説明

偽造対策を施した記録物

【課題】偽造品と真正品とが市場で簡単に見分けられるともに、偽造対策が何処にどのような形態で施されているのかが市場では分からないような記録物又はステッカーを提供する。
【解決手段】同一の記録媒体の表面上に、色変化インク又は液晶インクなど用いて印刷されたオバート領域(市場で見て認識できる)3と、光再帰性印刷などで形成したコバート領域(特別の器具を使わないと認識できない)5の双方を設ける。オバート領域3とコバート領域5は別の場所に配置されていても、オーバーラップしていても、位置的に一致してされていてもよい。オバートの文字図形パターンと、コバートの文字図形パターンとは、同じでも異なっていてもよい。液晶インクを用いて印刷したオバートの場合、円偏光板を用いた真贋鑑定方法を用いることで、コバートとしても機能し得る。ステッカーには、剥がすと破れて再使用不能になるように1又は複数の切れ込みを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止対策を施した記録物、例えば印刷物、に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的イメージスキャナとカラープリンタを用いたカラーコピー技術による記録物、例えば印刷物、の偽造を防止するために、或いは、対象物が偽造品か真正品かを識別する真贋判定のために、印刷物の表面に特殊な光学特性を与える記録又は印刷技術が知られている。そうした偽造防止のための記録技術は、「オバート(Overt)」及び「コバート(Covert)」と呼ばれる2つのタイプに分類することができる。オバート技術とは、その特殊な光学的特性が露呈しているもの、すなわち、自然光の下で肉眼で直接見るだけで識別できるものである。コバート技術とは、その特殊な光学的特性が隠蔽されていて、特別の光学的条件下で又は特別の光学的道具を使って見ることで初めて識別できるものである。
【0003】
オバート技術の代表例に、色変化インクを用いた記録又は印刷があり、これは特開平8−324169号や特開平9−254520号や特開平10−060303号などに開示されている。色変化インクは、インク表面に白色光を入射したとき反射光の主波長が入射角(反射角)によって変化するという特性をもつ。従って、色変化インクで印刷された表面は、見る角度を変えると色彩が変化する。
【0004】
コバート技術の代表例は、光再帰性を与える表面処理を伴った記録又は印刷であり、これは米国特許第2,407,608号や特開平10−97208号などに開示されている。光再帰性とは、入射角と反射角がほぼ同一である反射特性、すなわち、入射光を折り返すようにして反射光を光源へ逆戻りさせる反射特性である。光再帰性をもったコバート記録の部分は、自然光の下で普通に見ただけでは周囲の領域と全く同一色で識別できないが、特別の道具を使って見ると、周囲の領域から区別されて見える。
【0005】
オバート技術もコバート技術も、特殊なインク又は特殊な加工プロセスを要するから、そうした技術で作られた記録物は単純なカラーコピーでは再現することは不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オバート技術が施された記録物と、それを単純にカラーコピーして作られた偽造物とは、自然光の下で普通に見るだけで簡単に見分けがつく。そのため、仮にそのような安易な偽造品が市場に出たとしても、市場の人々は、それが真正品でないことに簡単に気付く。よって、オバート技術は、安易な偽造品を市場から排除する効果は高い。反面、対象物の何処にどのような形態でオバート記録が施されているかは誰の目にも明白であるから、それを模倣するための手がかりを他人に与えてしまう。
【0007】
一方、コバート記録の存在は、市場の人々に気付かれることはない。よって、それを模倣する手がかりを他人に与えてしまう可能性は低い。しかし、市場の人々は、コバート記録の有無を通常は識別できないから、安易な偽造品にも簡単に騙されてしまう可能性が高い。
【0008】
従って、本発明の目的は、偽造品と真正品とが市場で簡単に見分けられるともに、偽造対策が何処にどのような形態で施されているのかが市場では簡単に分からないように偽造対策が施された記録物又は印刷物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、製品又は製品のパッケージングなどに貼付するのに好適なラベルつまりステッカーであって、製品の偽造防止又は真贋判定に利用可能なセキュリティラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの観点に従う記録物は、オバート技術により形成されたオバート記録と、コバート技術により形成されたコバート記録とを同一の記録媒体の表面上に有する。この記録物は、オバート記録によって、市場でも簡単に真贋判定ができると共に、仮に、オバート記録を模倣した偽造品が出ても、コバート記録を使って真贋判定が行える。また、この記録物では、オバート記録の存在が囮となって、コバートの存在が気付かれ難くなるという、オバートとコバートの相乗効果が得られる。
【0011】
本発明の記録物では、オバート記録とコバート記録とが少なくとも部分的に重なっているようにすることができる。また、オバート記録とコバート記録をその形状又はサイズなどの平面デザインにおいて異ならせることもできる。こうしたアレンジは、偽造をより一層困難にする。
【0012】
オバート記録は、例えば、色変化インク上に液晶インクを重ねることで形成すると、非常に偽造が困難になり得る。
【0013】
また、オバート記録とコバート記録とを重ねる場合、コバート記録は、透明な反射層の上に透明な微細球を配してなる光再帰性層によって形成することができる。このよう構造にすると、自然光の下では、コバート記録は実質的に透明又は透明に近くなって、その下のオバート記録が明瞭に見えることになる。特別の条件下で又は特別の道具を使って見ると、コバート記録が明瞭に見えることになる。
