の個人認証媒体は、真偽判定が容易である。また、本発明の個人認証媒体に設けられる凹凸は、文字または模様パターンを有するため、ランダムな凹凸よりも、さらに元に戻しにくく、真偽判定し易い。
【0016】
上記文字及び/または模様パターンは、凸部あるいは凸部間の凹部により表され得る。
【0017】
なお、ここでは、凹部の深さ及び凸部の高さを、単に高さと呼ぶ。
【0018】
基材表面の微細な凹凸の高さは、0.1〜50μmであることが好ましい。
【0019】
0.1.μm未満であると、目視での視認性が低下する傾向があり、50μmを超えると、該当部分の受容層への印刷性が低下する傾向がある。
【0020】
また、基材表面の微細な凹凸の間隔は、少なくとも0.01mm以上、好ましくは0.1mmないし10mmである。0.01mm未満であると、プレス板製造性、プレス時の加工性が低下すると共に、視認性が低下する傾向があり、10mmを超えると、視認性が低下すると共に、改ざん、偽造が容易となる傾向がある。
【0021】
受容層としては、溶融型熱転写印刷層、昇華型熱転写印刷層、オフセット印刷層、インクジェット印刷層、及びホログラム印刷層から選択される少なくとも1つの印刷層を受容する機能を持つ層を用いることができる。
【0022】
また、本発明の個人認証媒体の製造方法は、少なくとも一主面上に、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸が形成されたプレス板を用意し、プレス板と基材とを当接してプレス加工を行うことにより、基材表面に上記パターンに対応して配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を形成する工程を含む。
【0023】
本発明の方法によれば、プレス板の表面の一部ないし全部に微細な凹凸によるパターン化された文字及び/または模様を設けて、プレス加工工程に供するだけで、個人認証媒体の表面の一部ないし全部に微細な凹凸によるパターン化された文字及び/または模様を容易に形成することができる。また、プレス板には、任意の文字及び/または模様を設けることができる。
【0024】
上記文字及び/または模様パターンは、凹部及び凹部間の凸部を用いて表され得る。
【0025】
<プレス板>
プレス板としては、ステンレス、ニッケル、アルミ、真鋳、銅、鉄などの公知の無機物、若しくは、それらが含有されている混合物・化合物を用いることができる。プレス板の厚さは0.5mm以上であることが好ましく、0.5mm未満であると、加工性、プレス時の取扱性が難しくなる傾向がある。実用的には、1mmないし30mmであることが好ましい。
【0026】
<プレス板の加工方法>
プレス板の表面の一部ないし全部に微細な凹凸によるパターン化された文字及び/または模様を設ける加工方法としては、この表面を、電子ビーム加工、YAGレーザ加工、プラズマ加工、炭酸ガスレーザ加工、エキシマレーザ加工、化学研磨、電解加工、フォトエッチング加工及びサンドブラスト加工を用いて物理的及び/または化学的に刻み付けることにより、凹部を形成する方法があげられる。
【0027】
あるいは、プレス板の表面に、凹版印刷・凸版印刷・オフセット印刷などの公知の印刷技術及び公知の蒸着加工技術のうち少なくとも1種の加工法にて凸部を形成することにより、その凸部間に凹部が形成され得る。
【0028】
さらには、文字及び/または模様パターンの微細な凹凸が設けられたプレス板の表面に、さらにメッシュ状ないしパターン化された微細な凹凸を持つシートを重ねるか、若しくはさらにサンドブラスト加工など公知の機械加工により微細な凹凸を持たせることにより、文字及び/または模様パターンとは異なるパターンとの複合的なパターンを形成することができる。
【0029】
図3に、複合的なパターンの一例の断面を模式的に表す図を示す。
【0030】
図示するように、複合的なパターンを用いると、より改ざんしにくく、偽変造防止機能がより高くなる。
【0031】
プレス板に設ける微細な凹凸の高さは、0.01ないし100μmの範囲が好ましい。より好ましくは0.1ないし50μmの範囲である。凹凸の高さが0.01μm未満であると、プレス板製造性、プレス時の加工性が低下すると共に、視認性が低下する傾向があり、100μmを超えると、視認性が低下すると共に、改ざん、偽造が容易となる傾向がある。また、0.1ないし50μmの範囲であると、プレス板の製造性、プレス時の加工品質が安定するという利点がある。
【0032】
<熱プレス加工>
プレス加工は、公知の熱プレス加工方式を使用出来る。
【0033】
熱プレス加工温度は、加工される基材の軟化点等により異なるが、好ましくは60ないし200℃の範囲である。その温度で熱プレスをかける時間としては、生産性・加工される基材の軟化点等により異なるが、好ましくは1ないし180分程度である。また、熱プレスをかける圧力は、5ないし100kg/cmであることが好ましい。
