説明

偏光繊維、偏光子、偏光板、積層光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】散乱効率が良い太さ(径)の複屈折繊維を容易に形成でき、また、偏光繊維と複屈折繊維とを長手方向に平行にかつ均一に配置できる偏光繊維を提供する。
【解決手段】長手方向に垂直な断面が海島構造を成すと共に、当該断面形状が長手方向に連続的に形成されている偏光繊維1。海島構造の海部分11を形成する樹脂(海成分)は二色性色素を含有し、海島構造の島部分12を形成する樹脂(島成分)は透明樹脂である。海部分を形成する樹脂はポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールの共重合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光繊維、偏光子、偏光板、積層光学フィルムおよび画像表示装置に関する。より詳細には、本発明は、透過率のムラやクラックの少ない偏光子を作製するために好適に用いられる偏光繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイは、液晶材料を2枚のガラス板で挟み込んだ液晶セルの両面に偏光子を含む積層光学フィルムを貼り付けた、液晶パネルを備える。かかる偏光子としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素等で染色した後、一軸延伸された延伸フィルムが一般に用いられている。この偏光子は、吸収二色性を示す偏光子である。
【0003】
近年、液晶ディスプレイの表示性能の向上に伴い、より高い透過率を有し、かつより高い偏光度を有する偏光子が求められている。高い透過率の偏光子を得るためには、高重合度のポリビニルアルコール系原料から形成されたフィルムが用いられる。また、高い偏光度の偏光子を得るためには、より高い延伸倍率で延伸されたフィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、高い延伸倍率で延伸されたフィルムは、クラックと呼ばれる亀裂が生じやすいことが知られている。このクラックは、フィルムの延伸方向と平行に生じる。このクラックは、フィルムの延伸方向とその垂直方向との間で、熱収縮挙動や線膨張率が異なるために生じると推察されている。クラックは、高い延伸倍率で延伸したフィルムほど生じやすい。クラックが生じた偏光子を用いると、液晶ディスプレイの表示性能が損なわれる。
【0005】
一方、液晶テレビ受像機の大型化に伴い、大型の液晶テレビ受像機に使用できる大面積の偏光子が求められている。液晶ディスプレイ等に使用する偏光子は、継ぎ目がないことが好ましいからである。しかし、大面積の延伸フィルムは、製造時に、上記クラックの発生確率が高くなる。更に、大面積の延伸フィルムを製造するためには、大型の延伸設備が必要となる。かかる延伸設備を準備するためには、大きな設備投資が必要となる。
【0006】
そこで、クラックを生じさせずかつ大型の延伸設備を必要としない方法として、例えば特許文献2に開示の技術が知られている。具体的に特許文献2には、偏光繊維を用いて偏光織布を形成し、かかる偏光織布を透明樹脂で被覆して偏光フィルターを形成する技術が提案されている。この技術によれば、延伸フィルムを用いないので、構造上クラックを生じず、また、大型の延伸設備は不要である。
【0007】
しかし、特許文献2の偏光フィルターは、液晶ディスプレイに用いるために開発されたものではない。このため、該偏光フィルターは、偏光繊維の存在分布にばらつきがあり、透過光のムラが顕著に表れる。また、該偏光フィルターは、偏光繊維の屈折率と被覆した透明樹脂の屈折率の違いにより、偏光繊維と透明樹脂との界面で光が屈折あるいは反射される。かかる偏光フィルターは、その透過率および偏光度が液晶ディスプレイ用として十分ではない。従って、特許文献2の偏光フィルターは、そのままでは液晶ディスプレイに使用できない。
【0008】
さらに、偏光繊維の染色方法としては、樹脂と色素を混練した後に紡糸する方法、或いは、色素で染色したペレット(チップ)をあらかじめ作製しておき、紡糸の際にこのペレットを混入する方法が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。しかし、上記いずれの方法においても、偏光子の色調を整えるためには、複数の色素を偏光繊維の作製時に混合しておく必要がある。このため、上記方法では、偏光繊維の製造後、その色調の調整ができない。
【0009】
そこで、偏光繊維と複屈折繊維を併用することにより、透過率のムラを改善し、偏光繊維と透明樹脂との界面による光の屈折あるいは反射を防止するとともに、偏光繊維の紡糸後の色調調整を可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平8−190015号公報
【特許文献2】特開平6−130223号公報
【特許文献3】特開平10−130946号公報
【特許文献4】特開平10−170720号公報
【特許文献5】特開2006−126313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献5の技術において、複屈折繊維を散乱効率が良い太さ(径)に形成すると、複屈折繊維の強度が不足する。このため、散乱効率の良い太さの複屈折繊維を現実的に製造することが困難である。また、特許文献5の技術では、偏光繊維と複屈折繊維とを長手方向に平行にかつ均一に配置することも困難である。
【0011】
本発明は、散乱効率が良い太さ(径)の複屈折繊維を容易に形成でき、また、偏光繊維と複屈折繊維とを長手方向に平行にかつ均一に配置するのと同様の効果を有する偏光繊維を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、前記偏光繊維を用いた偏光子、偏光板、積層光学フィルムおよび画像表示装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる偏光繊維は、長手方向に垂直な断面の形状が海島構造を成すと共に、前記断面の形状が長手方向に連続的に形成された長手方向に吸収軸を有し、前記海島構造の海部分を形成する樹脂(海成分)が二色性色素を含有し、前記海島構造の島部分を形成する樹脂(島成分)が透明樹脂である。
【0013】
上記偏光繊維は、長手方向に垂直な断面が海島構造を成すと共に、当該断面形状が連続的に形成された長手方向に吸収軸を有する。かかる構造の偏光繊維は、複合紡糸用ノズルを用いた押し出し成形法によって容易に形成できる。また、島部分を形成する樹脂(島成分)が透明樹脂であるので、これは、従来の複屈折繊維と同様に機能する。かかる島部分は海部分(偏光樹脂)の中に形成される。このため、従来のように複屈折繊維を単独で形成する場合に比べて、偏光繊維を細くすることも可能である。従って、散乱効率が良い断面直径を有する偏光繊維を得られやすい。
【0014】
なお、「断面が海島構造を成す」とは、断面の平面形状が海に例えられる同一成分による部分と、島に例えられる海とは違う成分を有する部分とからなり、島部分が海部分に囲まれていると共に、島部分同士が互いに接触していない構造を言う。
【0015】