【0014】
オバート記録とコバート記録を形状及びサイズなどの平面デザインにおいて全く同一にし、そして、両者を完全に位置的に一致させてスタックすることもできる。すると、オバート記録の囮作用がより効果的に発揮されるかもしれない。
【0015】
また、オバート記録を、特定色の下地上に液晶インクを重ねることで形成し、また、オバート記録の周囲の背景領域を、別の色の下地の上に液晶インクを重ねるか、又は、上記特定色の下地を、そこに液晶インクを重ねることなく、直接的に用いて形成することもできる。こうすると、オバート記録が、コバート記録としても機能することができる。
【0016】
このように、液晶インクを用いてオバート記録とコバート記録の双方として機能する記録を形成した記録物については、例えば右円偏光板と左円偏光板をそれぞれ通してその記録物を観察することで、コバート記録の機能を使った真贋判定が行える。
【0017】
本発明の別の観点に従うセキュリティラベルは、オバート技術により形成されたオバート記録とコバート技術により形成されたコバート記録とを一つの記録媒体の表面上に有し、さらに、接着層を有して、製品又は製品のパッケージングのような対象物に貼付できるようになっている。オバート記録は、光の選択反射により観察角度によって色変化を起こすものとすることができる。コバート記録は、特定の器具又は装置により識別可能なものとすることができる。
【0018】
或いは、オバート記録は、液晶材料を使ったものであるか、または、金属酸化物層及び/または金属と薄膜雲母硝子層及び/または酸化珪素を積層させた材料を使ったものとすることができる。
【0019】
或いは、コバート記録は、赤外線光の照射に対して反射される光又は透過する光のスペクトルパターンと特定の器具又は装置に予め記憶されたスペクトルパターンとを照合することでその真贋を判定することができるように、赤外線光に対して特定のスペクトルパターンの光を反射又は透過する材料を含有したものとすることができる。
【0020】
また、このセキュリティラベルの面積は8平方センチメートル以下とすることができる。
【0021】
さらに、セキュリティラベルを一旦対象物に貼り付けた後に剥ぎ取ろうとしたときにそのセキュリティラベルが破れて再使用不能となるように、セキュリティラベルの一箇所又は複数箇所に切り込みを設けることができる。
【0022】
本発明のセキュリティラベルの製造方法は、同一の記録媒体の表面上にオバート技術によりオバート記録を印刷し且つコバート技術によりコバート記録を印刷し、オバート技術による印刷はシルクスクリーン方式のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の幾つかの実施形態を説明する。
【0024】
これらの実施形態は、いずれも、オバート技術により形成されたオバート記録(以下、単にオバートと呼称する)とコバート技術により形成されたコバート記録(以下、単にコバートと呼称する)とを同一記録媒体の表面上に有する。オバートには、例えば、光の選択反射により観察角度によって色変化を起こす記録(以下、色変化記録と呼称する)を用いることができる。
【0025】
具体的に、光の選択反射を行う材料としては、液晶材料または、金属酸化物層、金属、雲母硝子、酸化珪素などを積層させた材料を例示出来る。こうした材料を印刷用インクとして調整し、印刷することで目的が達成することが出来る。光の選択反射について若干説明を加える。
【0026】
液晶材料(特にコレステリック液晶)は、分子配列が螺旋軸に沿って少しずつねじれ構造をとっており、液晶全体としてはヘリカル構造を形成している。こうした構造により旋光性、選択光散乱、円偏向2色性などを有することはよく知られた原理である。こうした材料の具体例をあげるとBASF社のパリオカラー(PALIOCOLOR(登録商標))シリーズ等を例示することが出来る。また、金属酸化物層、金属、雲母硝子、酸化珪素を積層させた材料(以下、光輝性顔料と呼称する)は、積層された物質の屈折率の違いに起因して、角度により反射される光の波長が異なるため、人間の目に色変化と映るものである。具体的には、薄片状の雲母等の光透過率が低い基材に対して、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化鉄等の金属酸化物を積層させて形成した顔料を適度な大きさに砕いた材料や、金属及びまたは金属酸化物等の光を反射する層とシリカを積層させてこれを適度な大きさに砕いた材料を指す。こうした例の具体例としては、PALIOCROMPIGMENT(BASF社商標)等である。何れの材料も製造装置(印刷装置)に合わせ物性値や特性が適切となるようにインクに調整される。
【0027】
図1に色変化インクの記録面の模式図を示す。
【0028】
色変化インクは通常の印刷方式で印刷が可能である。図1Aに示すように、色変化インクに用いられる液晶材料や光輝性顔料は平板状の顔料100であり記録の際に記録媒体200の表面に規則正しい姿勢で配列されることが好ましい。図1Aに示すように平板状顔料100が規則正しく配列されることにより入射光300の入射角に対して反射光400の反射角度が一定に保たれる。こうしたことで色変化記録の色変化が大きくなり、オバートとして好ましいものとなる。一方、図1Bに示すように、平板状の顔料100が記録媒体200の表面上に不規則に配列されると平行な入射光500に対して、反射光600はバラバラな角度を持ち反射(乱反射)される。こうした記録面の状態となると期待する良好な色変化特性が得られない。
【0029】
図1A及び図1Bの模式図を使って色変化の大小について説明したが、実際の色変化記録の記録面を観察した場合、印刷方式により、顔料の配列状態が異なることが確認された。例えば、シルクスクリーン方式による印刷方式が、平板状顔料100の配列を図1Aの状態に近づけるのに適していることが確認された。
【0030】
他方、コバートには、太陽光の下又は通常の照明の下で肉眼でみただけでは認識できす、特別の機材を使って初めて識別可能となるような特殊記録法でなされた記録を採用することができる。
