説明

偏光子保護用易接着性ポリエステルフィルム

【課題】偏光子との密着性に優れ広視野角においても虹状の斑を低減できるポリエチレンテレフタレートフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも片面に易接着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、前記易接着層がポリエステル系樹脂とポリビニルアルコール系樹脂を含み、前記フィルムのレターデーションが1800nm以下であり、前記フィルムの幅方向におけるレターデーションの変動が400nm/m以下である偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の保護に用いられる偏光子保護用易接着性ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、広視野角においても虹状の斑が低減され、視認性において良好であり、偏光子との接着性に優れた偏光子保護用易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)などで用いられている偏光板は、通常2枚の偏光板保護フィルムで偏光子を挟んだ構成からなり、偏光板保護フィルムとしてはトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)が好ましく用いられてきた。しかしながら、TACフィルムは耐久性が十分ではなく、TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温又は高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下する場合がある。また、近年ディプレイの薄型化に対応するため、偏光板の薄膜化が求められているが、水分バリア特性を保持するという観点から、TACフィルムの薄膜化には限界があった。
【0003】
そこで、保護フィルムの薄層化を行い、耐久性を向上させる目的でTACフィルムの代わりにポリエステルフィルムを用いることが提案されている(特許文献1〜4)。また、十分な機械的強度をもたせる目的でレターデーションの高いポリエステルフィルムを用いることが開示されている(特許文献5)。
【0004】
偏光子保護フィルムとして用いられるトリアセチルセルロースフィルムは、アルカリ処理などが表面に施されており、親水性接着剤との極めて高い親和性を有し、親水性接着剤が塗布された偏光子と極めて高い接着性を有する。しかしながら、前記のようなポリエステルフィルムは親水性接着剤との接着性が不十分であり、特に延伸処理により配向性を有するポリエステルフィルムの場合はその傾向がより顕著となる。そこで、特許文献1〜3では、偏光子又は偏光子に塗布された親水性接着剤との接着性を向上させるために、ポリエステルフィルムに易接着層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−271733号公報
【特許文献2】特開平8−271734号公報
【特許文献3】特開2009−157361号公報
【特許文献4】特開2009−42653号公報
【特許文献5】特開2008−3541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光板の保護フィルムには光学歪みが小さいことが求められる。そのため、特許文献3〜5に開示されている二軸延伸フィルムの製造法においては、配向主軸の傾きを低減させるために、おおよそ一方向への延伸が行われる。しかし、そのようなフィルムでは、フィルムの強度が弱く、裂けやすいフィルムとなったり、厚み斑が悪くなったりし、実用に耐えうるものではなかった。また、リビングユースを目的とした大画面モニターでは広角の視野角が要求されつつあり、このような広視野角の用途においては特許文献5のようなレターデーションの高いフィルムを用いた場合、斜め方向からの観察では虹状の斑が生じるという問題があった。
【0007】
さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、水への親和性が低く、延伸により結晶配向性を有する場合は、更に水との親和性が低くなる。一方で、偏光子や偏光子上に塗布される接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂が主成分であり、高い親水性を有する。このような性質の違いから、配向ポリエチレンテレフタレートフィルムと偏光子や当該接着剤とは、親和性が低く、両者を強固に接着させることは困難であった。そのため、特許文献1〜3で開示される易接着層であっても、トリアセチルセルロースフィルムと比較して、未だ十分な接着性は得られていない。よって、従来の配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板をディスプレイ部材として長期間使用した場合、保護フィルム/偏光子間に浮きや剥がれが生じ、偏光子内の水分量の変化により偏光特性が低下し、白抜けなど視認性が悪化することがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものである。すなわち、本発明の課題は、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムと偏光子又は偏光子上に塗布された接着剤等のポリビニルアルコール系樹脂層とを強固に接着させる手段を備え、偏光板の保護フィルムとした場合、広視野角においても虹状の斑が低減されたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成からなる。
(1)少なくとも片面に易接着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、前記易接着層がポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含み、前記フィルムの下記式(1)で求められるレターデーションが1800nm以下であり、前記フィルムの幅方向におけるレターデーションの変動が400nm/m以下である偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(レターデーション)=│n1−n2│×(フィルム厚み)・・・・(1)
(ここで、n1はフィルム面内において配向主軸方向の屈折率、n2はフィルム面内において配向主軸に対して垂直方向の屈折率)
(2)前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度が60〜85モル%である、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(3)前記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が20KOHmg/g以下である、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(4)前記ポリエステル樹脂(A)が5−スルホイソフタル酸成分をジカルボン酸成分中1〜15モル%含有する、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(5)前記易接着層中、ポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が以下の式を満足する、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
0.8≦(A)/(B)≦5
(6)前記易接着層中に架橋剤(C)を含む、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(7)前記架橋剤(C)がイソシアネート化合物又はメラミン化合物である、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(8)前記易接着層中、ポリエステル系樹脂(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)および架橋剤(C)の質量比が以下の式を満足する、前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
2≦((A)+(B))/(C)≦50
(9)前記フィルムの波長380nmの光線透過率が20%以下であり、ヘーズが7.0%以下であり、150℃における熱収縮率が4.0%以下である、前記偏光子保護用易接着性ポリエステルフィルム。
(10)偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、すくなくとも一方の面の偏光子保護フィルムが前記偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムである偏光板。
