説明

偏光解析装置

【課題】検光子を一定の回転速度で回転させ、かつ被計測物の計測を比較的短い時間で行う偏光解析装置を提供する。
【解決手段】照明装置10は被計測物1に光を照射し、撮像手段20は被計測物1からの反射光を受光する。被計測物1と撮像手段20との間には、回転手段22により回転される検光子21が配置される。検光子21の回転角度は角度センサ23が検出する。角度センサ23が規定の回転角度を示す時点で、トリガ手段25が照明装置10と撮像手段20とにトリガ信号を出力し、撮像手段20が被計測物1からの反射光を受光している間に、照明装置10が閃光を発生させる。解析手段24は、照明装置10が閃光を発生させた時点で角度センサ23が検出した検光子21の回転角度と、撮像手段20が受光した光の強度とを用いて反射光の偏光状態を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物に光を照射し、被計測物で反射または被計測物を透過した光の偏光状態を解析することにより、被計測物の物理特性を計測する偏光解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被計測物の膜圧、反射係数、表面粗さ、結晶性などの物理特性を計測するために、被計測物に光を照射するとともに、被計測物で反射された反射光あるいは被計測物を透過した透過光の偏光状態を解析する技術が知られている。この種の技術は、エリプソメトリーと呼ばれている。以下では、被計測物に照射された後の光に関して反射光についてのみ記載するが、この反射光の用語はとくに断りがなければ、被計測物を透過した透過光と読み替え可能である。
【0003】
被計測物で反射された反射光は、検光子を通して光センサで受光される。光センサは、受光強度に応じた出力が得られる構成であればよいが、被計測物を広範囲に亘って同時に計測する場合にはカメラのような撮像手段が用いられる。検光子は、光センサ(撮像手段)が被計測物を見込む光軸の回りに回転可能になっている。
【0004】
被計測物での反射光は偏光であるから、楕円偏光により一般化して扱うことができる。楕円偏光のパラメータは、規定した基準の角度に対する楕円の傾きを表す角度ψと、楕円の長径aおよび短径bとの3個で表される。一方、検光子を通過した光の強度Iは、検光子の回転角度θの関数でもあるから、結局、強度Iは、4個のパラメータa,b,θ,ψを持つ関数fとして表される。すなわち、I=f(a,b,θ,ψ)になる。ここに、直線偏光はb=0の条件で表され、円偏光はa=bの条件で表される。また、関数fの形は既知である。なお、長径aと短径bとの絶対値は、被計測物に照射された光の強度によって変化するが、偏光状態を知るには長径aと短径bとの比(楕円率)がわかればよいから、長径aと短径bとの絶対値は変化してもよい、つまり、被計測物に照射する光の強度は考慮しなくてもよい。
【0005】
したがって、検光子を互いに独立した少なくとも3つの回転角度θに設定した状態で、撮像素子の各画素で受光した強度Iを求めることにより、3個のパラメータψ,a,bが一意に定められる。回転角度θが独立しているとは、2つの回転角度θの差が180°の倍数ではないことを意味する。検光子を少なくとも3つの回転角度θに設定し、それぞれの回転角度θにおける強度Iを上式に当てはめると、3個のパラメータψ,a,bを含む3個の数式が得られるから、未知数であるパラメータψ,a,bを定めることができる。すなわち、反射光の偏光状態が求められ、反射光の偏光状態から被計測物の物理特性を計測することが可能になる。
【0006】
上述したように検光子を回転させ、検光子の回転角度と撮像手段での受光強度との関係から反射光の偏光状態を解析する技術は、回転検光子法と呼ばれており、回転検光子法を実現する構成が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された構成は、検光子をモータにより回転させるとともに、角度センサにより検光子の回転角度を検出している。すなわち、検光子をモータで回転させ、角度センサで検出した検光子の回転角度が所定の角度になった時点で、光センサとしてのイメージセンサの出力をサンプリングし、フレームメモリに記憶させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−58120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、特許文献1に記載された技術は、角度センサが所定の角度になった時点でイメージセンサの出力をサンプリングしている。ここで、イメージセンサの出力をサンプリングするには比較的長い時間を要することから、検光子を一定速度で回転させるとすれば、検光子の回転速度を高速化することは困難である。この問題を解決するには、イメージセンサがサンプリングを行う期間は検光子を停止させるか回転速度を低速にし、他の期間は検光子の回転速度を高速にすることが考えられる。つまり、検光子の回転速度を加減速することが考えられる。