【0031】
具体的には蛍光インクや燐光インクを例示することが出来る。こうしたインクは、市販されているもので構わない。こうしたインクは、一般に紫外光を照射することでその記録パターンが発光し観察される。紫外光を照射するために例えばブラップランプを用いることができる。太陽光や蛍光灯の光では記録パターンが発光しない為、読み取りが出来ない。こうしたインクは、オバート技術で使うインクの記録位置とは別の位置に印刷することができる。別の種類のコバートとして、光再帰性を与える記録法を用いた記録を例示することもできる。光再帰性を与える記録法の一つに、例えば、或る領域内に特定パターンの透明の反射層を形成し、その上に無数の透明の微細球を敷き詰めてその領域をカバーする方法がある。このような光再帰性を与える方法で記録されたコバート(反射層のパターン)は、自然光の下での目視によっては認識できないが、例えば視線と同じ方向から強い光を照射できる光学器具を通してこれを見ると見えることになる。
【0032】
更に別のコバート技術として、コバートに特定の光を当てたときそこからの反射光若しくは透過光の強度(又は、そこの光反射率、光透過率若しくは光吸収率)のスペクトル波形が特定の波形であるようなものを用いることができる。例えば、波長650nm以上の赤外線に対して格別に高い吸収率(又は反射率)をもつ赤外線吸収(反射)材を含んだインクを用いて記録されたコバートを用いることができる。このような赤外線吸収(反射)インクを用いることで、赤外線光の照射に対して対象物から反射される光のスペクトルパターンと、鑑定装置に予め記憶されたその赤外線吸収(反射)インクの正しい反射光スペクトルパターンとを照合することでその対象物の真贋を判定することができる。この鑑定方法では、予め鑑定装置に赤外線吸収(反射)インクの赤外光による反射光のスペクトルパターンを記憶させておき、対象物からの反射光スペクトルパターンが鑑定装置に記憶されている反射光スペクトルパターンとは違うことが確認されるとその対象物は偽造品であると判定され、鑑定装置に記録されたパターンと同じであることが確認されるとその対象物は真正品であるとの判定が下される。鑑定をしやすくする為に、オバート技術の記録部分に上記のような赤外線反射(反射)インクを含ませておくことができる。
【0033】
図2〜図4は、本発明の記録物の3つの実施形態の要部の平面デザインをそれぞれ示している。
【0034】
図2〜図4の記録物1A、1B、1Cは、オバート技術により記録されたオバート領域3と、コバート技術により記録されたコバート領域5の双方を、同一の記録媒体の表面上に有する。図2の記録物1Aでは、オバート領域3とコバート領域5はオーバラップしない別の場所に配置されている。図3の記録物1Bでは、オバート領域3とコバート領域5は一部重複している。図4の記録物1Cでは、オバート領域3とコバート領域5は位置的に一致してスタックされている。図示してないが、オバート領域3とコバート領域5の一方が他方を包含するように配置することもできる。
【0035】
図2〜図4に示すオバート領域3では、例えば「PRINT」という文字が、オバートとしての特殊な光学的特性をもつように、例えば色変化インクを用いて、印刷されている。オバート領域3内の文字「PRINT」以外の背景部分は、オバートとしての光学的特性をもっていなくてもよいし、或いは、「PRINT」から区別して見える別のオバートとして、例えば別の色の色変化インクを用いて、印刷されていてもよい。また、上記とは逆に、文字「PRINT」を除いた背景部分だけが、オバートの特殊な光学的特性を持つように印刷されていていてもよい。
【0036】
従って、オバート領域3内の文字「PRINT」又は背景は、自然光の下で肉眼で見るだけで、特殊な光学特性、例えば見る角度によって色彩が変わる特性、をもっていることが分かる。
【0037】
一方、コバート領域5では、例えば「GENUINE」という文字が、コバートとしての特殊な光学的特性、例えば光再帰性をもつように、印刷されている。コバート領域5内の文字「GENUINE」以外の背景部分は、コバートとしての特殊な光学的特性をもたなくてよい。または、上記とは逆に、文字「GENUINE」を除いた背景部分だけが、コバートの特殊な光学的特性を持つように印刷されていてもよい。いずれにしても、自然光の下で肉眼で見ただけでは、文字「GENUINE」のと背景部分とは同一に見えて、文字「GENUINE」が読み取れないようになっている。
【0038】
従って、特別の光学的条件下で又は特別の道具を使って見たときにだけ、例えば、光再帰性の場合には視線と同一方向から環境光より強い光を照射してみたときにだけ、コバート領域5内の文字「GENUINE」が読み取れる。
【0039】
さらに、コバート領域5と、その外側の周囲の背景領域7とは、自然光の下で肉眼で見ただけでは同一に見えて、両者が峻別できないようになっている。従って、コバート領域5が記録物1に存在するか否か、及び記録物1の何処に存在するのか、通常は分からない。
【0040】
図2〜図4に例示したオバートとコバートを併せ持つ記録物は、オバートを用いて市場でも簡単に真贋判定ができる一方、仮に、そのオバートまでも模倣した偽造品が出たとしても、コバートを用いることで真贋判定が依然として可能である。
【0041】
加えて、オバートの存在が、偽造者に対して囮として作用して、コバートの存在をより一層効果的に隠すという、オバートとコバートの相乗効果に注目すべきである。すなわち、偽造者がオバートの存在に着目するが故に、コバートの存在までは予想せず、コバートを探す努力を怠る、という可能性が、コバートのみを単独で用いた従来品よりも高いのである。
【0042】
