説明

偏光方向変換装置及び偏光方向変換方法

【課題】偏光方向を高精度に変換する。
【解決手段】TEモード成分もしくはTMモード成分を有する光を入射して、印加された制御電圧に応じて偏光した光を出射するTE−TMコンバータと、TE−TMコンバータに対して制御電圧を印加する電圧印加部とを備え、電圧印加部は、TE−TMコンバータに光が入射されているタイミングを含む印加期間に、TE−TMコンバータから所定の偏光を有する光を出射させるべく第1レベルの制御電圧を印加し、印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、第1レベルとは符号が異なる第2レベルの制御電圧を印加する偏光方向変換装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射された光の偏光方向を変換する偏光方向変換装置及び偏光方向変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信及び計測器の分野において、偏光状態が周期的にスクランブルする偏波スクランブラが用いられている(例えば、非特許文献1,2参照。)。偏波スクランブラは、長距離光伝送における入力端に配置されて、所定間隔で配置されたEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)のPHB(Polarization Hole Burning)の影響を無くす目的で用いられる。また、偏波スクランブラは、光ファイバの損失及び歪み等を単方向から検出するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)測定において、後方錯乱光の偏波状態を平均化する目的で用いられる。
【0003】
また、偏波スクランブラ等に用いられるTE−TMモード変換を行うTE−TMコンバータが知られている。TE−TMコンバータは、ニオブ酸リチウム結晶の光導波路と、当該光導波路の光伝播方向に沿って設けられた櫛歯型電極とを有する。TE−TMコンバータは、櫛歯型電極に対して制御電圧が印加されることにより、当該光導波路を導波する光のTEモード成分をTMモード成分に変換、又は、TMモード成分をTEモード成分に変換する。
【0004】
【非特許文献1】下津臣一 他、「偏光子内蔵型低DOP:LiNbO3偏波スクランブラ」、1995年電子情報通信学会総合大会、C−281、P281
【非特許文献2】Fred Heismann,"Integrated-Optic Polarization Transformer for Reset Free Endless Polarization Control",IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,Vol.25,No8,1998年,P.1898-1906
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、TE−TMコンバータは、長期間に亘って使用すると、ニオブ酸リチウム結晶に分極が生じて変換効率が変化する。このため、TE−TMコンバータは、長期使用によるDCドリフトが生じ、同じ制御電圧を印加しても同一の偏光方向の光を出力しなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題を解決することのできる偏光方向変換装置及び偏光方向変換方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、TEモード成分もしくはTMモードを有する光を入射して、印加された制御電圧に応じて偏光した光を出射するTE−TMコンバータと、TE−TMコンバータに対して制御電圧を印加する電圧印加部とを備え、電圧印加部は、TE−TMコンバータに光が入射されているタイミングを含む印加期間に、TE−TMコンバータから所定の偏光を有する光を出射させるべく第1レベルの制御電圧を印加し、印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、第1レベルとは符号が異なる第2レベルの制御電圧を印加する偏光方向変換装置を提供する。
【0008】
電圧印加部は、非印加期間の少なくとも一部に、印加期間及び当該非印加期間に印加した制御電圧の平均値を0に近づける第2レベルの制御電圧を印加してよい。電圧印加部は、非印加期間の少なくとも一部に、印加期間及び当該非印加期間に印加した制御電圧の平均値を略0とする第2レベルの制御電圧を印加してよい。電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光のパルス幅よりも長い期間に亘って制御電圧を第1レベルとしてよい。
【0009】
電圧印加部は、印加期間の次の非印加期間において、当該印加期間及び非印加期間の平均電圧を略0とする第2レベルの制御電圧を印加してよい。電圧印加部は、複数の印加期間に対応して制御電圧を第2レベルとする非印加期間を1回設け、複数の印加期間及び当該非印加期間の制御電圧の平均値を0に近づけてよい。