【0009】
イメージセンサでサンプリングを行うために検光子を停止させる場合、検光子の位置決めを行うためにモータを制御する必要がある。すなわち、この動作を採用すると、被計測物の物理特性を計測するために長い時間を要することになる。しかも、検光子の回転と停止とを繰り返すことになるから、モータの負荷が大きくなるという問題がある。検光子の回転速度を低速にする場合は、検光子の位置決めのための制御は不要であるが、回転速度が比較的低速であることから、この場合も計測に長い時間を要することになる。
【0010】
一方、検光子の回転速度を加減速させると、検光子を停止させる場合や検光子を低速度で回転させる場合に比較して、被計測物の計測に要する時間は短縮されるが、モータの負荷が大きくなるという問題が生じる。
【0011】
本発明は、検光子を一定の回転速度で回転させ、かつ被計測物の計測を比較的短い時間で行う偏光解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る偏光解析装置は、上述した目的を達成するために、被計測物に光を照射する照明装置と、被計測物からの光を受光し光の強度に応じて出力が変化する光センサと、被計測物と光センサとの間に配置された検光子と、検光子を光センサの光軸に平行な回転中心の回りで回転させる回転手段と、検光子の回転角度を計測する角度センサと、被計測物からの光を光センサに取り込むタイミングを指示するためのトリガ信号を発生させるトリガ手段と、光センサの出力と角度センサが検出した検光子の回転角度とを用いて被計測物からの光の偏光状態を解析する解析手段とを備え、トリガ手段は、トリガ信号を光センサと照明装置とに与え、光センサが被計測物からの光を取り込んでいる間に、照明装置から被計測物に閃光を照射させ、解析手段は、光センサの出力として光センサがトリガ信号による指示を受けて取り込んだ光に対する出力を用い、検光子の回転角度として照明装置が閃光を発生した時点に角度センサが検出した検光子の回転角度を用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る偏光解析装置は、上述した目的を達成するために、被計測物に光を照射する照明装置と、被計測物からの光を受光し光の強度に応じて出力が変化する光センサと、被計測物と光センサとの間に配置された検光子と、検光子を光センサの光軸に平行な回転中心の回りで回転させる回転手段と、検光子の回転角度を計測する角度センサと、被計測物からの光を光センサに取り込むタイミングを指示するためのトリガ信号を発生させるトリガ手段と、光センサの出力と角度センサが検出した検光子の回転角度とを用いて被計測物からの光の偏光状態を解析する解析手段とを備え、トリガ手段は、トリガ信号を光センサと解析手段とに与え、解析手段は、光センサの出力として光センサがトリガ信号による指示を受けて取り込んだ光に対する出力を用い、検光子の回転角度として被計測物から光を取り込んでいる期間に角度センサが検出した回転角度の平均値を用いることを特徴とする。
【0014】
この偏光解析装置において、トリガ手段は、角度センサの出力が規定された3つの回転角度である時点においてそれぞれトリガ信号を発生し、解析手段は、トリガ信号ごとに得られる光センサの出力と検光子の回転角度とを用いて被計測物からの光の偏光状態を解析することが好ましい。
【0015】
この偏光解析装置において、トリガ手段は、規定された3つの時刻においてそれぞれトリガ信号を発生し、解析手段は、トリガ信号ごとに得られる光センサの出力と検光子の回転角度とを用いて被計測物からの光の偏光状態を解析することが好ましい。
【0016】
この偏光解析装置において、光センサは、2次元格子の格子点に画素が配列された撮像手段であることがさらに好ましい。
【0017】
この偏光解析装置において、解析手段は、撮像手段の画素ごとに得られる濃淡値から被計測物の表面の各部位における面の向きを求めることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成によれば、検光子を一定の回転速度で回転させ、かつ被計測物の計測を比較的短い時間で行うことが可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態を示す概略構成図である。