さらに、同一の記録物上にオバートとコバートが共に存在することは、偽造それ自体を非常に困難なものにする。すなわち、実際のところ、オバートも、コバートも、それ単独で用いられているだけでも、それをそっくり模倣することは、特殊なインクや特殊な製法を必要とするから、高いコストがかかり容易ではない。その状況下で、同一の記録物上にオバートとコバートが共に存在すると、更に複雑で高コストな製法を要することになり、そっくり模倣した偽造は極めて困難である。特に、図3や図4に示したように、オバートとコバートが重なっていると、その重なり部分はオバートとコバートの双方の光学的特性が合わさって作用するため、その部分の材料や構造を解明することは偽造者にとって非常に困難であり、仮にそれが分かったとしても、同一の色合いや光具合を出すことが難しく、結果として、そっくり模倣することは大変に困難である。
【0043】
図2〜図4に示したオバート領域3とコバート領域5の平面デザイン(すなわち、その領域自体の外形状とサイズ、並びに、その領域内に記録された文字及び図形の形状、サイズ及び配置など)は自由に決めることができる。ただ、一つの好ましい態様は、図2〜4の例のように、オバート領域3とコバート領域5のパターンが、例えば文字又は図形のサイズや種類や配置などの点で、相違していることである。このパターンの相違は、偽造の製法を複雑にし困難にする。
【0044】
また、オバート領域3とコバート領域5の配置に関しては、上述したように、両者が重なっていると、偽造の製法が非常に難しくなるという利点がある。一方、オバート領域3とコバート領域5が全く別の場所に配置されていると、コバートが発見され難いという利点が生じる。特に、例えば、オバートは目立つような大きなパターンであるのに対し、コバートは小さいパターンで且つ簡単に見つけ出し難い場所に配置されていたりすると、オバートの囮作用の一層効果を発揮し、コバートは一層発見されにくくなる。
【0045】
さらに、上述したオバートとコバートの配置やパターンについての複数バリエーションを適当に組み合わせて用いてもよく、それにより、偽造の困難性はさらに向上する。
【0046】
図5は、本発明に従う記録物の別の実施形態の要部の平面デザインを示す。
【0047】
図5に示す記録物11では、全く同じ平面デザインをもったオバート領域13とコバート領域15が位置的に一致してされている。すなわち、それらの領域13、15において、例えば、文字「PRINT」がオバートの特殊光学特性をもつと共にコバートの特殊光学特性ももち、文字「PRINT」以外の背景部分はそのような特殊光学特性をもたない、或いは、逆に、文字「PRINT」を除く背景部分だけがオバートとコバートの双方の特殊光学特性をもつ。または、文字「PRINT」がオバートの特殊光学特性をもち、背景部分がコバートの特殊光学特性をもつか、或いは、その逆である。
【0048】
このように、同じ平面デザインのオバートとコバートが位置的に一致してされている場合にも、オバートの囮作用が効果的に発揮され、コバートの存在を隠すことになる。すなわち、偽造者は、オバート領域13はオバートのみであって、それがコバートをも兼ねているとは予想しない可能性が高い。変形として、同一平面デザインのオバートとコバートが僅かな距離(例えば、文字の線分太さよりも小さい距離)だけシフトされてオーバーラップしていてもよいし、或いは、若干サイズの違う相似の平面デザインのオバートとコバートが同心位置的にスタックされていてもよい。
【0049】
図6は、図2又は図3に示した記録物のオバート領域3の断面(例えば、図2のA−A線に沿った断面)の基本部分の構造例を示す。
【0050】
図6に示すように、基材21の表面上に、色変化インク23で、オバートの文字又は図形のパターン(例えば「PRINT」)が印刷されている。色変化インク23としては、例えば、液晶材料や光輝性顔料のような平板状顔料25を通常のインクに混入させたものを用いることができる。色変化インク23による印刷は、平板状顔料面25の表面の方向を揃わせる特殊な印刷方法、例えばシルクスクリーン方式、で行われる。
【0051】
色変化インク23の表面に入射した光は、内部の平板状顔料25で反射されて反射光となって出てくる。このとき、平板状顔料25の上面での反射光と下面での反射光との干渉によって、特定の波長が選択的に強調される。強調される波長は、入射角によって変わる。よって、図6に示すように、例えば白色光27、31が異なる入射角から入射した場合、それぞれの反射光29、33は異なった色に見えることになる。従って、色変化インク23で印刷された部分は、見る角度によって異なる色に見える。一方、そうした特殊の印刷が為されて無い部分に入射した白色光35、39の反射光37、41は、全て同じ色であるから、見る角度による色変化はない。
【0052】
図7は、図2又は図3に示した記録物のコバート領域5の断面(例えば、図2のB−B線に沿った断面)の基本部分の構造例を示す。
【0053】
図7に示す例は、光再帰性を与える記録法によりコバートを構成した例である。図7に示すように、基材21の表面上に、透明の反射層43が、コバートの文字又は図形のパターン(例えば「GENUINE」)で形成されている。その上に、無数の透明の微細球45がコバート領域5全体をカバーするように敷き詰められ、接着層47によって固定されている。
【0054】
反射層43上の微細球45の下側の一部の表面は、反射層43で覆われている。反射層42と微細球45と接着層47の材料の選択により、微細球45の反射層43と接している表面では、微細球45内を透過した光が反射し易くなっており、一方、微細球45の接着層43と接している表面では、微細球45内を透過した光が殆ど反射せずに微細球45外へ出るようになっている。
【0055】
このように構成されたコバート領域5に光が入射すると、反射層43が存在する領域に入射した光49は、微細球45内に入ってから、その一部が微細球45の表面で反射されて、入射光49の来た方向へ戻る再帰反射光51となる。入射光49の残りの一部は、微細球45から出て基材21表面で反射されて、入射光49とは全く別の方向へ出て行く(拡散反射光53)。また、反射層43が存在しない領域に入射した光55は、微細球45内に入ってから、その殆ど全てが、微細球45から出て基材21表面で反射されて、入射光55とは全く別の方向へ出て行く(拡散反射光59)。