【0010】
電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、パルス電圧をACカップリングして、制御電圧としてTE−TMコンバータに印加するACカップリング回路とを有してよい。電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、パルス電圧と逆レベルの直流電圧を発生する逆レベル直流電圧源と、パルス電圧に逆レベルの直流電圧を加算して、制御電圧としてTE−TMコンバータに印加する加算回路とを有してよい。
【0011】
電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、誤差信号が略0となるようにパルス電圧のDCバイアス値を調整して、制御電圧としてTE−TMコンバータに印加するバイアス調整回路と制御電圧を積分する積分回路と、積分回路の出力電圧を反転して所定のゲインを乗算することにより誤差信号を生成する反転増幅回路とを有してよい。電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、平均化制御電圧に基づきパルス電圧のピーク値及びDCバイアス値を調整して、制御電圧としてTE−TMコンバータに印加するピークDCバイアス調整回路と、制御電圧を積分することにより平均化制御電圧を生成する積分回路とを有してよい。
【0012】
電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して出射される光の発生タイミングを示すタイミングパルスを発生するパルス発生回路と、タイミングパルスが発生されてから光がTE−TMコンバータに入射されるまでの時間に応じて、タイミングパルスを遅延する遅延回路と、遅延回路により遅延されたタイミングパルスに基づき、TE−TMコンバータに対して印加する制御電圧を発生する電圧発生部とを有してよい。
【0013】
電圧印加部は、TE−TMコンバータに対して入射される光を受光して、当該光の発生タイミングを示すタイミングパルスを生成するパルス生成回路と、タイミングパルスが発生されてから光がTE−TMコンバータに入射されるまでの時間に応じて、タイミングパルスを遅延する遅延回路と、遅延回路により遅延されたタイミングパルスに基づき、TE−TMコンバータに対して印加する制御電圧を発生する電圧発生部とを有してよい。
【0014】
TE−TMコンバータは、TEモード成分とTMモード成分が同等となるように制御電圧が印加されることにより、TEモード成分とTMモード成分が等しい光を出射してよい。TE−TMコンバータは、周期的に変化する制御電圧が印加されることにより、偏光方向がTEモードとTMモードとの間を周期的に変化する光を出射してよい。
【0015】
偏光方向変換装置は、TE−TMコンバータの出射光が入射され、TEモードとTMモードとの位相差が所定の周期で変化する光を出射する位相変調器を更に備えてよい。
【0016】
本発明の第2の形態においては、TE−TMコンバータに対してTEモード成分もしくはTMモード成分を有する光を入射するとともに制御電圧を印加し、当該TE−TMコンバータから当該制御電圧に応じた偏光した光を出射させる偏光方向変換方法において、TE−TMコンバータに光が入射されているタイミングを含む印加期間に、TE−TMコンバータから所定の偏光を有する光を出射させるべく第1レベルの制御電圧を印加する段階と、印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、第1レベルとは符号が異なる第2レベルの制御電圧を印加する段階とを備える偏光方向変換方法を提供する。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、偏光方向を高精度に変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る偏波スクランブラ10の構成を、光源11及び偏波保存ファイバ12とともに示す。偏波スクランブラ10は、伝送信号を含んだパルス光が光源11から偏波保存ファイバ12を介して入射され、直線偏光→円偏光→対角直線偏光→逆周り円偏光→直線偏光…といったようにポアンカレ球を周回する偏光状態の光を出射する。すなわち、偏波スクランブラ10は、偏光状態を周期的にスクランブルし、無偏光に平均化した光を出射する。
【0021】
偏波スクランブラ10は、偏光子21と、TE−TMコンバータ22と、第1電圧印加部23と、位相変調器24と、第2電圧印加部25とを備える。
偏光子21は、偏波保存ファイバ12から入射されるパルス光のうち、TEモードもしくはTMモードの光、すなわち、偏光方向が0度もしくは90度の成分の光を透過する。
【0022】
