側溝の蓋支持構造
【課題】溝蓋2のがたつきを防止しながら、耐荷重性を得ることができる側溝の蓋支持構造を提供する。
【解決手段】側溝ブロック1の蓋受け面1bに形成した複数の凹部10を形成する。各凹部10には、凹部10の深さより背が高く、かつ凹部10より体積の小さい弾性体3を、それぞれ配置する。そして、下面2cが平坦面に構成された溝蓋2を、この弾性体3上に載置する。通常時は、弾性体3の弾性力により溝蓋2のがたつきが防止される。一方、溝蓋2に大きな荷重が作用した際には弾性体3が凹部10内で弾性変形して凹部10内に収まることで、溝蓋2を蓋受け面1b全体で支持して高い耐荷重性を得る。
【解決手段】側溝ブロック1の蓋受け面1bに形成した複数の凹部10を形成する。各凹部10には、凹部10の深さより背が高く、かつ凹部10より体積の小さい弾性体3を、それぞれ配置する。そして、下面2cが平坦面に構成された溝蓋2を、この弾性体3上に載置する。通常時は、弾性体3の弾性力により溝蓋2のがたつきが防止される。一方、溝蓋2に大きな荷重が作用した際には弾性体3が凹部10内で弾性変形して凹部10内に収まることで、溝蓋2を蓋受け面1b全体で支持して高い耐荷重性を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の端などに施工される側溝の蓋支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の端などに施工される側溝は、一般に、横断面が略U字形に形成されたコンクリート製の複数個の側溝ブロックを流路方向に並べて固定し、この側溝ブロックの左右両側壁部上部に形成された蓋受け面に跨ってコンクリート製の溝蓋を載置して構成されている。
【0003】
このような側溝においては、蓋受け面に孔部を形成して、この孔部に緩衝体を上面が僅かに突出するように嵌め込んでおき、溝蓋を前記緩衝体の上面で支持することで、溝蓋のがたつきを抑制する技術が提案されている(下記特許文献1)。
【0004】
また、蓋受け面と溝蓋の下面に孔部を形成して、これら上下の孔部に緩衝ピンの上端部および下端部を嵌め込んで溝蓋の水平方向の位置決めを行うとともに、前記緩衝ピンの高さ方向中央にワッシャ状のフランジ部を形成し、このフランジ部を蓋受け面と溝蓋の下面の間に挟み込ませることで、溝蓋のがたつきを抑制する技術が提案されている(下記特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−291119号公報
【特許文献2】特開2004−308326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のように、緩衝体の上面で蓋体を支持する構成では、蓋体は局所的に配置された緩衝ピンとの接触部分で支持されることになるため、耐荷重性の点で改善の余地があった。
【0006】
また、前記特許文献2のように、緩衝ピンのフランジ部で蓋体を支持する構成でも、蓋体は局所的な接触部分で支持されることとになるため、耐荷重性の点で改善の余地があった。さらに、前記特許文献2のように、蓋受け面側と溝蓋側の孔部に緩衝ピンを嵌めて位置決めするには、コンクリート製の重量のある溝蓋の孔部で蓋受け面側の孔部に挿入された緩衝ピンの上部を探らなければならず、施工性の点でも問題があった。
【0007】
なお、従来、側溝ブロックの蓋受け面のほぼ全長にわたってゴム製の緩衝ベルトを設けて溝蓋のがたつきを抑制する方法も提案されているが、このようにすると、蓋受け面に置かれた溝蓋を位置決めのために移動させることで緩衝ベルトが捲れてしまいやすいという問題がある。
【0008】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、溝蓋のがたつきを防止しながら、耐荷重性を得ることができる側溝の蓋支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の手段を提供する。
【0010】
[1]側溝における蓋受け面に複数の凹部を形成し、
前記凹部の深さより背が高く、かつ前記凹部より体積の小さい弾性体を、前記凹部にそれぞれ配置し、
前記蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成された溝蓋を、前記弾性体上に載置したことを特徴とする側溝の蓋支持構造。
【0011】
[2]前記弾性体は、流路方向に沿った垂直断面形状が円形である前項1に記載の側溝の蓋支持構造。
【0012】
[3]前記弾性体が球形であり、前記凹部が略凹球面状である前項1または2に記載の側溝の蓋支持構造。
【0013】
