説明

側溝用ブロック

【課題】
コンクリート材料の使用量を少なくでき、かつ、十分な強度を確保可能で、しかも製造性も良好な側溝用ブロックを提供する。
【解決手段】
この側溝用ブロック1は、ほぼ枠状の断面を有して筒状に伸び、内部が排水路20をなすブロック本体10と、天井壁開口部14c及び側壁開口部12bとを備える。ブロック本体10は、その長手方向に沿って端面側から見たとき、排水路20の底壁11内面及び天井壁14内面に、それらの両隅から中央に向けて、底壁11及び天井壁14が次第に肉薄となるテーパ面21が形成されている。よって、せん断応力等が大きい底壁11及び天井壁14の両隅が肉厚なので十分な強度を確保でき、その中央を肉薄としたのでコンクリート材料の使用量が少なくなり、製造時の中枠の底壁及び天井壁もテーパ面となるので、コンクリート材料を効率良く流し込めて製造性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道の車道側の側辺に沿って設置される側溝用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩道と車道との境界部には、歩道や車道からの雨水等を集め、排水するための側溝用ブロックが配置されている。側溝用ブロックは、様々な形状のものが提案されており、代表的なものとしては、断面がU字形状をなしたブロックと、このブロックの上方の開口部に、断面L字型の側溝蓋や、グレーチング蓋を被せる形態のものが挙げられる。この他にも、ブロックと側溝蓋とを一体化した、いわゆる暗渠形状をなした側溝用ブロックも広く用いられている。
【0003】
下記特許文献1には、底部と、その両側に一体的に連結する側壁部と、該側壁部の上部同士を一体的に連結する天井部とを有し、内側に水路が形成されたコンクリート製排水溝が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、長手状の外筐の内部に形成された内部排水路と、前記内部排水路に連通するように、前記外筐の長手方向に沿って形成された上部導水口とを有した側溝構造が開示されている。その実施形態には、前記内部排水路は、その底面部分にて、両側から下方に傾斜あるいは湾曲する斜面と、斜面の下側端部が繋がるように略V字状とされた最底溝部とを有していることが記載されている。また、前記内部排水路の上面にも底面と同様、両側から斜面が形成されており、両斜面の交差部分に、上部導水口が設けられ、内部排水路と連通していることが併せて記載されている。
【特許文献1】特開2000−34770号公報
【特許文献2】特開2001−164642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、暗渠形状をなしたものは、ブロックと側溝蓋とが一体化されているために施工性に優れるが、製造のためのコンクリート材料の使用量が多いので、製造コストが増加し、ブロック1個当りの重量も増大していた。
【0006】
また、上記特許文献2の場合、外筐の上壁は、上部導水口によって、そのほぼ中央で切欠かれた形状となっているので、例えば、トラックの駐停車等により大きな荷重が加わったときに、強度面で不都合が生じる可能性がある。
【0007】
ところで、上記特許文献1及び2の双方とも、その内部に水路(内部排水路)を設けるために、中子を配置した状態で、コンクリート材料を流し込むようにしているが、特許文献2の場合においては、上部導水口によって、コンクリート材料の流れが分断されてしまうので、製造性に不都合が生じる場合がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、コンクリート材料の使用量を少なくすることができると共に、十分な強度を確保可能で、しかも、製造性も良好な側溝用ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の側溝用ブロックは、歩道の車道側の側辺に沿って設置される側溝用ブロックにおいて、ほぼ枠状の断面を有して筒状に伸び、内部が排水路をなすブロック本体と、このブロック本体の天井壁及び/又は車道側の側壁に設けられた開口部とを備え、前記ブロック本体は、その長手方向に沿って端面側から見たとき、前記排水路の底壁内面及び天井壁内面に、それらの両隅から中央に向けて、前記底壁及び前記天井壁が次第に肉薄となるテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、側溝用ブロックが荷重を受けたときに、圧縮応力及びせん断応力が最も大きく加わる、ブロック本体の底壁及び天井壁の両隅を肉厚としたので、十分な強度を確保することができると共に、ブロック本体の底壁及び天井壁の中央を肉薄としたので、製造時のコンクリート材料の使用量を少なくして製造コストを低減でき、軽量化も図れる。