TE−TMコンバータ22は、偏光子21を透過したTEモード成分もしくはTMモードを有する光が入射されるとともに、制御電圧が印加される。TE−TMコンバータ22は、入射されたTEモードの光を制御電圧に応じてTMモードもしくはTEモードの方向に回転させることにより、所定の偏光方向の光を出射する。具体的には、TE−TMコンバータ22は、光導波路内を伝播するTEモード成分もしくはTMモードの一部又は全部が、印加された制御電圧に応じてTMモードもしくはTEモードに変換されることにより、所定の強度に調整されたTEモード成分及びTMモード成分の光を出射する。
例えば、TE−TMコンバータ22は、TEモード成分とTMモード成分との強度が等しいを出射するように制御電圧が印加される。また、TE−TMコンバータ22は、TEモードとTMモードとの間を周期的に変化する光を出射してもよい。
【0023】
第1電圧印加部23は、TE−TMコンバータ22に対して制御電圧を印加する。第1電圧印加部23は、光源11から出射されたパルス光がTE−TMコンバータ22に入射されているタイミングを含む期間(印加期間)、及び、印加期間以外の期間(非印加期間)を、例えば光源11の発光タイミングに同期した同期信号に基づき設定する。そして、第1電圧印加部23は、TE−TMコンバータ22に光が入射されているタイミングを含む印加期間に、TE−TMコンバータ22から所定の偏光を有する光を出射させる第1レベルV1の制御電圧を印加する。第1電圧印加部23は、例えば、TEモード成分とTMモード成分との強度が等しくなる光を出射する電圧を、第1レベルV1の制御電圧としてTE−TMコンバータ22に印加する。これにより、TE−TMコンバータ22は、TEモード成分とTMモード成分との強度が等しい光を出射することができる。また、例えば、第1電圧印加部23は、0(V)から、TMモードの光を出射する電圧レベルまでの間を周期的に変化する第1レベルV1の制御電圧を印加してもよい。これにより、TE−TMコンバータ22は、TEモードとTMモードとの間を、すなわち、偏光方向が0度直線偏光→楕円偏光→90度直線偏光と周期的に変化する光を出射することができる。
また、第1電圧印加部23は、印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、第1レベルVとは符号が異なる第2レベルVの制御電圧を印加する。これにより、印加期間に印加された第1レベルVの制御電圧がキャンセルされ、相殺される。
【0024】
位相変調器24は、TE−TMコンバータ22から出射された直線偏光が入射されるとともに、制御電圧が印加される。位相変調器24は、入射された光における、TEモード成分とTMモード成分との位相差を制御電圧に応じて周期的に変化させる。例えば、位相変調器24は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶等の電気光学素子にTEモード及びTMモードの光を伝播させ、正弦波又は三角波電圧信号等を伝播方向に直交する方向に電界が印加されることにより、TEモードとTMモードとの間に周期的に変化する位相差を生じさせた光を出射する。
【0025】
第2電圧印加部25は、位相変調器24に対して制御電圧を印加する。具体的には、第2電圧印加部25は、TEモードとTMモードとの位相差が−πからπまでの間を周期的に変化する制御電圧を印加する。これにより、位相変調器24は、偏光状態が周期的にスクランブルする無偏光に平均化された光を出射することができる。
【0026】
図2は、TE−TMコンバータ22の一例としての構成を示す。
TE−TMコンバータ22は、一例として、ニオブ酸リチウム結晶等の電気光学結晶の光導波路31と、当該光導波路31の導波光の伝播方向に沿って陽極33と陰極34とが所定のピッチΛで交互に配置された櫛歯型電極32とを有する。光導波路31は、偏光子21を透過したTEモードもしくはTMモードの光が入射されて、導波光として伝播する。櫛歯型電極32は、制御電圧が印加されることにより、導波光の伝播方向に沿ってピッチΛにより定まる所定周期で変化する電界を、光導波路31に対して印加する。光導波路31は、この電界が印加されると、電気光学結晶に屈折率楕円体の主軸回転が生じて、伝播光の偏光方向を回転する。これにより、TE−TMコンバータ22は、第1電圧印加部23から適当な制御電圧が与えられることによって、TEモード成分をTMモード成分もしくはTMモード成分をTEモード成分に変換するので、所定のTEモードとTMモードの成分比をもつ光出射することができる。
【0027】
図3(A)は、時間に対するTE−TMコンバータ22に入射される光のパワーを示す。図3(B)は、図3(A)に示す光がTE−TMコンバータ22に入射された場合における、TE−TMコンバータ22に印加される制御電圧を示す。