[4]前記凹部の内面が滑性面で構成されている前項1〜3のいずれかに記載の側溝の蓋支持構造。
【発明の効果】
【0014】
上記発明[1]によれば、蓋受け面から突出している弾性体上に溝蓋を載置することによって、弾性体の弾性力により溝蓋のがたつきを防止できるとともに、この弾性体が体積を凹部より小さいため、溝蓋に大きな荷重が作用した際には弾性体は凹部内で弾性変形して凹部内に収まって、溝蓋を蓋受け面全体で支持することができ、これにより高い耐荷重性を得ることができる。また溝蓋の蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成されているため、溝蓋を一旦、蓋受け面の弾性体上に載置してから溝蓋を水平方向に移動させて位置決めを行うことができ、溝蓋の設置作業も容易である。さらに、弾性体は蓋受け面において局所的に配置されているため、蓋受け面の全面に配置された緩衝ベルトのように溝蓋の位置決めによって捲れてしまうこともない。
【0015】
上記発明[2]によれば、前記弾性体の流路方向に沿った垂直断面形状を円形にしたため、溝蓋を流路方向について位置決めする際、溝蓋を支持する弾性体が凹部内で回転することで、溝蓋を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0016】
上記発明[3]によれば、弾性体を球形とし、凹部を略凹球面状としたため、溝蓋を流路方向に直交する幅方向について位置決めする際にも、溝蓋を支持する弾性体が凹部内で回転することで、溝蓋を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0017】
上記発明[4]によれば、凹部の内面を滑性面で構成したため、弾性体を凹部内で滑らかに回転させることができ、これにより溝蓋の位置決めをより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施形態にかかる溝蓋支持構造が適用された側溝の施工状態を示す斜視図、図2は、同側溝の分解斜視図、図3は、同側溝の溝蓋を開けた状態における平面図である。
【0020】
この側溝の溝蓋支持構造は、側溝ブロック1と、溝蓋2と、弾性体3とを備えている。
【0021】
側溝ブロック1は、流路方向に複数個が並べられることで側溝Sを形成するものである。側溝ブロック1は、例えばコンクリートにより、横断面が略U字形に成形されており、その左右の両側壁部1a,1bおよび底壁部1cで囲まれる空間が側溝Sを構成する。
【0022】
側溝ブロック1の左右の両側壁部1a,1bの各上部には、溝蓋2が設置される蓋受け面11a,11bがそれぞれ形成されている。
【0023】
左右の蓋受け面11a,11bの各外端には、流路方向の全長にわたって、溝蓋逸脱阻止用の左右の立壁部11c,11dがそれぞれ一体形成されており、これら立壁部11c,11dの各内面111c,111dは、両者111c,111d間の幅寸が上方に向かって拡がる傾斜面となっている。
【0024】
左右の蓋受け面11a,11bには、複数個の凹部10が形成されている。凹部10の内面は、滑らかな表面を有する雄型を用いたコンクリート成形により平滑面に仕上げられている。この実施形態では、左右の蓋受け面11a,11bのそれぞれに2つずつ、合計4つの凹部10が形成されている。
【0025】
図4は、側溝ブロックの横断面図、図5は、側溝ブロックに形成された凹部の拡大断面図である。これらの図に示すように、各凹部10は、開口側が拡がる凹球面状の断面形状となっている。
【0026】
溝蓋2は、側溝ブロック1の左右の蓋受け面11a,11bに設置され、側溝Sの上方の開口を覆うものである。溝蓋2は、例えばコンクリートにより、四角形の板状に成形されており、その左右の幅寸は、側溝ブロック1の立壁部11c,11dの内側に収まる寸法に設定されている。溝蓋2の厚み寸法tは、前記立壁部11c,11dの高さ寸法Tと同程度に設定されている。
【0027】
溝蓋2は、その下面2aの少なくとも左右の蓋受け面11a,11bに対向する部位が平坦面に構成されており、また、その幅方向の左右両側面2a,2bは、前記側溝ブロック1における左右両立壁部11c,11dの各内面111c,111dに対応した傾斜面となっている。
【0028】
弾性体3は、蓋受け面11a,11bに形成された凹部10にそれぞれ配置され、溝蓋2を下面から弾性支持するものである。弾性体3は、例えばゴムにより球形に成形されている。
【0029】
図6は、側溝ブロックの凹部に弾性体を配置した状態を示す横断面図、図7は、同拡大断面図である。
【0030】
