説明

偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法およびヘッド位置決め制御装置

【課題】あらかじめトラックの偏心に応じたディスク回転中心のスピンドルに対する位置補正をすることなく、偏心して回転する目標トラックに対して高い精度でヘッドを位置決めする。
【解決手段】多数のトラック偏心量に対応するようなアクチュエータの伸縮特性を得る駆動波形をテーブル化してデータとして記憶しておく。その一方で、ディスクに書き込まれたサーボ情報を読出してヘッドのポジション検出信号をトラックからのヘッド変位量を示す信号として取得する。このポジション検出信号からヘッド位置のずれ量に対応する振幅と最大偏心をする回転角度を得て、アクチュエータを駆動する上で最適な駆動波形をメモリから読出し、最大偏心をする回転角度を合わせた駆動波形でアクチュエータを駆動してトラックが変位する方向にヘッドを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法およびヘッド位置決め制御装置に関し、詳しくは、ディスクリートトラックメディア(DTM)等の高密度記録メディアに対してこれに設定されたサーボ情報を利用してONトラックサーボ制御をすることで回転状態にある目標トラックに対してヘッドをダイナミックに位置決めする場合において、あらかじめトラックの偏心に応じたディスク回転中心のスピンドルに対する位置補正をすることなく、トラックが偏心し、それによりサーボ情報も偏心する状態において回転する目標トラックに対して高い精度でヘッド位置決めが可能な、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハードディスク駆動装置)は、現在では自動車製品や家電製品、音響製品の分野にまで浸透し、3.5インチから1.8インチに、さらには1.0インチ以下のハードディスク駆動装置が各種製品に内蔵され、使用されている。それによりHDDの低価格化と大量生産化が求められ、しかもその記憶容量は大きいことにこしたことはない。
前記のような要請に応えるために最近実用化に至った超高密度記録の垂直磁気記憶方式の磁気ディスクメディアが前記の分野で採用され、急速に普及しつつある。
【0003】
超高密度記録の垂直磁気記憶方式の磁気ディスクメディアは、TMR(トンネル磁気抵抗)ヘッドあるいはGMR(ジャイアント磁気抵抗)ヘッドを持つ複合磁気ヘッド(以下ヘッド)が使用され、ヘッドとの距離が10nm以下に設定される記憶媒体である。
このような磁気ディスクメディアには、一般的にはガラス基板が用いられ、ガラス基板の上に軟磁性層が形成され、その上に磁性層が設けられる。そして、この磁性層がエッチングされることで溝を介したディスクリートなトラックがディスクサブストレート(なお、ここでのディスクサブストレートとはデータの読出/書込を行う磁気ディスクに対してその材料としてその前段階にある各種のディスク基板を指している。)に形成される。
トラック間を隔絶する溝のエッチングは、凹凸を持つフォトレジスト膜を介して行われ、フォトレジスト膜を介してドライエッチングすることで形成されるディスクリートなトラックの幅は100nm以下であり、トラック間を隔絶する溝には後の工程で非磁性体が充填される(特許文献1,2)。
【0004】
この種の磁気ディスクは、ディスクリートトラック方式の磁気記録媒体(DTM)と呼ばれ、数年後には、2.5インチで1テラビット(インチ2)を越える超高密度記録が可能な技術として現在注目されている。さらに、ディスクリートトラックをトラック方向に微細に磁区分割したビットパターンドメディア(BPM)もすでに実用化の段階に入っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−012119号公報
【特許文献2】特開2007−149155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常のDTMでは、スピンドルの回転中心に対してDTMの中心が、そしてDTMの中心に対してこれに形成されたディスクリートトラックの中心がそれぞれに偏心していて、トラックの回転中心とスピンドルの回転中心とが一致していない限り、スピンドルの回転中心に対して形成されたトラックは偏心を持つことになる。
そこで、DTMのトラックをアクセスするヘッドは、サーボ情報に従ってONトラックサーボ制御をしない限り、ヘッドがトラックをトレースすることはできないが、サーボ情報自体が各セクタ対応に設けられているので、トラックが偏心しているとサーボ情報の位置も偏心する。そのためにトラックの偏心がおおきくなるとONトラックサーボ制御が不確定になり、十分なONトラックサーボ制御も、また、ONトラックサーボ制御に入る以前に行われる目標トラックに対する高い精度のヘッド位置決めもできない問題がある。
【0007】
そこで、トラックの回転中心をスピンドルに装着されたディスクの回転中心(スピンドルの回転中心)に合わせるスピンドルに対するディスクの装着位置補正が必要になる。このようなトラック偏心補正機構としては、例えば、スピンドルに対してディスクの装着位置をずらせてディスク回転中心をトラックの回転中心に合わせるトラック偏心補正機構を挙げることができるが、ディスク回転機構が大型になる上に偏心量を所定値以下にするためには何度もディスクの位置補正が必要で、手間がかかる問題がある。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、あらかじめトラックの偏心に応じたディスク回転中心のスピンドルに対する位置補正をすることなく、偏心して回転する目標トラックに対して高い精度でヘッドを位置決めすることが可能な、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法を提供することにある。
また、この発明の他の目的は、トラックについての偏心補正機構を設けることなく、目標トラックに対して高い精度でヘッドの位置決めが可能な偏心したトラックに対するヘッド位置決め制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成する第1の発明の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法およびヘッド位置決め制御装置の構成は、多数のトラックを有しその各トラックに対応してサーボ情報が設定された回転するディスクと、粗動移動ステージと、この粗動移動ステージに搭載された微動移動ステージと、この微動移動ステージに搭載されたヘッドと、偏心して回転する所定のトラックにヘッドを追従させて位置決めするためにディスク半径方向に高速にヘッドを移動させるアクチュエータとを有し、所定のトラックに対してヘッドを位置決めする、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法において、
ディスク1回転におけるトラックの偏心量多数について偏心量のそれぞれに対応するようなアクチュエータの伸縮特性を得るための多数の駆動波形をデータとしてメモリに記憶し、
サーボ情報を読出してディスク1回転におけるヘッドのポジション検出信号を所定のトラックからのヘッド変位量を示す信号として取得し、そして、
ポジション検出信号に基づいて複合磁気ヘッド位置のずれ量に対応する振幅と最大偏心をする回転角度を得て、
前記の振幅により最適な駆動波形をメモリから読出し、最大偏心をする回転角度を合わせた駆動波形を生成してアクチュエータを駆動することにより所定のトラックが変位する方向にヘッドを移動させるステップからなるものである。
【0009】
また、第2の発明は、前記のアクチュエータによるヘッドの移動を固定した状態において微動移動ステージを移動させてヘッドを所定のトラックに位置決めし、
所定の読出開始信号に応じてヘッドからサーボ情報の読出信号を受けて偏心して回転する所定のトラックからのヘッドの位置ずれに対応するトラック1周分のヘッドのポジション検出信号を発生し、
トラック1周分のポジション検出信号における振幅とポジション検出信号における、所定の読出開始信号の位置から最大ピーク位置までの回転角度とを検出し、そして、