第1電圧印加部23は、TE−TMコンバータ22に対してパルス光が入射されているタイミングに、第1レベル(V1)の制御電圧を印加する。第1電圧印加部23は、印加期間の長さを、TE−TMコンバータ22に対して入射される光のパルス幅Tよりも十分に長い期間に設定している。すなわち、第1電圧印加部23は、TE−TMコンバータ22に対して入射される光のパルス幅よりも長い期間に亘り制御電圧を第1レベル(V1)としている。これにより、パルス光の入射タイミングに多少の変動が発生しても、確実に偏光方向を変換できる。なお、第1電圧印加部23は、少なくとも非印加期間が形成されるように、第1レベル(V1)の期間を設定する。
【0028】
また、第1電圧印加部23は、印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部において、第1レベル(V1)とは符号が異なる、すなわち逆レベルとされた第2レベル(V2)の制御電圧を印加する。例えば、印加期間及び非印加期間に印加した制御電圧を平均化した場合に、0に近付く又は略0となる第2レベル(V2)の制御電圧を印加する。
【0029】
非印加期間においてどのような制御電圧を印加しても、パルス光がTE−TMコンバータ22に入射していないので、出力光に対してなんら影響を与えない。これに対して、光導波路31を構成する電気光学結晶に対しては、印加期間に印加された電界と、逆方向の電界が印加される。このため、TE−TMコンバータ22を長時間動作させた場合であっても、光導波路31を構成する電気光学結晶に印加された累積的な電界は、0に近付き又は略0となるので、分極が小さい又は発生しない。従って、TE−TMコンバータ22によれば、長期間使用してもDCドリフトが生じず、高精度に偏光方向の変換をすることができる。
【0030】
また、以上のような偏波スクランブラ10によれば、長期間使用してもDCドリフトが発生しないTE−TMコンバータ22を用いて、偏光状態が周期的にスクランブルした光を発生する。これにより、偏波スクランブラ10は、長期間使用しても偏光度(DOP:Degree of Polarization)の劣化が小さい、無偏光とみなされる光を出射することができる。
【0031】
図4は、第1電圧印加部23が発生する制御電圧の印加パターンの第1の変形例を示す。第1電圧印加部23は、印加期間の次の非印加期間において、当該印加期間及び当該非印加期間を1周期としたときに、1周期毎に平均の制御電圧を略0とするような第2レベル(V2)の制御電圧を出力する。第1電圧印加部23は、1周期毎に平均の制御電圧が略0となれば、非印加期間の一部に第2レベル(V2)の制御電圧を印加してよい。このように1周期毎に平均の制御電圧を略0とすることにより、光パルスが不定期に発生する場合であっても、容易に平均の制御電圧を略0とすることができる。なお、第1レベル(V1)及び第2レベル(V2)は、絶対値が同レベル及びパルス幅が同期間であってもよいし、絶対値が異なるレベルでパルス幅が異期間であってもよい。
【0032】
図5は、第1電圧印加部23が発生する制御電圧の印加パターンの第2の変形例を示す。第1電圧印加部23は、複数の印加期間に対応して制御電圧を第2レベル(V2)とする非印加期間を1回設け、複数の印加期間及び当該非印加期間の制御電圧の平均値を0に近づけてよい。このように複数周期毎に第2レベル(V2)の制御電圧を印加することにより、例えば一回の印加期間が非常に短い場合であっても、正確に平均の制御電圧を略0とすることができる。
【0033】
図6は、第1電圧印加部23の構成の第1例を示す。第1電圧印加部23は、一例として、パルス電圧発生部41と、遅延回路42と、ACカップリング回路43とを有する。パルス電圧発生部41は、光源11から出力された同期信号に基づきパルス電圧を出力する。遅延回路42は、パルス電圧発生部41から出力されたパルス電圧を、同期信号が発生されてからTE−TMコンバータ22にパルス光が入射されるまでの時間の遅延をする。これにより、遅延回路42から出力されるパルス電圧がTE−TMコンバータ22に対して入射される光に同期する。ACカップリング回路43は、例えばコンデンサであり、遅延回路42により遅延されたパルス電圧をACカップリングして出力する。ACカップリング回路43から出力された電圧は、制御電圧としてTE−TMコンバータ22に印加される。
【0034】
このような第1電圧印加部23によれば、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが固定周期で発生されている場合に効率的に略0とする制御電圧を生成することができる。
【0035】
図7は、第1電圧印加部23の構成の第2例を示す。第1電圧印加部23は、一例として、図6のACカップリング回路43に代えて、逆レベル直流電圧源51及び加算回路52を有する。逆レベル直流電圧源51は、前記パルス電圧と逆レベルの直流電圧、例えば第2レベルの電圧を発生する。加算回路52は、遅延回路42により遅延されたパルス電圧に、逆レベル直流電圧源51から出力された直流電圧を加算して出力する。加算回路52から出力された電圧は、制御電圧としてTE−TMコンバータ22に印加される。
【0036】