【0056】
従って、あらゆる方向からほぼ同じ強度の光が入射する自然光の下では、再帰反射光51は、他の拡散反射光と混ざり合って目立たないので、コバートは目視では認識できない。しかし、視線と同じ方向から強い光をコバート領域5に照射すると、再帰反射光51の光量が、拡散反射光53より多くなるので、コバートが見えることになる。
【0057】
図8は、図2又は図3に示した記録物のオバート領域3の断面の別の構造例を示す。
【0058】
図8に示す例は、液晶インクを用いてオバートを形成した例である。図8に示すように、基材21の表面上に、特定インク61で、オバートの文字又は図形のパターン(例えば「PRINT」)が印刷されている。その上に、円偏光二色性をもつ液晶インク63が、オバート領域3の全体をコートしている。特定インク61としては、通常の有色インクを用いてもよいし、上述した色変化インクを用いてもよいし、液晶インクを用いても良い(この場合、液晶インクが積層されることになる)。液晶インク63としては、旋光性、選択光散乱及び円偏光二色性等の光学特性をもったコレステリック液晶インク(例えば、BASF社のPALIOCOLOR(登録商標))を用いることができる。
【0059】
このように構成されたオバート領域3に光が入射すると、特定インク61の領域に入射した光65は、液晶インク63の円偏光二色性によって、左旋光67と右旋光69の二つの円偏光に分けられ、左旋光67は液晶インク63で反射され、右旋光69は液晶インク63を透過する。透過した右旋光69は、特定インク61に入射して、その一部71は吸収され、残りの一部(特定インク61の色をもつ)73は反射する。従って、液晶インク63で反射された左旋光67と特定インク61で反射された右旋光73の合成された色が、人には観察される。
【0060】
一方、特定インク61が存在しない領域、例えば基材21が見える領域に入射した光75は、液晶インク63の円偏光二色性によって、上記と同様に、左旋光77と右旋光79の二つの円偏光に分けられ、左旋光77は液晶インク63で反射され、右旋光79は液晶インク63を透過する。透過した右旋光79は、基材21に入射して、その一部81は吸収され、残りの一部(基材21の色をもつ)83は反射する。従って、液晶インク63で反射された左旋光77と基材21で反射された右旋光73の合成された色が、人には観察される。
【0061】
特定インク63の色と基材21の色とは異なるから、特定インク63の領域と基材21の領域とでは、人に観察される色も異なる。しかも、その観察される色は、単純ではなく、液晶インク63の作用による特殊な光学効果をもった色である。例えば、特定インク63が黒であると、見える色には虹色の効果が出てくる。また、特定インク63が色変化インクであると、その色変化効果が加味されてくる。また、特定インク63が液晶インクであると、ミラー効果が出てくる。一方、基材21が例えば白であると、見える色にはパール色効果が出てくる。いずれにしても、液晶インク63によって得られる特殊な効果をもった色は、単純なカラーコピーでは再現できない。
【0062】
図9は、図2又は図3に示した記録物のオバート領域3の断面の更に別の構造例を示す。
【0063】
図9の例も、液晶インクを用いてオバートを形成した例である。図9に示すように、基材21の表面上で、まず、特定インク61がオバート領域3の全体をコートしている。その上に、円偏光二色性をもつ液晶インク63で、オバートの文字又は図形などのパターン(例えば「PRINT」)が印刷されている。
【0064】
このように構成されたオバート領域3に光が入射すると、液晶インク63で印刷された領域では、既に説明したように、液晶インク63で反射された左旋光67と特定インク61で反射された右旋光73で合成された特殊な効果をもった色が、人に観察される。一方、液晶インク63の無い領域では、特定インク61の色の反射光67が観察される。
【0065】
なお、図8に示した構成と、図9に示した構成を組み合わせることもできる。すなわち、特定インク61上に液晶インク63を重ねて印刷されたパターン、特定インク61のみで印刷されたパターン、基材21上に液晶インク63が重ねらて印刷されたパターンという3種類のパターンを組み合わせて、オバート領域をデザインしてもよい。
【0066】
さらに、図8と図9に示した、液晶インクを用いて形成されたオバートは、液晶インクのもつ円偏光二色性故に、コバートとしての機能も兼ね備えている。図10及び図11を参照して、そのことを説明する。
【0067】
図10は、液晶インク63を用いて形成されたオバート領域を、左旋光を選択的に通過させる左円偏光板101を通して見たときの、見え方を説明している。一方、図11は、液晶インク63を用いて形成されたオバート領域を、右旋光を選択的に通過させる右円偏光板103を通して見たときの、見え方を説明している。
【0068】
図10に示すように、左円偏光板101を通して見ると、液晶インク63でコートされた領域から来る反射光67、73、77、83のうち、液晶インク63で反射された左旋光67と77のみが左円偏光板101を通過して観察される。従って、液晶インク63でコートされた領域は、その下地(例えば、特定インク61又は基材21)の光学特性に関わらず、同じ色に見える。つまり、液晶インク63でコートされた領域内に特定インク61で印刷されたパターンは見えない。しかし、液晶インク63でコートされた領域と、コートされていない領域(特定インク61からの直接反射光87が来る領域)は、別の色で区別されて見える。
【0069】
一方、図11に示すように、右円偏光板103を通して見ると、液晶インク63でコートされた領域から来る反射光67、73、77、83のうち、液晶インク63を透過して下地で反射された右旋光73と83のみが右円偏光板103を通過して観察される。従って、液晶インク63でコートされた領域内では、特定インク61で印刷されたパターンと、そうでないパターンとは、明確に区別して見える。しかし、液晶インク63でコートされた特定インク61のパターンと、コートされていない特定インク61のパターンとは、右円偏光板103を通すと、同じ色に見えて区別し難い。