【図2】同上の構成例を示す概略構成図である。
【図3】同上の原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下に説明する実施形態は、図1に示すように、被計測物1に光を照射する照明装置10と、被計測物1を撮像する撮像手段20と、被計測物1と撮像手段20との間に配置された検光子21とを備える。検光子21は、モータを備える回転手段22を用いて回転駆動される。検光子21は、撮像手段20の光軸と平行な回転中心の回りで回転するように配置される。また、検光子21は、規定した基準の角度に対する回転角度が角度センサ23により計測される。
【0021】
以下では、照明装置10から被計測物1に照射された光の反射光を撮像手段20に入射させる場合についてのみ説明するが、照明装置10から被計測物1に照射された光の透過光を撮像手段20に入射させてもよい。したがって、以下の説明における反射光は、とくに断りがなければ透過光と読み替えることが可能である。
【0022】
回転手段22による検光子21の回転速度は、一定であって回転むらのないことが望ましいが、検光子21の回転角度は角度センサ23により計測されており、回転速度は計測精度に影響しないから、検光子21の回転むらは許容される。
【0023】
照明装置10は、被計測物1に広範囲に亘って光を照射することが可能であれば、どのような構成でもよい。また、照明装置10は、光源からの光を偏光板と四分の一波長板とに通すことによって被計測物1に円偏光を照射する構成、光源からの光を偏光板に通すことによって被計測物1に直線偏光を照射する構成としてもよい。照明装置10に用いる光源は、撮像手段20が撮像している間に光出力が変動することがないよう、直流安定化電源を用いて点灯させるものが好ましい。また、照明装置10は、規定の短時間だけ光を出力して被計測物1に閃光を照射する機能を備える。照明装置10が閃光を発生する場合、発光毎の光量が変化しないように発光量が制御される。
【0024】
角度センサ23は、検光子21の回転角度を検出するロータリエンコーダ、ポテンショメータなどが用いられる。角度センサ23は、検光子21から回転を直接に検出するように配置されるほか、回転手段22のおける回転部分から検光子21の回転を間接的に検出するように配置されていてもよい。
【0025】
撮像手段20は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサのように2次元格子の格子点上に画素が配列された撮像素子を備える。また、撮像手段20は受光光学系を備え、被計測物1からの反射光は受光光学系を通して撮像素子に入射される。この撮像手段20は、画素値を濃淡値とする濃淡画像を生成する。したがって、撮像手段20の各画素の画素値には、被計測物1の表面の場所ごとの反射光の強度が反映される。言い換えると、撮像手段20の画素ごとの画素値は、被計測物1の場所ごとの反射光の偏光状態を反映していることになる。
【0026】
撮像手段20から出力される画素ごとの画素値は解析手段24に入力される。解析手段24は、画素ごとの画素値と検光子21の回転角度との関係を用いて、被計測物1の表面に関して画素に対応する部位の偏光状態を解析する(背景技術を参照)。要するに、偏光状態を決めるパラメータを、被計測物1の部位ごとに求める。
【0027】
背景技術において説明したように、偏光状態を決めるパラメータを求めるには、検光子21が互いに独立した3つの回転角度であるときに、それぞれの回転角度において受光する光の強度を求める必要がある。このことから、撮像手段20による撮像のタイミングを検光子21の回転角度と対応付けることが必要である。そのため、撮像手段20が被計測物1からの反射光を取り込むタイミングを指示するトリガ信号をトリガ手段25によって発生させている。
【0028】
トリガ手段25は、角度センサ23が検出した検光子21の回転角度に基づいてトリガ信号を発生させる構成と、角度センサ23の出力とは無関係に適宜の時刻にトリガ信号を発生させる構成とのいずれかが採用される。
【0029】
角度センサ23の出力を用いるトリガ手段25は、角度センサ23から出力される検光子21の回転角度を用い、互いに独立した3つの回転角度においてトリガ信号を発生させる。つまり、検光子21について3つの回転角度が規定されており、角度センサ23の出力が規定された回転角度を示すときにトリガ信号を発生させる。トリガ信号を発生させる回転角度は、3つの回転角度のうちの2つずつの回転角度の差が180°の倍数でなければ、適宜に設定することが可能である。ただし、計測に要する時間を短縮するには、検光子21が180°回転する期間内に、トリガ信号を3回発生させることが好ましい。