このような第1電圧印加部23によれば、例えばパルス光が長周期である場合も、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが固定周期で発生されている場合に効率的に略0とする制御電圧を生成することができる。
【0037】
図8は、第1電圧印加部23の構成の第3例を示す。第1電圧印加部23は、一例として、図6のACカップリング回路43に代えて、バイアス調整回路61、積分回路62及び反転増幅回路63を有する。バイアス調整回路61は、遅延回路42により遅延されたパルス電圧のDCバイアス値を調整する。積分回路62は、バイアス調整回路61から出力される電圧を積分する。反転増幅回路63は、積分回路62から出力された信号を反転して、所定のゲインを乗算することにより誤差信号を生成する。そして、バイアス調整回路61は、誤差信号が略0となるようにパルス電圧のDCバイアス値を調整する。具体的には、バイアス調整回路61は、誤差信号が略0であれば現在のDCバイアスを維持し、誤差信号が0以外であれば誤差信号を現在のDCバイアスに加算する。バイアス調整回路61から出力された電圧は、制御電圧としてTE−TMコンバータ22に印加される。
【0038】
このような第1電圧印加部23によれば、積分結果が略0となるような制御電圧が発生されるので、TE−TMコンバータ22に入射されるパルス光が長周期である場合、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが固定周期で発生されている場合に効率的に略0とする制御電圧を生成することができる。
【0039】
図9は、第1電圧印加部23の構成の第4例を示す。第1電圧印加部23は、図6のACカップリング回路43に代えて、ピーク・DCバイアス調整回路71及び積分回路72を有する。ピーク・DCバイアス調整回路71は、遅延回路42により遅延されたパルス電圧のピーク値を調整するとともにDCバイアス値を調整する。積分回路72は、ピーク・DCバイアス調整回路71から出力される電圧を積分する。そして、ボトム・DCバイアス調整回路71は、具体的には、ピーク値が第1レベル(V1)となるように増幅するとともに、積分回路72の出力信号が0より大きければDCバイアス値を小さくし、0より小さければDCバイアスを大きくするように制御する。ピーク・DCバイアス調整回路71から出力された電圧は、制御電圧としてTE−TMコンバータ22に印加される。
【0040】
このような第1電圧印加部23によれば、積分結果が略0となるような制御電圧が発生されるので、印加期間に与える制御電圧のレベルを変動させることなく、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが周期的に発生されない場合であっても、効率的に略0となる制御電圧を生成することができる。また、この第1電圧印加部23によれば、DCバイアスの調整とともにピーク値を第1レベル(V1)に調整できるので、偏光方向を正確に制御できるととともに、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0とする制御電圧を正確に生成することができる。
【0041】
図10は、第1電圧印加部23の構成の第5例を示す。第1電圧印加部23は、一例として、図9のパルス電圧発生部41に代えて、パルス発生回路81及び第1増幅器82を有する。パルス発生回路81は、光源11がパルス光の出射するタイミングパルス、すなわち、TE−TMコンバータ22に対して出射される光の発生タイミングを示すタイミングパルスを発生する。当該タイミングパルスは、光源11に供給されるとともに、第1増幅器82に供給される。光源11は、タイミングパルスを受け、当該タイミングパルスに応じて光を出射する。第1増幅器82は、タイミングパルスに同期したパルス電圧を遅延回路42に出力する。遅延回路42は、入力されたパルス電圧を、タイミングパルスが発生されてからTE−TMコンバータ22にパルス光が入射されるまでの時間の遅延をして、ピーク・DCバイアス調整回路71に供給する。なお、遅延回路42は、第1増幅器82の後段に代えて、第1増幅器82の前段に設けられてもよい。
【0042】
このような第1電圧印加部23によれば、光源11によるパルス光の発生タイミングを外部から制御する場合であっても、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが周期的に発生されない場合であっても、効率的に略0とする制御電圧を生成することができる。
【0043】
図11は、第1電圧印加部23の構成の第6例を示す。第1電圧印加部23は、図9のパルス電圧発生部41に代えて、受光素子91、パルス再生回路92及び第2増幅器93を有する。受光素子91は、光源11からTE−TMコンバータ22に入射される光の一部を受光して、電気信号に変換する。パルス再生回路92は、受光素子91から出力された電気信号を例えばI/V変換及び波形整形等してタイミングパルスを再生する。第2増幅器93は、タイミングパルスに同期したパルス電圧を遅延回路42に出力する。遅延回路42は、入力されたパルス電圧を、受光素子91により光を受光してからTE−TMコンバータ22にパルス光が入射されるまでの時間の遅延をして、ボトム・DCバイアス調整回路71に供給する。なお、遅延回路42は、第2増幅器93の後段に代えて、第2増幅器93の前段に設けられてもよい。