【0034】
<保護シート>
プレス板の表面には異物・粉塵などによる表面欠陥の発生を防ぐ為、必要に応じて保護シートを設けても良い。保護シートの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリテレフタレートなどの高分子材料を用いることができる。保護シートの厚さは、10ないし100μmであることが好ましい。保護シートの厚さは、ハンドリング等生産性の観点からは厚い方が良いけれども、凹凸の転写性の観点からは薄い方が良く、上記範囲であると、ハンドリング等生産性と凹凸の転写性とを両立することができる。
【0035】
<基材>
基材は、支持層単独、あるいは支持層と受容層を含む積層体である。
【0036】
支持体層としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体などの塩素含有重合体類、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはテレフタール酸またはイソフタール酸などの酸成分と、エチレングリコールまたはシクロヘキサンジメタノールなどのアルコール成分との縮合エステル樹脂(たとえばイーストマンケミカル社製 PETG(登録商標))などのポリエステル樹脂類、例えばポリ乳酸系樹脂、デンプンと変性ポリビニールアルコール等とからなる天然高分子系樹脂、β―ヒドロキシ酪酸とβ―ヒドロキシ吉草酸とからなる微生物産生の樹脂等の生分解性プラスチック樹脂類、さらにポリアミド樹脂類、アクリル樹脂類、シリコーン樹脂類等が挙げられ、これらの材料を単独で、あるいは混合し、さらに単層で、あるいは積層して使用することができる。
【0037】
また、本発明においては、基材上に必要に応じて記録材料を設けてもよい。このような記録材料として、電気的、磁気的、あるいは光学的に情報を記録できる材料を用いて形成することができる。層状に設けられた他の記録材料は、媒体に対して表裏の一部ないし全部でも良い。
【0038】
<受容層>
基材上には、直接ないし間接熱転写印刷、昇華印刷、インクジェット印刷、及びホログラム印刷を容易に受容し得る受容層を設けることができる。受容層を設けることにより、印刷欠陥を低減させることができる。受容層は、基材の表裏の一部ないし全部に設けることができる。
【0039】
受容層としては、公知の樹脂材料を用いることができ、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等のスチレン類、例えばビニルナフタレン類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、例えば塩化ビニル、弗化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、 例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸のアルキルエステル類、及び例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル等のメタクリル酸のアルキルエステル類の単量体を重合して得られる樹脂または2種類以上の単量体を共重合して得られる樹脂が挙げられる。この共重合体樹脂としては、例えばスチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂等が挙げられる。また、ビニル共重合体樹脂以外にもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、石油樹脂、ブチラール樹脂等を用いることができる。また熱可塑性樹脂と組み合わせる形で熱硬化性樹脂も併せて用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
【0040】
受容層の厚さは、カード基材上に形成される顔画像及び個人情報を画像情報として形成する昇華型染料インク、溶融熱転写型インクやインクジェットプリンタのインクが十分に定着できるように、且つ、パターン化された凹凸が十分に形成できるように、少なくとも0.1μm以上の厚さにすることが好ましい。実用的には、1mmないし50μmであることがより好ましい。
【0041】
<画像層(印刷層)>
本発明の個人認証媒体に設けられる文字、絵柄、顔写真等の画像層は、例えば溶融型熱転写印刷、昇華型熱転写印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、及びホログラム印刷等により、基材上に形成することができる。
【0042】