【0030】
一方、角度センサ23の出力を用いないトリガ手段25は、適宜のタイミングでトリガ信号を発生させる。トリガ信号を発生させるタイミングは、検光子21の回転角度の差が180°の倍数にならない範囲で任意であるが、計測に要する時間を短縮するには、検光子21が半周する期間内に、トリガ信号を3回発生させることが好ましい。この技術を採用する場合は、角度センサ23の出力はトリガ手段25に与えないから、図1における角度センサ23とトリガ手段25とを結ぶ線は不要になる。
【0031】
上述したトリガ信号は、照明装置10と撮像手段20とに与えられる。照明装置10にトリガ信号が与えられると、照明装置10は被計測物1に閃光を照射する。すなわち、被計測物1は、照明装置10からの閃光により短時間(たとえば、〜数ms)だけ光が照射される。通常の撮像手段20は、1フレームの画像を得るのに数十msを要するから、被計測物1が照明装置10から閃光を照射される時間は、1フレームの画像を得る時間よりも短くなる。
【0032】
したがって、撮像手段20の周囲光を遮断し、照明装置10による光が照射されている期間の出力のみが撮像手段20から得られるようにしておけば、撮像手段20は、閃光が生じている期間の情報のみを取得することになる。このことから、検光子21が比較的高速で回転していても、撮像手段20において被計測物1の情報を取得している期間における検光子21の回転量が微小になる。つまり、撮像手段20で得られる出力と、検光子21の回転角度とが精度よく対応付けられ、被計測物1による反射光の偏光状態を精度よく計測することが可能になる。なお、撮像手段20に光が入射する時間が微小になるから、撮像手段20から十分な大きさの出力が得られるように、照明装置10の光出力は比較的大きくしておく必要がある。
【0033】
上述したように、検光子21の回転角度が所定の角度になったタイミングと、時刻によって定めたタイミングとのいずれかで、トリガ手段25からトリガ信号が出力され、照明装置10からの閃光が被計測物1に照射される。したがって、撮像手段20には被計測物1による偏光状態を反映した反射光が、閃光の生じている微小時間だけ入射する。
【0034】
撮像手段20に反射光が入射する微小時間における検光子21の回転角度の変化は微小であるから、解析手段24において検光子21の回転角度が精度よく特定されることになる。その結果、解析手段24において、被測定物1の物理特性が反映された正確な偏光状態が求められる。また、上述した構成を採用すれば、撮像手段20が被計測物1からの反射光を取得する時間が、1フレームの画像を撮像する時間よりも短くなる。そのため、検光子21の回転速度を低速にすることや、検光子21の回転速度を加減速することが不要であって、計測に要する時間が短くなる。また、検光子21の回転速度に回転むらがあったとしても偏光状態の計測精度には影響しない。
【0035】
以下に、偏光を用いて被計測物1の表面状態を計測する技術の一例を説明する。図2に示す例では、被計測物1を図示しないテーブル上に配置してあり、テーブルの上方に撮像手段20を配置してある。すなわち、撮像手段20は、テーブル上面の法線方向と光軸が平行になるように配置してある。被計測物1は撮像手段20の光軸上に配置される。
【0036】
照明装置10は、下面が半球状に凹んだ発光面を有し、撮像手段20の光軸の周囲の全周に亘って被計測物1に斜め上方から光を照射する。また、照明装置10の発光面は撮像手段20の光軸を囲むように配置される。照明装置10は、撮像手段20の視野を遮らないように円形に開口する開口窓11を備える。したがって、照明装置10はリング照明のように、被計測物1を全周に亘って均等に照明する。
【0037】
すなわち、照明装置10は、被計測物1に対して斜め上方から均等に光を照射し、撮像手段20は、照明装置10に形成された開口窓11を通して被計測物1からの反射光を受光する。開口窓11と撮像手段20との間には検光子21が配置される。検光子21は、撮像手段20の光軸と平行な回転中心の回りで回転可能であって、回転手段22により回転駆動される。
【0038】