【0070】
このようにして、円偏光板を使って液晶インクを用いたオバート領域を観察すると、単に肉眼で見たときとは違う見え方をする。従って、液晶インクを用いたオバート領域を、偽造者が別の方法で模倣したとしても(実際、別の方法で、液晶インクに似た虹色効果やパール色効果などを出すことは可能である)、円偏光板を使って観察すれば偽造品であることが判明する。この点において、液晶インクを用いたオバートは、コバートとしても機能を兼ね備えるのである。例えば、図5に示したようなパターンは、液晶インクを用いてこれを製造すれば、自ずとオバートとして及びコバートとして製造したことになる。
【0071】
なお、円偏光板は、例えば次のようにして作成することができる。すなわち、PVAフィルム等を一軸延伸させ、ヨウ素で染色する。必要によっては他染料で所望の色に染色させる場合もある。さらにヨウ素が飛ばないように保護層をつける。1/4波長フィルムと先のフィルムを重ねて、円偏光板が作成される。右円偏光と左円偏光板の区別は、直線偏光板とこの直線偏光軸に対して45度ずれた角度に1/4波長フィルムを貼りつけることでなされる。
【0072】
図12は、図3〜図5に示したオバート領域3、13とコバート領域5、15が重なった領域の断面(例えば、図3に示したC−Cに沿った断面)の基本部分の構造例を示す。
【0073】
図12に示すように、基材21の表面に、まず、色変化インク23で、オバートの文字又は図形のパターンが印刷されている。その上に、反射層43で、コバートの文字又は図形のパターンが形成されている。その上に、無数の微細球45がコバート領域全体を覆うように敷き詰められて、接着層47で固定されている。
【0074】
このように構成されたオバート・コバート重複領域は、自然光の下では、微細球45と反射層43が生じさせる再帰反射光は目立たず、よって、色変化インク23によるオバートだけが認識でき、それは、見る角度によって色が変わって見える。そして、視線と同じ方向から強い光を照射すると、上述した再帰反射光の強度が相対的に高まり、コバートも見えるようになる。
【0075】
図13は、図3〜図5に示したオバート・コバート重複領域の断面(例えば、図3に示したC−Cに沿った断面)の別の構造例を示す。
【0076】
図13に示すように、基材21の表面に、まず、特定インク(通常の有色インク、色変化インク又は液晶インクなど)61で、オバートの文字又は図形などのパターンが印刷されている。その上に、液晶インク63が、オバート領域全体をコートしている。その上に、反射層43で、コバートの文字又は図形のパターンが形成されている。その上に、無数の微細球45がコバート領域全体を覆うように敷き詰められて、接着層47で固定されている。
【0077】
このように構成されたオバート・コバート重複領域は、自然光の下では、微細球45と反射層43が生じさせる再帰反射光は目立たず、よって、液晶インク63で覆われたオバート(特定インク61で印刷されたパターン)が、特別の光学的効果をもった色で見える。そして、視線と同じ方向から強い光を照射すると、上述した再帰反射光の強度が相対的に高まり、コバート(反射層43のパターン)も見えるようになる。
【0078】
図14〜図17は、本発明のセキュリティラベルの異なる実施形態の平面図をそれぞれ示す。
【0079】
これらのセキュリティラベルは、片面に接着層を有するステッカーであり、偽造から保護しようとする対象物(例えば各種の製品)それ自体に又はその対象物のパッケージングに貼付けて使用される。これらのセキュリティラベルの接着層と反対側の面には、オバート及びコバートが記録される。対象物自体又はパッケージング自体の表面にオバート及びコバートを記録するより、オバート及びコバートが記録されたステッカーを対象物又はパッケージングの表面に貼付する方が、製造コストが安くて済む。このようなセキュリティラベルは、それが一旦対象物に貼付けられ市場で販売された後、剥がし取られ偽造品に再び貼付けられないように、再使用防止機能を有することが望ましい。再使用防止のために、例えば、一旦剥がされた後は接着能力が実質的に無くなるように、接着層の接着強度又は接着性能が決められる。接着層に用いられる接着剤としては、例えば、アクリル樹脂系又はエポキシ系等骨格をもつ樹脂が溶媒中に溶解しており、溶媒の乾燥により樹脂成分が酸化重合していくタイプの接着材を例示することができる。或いは、再使用防止のために、例えば、セキュリティラベルを対象物又はパッケージングから剥がそうとするとセキュリティラベルが破れたり千切れたりするように、セキュリティラベルに1又は複数の切れ込みを設けることもできる。この切り込みは、ラベルの大きさや形状に合わせて任意に設定できる。
【0080】
このようなセキュリティラベルの面積として例えば8平方センチメートル以下を例示することができる。この程度の小さいセキュリティラベルは、それが貼られる対象物又は対象物のパッケージングの外観デザインを損なう恐れが小さく、ラベルの製造コストも安くて済み、且つ、対象物への貼付け工程が難しくない。
【0081】
図14に示されたセキュリティラベル200−1は、例えば半径15mmの円形のステッカーである。このセキュリティラベル200−1の表面上において、文字「EPOON」部分200−2は、例えば液晶材料を使った色変化インクで記録されたオバートである。このオバート200−2は例えばシルクスクリーン方式の印刷装置で印刷されている。また、破線で図示された文字「Genuine」部分200−3は、例えば蛍光インクを用いてオフセット方式の印刷装置で印刷されたコバートである。この蛍光インクを用いたコバート200−3は、自然光の下で目視しただけでは認識できず、ブラックライトを用いて紫外線を照射したときに認識することができる。
【0082】