これらの図に示すように、弾性体3は、側溝ブロック1に形成された凹部10の深さより背が高く、すなわち凹部10の深さより大きな直径の球体として構成され、凹部10内に配置したとき、その頂部3aが蓋受け面11a,11bから僅かに突出するようになっている。
【0031】
また、弾性体3は、凹部10より小さい体積で構成され、後述するように大きく弾性変形した際には凹部10内に収まることができるようになっている。
【0032】
図8は、側溝ブロックに溝蓋を設置した状態を示す横断面図、図9は、同拡大断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、側溝ブロックに設置される溝蓋2は、通常時は、溝蓋2は弾性体3上に載置された状態で、弾性体3によって支持されるようになっている。すなわち、弾性体3は、溝蓋2が載置されるとその重量によって弾性変形するが、弾性体3の頂部3aの高さが、蓋受け面11a,11bより高い位置で止まっており、溝蓋2の下面2cと蓋受け面11a,11bには隙間gが残されている。また、弾性体3上に溝蓋2が載置された状態では、凹部10内には弾性体3の変形を許容できる空間Pが残されている。
【0034】
このような構成により、溝蓋2に作用する荷重がたとえば歩行者や乗用車が通過した程度の比較的小さいものである場合には、前記隙間gより小さい弾性体3の弾性変形によって溝蓋2が支えられ、弾性体3の弾性力によって溝蓋2のがたつきが防止される。そして、溝蓋2と蓋受け面11a,11bとの接触による騒音の発生を抑えることができる。
【0035】
また、経年変化等で溝蓋2や側溝ブロックの蓋受け面11a,11bが変形した場合でも、各弾性体3の頂部3aが蓋受け面11a,11bに埋没しない弾性変形量で支持できる範囲内であれば、直ちに溝蓋2と蓋受け面11a,11bとが接触して騒音が発生することを防止できる。
【0036】
図10は、溝蓋に大きな荷重が作用した状態を示す側溝の横断面図、図11は、同拡大断面図である。
【0037】
これらの図に示すように、溝蓋2に作用する荷重がたとえば大型トラックのような大きなものである場合には、弾性体3は、隙間g分だけ大きく弾性変形してその頂部3aが蓋受け面11a,11bの高さまで沈下し、凹部10内に収まる。すなわち、凹部10内には上述したように空間Pが残されているため、弾性体3の蓋受け面11a,11bの上側に位置していた体積分が、この空間Pを利用して、凹部10の内側に移動する。
【0038】
こうして弾性体3が凹部10内に収まることで、溝蓋2の下面2aは蓋受け面11a,11bの全体と面接触して支持されることになり、高い耐荷重性を得ることができる。
【0039】
このような蓋支持構造を有する側溝の施工は、所定の設置場所に複数の側溝ブロック1…を並べて固定した後、側溝ブロック1…の各凹部10に弾性体3を配置して、この弾性体3上に順次溝蓋2を載置することによって行われる。
【0040】
この溝蓋2の載置作業では、まず重機等で吊り上げた溝蓋2を側溝ブロック1の左右の蓋受け面11a,11b上に降ろすが、溝蓋2の下面は平坦面に構成されており、弾性体3と係合あるいは嵌合等させる構成ではないため、正規の載置位置からずれていても、とりあえず弾性体3上に載置することができる。
【0041】
次に、一旦弾性体3上に載置した溝蓋2の載置位置のずれを修正する位置決め作業を行う。
【0042】
図12は、溝蓋の位置決め作業の説明断面図である。
【0043】
この位置決め作業は、溝蓋2を弾性体3上で移動させることによって行うが、弾性体3は蓋受け面11a,11bにおいて局所的に配置され、溝蓋2と弾性体3との接触が局所的であるため、溝蓋2の移動をスムーズに行うことができる。また、従来の蓋受け面11a,11bの全面に緩衝ベルトが配置された構成のように、溝蓋2をずらす移動動作を行うことによって緩衝ベルト等が捲れてしまうようなおそれもない。
【0044】
また、この実施形態では、弾性体3が球形に、凹部10が凹球面状に構成され、さらに凹部10の内面が活性面で構成されているため、弾性体3が凹部10内で滑りながら任意の方向に容易に回転することができる。これにより、弾性体3上に載置された溝蓋2は、弾性体3の凹部10内での転がり支持によって、流路方向あるいは流路方向に直交する幅方向について容易に移動させて位置決めすることができ、優れた施工性を得ることができる。
【0045】
以上のように、この実施形態にかかる側溝の蓋受け構造によると、蓋受け面11a,11bから突出している弾性体3上に溝蓋2を載置するため、弾性体3の弾性力により溝蓋2のがたつきを防止できる。
【0046】
また、弾性体3の体積が凹部10より小さいため、溝蓋2に大きな荷重が作用した際には弾性体3が凹部10内で弾性変形して凹部10内に収まり、溝蓋2を蓋受け面11a,11b全体で支持することができ、これにより高い耐荷重性を得ることができる。
