説明

傷の治癒、火傷のショックの治療、アテローム性動脈硬化症、器官移植、鬱病、精神分裂病、及び化粧品におけるラムノリピドの使用

【課題】成人における線維症の限縮を伴う外傷の治癒を提供し、それによって手術及び一般的な外傷の治癒の有害な効果の一つを減少するために、成人皮膚組織における再上皮化を誘導するための方法を開発する必要性が存する。
【解決手段】活性剤としてラムノリピドを使用する、減少した線維症を伴う外傷の治癒を提供するための皮膚の再上皮化のための方法、火傷のショックの治療のための方法、アテローム性動脈硬化症の治療及び予防のための方法、移植器官の拒絶の予防及び治療のための方法、鬱病及び精神分裂病のような特定の精神的疾患の治療のための方法、シワのような老化の徴候を治療するための有用な化粧品組成物の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の再上皮形成、特に線維症の限縮を伴う外傷の治癒における、ラムノリピドの使用に関する。本発明はまた、火傷のショックの防止及び治療、アテローム性動脈硬化症(心臓血管疾患)の治療及び防止、移植器官の拒絶の治療、並びに鬱病及び精神分裂病の治療における、ラムノリピドの使用に関する。本発明はさらに、化粧品調製物における、上記ラムノリピドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、成人のヒトが外傷、組織の火傷または皮膚組織における切開のいずれかを受けた場合、外傷は傷跡を残して治癒する。これは、外傷が縫合で閉じられる術後の回復の場合にも当てはまる(傷跡は一般的に上記場合には小さいが)。しかしながらこれは、胎児の外傷の場合には当てはまらない。胎児における外傷は迅速に治癒し、一般的に妊娠後期まで傷跡を残さず治癒することが周知である。この理由は以下のことを含む:
1.真皮は、成人の外傷において傷跡の生ずる部位である。発育が進行するにつれ、真皮のコラーゲンが沈着し、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)が、ヒアルロン酸(HA)が優勢である非硫酸化GAGに置換する。
2.胎児組織は線維症の縮減を伴う修復を内在するようであり、上記修復に関与する主要な胎児細胞型は、胎児線維芽細胞であり得る。
3.胎児免疫系は、成人免疫系と比較して機能的に未成熟であり、胎児の外傷の治癒において非常にわずかな役割しか演じない。
4.胎児細胞外マトリックス(ECM)は、主要な構成成分としてHA、コラーゲン、エラスチン、及び接着性糖タンパク質を有する成人におけるマトリックスとは異なる。
【0003】
胎児及び成人の両者のヒツジの外傷におけるヒアルロン酸濃度は、外傷の三日後までで迅速に増大することが示されている。この増大した濃度は、胎児においては外傷の少なくとも21日まで維持される一方、成人においてはベースラインまで迅速に戻る。成人の外傷においては、HAは、フィブリン及び血小板の栓内にわずかに沈着する。HAはヒアルロニダーゼによって除去され、この仮のマトリックスは、コラーゲン及び硫酸化グリコサミノグリカンによって置換される。胎児外傷におけるコラーゲンの沈着は、非外傷胎児皮膚とは区別可能である非常に組織化されたパターンを示す。胎児と成人の修復の間の主要な差異のいくつかは、外傷中に存在する接着性糖タンパク質の一時的なパターンであり、それは修復の初期の段階で見られる。これらの差異は、細胞の動き、移住性、接着性及び増殖性において差異を導くであろう。
【0004】
サイトカイン:トランスホーミング増殖因子−β(TGF−β)は線維増殖を誘導し、成人の外傷において外傷張力を増大し、同様な効果は胎児外傷において報告されている。成人において、サイトカイン及び増殖因子のような、活性化マクロファージ生産物は、局所的組織環境を段階的に修正し、初めに組織の破壊を導き、後に即ち慢性的な遅延型過敏性(DTH)反応において、結合組織により置換を引き起こす。マクロファージ由来サイトカイン及び増殖因子の効果は、二つの段階で生ずる。TNF、IL−1及びマクロファージ由来サイトカインは、T細胞によって開始される炎症反応を迅速に増大する。これらの同じサイトカインはまた、線維芽細胞増殖及びコラーゲン生産を慢性的に刺激する。これらのサイトカインの遅延した機能は、マクロファージ由来ポリペプチド増殖因子の機能によって増大される。活性化マクロファージによって生産される血小板由来増殖因子は、線維芽細胞増殖の潜在的な刺激因子である一方、マクロファージ由来増殖因子(TGF−β)は、コラーゲン合成を増大する。線維芽細胞増殖因子のマクロファージによる分泌は、上皮細胞移動及び増殖を引き起こし、新たな血管形成を導く。これらのサイトカイン及び増殖因子の遅延機能の結果、例えば慢性抗原刺激の開始時の、組織におけるマクロファージの長期化した活性化が、線維性組織による分化した組織の置換を導く。線維症は、抗原の除去及び迅速な消散が不成功であった場合の慢性DTHの結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,455,232号明細書