多数のトラック偏心量のそれぞれに対応する前記アクチュエータの多数の伸縮データとして前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶したメモリからポジション検出信号の振幅が示す最大位置ずれ量に対応する最大伸縮量を持つアクチュエータ駆動信号を得るステップとからなり、
得られたアクチュエータ駆動信号上において回転角度により決定される所定の読出開始信号の発生タイミングに対応する位置を基準として所定の読出開始信号の発生に応じて得られたアクチュエータ駆動信号あるいはこの駆動信号の波形を反転した波形を持つ信号によりアクチュエータを駆動することにより、ヘッドが所定のトラックの偏心方向に追従するように所定のトラックに複合ヘッドを位置決めするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、多数のトラック偏心量に対応するようなアクチュエータの伸縮特性を得る多数の駆動波形をメモリに、例えば、多数の駆動波形をテーブル化した記憶テーブルに記憶しておく。その一方で、ディスクに書き込まれたサーボ情報を読出してヘッドのポジション検出信号をトラックからのヘッド変位量を示す信号として取得する。このポジション検出信号からヘッド位置のずれ量に対応する振幅と最大偏心をする回転角度を得て、アクチュエータを駆動する上で最適な駆動波形をメモリから読出し、最大偏心をする回転角度を合わせた駆動波形でアクチュエータを駆動してトラックが変位する方向にヘッドを移動させる。
ディスクの回転中心に対する、例えば、DTMの回転中心に対する各トラックの偏心量は、トラック中心とディスクの回転中心とのずれ量で決定される。この偏心により生じる、ヘッドがアクセスするトラック位置に対するヘッドのずれ量(変位)は、ディスクの回転角度に応じて変化する。しかし、トラックが最大偏心をするディスクの回転角度はどのトラックでも、トラック中心とディスクの回転中心とを結ぶ直線上のトラック位置にヘッドが位置決めされたときである。もちろん、このときのディスクの回転中心は装着されたスピンドルの回転中心に一致している。
【0011】
最大偏心したときのトラック位置に対するヘッドの変位(位置ずれ)は、ヘッドに対してトラックが前進する方向に向かうトラック偏心(正極側のトラック偏心)とトラックが後退する方向に向かうトラック偏心(負極側のトラック偏心)のときの、1回転に2箇所である。これらの箇所のヘッドの位置ずれ量はほぼ等しい。そこで、ヘッド位置に対するトラック位置の偏心波形は正弦波に類似する波形となる。なお、トラックの偏心方向とヘッドの変位(位置ずれ)とは相互に逆方向になる。したがって、トラック偏心によるヘッド側の位置ずれは、前記とは正負が逆になる。
一方、前記のアクチュエータをピエゾアクチュエータとした場合、ピエゾアクチュエータのヒステリシス特性上におけるピエゾの伸縮特性は同様な正弦波に類似する波形特性となる。そこで、トラック1周分で1ヒステリシスループに沿った正弦波に類似する波形でピエゾアクチュエータを駆動をするとピエゾアクチュエータの伸縮特性を任意のトラック位置でのヘッドの位置ずれ量(トラックからの変位量)に対応させることが可能になる。
このようなことから、ピエゾアクチュエータの伸縮をヘッドのトラックずれ量とは反対方向になるようにピエゾアクチュエータを駆動すればDTM(ディスク)の回転中心に対してトラックが偏心していてもヘッドは、偏心したトラックの追従してこのトラックをトレースすることが可能である。
【0012】
ところで、読出開始信号を基準とするトラックが最大偏心をする回転角度は、トラック中心とディスクの回転中心とを結ぶ直線上の方向で決定される。したがって、最大偏心をする回転角度を検出することで前記のピエゾアクチュエータの駆動波形をトラックの偏心(トラックからのヘッドの位置ずれ)に対応させることができる。
なお、ヘッドの位置決めのために正弦波類似の波形でアクチュエータを駆動する場合、アクチュエータは、ピエゾアクチュエータに限らず他のアクチュエータでも可能である。
もちろん、このような追従制御のときにはONトラックサーボ制御と併用して各種のアクチュエータを介してヘッド駆動をしてもよいし、このようなヘッド駆動は、ONトラックサーボ制御状態でなくてもよい。
その結果、この発明は、あらかじめトラックの偏心に応じたディスク回転中心のスピンドルに対する位置補正をする必要がない。しかも、トラックがディスクの回転中心に対して偏心した状態で所定のトラックに対するヘッドのリード/ライトをすることが可能となり、偏心したトラックに対するヘッド位置決めが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明のヘッド位置決め方法を適用した一実施例の磁気ヘッド/磁気ディスクの検査装置のブロック図である。
【図2】図2は、正規化されたポジション検出信号の説明図である。
【図3】図3(a)は、トラック偏心による磁気ヘッドの移動軌跡で得られるポジション検出信号の波形の説明図、図3(b)は、ピエゾアクチュエータ加振駆動波形の説明図である。
【図4】図4(a)は、採取されたポジション検出信号の波形とピエゾアクチュエータを加振駆動するヘッド駆動波形の説明図、図4(b)は、ピエゾチュエータのヒステリシス特性の説明図である。
【図5】図5は、ディスク回転中心とトラック偏心によるトラックの位置ずれについての説明図である。
【図6】図6は、偏心トラックに対するヘッド位置決め制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、10は、磁気ヘッド/磁気ディスクの検査装置であって、この発明のヘッド位置決め制御装置の一例である。
1は、DTM(ディスクリートトラックメディア)であって、スピンドル2に着脱可能に挿着されている。スピンドル2に隣接してヘッドキャリッジ3が設けられ、ヘッドキャリッジ3は、粗動ステージ4と微動のピエゾステージ5とからなる。
ピエゾステージ5は、MRヘッド(リードヘッド)と薄膜インダクティブヘッド(ライトヘッド)を有する複合磁気ヘッド9(以下ヘッド9)を搭載する。
粗動ステージ4は、XYステージであって、粗動ステージ4のXステージは、DTM1の半径方向(以下単に半径方向)の移動ステージである。これは、ピエゾステージ5をYステージを介してDTM1の半径方向に移動する。粗動ステージ4のYステージは、Xステージ上に搭載され、ヘッド9に対してスキュー等のY方向の位置調整のための移動を行う。このYステージ上にピエゾステージ5が搭載されている。これは、ヘッド9のX方向の位置を微調整する。なお、X方向は、DTM1の中心を通る半径方向に一致している。
【0015】
ピエゾステージ5には、カートリッジ取付ベース6と、ピエゾステージ5を基準としてカートリッジ取付ベース6をX方向に移動させるピエゾアクチュエータ5a等が設けられている。カートリッジ取付ベース6にはピエゾアクチュエータ6aが設けられ、これを介してヘッドカートリッジ7が取付けられている。これによりピエゾアクチュエータ6aは、カートリッジ取付ベース6を基準としてヘッドカートリッジ7をX方向に移動させる。
ヘッド9は、ヘッドカートリッジ7にサスペンションスプリング8を介して支持され、サスペンションスプリング8の先端側にヘッド9が取付けられている。
ヘッド9は、DTM1のX軸方向に沿う半径方向に移動してDTM1のトラックをシークしてそのトラックの1つに位置決めされ、データをそのトラックから読出し、あるいはそのトラックにデータを書込む、いわゆるヘッドアクセス動作をする。
ヘッドカートリッジ7は、ヘッド9をヘッドキャリッジ3に装着するものであって、ヘッド9を着脱可能に搭載し、カートリッジ取付ベース6には、ヘッド9のMRヘッドに接続された読出アンプ9aとインダクティブヘッド(ライトヘッド)に接続された書込アンプ9b等が設けられている。
読出アンプ9aは、MRヘッドから読出信号を受けてそれを増幅してサーボ位置決め制御回路11とデータ読出回路12とに送出し、データ読出回路12を介して読出信号がデータ処理・制御装置20に入力される。
書込アンプ9bは、データ書込回路13に接続され、データ書込回路13からテストデータを受けてインダクティブヘッドを駆動する。
【0016】