(11)前記偏光板を構成部材とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムは偏光子との接着性に優れ、広視野角においても虹状の斑が低減され、視認性において良好である。よって、偏光子保護フィルム、特に広視野角が求められる大型モニター用途のLCD用として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明のフィルムは、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。ここで、ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有する。主たる構成成分以外のグリコール成分やジカルボン酸成分は、好ましくは2モル%以下であり、より好ましくは1モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以下である。例えば、副生成物としてジエチレングリコールなどがフィルム製造中に生成する場合もあるが、その場合であっても好ましくは2モル%以下であり、より好ましくは1モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以下である。ポリチレンテレフタレートを用いることにより、保護フィルムとして優れた機械的強度と透明性を奏することができる。従来、ポリエステルフィルムにおいてレターデーションを抑制するために、所定量の共重合成分を用いることが行われていたが、高温での寸法安定性が得られない場合があった。これに対して、本発明のフィルムはポリエチレンテレフタレートよりなるため後加工などにおける高温処理においても高い寸法安定性が得られるため、レターデーションの変動の小さいフィルムを得ることができる。また、共重合成分を有する場合に比べ熱固定におけるボーイングに起因する光学歪の発生を低減することができる。
【0012】
このようなポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0013】
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.45から0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.45よりも低いと、耐引き裂き性向上効果が低下し、0.70より大きいと濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となる。
【0014】
(フィルム特性)
本発明者は、広視野角のモニターにおいて斜め方向から観察される虹斑について鋭意観察した結果、フィルムのレターデーションを1800nm以下とすることにより、上記虹斑が解消することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明のフィルムのレターデーションの値は、1800nm以下であり、1700nm以下であり、好ましくは1500nm以下であり、さらに好ましくは1000nm以下であり、よりさらに好ましくは700nm以下である。
【0015】
なぜ、レターデーションを上記範囲にすることで、フィルムを偏光膜に積層した際に生じる虹斑が抑制されるかはよく分からない。しかし、上記虹斑は正面方向からは視認されず、45°以下の角度においてのみ視認できること、さらに、ポリエチレンテレフタレートの配向主軸と偏光膜の吸収軸とが垂直になった場合に視認しやすくなるということから、係る虹斑は、偏光膜を通ってきた楕円偏光を帯びた光線がポリエチレンテレフタレートを通過する間に複屈折の影響を受け、斜め方向での光路差が生じるために生じるものと推測される。ここで、フィルムのレターデーションを上記範囲に設定することで、光路差が解消し、虹斑の発生が抑制されるものと考えられる。
【0016】
ここで、レターデーションは以下の方法により求める。
(レターデーション)=│n1−n2│×(フィルム厚み)
なお、n1はフィルム面内において配向主軸方向の屈折率、n2はフィルム面内において配向主軸に対して垂直方向の屈折率を示す。レターデーションは小さい方が好ましいが、二軸延伸方法の点から10nm程度が下限であると考える。
【0017】
また、本発明のフィルムはフィルム幅方向においてレターデーションの変動が400nm/m以下である。すなわち、本発明のフィルムはフィルム幅方向1mにおいて上記レターデーションを測定した際の最大値と最小値の差が400nm以下である。これにより大画面化に対応した幅広のフィルムにおいてもフィルム平面においてレターデーションが安定しており、色斑の発生を抑制することができる。上記フィルム幅方向におけるレターデーションの変動は好ましくは370nm/m以下、より好ましくは300nm/m以下、さらに好ましくは250nm/m以下である。
【0018】
本発明のフィルム幅方向の長さは、仕様に応じて特に限定されないが、好ましくは1.0m以上、より好ましくは1.5m以上、さらに好ましくは2.0m以上、よりさらに好ましくは3.0m以上である。フィルム幅方向が上記下限以上である場合は、大画面用途の偏光板に好適に対応することができる。大画面化に対応するためには、フィルム幅方向の長さは大きい方が好ましいが、レターデーションの変動による色斑の発生を抑制するためには6.0m以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムの幅方向及び長手方向の150℃×30分における熱収縮率が4.0%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0%以下である。上記熱収縮率の値が4.0%を超える場合には、後加工工程において加熱加工処理が行われる場合、もしくはディスプレイ用途など部材として長時間高温下で使用される場合、フィルムが大きく収縮し、光学的特性の歪が生じたり、平面性悪化、シワ、カール等が発生する場合がある。
【0020】
本発明のフィルムの面配向度ΔPが0.160〜0.175であることが好ましい。面配向度ΔPは、フィルム面全体としての配向強度を示すものである。フィルムの前記の面配向度ΔPを係る範囲にすることのより、後加工性の点でもより優れた機械的強度を奏することができる。上記範囲での表裏の配向差を有する場合において、硬化性樹脂の硬化収縮に抗しえるフィルムとしての腰の強さ(強度)を保持することができる。ここで、面配向度ΔPは以下の式にして求めるものである。
ΔP=(nx+ny)/2 − nz
ここで、nx、ny、nzは夫々、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
【0021】
面配向度ΔPが0.160以上の場合は、後加工でのフィルム強度を好適に保持することができ、偏光膜への貼り合わせなどを自動化するのに好適である。また、面配向度ΔPが0.175以下であれば、複屈折による光学的影響が小さくなり、レターデーションを後述の範囲にするのに好適である。本発明の面配向度ΔPの上限は、0.173が好ましく、0.172がより好ましい。また、本発明の面配向度ΔPの下限は、0.161が好ましく、0.162がより好ましく、0.163がさらに好ましい。
【0022】
所定の範囲の熱収縮率を維持しながら、フィルムの熱寸法安定性、ΔPおよびレターデーションを上記範囲に制御するためには、(1)フィルム厚み、(2)フィルム延伸倍率、(3)熱固定条件、を適宜調整することが望ましく、これらについては後述する。
【0023】
(1)フィルム厚み
レターデーションを抑制するためにはフィルムの厚みは薄いことが好ましい。本発明のフィルムの厚みは70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。一方、保護膜としての機械的強度を保持する上では、フィルムの厚みは10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることがよりさらに好ましい。
【0024】
また、レターデーションの変動を抑制するためには、フィルムの厚み斑は小さいことが望ましい。すなわち、本発明のフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。
【0025】
(2)フィルム延伸倍率
フィルム延伸時の延伸倍率は長手方向、幅方向とも2〜6倍が好ましく、3〜5倍がより好ましく、3.5〜4.5倍がよりさらに好ましい。フィルム延伸倍率が上記下限未満の場合は、ΔPの下限を下回り、機械的強度が低下するだけでなく、フィルムの厚みむらが生じやすく、レターデーションの変動が大きくなりやすい。また、フィルム延伸倍率が上記上限を超えると、ΔPの上限を上回り、複屈折の影響が強くなりだけでなく、フィルム製膜時の破断が生じやすくなる。
【0026】
レターデーションを上記範囲に制御するためには、理想的にはフィルム延伸倍率の縦横の比をバランス化させることが好ましい。つまり、(長手方向の延伸倍率)/(幅方向の延伸倍率)の比の上限は3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.2以下がよりさらに好ましい。(長手方向の延伸倍率)/(幅方向の延伸倍率)の比は0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。一方、逐次延伸を採用する場合、フィルムの配向性は最後段の延伸方向に強く影響される傾向がある。そのため、長手方向と幅方向での配向をバランス化させ、レターデーションを好適に抑制する上では同時二軸延伸を採用することが好ましい。