【0044】
このような第1電圧印加部23によれば、光源11等から同期信号が供給されない場合であっても、印加期間及び非印加期間の値を平均化した場合に略0となる制御電圧を生成することができる。特に、光パルスが周期的に発生されない場合であっても、効率的に略0とする制御電圧を生成することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】偏波スクランブラ10の構成を光源11及び偏波保存ファイバ12とともに示す。
【図2】TE−TMコンバータ22の一例としての構成を示す。
【図3】(A)は、時間に対するTE−TMコンバータ22に入射される光のパワーを示す。(B)は、(A)に示す光がTE−TMコンバータ22に入射された場合における、TE−TMコンバータ22に印加される制御電圧を示す。
【図4】第1電圧印加部23が発生する制御電圧の印加パターンの第1の変形例を示す。
【図5】第1電圧印加部23が発生する制御電圧の印加パターンの第2の変形例を示す。
【図6】第1電圧印加部23の構成の第1例を示す。
【図7】第1電圧印加部23の構成の第2例を示す。
【図8】第1電圧印加部23の構成の第3例を示す。
【図9】第1電圧印加部23の構成の第4例を示す。
【図10】第1電圧印加部23の構成の第5例を示す。
【図11】第1電圧印加部23の構成の第6例を示す。
【符号の説明】
【0047】
10 偏波スクランブラ
11 光源
12 偏波保存ファイバ
21 偏光子
22 TE−TMコンバータ
23 第1電圧印加部
24 位相変調器
25 第2電圧印加部
31 光導波路
32 櫛歯型電極
33 陽極
34 陰極
41 パルス電圧発生部
42 遅延回路
43 ACカップリング回路
51 逆レベル直流電圧源
52 加算回路
61 バイアス調整回路
62 積分回路
63 反転増幅回路
71 ピーク・DCバイアス調整回路
72 積分回路
81 パルス発生回路
82 第1増幅器
91 受光素子
92 パルス再生回路
93 第2増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TEモード成分もしくはTMモードを有する光を入射して、印加された制御電圧に応じて偏光した光を出射するTE−TMコンバータと、
前記TE−TMコンバータに対して前記制御電圧を印加する電圧印加部とを備え、
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに光が入射されているタイミングを含む印加期間に、前記TE−TMコンバータから所定の偏光を有する光を出射させるべく第1レベルの制御電圧を印加し、
前記印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、前記第1レベルとは符号が異なる第2レベルの制御電圧を印加する
偏光方向変換装置。
【請求項2】
前記電圧印加部は、
前記非印加期間の少なくとも一部に、前記印加期間及び当該非印加期間に印加した前記制御電圧の平均値を0に近づける第2レベルの前記制御電圧を印加する
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項3】
前記電圧印加部は、
前記非印加期間の少なくとも一部に、前記印加期間及び当該非印加期間に印加した前記制御電圧の平均値を略0とする第2レベルの前記制御電圧を印加する
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項4】
前記電圧印加部は、前記TE−TMコンバータに対して入射される光のパルス幅よりも長い期間に亘って前記制御電圧を第1レベルとする
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項5】
前記電圧印加部は、印加期間の次の非印加期間において、当該印加期間及び非印加期間の平均電圧を略0とする第2レベルの制御電圧を印加する
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項6】
前記電圧印加部は、複数の印加期間に対応して制御電圧を第2レベルとする非印加期間を1回設け、前記複数の印加期間及び当該非印加期間の制御電圧の平均値を0に近づける
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項7】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、