【特許文献2】米国特許第5,466,675号明細書
【特許文献3】米国特許第5,514,661号明細書
【特許文献4】ベルギー特許出願公開第1005704A4号明細書
【特許文献5】カナダ特許第2,129,542号明細書
【特許文献6】特表平5-512946号公報
【特許文献7】欧州特許公開第93914523.1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、成人における線維症の限縮を伴う外傷の治癒を提供し、それによって手術及び一般的な外傷の治癒の有害な効果の一つを減少するために、成人皮膚組織における再上皮化を誘導するための方法を開発する必要性が存する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って本発明の一つの目的は、活性剤としてラムノリピドを使用する減少した線維症を伴う外傷の治癒を提供するための皮膚の再上皮化のための方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、活性剤としてラムノリピドを使用する火傷のショックの治療のための方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、活性剤としてラムノリピドを使用するアテローム性動脈硬化症の治療及び予防のための方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、活性剤としてラムノリピドを使用する移植器官の拒絶の予防及び治療のための方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、活性剤としてラムノリピドを使用する鬱病及び精神分裂病のような特定の精神的疾患の治療のための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、シワのような老化の徴候を治療するための有用な化粧品組成物を提供することである。
【0013】
本発明のこれら及び別の目的は、ラムノリピドが上述の治療、特に減少した線維症を伴う外傷の治療及び火傷のショックの治療を提供できるという発見によって満足される。
【0014】
本発明のさらに完全な応用及び付帯する利点の多くは、添付した図面と結びつけて考慮した場合、以下の詳細な説明を参考にして容易に得られ、より理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、火傷の外傷の縫合の速度に対する局所的BAC−3の効果を表すグラフである。
【図2】図2は、火傷の外傷の程度に対する局所的BAC−3の効果を表すグラフである。
【図3】図3は、縫合の外傷の張力に対するBAC−3の効果を現す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、活性剤として以下の式1の一つ以上のラムノリピドを含む製薬学的及び/または化粧品調製物及び組成物に関する:
【化1】

[式中、R=H、α-L-ラムノピラノシル(置換されていないまたは2位で−O−C(=O)−CH=CH−Rの式の基で置換されている)、または−O−C(=O)−CH=CH−R
=H、低級アルキル(即ちC1−C6直鎖状または分枝状アルキル、好ましくは−CH)、−CHR−CH−COOHまたは−CHR−CH−COOR
=−(CH−CH、ここでx=4−19;
=−(CH−CH、ここでy=1−19;
=−(CH−CH、ここでz=1−12;及び
=低級アルキル、好ましくは−CH]。
【0017】