また、本発明の偏光繊維は、長手方向に吸収軸を有する。該偏光繊維を、長手方向に平行に配置または積層することにより、偏光子を容易に作製することができる。また、本発明の偏光繊維は、複屈折繊維として機能する透明樹脂(島成分)を内包している。このため、従来の偏光繊維に相当する部分(海成分)と従来の複屈折繊維に相当する部分(島成分)の比率が常に一定である。従って、本発明の偏光繊維は、偏光繊維相当部分と複屈折繊維相当部分とを長手方向に平行にかつ均一に配置できる。
【0016】
また、本発明の偏光繊維は、海島構造の海部分を形成する樹脂(海成分)が二色性色素を含有し、海島構造の島部分を形成する樹脂(島成分)が透明樹脂である。従って、長手方向に平行な偏光は、海部分において吸収される。一方、島部分に到達した前記偏光は、島部分で反射、拡散あるいは散乱される。前記反射、拡散あるいは散乱によって光路を変更させられた前記偏光は、再び海部分に戻される。その結果、前記長手方向に平行な偏光は、偏光繊維内に長くとどまる。よって、島部分を有さない場合に比べて、長手方向に平行な偏光は、偏光繊維に、より吸収される可能性が高くなる。一方、長手方向に垂直な方向の偏光は、海部分及び島部分の何れにも吸収されることなく、直進し、透過する。従って、本発明の偏光繊維は、従来の島部分を有さない偏光繊維に比して、偏光性能が大きくなる。
【0017】
また、本発明の偏光繊維は、断面形状が長手方向に連続的に形成されている。このため、上記偏光繊維は、同一繊維内の長手方向のどの位置においても光学特性に差がない(均一な光学特性を有する)。従って、前記偏光繊維を長手方向に平行に配置または積層することにより、光学特性が均一な偏光子を作製できる。
【0018】
本発明の好ましい偏光繊維は、長手方向に垂直な方向の前記島成分の屈折率をni1、長手方向に垂直な方向の前記海成分の屈折率をns1としたときの屈折率の差Δn=|ns1−ni1|が0.02以下であり、長手方向の前記島成分の屈折率をni2、長手方向の前記海成分の屈折率をns2としたときの屈折率の差Δn=|ns2−ni2|が0.03以上0.05以下である。
【0019】
上記好ましい偏光繊維は、長手方向に垂直な方向の屈折率の差Δnが0.02以下である。このため、上記偏光繊維は、偏光繊維中の海成分と島成分の界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを一層抑制できる。そのため、長手方向に垂直な方向の偏光は、海成分で吸収されることなく、直進し、透過する。
【0020】
一方、上記好ましい偏光繊維は、長手方向の屈折率の差Δnが0.03以上である。このため、上記偏光繊維は、偏光繊維中の海成分と島成分の界面において、長手方向に平行な偏光が、反射、拡散あるいは散乱しやすくなる。そのため、本発明の偏光繊維は、従来の島部分を有さない偏光繊維に比して、偏光性能が一層大きくなる。
【0021】
本発明の他の好ましい偏光繊維は、島部分の数が2以上であると共に、各島部分の長径が0.1〜8.0μmである。
【0022】
上記他の好ましい偏光繊維は、島部分の数(以下、島数と記す)が2以上であるので、偏光繊維中を透過する長手方向に平行な偏光が、多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を起しやすい。このため、長手方向に平行な偏光が、海成分中において吸収される可能性が一層高くなる。
【0023】
また、島の長径が光の波長のおおよそ10分の1より短い場合には、偏光の散乱が生じ難い。上記他の好ましい偏光繊維は、島部分の長径が0.1μm以上であるため(これは可視光の波長の10分の1よりも長い)、偏光の散乱が生じる。
一方、島の長径が大きすぎる場合には、偏光繊維1本あたりの島数が相対的に少なくなり、偏光が、多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を起こし難くなる。また、この場合には、島の存在分布がまばらとなり、透過率のムラが生じやすい。上記他の好ましい偏光繊維は、各島の長径が8.0μm以下であるので、島の長径が大きすぎることはなく、前述の弊害を抑制できる。
【0024】
本発明の他の好ましい偏光繊維は、前記海部分を形成する樹脂がポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールの共重合体である。
【0025】
ポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールの共重合体は、偏光子の原料として実績があり、汎用かつ安価である。
【0026】
本発明の別の局面によれば、偏光子が提供される。
本発明の偏光子は、上記偏光繊維が長手方向に平行に配置または積層される共に、透明な等方性材料により包埋されたシート状である。
【0027】
本発明の好ましい偏光子は、前記等方性材料の屈折率をn、長手方向に垂直な方向の前記海成分の屈折率をns1としたときの屈折率の差Δn=|ns1−n|が0.02以下である。
【0028】
上記好ましい偏光子は、長手方向に垂直な方向の海成分の屈折率と等方性材料の屈折率との差Δnが0.02以下であるため、長手方向に垂直な方向の偏光が、海成分と等方性材料との界面において、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。よって、該偏光子は、長手方向に垂直な方向の偏光を容易に透過させる、透過率が高い偏光子となる。
【0029】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。
本発明の偏光板は、上記偏光子の少なくとも片面に透明な保護膜を備える。
【0030】
本発明の別の局面によれば、積層光学フィルムが提供される。
本発明の積層光学フィルムは、上記偏光子、または上記偏光板を備える。
【0031】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
本発明の画像表示装置は、上記偏光子、上記偏光板および上記積層光学フィルムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明の偏光繊維は、散乱効率が良い太さ(径)の複屈折繊維を容易に形成でき、また、偏光繊維と複屈折繊維とを長手方向に平行にかつ均一に配置するのと同様の効果を有する。かかる偏光繊維を用いれば、偏光度に優れ、透過率のムラやクラックが少ない偏光子を作製できる。
また、本発明によれば、前記偏光繊維を備える偏光子、偏光板、画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した偏光繊維、偏光子、偏光板、積層光学フィルム、および画像表示装置の1つの実施形態を、図1〜図6に従って説明する。
【0034】
[偏光繊維]
【0035】
図1に示すように、本実施形態にかかる偏光繊維1は、長手方向に垂直な断面が海島構造を成すと共に、前記断面形状が長手方向に連続的に形成されている。海島構造の海部分11を形成する樹脂(海成分)は、二色性色素を含有している。二色性色素の含有された海部分11は、長手方向に吸収軸を有する。
海島構造の島部分12を形成する樹脂(島成分)は、透明樹脂である。海成分の長手方向の屈折率と島成分の長手方向の屈折率とは、大きく異なる。一方、海成分の長手方向に垂直な方向の屈折率と島成分の長手方向に垂直な方向の屈折率とは(偏光繊維1の断面積方向の屈折率)、同一または近似している。
海成分の長手方向の屈折率と島成分の長手方向の屈折率の差Δn(Δn=|ns2−ni2|)は、好ましくは0.03以上0.05以下であり、より好ましくは0.035以上0.045以下である。