【0027】
(3)熱固定条件
フィルムの熱寸法安定性を向上させる上では熱固定を高い温度で行うことが好ましい。具体的には、熱固定温度の上限は210℃を超えることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。しかしながら、熱固定温度を高温で行なうと、ボーイングによる光学歪みの影響が生じやすくなり、レターデーションの変動が大きくなる場合がある。そのため、熱固定温度の上限は230℃以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のフィルムは上記の条件制御を単独または組み合わせることにより得られうるが、上記製造条件にのみ特定されるものではない。言うまでもないことであるが、本発明は、特定の光学特性を有するポリエステルフィルムを採用することにより広幅での偏光板においても虹斑が発生せず、視認性が良好になるということを見出したことが重要な点である。
【0029】
(紫外線吸収剤)
ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制する場合、本発明のフィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、光学機能性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、本発明における透過率は、フィルムの平面に対して垂直方法に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。
【0030】
本発明のフィルムの波長380nmの透過率を20%以下にするためには、前記紫外線吸収剤の濃度、及びフィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられるが本発明の規定する吸光度の範囲であれば特に限定されない。しかし、耐久性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が特に好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
【0031】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤としては例えば2−[2'−ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールなどが挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては例えば2,2'−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オンなどが挙げられる。しかし、特にこれらに限定されるものではない。
【0032】
また、紫外線吸収剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、触媒以外に各種の添加剤を含有させることができる。添加剤として、例えば、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる
【0033】
紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得るが、例えば、予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリエチレンテレフタレート原料とをブレンドしマスターバッチを作製しておき、フィルム製膜時に所定の該マスターバッチとポリエチレンテレフタレート原料を混合する方法などによって配合することができる。
【0034】
この時マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30質量%の濃度にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間で押し出すのが好ましい。290℃以上では紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し時間1分以下では紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加しても良い。
【0035】
中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとPETのペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。なお、発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
【0036】
(粒子)
本発明で用いるフィルムに易滑性を付与するために、粒子を含有することができる。また、高い透明性を得るために、多層構造を有するフィルムとし、表層にのみ粒子を含有されることも好ましい態様である。この場合、中間層は実質的に粒子を添加しないことが望ましいが、中間層に回収原料を使用する場合は、透明性を良好な範囲とするために、中間層の粒子濃度が、300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下となるように調整することができる。
【0037】
添加される無機粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等を代表的なものとして用いることができる。また、有機粒子としてはアクリル系、スチレン系、オレフィン系、イミド系粒子などを用いることができる。
【0038】
また、添加される粒子の平均粒径が0.01μm以上、10μm以下であるものを用いるのが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、8μm以下、最も好ましくは0.1μm以上、3μm以下のものを用いるのが良い。粒子の平均粒径が0.01μmより小さい場合は、滑り性を維持するために添加量を多くする必要があり、ヘーズ値、フィルム表面粗さを必要範囲内に制御することが困難である。また、粒子の平均粒子径が10μmより大きい場合には、製膜工程中での添加粒子の脱落が著しく、工程を汚染するため好ましくない。
【0039】
また、フィルム中の粒子の含有量としては0.01質量%以上、5質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、1質量%以下である。粒子の含有量が0.01質量%より小さい場合、滑り性が劣るため、工程中でロール等との間の摩擦によりキズが発生するため好ましくない。また、粒子の含有量が5質量%より多くなる場合は、ヘーズ値、フィルム表面粗さを必要範囲内に制御することが困難である。
【0040】
また、本発明のフィルムは高度な透明性が要求される場合においては、フィルム中には、透明性を低下させる原因となる粒子を実質的に含有させない方法をとることも可能である。
【0041】
前記の「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0042】
(塗布層)
本発明のポリエステルフィルムは、偏光子及びその片面又は両面に設けられる水系接着剤等のポリビニルアルコール系樹脂層との接着性を向上させるために、その少なくとも片面に、ポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する樹脂組成物からなる易接着層が積層されている。易接着層はポリエステルフィルムの両面に設けてもよく、ポリエステルフィルムの片面のみに設け、他方の面には異種の樹脂被覆層を設けても良い。ポリエステル系樹脂(A)により基材フィルムとの接着性を図るとともに、ポリビニルアルコール系樹脂(B)により偏光子・水系接着剤との接着性を図ることで、これら両層との接着性を好適に両立することができる。
【0043】
(ポリエステル系樹脂(A))
本発明の易接着層に用いるポリエステル系樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジオール成分とが重縮合してなる共重合体であり、ジカルボン酸成分およびジオール成分としては前述の材料を用いることができる。ポリエステルフィルム基材との接着性を向上させる観点から、ポリエステルフィルム中のジカルボン酸成分と同一又は類似する構造・性質を有するジカルボン酸成分をポリエステル系樹脂(A)のジカルボン酸成分として用いることが好ましい。よって、例えば、ポリエステルフィルムのジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸が採用される場合は、ポリエステル系樹脂(A)のジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を使用することが好ましい。そのような芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。全ジカルボン酸成分に対し、10モル%以下の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
【0044】