前記パルス電圧をACカップリングして、前記制御電圧として前記TE−TMコンバータに印加するACカップリング回路と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項8】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、
前記パルス電圧と逆レベルの直流電圧を発生する逆レベル直流電圧源と、
前記パルス電圧に前記逆レベルの直流電圧を加算して、前記制御電圧として前記TE−TMコンバータに印加する加算回路と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項9】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、
誤差信号が略0となるように前記パルス電圧のDCバイアス値を調整して、前記制御電圧として前記TE−TMコンバータに印加するバイアス調整回路と
前記制御電圧を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力電圧を反転して所定のゲインを乗算することにより前記誤差信号を生成する反転増幅回路と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項10】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して入射される光に同期したパルス電圧を発生するパルス電圧発生部と、
平均化制御電圧に基づき前記パルス電圧のピーク値及びDCバイアス値を調整して、前記制御電圧として前記TE−TMコンバータに印加するピークDCバイアス調整回路と、
前記制御電圧を積分することにより前記平均化制御電圧を生成する積分回路と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項11】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して出射される光の発生タイミングを示すタイミングパルスを発生するパルス発生回路と、
前記タイミングパルスが発生されてから光が前記TE−TMコンバータに入射されるまでの時間に応じて、前記タイミングパルスを遅延する遅延回路と、
前記遅延回路により遅延されたタイミングパルスに基づき、前記TE−TMコンバータに対して印加する前記制御電圧を発生する電圧発生部と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項12】
前記電圧印加部は、
前記TE−TMコンバータに対して入射される光を受光して、当該光の発生タイミングを示すタイミングパルスを生成するパルス生成回路と、
前記タイミングパルスが発生されてから光が前記TE−TMコンバータに入射されるまでの時間に応じて、前記タイミングパルスを遅延する遅延回路と、
前記遅延回路により遅延されたタイミングパルスに基づき、前記TE−TMコンバータに対して印加する前記制御電圧を発生する電圧発生部と
を有する請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項13】
前記TE−TMコンバータは、TEモード成分とTMモード成分が同等となるように制御電圧が印加されることにより、TEモード成分とTMモード成分が等しい光を出射する
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項14】
前記TE−TMコンバータは、周期的に変化する前記制御電圧が印加されることにより、偏光方向がTEモードとTMモードとの間を周期的に変化する光を出射する
請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項15】
前記TE−TMコンバータの出射光が入射され、TEモードとTMモードとの位相差が所定の周期で変化する光を出射する位相変調器を
更に備える請求項1に記載の偏光方向変換装置。
【請求項16】
TE−TMコンバータに対してTEモード成分もしくはTMモード成分を有する光を入射するとともに制御電圧を印加し、当該TE−TMコンバータから当該制御電圧に応じた偏光した光を出射させる偏光方向変換方法において、
前記TE−TMコンバータに光が入射されているタイミングを含む印加期間に、前記TE−TMコンバータから所定の偏光を有する光を出射させるべく第1レベルの制御電圧を印加する段階と、
前記印加期間以外の非印加期間の少なくとも一部に、前記第1レベルとは符号が異なる第2レベルの制御電圧を印加する段階と
を備える偏光方向変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−155931(P2007−155931A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348491(P2005−348491)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】