データ読出回路12は、読出アンプ9aからの読出信号を受けて、この読出信号(データ信号)を二値化して波形成形し、データ処理・制御装置20に送出する。15は、ヘッドアクセス制御回路であって、データ処理・制御装置20からの制御信号を受けて粗動ステージ4とピエゾアクチュエータドライバ114を介してピエゾステージ5を駆動してヘッド9を目標となる所定のトラックに位置決めする。
データ書込回路13は、テストデータ生成回路14から所定のテストデータを受けて、受けたテストデータに従って書込信号を生成して、書込アンプ9bを駆動し、ヘッド9のインダクティブヘッドを介して所定のトラックにデータを書込む。テストデータ生成回路14は、データ処理・制御装置20により制御されて所定のテストデータを生成する。
なお、16は、ディスク駆動回路である。
【0017】
サーボ位置決め制御回路11は、目標位置電圧発生回路111と、ピエゾアクチュエータ5a駆動用の誤差電圧発生回路112、ピエゾアクチュエータ5a駆動用の位相補償フィルタ回路113,ピエゾアクチュエータ5aを駆動するピエゾアクチュエータドライバ114、カートリッジ駆動用の誤差電圧発生回路115、ピエゾアクチュエータ6a駆動用の位相補償フィルタ回路116,ピエゾアクチュエータ6aを駆動するピエゾアクチュエータドライバ117、そして切換スイッチ回路118とからなる。
目標位置電圧発生回路111は、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120、ピエゾアクチュエータ5a側のレジスタ121とD/A変換回路(D/A)122、ピエゾアクチュエータ6a側のレジスタ123とD/A変換回路(D/A)124とを内蔵していて、データ処理・制御装置20から目標値データがレジスタ121,123にそれぞれに設定される。
【0018】
レジスタ121,123に設定された目標値データは、D/A122,D/A124によりそれぞれ変換されて、目標トラックに対応する電圧値がアナログ変換電圧値としてD/A122,D/A124それぞれに発生する。それぞれのアナログ変換電圧値(目標位置電圧値)は、目標位置電圧発生回路111から誤差電圧発生回路112,115にそれぞれに出力される。
切換スイッチ回路118は、データ処理・制御装置20から切換信号を受けてON/OFFする。これがONにされたときには切換スイッチ回路118は、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120から送出されるポジション検出信号PV(後述)を誤差電圧発生回路112、115に送出する。これとは別に、ポジション検出信号PVは、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120からデータ処理・制御装置20とへ送出される。
【0019】
その結果、切換スイッチ回路118がONのときには、ヘッド9のリードヘッドにより読出されるサーボ情報の電圧が誤差電圧発生回路112、115に送出され、これに応じてヘッド9がダイナミックに位置決めトラックに対してその位置が制御される。いわゆるONトラックサーボ制御状態になる。
一方、切換スイッチ回路118がOFFのときには、ポジション検出信号PVが誤差電圧発生回路112、115には入力されない。誤差電圧発生回路112、115の入力信号は、データ処理・制御装置20から出力された目標位置電圧値がレジスタ121,123,D/A122あるいはD/A124を介して供給されるだけとなる。
なお、読出アンプ9aからの読出信号は、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120に入力され、そのうちのサーボ情報に基づいてサーボ電圧復調・位置電圧演算回路120からポジション検出信号PVが発生する。
【0020】
ところで、図1におけるピエゾアクチュエータ6aは、図示の都合上、カートリッジ取付ベース6に設けられ、質量の軽いヘッドカートリッジ7に先端側が結合されている。しかし、ピエゾアクチュエータ6aをヘッドカートリッジ7の内部に設け、その先端側をヘッドカートリッジ7の内部にあるヘッドアッセンブリ(サスペンションスプリング8)に結合してもよい。ピエゾアクチュエータ6aがヘッドアッセンブリ(サスペンションスプリング8)を駆動した方がさらに質量が軽い駆動となり、ヘッド位置決めに対してより高速な応答性を確保できる。
【0021】
ここで、ピエゾアクチュエータ5aとピエゾアクチュエータ6aとは、サーボ位置決め制御回路11により制御されることで、トラックから読出されたサーボ信号(サーボ情報)に応じてヘッドの位置を微調整してダイナミックにヘッド9をトラック上に載せる、ONトラックサーボ位置決めをする。
目標位置電圧発生回路111は、データ処理・制御装置20から目標値データがレジスタ121,123にそれぞれに設定されるが、この目標値データの1つとして後述するピエゾアクチュエータ6aの駆動波形から得られるデータがある。目標値データがD/A122,D/A124によりアナログ変換電圧値にされ、これらが目標トラックに対応する電圧値として誤差電圧発生回路112,115にそれぞれ入力されると、ヘッド9が目標位置(目標トラックのセンタ)に向かって移動する。
もちろん、このような目標トラックへのヘッド9の微小位置決めは、ヘッドアクセス制御回路15によりピエゾアクチュエータ5aを介しても行うことができる。
【0022】
目標位置電圧発生回路111において、切換スイッチ回路118がOFFのときにでかつD/A122を介して誤差電圧発生回路112に出力される目標位置電圧値が一定のときにはピエゾアクチュエータ5aの伸縮駆動が固定された状態となる。そこで、ピエゾステージ5は、自己の移動範囲(ピエゾアクチュエータ5aの駆動範囲)において所定の目標トラックあるいは所定の目標位置にヘッド9を位置決めすることが可能である。ただし、このときには、ヘッドアクセス制御回路15側でのピエゾアクチュエータ5aの制御はしないものとする。
同様に、切換スイッチ回路118がOFFのときでかつD/A124を介して誤差電圧発生回路115に出力される目標位置電圧値が一定のときにはピエゾアクチュエータ6aの伸縮駆動が固定された状態となる。そこで、ピエゾアクチュエータ6aは、自己の駆動範囲において目標トラックあるいは所定の目標位置にヘッド9を位置決めすることが可能である。
【0023】
すなわち、ピエゾアクチュエータ5aとピエゾアクチュエータ6aのいずれか一方の移動範囲においてヘッド9の位置を所定の位置に固定しておき、その上でいずれか他方の側は、所定の駆動波形で駆動されることで、ヘッド9をX方向の移動範囲内の任意の位置に移動させることができる。
なお、ピエゾアクチュエータ5aとピエゾアクチュエータ6aのいずれか一方の移動範囲におけるヘッド9の位置固定は、ピエゾアクチュエータ6aの駆動によるヘッド9の移動の際にトラックの偏心範囲をカバーする前後移動が可能な位置に設定することが好ましい。それにより後述するポジション検出信号26をより適正ものとしてに得ることができるからである。
【0024】
サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120は、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)で構成され、読出アンプ9aから読出されたサーボ情報(サーボバースト信号)からトラック位置に対応する位置電圧を演算して発生する。
例えば、ヘッドが位置決めされるトラックを10本単位と仮定した場合にトラック0からトラック10に所定の周波数でかつ所定の間隔D(例えば、1μsec)だけ円周方向にずれてかつ前後のトラックの中心に接触する幅を持ち、かつ、その半分幅が前後に重なるように7個のサーボパターン信号(サーボバースト信号)A〜Jが各トラックに対応して記録されているとする。
この場合、読出アンプ9aから得られる各トラック位置でのサーボバースト信号についてトラック0の位置の検出電圧信号を基準として各サーボバースト信号の振幅レベルを電圧値Vi(i=a〜j)として得て、例えば、PV={(Va-Vj)+0.75*(Vb-Vh)+0.5*(Vc-Vg)+0.25*(Vd-Vf)}/(Va+Vb+Vc+Vd+Ve+Vf+Vg+Vh+Vi+Vj)による演算することで、トラックに対するヘッドの位置を示すポジション検出電圧PVを得ることができる。