【0011】
また、ブロック本体内部の排水路の底壁内面及び天井壁内面にはテーパ面が形成されているので、コンクリート材料を流し込んで側溝用ブロックを製造する際に、排水路を成形するための中枠においても、その底壁及び天井壁がテーパ面となる。そのため、側溝用ブロックを製造する際に、コンクリート材料を型枠の上方から、中枠のテーパ面に沿って効率良く流し込めるので、型枠内にコンクリート材料がスムーズに充填されて、側溝用ブロックの製造性が向上する。上記特許文献2のように、コンクリート材料の流れが分断されることがない。
【0012】
ところで、コンクリート材料は、セメント、砂利、砂、水、混和剤等を混練して作られ、その内部には空気が混入されている。空気や水が多すぎると、コンクリート材料の表面に気泡や水泡となって排出され、コンクリートブロックの品質に影響を及ぼすことがある。このような気泡や水泡は、暗渠型の側溝用ブロックを製造する際に、排水路を形成する中枠の下方、すなわち平面状をなした底壁の部分に停滞して溜まりやすいという問題があった。
【0013】
これに対して、本発明の側溝用ブロックを製造する際の中枠の底壁は、排水路のテーパ面に合わせて、長手方向に沿って端面側から見たときに、V字状のテーパ面となるので、気泡や空気が溜まりにくく、脱泡されやすくなり、品質のよい側溝用ブロックを得ることができる。
【0014】
更に、排水路の底壁内面は、上述したようにテーパ面をなしており、排水路を流れる雨水等の流速が速くなるので、排水路の底壁内面に泥や土砂等が溜まりにくく、排水効果を高めることができる。
【0015】
本発明の側溝用ブロックにおいては、前記ブロック本体の天井壁には、前記排水路と連通するスリット状又は矩形状の開口部が設けられていることが好ましい。これによれば、歩道や車道に溜まった雨水等を、天井壁の開口部を通して、ブロック本体内の排水路に流し込こめるので、歩道や車道の雨水等を効率よく排水できる。
【0016】
本発明の側溝用ブロックにおいては、前記ブロック本体の天井壁は、車道側の端縁から歩道側の端縁に至る途中部分が最も低くなるように傾斜したテーパ面が形成されており、このテーパ面の最も低くなった箇所に、前記開口部が配置されていることが好ましい。これによれば、歩道や車道に溜まった雨水等は、テーパ面によってスムーズ天井壁の開口部に集められるので、歩道や車道の排水性をより高めることができる。
【0017】
本発明の側溝用ブロックにおいては、前記ブロック本体の車道側の側壁には、長手方向に沿って集水溝が形成され、この集水溝の長手方向の途中箇所に、前記排水路に連通する開口部が形成されていることが好ましい。これによれば、車道のアスファルト等に染み込んだ雨水等を、効率よく排水することができる。
【0018】
本発明の側溝用ブロックにおいては、前記ブロック本体の長手方向の両端面には、シール部材を嵌合させるためのシール溝が設けられていることが好ましい。これによれば、側溝用ブロックを施工する際に、隣接した他の側溝用ブロックとのシール性を高め、漏水等を防止することができる。
【0019】
本発明の側溝用ブロックにおいては、前記ブロック本体の底壁には、前記天井壁に形成された前記開口部と整合した位置で、前記排水路と連通する開口部が形成されており、この開口部に、泥、土砂を溜めるための泥溜め容器が接続されていることが好ましい。これによれば、泥溜め容器に、泥や土砂を溜めることができるので、排水路を清掃するときに、溜まった泥等を効率良く排出できるので、清掃時の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の側溝用ブロックによれば、圧縮応力及びせん断応力が大きく加わる、ブロック本体の底壁及び天井壁の両隅を肉厚としたので、十分な強度を確保でき、かつ、底壁及び天井壁の中央を肉薄としたので、コンクリート材料の使用量が少なく製造コストを低減でき、軽量化も図れる。また、製造時に用いる中枠の底壁及び天井壁もテーパ面となるので、コンクリート材料を効率良く流し込むことができ、脱泡も容易となるので、側溝用ブロックの製造性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜7を参照して、本発明の側溝用ブロックの一実施形態を説明する。