ただし、「ns2」は、海成分の長手方向の屈折率を表し、「ni2」は、島成分の長手方向の屈折率を表す。
また、海成分の長手方向に垂直な方向の屈折率と島成分の長手方向に垂直な方向の屈折率の差Δn(Δn=|ns1−ni1|)は、好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下である。
ただし、「ns1」は、海成分の長手方向に垂直な方向の屈折率を表し、「ni1」は、島成分の長手方向に垂直な方向の屈折率を表す。
【0036】
海成分を形成する樹脂としては、可視光領域において光透過性を有し、繊維化が可能で、二色性色素を分散できる性質を有していれば、その種類は特に限定されない。このような樹脂としては、従来より偏光子に用いられているポリビニルアルコールおよびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールの誘導体としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸のアルキルエステル;アクリルアミド等で変性したポリビニルアルコールが挙げられる。また、ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルピロドリン系樹脂、アミロース系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、海成分を形成する樹脂は、ポリビニルアルコールが好適であり、溶融紡糸の観点からはエチレンとビニルアルコールとの共重合体が好適である。
【0037】
また、押し出し成形によって海島構造が形成される場合、海成分を形成する樹脂と島成分を形成する樹脂とは、溶融粘度やメルトフローインデックスが近い樹脂が好ましい。
【0038】
上記二色性色素としては、特に限定されないが、可視光領域のいずれかの波長の光を吸収し得る化合物が好ましい。
二色性色素としては、化学構造による分類によれば、アゾ系色素、アントラキノン系色素、ペリレン系色素、インダンスロン系色素、イミダゾール系色素、インジゴイド系色素、オキサジン系色素、フタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、ピラゾロン系色素、スチルベン系色素、ジフェニルメタン系色素、ナフトキノン系色素、メトシアニン系色素、キノフタロン系色素、キサンテン系色素、アリザリン系色素、アクリジン系色素、キノンイミン系色素、チアゾール系色素、メチン系色素、ニトロ系色素、ニトロソ系色素などが挙げられる。
また、二色性色素は、1種のみ用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
次に、図2を参照して、上記偏光繊維への入射した光の挙動を説明する。
【0040】
偏光繊維1に入射した光は、偏光繊維1の断面方向に平行な直線偏光21と偏光繊維1の長手方向に平行な直線偏光22とにベクトル的に分離して考えることができる。
なお、図2(a)および(b)において、入射光の進行方向をZ方向、偏光繊維1の断面方向に平行な方向をX方向、偏光繊維1の長手方向に平行な方向をY方向として記載している。また、直線偏光21および直線偏光22を示す矢印の根元付近に、偏光方向を示す小矢印を記載している。
【0041】
偏光繊維1の断面方向に平行な直線偏光21(X偏光と記す)は、海部分11の吸収軸方向と垂直な方向の偏光である。従って、前記X偏光は、海部分11に吸収されることなく偏光繊維1を透過する。また、上述したように、海成分を形成する樹脂の断面積方向(X方向)の屈折率と、上記島成分を形成する樹脂の断面積方向(X方向)の屈折率とは、略等しい。このため、X偏光は、海部分11と島部分12の界面においても、反射、拡散あるいは散乱せずに偏光繊維1を透過する。更に、島部分12は透明樹脂であるため、X偏光は、特に問題なく偏光繊維1を透過する。よって、X偏光は、ほとんど影響を受けることなく、偏光繊維1中を透過する。
【0042】
一方、偏光繊維1の長手方向に平行な直線偏光22(Y偏光と記す)は、海部分11の吸収軸方向と平行な偏光である。従って、前記Y偏光は、その多くが海部分11に吸収される。また、上述したように、海成分を形成する樹脂の長手方向(Y方向)の屈折率と、島成分を形成する樹脂の長手方向(Y方向)の屈折率とは、大きく異なる。このため、Y偏光は、海部分11と島部分12の界面において、反射、拡散あるいは散乱される。従って、Y偏光は、海部分11と島部分12の界面を通過するたびに光路を変化させられる。よって、Y偏光は、偏光繊維1内において長い光路を進み、そのほとんどが、海部分11に吸収される。
【0043】
本発明の島成分に相当する繊維として、従来、複屈折繊維が使用されてきたが、本発明では、複屈折性は必ずしも必須ではない。本発明の偏光繊維は、上述のように、海成分と島成分の長手方向の屈折率が大きく異なり、且つ海成分と島成分の長手方向に垂直な方向の屈折率が同一又は近似しているので、特定の直線偏光を選択的に透過できる。
従って、本明細書において、島成分を構成する透明樹脂を「屈折率相異成分」と記す。また、屈折率相異成分が繊維化された場合は「屈折率相異繊維」と記す。ただし混乱を防止するため、従来と同様に別繊維として形成された場合は、従来通り複屈折繊維とする。
【0044】
上記偏光繊維1本当たりに含まれる島数(島部分の数)は、好ましくは2以上であり、より好ましくは、4以上であり、特に好ましくは6以上である。また、同島数の上限は、特に制限はなく、偏光繊維や島部分の太さに応じて適宜設定される。同島数は、例えば、100以下である。
また、島部分の長径は、好ましくは0.1〜8.0μmであり、より好ましくは0.5〜7.5μmである。
ただし、島部分の長径とは、島部分の断面形状が円形の場合にはその直径を意味し、島部分の断面形状が非円形(例えば楕円形等)の場合にはその最も長い径を意味する。
また、本明細書において、「A〜B」という記載は、「A以上B以下」を意味する。
【0045】
なお、上記実施形態にかかる偏光繊維1は、以下のように変更してもよい。
図1において、偏光繊維1の長手方向に垂直な面による断面形状は、円形であるが、この形状に限定されず、例えば、楕円形などでもよい。
【0046】
また、図1において、島部分12の長手方向に垂直な面による断面形状は、円形であるが、この形状に限定されず、例えば、楕円形などでもよい。
【0047】
図1において、偏光繊維1の断面における複数の島部分12は、略同心円状に配置されているが、他の配置でもよい。例えば、複数の島部分12は、略均等に分散配置されていてもよいし、ランダムに分散配置されていてもよい。ただし、多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を生じ易くするため、複数の島部分12は、略同心円状などの略均等に分散配置されていることが好ましい。
【0048】
[偏光子]
【0049】
図3に示すように、本発明の偏光子3は、偏光繊維1を備えたシートである。該偏光子3は、図1に示した偏光繊維1を用いて作製できる。本実施形態において、偏光子3は、偏光繊維1が長手方向に平行に配置または積層され、透明な等方性材料2により包埋されてなる。なお、偏光子とは、自然光または偏光から特定の直線偏光を透過する光学特性を有するシートをいう。
【0050】
本実施形態の偏光子3は、複数の偏光繊維1が長手方向に平行に隙間なく配置または積層されていることが好ましい。例えば、偏光子3の厚み方向に偏光繊維1が2本以上積層される場合、隣接する偏光繊維1は接触していることが好ましい。このように偏光繊維1を隙間なく配置することにより、偏光特性に優れた偏光子3が得られ得る。