【0025】
そこで、読出アンプ9aからの読出信号を前式を持つDSPのサーボ電圧復調・位置電圧演算回路120に入力して前式に各読出信号の振幅レベルを代入してポジション検出電圧PVを得る。さらにこの電圧PVを正規化して−1V〜+1Vまでの正規化電圧にすると、中央に直線性の傾斜を持つ図2に示すような各トラック位置に対応する正規化POS電圧(ポジション検出信号)を得ることができる。
なお、縦軸は、正規化POS電圧であり、横軸はトラック番号である。
そこで、通常は、この図2の特性グラフGに従って、Xステージで粗位置決めされた位置から前後5本のトラックについて高精度な微小位置決めをサーボ位置決め制御回路11がピエゾステージ5のピエゾアクチュエータ5aと、ヘッドカートリッジ7を移動させるピエゾアクチュエータ6aを駆動して行う。
なお、図2においては、ヘッドがトラックをアクセス方向(トラック番号/横軸)とポジション検出信号の電圧値(正規化POS電圧/縦軸)の関係は一例であって、トラック番号(横軸)に対してポジション検出信号(正規化POS電圧/縦軸)の正極側と負極側とが反転したものもある。
【0026】
以上は、目標トラックに対するヘッド9の位置決めに対して目標トラックが偏心していない場合の話である。これに対してここでは目標トラックが偏心している。そこで、サーボ領域にサーボバースト信号が書込み済みのDTM1に対してヘッド9により読出アンプ9aを介してサーボバースト信号を読出すと、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120から得られる図2のポジション検出信号に対応して、図3(a)に示すように、トラック偏心によるヘッド9の移動軌跡に応じた目標トラックからのヘッド9の位置ずれ(変位)に対応するポジション検出信号26が得られる。このポジション検出信号26は、縦軸が変位量となっていて、横軸がインデックス信号IND(読出開始信号)を基準としたディスクの回転角度である。インデックス信号INDは、スピンドル2に設けられたエンコーダからの回転基準の同期信号であり、データ処理・制御装置20に入力される。
なお、読出開始信号は、インデックス信号INDに換えて1回転の開始セクタ信号(同期信号)が用いられてもよい。
図3(a)の縦軸は変位量である。縦軸が変位量となっているのは、ポジション検出信号26に振幅に対して図2の関係からトラック幅を掛けてトラックずれ量を変位量として算出したものである。これによりポジション検出信号26を位置決めトラック(目標トラック)に対する変位の波形として捉えることができる。
【0027】
図2に示すように、正規化したポジション検出信号PVは、横軸がトラック番号になっているので、横軸にトラック幅を掛ければ、横軸はヘッドの移動距離になる。そこで、目標トラックからのヘッド変位量は、データ処理・制御装置20においてポジション検出信号PVから簡単に算出できる。
この場合、正規化しない前記式から得られるポジション検出電圧PVの信号をデータ処理・制御装置20に入力して変位量を得てもよい。ポジション検出電圧PVの信号は、−1V〜+1Vまでの正規化をしない状態にあるだけで、その波形自体は、ポジション検出信号26と同様な波形である。そこで、以下では、正規化の有無にかかわらず、ポジション検出電圧PVの信号およびポジション検出信号PVを含めてここではポジション検出信号26として説明する。
さて、ポジション検出信号26の変位波形は、正弦波類似の波形である。縦軸は、変位量[μm]である。
ポジション検出信号26の変位量は、図2に示すように、ヘッド9が目標トラックから後退したときには、+側の電圧値となり、前進したときには−側の電圧値になる。
【0028】
図5に示すように、DTM1が装着されたスピンドル2の回転中心O1(=ディスクの回転中心)と各トラックの中心O2との間にずれがあるのでトラックが偏心する。そのため、ヘッド9が位置決めされたトラックに対してDTM1が1回転するときに前後に数トラック分移動するトラック偏心による位置ずれが発生する。一方、目標トラックに位置決めされたヘッド9の軌跡は、理論的にはスピンドル2の回転中心O1を中心とする円となる。そのため、図3(a)に示すようようなポジション検出信号26によるヘッド変位波形(ヘッド位置ずれ波形)を得ることができる。
図5から理解できるように、トラックの偏心方向とヘッドの変位(位置ずれ)とは逆方向である。
そこで、変位量を縦軸としたこのポジション検出信号26の波形をデータ処理・制御装置20において得ることで、トラック偏心によるDTM1の回転に応じた目標トラック(位置決めトラック)からのヘッド9の位置ずれ量(変位量)をデータ処理・制御装置20において検出することができる。
【0029】
一方、ピエゾアクチュエータ6aの駆動波形は、ヒステリシス特性があるので、図4(a)に示すような正弦波類似の波形となる。このピエゾ駆動波形をポジション検出信号26と同様にディスク1回転で1周期として、ピエゾアクチュエータ6aの伸縮する量が変位量に近いものを図3(b)に示すとポジション検出信号26に近い波形になる。
図4(b)に示すピエゾアクチュエータ6aのヒステリシスループHyの1往復の駆動波形の中から、ピエゾアクチュエータ6aが駆動されたときにその伸縮のセンタを基準とした最大伸び量、そして最大縮み量(以下伸縮量)が図3(a)に示すポジション検出信号26が示す位置決めトラックからの最大変位量(ヘッド9の位置ずれ量の最大値)とが一致するものをピエゾ駆動波形27として選択する。そしてそれを図4(a)に点線で示したポジション検出信号26とを重ねてみる。
【0030】
これらピエゾ駆動波形27とポジション検出信号26の波形とを対比するとほぼ対応する関係にある。ピエゾ駆動波形27とポジション検出信号26の波形ずれは、少なく、駆動波形を調整する程度のことである。
なお、最大変位量(ヘッド9の位置ずれ量の最大値)は、図3(a)に示すようにポジション検出信号26の振幅に対応している。
図4(a),図4(b)において、縦軸は距離[μm]であり、横軸は電圧[V]である。図4(a)の縦軸はヘッド9の変位量を表し、図4(b)の縦軸はピエゾアクチュエータ6aの伸縮量を表している。
そこで、トラック1周をピエゾアクチュエータ6aの1ヒステリシスループHyに対応させて1ヒステリシスループHyに沿った正弦波に類似する波形でヘッド9を駆動をするとピエゾアクチュエータ6aの伸縮量を任意のトラック位置でのヘッド位置ずれ量に対応させることが可能になる。
しかも、ヒステリシスループHyにおいて電圧を上げると、ヘッド9は、前進して目標トラックより先のトラックをアクセスすることになる。これに対してポジション検出信号26では図2に示すように、ヘッド9が目標トラックから後退すると、ポジション検出信号26の電圧は高くなる。相互に逆方向にヘッド9が移動する。ヘッド9が目標トラックに対して後退した場合にも同様に相互に逆方向になる。
【0031】
そこで、トラック偏心に対してヘッド9の位置を位置決めトラックに追従させるには、ポジション検出信号26の電圧が高くなったときにピエゾアクチュエータ6aの駆動信号を高くして前進させればよい。ヘッド9が位置決めトラックから前進した場合には逆に電圧が低くなったポジション検出信号26に応じてピエゾアクチュエータ6aの駆動信号を低くすればよい。
ピエゾ駆動波形27によるピエゾアクチュエータ6aの伸縮のセンタを基準とした伸縮量がヘッド9の位置決めした目標トラックからの位置ずれ量(変位量)に対応するものと仮定して図3(b)にはピエゾ駆動波形27を図3(a)のポジション検出信号26の波形の下側に対比して示している。
ヘッド9の位置決めした目標トラックからの位置ずれ量をキャンセルするために、ピエゾ駆動波形27でピエゾアクチュエータ6aを駆動するとした場合、ヒステリシスループHyの原点から駆動すると、図3(a)と図3(b)とでは、波形の位相にθ分のずれがある。そこで、まず、ピエゾ駆動波形27をポジション検出信号26の波形の位相に合わせることが必要になる。
【0032】