【0047】
また、溝蓋2の蓋受け面11a,11bと対向する下面2cが平坦面に構成されているため、溝蓋2を一旦、蓋受け面11a,11bの弾性体3上に載置してから溝蓋2を水平方向に移動させて位置決めを行うことができ、溝蓋2の設置作業も容易である。
【0048】
さらに、弾性体3は蓋受け面11a,11bにおいて局所的に配置されているため、蓋受け面11a,11bの全面に配置された緩衝ベルトのように溝蓋2の位置決めによって捲れてしまうこともない。
【0049】
また、弾性体3を球形とし、凹部10を略凹球面状としたため、溝蓋2を流路方向あるいは流路方向に直交する幅方向について位置決めする際に、溝蓋2を支持する弾性体3が凹部10内で回転することで、溝蓋2を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0050】
また、凹部10の内面を滑性面で構成したため、弾性体3を凹部10内で滑らかに回転させることができ、これにより溝蓋2の位置決めをより容易に行うことができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、弾性体3を球形に構成したが、溝蓋2の流路方向についての位置決め作業性向上の観点からは、弾性体3が流路方向について回転しやすいように、弾性体3の流路方向に沿った垂直断面形状のみを円形としてもよい。
【0052】
図13は、円柱形状の弾性体を用いた側溝の蓋支持構造の斜視図である。図14は、同横断面図である。これらの図に示すように、弾性体3’を円柱状に構成し、凹部10’を略ハーフパイプ状に構成して、弾性体3’の頂部3a’が蓋受け面11a,11bから僅かに突出するようにすれば、上述した実施形態と同様にがたつきを防止しながら高い耐荷重性が得られるとともに、溝蓋2を流路方向について容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0053】
また、上記実施形態では、凹部10の内面を滑らかな表面を有する雄型を用いたコンクリート成形によって平滑面に仕上げたが、図15に示すように、滑性に優れた樹脂等によって凹部10の内面に塗布してコーティング層12を形成することで、弾性体3が凹部10内で容易に回転するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、各溝蓋2を四隅近くに配置された4つの弾性体3で支持するように、蓋受け面11a,11bに凹部10を形成したが、左右の溝受け面11a,11bに3つ以上、合計6つ以上の凹部10を形成して、6つ以上の弾性体3に溝蓋2を載置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施形態にかかる溝蓋支持構造が適用された側溝の施工状態を示す斜視図である。
【図2】同側溝の分解斜視図である。
【図3】同側溝の溝蓋を開けた状態における平面図である。
【図4】側溝ブロックの横断面図である。
【図5】側溝ブロックに形成された凹部の拡大断面図である。
【図6】側溝ブロックの凹部に弾性体を配置した状態を示す横断面図である。
【図7】同拡大断面図である。
【図8】側溝ブロックに溝蓋を設置した状態を示す横断面図である。
【図9】同拡大断面図である。
【図10】溝蓋に大きな荷重が作用した状態を示す側溝の横断面図である。
【図11】同拡大断面図である。
【図12】溝蓋の位置決め作業の説明断面図である。
【図13】円柱形状の弾性体を用いた側溝の蓋支持構造の斜視図である。
【図14】同横断面図である。
【図15】凹部の内面に滑性面層を設けた断面説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 側溝ブロック
2 溝蓋
2a 溝蓋の平坦下面
3 弾性体
10 凹部
11a,11b 蓋受け面
12 コーティング層
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の端などに施工される側溝の蓋支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の端などに施工される側溝は、一般に、横断面が略U字形に形成されたコンクリート製の複数個の側溝ブロックを流路方向に並べて固定し、この側溝ブロックの左右両側壁部上部に形成された蓋受け面に跨ってコンクリート製の溝蓋を載置して構成されている。
【0003】
このような側溝においては、蓋受け面に孔部を形成して、この孔部に緩衝体を上面が僅かに突出するように嵌め込んでおき、溝蓋を前記緩衝体の上面で支持することで、溝蓋のがたつきを抑制する技術が提案されている(下記特許文献1)。