本実施形態において、屈折率の差Δn=|ns1−n|が0.02以下となるように、等方性材料2と海部分11の素材が選択される。ただし、「n」は、上記等方性材料2の屈折率を表し、「ns1」は、偏光繊維1中の海成分の長手方向に垂直な方向の屈折率を表す。
上記Δnが0.02以下となる素材を選択することによって、長手方向に垂直な方向の偏光が、海部分11と等方性材料2との界面において、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。その結果、長手方向に垂直な方向の偏光を容易に透過させる、透過率が高い偏光子3を提供できる。原理的には、Δn=0が好ましい。もっとも、実施上、Δn=0が困難な場合もあるので、他の要件を考慮しながら、Δnが出来るだけ零に近づく組み合わせが検討される。
【0051】
上記偏光子3中の偏光繊維1の数を増やすと、偏光子3の透過率が低下する。一方、偏光子3中の偏光繊維1の数を減らすと、長手方向に平行な偏光の吸収率が低下し、偏光子3の偏光性能が低下する。従って、偏光子3中の偏光繊維1の数については、必要とする透過率と偏光性能とのバランスによって決定される。なお、上記バランスは、海部分中の二色性色素の濃度、偏光繊維1本あたりの島数、島の長径、島の形状などによっても変化する。
【0052】
偏光子3は、複数の偏光繊維1を等方性材料2で空隙なく包埋することによって作製される。ここで、偏光子3の作製時、偏光繊維1と等方性材料2との間に、気泡が入り込むと、前記空隙が生じるため好ましくない。気泡が入り込むと、それが偏光に依存しない等方的な散乱点となるため、偏光子3の偏光性能が低下する。かかる気泡の入り込みを防止するため、粘度の低い等方性材料2を用いることが好ましい。
【0053】
本発明の偏光子3の全体厚みは、特に制限されないが、好ましくは20〜500μm程度である。偏光子3の厚みが薄すぎる場合には、包埋可能な偏光繊維1の本数が相対的に少なくなるため、偏光子3の偏光性能が不十分となる。偏光子3の厚みが厚すぎると、取り扱い性が悪く、また、作製時に気泡が入り込み易くなる等の問題が生じ得る。
【0054】
なお、上記実施形態にかかる偏光子3は、以下のように変更してもよい。
【0055】
偏光繊維1と緯糸とを用いて織布を形成し、かかる織布を等方性材料2により包埋することによって、偏光子3を作製してもよい。この場合にも、上記と同様に、前記織布を等方性材料2で隙間なく包埋することが好ましい。該偏光子3は、通常、先に織布を形成する工程、この織布を等方性材料2により包埋する工程の順序で作製される。この工程順によれば、偏光子3を効率良く作製できる。ただし、織布は、織ることによって形成されるため、偏光繊維1の平行性が若干低下することがある。
上記緯糸の材料としては、任意の透明樹脂を用いることができる。上記緯糸は、その屈折率が、等方性材料2の屈折率とほぼ等しい透明樹脂製の糸を用いることが好ましい。この場合、緯糸の屈折率と等方性材料2との屈折率の差は、好ましくは0.02以下であり、より好ましくは0.01以下であり、特に好ましくは零である。また、偏光特性の低下を抑制するためには、緯糸は可能な限り細いことが好ましい。もっとも、偏光繊維1の強度と緯糸の強度が余りに異なると織布の形成が困難となる。このため、緯糸の直径は、1〜30μm程度が好ましい。緯糸の断面形状は、特に制限はないが、作り易さの観点から、楕円形が好ましい。織布の織り方としては、平織り、朱子織りなどの他、偏光繊維1を何本か束ねて織る方法でもよい。これらの織り方で形成された織布を用いると、偏光子3の偏光特性の低下を防止できる。
【0056】
また、海部分11中に含まれる二色性色素が異なる偏光繊維1を数種類作製し、これら偏光繊維1を組み合わせて偏光子3を作製してもよい。このように作製することによって、偏光の吸収波長を容易に調整でき、偏光子3を透過する偏光の色調を容易に調整できる。例えば、次に示す二色性色素を海部分11に含有する偏光繊維1を用いることにより、偏光の吸収率が可視光領域全域で略一定な偏光子3を作製できる。まず、二色性色素として、赤色系(R)、緑色系(G)、青色系(B)の色素を海成分に含有する偏光繊維1を作製する。次に、偏光の吸収率が可視光領域全域で一定となるように各偏光繊維1を組み合わせて偏光子3を作製する。例えば、赤色系(R)の色素として、コンゴレッド(キシダ化学株式会社製)、緑色系(G)の色素としてダイレクトグリーン85(三菱化学株式会社製)、青色系(B)の色素としてGREY−B(クラリアント・ジャパン株式会社製)を使用した場合には、各色素の割合を重量比でR:G:B=30〜50:40〜60:10〜30となるように各偏光繊維1を組み合わせることが好ましい。
【0057】
[偏光板]
【0058】
図4に示すように、本実施形態の偏光板5は、偏光子3の両面に保護フィルム4(保護膜)を積層した構造を有する。
偏光子3は、偏光繊維1が等方性材料2により包埋されている。
【0059】
上記偏光板5に用いられる保護フィルム4は、透明なフィルムが好ましい。さらに、保護フィルム4は、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れたフィルムが好ましい。保護フィルム4としては、例えば、ポリエチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエチレン系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン重合体(AS)等のスチレン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー等のフィルムが挙げられる。また、保護フィルム4としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するエチレン・プロピレン重合体等のポリオレフィン系のポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アクリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;シリコーン等のフィルムが挙げられる。
【0060】
保護フィルム4は、偏光特性や耐久性等の点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーのフィルムが好ましい。特に、保護フィルム4は、トリアセチルセルロースフィルムが好適である。
【0061】
保護フィルム4の厚みは、適宜に決定し得る。保護フィルム4の厚みは、一般には強度や取り扱い性、薄膜性等の観点から、1〜500μm程度であり、好ましくは5〜200μmである。
【0062】
また、保護フィルム4は、できるだけ色付がないことが好ましい。このような保護フィルム4は、例えば、厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmであるフィルムが挙げられる。なお、前記厚み方向の位相差値(Rth(590))は、Rth(590)=(nx−nz)×dで求められる。但し、「590」は、測定波長を表し、「nx」は、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を表し、「nz」は、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、「d」は、フィルムの厚みを表す。