しかし、両者の位相を合わせることで、最大ピークの位置は一致するが、位相を合わせたとして、ピエゾ駆動波形27の駆動信号による駆動の開始点は、インデックス信号IND(読出開始信号)を基準としなければならない。そこで、ポジション検出信号26における最初の最大ピーク位置とインデックス信号INDとの回転角度αを求め、回転角度αによりピエゾ駆動波形27の駆動信号による駆動開始位置を求める。
図3(b)の点線で示すピエゾ駆動信号28の波形は、ポジション検出信号26に位相合わせをしたピエゾ駆動波形を持つ駆動信号である。このピエゾ駆動信号28の最初の最大ピーク位置から回転角度α手前のピエゾ駆動信号28の駆動開始電圧値Vsを求める。これによりインデックス信号IND(読出開始信号)の発生タイミングに対応するピエゾ駆動信号28におけるピエゾアクチュエータ6aの駆動開始位置を求めることができる。
【0033】
ここで、最大ピークの位置までの回転角度αを得るのは、最大ピーク位置は変位が最大となる位置に対応していて、ヘッド9をトラックのどの位置に位置決めしてもインデックス信号INDから最初の最大ピークの位置までの回転角度α(図3(a)参照)は図5で説明したように一定しているからである。
その結果、ここでは、ポジション検出信号26の波形を採取してその振幅A(図3(a)参照)と回転基準位置(インデックス信号IND)から最大偏心をする回転角度αとを、ポジション検出信号26の波形を解析して求め、ポジション検出信号26の振幅Aに対応するピエゾアクチュエータ6aのヒステリシスループHyを持つピエゾ駆動波形27の駆動信号を求めて、磁気ヘッド/磁気ディスクの検査装置10においてデータ処理・制御装置20がヘッド9をトラックの偏心に追従させるヘッド駆動制御をする。
【0034】
次のトラックの偏心に対してヘッド9を追従させるヘッド駆動制御について説明する。
図1に戻り、データ処理・制御装置20は、MPU21とメモリ22、インタフェース23、CRTディスプレイ24、そしてキーボード等により構成され、これらがバス25により相互に接続されている。そして、メモリ22には、ヘッドアクセスプログラム22a、DCイレーズプログラム22b、ポジション検出信号採取プログラム22c、振幅・回転角のDFT(ディスクリート・フーリエ・変換)解析プログラム22d、最適駆動波形検索プログラム22e、偏心追従ヘッド駆動プログラム22f、そして磁気ヘッド/磁気ディスクの検査プログラム22g等が記憶され、ピエゾ駆動波形記憶テーブル22hと作業領域22iとが設けられている。
【0035】
以下、トラックの偏心に対してヘッド9を追従させて目標トラックに位置決めして磁気ヘッド/磁気ディスクの検査を行う検査装置のヘッド位置決め制御について図6のフローチャートを参照して説明する。
MPU21は、ヘッドアクセスプログラム22aを実行してインタフェース23を介してヘッドアクセス制御回路15の所定のレジスタにR方向の移動距離rmmを設定してヘッドアクセス制御回路15を起動する。
レジスタにR方向の移動距離rmmが設定されることにより、ヘッドアクセス制御回路15により粗動ステージ4のXステージが駆動されて基準点あるいは所定のトラック位置からrmm分、粗動移動し、さらにピエゾステージ5が駆動されてヘッド9が距離rに向かって微動移動してトラック番号を読取り、目標トラックに位置決めされる(ステップ101)。
インタフェース23を介してヘッドアクセス制御回路15の所定のレジスタにR方向の移動距離−Kμmを設定する。レジスタにR方向の移動距離−Kμmが設定されることにより、ヘッドアクセス制御回路15によりピエゾステージ5が駆動されてヘッド9が目標トラックから数トラック分の手前のKμmの位置にシフトする(ステップ102)。
【0036】
次に、MPU21は、DCイレーズプログラム22bを実行して、数トラック分の手前から目標トラックを中心として前後数トラック分の偏心をカバーする範囲をDCイレーズする(ステップ103)。
このDCイレーズは、トラックの偏心範囲をカバーする全体(各トラックおよびトラック間)にデータ“0”を、例えば永久磁石により書き込むことにより行われる。これにより、サーボエリアの磁性膜の領域は、例えば、S極に磁化される。
なお、DCイレーズは、偏心をカバーする範囲全体にデータ“1”を書き込むことでもよい。これによりサーボエリアに磁性膜の領域は、逆にN極に磁化される。
次に、MPU21は、トラック番号を読取り、ヘッド9を目標トラックに位置決めし、切換スイッチ回路118をOFFにする(ステップ104)。
ピエゾアクチュエータ6aに所定の一定電圧を加えてピエゾアクチュエータ6aにより駆動されるヘッド9の位置を固定する(ステップ105)。
【0037】
次に、MPU21は、ポジション検出信号採取プログラム22cをコールして実行してMRヘッド(リードヘッド)によるデータ読出状態に入る(ステップ106)。
そして、インデックス信号IND(あるいは1回転の開始セクタ信号)を待って、これを受けてMPU21は、インデックス信号IND(あるいは1回転の開始セクタ信号)に同期してポジション検出信号のA/D変換を開始して次のインデックス信号IND(あるいは1回転の開始セクタ信号)発生までのトラック1周分のポジション検出信号のデジタル値をメモリ22の作業領域22iに記憶する(ステップ107)。
このとき採取される、目標トラックを含めたその前後のトラック位置でのトラック1周分のポジション検出信号は、ポジションのずれ量が変位量に変換されて図3(a)に示すようなポジション検出信号26として算出される。すなわち、図3(a)の縦軸は変位量となっているが、これは半径方向の距離に相当し、横軸は回転角度となっているが、これはトラックのヘッド走査時間に相当している。そこで、半径方向の距離とヘッド走査時間においてポジション検出信号が採取されてポジション検出信号26が算出されることになる。
【0038】
次に、MPU21は、振幅・回転角のDFT解析プログラム22dをコールして実行し、ポジション検出信号26から次の式(1),(2)を得て、ポジション変位量(トラックに対する位置ずれ量)の最大振幅値X1とインデックス信号INDから最初の最大ピークの位置までの回転角度αとを得る(ステップ108)。
ポジション変位波形: X=X0+X1・sin(2πf−θ) ……(1)
インデックス信号INDから最初の最大ピークの位置までの回転角度 α ……(2)
ただし、X0は、DFT処理における基準レベルに対するオフセット量、X1・sin(2πf−θ)は、ポジションのずれの第1次項数値であり、X1はその最大振幅値、2πfは回転角(ラジアン)である。
なお、2次項数値以上の高次の項,数値もあるが、ここでは、第1次項数値のみを補正値とする。高い精度が必要な場合には、必要に応じてより高次の項を加えてパラメータとすることも可能である。
【0039】
式(1)から最大振幅値X1、そして回転角度αとを得て、最大振幅値X1から最大振幅値X1に対応するピエゾ駆動波形(次の式(3))を図1のピエゾ駆動波形記憶テーブル22hを参照して得る(ステップ109)。
V=Va・sin(2πf)+Vb・sin(2πf+θa) ……(3)
第1項のVa・sin(2πf)は、図4(a)の実線で示すピエゾ駆動波形27の駆動信号に対応する駆動関数であり、第2項のVb・sin(2πf+θa)は、図4(a)の点線で示すポジション検出信号26とピエゾ駆動波形27の駆動信号との差を補正する関数である。
なお、ピエゾ駆動波形テーブル22h(図1参照)は、多数のトラック偏心量に対応するピエゾアクチュエータ6aの多数の伸縮データとしてピエゾアクチュエータ6aの駆動信号を多数記憶した記憶テーブルである。具体的には、ピエゾ駆動波形記憶テーブル22hは、多数のトラック偏心量のそれぞれに応じた偏心したトラックからのヘッド9の最大位置ずれ量のそれぞれに対して、それぞれの最大位置ずれ量に対応するピエゾアクチュエータ6aの最大伸縮量それぞれをピエゾアクチュエータ6aにそれぞれに発生させるピエゾアクチュエータ6aの駆動信号を多数記憶しているテーブルである。ここでは、式(1)から最大位置ずれ量は、最大振幅値X1に対応しているので、最大振幅値X1を検索項目として式(3)に示す電圧値Va,Vbを振幅とする多数のピエゾ駆動波形27の駆動信号について記憶している。電圧値Va,Vbの値が異なるものについては種々の最大振幅値X1に対応させて式(3)の形態でテーブル化してある。
【0040】