また、保護層等を設ける場合には、例えば保護層に予め反転画像を形成して、基材上に転写することができる。
【0043】
<他の機能層>
画像層が形成された基材上には、例えば保護層、及びホログラム層等の他の機能層を設けることができる。
【0044】
<真偽判定方法>
真偽判定方法としては、直接目視する。直接目視しても確認出来ない場合には、さらに、2倍程度以上のルーペを用い斜光下にてカード表面を目視することにより容易に確認できる。
【0045】
実施例
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0046】
実施例1
70mm×100mmの大きさ、厚さ2mmのステンレス製平板を準備し、その一主面の一部に、フォトエッチング加工法により、高さ5μmの文字パターンを刻みこみ、プレス板11を得た。
【0047】
図4に、得られたプレス板11の正面図を示す。
【0048】
図示するように、このプレス板11は、ステンレス製平板21の一主面の一部に高さ5μmの文字パターン22を有する。
【0049】
次に、支持シート23として、厚さ350μmの白色ポリエステルフィルムを準備し、下記組成の受容層塗布材料を適用し、グラビア印刷方式を用いて、支持シート23上に、塗布、乾燥して、厚さ10μmの受容層24を形成し、主基材シート25を得た。
【0050】
受容層塗布材料組成
メチルエチルケトン 30重量部
トルエン 30重量部
ポリエステル・ウレタン樹脂(東洋紡(株)製 商品名:UR−1400)
30重量部
アミノ変性シリコーンオイル(東芝シリコーン(株)製 商品名:TSF4700)
0.2重量部
イソシアネート(日本ポリウレタン(株)製 商品名:コロネート2513)
1重量部
保護シートとして厚さ20μmのポリプロピレンシートをプレス板11の両面に配置し、上記にて作成した受容層24が形成されている基材シート25、厚さ30μmのPET−G、及び、副基材シート26として、厚さ350μmの白色ポリエステルフィルムを重ね、受容層24側に、プレス板11を、副基材シート26の主基材シート25とは反対側の面に厚さ2mmのステンレス製平板を用いて熱プレス機にて12kg/cm2の圧力にて温度120℃で10分間プレスした。プレスされた積層シートを、所定の抜き刃により抜き打ち裁断し、54.0mm×84.6mmのカード状の積層シートを製造した。
【0051】
その後、昇華印刷方式のカードプリンターにより、受容層24上に、個人情報として、文字情報及び顔画像の印刷層41を形成し、個人情報を付加したIDカード31を製造した。
【0052】
IDカード31の断面構造を模式的に示す図を図5に示す。
【0053】
図示するように、このIDカード31は、基材シート28として、副基材シート26と、副基材シート26上に図示しないPET−Gを介して形成された、支持シート23及び受容層24からなる主基材シート25とを含む。受容層24上には、凹凸の文字パターン22’及び印刷層41が設けられている。
【0054】
図6,図7に、IDカード31の変形例を各々示す。
【0055】
同様に形成したIDカード31の受容層24上に、文字情報及び顔画像の印刷層41を介して、市販のホログラムシート27を熱転写し、もう1つのIDカード32を得た。
【0056】
得られたIDカード32は、図6に示すように、受容層24上に、ホログラムシート27が設けられていること以外は、図5に示すIDカード31と同様の構成を有する。
【0057】
さらに、同様にして形成したIDカード31の受容層24上に、文字情報及び顔画像の印刷層41を介して、市販のニスカ製の表面保護シート29を熱転写し、IDカード33を製造した。
【0058】
図7に示すように、得られたIDカード33は、受容層24上に保護シート29が設けられていること以外は、図5に示すIDカード31と同様の構成を有する。
【0059】
得られたIDカード31,32,33について、プレスされた文字パターンが識別可能であることが、正面から目視により確認出来た。
【0060】
また、IDカード31の受容層24上の凹凸の文字パターンの高さは1μmであった。また、IDカード31,32,33については、各々、ホログラムシート27、表面保護シート29を熱転写する前に凹凸の文字パターンの高さを測ったところ、各々1μmであった。
【0061】
尚、文字パターンの高さは、(株)小坂研究所製surfcorder SE1700を用いて計測した。
【0062】
得られた結果を下記表1に示す。
【0063】
IDカード31の印刷層を剥がして、別な内容を印刷して、目視及び10倍のルーペで観察したところ、本来あるべきプレスされた文字パターンがなく、改ざんを容易に確認することができた。
【0064】