この側溝用ブロック1は、図1に示すように、ほぼ枠状の断面で筒状に伸びるブロック本体10を有している。図2及び図3を併せて参照すると、このブロック本体10は、底壁11と、この底壁11の長手方向の両端から立設する一対の側壁12、13と、この側壁12、13に架設された天井壁14とで構成されている。
【0022】
ブロック本体10内部には、路面に降った雨水等を集めて、歩道や車道から排水するための、排水路20が形成されている。この排水路20の底壁11内面には、ブロック本体10の長手方向に沿って端面側から見たときに(図3(a)参照)、その両隅から中央に向かって、次第に低くなるテーパ面21が形成されている。これにより、ブロック本体10の底壁11は、両隅が肉厚で、中央が肉薄の形状をなしている。同様に、排水路20の天井壁14内面にも、両隅から中央に向かって次第に高くなるテーパ面21が形成され、ブロック本体10の天井壁14は、両隅が肉厚で、中央が肉薄の形状となっている。
【0023】
このテーパ面21は、内周の両角部を結ぶ水平方向の線分に対して、1〜19度の角度θ1で傾斜していることが好ましく、9〜15度の角度θ1で傾斜していることがより好ましい。θ1が、1度未満だと底壁11若しくは天井壁14の中央を薄くすることができないので、コンクリート材料の使用量を少なくできないので好ましくなく、19度を越えると底壁11若しくは天井壁14の両隅が薄くなりすぎて、強度が低下するので好ましくない。θ1が9〜15度であれば、コンクリート材料の使用量の低減、及び、強度の向上の双方を、効率よく図ることができる。
【0024】
ブロック本体10の車道側に配置される側壁12の上方には、長手方向に沿って所定深さの集水溝12aが形成されている。この集水溝12aの途中には、排水路20と連通する側壁開口部12bが、所定間隔をあけて複数設けられている。図3(c)を併せて参照すると、側壁開口部12bは、排水路20に向かって次第に縮径する形状をなし、排水路20の天井壁14内面の車道側の隅と連通している。
【0025】
ブロック本体10の歩道側に配置される側壁13の上端は、段状に切り欠かれて、段部13aが形成されている。この段部13aには、後述する縁石ブロック45の角部が載置される。
【0026】
ブロック本体10の天井壁14の外側壁面には、図3(a)に示すように、車道側の端縁から歩道側の端部の途中に至るまで次第に低くなるテーパ面14aが形成され、テーパ面14aの下端から、歩道側の側壁13に向けて、次第に高くなるテーパ面14bが形成されている。そして、テーパ面14aの最も低くなった箇所、より具体的には、テーパ面14aと、テーパ面14bとの交差した部分を中心とし所定幅でもって、排水路20と連通するスリット状の天井壁開口部14cが形成されている。この実施形態の天井壁開口部14cは、天井壁14の長手方向に沿って伸びており、更に、排水路20に向かって次第に縮径する形状をなし、排水路20の天井壁14内面における歩道側の隅と連通している。なお、テーパ面14aは、底壁11の平行面に対して、1〜4度の角度θ2で傾斜していることが好ましい。θ2が、1度未満だとテーパ面14aによる集水効果が得にくくなるので好ましくなく、4度を越えると天井壁14が肉厚となり、コンクリート材料の使用量が多くなるので好ましくない。
【0027】
ブロック本体10の長手方向の両端面には、排水路20の周囲を囲むように、所定深さでシール溝22が設けられている。このシール溝22には、図示しないシール部材が嵌合され、施工時に、隣接した他の側溝用ブロック1とのシール性を高める。
【0028】
なお、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム等の合成ゴムをスポンジ状に発泡させてなるスポンジゴム材と、このスポンジゴム材外周を被覆するブチルゴム系の粘着層とで構成される複合したシール部材を、上記シール溝22に嵌合させてもよい。このシール部材は、耐候性等に優れる上記合成ゴムを用いているので、外部環境等の影響による劣化を抑制して、長期に亘って良好な水密性が得られるようになる。
【0029】