本発明のラムノリピドは、従来技術の方法、好ましくは米国特許第5,455,232号明細書、米国特許第5,466,675号明細書、米国特許第5,514,661号明細書、ベルギー特許第1005704A4号明細書、カナダ特許第2,129,542号明細書、特表平5-512946号公報、及び欧州特許公開第93914523.1号明細書に記載されたような発酵、単離及び精製によって調製でき、上記特許のそれぞれは参考としてここに取り込まれる。
【0018】
本発明の方法において、好ましいラムノリピドは、以下の式の構造を有する:
【化2】

(α-L-ラムノピラノシル-(1,2)-α-L-ラムノピラノシル)-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸;以下では「BAC−3」と称する。
【0019】
他の好ましいラムノリピドは、以下のものを含む:
a)R=−O−C(=O)−CH=CH−R;R=−CHR−CH−COOH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH;または
b)R=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH;または
c)R=−O−C(=O)−CH=CH−R;R=−CHR−CH−COOCH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH;または
d)R=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOCH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH;a)−d)の構造は、以下に示される:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0020】
これらの化合物の毒性及び効力は、R基を必要とされるように変えることによってさらに修飾できる。
【0021】
これらのラムノリピドは、皮膚の再上皮化において有効であることが見出されている。これは、非胎児組織における減少した線維症を伴う外傷の治癒のための方法を提供するために重要である。
【0022】
減少した線維症を伴う外傷の治癒は、胎児の主要な特徴である。上述のように、胎児において関与する因子は以下のものである:1.胎児皮膚;2.胎児組織;3.胎児免疫系;及び4.胎児細胞外マトリックス(ECM)。従って、成人において減少した線維症を伴う外傷の治癒を達成するための一つの方法は、成人の皮膚、成人の組織、成人のECMを、胎児皮膚、胎児組織及び胎児ECMに変えることであろう。不幸にも、これは現時点では不可能である。本発明者は、成人の組織が、外傷の修復に影響することなく傷跡の治癒に関する因子をブロックすることによって、傷跡がなく治癒する能力を有するようにできることを結論付けた。
【0023】
本発明に従った減少した線維症を伴う外傷の治癒のための方法は、外傷部、及び任意に周辺領域に、本発明の一つ以上のラムノリピドを含む組成物の有効量を提供することを含む。好ましくは、本発明において使用されるラムノリピドは、上述のBAC−3ラムノリピドである。該ラムノリピドを含む組成物は、ニートリキッド、懸濁液、分散物、エマルション、クリーム、チンキ剤、パウダー、軟膏またはローションの形態で存在できる。好ましくは、該組成物は軟膏で存在する。治療において使用されるラムノリピドの量は、軟膏中に0.001%から、軟膏中に5%までであり、好ましくは軟膏中に0.01から1%であり、より好ましくは軟膏中に0.05から0.5%である。(もし他に示すところがなければ、全てのパーセントは、組成物の全重量に基づく重量%である。)軟膏は、治癒が全うされるまで、1日から6週間の期間、一日に1−5回、好ましくは一日に2−3回、患部に直接適用される。
【0024】
同様に、本発明のラムノリピドは、火傷のショックを治療するために使用できる。外傷の治癒のために有用なラムノリピドと同じものが、サイトカイン生産に対する効果を有するようである。外傷の治癒のための主要な能力は、サイトカインの生産に存すると解され、それはまた大きな火傷に引き続くショックについても関与すると解される。これらのラムノリピドは、サイトカイン生産を防止または減少すると解される。このサイトカイン生産の減少または防止は、火傷のショックの防止に有利な影響を与えるであろう。該治療法は、静脈内/腹膜内または経口のいずれかで達成できる。上記治療において、投与される量は患者の体重の1μg/kgから体重の50μg/kg、好ましくは10μg/kgから30μg/kgであり、一日1〜4回、好ましくは一日2〜3回で、1日から6週間の期間である。経口で使用される場合、ラムノリピドを含む組成物は、溶液、錠剤、カプセル、エマルション、分散物、及びトローチを制限することなく含む、いずれかの従来技術の経口投与形態で存在できる。静脈内または腹膜内投与が使用される場合、ラムノリピドを含む組成物は、溶液、均質な液体、分散物等を制限することなく含む、いずれかの従来技術の静脈内または腹膜内投与形態で存在できる。