保護フィルム4の厚み方向の位相差値は、更に好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmである。
【0063】
なお、上記実施形態にかかる偏光板5は、以下のように変更してもよい。
【0064】
図4において、偏光板5は、偏光子3の両面に保護フィルム4が積層されているが、この構造に限定されず、例えば、偏光子3の一方の面のみに保護フィルム4が積層されていてもよい。特に、偏光子3の他方の面に他の光学特性を有する他のフィルムを積層して偏光板5を作製する場合には、偏光子3の他方の面に保護フィルムを積層しなくてもよい。このように、保護フィルム4を偏光子3の一方の面のみに設ける(換言すると、保護フィルム4を偏光子3の他方の面に設けない)ことによって、比較的薄い偏光板5を提供できる。
【0065】
[積層光学フィルム]
【0066】
図5に示すように、本実施形態の積層光学フィルム7は、一方の面のみに保護フィルム4を積層した偏光子3の他方の面に、光学フィルム6を積層した構造を有する。
偏光子3は、偏光繊維1が等方性材料2により包埋されている。
【0067】
光学フィルム6としては、特に限定されず、必要に応じて任意のものが用いられ得る。光学フィルム6としては、例えば、位相差フィルム、光拡散層などが挙げられる。光学フィルム6は、同一または異なるものを組み合わせて複数積層してもよい。
【0068】
[画像表示装置]
【0069】
本発明の画像表示装置は、上記偏光子、偏光板、積層光学フィルムから選ばれる少なくとも何れか1種を備える。該画像表示装置としては、代表的には液晶表示装置が挙げられるが、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどでもよい。
図6に示すように、本実施形態の画像表示装置30は、液晶表示装置である。該液晶表示装置は、2枚の偏光板7の間に液晶セル9を挟み込んだ液晶パネルと、液晶パネルの一方の側に設けられたバックライトユニット80と、を備える。なお、液晶セル9は、2枚のガラス板の間に液晶材料が封入された構造である。液晶セル9は、ガラス板に印加することにより、液晶材料の配列が変化し、光を選択的に透過させる。
【0070】
上記バックライトユニット80は、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85と、を少なくとも備える。なお、図6に例示した反射フィルム82などの光学部材は、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モードなどに応じて、その一部が省略され得るか、または、他の光学部材に代替され得る。
【0071】
なお、上記実施形態にかかる液晶表示装置(画像表示装置)は、以下のように変更してもよい。
【0072】
上記実施形態の液晶表示装置は、液晶パネルの背面から光を照射して画面を見る透過型であるが、液晶表示装置は、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る反射型であってもよい。あるいは、上記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であってもよい。
【0073】
また、バックライトユニットは、サイドライト方式であってもよい。サイドライト方式が採用される場合、バックライトユニットは、上記の構成に加え、さらに、導光板と、ライトリフレクターと、を少なくとも備える。
【実施例】
【0074】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において、単位として記載した「%」は、全て重量パーセントである。
【0075】
[実施例1]
(偏光繊維A)
以下の島成分材料と海成分材料とを、海島複合繊維紡糸用ノズルを用いて押し出し成形することによって、偏光繊維Aを作製した。
【0076】
島成分材料は、融点138℃、メルトフローインデックス25g/10minのプロピレン過多のエチレン・プロピレン共重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名「OX1066A」)を用いた。
【0077】
海成分材料は、融点181℃、メルトフローインデックス12g/10minのエチレンビニルアルコール共重合体(日本合成化学株式会社製、商品名「ソアノールDC3212B」)の樹脂ペレットを、二色性色素(キシダ化学株式会社製、商品名「コンゴレッド」)の2%水溶液に、90℃で4時間浸漬した後、水洗し、該ペレットを真空乾燥機にて十分乾燥したものを用いた。
【0078】
海島複合繊維紡糸用ノズルは、繊維断面あたりの島数が12の海島複合繊維紡糸用ノズルを用いた。
上記島成分材料と海成分材料とを重量比5:5で、前記海島複合繊維紡糸用ノズルを用いて溶融押し出し成形し、引取り速度600m/minで引き取ることによって、偏光繊維を得た。このときの島成分の紡糸温度は、270℃、海成分の紡糸温度は、230℃とした。また、得られた偏光繊維は、直径25μmであった。この偏光繊維を70℃の温水中で2.5倍に延伸し、直径約15μmの偏光繊維Aを得た。
【0079】
偏光繊維Aは、島数が12(島数が2以上)であるので、偏光繊維中を透過する長手方向に平行な偏光が、多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を起しやすい。このため、偏光が、偏光繊維Aの海成分に吸収される可能性が一層高い。
【0080】
この偏光繊維Aの島部分の直径は、約1.5μmであった。かかる偏光繊維Aは、島の長径が0.1μm以上であるので、可視光の波長よりも長い。このため、偏光の散乱が生じ得る。また、かかる偏光繊維Aは、島の長径が8.0μm以下であるので、長径が大きすぎることに起因する弊害が抑制される。即ち、かかる偏光繊維Aは、偏光繊維1本あたりの島数が相対的に少なくなることによって、偏光が多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を起こし難くなる弊害や、島の存在分布がまばらになることによって透過率のムラが生じやすくなる弊害が抑制される。
【0081】
また、上記偏光繊維Aの、長手方向に垂直な方向の海成分の屈折率ns1は、1.51であった。長手方向の海成分の屈折率ns2は、1.54であった。
【0082】
更に、Δn及びΔnを求めるため、上記島成分材料のみからなる繊維を作製した。
すなわち、上記島成分材料のみをモノフィラメント用ノズルを用いて紡糸したこと以外は、上記と同様の方法によって直径約100μmの繊維を作製した。この繊維の屈折率を測定した。その長手方向に垂直な方向の島成分(繊維)の屈折率ni1は、1.50であった。また、長手方向の島成分(繊維)の屈折率ni2は、1.51であった。
【0083】
従って、Δn=|ns1−ni1|=|1.51−1.50|=0.01である。長手方向に垂直な方向の屈折率の差Δnが、0.02以下であるので、偏光繊維A中の海成分と島成分の界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。そのため、長手方向に垂直な方向の偏光は、海成分で吸収されることなく、直進し、透過する。
【0084】