【0004】
また、蓋受け面と溝蓋の下面に孔部を形成して、これら上下の孔部に緩衝ピンの上端部および下端部を嵌め込んで溝蓋の水平方向の位置決めを行うとともに、前記緩衝ピンの高さ方向中央にワッシャ状のフランジ部を形成し、このフランジ部を蓋受け面と溝蓋の下面の間に挟み込ませることで、溝蓋のがたつきを抑制する技術が提案されている(下記特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−291119号公報
【特許文献2】特開2004−308326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のように、緩衝体の上面で蓋体を支持する構成では、蓋体は局所的に配置された緩衝ピンとの接触部分で支持されることになるため、耐荷重性の点で改善の余地があった。
【0006】
また、前記特許文献2のように、緩衝ピンのフランジ部で蓋体を支持する構成でも、蓋体は局所的な接触部分で支持されることとになるため、耐荷重性の点で改善の余地があった。さらに、前記特許文献2のように、蓋受け面側と溝蓋側の孔部に緩衝ピンを嵌めて位置決めするには、コンクリート製の重量のある溝蓋の孔部で蓋受け面側の孔部に挿入された緩衝ピンの上部を探らなければならず、施工性の点でも問題があった。
【0007】
なお、従来、側溝ブロックの蓋受け面のほぼ全長にわたってゴム製の緩衝ベルトを設けて溝蓋のがたつきを抑制する方法も提案されているが、このようにすると、蓋受け面に置かれた溝蓋を位置決めのために移動させることで緩衝ベルトが捲れてしまいやすいという問題がある。
【0008】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、溝蓋のがたつきを防止しながら、耐荷重性を得ることができる側溝の蓋支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記の手段を提供する。
【0010】
[1]側溝における蓋受け面に複数の凹部を形成し、
前記凹部の深さより背が高く、かつ前記凹部より体積の小さい弾性体を、前記凹部にそれぞれ配置し、
前記蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成された溝蓋を、前記弾性体上に載置したことを特徴とする側溝の蓋支持構造。
【0011】
[2]前記弾性体は、流路方向に沿った垂直断面形状が円形である前項1に記載の側溝の蓋支持構造。
【0012】
[3]前記弾性体が球形であり、前記凹部が略凹球面状である前項1または2に記載の側溝の蓋支持構造。
【0013】
[4]前記凹部の内面が滑性面で構成されている前項1〜3のいずれかに記載の側溝の蓋支持構造。
【発明の効果】
【0014】
上記発明[1]によれば、蓋受け面から突出している弾性体上に溝蓋を載置することによって、弾性体の弾性力により溝蓋のがたつきを防止できるとともに、この弾性体が体積を凹部より小さいため、溝蓋に大きな荷重が作用した際には弾性体は凹部内で弾性変形して凹部内に収まって、溝蓋を蓋受け面全体で支持することができ、これにより高い耐荷重性を得ることができる。また溝蓋の蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成されているため、溝蓋を一旦、蓋受け面の弾性体上に載置してから溝蓋を水平方向に移動させて位置決めを行うことができ、溝蓋の設置作業も容易である。さらに、弾性体は蓋受け面において局所的に配置されているため、蓋受け面の全面に配置された緩衝ベルトのように溝蓋の位置決めによって捲れてしまうこともない。
【0015】
上記発明[2]によれば、前記弾性体の流路方向に沿った垂直断面形状を円形にしたため、溝蓋を流路方向について位置決めする際、溝蓋を支持する弾性体が凹部内で回転することで、溝蓋を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0016】
上記発明[3]によれば、弾性体を球形とし、凹部を略凹球面状としたため、溝蓋を流路方向に直交する幅方向について位置決めする際にも、溝蓋を支持する弾性体が凹部内で回転することで、溝蓋を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0017】
上記発明[4]によれば、凹部の内面を滑性面で構成したため、弾性体を凹部内で滑らかに回転させることができ、これにより溝蓋の位置決めをより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施形態にかかる溝蓋支持構造が適用された側溝の施工状態を示す斜視図、図2は、同側溝の分解斜視図、図3は、同側溝の溝蓋を開けた状態における平面図である。