【0025】
火傷のショックのために使用される同じ投与の方法は、同様な有効投与量を使用して、器官拒絶、鬱病、精神分裂病及びアテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防においても使用できる。
【0026】
本発明の組成物を含むラムノリピドについてのさらなる使用は、シワのような老化の徴候を治療するための有効量で一つ以上のラムノリピドを含む化粧品組成物の調製においてである。上記化粧品組成物は、作用領域に一日当たり1〜3回適用できるであろう。該化粧品組成物は、上述の局所的形態のいずれかで存在でき、同量のラムノリピドを含むことができる。
【0027】
一つ以上のラムノリピドを含む組成物は、もし所望であれば、製薬産業及び/または化粧品産業で従来使用される一つ以上の担体及び/または希釈液をさらに含むことができる。
【実施例】
【0028】
本発明を一般的に記載して、特定の特別な実施例を参考することによって本発明がさらに理解でき、該実施例は説明の目的のみでここで提供され、他に断り書きがなければ本発明を制限することを企図しない。
【0029】
開放創の治癒
BAC−3ラムノリピドを、不治のアトピー性湿疹(単房限局性皮膚炎)に10年前後罹患している患者における開放創の治癒の場合に試験した。該患者は、左脚に線維症病変を有するコラーゲンの非常に厚い層を有した。41日間一日2回の軟膏の形態における1%BAC−3の投与の後、患者の病状は顕著に改善された。さらに治療が終了した後、コラーゲンだけではなく線維症病変も同様に消失した。治療の一年後、左脚の治療した皮膚病変は正常になり、全ての皮膚のコラーゲン及び線維症層が消失した。
【0030】
切開及び火傷の外傷におけるラムノリピドの局所的投与(ラット)
動物に外傷を与えることを、Protocol for Animal Use and Careに従ってUniversity of California-Davis(以下ではUC-Davisと称する)で実施した。完全な動物のプロトコールでは、70匹のSprague-Dawleyラットを必要とした:30匹のラットを切開の外傷のため、70匹のラットを火傷の外傷のため使用した。それらの中で36匹のラットはその皮膚の7%に亘って火傷をし、4匹のラットはその皮膚の15%に亘って火傷をした。全体の皮膚の切開の外傷及び火傷の外傷を、ジラムノリピドBAC−3の製薬学的調製物の2試験投与量で局所的に治療した。各投与量は、a)ユーセリン中に活性ジラムノリピド(BAC−3)の1%及び0.1%(ユーセリン=71.5g Vaselinum album(製造者:D.E.A.Hamburg);23.8g Lanolinum(製造者:I.O.I.Hamburg);4.7g Cholesterin(製造者:Solvay,Wiena,Austria);Water Number:320);またはb)防腐剤(塩酸クロルヘキシジン-PLIVA-Zagreb)を有する1%;0.1%活性ラムノリピド(BAC−3)を含んだ。BAC−3を含むユーセリンを、治癒の間一日2回投与した。同じ実験を、軟膏+1%塩酸クロルヘキシジンで治療される、治療効果のない一つのコントロール群で実施した。実験の間、動物の体重及び挙動を3日に一度チェックし、写真を定期的に写した。
【0031】
火傷の外傷:連続した火傷の外傷は、理想的には深さ及び程度において同一であるべきである。標準法は、火傷のサイズ及び部位、温度勾配、さらす時間、及び火傷を与える方法を規定する。
【0032】