また、シール溝22に予め接着材を塗布して一定時間放置し、接着材中の溶剤を揮散させた後に、上述したシール部材を嵌合させ、側溝用ブロック1の施工を行ってもよい。このように、接着材を介してシール溝22にシール部材を嵌合させるようにしたので、接着材を用いない場合と比べて耐水圧性が向上し、信頼性を向上させることができる。
【0030】
更に、水膨張性のブチルゴムを主成分としたシール部材を用いてもよい。このようなシール部材によれば、シール部材が水に浸ると、シール部材そのものが膨張するようになるので、シール部材とシール溝との接着性を高め、施工時の側溝用ブロック1間のシール性をより向上させる。
【0031】
また、図4(b)に示すように、ブロック本体10の長手方向に、所定間隔をあけて、かつ、側壁開口部12b及び天井壁開口部14cを避けた位置に、棒状の鋼材よりなる複数の矩形状の鉄筋23が埋設されている。これらの鉄筋23等によって、ブロック本体10の強度を高めている。この鉄筋23は図示しない長手方向に配設された鉄筋によって連結されている。
【0032】
なお、図5に示す底壁11及び天井壁14の中央における、かぶり厚T3は、埋設する鉄筋23の直径以上であることが好ましく一般的には10〜60mmである。また、底壁11及び天井壁14の中央における有効厚T1は、かぶり厚T3よりも厚いことが好ましく15〜300mmであり、底壁11及び天井壁14の両端における有効厚T2もかぶり厚T3よりも厚いことが好ましく15〜300mmである。有効厚T1が15mm未満、有効厚T2が15mm未満、かぶり厚T3が10mm未満の場合、肉厚が薄すぎて、コンクリート材料の圧縮強さに問題が生じるので好ましくない。一方、有効厚T1が300mm、有効厚T2が300mm、かぶり厚T3が60mmをそれぞれ超えると、肉厚が厚くなりすぎてコンクリート材料の使用量を少なくできず、軽量化が図れないので好ましくない。
【0033】
次に、本発明の側溝用ブロック1の製造方法について説明する。
この側溝用ブロック1は、図4(a)に示すような型枠30を用いて、型枠30にコンクリート材料を流し込むことによって製造される。コンクリート材料としては、例えばセメントと、砂、砂利等の骨材と、水とを含有する周知のものが使用される。
【0034】
なお、混和剤を用いて流動性を高め、スランプ(コンクリートの硬さの判断基準)が20cm〜25cm以下であるような、通常のコンクリート材料よりも流動性の良いコンクリート材料を用いてもよい。この際の混和剤としては、空気連行性(空気を連行して流動性を高める性質)を有する通常のAE(Air Entraininng agent)減水剤よりも高い減水性能を有し、かつ、良好なスランプ保持性能を持つものを用いることが好ましい。
【0035】
型枠30は、底枠31と、この底枠31の長手方向の両端から立設した一対の側枠32、32と、側枠32、32の両端面に当接する図示しない枠板とで構成され、上方が開口した形状をなしている。また、その長手方向には排水路20を形成するための中枠33が挿脱可能となっている。なお、この実施形態の場合、側溝用ブロック1は、上下面を反転して製造される。すなわち、型枠30の底枠31内周に、天井壁14のテーパ面14a、14bを形成するための断面L字状の部材34や、図中右側の側枠32内周に、集水溝12aを形成するための突条35等が配置されている。
【0036】
そして、型枠30を周知の成形装置に固定し、鉄筋23を型枠30内に配置して、更に、型枠30内に中枠33を挿入する。その状態で、前記成形装置によって型枠30を振動させながら、型枠30の上方開口部からコンクリート材料を流し込み、コンクリート材料を型枠30内にまんべんなく充填させる。その後、所定時間養生して硬化させた後、中枠33を抜き出して、型枠30内から側溝用ブロック1を抜き出すことにより、図4(b)に示す断面の側溝用ブロック1が製造される。
【0037】
この場合、ブロック本体10内部の排水路20の底壁11内面及び天井壁14内面にはテーパ面21が形成されている。そのため、図4(a)で示すように、コンクリート材料を型枠30内に流し込んで側溝用ブロック1を製造する際に必要な、排水路20を成形するための中枠33も、その底壁及び天井壁にテーパ面が形成される。したがって、側溝用ブロック1を製造する際に、型枠30の上方からコンクリート材料を流し込むと、図中矢印Fで示すように、中枠33の天井壁のテーパ面に沿って型枠30内に、スムーズにコンクリート材料が流し込まれる。このように、中枠33のテーパ面に沿って効率良く流し込めるので、型枠30内にコンクリート材料がスムーズに充填されて、側溝用ブロック1の製造性が向上する。また、上記特許文献2のように、コンクリート材料の流れが分断されることがない。