また、ポリエステル系樹脂(A)のグリコール成分としては、エチレングリコールと分岐したグリコールを構成成分とすることが好ましい。分岐構造を有することで易接着層での応力緩和に寄与し、好適に密着性を奏することが可能と考えられる。前記の分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0045】
前記の分岐したグリコール成分のモル比は、全グリコール成分に対し、下限が10モル%であることが好ましく、特に好ましくは20モル%である。一方、上限は80モル%であることが好ましく、さらに好ましくは70モル%、特に好ましくは60モル%である。また、必要に応じて、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
【0046】
本発明で用いるポリエステル系樹脂(A)は、ポリビニルアルコール系樹脂(B)との相溶性の点から水溶性もしくは水分散性樹脂を使用することが好ましい。ポリエステル系樹脂の水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基、カルボン酸塩基などの親水性基を含む化合物を共重合させることが好ましい。なかでも、ポリエステル系樹脂(A)の酸価を低く保持して架橋剤との反応性を制御しながら親水性を付与するという観点からでスルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が好適である。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を挙げることができ、中でも5−スルホイソフタル酸が好ましい。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分はポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸成分中1〜15モル%が好ましく、1.5〜12モル%がより好ましく、2〜10モル%がさらに好ましい。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が上記下限以上の場合はポリエステル系樹脂の水溶性化あるいは水分散化に好適である。また、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が上記上限以下の場合はポリエステルフィルム基材との接着性に好適である。
【0047】
後述のように架橋剤(C)を併用する場合は、ポリエステル系樹脂(A)は架橋剤(C)との反応基であるカルボン酸基が少ない方が好ましい。架橋剤との反応性があるカルボキシル基を少なくすることにより、架橋剤との反応性が低下するため、結果として、ポリビニルアルコール系樹脂と完全には混ざり合わずに、架橋したポリビニルアルコール系樹脂によって形成されるドメイン構造を維持することが可能と考えられる。このような観点から、ポリエステル系樹脂(A)の酸価は20KOHmg/g以下であることが望ましく、好ましくは15KOHmg/g以下より好ましくは10KOHmg/g以下、更に好ましくは8KOHmg/g以下、より更に好ましくは5KOHmg/g以下である。ポリエステル系樹脂(A)の酸価は後述の滴定法又はNMRなどによる成分分析の結果から理論的に求めることができる。
【0048】
ポリエステル系樹脂(A)の酸価を上記範囲に制御するためには、水溶性化あるいは水分散化のためのカルボン酸塩基の導入量を少なくしたり、カルボン酸塩基以外の親水性基を採用したり、ポリエステル系樹脂のカルボン酸末端濃度を低くすることが好ましい。ポリエステル系樹脂のカルボン酸末端濃度を低くする方法としては、カルボン酸末端基を末端修飾したポリエステル系樹脂を採用したり、ポリエステル系樹脂の数平均分子量を大きなポリエステル系樹脂を採用することが好ましい。このためポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、10000以上がさらに好ましい。また、ポリエステル系樹脂(A)を構成成分としてカルボキシル基を3つ以上有する酸成分の含有量を低くすることが好ましい。
【0049】
ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度は特に限定されないが、20〜90℃であることが好ましく、30〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記下限以上であると耐ブロッキング性に対して好適であり、ガラス転移温度が上記上限以下であるとポリエステルフィルム基材との接着性に対して好適である。
【0050】
易接着層中におけるポリエステル系樹脂(A)の含有量は40質量%以上90質量%以下が好ましく、45質量%以上85%質量%以下がより好ましく、50質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。ポリエステル系樹脂(A)の含有量が上記下限以上であるとポリエステルフィルム基材との接着性に好適であり、上記上限以下であると偏光子・水系樹脂との接着性に好適である。
【0051】
(ポリビニルアルコール系樹脂(B))
ポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のけん化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0052】
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂(B)として、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール−ビニルブチラール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体が例示され、これらの中でもビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂(B)の重合度は特に問わないが、塗布液粘性の点から重合度が3000以下であることが好ましい。
【0053】
ビニルアルコールの共重合比率はけん化度で表わされる。本発明のポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度は60モル%以上85モル%以下が好ましく、65モル%以上83モル%以下がより好ましく、68モル%以上80モル%以下がさらに好ましく、70モル%以上80モル%未満がよりさらに好ましく、71モル%以上78モル%以下がさらにより好ましく、73モル%以上75モル%以下が特に好ましい。後述のように架橋剤(C)と併用する場合、ポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度が上記下限以上であると架橋剤(C)とより好適に架橋構造を形成することができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度が上記上限以下(もしくは未満)であるとポリエステル系樹脂(A)とより好適に相溶性を奏することができる。ビニルアルコール系樹脂のけん化度は酢酸ビニルなどの共重合単位の加水分解に要するアルカリ消費量やNMRによる組成分析により求めることができる。
【0054】
ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量としては易接着層中に10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上55%質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が上記下限以上であると偏光子・水系樹脂との接着性に好適であり、上記上限以下であるとポリエステルフィルム基材との接着性に好適である。
【0055】
(架橋剤(C))
架橋剤(C)としては、水酸基と架橋性を有するものであれば特に限定されないが、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系等の化合物が挙げられる。塗布液の経時安定性の点からメラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系の化合物が好ましい。さらに、架橋剤はポリビニルアルコール系樹脂(B)の水酸基と好適に架橋反応をするメラミン系化合物もしくはイソシアネート系化合物ものが好ましい。これは、カルボジイミド系架橋剤はカルボキシル基と反応するのに対し、メラミン系化合物もしくはイソシアネート系化合物は水酸基と反応するため、官能基として水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂(B)とより好適に架橋構造を形成するためであると考えられる。なかでも、ポリビニルアルコール系樹脂の水酸基と好適に架橋反応を形成するとともに、透明性に優れているという観点から、イソシアネート系化合物を用いることが特に好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用しても良い。
【0056】