試験される外傷表面領域は、二つの異なるサイズを有する。一方のサイズは体表面の7%であり、それは異なるパーセントのBAC−3で外傷の治癒の速度を比較でき、もう一方は体表面の15%であり、それは治癒が収縮単独では生じないような十分なサイズである。他方で、全体の外傷の表面部位は、主要な全身性の問題を引き起こしてはならない。後者は、動物の平穏な体重の増加から結論付けできる。標準的な動物の火傷は、Walkerによって記載された方法及び装置によって実施された。火傷を生じる装置は、U.S. Army Surgical Research Unit, Experimental Surgery, Army Medical Center, Fort Sam Houston, Texas 78234からオーダーしたモデル装置を使用して用意した。該装置は、全体のラットの皮膚表面の7%及び15%のさらすことが可能な窓を有した。皮膚の表面は、Mechの式A=kW2/3を使用して各動物について測定され、式中A=cm単位の表面領域;W=グラム単位の体重;k=10である。
【0033】
火傷を生じる方法:各動物を、腹膜内に投与されたナトリウムペントバルビタールで麻痺させた(5mg/25g)。(製造者:Veterinary Laboratory Inc. Lenexa,Kansas)。背中に亘る毛を、動物クリッパーで刈り取った。動物を火傷装置上に仰向けに配置し、手足をくくりつけた;収縮自在な開創器を動物に配置し、プラスチック製のひもでくつろがせて固定した。次いで装置全体をピンセットで開創器末端によってつまみ上げ、さらす領域を沸騰水中に浸した。10秒さらすことによって、十分な厚さの火傷を生産するのに十分であった。水から引き上げ、背中をタオルで巻いて迅速に乾かし、動物を解放し、それぞれかごに入れた。この方法により、きれいな縁を有する均一な火傷を生産した。
【0034】
この方法において、火傷のひどさは、十分な観察時間が達成でき、その一方で完全な治癒が生ずる程度であり、異なる局所的剤に関して特徴的な外傷の治癒の分類が実行できる程度であった。
【0035】
火傷の日から7,14及び45日後、動物を過剰量のナトリウムペントバルビタールによって殺傷し、皮膚標本を組織生理学的に採取した。標本は外傷床、並びに外傷周縁部の健康な皮膚を含んだ。
【0036】
標本を固定し、二種類の染色をルーチンに実施した:顕微鏡観察のためのHematoxylin-Eosin (H&S)、かさぶた及び再生皮膚のよりすぐれた顕視化、並びに金線維芽細胞の同定のために機能するアルファ平滑筋のためのVerhoeff's染色。顕微鏡観察は、獣医病理学者によって実施された。
【0037】
顕微鏡及び視覚的観察の間、4種の外傷の治癒のパラメーターを評価した:かさぶた形成、再上皮化、肉芽組織の形成、及び炎症。
【0038】
切開外傷:背面中央部の切開を、麻酔されたラットで実施した。動物をその毛を完全に刈り取り、アルコールで準備した。5.0cmの中央の十分な厚さの切開を、表面の肉を通して外科用メスで実施した。
【0039】
外傷を、0.5cmの間隔で皮膚縫合糸で直ぐに閉じた。7日後、全ての縫合糸を除去した。切開の14及び21日後、各群から3匹の動物を、過剰量のナトリウムペントバルビタールを使用して殺傷した。プレキシガラステンプレートを使用して、十分な厚さの皮膚の二つのサンプルの最小量を、張力測定のため外傷の長い軸に対して垂直に回収した。皮膚のサイズは、9.0mmの広さで2.0cmの長さの外傷であった。
【0040】
張力測定:各治療群について標準的な外傷サンプルを、Instron 4201(Universal Testing装置、Instron Engineering Co., Canton, MA)材料測定器で、ここの外傷部分を引っ張ることによって張力を測定した。特別の留め金を、スリップを避けて組織を安定につかむために使用し、外傷が25mm/分の標準的交差速度で引っ張られるようにした。健康な皮膚の張力を、各群から得た殺傷動物において測定した。
【0041】
脊椎動物
使用される実験動物は、5から6週齢のオスのSprague-Dawleyラットであった。ラットを1cmの深さの木の削りかすを含む単なるメッシュと固い床を備えたポリプロピレンのかごで飼育した。動物を、21℃(+/−2)℃、52−73%の相対湿度、1時間当たり15回の新鮮な空気の交換、並びに12時間の明暗サイクルの空調室で飼育し配置した。動物を、全ての必須栄養素を含み、新たに与えられ、且つ殺虫剤で防腐されていない合成小球餌で飼育され、標準的な条件と任意に加えた水の下で貯蔵した。
【0042】
動物を研究の開始の少なくとも一週間前から順応させ、治療時で7週齢にした。それらを、無作為な数の方式を使用して各種の実験群に対してアルコール処理し、それらが5%以上まで全体の平均から異ならないように、治療の当日に群の体重をチェックした。