さらに、IDカード32のホログラムシート27,IDカード33の表面保護シート29を受容層24から剥離して、元の位置に貼り付けて目視及び10倍のルーペで観察したところ、文字パターン部分に隙間が生じ、剥離したことが確認出来た。
【0065】
実施例2
厚さ4mmのステンレス製平板を準備し、その一主面上に、ステンレス製のネガ板を介して真空蒸着方式することにより、その表面に高さ15μmの凹凸の文字パターンを持つプレス板41を得た。
【0066】
図8に、得られたプレス板12の正面図を示す。
【0067】
図示するように、プレス板12は、ステンレス製平板51の一主面の外縁部を除くほぼ一面に高さ15μmの文字パターン52を有する。
【0068】
次に、支持シート23として、厚さ350μmの白色ポリエステルフィルムを準備し、実施例1と同様の組成の受容層塗布材料を適用し、グラビア印刷方式を用いて、支持シート23上に、塗布、乾燥して、厚さ10μmの受容層24を形成し、主基材シート25を得た。
【0069】
保護シートとして厚さ30μmのポリエステルフィルムをプレス板51の両面に配置し、上記にて作成した受容層24が形成されている基材シート25、厚さ30μmのPET−G、及び副基材シート26として、厚さ350μmの白色ポリエステルフィルムを重ね、受容層24側にプレス板12を配置し、また、副基材シート26の主基材シート25とは反対側の面に、厚さ2mmのステンレス製平板を配置し、熱プレス機にて25kg/cmの圧力にて温度110℃で6分間プレスした。
【0070】
プレスされた積層シートを、実施例1と同様にして打ち抜き、所定の抜き刃により抜き打ち裁断して、54.0mm×84.6mmのIDカードを製造した。
【0071】
その後、昇華印刷方式のカードプリンターにより、受容層24上に、個人情報として、文字情報及び顔画像の印刷層41を形成し、個人情報を付加したIDカード34を製造した。
【0072】
IDカード34の断面構造を模式的に示す図を図9に示す。
【0073】
図示するように、このIDカード34は、基材シート28として、副基材シート26と、副基材シート26上に図示しないPET−Gを介して形成された、支持シート23及び受容層24からなる主基材シート25とを含む。受容層24上には、凹凸の文字パターン52’及び印刷層41が設けられている。
【0074】
このIDカード34は、凹凸の文字パターン22’の代わりに、凹凸の文字パターン52’を設けたこと以外は、図5と同様である。
【0075】
図10,図11に、IDカード34の変形例を各々示す。
【0076】
同様に形成したIDカード34の受容層24上に、文字情報及び顔画像の印刷層を介して、市販のホログラムシート27を熱転写し、もう1つのIDカード35を得た。
【0077】
得られたIDカード32は、図10に示すように、受容層24上に、ホログラムシート27が設けられていること以外は、図9に示すIDカード34と同様の構成を有する。
【0078】
さらに、同様にして形成したIDカード34の受容層24上に、文字情報及び顔画像の印刷層41を介して、市販のニスカ製の表面保護シート29を熱転写し、IDカード36を製造した。
【0079】
図11に示すように、得られたIDカード35は、受容層24上保護シート29が設けられていること以外は、図9に示すIDカード34と同様の構成を有する。
【0080】
得られたIDカード34,35,36について、プレスされた文字パターンが識別可能であることが、正面から目視により確認出来た。
【0081】
また、IDカード34の受容層24上の凹凸の文字パターンの高さは7μmであった。また、IDカード34,35,36については、各々、ホログラムシート27、表面保護シート29を熱転写する前に凹凸の文字パターンの高さを測ったところ、各々同様に7μmであった。
【0082】
IDカード34の印刷層を剥がして、別な内容を印刷して、目視及び10倍のルーペで観察したところ、本来あるべきプレスされた文字パターンがなく、改ざんを容易に確認することができた。
【0083】
さらに、IDカード35のホログラムシート27,IDカード36の表面保護シート29を受容層24から剥離して、元の位置に貼り付けて目視及び10倍のルーペで観察したところ、文字パターン部分に隙間が生じ、剥離したことが確認出来た。
【0084】
実施例3
厚さ3mmのステンレス製平板を2枚を準備し、その一主面上に、プレスにより、高さ30μmのメッシュ状に加工した厚さ30μmのポリプロピレンシートを各々重ねることによりプレス板13を2枚得た。
【0085】
図12に、得られたプレス板13の正面図を示す。
【0086】
図示するように、プレス板13は、ステンレス製平板53の一主面のほぼ一面に高さ30μmのメッシュパターン54を有する。
【0087】
次に、IDカードを作製するにあたり、主基材シート43として、厚さが350μmのポリ塩化ビニル(PVC)を準備した。