【0020】
この側溝の溝蓋支持構造は、側溝ブロック1と、溝蓋2と、弾性体3とを備えている。
【0021】
側溝ブロック1は、流路方向に複数個が並べられることで側溝Sを形成するものである。側溝ブロック1は、例えばコンクリートにより、横断面が略U字形に成形されており、その左右の両側壁部1a,1bおよび底壁部1cで囲まれる空間が側溝Sを構成する。
【0022】
側溝ブロック1の左右の両側壁部1a,1bの各上部には、溝蓋2が設置される蓋受け面11a,11bがそれぞれ形成されている。
【0023】
左右の蓋受け面11a,11bの各外端には、流路方向の全長にわたって、溝蓋逸脱阻止用の左右の立壁部11c,11dがそれぞれ一体形成されており、これら立壁部11c,11dの各内面111c,111dは、両者111c,111d間の幅寸が上方に向かって拡がる傾斜面となっている。
【0024】
左右の蓋受け面11a,11bには、複数個の凹部10が形成されている。凹部10の内面は、滑らかな表面を有する雄型を用いたコンクリート成形により平滑面に仕上げられている。この実施形態では、左右の蓋受け面11a,11bのそれぞれに2つずつ、合計4つの凹部10が形成されている。
【0025】
図4は、側溝ブロックの横断面図、図5は、側溝ブロックに形成された凹部の拡大断面図である。これらの図に示すように、各凹部10は、開口側が拡がる凹球面状の断面形状となっている。
【0026】
溝蓋2は、側溝ブロック1の左右の蓋受け面11a,11bに設置され、側溝Sの上方の開口を覆うものである。溝蓋2は、例えばコンクリートにより、四角形の板状に成形されており、その左右の幅寸は、側溝ブロック1の立壁部11c,11dの内側に収まる寸法に設定されている。溝蓋2の厚み寸法tは、前記立壁部11c,11dの高さ寸法Tと同程度に設定されている。
【0027】
溝蓋2は、その下面2aの少なくとも左右の蓋受け面11a,11bに対向する部位が平坦面に構成されており、また、その幅方向の左右両側面2a,2bは、前記側溝ブロック1における左右両立壁部11c,11dの各内面111c,111dに対応した傾斜面となっている。
【0028】
弾性体3は、蓋受け面11a,11bに形成された凹部10にそれぞれ配置され、溝蓋2を下面から弾性支持するものである。弾性体3は、例えばゴムにより球形に成形されている。
【0029】
図6は、側溝ブロックの凹部に弾性体を配置した状態を示す横断面図、図7は、同拡大断面図である。
【0030】
これらの図に示すように、弾性体3は、側溝ブロック1に形成された凹部10の深さより背が高く、すなわち凹部10の深さより大きな直径の球体として構成され、凹部10内に配置したとき、その頂部3aが蓋受け面11a,11bから僅かに突出するようになっている。
【0031】
また、弾性体3は、凹部10より小さい体積で構成され、後述するように大きく弾性変形した際には凹部10内に収まることができるようになっている。
【0032】
図8は、側溝ブロックに溝蓋を設置した状態を示す横断面図、図9は、同拡大断面図である。
【0033】
これらの図に示すように、側溝ブロックに設置される溝蓋2は、通常時は、溝蓋2は弾性体3上に載置された状態で、弾性体3によって支持されるようになっている。すなわち、弾性体3は、溝蓋2が載置されるとその重量によって弾性変形するが、弾性体3の頂部3aの高さが、蓋受け面11a,11bより高い位置で止まっており、溝蓋2の下面2cと蓋受け面11a,11bには隙間gが残されている。また、弾性体3上に溝蓋2が載置された状態では、凹部10内には弾性体3の変形を許容できる空間Pが残されている。
【0034】
このような構成により、溝蓋2に作用する荷重がたとえば歩行者や乗用車が通過した程度の比較的小さいものである場合には、前記隙間gより小さい弾性体3の弾性変形によって溝蓋2が支えられ、弾性体3の弾性力によって溝蓋2のがたつきが防止される。そして、溝蓋2と蓋受け面11a,11bとの接触による騒音の発生を抑えることができる。
【0035】
また、経年変化等で溝蓋2や側溝ブロックの蓋受け面11a,11bが変形した場合でも、各弾性体3の頂部3aが蓋受け面11a,11bに埋没しない弾性変形量で支持できる範囲内であれば、直ちに溝蓋2と蓋受け面11a,11bとが接触して騒音が発生することを防止できる。
【0036】
図10は、溝蓋に大きな荷重が作用した状態を示す側溝の横断面図、図11は、同拡大断面図である。
【0037】