【0038】
なお、上述した混和剤による高い流動性及びスランプが20cm〜25cm以下であるコンクリート材料を用いた場合には、その高い流動性、及び、中枠33のテーパ面による作用によって、極めて効率よく型枠30内に流し込まれ、型枠30の隅々にコンクリート材料を短時間で充填することができる。また、流動性が低いコンクリート材料であっても、上記テーパ面の作用により、型枠30内への流し込み時間が極端に遅くなることがない。
【0039】
一方、コンクリート材料は、セメント、砂利、砂、水、混和剤等を混練して作られ、その内部には空気が混入されている。空気や水が多すぎると、コンクリート材料の表面に気泡や水泡となって排出され、コンクリートブロックの品質に影響を及ぼすことがある。このような気泡や水泡は、暗渠型の側溝用ブロックを製造する際に、排水路を形成する中枠の下方、すなわち平面状をなした底壁の部分に停滞して溜まりやすいという問題があった。
【0040】
これに対して本発明の側溝用ブロック1においては、中枠33の底壁は、長手方向に沿って端面側から見たとき、V字状のテーパ面とされているので、気泡や空気が溜まりにくくなり、脱泡されやすくなり、品質のよい側溝用ブロックを得ることができる。
【0041】
次に、本発明の側溝用ブロック1の作用効果について説明する。
まず、ブロック本体10の排水路20に形成されたテーパ面21の作用効果について、図5を用いて詳述する。
【0042】
図5には、底辺H3と、この底辺H3の両端から突設する一対の側辺H2、H4と、側辺H2、H4に架設された天井辺H1とでなる略枠状構造をなしたラーメン構造体に、天井辺H1に対して上方から等荷重を加えた場合の、曲げモーメント及びせん断力の分布が示されている。図5(a)は、曲げモーメント図、図5(b)は、せん断力図である。
【0043】
図5(a)に示すように、ラーメン構造体の天井辺H1における両端部は、軸線Sに対して上向きに曲げモーメントが作用し、前記天井辺H1の両端部を除いた範囲(以下、中央部という)では、軸線Sに対して下向きに曲げモーメントが作用する。すなわち、天井辺H1の両端部にあっては、天井辺H1の上側に引張応力が作用し、下側に圧縮応力が作用する。一方、中央部では、天井辺H1の上側に圧縮応力が作用し、下側に引張応力が作用する。底辺H3においても曲げモーメントは同様に作用し、両端部及び中央部における引張応力、圧縮応力は、天井辺H1とそれぞれ反対側に作用する。
【0044】
また、図5(b)に示すようにラーメン構造体の各辺H1〜H4においては、軸線Sを基準として、その中央部にはせん断力が作用せず、両端部に近付くほど、せん断力が大きく作用する。
【0045】
ところで、コンクリート材料は、圧縮強さは優れるが引張強さには劣るので、補強のために鉄筋が埋設されることが多く、本発明の側溝用ブロック1にも鉄筋23が埋設されている。この場合、側溝用ブロック1に荷重が加わったときは、引張応力は鉄筋23が受け、圧縮応力はコンクリート材料が受ける。そのため、側溝用ブロック1の強度設計に際しては、コンクリート材料の厚さ、特に鉄筋23が寄与しにくく、もっぱら圧縮応力が作用する部分の厚さ(これを有効厚という)が重要な要素となっている。
【0046】
以上の観点から、図5(a)、(b)で得たラーメン構造体の曲げモーメント、せん断力の分布の結果を、本発明の側溝用ブロック1の強度設計に適用する。すなわち、鉄筋23がラーメン構造体に相当するとして、鉄筋23が側溝用ブロック1に配置された状態で等荷重が加えられた場合、ブロック本体10の天井壁14の中央であって、鉄筋23の中央屈曲部の上側には圧縮応力が作用し、下側には引張応力が作用すると言える。したがって、枠状の断面を有し、枠状の鉄筋23が埋設された本発明の側溝用ブロック1において、その天井壁14の中央では、天井壁14の外側の端面から鉄筋23までの距離が有効厚T1となる(図5(c)参照)。
【0047】
一方、ブロック本体10の天井壁14の両端であって、鉄筋23の両端部の上側には引張応力が作用し、下側には圧縮応力が作用する。そのため、本発明の側溝用ブロック1において、天井壁14の両端では、鉄筋23から排水路20の天井壁14内面までの距離が有効厚T2となる。
【0048】