【0043】
動物を個々にかごに入れた。
【0044】
動物の獣医学的ケア
全ての作業(動物の飼育、実験、安楽死、廃棄)を、UC-Davis, 1119/95のバージョンを使用して、Council for International Organization of Medical Scienceによって規定されたInternational Guiding Principles for Biochmical Research Involving Animalsに実質的に従って実施した。
【0045】
結果
火傷の外傷
A)7%の体表面の火傷(7×3cm)
36匹のラットを6個の群に分けた。各群は6匹の動物を有した。上述の方法に従ってラットを火傷させた後、各ラットを個々にかごに入れた。かごに入れる前に、火傷した皮膚に以下の異なる種類の軟膏を塗りつけた:
1.1A−Sixラットは、軟膏中のBAC−3の1%で一日二回塗りつけられた。
2.1B−Sixラットは、軟膏中のBAC−3の0.1%で一日二回塗りつけられた。
3.1D−Sixラットは、軟膏のみで一日二回塗りつけられた。
4.2A−Sixラットは、1%塩酸クロルヘキシジンを加えた軟膏中のBAC−3の1%で一日二回塗りつけられた。
5.2B−Sixラットは、1%塩酸クロルヘキシジンを加えた軟膏中のBAC−3の0.1%で一日二回塗りつけられた。
6.2D−Sixラットは、塩酸化クロルヘキシジンを加えた軟膏のみで一日二回塗りつけられた。
【0046】
7,14及び21日目に各群から一匹のラットを、組織生理学的実験のため殺傷した。
【0047】
45日目に、各群から残りの3匹のラットを殺傷した。ラットの殺傷は、過剰量のナトリウムペントバルビタールを使用して記載された方法に従って実施された。
【0048】
45日間で、全ての動物は以下の治癒パラメーターについて評価された:かさぶた形成、炎症、肉芽組織の形成、及び再上皮化。
【0049】
群の間でかさぶた形成については顕著な差異が存在しなかった。しかし外傷の治癒の間の炎症は、1−D及び2−D群において顕著に増大した。(塩酸クロルヘキシジンを含むまたは含まない偽薬群)。
【0050】
肉芽組織は、1−A及び2−A群で顕著に形成された。
【0051】
火傷の外傷の中央部における再上皮化は、1−B及び2−B群の全てのラットでより早かった。不幸にも、BAC−3と組み合わせた塩酸ヒドロヘキシジンは外傷を刺激し、1%クロルヘキシジンで治療されたラットは常に火傷外傷の下部及び上部でひっかいていた。それ故、1%クロルヘキシジンを含まずに治療された全てのラットのコラーゲン領域のみが計算された。
【0052】
NIHプロトコールを使用する塩酸クロルヘキシジンを含まない45日目で殺傷されたラットについての組織生理学的データ
mm単位で表されるコラーゲン組織の平均値。
1A群=8.48mm
1B群=5.15mm
1D群=6.46mm
【0053】
もし、1D群(偽薬)におけるコラーゲン濃度の平均値を100%としたならば、1B群(BAC−3の0.1%)は79.72のコラーゲン濃度の平均値を有し、1A群(BAC−3の1%)は131.26のコラーゲン濃度の平均値を有する。
【0054】
クロルヘキシジンを含まない火傷外傷の閉創の速度についての局所的BAC−3の効果が図1に示され、火傷外傷の閉創の程度に対するその効果が図2に示される。
【0055】
塩酸クロルヘキシジンを含まないBAC−3での火傷外傷の閉創の速度(図1)
火傷を、上述のような標準法を使用してラットの背中表面に誘発した。全体の火傷領域は、表面領域の7%に相当した。局所的BAC−3を、第1日目から開始し動物が45日目に殺傷されるまで一日二回適用した。治療群は、ユーセリンビヒクル中にBAC−3を含んだ。1%と0.1%の二種類の濃度のBAC−3を使用した。コントロールの治療は、ビヒクル単独より成った。実験の45日間の間で治療群の間に体重の顕著な差異は存在しなかった。外傷の治癒を、12,21,28,23及び45日目で外傷の周縁部の間の距離を測定することによってin vivoで評価した。群当たり6匹のラットを準備した。図に示されているように、火傷の外傷は、ビヒクル単独を受け取ったラットの火傷の外相と比較して、0.1%BAC−3を投与されたラットにおいて顕著に早くサイズが減少した。外傷の閉創の速度を、直線状軽減係数を計算することによって評価した。
【0056】
クロルヘキシジンを含まないBAC−3での火傷の外傷の閉創の程度(図2)