このテーブルの各データ値は、最大振幅値X1に対応する伸縮量のピエゾアクチュエータ6aのヒステリシスループHyを選択して、ピエゾアクチュエータ6aを実際に電圧駆動することで最大振幅値X1に対応する前記式(3)のデータ値を収集することによる。
次に式(3)のピエゾ駆動波形の関数と式(1)のポジション検出信号の関数との位相差θを検出する(ステップ110)。
次に式(3)のピエゾ駆動波形の位相をθずらせてピエゾ駆動波形の位相を式(1)のポジション検出信号の関数に合わせた式(4)のピエゾ駆動信号28(図3(b)参照)の関数を算出する(ステップ111)。
V=Va・sin(2πf−θ)+Vb・sin(2πf+θa−θ) ……(4)
【0041】
次に、MPU21は、式(4)におけるインデックス信号INDのタイミング位置における駆動開始電圧値Vsを式(2)で算出した回転角度αから算出する(ステップ112)。そして、ピエゾアクチュエータ6aを振幅電圧Vaで駆動した後(ヒステリシスループHyの1往復駆動後)にピエゾアクチュエータ6aの駆動開始電圧値Vsに設定する(ステップ113)。
なお、式(4)からピエゾ駆動信号28が図3(a)のように正のピーク側から先に駆動して負のピーク側が後になる波形のときには偏心したトラックに対する補正方向がピエゾアクチュエータ6aを伸ばして縮ませることになるので、図4(b)のヒステリシスループHyのループの下側の経路において駆動開始電圧値をVsが選択される。
式(4)からピエゾ駆動信号28が逆に負のピーク側から先に駆動して正のピーク側が後になるときには偏心したトラックに対する補正方向がピエゾアクチュエータ6aを縮ませて伸ばすことになるので、図4(b)のヒステリシスループHyのループの上側の経路において駆動開始電圧値Vsを選択することになる。
【0042】
これにより、目標トラックにヘッド9が位置決めされた状態においてインデックス信号INDの発生したタイミングでは、ヘッド9は、理論上は偏心した目標トラックに位置ずれなしにONトラックする。
ここで、MPU21は、ステップ104の設定した切換スイッチ回路118がOFFの状態において、インデックス信号INDを待ってこれに同期して前記式(4)のピエゾ駆動信号28を形成するデジタル値を順次レジスタ123に入力してピエゾアクチュエータ6aをピエゾ駆動信号28により、くり返し駆動してヘッド9を半径方向において前後にダイナミックに移動させる、加振駆動をする(ステップ114)。この加振駆動によるヘッド9の移動範囲は、トラックの偏心範囲に対応している。そして、ピエゾステージ5を微動移動してトラック番号を読取り、目標トラックにヘッド9を位置決めする(ステップ115)。
この位置決めのときのヘッド9の移動は、MPU21がレジスタ121に移動データを入力して移動してもよいし、ヘッドアクセス制御回路15を介してピエゾステージ5を移動させるものであってもよい。
【0043】
ステップ115での目標トラックへのヘッド9の位置決めは、ステップ114の加振状態で行われる。この加振駆動によりヘッド9は、偏心したトラックの変位に対応してトラックをトレースすることができるので、ステップ115のピエゾステージ5の位置決めにより容易に目標トラックに位置決めできる。その後は、ヘッド9は、前記の加振駆動により偏心して回転する目標トラックの偏心に追従してヘッド9は位置決めされる。
この場合には、ヘッド位置決め後のONトラック制御をしなくてもよいが、ステップ115で目標トラックにヘッド9を位置決めした後に切換スイッチ回路118をONにしてさらにサーボ情報を読出してONトラック制御をすることで、より精度の高い位置決めが可能になる。
【0044】
この状態で磁気ヘッド/磁気ディスクの検査処理をする(ステップ116)。
磁気ヘッドの検査のときには目標トラックにテストデータが書込まれ、テストデータの読出が行われる。磁気ディスクの検査の場合には、内周トラックと外周トラックとでは、補正駆動波形を相違させた方がよい場合があるので、DTM1の各トラックを数十本乃至数百十本程度で領域に分割して各領域に対してそれぞれにピエゾ駆動波形記憶テーブル22hから最適なピエゾ駆動波形を得て、それに対応する式(4)のピエゾ駆動関数(ピエゾ駆動信号28)により数十本乃至数百十本程度のトラックからなる各領域の中で各トラックに位置決めして検査をするようにするとよい。
【0045】
ところで、図2に示す正規化したPOS電圧を持つポジション検出信号26は、ヘッドがトラックに対して前進したときに電圧値が−側となり、後退したときに+側となるが、これが逆の場合には、ピエゾ駆動波形27の駆動信号の位相は、ポジション検出信号の位相と180°の位相差が必要になる。すなわち、図3(a)のポジション検出信号26と図3(b)のピエゾ駆動波形27の駆動信号の位相差θが180°+θにされて、ピエゾ駆動信号28が求められる。
しかし、この場合、ポジション検出信号26もピエゾ駆動波形27も正弦波類似の波形であるので、180°の位相差を採ることなく、ピエゾ駆動波形27の駆動信号の電圧値を反転させて駆動することも可能である。
なお、位相差θあるいは180°+θによるポジション検出信号26とピエゾ駆動波形27の駆動信号の位相合わせをしなくても、ポジション検出信号26において先に正極側ピークの後に負極側ピークがくる波形か、その逆かを検出すればピエゾアクチュエータ6aによるトラック偏心に対する補正駆動は可能である。その理由は、ピークの順序の検出によりピエゾ駆動信号28において正極側ピークが先か負極側ピークが先か決定できるからである。検定されたピークから回転角度α手前において駆動開始電圧値Vsを求めることができるからである。
また、上記実施例の形態においては、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路120のみがDSPで構成されているが、サーボ位置決め制御回路11のうち、ピエゾドライバ114,117以外の一部あるいは全部をDSP等のデジタル演算回路で構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明してきたが、実施例ではインデックス信号INDを読出開始信号としてこれに同期させて読出を開始し、ポジション検出信号の波形を得ているが、1回転の基準は、セクタ信号を用いることもできる。この発明は、このセクタ信号に限らず、1回転の基準となる信号ならばどのような読出開始信号を用いてもよい。
さらに、実施例では、ピエゾアクチュエータのヒステリシス特性を例としているが、同様な正弦波類似の波形が得られる他のアクチュエータを使用してもこの発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…ディスク、2…スピンドル、
3…ヘッドキャリッジ、4…粗動ステージ、
5…ピエゾステージ、5a…ピエゾアクチュエータ、
6…カートリッジ取付ベース、6a…ピエゾアクチュエータ
7…ヘッドカートリッジ、6a…読出アンプ、6b…書込アンプ、
7…ピエゾアクチュエータ、8…サスペンションスプリング、
9…複合磁気ヘッド、9a…読出アンプ、9b…書込アンプ、
10…磁気ヘッド/磁気ディスクの検査装置、
11…サーボ位置決め制御回路、
12…データ読出回路、13…データ書込回路、
14…テストデータ生成回路、
15…ヘッドアクセス制御回路、
16…ディスク駆動回路、
20…データ処理・制御装置、21…MPU、
22…メモリ、22a…ヘッドアクセスプログラム、
22b…DCイレーズプログラム、
22c…ポジション検出信号採取プログラム、
22d…振幅・回転角のFFT解析プログラム、
22e…最適駆動波形検索プログラム、
22f…偏心追従ヘッド駆動プログラム、
22g…磁気ヘッド/磁気ディスクの検査プログラム、
22h…ピエゾ駆動波形記憶テーブル、22i…作業領域、
23…インタフェース、24…CRTディスプレイ、25…バス、