また、天井壁14の中央において、鉄筋23から排水路20の天井壁14内面までの距離を、かぶり厚T3と定義するものとする。
【0049】
なお、底壁11の場合は、その中央では、底壁11の外側の端面から鉄筋23までの距離が有効厚T1で、鉄筋23から排水路20の底壁11内面までの距離が、かぶり厚T3となり、底壁11の両端では、鉄筋23から排水路20の底壁11内面までの距離が有効厚T2となる。
【0050】
本発明の側溝用ブロック1においては、ブロック本体10をその長手方向に沿って端面側から見たとき、排水路20の底壁内面及び天井内面には、それらの両隅から中央に向けて、ブロック本体10の底壁11及び天井壁14が次第に肉薄となるテーパ面21を形成し、底壁11及び天井壁14の両隅を肉厚とし、その中央を肉薄とした。そのため、強度を維持するために必要な有効厚T1、T2を、効率的に確保することができる。しかも、図5(b)に示すように、両端部に最も大きく加わるせん断力に対しても、天井壁14の両隅を肉厚としたことにより、効果的に強度を確保することができる。このように、側溝用ブロック1が荷重を受けたときに十分な強度を確保することができると共に、ブロック本体10の底壁11及び天井壁14の両隅を肉薄としたので、製造時のコンクリート材料の使用量を少なくして製造コストを低減でき、軽量化も図れるようになる。
【0051】
また、排水路20の底壁11内面は、上述したようにテーパ面21をなしており、排水路20を流れる雨水等の流速が速くなるので、排水路20の底壁11内面に泥や土砂等が溜まりにくく、排水効果を高めることができる。
【0052】
更に、本発明の側溝用ブロック1においては、天井壁14に天井壁開口部14cが設けられている。そのため、歩道や車道に溜まった雨水等を、天井壁開口部14cを通して、ブロック本体10内の排水路20に流し込こめるので、歩道や車道の雨水等を効率よく排水できる。
【0053】
また、本発明の側溝用ブロック1においては、天井壁14にテーパ面14aが形成され、このテーパ面14aに天井壁開口部14cが配置されている。そのため、歩道や車道に溜まった雨水等を、テーパ面14aによってスムーズに天井壁開口部14cに集められるので、歩道や車道の排水性をより高めることができる。
【0054】
更に、本発明の側溝用ブロック1においては、車道側の側壁12に集水溝12aが形成され、この集水溝12aに、側壁開口部12bが形成されているので、車道のアスファルト等に染み込んだ雨水等を、効率よく排水することができる。
【0055】
また、本発明の側溝用ブロック1においては、ブロック本体10の両端面に、シール部材を嵌合させるためのシール溝22が設けられているので、側溝用ブロック1を施工する際に、隣接した他の側溝用ブロックとのシール性を高め、漏水等を防止する。
【0056】
なお、上述したようなスポンジゴム材と粘着層とでなる複合したシール部材を、シール溝22に嵌合させた場合には、経年劣化を抑制し長期に亘って良好な水密性が得られ、また、シール溝22に予め接着材を塗布した後シール部材を嵌合させた場合には、耐水圧性が向上して信頼性が高まり、更に、水膨張性のシール部材を用いた場合には、側溝用ブロック1間のシール性をより向上させる。
【0057】
次に、本発明の側溝用ブロック1の施工方法の一例について説明する。
この側溝用ブロック1は、図6に示すように、歩道40の車道41側の側辺に沿って、複数個、並べられて配置される。
【0058】
図7に示すように、施工する際には、まず、歩道40と車道41の境界部に所定深さの溝42を掘削しておき、この溝42の底面に砕石を敷設し、転圧機などの押圧手段で押圧して砕石基礎43を造成する。この砕石基礎43上に、側溝用ブロック1との接着層として、敷モルタル44を打設した後、側溝用ブロック1を溝42内に挿入配置する。そして、側壁13上端の段部13aと歩道40との間に、縁石ブロック45を接着剤等を介して配設する。そして順次、他の側溝用ブロック1を隣接させて並べていく。隣接させる際には、ブロック本体10に形成されたシール溝22に、ゴム等で形成された図示しないシール部材を嵌合させておき、他の側溝用ブロック1のシール溝22に、前記シール部材を嵌合させて、側溝用ブロック1同士の密着性を高めて漏水等を防止する。このようにして、歩道40の側辺に沿って、所望長さまで側溝用ブロックを配設して施工が完了する。なお、図6中、1aは、本発明の側溝用ブロック1の他の実施形態であり、以下に説明する。
【0059】