架橋剤(C)を併用する場合、前述のように、酸価が20KOHmg/g以下のポリエステル系樹脂(A)と、けん化度が60〜85モル%でのポリビニルアルコール系樹脂(B)と架橋剤(C)とを組み合わせることが好ましい。理論によって拘束される訳ではないが、上記組み合わせによって、ポリエステル系樹脂とポリビニルアルコール系樹脂とが易接着層中で各々別個のドメイン単位をより好適に形成し、一般に海島構造とも称される相分離構造を形成すると考えられる。そのようなドメイン単位の分離構造をとることにより、ポリエステル系樹脂によって構成されるドメインによるポリエステルフィルムとの接着性及びポリビニルアルコール系樹脂によって構成されるドメインによるポリビニルアルコール系樹脂層との接着性という二つの機能が互いに損なわれることなくより好適に両立すると考えられる。架橋剤(C)は、ポリビニルアルコール系樹脂(B)を架橋・凝集することで、当該ドメイン構造の形成を促進し、維持すると考えられる。
【0057】
イソシアネート化合物としては、低分子または高分子のジイソシアネートもしくは3価以上のポリイソシアネートを用い得る。例えば、イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体があるが挙げられる。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる高分子の末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
【0058】
本発明に用いる架橋剤(C)としては、ブロックイソシアネート系化合物も好ましい。ブロックイソシアネート系化合物を添加することにより塗布液の経時安定性をより好適に向上させることが可能となる。
【0059】
ブロック化イソシアネート系化合物は上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の方法より付加反応させて調製し得る。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどを挙げることができる。
【0060】
メラミン化合物としては置換基 −(CH2)n−O−R(式中、nは1〜3の整数であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)で置換されたメラミン化合物が挙げられ、前記式中のRは好ましくはメチルである。1つのメラミン構造が有する上記置換基の数は好ましくは3〜6である。メラミン化合物の具体例としては、住友化学社製スミテックスレジンシリーズのM−3、MK、M−6、M−100、MC等や株式会社三和ケミカル社製メチル化メラミン樹脂MW−22、MX−706、MX−042等が挙げられる。
【0061】
架橋剤(C)の含有量としては易接着層中に2質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40%質量%以下がより好ましく、8質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。架橋剤(C)の含有量が上記下限以上であるとポリビニルアルコール系樹脂の架橋形成に好適であり、上記上限以下であるとバインダー樹脂による接着性効果発現に好適である。
【0062】
ポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)の配合比(A)/(B)は質量比で0.8〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2〜4であることさらに好ましく、2.5〜3.5であることが特に好ましい。(A)/(B)が上記下限以上であるとポリエステルフィルム基材との接着性に好適であり、上記上限以下であると偏光子・水系樹脂との接着性に好適である。
【0063】
ポリエステル系樹脂(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)と架橋剤(C)の配合比((A)+(B))/(C)は質量比で2〜50であることが好ましく、5〜40であることがより好ましく、8〜30であることがさらに好ましい。((A)+(B))/(C)が上記下限以上であるとバインダー樹脂成分による接着性効果の発現に好適であり、上記上限以下であると相分離による接着性効果に好適である。
【0064】
本発明の易接着層は上記組成を採用することで、偏光子や水性接着剤、特にポリビニルアルコール系の偏光子や水性接着剤に対してトリアセチルセルロースと同等の高い接着性を示す。具体的には、後述の接着性試験による水系接着剤に対して1回剥離後の残存面積が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%であり、5回連続剥離後の残存面積が好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは95%以上であり、10回連続剥離後の残存面積が好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0065】
(添加剤)
本発明の易接着層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば界面活性剤、酸化防止剤、触媒、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
【0066】
本発明では、易接着層の耐ブロッキング性をより向上させるために、易接着層に粒子を添加することも好ましい態様である。本発明において易接着層中に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
【0067】
易接着層中の性粒子の平均粒径(SEMによる個数基準の平均粒径。以下同じ)は、0.04〜2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm未満であると、フィルム表面への凹凸の形成が不十分となるため、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下してしまうし、貼り合せの際の加工性が低下する場合がある。逆に、2.0μmを越えると、粒子の脱落が生じやすく好ましくない。易接着層中の粒子濃度は、固形成分中1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
本発明においては易接着層の厚みは、0.001〜2.00μmの範囲で適宜設定することができるが、加工性と接着性とを両立させるには0.01〜1.00μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜0.80μm、さらに好ましくは0.05〜0.50μmである。易接着層の厚みが0.01μm未満であると、接着性が不十分となる。易接着層の厚みが2.00μmを超えると、ブロッキングが生じる場合がある。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0070】
(1)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、樹脂サンプル10mgを25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
【0071】
(2)数平均分子量
樹脂0.03gをテトラヒドロフラン 10ml に溶かし、GPC−LALLS装置低角度光散乱光度計 LS−8000(東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)を用い、カラム温度30℃、流量1ml/分、カラム(昭和電工社製shodex KF−802、804、806)を用い、数平均分子量を測定した。
【0072】
(3)樹脂組成
樹脂を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、1H−NMR分析を行ってその積分比より各組成のモル%比を決定した。
【0073】
(4)酸価
1g(固形分)の試料を30mlのクロロホルムまたはジメチルホルムアミドに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して、試料1g当たりのカルボキシル基を中和するのに必要なKOHの量(mg)を求めた。
【0074】
(5)けん化度
JIS−K6726に準じて水酸化ナトリウムを用いて、ポリビニルアルコール樹脂の 残存酢酸基(モル%)を定量し、その値をけん化度(モル%)とした。同サンプルにつ いて3度測定し、その平均値をけん化度(モル%)とした。
【0075】
(6)ヘーズ、及びヘーズ変化量
フィルムを50mm四方に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠してヘーズを測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH−300A型濁度計を用いた。
測定後、フィルムを90℃に加熱したオーブン内にセットし、200時間経過後フィルムを取り出した。その加熱後のフィルムを上記と同様の方法でヘーズを測定し、加熱後ヘーズを得た。下記式による加熱前後ヘーズ差をヘーズ変化量(ΔHz)とした。
ΔHz=(加熱後ヘーズ−加熱前ヘーズ)
【0076】
(7)150℃における長手方向、幅方向の熱収縮率