火傷を、上述のような標準法を使用してラットの背中表面に誘発した。全体の火傷領域は、表面領域の7%に相当した。局所的BAC−3を、第1日目から開始し動物が45日目に殺傷されるまで一日二回適用した。治療群は、ユーセリンビヒクル中にBAC−3を含んだ。1%と0.1%の二種類の濃度のBAC−3を使用した。コントロールの治療は、ビヒクル単独より成った。実験の45日間の間で治療群の間に体重の顕著な差異は存在しなかった。外傷の治癒を、12,21,28,23及び45日目で外傷の周縁部の間の距離を測定することによってin vivoで評価した。群当たり6匹のラットを準備した。図に示されているように、火傷の外傷は、ビヒクル単独を受け取ったラットにおける火傷の外傷と比較して、14,21及び28日目で0.1%BAC−3を投与されたラットにおいて顕著に小さかった(ANOVAによるp<0.05)。各時点での平均値が、標識化された記号により表されるように示されている;Tバー=2SD。顕著な差異(Fisher's PSLDを使用するポストホック分析(post hoc analysis)で、ANOVAによりp<0.05)が、星印によって示されている。
【0057】
治癒期間の間、死亡した皮膚の毛の成長は、やっと気付く程度である他の群と比較して、1−A群(軟膏中の1%BAC−3)の全てのラットにおいて非常に顕著であった。
【0058】
B。体表面の15%の火傷(10×5cm)
4匹のラットを、Walker装置中のより広い距離を使用して上述の方法にしたがって火傷させた(10×5cm)。全てのラットを偽薬によって開始してから治療した。50日後、全ての火傷したラットは、首に平均2.3cm、中央部に1.3cm、しっぽに1.8cmの開放創を有した。
【0059】
火傷の50日目で、動物は、上述の方法を使用して塩酸クロルヘキシジンを含まない軟膏中の1%BAC−3で治療された。
【0060】
最初の3日間で、火傷の外傷を一日二回治療した。肉芽組織が成長し、上皮化の最初の徴候が生じた後、動物を一日一回軟膏中の1%BAC−3で3日間治療した。次の4日間で、動物を二日に一度治療した。その後、完全に外傷が再上皮化されるまで、外傷を軟膏中の1%BAC−3で3日に一度治療した。再上皮化は最初に外傷の中央部で生じ、次いでしっぽ部、最後に首部で生じた。全ての動物における完全な上皮化は、30日以内で終了した。
【0061】
縫合の外傷
塩酸クロルヘキシジンを含む及び含まない縫合の外傷の張力に対するBAC−3の効果(図3)
縫合の外傷の張力を、傷を与えた21日目で測定した。ラットを上述のようにBAC−3の調製物で治療した。コントロールはビヒクル単独より成った。図3に示されているように、張力は、相当するビヒクルで治療された外傷と比較して、0.1%BAC−3で治療された外傷において顕著に低かった(ANOVAによりp<0.05)。この観察された張力の減少は、とくに外傷の治癒における線維症の応答を減少する能力という、BAC−3の他の周知の特性と一致する。肉芽組織の重要な特性における改変についての最も可能性のある機構は、三機能的コラーゲン架橋ヒドロキシピリジニウム及び/またはそのジヒドロキシル化前駆体の生産の減少である。ヒドロキシピリジニウムの増大した濃度は、張力の増大、硬直性の増大、可溶性の減少、及びマトリックスの酵素的切断に対する耐性の増大と関連する。ヒドロキシピリジニウムの異常な生産は、特にかさぶた形成及びケロイド形成と関連する。BAC−3は、リシンヒドロキシル化を下流調節することによってヒドロキシピリジニウム形成に対して調節効果を発揮すると解されており、該効果は、該薬剤によって直接的に、または特別なサイトカインに対するBAC−3の周知の効果を通じて間接的に調節することができる。
【0062】
火傷のショック、アテローム性動脈硬化症及び移植器官拒絶の予防及び治療、並びに鬱病または精神分裂病の治療は、以下の方法を使用して試験できる:
【0063】
火傷のショックの刺激及び治療
標準的な火傷を与えるためのモデルの質は、その再生産性に依存する。連続した火傷の外傷は、その深さ及び程度において理想的には同一であるべきである。
【0064】
この目的のため、実施される方法の標準化は避けられない。これは、火傷の外傷のサイズ及び位置、温度勾配、さらす継続時間、及び火傷を適用する方法を正確に規定することによって達成される。
【0065】