【0088】
保護シートとして厚さ60μmのポリプロピレンシートをプレス板13の両面に配置し、主基材シート43、厚さ30μmのPET−G、及び副基材シート26として、厚さ350μmの白色ポリエステルフィルムを重ねて配し、主基材シート43表面及び副基材シート26表面の両方に、上記2枚のプレス板13を各々配置し、熱プレス機にて40kg/cmの圧力にて温度100℃で3分間プレスした。
【0089】
プレスされた積層シートを、実施例1と同様にして打ち抜き、所定の抜き刃により抜き打ち裁断して、54.0mm×84.6mmのIDカードを製造した。
【0090】
その後、昇華印刷方式のカードプリンターにより、主基材シート43表面に、個人情報として、文字情報及び顔画像の印刷層41を形成し、個人情報を付加したIDカード37を製造した。
【0091】
IDカード37の断面構造を模式的に示す図を図13に示す。
【0092】
図示するように、このIDカード37は、基材シート44として、副基材シート26と、副基材シート26上に図示しないPET−Gを介して形成された主基材シート43とを含む。主基材シート43表面及び副基材シート26表面には、各々、凹凸のメッシュパターン54’が設けられている。また、主基材シート43表面には、印刷層41が設けられている。
【0093】
図14,図15に、IDカード37の変形例を各々示す。
【0094】
同様に形成したIDカード37の主基材シート43上に、文字情報及び顔画像の印刷層41を介して、市販のホログラムシート27を熱転写し、もう1つのIDカード38を得た。
【0095】
得られたIDカード38は、図14に示すように、主基材シート43上に、ホログラムシート27が設けられていること以外は、図13に示すIDカード37と同様の構成を有する。
【0096】
さらに、同様にして形成したIDカード37の主基材シート43上に、文字情報及び顔画像の印刷層41を介して、市販のニスカ製の表面保護シート29を熱転写し、IDカード39を製造した。
【0097】
図15に示すように、得られたIDカード39は、主基材シート43上に保護シート29が設けられていること以外は、図13に示すIDカード37と同様の構成を有する。
【0098】
得られたIDカード37,38,39について、プレスされたメッシュパターンが識別可能であることが、正面から目視により確認出来た。
【0099】
また、IDカード37の主基材シート43上のメッシュパターンの高さは10μmであった。また、IDカード37,38,39については、各々、ホログラムシート27、表面保護シート29を熱転写する前にメッシュパターンの高さを測ったところ、各々、10μmであった。
【0100】
尚、文字パターンの高さは、(株)小坂研究所製surfcorder SE1700を用いて計測した。
【0101】
得られた結果を下記表1に示す。
【0102】
IDカード37の印刷層を剥がして、別な内容を印刷して、目視及び10倍のルーペで観察したところ、本来あるべきプレスされた文字パターンがなく、改ざんを容易に確認することができた。
【0103】
さらに、IDカード38のホログラムシート27,IDカード39の表面保護シート29を基材シート43から剥離して、元の位置に貼り付けて目視及び10倍のルーペで観察したところ、文字パターン部分に隙間が生じ、剥離したことが確認出来た。
【0104】
実施例4
実施例1と同様の厚さ2mmの長方形のステンレス製平板を準備する。
【0105】
次に、このステンレス製平板より長辺が短い90mm×90mmの大きさを有する平坦なアルミ製平板をその両短片側が露出するようにステンレス製平板の中心付近に積層固定した。その後、ステンレス製平板のアルミ製平板の無い部分のみに、サンドブラスト加工を行い、プレス板14を得た。
【0106】
図16に、得られたプレス板14を表す正面図を示す。
【0107】
図示するように、このプレス板14は、ステンレス製平板55の一主面の対向する短辺付近に、その長手方向が短辺に平行した幅15mm×長さ80mmの帯状に、3μmの高さのメッシュパターン56を有する。
【0108】
プレス板13の代わりにプレス板14を用い、プレス板14両面に配置する保護シートの厚さを60μmの代わりに20μmとすること以外は実施例3及びその変形例と同様にして、IDカード61,62,63を得た。
【0109】
図17ないし図19に、IDカード61,62,63の一例の断面を模式的に表す図を、各々示す。
【0110】
また、IDカード61の主基材シート43上のメッシュパターンの高さは0.1μmであった。また、IDカード61,62,63については、各々、ホログラムシート27、表面保護シート29を熱転写する前にメッシュパターンの高さを測ったところ、各々、0.1μmであった。