ところで、図2に示す構成例では、照明装置10は、重ねて配置された偏光板と四分の一波長板(図示せず)とを備えており、偏光板を通して直線偏光になった光を四分の一波長板に通すことによって円偏光の光を生成し、被計測物1に円偏光の光を照射する。被計測物1に円偏光の光を照射すると、撮像手段20に入射する光は被計測物1の表面の向きに応じたパラメータを持つ楕円偏光になる。楕円偏光のパラメータは、背景技術において説明したように、楕円の長径および短径(または、楕円率)、基準の角度に対する楕円の傾きを表す角度である。したがって、検光子21の回転角度と撮像手段20の各画素ごとの濃淡値との関係を用いると、撮像手段20の各画素に対応した被計測物1の表面の各部位の向きを定量的に計測することが可能になる。
【0039】
いま、図3に示すように、被計測物1の表面において撮像手段20の各画素に対応する範囲としての小領域Snを規定し、小領域Snの範囲では被計測物1の表面を平面とみなす。以下では、小領域Snの法線方向Dnが撮像手段20の光軸Axに対してなす角度をφ(傾斜角)で表し、小領域Snの法線をテーブル(図示せず)の表面に平行な基準平面PLに投影した直線が当該面内の基準の角度に対してなす角度をω(方位角)で表す。
【0040】
基準平面PLは、撮像手段20の撮像面にも平行になる。傾斜角φは、撮像手段20に向かう向きを0°とし、被計測物1に向かう向きを180°とする。また、方位角ωは、撮像手段20の画素配列における水平方向をx方向、垂直方向をy方向とするとき、x軸の正の向きを0°とし、x軸の負の向きを180°とする。なお、図3に示す座標系は、右手系であり、撮像手段20の光軸Axと基準平面PLとの交点を原点とする。
【0041】
上述のように、傾斜角φと方位角ωとを規定した場合、被計測物1について計測可能な範囲は、傾斜角φについては最大で0〜90°であり、方位角ωについては最大で0〜180°になる。ここに、傾斜角φの制限は、傾斜角φが90°以上の部位が撮像手段20からは死角であって視野外になることによって生じる。また、方位角ωの制限は、検光子21が2回回転対称であることによって生じる。つまり、検光子21は、楕円偏光における楕円の角度を0〜180°の範囲でのみ区別できるからである。
【0042】
図3に示す構成では、傾斜角φと方位角ωとを求めるだけでは、傾斜角φが等しく方位角ωが180°異なっている小領域Snを区別することができない。すなわち、小領域Snに関して得られる情報量が不足している。この情報量を増加させるには、撮像手段20の光軸Axに対するテーブルの傾きを既知の角度だけ変化させて、傾斜角φおよび方位角ωを計測すればよい。テーブルの傾きを変更すれば、傾斜角φが等しいことによって区別できなかった小領域Snが異なる傾斜角φになるから、結果的に小領域Snの区別が可能になり、すべての小領域Snについて傾斜角φと方位角ωとを求めることが可能になる。すなわち、被計測物1の表面の各部位を形成している小領域Snの向きが計測される。小領域Snの向きの計測により、被計測物1の表面粗さなどが計測される。また、小領域Snの連続性に着目すれば、被計測物1の表面の三次元形状を推定することも可能になる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態1は照明装置10が被計測物1に閃光を照射し、閃光が生じている微小時間だけ撮像手段20に光を入射させることによって、検光子21の回転角度を精度よく特定する構成を採用した。これに対して、本実施形態は、被計測物1からの反射光が撮像手段20に入射する期間(つまり、露光期間)を一定にし、撮像手段20の露光期間における検光子21の回転角度の平均値を、検光子21の回転角度として用いる。他の構成は実施形態1と同様であるから、図1を参照して説明する。ただし、本実施形態の構成は、照明装置10は閃光を発生しないから、図1におけるトリガ手段25と照明装置10とを結ぶ線は不要になる。
【0044】
撮像手段20が被計測物1からの反射光を取り込むタイミングは、実施形態1と同様に、トリガ手段25から出力されるトリガ信号によって定められる。また、露光期間は撮像手段20を駆動するクロック信号によって定められる。たとえば、撮像手段20は、トリガ信号が入力された後のクロック信号の最初の立ち上がりから60分の1秒間を露光期間とする。また、解析手段24は、露光開始と露光終了とのタイミングをトリガ信号とクロック信号とにより認識し、露光開始と露光終了との時点で角度センサ23により得られた検光子21の回転角度の平均値を求める。解析手段24は、求めた平均値を検光子21の回転角度とみなし、撮像手段20が露光期間において取り込んだ反射光の強度(受光量)に対応付けることによって偏光状態を求める。
【0045】