これらの図に示すように、溝蓋2に作用する荷重がたとえば大型トラックのような大きなものである場合には、弾性体3は、隙間g分だけ大きく弾性変形してその頂部3aが蓋受け面11a,11bの高さまで沈下し、凹部10内に収まる。すなわち、凹部10内には上述したように空間Pが残されているため、弾性体3の蓋受け面11a,11bの上側に位置していた体積分が、この空間Pを利用して、凹部10の内側に移動する。
【0038】
こうして弾性体3が凹部10内に収まることで、溝蓋2の下面2aは蓋受け面11a,11bの全体と面接触して支持されることになり、高い耐荷重性を得ることができる。
【0039】
このような蓋支持構造を有する側溝の施工は、所定の設置場所に複数の側溝ブロック1…を並べて固定した後、側溝ブロック1…の各凹部10に弾性体3を配置して、この弾性体3上に順次溝蓋2を載置することによって行われる。
【0040】
この溝蓋2の載置作業では、まず重機等で吊り上げた溝蓋2を側溝ブロック1の左右の蓋受け面11a,11b上に降ろすが、溝蓋2の下面は平坦面に構成されており、弾性体3と係合あるいは嵌合等させる構成ではないため、正規の載置位置からずれていても、とりあえず弾性体3上に載置することができる。
【0041】
次に、一旦弾性体3上に載置した溝蓋2の載置位置のずれを修正する位置決め作業を行う。
【0042】
図12は、溝蓋の位置決め作業の説明断面図である。
【0043】
この位置決め作業は、溝蓋2を弾性体3上で移動させることによって行うが、弾性体3は蓋受け面11a,11bにおいて局所的に配置され、溝蓋2と弾性体3との接触が局所的であるため、溝蓋2の移動をスムーズに行うことができる。また、従来の蓋受け面11a,11bの全面に緩衝ベルトが配置された構成のように、溝蓋2をずらす移動動作を行うことによって緩衝ベルト等が捲れてしまうようなおそれもない。
【0044】
また、この実施形態では、弾性体3が球形に、凹部10が凹球面状に構成され、さらに凹部10の内面が活性面で構成されているため、弾性体3が凹部10内で滑りながら任意の方向に容易に回転することができる。これにより、弾性体3上に載置された溝蓋2は、弾性体3の凹部10内での転がり支持によって、流路方向あるいは流路方向に直交する幅方向について容易に移動させて位置決めすることができ、優れた施工性を得ることができる。
【0045】
以上のように、この実施形態にかかる側溝の蓋受け構造によると、蓋受け面11a,11bから突出している弾性体3上に溝蓋2を載置するため、弾性体3の弾性力により溝蓋2のがたつきを防止できる。
【0046】
また、弾性体3の体積が凹部10より小さいため、溝蓋2に大きな荷重が作用した際には弾性体3が凹部10内で弾性変形して凹部10内に収まり、溝蓋2を蓋受け面11a,11b全体で支持することができ、これにより高い耐荷重性を得ることができる。
【0047】
また、溝蓋2の蓋受け面11a,11bと対向する下面2cが平坦面に構成されているため、溝蓋2を一旦、蓋受け面11a,11bの弾性体3上に載置してから溝蓋2を水平方向に移動させて位置決めを行うことができ、溝蓋2の設置作業も容易である。
【0048】
さらに、弾性体3は蓋受け面11a,11bにおいて局所的に配置されているため、蓋受け面11a,11bの全面に配置された緩衝ベルトのように溝蓋2の位置決めによって捲れてしまうこともない。
【0049】
また、弾性体3を球形とし、凹部10を略凹球面状としたため、溝蓋2を流路方向あるいは流路方向に直交する幅方向について位置決めする際に、溝蓋2を支持する弾性体3が凹部10内で回転することで、溝蓋2を容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0050】
また、凹部10の内面を滑性面で構成したため、弾性体3を凹部10内で滑らかに回転させることができ、これにより溝蓋2の位置決めをより容易に行うことができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、弾性体3を球形に構成したが、溝蓋2の流路方向についての位置決め作業性向上の観点からは、弾性体3が流路方向について回転しやすいように、弾性体3の流路方向に沿った垂直断面形状のみを円形としてもよい。
【0052】
図13は、円柱形状の弾性体を用いた側溝の蓋支持構造の斜視図である。図14は、同横断面図である。これらの図に示すように、弾性体3’を円柱状に構成し、凹部10’を略ハーフパイプ状に構成して、弾性体3’の頂部3a’が蓋受け面11a,11bから僅かに突出するようにすれば、上述した実施形態と同様にがたつきを防止しながら高い耐荷重性が得られるとともに、溝蓋2を流路方向について容易に移動させて位置決めを行うことができる。
【0053】