【0111】
尚、文字パターンの高さは、(株)小坂研究所製surfcorder SE1700を用いて計測した。
【0112】
得られた結果を下記表1に示す。
【0113】
IDカード61の印刷層を剥がして、別な内容を印刷して、目視及び10倍のルーペで観察したところ、本来あるべきプレスされた文字パターンがなくとなり、改ざんを容易に確認することができた。
【0114】
さらに、IDカード62のホログラムシート27,IDカード63の表面保護シート29を基材シート43から剥離して、元の位置に貼り付けて目視及び10倍のルーペで観察したところ、文字パターン部分に隙間が生じ、剥離したことが確認出来た。
【0115】
比較例1
以下に、比較例について説明する。
【0116】
プレス板として、厚さ2mmのステンレス製平板を使用し、熱プレス機にて12kg/cmの圧力にて温度120℃で10分間プレスすること以外は、実施例1及びその変形例と同様にして、IDカード64,65,66を製造した。
【0117】
得られたIDカード64,65,66の断面を表す模式図を図20,図21,及び図22に各々示す。
【0118】
IDカード64,65,66については、ステンレス製平板を使用したので、凹凸は形成されなかった。
【0119】
図23ないし図27に、実施例1ないし4、及び比較例1で得られたIDカード31,34,37,61,64の正面図を示す。
【0120】
図中、22’、52’、54’、及び56’は、各々、微細な凹凸パターンを示し、101’、102’、103’、及び104’は、各々、丸で囲まれた領域101、102、103、及び104を拡大した図を示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る個人認証媒体の一例を表す概略的な断面図
【図2】図1の凹凸2を拡大した図
【図3】複合的なパターンの一例の断面を模式的に表す図
【図4】本発明に使用されるプレス板の一例の断面を模式的に表す図
【図5】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図6】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図7】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図8】本発明に使用されるプレス板の一例断面を模式的に表す図
【図9】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図10】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図11】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図12】本発明に使用されるプレス板の一例断面を模式的に表す図
【図13】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図14】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図15】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図16】本発明に使用されるプレス板の一例断面を模式的に表す図
【図17】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図18】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図19】本発明に係るIDカードの一例の断面を模式的に表す図
【図20】比較例1に係るIDカードの断面を模式的に表す図
【図21】比較例1に係るIDカードの断面を模式的に表す図
【図22】比較例1に係るIDカードの断面を模式的に表す図
【図23】本発明に係るIDカードの一例を模式的に表す正面図
【図24】本発明に係るIDカードの一例を模式的に表す正面図
【図25】本発明に係るIDカードの一例を模式的に表す正面図
【図26】本発明に係るIDカードの一例を模式的に表す正面図
【図27】比較例1に係るIDカードの一例を模式的に表す正面図
【符号の説明】
【0122】
1,28,44…基材、10,31,34,37,61,64…個人認証媒体、11,12,13,14…プレス板、22’52’54’56’…微細な凹凸、23…支持層41…印刷層、24…受容層、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を、少なくとも一主面上に有する基材を含むことを特徴とする個人認証媒体。
【請求項2】