26…ポジション検出信号、27…ピエゾ駆動波形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のトラックを有しその各トラックに対応してサーボ情報が設定された回転するディスクと、粗動移動ステージと、この粗動移動ステージに搭載された微動移動ステージと、この微動移動ステージに搭載された複合磁気ヘッドと、偏心して回転する所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを追従させて位置決めするためにディスク半径方向に高速に前記複合磁気ヘッドを移動させるアクチュエータとを有し、前記所定のトラックに対してヘッドを位置決めする、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法において、
前記ディスク1回転におけるトラックの偏心量多数について前記偏心量のそれぞれに対応するような前記アクチュエータの伸縮特性を得るための多数の駆動波形をデータとしてメモリに記憶し、
前記サーボ情報を読出して前記ディスク1回転における前記複合磁気ヘッドのポジション検出信号を前記所定のトラックからのヘッド変位量を示す信号として取得し、そして、
前記ポジション検出信号に基づいて前記複合磁気ヘッド位置のずれ量に対応する振幅と最大偏心をする回転角度を得て、
前記振幅により最適な前記駆動波形を前記メモリから読出し、前記最大偏心をする回転角度を合わせた駆動波形を生成して前記アクチュエータを駆動することにより前記所定のトラックが変位する方向にヘッドを移動させるステップからなる、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項2】
前記メモリは、前記多数のトラック偏心量のそれぞれに応じた偏心したトラックからの前記複合磁気ヘッドの最大位置ずれ量のそれぞれに対して、それぞれの前記最大位置ずれ量に対応する前記アクチュエータの最大伸縮量それぞれを前記アクチュエータにそれぞれに発生させる正弦波類似の前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶する記憶テーブルを有する請求項1記載のヘッド位置決め方法。
【請求項3】
多数のトラックを有しその各トラックに対応してサーボ情報が設定された回転するディスクと、粗動移動ステージと、この粗動移動ステージに搭載された微動移動ステージと、この微動移動ステージに搭載された複合磁気ヘッドと、偏心して回転する所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを追従させて位置決めするためにディスク半径方向に高速に前記複合磁気ヘッドを移動させるアクチュエータとを有し、前記所定のトラックに対してヘッドを位置決めする、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法において、
前記アクチュエータによる前記複合磁気ヘッドの移動を固定した状態において前記微動移動ステージを移動させて前記複合磁気ヘッドを前記所定のトラックに位置決めし、
所定の読出開始信号に応じて前記複合ヘッドから前記サーボ情報の読出信号を受けて偏心して回転する前記所定のトラックからの前記複合磁気ヘッドの位置ずれに対応するトラック1周分の前記複合磁気ヘッドのポジション検出信号を発生し、
前記トラック1周分のポジション検出信号における振幅と前記ポジション検出信号における、前記所定の読出開始信号の位置から最大ピーク位置までの回転角度とを検出し、そして、
多数のトラック偏心量のそれぞれに対応する前記アクチュエータの多数の伸縮データとして前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶したメモリから前記ポジション検出信号の振幅が示す最大位置ずれ量に対応する最大伸縮量を持つアクチュエータ駆動信号を得るステップとからなり、
得られた前記アクチュエータ駆動信号上において前記回転角度により決定される前記所定の読出開始信号の発生タイミングに対応する位置を基準として前記所定の読出開始信号の発生に応じて前記得られたアクチュエータ駆動信号あるいはこの駆動信号の波形を反転した波形を持つ信号により前記アクチュエータを駆動することにより前記複合磁気ヘッドが前記所定のトラックの偏心方向に追従するように前記所定のトラックに前記複合磁気を位置決めする、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項4】
前記記憶テーブルは、前記多数のトラック偏心量のそれぞれに応じた偏心したトラックからの前記複合磁気ヘッドの最大位置ずれ量のそれぞれに対して、それぞれの前記最大位置ずれ量に対応する前記アクチュエータの最大伸縮量それぞれを前記アクチュエータにそれぞれに発生させる正弦波類似の前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶するものである請求項3記載のヘッド位置決め方法。
【請求項5】
さらに、アクチュエータ駆動ステップを有し、このアクチュエータ駆動ステップは、前記得られたアクチュエータ駆動信号あるいはこの駆動信号の波形を反転した波形を持つ前記信号により前記アクチュエータを駆動しかつ前記所定の読出開始信号の発生タイミングに対応する位置を前記回転角度により決定される前記アクチュエータの駆動開始電圧値として得るものであり、
前記振幅と回転角度とを検出する前記ステップは、前記所定の読出開始信号の位置から最初の前記最大ピーク位置までの角度を前記回転角度として検出するものである請求項4記載のヘッド位置決め方法。
【請求項6】
さらに、位相合わせステップを有し、この位相合わせステップは、前記得られたアクチュエータ駆動信号の位相を前記ポジション検出信号の位相に合わせるあるいは180度相違する位相に合わせるものであり、前記アクチュエータ駆動ステップは、前記位相に合わせステップにより位置合わせがなされた前記得られたアクチュエータ駆動信号から前記駆動開始電圧値を得る請求項5記載のヘッド位置決め方法。
【請求項7】
前記位相合わせステップは、前記得られたアクチュエータ駆動信号と前記ポジション検出信号の波形の位相差を検出してこれらの信号の位相合わせをするものであり、
前記アクチュエータの前記最大伸縮量は、前記アクチュエータの伸縮のセンタを基準とした最大伸び量と最大縮量に対応するものであり、
前記アクチュエータ駆動ステップは、前記駆動開始電圧値から前記アクチュエータの駆動を開始し、前記得られたアクチュエータ駆動信号により前記ポジション検出信号が示す前記所定のトラックからの前記最大位置ずれ量と前記最大伸縮量とが一致するように前記アクチュエータを駆動する請求項6記載のヘッド位置決め方法。
【請求項8】
前記アクチュエータはピエゾアクチュエータであり、前記アクチュエータ駆動ステップは、前記得られたアクチュエータ駆動信号を前記ピエゾアクチュエータにくり返し加えるものである請求項7記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項9】
前記所定の読出開始信号はインデックス信号あるいはセクタ信号であり、前記複合磁気ヘッドを前記所定のトラックに位置決めする前記ステップは、前記トラックの偏心をカバーする前後移動が可能な位置において前記アクチュエータによる前記複合磁気ヘッドの移動を固定するものである請求項8記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項10】
さらに、サーボ位置決めステップを有し、このサーボド位置決めステップは、前記複合磁気ヘッドに対してONトラックサーボ制御をして前記所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを位置決めするものであり、前記ONトラックサーボ制御は、前記所定のトラックに対応する前記サーボ情報を読出してこのサーボ情報に応じて前記ピエゾアクチュエータを駆動する制御である請求項9記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項11】
さらに、サーボ位置決め制御回路を有し、このサーボ位置決め制御回路は、前記ONトラックサーボ制御をしかつ前記ポジション検出信号を発生するものであり、前記所定のトラックへの前記複合ヘッドの位置決めは、前記サーボ位置決め制御回路における前記ONトラックサーボ制御を無効にして行われる請求項10記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ駆動ステップは、前記複合磁気ヘッドを前記ディスク半径方向において前後にダイナミックに移動させる、加振駆動ステップを有し、この加振駆動ステップは、前記所定の読出開始信号に同期させて前記駆動開始電圧値から前記アクチュエータの駆動を開始し、前記得られたアクチュエータ駆動信号を前記ピエゾアクチュエータにくり返し加えて、前記所定のトラックに前記複合磁気を位置決めするものであり、