このセキュリティラベル200−1の図示しない裏面には接着層が設けられている。このセキュリティラベル200−1には、例えば3箇所に、外縁から内方へ切られた切り込み200−4が設けられている。切り込み200−4の長さは、このセキュリティラベル200−1の半径の例えば約1/2である。このセキュリティラベル200−1は、これを一旦対象物又はそのパッケージングなどに貼り付けた後に剥がそうとすると、切り込み200−4の所から破れ、再使用することができなくなる。
【0083】
図15に示されるセキュリティラベル300−1は、例えば縦20mm、横40mmの長方形のステッカーである。このセキュリティラベル300−1の表面上において、文字「EPOON」部分300−2は、例えば光輝性顔料を含むインクを用いてシルクスクリーン方式で印刷されたオバートである。このオバート300−2の印刷に用いたインク中には、赤外線吸収材(例えば650nm以上の波長域の光吸収率が他の波長域より格別に高い材料)を含有されている。よって、このオバート300−2に赤外線を含む特定の光を当てると、特定のスペクトル波形をもつ反射光が得られ、この反射光のスペクトル波形は、そのスペクトル波形パターンを予め記憶している特別の鑑定装置によりチェックすることができる。従って、このオバート300−2はコバートとしても機能する。また、破線で図示された文字「Genuine」部分300−3は、例えば燐光インクを用いてオフセット印刷で印刷されたコバートである。この燐光インクを用いたコバート300−3は、自然光の下で目視しただけでは認識できず、例えばブラックライトを用いて紫外線を照射して見ることで認識することができる。このセキュリティラベル300−1の図示しない裏面には接着層が設けられている。剥がしたとき破れるように、このセキュリティラベル300−1の4つの角部分には、切り込み300−4が図示するように設けられている。
【0084】
図16に示されるセキュリティラベル400−1は、例えば面積6平方cmの菱形のステッカーである。このセキュリティラベル400−1の表面において、文字「MAOH」部分400−2は、例えば液晶材料を含んだ色変化インクで記録されたオバートである。このオバート400−2は例えばシルクスクリーン方式の印刷装置で印刷されている。また、破線で示された例えば星型の図形部分400−3は、例えば蛍光インクを用いてオフセット方式の印刷装置で印刷されたコバートである。このコバート400−3は、例えばブラックライトを用いて紫外線を照射して見ることで認識できる。このセキュリティラベル400−1の図示しない裏面には接着層が設けられている。さらに、このセキュリティラベル400−1の上限2箇所の角部分には、切り込み400−4が設けられている。
【0085】
図17に示されたセキュリティラベル500−1は、例えば面積7.5平方cmの星型のステッカーである。このセキュリティラベル500−1の表面において、文字「Long
Life」部分500−2は、例えば液晶材料を含んだ色変化インクで記録されたオバートである。このオバート500−2は例えばオフセット方式の印刷装置で印刷されている。また、破線で示された文字「E、P、O、O、N」部分500−3は、例えば蛍光インクを用いてオフセット方式の印刷装置で印刷されたコバートである。このセキュリティラベル500−1の図示しない裏面には接着層が設けられている。さらに、このセキュリティラベル500−1の2箇所の凹角部には、切り込み500−4が設けられている。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、この実施形態のみに本発明の範囲を限定する趣旨ではない。従って、本発明は、その要旨を逸脱することなく、他の様々な形態で実施することが可能である。
【0087】
本発明の記録物は、紙、プラスティック、金属及び木材などの各種の材料で作られた様々な種類の製品それ自体、製品のパッケージング、又は製品に付属する保証書などの付属物に適用することで、その製品の偽造防止や真贋鑑定に利用することができる。また、本発明のセキュリティラベルは、上記した様々な製品、それら製品のパッケージング又はそれら製品の付属物に貼付することで、その製品の偽造防止や真贋鑑定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1A及び図1Bは、オバート技術に従う色変化インクの印刷記録面の模式図。
【図2】本発明の記録物の一実施形態の要部の平面デザインを示した平面図。
【図3】別の実施形態の要部の平面デザインを示した平面図。
【図4】また別の実施形態の要部の平面デザインを示した平面図。
【図5】更に別の実施形態の要部の平面デザインを示した平面図。
【図6】図2又は図3に示した印刷物のオバート領域3の断面(例えば、図2のA−A線に沿った断面)の基本部分の構造例を示す断面図。
【図7】図2又は図3に示した印刷物のコバート領域5の断面(例えば、図2のB−B線に沿った断面)の基本部分の構造例を示す断面図。
【図8】図2又は図3に示した印刷物のオバート領域3の断面の別の構造例を示す断面図。
【図9】図2又は図3に示した印刷物のオバート領域3の断面の更に別の構造例を示す断面図。
【図10】図8及び図9に示した液晶インクを用いて形成されたオバートを、左旋光を通過させる円偏光版を通して観察したときの様子を示す断面図。
【図11】図8及び図9に示した液晶インクを用いて形成されたオバートを、右旋光を通過させる円偏光版を通して観察したときの様子を示す断面図。
【図12】図3〜図5に示したオバート領域とコバート領域が重なった領域の断面(例えば、図3に示したC−Cに沿った断面)の基本部分の構造例を示す断面図。
【図13】図3〜図5に示したオバート領域とコバート領域が重なった領域の断面別の構造例を示す断面図。
【図14】本発明のセキュリティラベルの一実施形態の平面図。
【図15】本発明のセキュリティラベルの別の実施形態の平面図。
【図16】本発明のセキュリティラベルのまた別の実施形態の平面図。
【図17】本発明のセキュリティラベルの更にまた別の実施形態の平面図。