JIS C 2318−1997 5.3.4(寸法変化)に準拠し、長手方向、幅方向の寸法変化率(%)を測定した。
【0077】
(8)面配向係数(ΔP)
JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚み方向の屈折率(nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。
ΔP=(nx+ny)/2 − nz
ここで、nx、ny、nzは夫々、長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
【0078】
(9)フィルムのレターデーション
A.厚みの測定
フィルムサンプルを用意し、長手方向に連続したテープ状サンプル(横方向5cm×縦方向1m)を採取し、セイコー・イーエム社製電子マイクロメータ、ミリトロン1240を用いて、1cmピッチで20点の厚みを測定し、その平均値として求めた。
B−1.フィルムのサンプリング
フィルム幅方向に10cm間隔でフィルムサンプル(10cm×10cm)を採取した。B−2.屈折率の測定(n1、n2の測定)
各フィルムサンプルについて、王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計を用いて、分子鎖配向主軸の配向角(θ)を求める。配向主軸方向に測定した屈折率をn1、それと垂直な方向に測定した屈折率をn2とし、以下のようにフィルムのレターデーションを求めた。屈折率の測定は、JIS K 7142−1996 5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計により測定を行った。
(レターデーション)=|n1−n2|×フィルム厚み(nm)
B−3.レターデーション
各フィルムサンプルから得られたレターデーションの平均値をもとめ、フィルムのレターデーションとした。また、各フィルムサンプルより得られたレターデーションの最大値と最小値の差を算出し、最大値および最小値を得たフィルムサンプル間の距離(m)でその差を除算したものをレターデーションの変動とした。
【0079】
(10)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として波長300〜500nm領域の光線透過率を測定して、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0080】
(11)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光膜の片側に本発明のポリエステルフィルムを偏光膜の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルムを貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板をポリエステルフィルムが最外面になるようにバックライトに設置した。偏光板をフィルムの配向主軸方向斜め45度の角度から観察し、下記により評価をおこなった。なお、フィルムの配向主軸の方向は王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計を用いて測定した。
◎ : 虹むらの発生無し。
○ : 極薄い虹むらが観察できる。
× : 明確に虹むらが観察できる。
【0081】
(6)フィルムの厚み斑
長手方向に連続したテープ状サンプル(長さ1m)を採取し、(株)セイコー・イーエム製電子マイクロメータ、ミリトロン1240を用いて、1cmピッチで100点の厚みを測定する。測定値から、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
厚み斑(%)=((dmax−dmin)/d)×100
【0082】
(8)PVA接着性
フィルムの易接着層表面に、固形分濃度5質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液(クラレ製 PVA117)を、乾燥後のポリビニルアルコール樹脂層の厚みが、2μmになるようにワイヤーバーで塗布し、70℃で5分間乾燥した。ポリビニルアルコール水溶液には、判定が容易となるよう赤色染料を加えたものを使用した。作成した評価対象フィルムを、両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、評価対象の積層フィルムのポリビニルアルコール樹脂層が形成された面の反対面を上記両面テープに貼り付けた。次いで、ポリビニルアルコール樹脂層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標) CT−24;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がす作業を1回、5回、10回実施した。ポリビニルアルコール樹脂層が剥がれていない升目の個数を数え、PVA接着性とした。即ち、PVA層が全く剥がれていない場合を、PVA接着率100とし、PVA層が全て剥がれた場合は、PVA接着率0とした。なお、1個の升目内で部分的に剥がれているものも、剥がれた個数に含めた。
【0083】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(A−1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(A−1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
【0084】
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−3)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、1H−NMRで測定した組成(モル%比)及びその他特性を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
(ポリエステル水分散体の調整)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A−1)30質量部、エチレングリコールn−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Aw−1)を作製した。同様にポリエステル樹脂(A−1)の代わりにポリエステル樹脂(A−2)〜(A−3)を使用して、水分散体を作製し、それぞれポリエステル水分散体(Aw−2)〜(Aw−3)とした。
【0087】
(ポリビニルアルコール水溶液の調整)
攪拌機と温度計を備えた容器に、水90質量部を入れ、攪拌しながら重合度500のポリビニルアルコール樹脂(クラレ製)(B−1)10質量部を徐々に添加した。添加後、液を攪拌しながら、95℃まで加熱し、樹脂を溶解させた。溶解後、攪拌しながら室温まで冷却して、固形分10質量%のポリビニルアルコール水溶液(Bw−1)を作成した。同様に、ポリビニルアルコール樹脂(B−1)の代わりにポリビニルアルコール樹脂(B−2)〜(B−7)を使用し水溶液を作成し、それぞれ(Bw−2)〜(Bw−6)とした。ポリビニルアルコール樹脂(B−1)〜(B−6)のけん化度を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(C−1)を得た。
【0090】
(製造例1−ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらにトリポリ燐酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対しナトリウム原子として0.1質量%含有させ、遠心分離処理により粗粒部を35%カットし、且つ目開き5μmの金属フィルターで濾過処理を行った平均粒子径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量として0.2質量部添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、オリゴマー含有量は0.96質量%であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0091】
(製造例2−ポリエステルB)
一方、上記PET(A)の製造において、シリカ粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0092】
(製造例3−ポリエステルC)
上記の方法で得られたPET(B)を予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.63dl/g、オリゴマー含有量は0.27質量%のポリエチレンテレフタレート樹脂(C)を得た。(以後、PET(C)と略す。)
【0093】
(製造例4−ポリエステルD)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2'−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(B)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(D)を得た。(以後、PET(D)と略す。)