また、Δn=|ns2−ni2|=|1.54−1.51|=0.03である。長手方向の屈折率の差Δnが、0.03以上であるので、偏光繊維A中の海成分と島成分の界面において、長手方向に平行な偏光が、反射、拡散あるいは散乱し易くなる。そのため、偏光繊維Aは、島部分を有さない従来の偏光繊維に比して、偏光性能が一層大きくなる。
【0085】
ここで、上記直径及び屈折率の測定方法を記載する。実施例1以外の実施例および比較例においても同様の方法で測定を行なった。
【0086】
偏光繊維の直径および島成分の直径は、株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡(製品名「S−3000N」)を用いて測定した。
【0087】
屈折率は、常温(25℃)における545nmの波長光で、屈折率調整液を用いてベッケ線法によって測定した。
【0088】
[実施例2]
(偏光繊維B)
二色性色素として、三菱化学株式会社製の商品名「ダイレクトグリーン85」を用いたこと以外は、実施例1と同様の材料、製造方法によって偏光繊維Bを製造した。実施例2の製造方法等は、実施例1と同様であるので、その説明は省略する。また、直径、島数、屈折率の測定結果も同じであるため、その説明も省略する。
【0089】
[実施例3]
(偏光繊維C)
以下の島成分材料と海成分材料とを、芯鞘構造繊維紡糸用ノズルを用いて押し出し成形することによって、偏光繊維Cを作製した。なお、芯鞘構造繊維紡糸用ノズルとは、島数が1つの海島複合繊維紡糸用ノズルである。また、以下、特に必要でない限り「芯成分」という用語の代わりに「島成分」の語を、「鞘成分」という用語の代わりに「海成分」の語を使用する。
【0090】
島成分材料は、融点161℃、メルトフローインデックス26g/10minの結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA03A」)を用いた。
【0091】
海成分材料は、実施例1の海成分材料と同じ材料を用いた。
【0092】
上記島成分材料と海成分材料とを重量比3:7で、芯鞘構造繊維紡糸用ノズルを用いて溶融押し出し成形し、引取り速度600m/minで引き取ることによって、偏光繊維を得た。このときの島成分の紡糸温度は、230℃、海成分の紡糸温度は、230℃とした。また、得られた偏光繊維は、直径25μmであった。この偏光繊維を70℃の温水中で2.5倍に延伸し、直径約15μmの偏光繊維Cを得た。
【0093】
この偏光繊維Cの島部分の直径は、約7.0μmであった。かかる偏光繊維Cは、島の長径が0.1μm以上であるので、可視光の波長よりも長い。このため、偏光の散乱が生じ得る。また、かかる偏光繊維Cは、島の長径が8.0μm以下であるので、長径が大きすぎることに起因する上述の弊害が抑制される。
【0094】
また、上記偏光繊維Cの、長手方向に垂直な方向の海成分の屈折率ns1は、1.51であった。長手方向の海成分の屈折率ns2は、1.54であった。
【0095】
更に、Δn及びΔnを求めるため、上記島成分材料のみからなる繊維を作製した。
すなわち、上記島成分材料のみをモノフィラメント用ノズルを用いて紡糸したこと以外は、上記と同様の方法によって直径約100μmの繊維を作製した。そして、この繊維の屈折率を測定した。その長手方向に垂直な方向の島成分(繊維)の屈折率ni1は、1.49であった。長手方向の島成分(繊維)の屈折率ni2は、1.50であった。
【0096】
従って、Δn=|ns1−ni1|=|1.51−1.49|=0.02である。長手方向に垂直な方向の屈折率の差Δnが、0.02以下であるので、偏光繊維C中の海成分と島成分の界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。そのため、長手方向に垂直な方向の偏光は海成分で吸収されることなく、直進し、透過する。
【0097】
また、Δn=|ns2−ni2|=|1.54−1.50|=0.04である。長手方向の屈折率の差Δnが、0.03以上であるので、偏光繊維C中の海成分と島成分の界面において、長手方向に平行な偏光が、反射、拡散および散乱しやすくなる。そのため、偏光繊維Cは、島部分を有さない従来の偏光繊維に比して、偏光性能が一層大きくなる。
【0098】
[実施例4]
(偏光板D)
以下の等方性材料と偏光繊維Aを有する偏光子の両面に、保護膜として厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが積層された、偏光板Dを作製した。
等方性材料は、硬化後の屈折率nが1.51となる透明液状エポキシ樹脂を用いた。具体的には、該透明液状エポキシ樹脂は、脂環式エポキシ樹脂100重量部と、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸124重量部と、トリ−n−ブチルホスホニウムブロマイド1重量部とを含有している。
【0099】
実施例1で作製した偏光繊維(偏光繊維A)を、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム上に平行に引き揃えて並べた。次いで、前記偏光繊維を包埋するように、上記等方性材料をコーティングし、更にその上部より気泡が入らないように厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムを載せ、2枚のTACフィルムで挟み込んだ。その後、100℃で5時間硬化処理して、偏光板Dを得た。トリアセチルセルロースフィルムに挟まれた部分(即ち偏光子)の厚みは、70μmであった。また、偏光繊維100重量部に対する等方性材料の使用量は、100重量部であった。
【0100】
上述のように、使用した等方性材料の屈折率nは、1.51である。実施例1に記載のように、偏光繊維Aの長手方向に垂直な方向の海成分の屈折率ns1は、1.51である。従って、屈折率の差Δn=|ns1−n|=|1.51−1.51|=0.00である。この偏光板Dは、Δnが0.02以下であるので、海成分と等方性材料との界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。よって、偏光板Dが備える偏光子は、長手方向に垂直な方向の偏光を容易に透過させる、透過率が高い偏光子である。
【0101】
[実施例5]
(偏光板E)
等方性材料と偏光繊維Cを有する偏光子の両面に、保護膜として厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが積層された、偏光板Eを作製した。
偏光板Eの製造方法等は、偏光繊維として実施例3で作製した偏光繊維Cを使用したこと以外は、実施例4と同じであるので、その説明は省略する。また、偏光板Dに使用した偏光繊維Aと偏光板Eに使用した偏光繊維Cとは、その海成分が同一である。偏光板Dに使用した等方性材料と偏光板Eに使用した等方性材料とは、同じである。従って、偏光板Dが備える偏光子と偏光板Eが備える偏光子とは、屈折率の差Δnが同じであり、共に透過率が高い偏光子である。
【0102】
[実施例6]
(偏光板F)
等方性材料と偏光繊維Aと偏光繊維Bを有する偏光子の両面に、保護膜として厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが積層された、偏光板Fを作製した。
【0103】
偏光板Fの製造方法等は、偏光繊維として上記偏光繊維Aと上記偏光繊維Bとを体積比で48:52となるように使用したこと以外は、実施例4と同じであるので、その説明は省略する。なお、偏光繊維Aと偏光繊維Bとは偏りが生じないように均等に分散させた。