前記高さは、0.1〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の個人認証媒体。
【請求項3】
前記基材は、支持層及び受容層を有し、該受容層は、溶融型熱転写印刷層、昇華型熱転写印刷層、オフセット印刷層、インクジェット印刷層、及びホログラム印刷層から選択される少なくとも1つの印刷層を受容する機能を持つ請求項1または2に記載の個人認証媒体。
【請求項4】
前記微細な凹凸は、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸が形成されたプレス板を用いてプレス加工されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の個人認証媒体。
【請求項5】
前記プレス板の凹凸は、電子ビーム加工、YAGレーザ加工、プラズマ加工、炭酸ガスレーザ加工、エキシマレーザ加工、化学研磨、電解加工、及びフォトエッチング加工から選択される少なくとも1種の加工法を用いて物理的及び/または化学的に刻み付けることにより形成されることを特徴とする請求項4に記載の個人認証媒体。
【請求項6】
前記プレス板の凹凸は、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、及び蒸着加工技術から選択される少なくとも1種の加工法を用いて物理的及び/または化学的に凹凸を形成することにより該凹凸間に形成されることを特徴とする請求項4に記載の個人認証媒体。
【請求項7】
前記微細な凹凸は、前記プレス板の表面上に、メッシュ、または前記文字及び/または模様パターンとは異なるパターンを持つシートを重ねてプレス加工を行うことにより、前記文字及び/または模様パターンと、該文字及び/または模様パターンとは異なるパターンとの複合的なパターンを有することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の個人認証媒体。
【請求項8】
前記基材は、機械加工により、前記微細な凹凸表面に、前記文字及び/または模様パターンとは異なるパターンで、さらに微細な凹凸を設けることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の個人認証媒体。
【請求項9】
前記機械加工はサンドブラスト加工であることを特徴とする請求項8に記載の個人認証媒体。
【請求項10】
少なくとも一主面上に、文字及び/または模様パターンに配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸が形成されたプレス板を用意し、該プレス板と基材とを当接してプレス加工を行うことにより、該基材表面に前記パターンに対応して配列され、0.01〜100μmの高さを有する微細な凹凸を形成することを特徴とする個人認証媒体の製造方法。
【請求項11】
前記プレス板の凹凸は、電子ビーム加工、YAGレーザ加工、プラズマ加工、炭酸ガスレーザ加工、エキシマレーザ加工、化学研磨、電解加工、及びフォトエッチング加工から選択される少なくとも1種の加工法を用いて物理的及び/または化学的に刻み付けることにより形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プレス板の凹凸は、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、及び蒸着加工技術から選択される少なくとも1種の加工法を用いて物理的及び/または化学的に凹凸を形成することにより該凹凸間に形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プレス板の表面上に、メッシュ、または前記文字及び/または模様パターンとは異なるパターンを持つシートを重ねてプレス加工を行い、前記微細な凹凸を、前記文字及び/または模様パターンと、該文字及び/または模様パターンとは異なるパターンとの複合的なパターンにせしめることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記プレス板の表面に、機械加工により、前記微細な凹凸表面に、さらに微細な凹凸を設けることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記機械加工はサンドブラスト加工であることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−195030(P2008−195030A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35352(P2007−35352)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】