図8〜10には、本発明の側溝用ブロック1の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
【0060】
この側溝用ブロック1aは、ブロック本体10の天井壁14に、スリット状の天井壁開口部14cではなく、矩形状の天井壁開口部15が設けられている点が、前記実施形態と相違する。この実施形態の場合、天井壁開口部15は、天井壁14の長手方向のほほ中央に設けられている。この天井壁開口部15の長手方向両端であって、天井壁14の上端には、グレーチング蓋46を載置するために、段状に切欠かれた載置部16(図10(c)参照)が形成されている。
【0061】
この載置部16上には、金属板をL字状に屈曲させて形成した載置用金具17が、配置される。この載置用金具17の水平に伸びた板の裏面側には、図示しないアンカーが溶接により突設されている。そして、載置用金具17を、側溝用ブロック1aを成形する型枠に予め取付けておき、その状態で、コンクリート材料を型枠内に流し込むことにより、載置用金具17のアンカーがコンクリート材料に埋設されて、載置部16上に載置用金具17が固定される。なお、載置用金具17は、グレーチング蓋46の位置ズレを少なくして、しっかりと固定すると共に、載置部16の保護するための役割をなす。
【0062】
この側溝用ブロック1aは、図6に示すように、前記実施形態の側溝用ブロック1と並べて配置され、グレーチング蓋46を被せることができる点に利点を有する。
【0063】
図11〜13には、本発明の側溝用ブロック1の更に他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
【0064】
この側溝用ブロック1bは、図8〜10に示す実施形態の側溝用ブロック1aに、更に、底壁開口部18が形成された形状をなしている。より具体的には、ブロック本体10の天井壁14に形成された天井壁開口部15と整合した位置で、排水路20と連通して底壁開口部18が形成されている。この底壁開口部18は、図13(c)に示すように、排水路20の底壁11内面から、底壁11の外側の端面に向かって次第に拡径した形状をなしており、拡径した端部周縁から段状に接続段部18aが広がっている。
【0065】
底壁開口部18には、図11に示すような、泥、土砂、その他の滞留物を溜めるための、泥溜め容器47が接続される。この泥溜め容器47は、全体として上方が開口した有底の箱形状をなし、上方の開口部周縁から、枠状突起47aが突設している。そして、泥溜め容器47を側溝用ブロック1bに接続する際には、例えば、枠状突起47a周縁に接着剤等を塗布してから底壁開口部18に挿入し、接続段部18aに枠状突起47aを当接させて接続固定する。
【0066】
この側溝用ブロック1bによれば、泥溜め容器47内に、泥や土砂を溜めることができる。したがって、近年行われている、固体状の泥等に水分を噴射して、泥水としてから、ポンプ及びホース等によって泥水を吸い取って、掃除する方法に効果的に適用することができる。また、単に、グレーチング蓋46を、天井壁開口部15から取り外して、スコップ等で泥等を取り除く際にも能率よく作業できる。このように、この実施形態によれば、排水路20を清掃するときに、溜まった泥等を効率良く排出できるので、清掃時の効率を高めることができる。
【0067】
なお、上述した実施形態においては、天井壁開口部14cが、本発明における天井壁に設けられた開口部をなし、側壁開口部12bが、本発明における車道側の側壁に設けられた開口部をなし、底壁開口部18が、本発明におけるブロック本体の底壁にて、天井壁に形成された開口部と整合した位置で形成された開口部をなしている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、歩道の車道側の側辺に沿って設置される側溝用ブロックとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の側溝用ブロックの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同側溝用ブロックを示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
【図3】同側溝用ブロックを示しており、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)はA−D矢視線における断面図である。