本実施形態は、検光子21の回転角度を求める技術において実施形態1と相違するが、他の構成は実施形態1と同様である。トリガ手段25からトリガ信号を発生させるタイミングも実施形態1と同様に、角度センサ23で検出される検光子21の回転角度に基づいて規定する場合と、適宜に設定した時刻で規定する場合とがある。
【0046】
また、本実施形態では、閃光を用いないから、照明装置10の最大発光強度を実施形態1よりも小さくすることが可能になる。あるいはまた、実施形態1と同じ光出力の照明装置10を用いた場合、偏光状態の1回の計測の間に被計測物1から撮像手段20に入射する反射光の光量が実施形態1よりも大きくなる。その結果、反射光の入射強度の差が撮像手段20の出力差に反映されやすくなり、偏光状態の計測精度が高くなる。さらに、撮像手段20の露光期間を一定に保つ制御は、発生している時間が微小である閃光の強度を発生毎に等しくする制御よりも容易になる。
【符号の説明】
【0047】
1 被計測物
10 照明装置
20 撮像手段(光センサ)
21 検光子
22 回転手段
23 角度センサ
24 解析手段
25 トリガ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物に光を照射する照明装置と、前記被計測物からの光を受光し光の強度に応じて出力が変化する光センサと、前記被計測物と前記光センサとの間に配置された検光子と、前記検光子を光センサの光軸に平行な回転中心の回りで回転させる回転手段と、前記検光子の回転角度を計測する角度センサと、前記被計測物からの光を前記光センサに取り込むタイミングを指示するためのトリガ信号を発生させるトリガ手段と、前記光センサの出力と前記角度センサが検出した前記検光子の回転角度とを用いて前記被計測物からの光の偏光状態を解析する解析手段とを備え、前記トリガ手段は、前記トリガ信号を前記光センサと前記照明装置とに与え、前記光センサが前記被計測物からの光を取り込んでいる間に、前記照明装置から前記被計測物に閃光を照射させ、前記解析手段は、前記光センサの出力として前記光センサが前記トリガ信号による指示を受けて取り込んだ光に対する出力を用い、前記検光子の回転角度として前記照明装置が前記閃光を発生した時点に前記角度センサが検出した前記検光子の回転角度を用いることを特徴とする偏光解析装置。
【請求項2】
被計測物に光を照射する照明装置と、前記被計測物からの光を受光し光の強度に応じて出力が変化する光センサと、前記被計測物と前記光センサとの間に配置された検光子と、前記検光子を光センサの光軸に平行な回転中心の回りで回転させる回転手段と、前記検光子の回転角度を計測する角度センサと、前記被計測物からの光を前記光センサに取り込むタイミングを指示するためのトリガ信号を発生させるトリガ手段と、前記光センサの出力と前記角度センサが検出した前記検光子の回転角度とを用いて前記被計測物からの光の偏光状態を解析する解析手段とを備え、前記トリガ手段は、前記トリガ信号を前記光センサと前記解析手段とに与え、前記解析手段は、前記光センサの出力として前記光センサが前記トリガ信号による指示を受けて取り込んだ光に対する出力を用い、前記検光子の回転角度として前記被計測物から光を取り込んでいる期間に前記角度センサが検出した回転角度の平均値を用いることを特徴とする偏光解析装置。
【請求項3】
前記トリガ手段は、前記角度センサの出力が規定された3つの回転角度である時点においてそれぞれ前記トリガ信号を発生し、前記解析手段は、前記トリガ信号ごとに得られる前記光センサの出力と前記検光子の回転角度とを用いて前記被計測物からの光の偏光状態を解析することを特徴とする請求項1又は2記載の偏光解析装置。
【請求項4】
前記トリガ手段は、規定された3つの時刻においてそれぞれ前記トリガ信号を発生し、前記解析手段は、前記トリガ信号ごとに得られる前記光センサの出力と前記検光子の回転角度とを用いて前記被計測物からの光の偏光状態を解析することを特徴とする請求項1又は2記載の偏光解析装置。
【請求項5】
前記光センサは、2次元格子の格子点に画素が配列された撮像手段であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光解析装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記撮像手段の画素ごとに得られる濃淡値から前記被計測物の表面の各部位における面の向きを求めることを特徴とする請求項5記載の偏光解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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