【0104】
また、偏光繊維Aと偏光繊維Bとは、二色性色素を除いて海成分が同一である。偏光板Dに使用した等方性材料と偏光板Fに使用した等方性材料とは、同じである。従って、偏光板Dが備える偏光子と偏光板Fが備える偏光子とは、屈折率の差Δnが同じであり、共に透過率が高い偏光子である。
【0105】
[実施例7]
(偏光板G)
等方性材料と織布を有する偏光子の両面に、保護膜として厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが積層された、偏光板Gを作製した。
偏光板Gが備える偏光子は、偏光繊維Aと緯糸とを用いて織布を形成し、この織布を、実施例4と同じ等方性材料により包埋することにより作製した。
【0106】
偏光板Gに使用した織布は、下記経糸と緯糸とを平織りした織布である。
経糸は、実施例1で作製した偏光繊維Aを50本束ねたものを用いた。
緯糸は、偏光繊維Aの海成分として用いたエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂ペレットを溶融紡糸した繊維を用いた。ただし、緯糸に用いた樹脂ペレットは、二色性色素を含有していない。緯糸の直径は、50μmである。
【0107】
これら経糸と緯糸とを用いて形成した織布を用いたこと以外は、実施例4と同様にして偏光板Gを得た。
【0108】
ここで、上記緯糸と偏光繊維Aの海成分とは、二色性色素を除いて同一成分である。偏光板Dに使用した等方性材料と偏光板Gに使用した等方性材料とは、同じである。従って、偏光板Dが備える偏光子と偏光板Gが備える偏光子とは、屈折率の差Δnが同じであり、共に透過率が高い偏光子である。
【0109】
[比較例1]
【0110】
(偏光板H)
高透過率及び高偏光度のヨウ素染色PVA系偏光板(日東電工株式会社製、商品名「NPF−SEG1425DU」)を用いた。
【0111】
[比較例2]
【0112】
(偏光繊維I)
まず、海島構造を有しない偏光繊維を作製した。
【0113】
比較例2の偏光繊維Iの作製には、実施例1の偏光繊維Aの海成分材料と同じ材料を用いた。すなわち、偏光繊維Iの材料は、融点181℃、メルトフローインデックス12g/10minのエチレンビニルアルコール共重合体(日本合成化学株式会社製、商品名「ソアノールDC3212B」)の樹脂ペレットを、二色性色素(キシダ化学株式会社製、商品名「コンゴレッド」)の2%水溶液に、90℃で4時間浸漬した後、水洗し、該ペレットを真空乾燥機にて十分乾燥したものを用いた。
【0114】
同材料をモノフィラメント紡糸用ノズルを用いて溶融押し出し成形し、引取り速度600m/minで引き取ることによって、偏光繊維を得た。このときの紡糸温度は、230℃とした。また、得られた偏光繊維は、直径40μmであった。更に、この偏光繊維を70℃の温水中で2.5倍に延伸し、直径約25μmの偏光繊維Iを得た。偏光繊維Iの長手方向に垂直な方向の屈折率np1は、1.50であった。偏光繊維Iの長手方向の屈折率np2は、1.54であった。
【0115】
(複屈折繊維)
二色性色素で染色しなかったこと以外は、上記偏光繊維Iで用いた樹脂ペレットと同様のEVA樹脂ペレットを用いた。この無染色の樹脂ペレットを、モノフィラメント紡糸用ノズルを用いて同様に溶融押し出し成形し、引取り速度600m/minで引き取ることによって、複屈折繊維を得た。このときの紡糸温度は、230℃とした。この複屈折繊維を90℃の温水中で延伸し、直径約10μmの複屈折繊維を得た。複屈折繊維の長手方向に垂直な方向の屈折率no1は、1.50であった。複屈折繊維の長手方向の屈折率no2は、1.54であった。
【0116】
(偏光板J)
上記偏光繊維Iと上記複屈折繊維とを有する偏光子の両面に、保護膜として厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルムが積層された、偏光板Jを作製した。
【0117】
偏光板Jの製造方法は、上記偏光繊維Iと上記複屈折繊維とを体積比で4:5となるように使用したこと以外は、実施例4と同じであるので、その説明は省略する。なお、上記偏光繊維Iと上記複屈折繊維とは偏りが生じないように均等に分散させた。
【0118】
上述のように等方性材料の屈折率nは、1.51である。偏光繊維Iの長手方向に垂直な方向の屈折率np1は、1.50である。よって、屈折率の差Δn=|np1−n|=|1.50−1.51|=0.01である。即ち、偏光板Jは、Δnが0.02以下であるため、偏光繊維Iと等方性材料との界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。
【0119】
また、複屈折繊維の長手方向に垂直な方向の屈折率no1も1.50であるので、屈折率の差Δn’=|no1−n|=|1.50−1.51|=0.01である。即ち、偏光板Jは、Δn’が0.02以下であるため、複屈折繊維と等方性材料との界面において、長手方向に垂直な方向の偏光が、反射、拡散あるいは散乱することを抑制できる。
【0120】
一方、上述のように、複屈折繊維の長手方向の屈折率no2は、1.54であるため、Δn=|no2−n|=|1.54−1.51|=0.03である。偏光板Jは、長手方向の屈折率の差Δnが0.03以上であるので、複屈折繊維と等方性材料との界面において、長手方向に平行な偏光が、反射、拡散あるいは散乱しやすくなる。
【0121】
なお、偏光板Jは、偏光繊維Iと複屈折繊維とを等方性材料により包埋するようにコーティングすることによって作製されている。かかる偏光板Jは、偏光繊維Iの界面と複屈折繊維の界面が直接に接していないため、Δn=|np1−no1|、Δn=|np2−no2|、Δn=|np1−n|を算出する意味は薄い。そこで、上述のように偏光繊維Iおよび複屈折繊維と等方性材料との界面について考察した。
【0122】
[評価方法]
【0123】
(偏光繊維の偏光機能)
実施例1〜3および比較例2の偏光繊維(即ち、偏光繊維A,B,CおよびI)の偏光機能を調べた。具体的には、偏光繊維の長手方向に垂直な方向の直線偏光を市販の偏光板を用いて取り出し、該直線偏光を各偏光繊維に照射し、各偏光繊維を透過した光を目視観察した。次に、偏光繊維の長手方向に平行な直線偏光を同様に照射し、各偏光繊維を透過した光を目視観察した。
【0124】
(偏光板の透過率、偏光度)
実施例4〜7および比較例1〜2の偏光板(即ち、偏光板D,E,F,G,HおよびJ)について、積分球付分光光度計(日立製作所製、製品名「U−4100」)を用いて、波長550nmでの透過率及び偏光度を算出した。
【0125】
(偏光板の色相)
実施例4〜7および比較例1〜2の偏光板について、目視によって各偏光板の色付きの程度を観察した。
【0126】
(偏光板のムラ)
実施例4〜7および比較例1〜2の偏光板を、5cm(断面方向)×20cm(長手方向または延伸方向)に手芸用ピンキングはさみで切断し、これを厚み0.7mmのガラス板に貼り付けてサンプルとした。なお、ピンキングはさみで切断すると、通常、次に述べるクラックがより生じやすくなる。同じ2枚のサンプルを直交ニコル状態にして、高輝度のバックライト上で目視観察し、各サンプル(偏光板)にムラが生じていないかを確認した。
【0127】
(偏光板のクラック)
上記各サンプルを、−30℃で60分冷却した後80℃で60分加熱する冷熱サイクル試験を100サイクル行なった。その後、同じ2枚のサンプルを直交ニコル状態にして、各サンプル(偏光板)のクラックを目視観察した。