【0094】
(製造例5−ポリエステルE)
乾燥させた紫外線吸収剤(2−(5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 TINUVIN 326)10質量部、粒子を含有しないPET(B)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(E)を得た。(以後、PET(F)と略す。)
【0095】
(実施例1)
(1)塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、ポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が70/30になる塗布液を作成した。ポリエステル水分散体は、酸価が2KOHmg/gであるポリエステル樹脂が分散した水分散体(Aw−1)を使用し、ポリビニルアルコール水溶液は、けん化度が74モル%であるポリビニルアルコールが溶解した水溶液(Bw−4)を使用した。
水 40.61質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 11.67質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 15.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0096】
(2)偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しない固有粘度が0.62dl/gのPET(B)樹脂ペレット100質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に、また、PET(A)とPET(B)をシリカ粒子の含有量を0.10質量%となるよう混合調整し、常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は5:90:5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0097】
この未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.6倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0098】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.12g/m2になるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0099】
フィルム中のジエチレングリコール成分の濃度を測定した結果、濃度はグリコール成分中1モル%であった。
【0100】
(実施例2)
ポリエステル水分散体を酸価が4KOHmg/gのポリエステル樹脂が分散した水分散体(Aw−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0101】
(実施例3)
ポリエステル水分散体を酸価が6KOHmg/gのポリエステル樹脂が分散した水分散体(Aw−3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0102】
(実施例4)
ポリビニルアルコール水溶液を、ポリビニルアルコールのけん化度が79モル%であるポリビニルアルコール水溶液(Bw−3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0103】
(実施例5)
ポリビニルアルコールのけん化度が83モル%であるポリビニルアルコール水溶液(Bw−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0104】
(実施例6)
下記の塗剤を混合しポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が60/40になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 37.28質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 10.00質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 20.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0105】
(実施例7)
下記の塗剤を混合しポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が80/20になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 43.95質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 13.33質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 10.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0106】
(実施例8)
下記の塗剤を混合しポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が50/50になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 33.95質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 8.33質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 25.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0107】
(実施例9)
塗布液の組成を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 40.87質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 11.67質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 15.00質量%
メラミン系架橋剤(C−2) 0.71質量%
(ニカラックMX−042 三和ケミカル製 固形分濃度70%)
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0108】
(実施例10)
ポリビニルアルコール水溶液を、ポリビニルアルコールのけん化度が70モル%であるポリビニルアルコールが溶解した水溶液(Bw−5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0109】
(実施例11)
ポリビニルアルコール水溶液を、ポリビニルアルコールのけん化度が67モル%であるポリビニルアルコールが溶解した水溶液(Bw−6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0110】
(実施例12)
塗布液の組成を下記の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 40.33質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 11.67質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−2) 15.00質量%
オキサゾリン系架橋剤(C−3) 1.25質量%
(エポクロスWS−500、日本触媒製、固形分濃度40質量%)
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0111】
(実施例13)
ポリビニルアルコール水溶液を、けん化度が88モル%であるポリビニルアルコールが溶解した水溶液(Bw−1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0112】
(実施例14)
下記の塗剤を混合し架橋剤を混合しないように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 41.58質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 11.67質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 15.00質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0113】
(実施例15)
実施例1においてキャスティングの速度を変更した以外は同様の方法で行い、厚み約48μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0114】
(実施例16)