この加振駆動ステップにより前記複合磁気ヘッドが前記ディスク半径方向に振動する駆動状態において前記所定のトラックに前記複合磁気ヘッドが位置決めされた後に前記サーボ位置決め制御回路により前記ONトラックサーボ制御において前記複合ヘッドが前記所定のトラックに位置決めされる請求項11記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法。
【請求項13】
多数のトラックを有しその各トラックに対応してサーボ情報が設定された回転するディスクと、粗動移動ステージと、この粗動移動ステージに搭載された微動移動ステージと、この微動移動ステージに搭載された複合磁気ヘッドと、偏心して回転する所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを追従させて位置決めするためにディスク半径方向に高速に前記複合磁気ヘッドを移動させるアクチュエータとを有し、前記所定のトラックに対してヘッドを位置決めする、偏心したトラックに対するヘッド位置決め方法において、
前記ディスク1回転におけるトラックの偏心量多数について前記偏心量のそれぞれに対応するような前記アクチュエータの伸縮特性を得るための多数の駆動波形をデータとして記憶するメモリと、
前記サーボ情報を読出して前記所定のトラックからのヘッド変位量を示す信号として前記ディスク1回転における前記複合磁気ヘッドのポジション検出信号を発生するポジション検出信号発生回路と、
前記ポジション検出信号に基づいて前記複合磁気ヘッド位置のずれ量に対応する振幅と最大偏心をする回転角度とを検出する振幅・回転角度検出手段とを備え、
前記振幅により最適な前記駆動波形を前記メモリから読出し、前記最大偏心をする回転角度を合わせた駆動波形を生成して前記アクチュエータを駆動することにより前記所定のトラックが変位する方向にヘッドを移動させるヘッド位置決め制御装置。
【請求項14】
前記メモリは、前記多数のトラック偏心量のそれぞれに応じた偏心したトラックからの前記複合磁気ヘッドの最大位置ずれ量のそれぞれに対して、それぞれの前記最大位置ずれ量に対応する前記アクチュエータの最大伸縮量それぞれを前記アクチュエータにそれぞれに発生させる正弦波類似の前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶する記憶テーブルを有する請求項13記載のヘッド位置決め制御装置。
【請求項15】
多数のトラックを有しその各トラックに対応してサーボ情報が設定された回転するディスクと、粗動移動ステージと、この粗動移動ステージに搭載された微動移動ステージと、この微動移動ステージに搭載された複合磁気ヘッドと、偏心して回転する所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを追従させて位置決めするためにディスク半径方向に高速に前記複合磁気ヘッドを移動させるアクチュエータとを有し、前記所定のトラックに対してヘッドを位置決めするヘッド位置決め制御装置において、
前記アクチュエータによる前記複合磁気ヘッドの移動を固定した状態で前記微動移動ステージを移動させて前記複合磁気ヘッドを所定のトラックに位置決めするヘッド位置決め手段と、
所定の読出開始信号に応じて前記複合ヘッドから前記サーボ情報の読出信号を受けて偏心して回転する前記所定のトラックからの前記複合磁気ヘッドの位置ずれに対応するトラック1周分の前記複合磁気ヘッドのポジション検出信号を発生するポジション検出信号発生回路と、
前記ポジション検出信号発生回路が発生する前記トラック1周分のポジション検出信号における振幅と前記ポジション検出信号における、前記所定の読出開始信号の位置から最大ピーク位置までの回転角度とを検出する振幅・回転角度検出手段と、
多数のトラック偏心量のそれぞれに対応する前記アクチュエータの多数の伸縮データとして前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶した記憶テーブルとを備え、
前記ポジション検出信号の振幅が示す最大位置ずれ量に対応する最大伸縮量を持つアクチュエータ駆動信号を前記記憶テーブルから得て、このアクチュエータ駆動信号上において前記回転角度により決定される前記所定の読出開始信号の発生タイミングに対応する位置を基準として前記所定の読出開始信号の発生に応じて前記得られたアクチュエータ駆動信号あるいはこの駆動信号の波形を反転した波形を持つ信号により前記アクチュエータを駆動して前記複合磁気ヘッドが前記所定のトラックの偏心方向に追従するように前記所定のトラックに前記複合磁気を位置決めするヘッド位置決め制御装置。
【請求項16】
前記メモリは、前記多数のトラック偏心量のそれぞれに応じた偏心したトラックからの前記複合磁気ヘッドの最大位置ずれ量のそれぞれに対して、それぞれの前記最大位置ずれ量に対応する前記アクチュエータの最大伸縮量それぞれを前記アクチュエータにそれぞれに発生させる正弦波類似の前記アクチュエータの駆動信号を多数記憶する記憶テーブルを有する請求項15記載のヘッド位置決め制御装置。
【請求項17】
さらに、アクチュエータ駆動手段を有し、このアクチュエータ駆動手段は、前記得られたアクチュエータ駆動信号あるいはこの駆動信号の波形を反転した波形を持つ前記信号により前記アクチュエータを駆動しかつ前記所定の読出開始信号の発生タイミングに対応する位置を前記回転角度により決定される前記アクチュエータの駆動開始電圧値として得るものであり、
前記振幅・回転角度検出手段は、前記所定の読出開始信号の位置から最初の前記最大ピーク位置までの角度を前記回転角度として検出するものである請求項16記載のヘッド位置決め制御装置。
【請求項18】
さらに、位相合わせ手段を有し、この位相合わせ手段は、前記得られたアクチュエータ駆動信号の位相を前記ポジション検出信号の位相に合わせるあるいは180度相違する位相に合わせるものであり、
前記アクチュエータ駆動手段は、前記位相に合わせ手段により位置合わせがなされた前記得られたアクチュエータ駆動信号から前記駆動開始電圧値を得る請求項17記載のヘッド位置決め制御装置。
【請求項19】
前記位相合わせ手段は、前記得られたアクチュエータ駆動信号と前記ポジション検出信号の波形の位相差を検出してこれらの信号の位相合わせをするものであり、
前記アクチュエータの前記最大伸縮量は、前記アクチュエータの伸縮のセンタを基準とした最大伸び量と最大縮量に対応するものであり、
前記アクチュエータ駆動手段は、前記駆動開始電圧値から前記アクチュエータの駆動を開始し、前記得られたアクチュエータ駆動信号により前記ポジション検出信号が示す前記所定のトラックからの前記最大位置ずれ量と前記最大伸縮量とが一致するように前記アクチュエータを駆動する請求項18記載のヘッド位置決め制御装置。
【請求項20】
前記アクチュエータはピエゾアクチュエータであり、前記アクチュエータ駆動手段は、前記得られたアクチュエータ駆動信号を前記ピエゾアクチュエータにくり返し加える請求項19記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め制御装置。
【請求項21】
さらに、プロセッサとメモリとを有するデータ処理・制御装置を有し、前記振幅・回転角度検出手段と前記位相合わせ手段と前記ヘッド位置決め手段とが前記メモリに記憶されたプログラムを前記プロセッサが実行することで実現される請求項18記載の偏心したトラックに対するヘッド位置決め制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−218675(P2010−218675A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31351(P2010−31351)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】