【0128】
[評価結果及び考察]
【0129】
(偏光繊維の偏光機能)
長手方向に垂直な方向の直線偏光を各偏光繊維に照射したときには、各偏光繊維を透過した光は、いずれの偏光繊維についても略無色透明であった。また、長手方向に平行な直線偏光を照射したときには、各偏光繊維を透過した光は、いずれの偏光繊維についても二色性色素の吸収波長に従って着色していた。従って、偏光繊維A,B,CおよびIのいずれの偏光繊維も、偏光機能を発現していることが判る。
【0130】
(偏光板の透過率、偏光度、ムラ及びクラック)
偏光板の透過率、偏光度、ムラおよびクラックの測定結果を表1に示す。なお、ムラおよびクラックについては、それらが発生している場合を「×」で、それらが発生していない場合を「○」で示した。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例4〜7と比較例1とを比較すると、比較例1はクラックを生じている。従って、比較例1の偏光板Hは、過酷な使用条件下(冷熱サイクル試験を100サイクル)で、クラックが生じ得ることが判った。偏光繊維を使用した偏光板は、比較例2を含め、クラックは生じていない。
【0133】
実施例4〜7と比較例2とを比較すると、比較例2は、実施例1と同じ二色性色素を使用し且つ透過率も略同等であるが、実施例4〜7に比べて偏光度が低い。この原因としては、次のようなことが推測される。まず、比較例2では、偏光板作製時、偏光繊維と複屈折繊維とを均等かつ平行に配置することが困難であることが挙げられる。これらを均等かつ平行に配置できないと、繊維の長手方向に平行な偏光と垂直な方向の偏光との透過率の差が大きくならないため、偏光度が低下する。次に、偏光繊維および複屈折繊維の加工性の問題が挙げられる。比較例2では、偏光繊維および複屈折繊維を別々に作製するので、十分に細い繊維を得ることができず、両繊維の界面における散乱を効果的に利用できなかったと推測される。
【0134】
実施例4と実施例5とを比較すると、偏光繊維に含まれる二色性色素が同一であるにもかかわらず、透過率及び偏光度の何れも、偏光板Eに比べて、偏光板Dがわずかに良い。これは、偏光板Eは、偏光繊維1本あたりの島数が1つであるのに対して、偏光板Dは、偏光繊維1本あたりの島数が12であるためと考えられる。即ち、偏光板Dは、島数が2以上であるので、偏光繊維中を透過する長手方向に平行な偏光が、多重反射、多重拡散あるいは多重散乱を起しやすい。このため、前記偏光が、偏光板Dの海成分に吸収される可能性が一層高くなったためと考えられる。
【0135】
実施例4と実施例7とを比較すると、同一の偏光繊維Aを使用しているにもかかわらず、透過率及び偏光度の何れも、偏光板Gに比べて、偏光板Dがわずかに良い。偏光板Dが備える偏光子は、偏光繊維Aを並べているため、偏光繊維Aが平行に配置されている。一方、偏光板Gが備える偏光子は、偏光繊維Aを織布に形成したため、偏光繊維Aが十分に平行に配置しなかったことが原因と考えられる。もっとも、偏光板Gの偏光度は、比較例2の偏光度よりも良い。なお、偏光繊維Aを平織りの織布に形成すれば、偏光子作製時の作業性が良いため、偏光板Gをより容易に製造できる。
【0136】
(偏光板の色相)
実施例6にかかる偏光板Fは、実施例4、5及び7にかかる偏光板D、E及びGに比して色付が抑制されていることが、目視観察により判った。偏光板Fは、2種類の偏光繊維A及びBを使用している。従って、二色性色素の異なる2種類の偏光繊維を使用することにより、波長による吸光ムラを平準化できることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の偏光繊維は、例えば、偏光子の形成材料として用いることができる。
偏光子に適宜な光学部材が積層することにより、偏光板や積層光学フィルムを提供できる。
偏光子、偏光板、及び積層光学フィルムは、画像表示装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】1つの実施形態にかかる偏光繊維を示す斜視図。
【図2】(a)は、同偏光繊維の長手方向と垂直な面による部分断面図、(b)は、同偏光繊維の部分側面図。
【図3】1つの実施形態にかかる偏光子を示す斜視図。
【図4】1つの実施形態にかかる偏光板を示す部分断面図。
【図5】1つの実施形態にかかる積層光学フィルムを示す部分断面図。
【図6】1つの実施形態にかかる画面表示装置を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0139】
1 偏光繊維
2 等方性材料
3 偏光子
4 保護フィルム
5 偏光板
6 光学フィルム
7 偏光フィルム
9 液晶セル
11 海部分
12 島部分
21 直線偏光
22 直線偏光
30 画像表示装置
80 バックライトユニット
81 光源
82 反射フィルム
83 拡散板
84 プリズムシート
85 輝度向上フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に垂直な断面の形状が海島構造を成すと共に、前記断面の形状が長手方向に連続的に形成され、かつ長手方向に吸収軸を有する偏光繊維であって、
前記海島構造の海部分を形成する樹脂(海成分)が二色性色素を含有し、
前記海島構造の島部分を形成する樹脂(島成分)が透明樹脂である偏光繊維。
【請求項2】
長手方向に垂直な方向の前記島成分の屈折率をni1、長手方向に垂直な方向の前記海成分の屈折率をns1としたときの屈折率の差Δn=|ns1−ni1|が、0.02以下であり、
長手方向の前記島成分の屈折率をni2、長手方向の前記海成分の屈折率をns2としたときの屈折率の差Δn=|ns2−ni2|が、0.03以上0.05以下である請求項1に記載の偏光繊維。
【請求項3】
前記島部分の数が2以上であると共に、各島部分の長径が0.1〜8.0μmである請求項1または2に記載の偏光繊維。
【請求項4】
前記海部分を形成する樹脂が、ポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールの共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光繊維が長手方向に平行に配置または積層される共に、透明な等方性材料により包埋されたシート状の偏光子。
【請求項6】
前記等方性材料の屈折率をn、長手方向に垂直な方向の前記海成分の屈折率をns1としたときの屈折率の差Δn=|ns1−n|が、0.02以下である請求項5に記載の偏光子。
【請求項7】
請求項5または6に記載の偏光子の少なくとも片面に透明な保護膜を備える偏光板。
【請求項8】
請求項5または6に記載の偏光子、または請求項7に記載の偏光板を備える積層光学フィルム。
【請求項9】
請求項5または6に記載の偏光子、請求項7に記載の偏光板、請求項8に記載の積層光学フィルムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを備える画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−24318(P2009−24318A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146424(P2008−146424)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】