また、上記実施形態では、凹部10の内面を滑らかな表面を有する雄型を用いたコンクリート成形によって平滑面に仕上げたが、図15に示すように、滑性に優れた樹脂等によって凹部10の内面に塗布してコーティング層12を形成することで、弾性体3が凹部10内で容易に回転するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、各溝蓋2を四隅近くに配置された4つの弾性体3で支持するように、蓋受け面11a,11bに凹部10を形成したが、左右の溝受け面11a,11bに3つ以上、合計6つ以上の凹部10を形成して、6つ以上の弾性体3に溝蓋2を載置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施形態にかかる溝蓋支持構造が適用された側溝の施工状態を示す斜視図である。
【図2】同側溝の分解斜視図である。
【図3】同側溝の溝蓋を開けた状態における平面図である。
【図4】側溝ブロックの横断面図である。
【図5】側溝ブロックに形成された凹部の拡大断面図である。
【図6】側溝ブロックの凹部に弾性体を配置した状態を示す横断面図である。
【図7】同拡大断面図である。
【図8】側溝ブロックに溝蓋を設置した状態を示す横断面図である。
【図9】同拡大断面図である。
【図10】溝蓋に大きな荷重が作用した状態を示す側溝の横断面図である。
【図11】同拡大断面図である。
【図12】溝蓋の位置決め作業の説明断面図である。
【図13】円柱形状の弾性体を用いた側溝の蓋支持構造の斜視図である。
【図14】同横断面図である。
【図15】凹部の内面に滑性面層を設けた断面説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 側溝ブロック
2 溝蓋
2a 溝蓋の平坦下面
3 弾性体
10 凹部
11a,11b 蓋受け面
12 コーティング層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝における蓋受け面に複数の凹部を形成し、
前記凹部の深さより背が高く、かつ前記凹部より体積の小さい弾性体を、前記凹部にそれぞれ配置し、
前記蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成された溝蓋を、前記弾性体上に載置したことを特徴とする側溝の蓋支持構造。
【請求項2】
前記弾性体は、流路方向に沿った垂直断面形状が円形である請求項1に記載の側溝の蓋支持構造。
【請求項3】
前記弾性体が球形であり、前記凹部が略凹球面状である請求項1または2に記載の側溝の蓋支持構造。
【請求項4】
前記凹部の内面が滑性面で構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の側溝の蓋支持構造。
【請求項1】
側溝における蓋受け面に複数の凹部を形成し、
前記凹部の深さより背が高く、かつ前記凹部より体積の小さい弾性体を、前記凹部にそれぞれ配置し、
前記蓋受け面と対向する下面が平坦面に構成された溝蓋を、前記弾性体上に載置したことを特徴とする側溝の蓋支持構造。
【請求項2】
前記弾性体は、流路方向に沿った垂直断面形状が円形である請求項1に記載の側溝の蓋支持構造。
【請求項3】
前記弾性体が球形であり、前記凹部が略凹球面状である請求項1または2に記載の側溝の蓋支持構造。
【請求項4】
前記凹部の内面が滑性面で構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の側溝の蓋支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−146553(P2007−146553A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344323(P2005−344323)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【特許番号】特許第3875987号(P3875987)
【特許公報発行日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(594149756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【特許番号】特許第3875987号(P3875987)
【特許公報発行日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(594149756)
【Fターム(参考)】
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