【図4】(a)は同側溝用ブロックを製造する際の説明図、(b)は同側溝用ブロックのE−E矢視線における断面図である。
【図5】(a)はラーメン構造体の曲げモーメント図、(b)は同ラーメン構造体のせん断力図、(c)は同側溝用ブロックの有効厚及びかぶり厚を説明するための断面図である。
【図6】同側溝用ブロックを施工した際の一例を示す斜視図である。
【図7】同側溝用ブロックを施工した際の断面図である。
【図8】本発明の側溝用ブロックの他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】同側溝用ブロックを示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
【図10】同側溝用ブロックを示しており、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)はA−D矢視線における断面図である。
【図11】本発明の側溝用ブロックの更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】同側溝用ブロックを示しており、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
【図13】同側溝用ブロックを示しており、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)はA−D矢視線における断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1、1a、1b 側溝用ブロック
10 ブロック本体
11 底壁
12、13 側壁
12a 集水溝
12b 側壁開口部
14 天井壁
14a テーパ面
14c、15 天井壁開口部
18 底壁開口部
20 排水路
21 テーパ面
22 シール溝
23 鉄筋
47 泥溜め容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩道の車道側の側辺に沿って設置される側溝用ブロックにおいて、
ほぼ枠状の断面を有して筒状に伸び、内部が排水路をなすブロック本体と、このブロック本体の天井壁及び/又は車道側の側壁に設けられた開口部とを備え、
前記ブロック本体は、その長手方向に沿って端面側から見たとき、前記排水路の底壁内面及び天井壁内面に、それらの両隅から中央に向けて、前記底壁及び前記天井壁が次第に肉薄となるテーパ面が形成されていることを特徴とする側溝用ブロック。
【請求項2】
前記ブロック本体の天井壁には、前記排水路と連通するスリット状又は矩形状の開口部が設けられている請求項1記載の側溝用ブロック。
【請求項3】
前記ブロック本体の天井壁は、車道側の端縁から歩道側の端縁に至る途中部分が最も低くなるように傾斜したテーパ面が形成されており、
このテーパ面の最も低くなった箇所に、前記開口部が配置されている請求項1又は2記載の側溝用ブロック。
【請求項4】
前記ブロック本体の車道側の側壁には、長手方向に沿って集水溝が形成され、この集水溝の長手方向の途中箇所に、前記排水路に連通する開口部が形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の側溝用ブロック。
【請求項5】
前記ブロック本体の長手方向の両端面には、シール部材を嵌合させるためのシール溝が設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載の側溝用ブロック。
【請求項6】
前記ブロック本体の底壁には、前記天井壁に形成された前記開口部と整合した位置で、前記排水路と連通する開口部が形成されており、
この開口部に、泥、土砂を溜めるための泥溜め容器が接続されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の側溝用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−283510(P2006−283510A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108415(P2005−108415)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(591172906)株式会社赤城商会 (3)
【Fターム(参考)】