【符号の説明】
【0089】
100:平板状の顔料、200:記録媒体、300:入射光、400:反射光、500:入射光、600:反射光、1A,1B,1C:記録物、3:オバート領域、5:コバート領域、13:オバート領域、15:コバート領域、23:色変化インク、25:平板状顔料、43:透明の反射層、45:微細球、47:接着層、61:特定インク、63:液晶インク、101:左円偏光板、103:右円偏光板、200−1,300−1,400−1,500−1:セキュリティラベル、200−2,300−2,400−2,500−2:オバート、200−3,300−3,400−3,500−3:コバート、200−4,300−4,400−4,500−4:切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オバート技術により記録されたオバート記録と、コバート技術により記録されたコバート記録とを同一の記録媒体上に有する記録物。
【請求項2】
前記オバート記録と前記コバート記録とが少なくとも部分的に重なっている請求項1記載の記録物。
【請求項3】
前記オバート記録と前記コバート記録が平面デザインにおいて異なっている請求項1記載の記録物。
【請求項4】
前記オバート記録は、色変化インク上に液晶インクを重ねることで形成されている請求項1記載の記録物。
【請求項5】
前記オバート記録と前記コバート記録とが少なくとも部分的に重なっている請求項1記載の記録物。
【請求項6】
前記コバート記録は、透明な反射層の上に透明な微細球を配してなる光再帰性層によって形成されている請求項5記載の記録物。
【請求項7】
前記オバート記録と前記コバート記録とが平面デザインにおいて同一で且つ位置的に一致してスタックされている請求項1記載の記録物。
【請求項8】
前記オバート記録が、特定色の下地上に液晶インクを重ねることで形成されており、
前記オバート記録の周囲の背景領域が、別の色の下地の上に前記液晶インクを重ねることで、又は、前記特定色の下地を、そこに前記液晶インクを重ねることなく直接的に用いて形成されており、
それにより、前記オバート記録が、コバート記録としても機能するようになった請求項7記載の記録物。
【請求項9】
前記オバート記録が、特定光の照射に対して、鑑定装置に予め記憶されている特定のスペクトルパターンと一致するスペクトルパターンをもった反射光又は透過光を出力するインクを用いて形成されており、
それにより、前記オバート記録が、前記鑑定装置によって鑑定可能なコバート記録としても機能するようになった請求項7記載の記録物。
【請求項10】
液晶インクを用いてオバート記録及びコバート記録の双方として機能する記録が形成された記録物の真贋判定方法において、
右円偏光板を通して前記記録物を観察するステップと、
左円偏光板を通して前記記録物を観察するステップと、
を有する真贋判定方法。
【請求項11】
特定光の照射に対して、鑑定装置に予め記憶されている特定のスペクトルパターンと一致するスペクトルパターンをもった反射光又は透過光を出力するインクを用いてオバート記録及びコバート記録の双方として機能する記録が形成された記録物の真贋判定方法において、
前記記録物に特定光を照射して、前記記録物から出力される反射光又は透過光を得るステップと、
前記前記鑑定装置に予め記憶されている前記特定のスペクトルパターンと、前記前記記録物から出力される反射光又は透過光のスペクトルパターンとを対比するステップと
を有する真贋判定方法。
【請求項12】
オバート技術により形成されたオバート記録とコバート技術により形成されたコバート記録とを同一記録媒体の表面上に有し、
さらに接着層を有して対象物又は対象物のパッケージングに貼付することが可能になったセキュリティラベル。
【請求項13】
前記オバート記録が光の選択反射により観察角度によって色変化を起こす記録であり、前記コバート記録が特定の器具又は装置を用いることで認識可能な記録である請求項12記載のセキュリティラベル。
【請求項14】
前記オバート記録が液晶材料を使った記録であるか、または、金属酸化物層及び/または金属と薄膜雲母硝子層及び/または酸化珪素を積層させた材料を使った記録である請求項13記載のセキュリティラベル。
【請求項15】
特定光の照射に対する反射光又は透過光のスペクトルパターンが、鑑定装置に予め記憶された特定のスペクトルパターンに一致するような材料を用いて形成された第2のコバート記録を前記同一記録媒体の表面上に更に有する請求項12記載のセキュリティラベル。
【請求項16】
前記オバート記録が、特定光の照射に対する反射光又は透過光のスペクトルパターンが、鑑定装置に予め記憶された特定のスペクトルパターンに一致するような材料を用いて形成されており、それにより、前記オバート記録が第2のコバート記録としても機能するようになった請求項12記載のセキュリティラベル。
【請求項17】
8平方センチメートル以下の面積を有する請求項12記載のセキュリティラベル。
【請求項18】
対象物に一旦貼り付けた後に剥ぎ取ろうとする場合にセキュリティラベルが破れるように切り込みを有した請求項12記載のセキュリティラベル。
【請求項19】
同一の記録媒体上にオバート技術によりオバート記録を印刷し且つコバート技術によりコバート記録を形成し、前記オバート技術による印刷はシルクスクリーン方式のものであるセキュリティラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−37096(P2008−37096A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159540(P2007−159540)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【分割の表示】特願2003−554450(P2003−554450)の分割
【原出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】