実施例1においてキャスティングの速度を変更した以外は同様の方法で行い、厚み約25μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0115】
(実施例17)
実施例1において外層IとIIIのPET(A)とPET(B)の混合比率を変更し、シリカ粒子の含有量を0.20質量%となるように調整した以外は同様の方法で、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0116】
(実施例18)
実施例1において外層IとIIIのPET(B)をPET(C)に変更し、最外層と中間層の比率を(I層、II層、III層の比率)、8:84:8となるように各押し出し機の吐出量を調整した以外は同様の方法で、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0117】
(実施例19)
実施例1において中間層IIをPET(B)90質量部とPET(D)10質量部とを混合して用いた以外は同様の方法で、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0118】
(実施例20)
実施例1において中間層IIをPET(B)90質量部とPET(E)10質量部とを混合して用いた以外は同様の方法で、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0119】
(実施例21)
未延伸フィルムを長手方向に3.0倍、幅方向に3.2倍延伸した以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0120】
(実施例22)
未延伸フィルムを長手方向に3.8倍、幅方向に3.6倍延伸した以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0121】
得られた評価結果を表に示す。
【0122】
(比較例1)
下記の塗剤を混合しポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が100/0になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 50.62質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体(Aw−1) 16.66質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0123】
(比較例2)
下記の塗剤を混合しポリエステル系樹脂(A)/ポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が0/100になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
水 17.28質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリビニルアルコール水溶液(Bw−4) 50.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤(C−1) 0.67質量%
粒子 1.25質量%
(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
触媒
(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.3質量%
界面活性剤 0.5質量%
(シリコン系、固形分濃度10質量%)
【0124】
(比較例3)
未延伸フィルムを長手方向に85℃で1.05倍、幅方向に95℃で3.5倍延伸し、210℃で熱固定を行い、その後幅方向に5%弛緩を行った以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み39μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0125】
(比較例4)
未延伸フィルムを長手方向に90℃で4.0倍、幅方向に100℃で1.2倍延伸し、210℃で熱固定を行い、その後幅方向に2%弛緩を行った以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。1m幅のロールを1本のみを採取した。
【0126】
(比較例5)
未延伸フィルムを長手方向に2.4倍、幅方向に3.2倍延伸、熱固定を220℃とした以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0127】
(比較例6)
未延伸フィルムを長手方向に3.2倍、幅方向に4.2倍延伸、熱固定を240℃とした以外は実施例1と同様の方法で製膜を行い、厚み約38μmの偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0128】
(比較例7)
フィルム厚みを約50μmとした以外は比較例3と同様の方法で製膜を行い偏光子保護用ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0129】
得られた評価結果を表に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムは、偏光子・水系接着剤と高い接着性を有し、寸法安定性・透明性に優れ、広視野角においても虹状の斑を低減できる。そのため、偏光子保護部材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に易接着層を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
前記易接着層がポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)を含み、
前記フィルムの下記式(1)で求められるレターデーションが1800nm以下であり、
前記フィルムの幅方向におけるレターデーションの変動が400nm/m以下である偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
(レターデーション)=│n1−n2│×(フィルム厚み)・・・・(1)
(ここで、n1はフィルム面内において配向主軸方向の屈折率、n2はフィルム面内において配向主軸に対して垂直方向の屈折率)
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)のけん化度が60〜85モル%である、請求項1記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂(A)の酸価が20KOHmg/g以下である、請求項1又は2に記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(A)が5−スルホイソフタル酸成分をジカルボン酸成分中1〜15モル%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項5】
前記易接着層中、ポリエステル系樹脂(A)とポリビニルアルコール系樹脂(B)の質量比が以下の式を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
0.8≦(A)/(B)≦5
【請求項6】
前記易接着層中に架橋剤(C)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項7】
前記架橋剤(C)がイソシアネート化合物又はメラミン化合物である、請求項6に記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項8】
前記易接着層中、ポリエステル系樹脂(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)および架橋剤(C)の質量比が以下の式を満足する、請求項6又は7に記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
2≦((A)+(B))/(C)≦50
【請求項9】
前記フィルムの波長380nmの光線透過率が20%以下であり、ヘーズが7.0%以下であり、150℃における熱収縮率が4.0%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項10】
偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、
すくなくとも一方の面の偏光子保護フィルムが請求項1〜9のいずれかに記載の偏光子保護用易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムである偏光板。
【請求項11】
請求項10に記載の偏光板を構成部材とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−203332(P2012−203332A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70199(P2011−70199)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】