標準的な動物の火傷は、Walkerによって記載された方法及び装置によって実施される。該装置は、全体のラットの皮膚表面の35−50%の間をさらすことが可能な窓を有する。皮膚の表面は、Mechの式A=kW2/3を使用して各動物について測定され、式中A=cm単位の表面領域;W=グラム単位の体重;k=10である。
【0066】
火傷を生じる方法:各動物を、腹膜内に投与されたペントバルビタールで麻痺させる(5mg/25g)。背中に亘る毛を、No.40の刃を使用して、Oster動物クリッパーで刈り取る。動物を火傷装置上に仰向けに配置し、手足をくくりつける。収縮自在な開創器を動物に配置し、プラスチック製のひもでくつろがせて固定する。次いで装置全体をピンセットで開創器末端によってつまみ上げ、さらす領域を沸騰水中に浸す。10秒さらすことによって、十分な厚さの火傷を生産するのに十分である。水から引き上げ、背中と大腿部をタオルで巻いて迅速に乾かし、動物を解放し、それぞれかごに入れる。この方法により、きれいな縁を有する均一な火傷を生産する。
【0067】
方法:
6匹のSprague-Dawleyラットの異なる動物群において、上部のブランケット表面を、全ての火傷した動物が殺傷された24時間以内で測定する。この上部のブランケット表面を、火傷のショックの予防におけるBAC−3を試験するために必要な表面として使用する。
【0068】
鬱病についての動物モデル
Wister Kyoto(WKY)ラットが、鬱病を示唆するいくつかの挙動を表すことが最近報告されている。WKYラットは、強制水泳試験において不動を示す。WKYラットが、抑制誘導ストレス性潰瘍の疑いがあり、且つ抑制ストレスに応じてアドレノコルチコトロピンホルモンの顕著に増大した濃度を表すという事実は、WKYラットがストレス刺激に対して過剰応答性であることを示唆する。抗鬱薬デシプラミンは、強制水泳試験における不動を減少し、WKYラットにおけるストレス性潰瘍の発生を減少する。
【0069】
方法と手順
実験は、24匹のWistarラット(WKYオスラット)を使用する。WKYラットは、WKYラットの系列からTaconic Farms (Germantown, NY)によって提供される。ラットを、任意の食料と水、及び06:00から18:00の間に維持された昼間の条件で飼育する。ラットは実験の開始時点で85−95週齢である。強制水泳装置は、30cmの直径で45cmの高さである単純なガラス水用タンクである。水深を上部から15cmとする。水温は25℃に維持する。動物を15分間水中に放置し、その間動物の挙動を記録する。その後ラットを取り出し、加熱密封系で15分間乾燥し(32℃)、次いでその飼育かごに戻す。この処置は、水中で長い時間の不状態を生じ(10−12分の全継続時間)、取り出したラットをやや低体温であり(−3℃)、30分間まで不活発である。24匹のラットをそれぞれ6匹のラットの4個の群に分ける。第一の群は、試験の24時間前と1時間前に10mg/kgのBAC−3の静脈内注射を受ける。第二の群は、試験の24時間前と1時間前にBAC−3を経口的に受ける(10mg/kg)。第三の群は、0.9%NaClを静脈内に受ける。第四の群は、0.9%NaClを経口的に受ける。BAC−3は、0.9%NaClに溶解し、5ml/kgの一定の容量で注射する。
【0070】
ラットを個別に水用タンク中に配置し、その挙動を記録する。これは、浮いている時間、頭を振る回数、及び不規則運動の数を含む。これらの挙動は、以下のように定義される:頭を振る動き−頭を振って水表面を波立たせる動作;不規則運動−水表面の上下での頭の動きを伴う前足及び/または後足で水をかぐ動作;浮いていること−前後の足の動きを伴わない状態。
【0071】
コントロール値からの差異を、Dunnett's試験及びStudent's試験を使用して統計学的有意性について評価する。
【0072】
精神分裂病についての動物モデル
マウスに弱いストレス、3分間の強制水泳を受けさせ、次いでフェンシクリジン(PCP)で繰り返し処理し、同じストレスを再びかけると、強制水泳誘導不動化が増大された。不動化に対するPCP(10mg/kg/日、皮下)の増大効果は、薬剤を使用しなくなってから少なくとも21日間持続した。PCP処理は、精神分裂病で観察される現象、及び従前の実験の報告と一致し、該処理がPCP精神病の負の症状についての動物モデルとして機能できることを示唆した。古典的な抗精神病薬は、精神分裂病の正の症状を改良するが、それらは負の症状は改良しない。この分野の最近の進歩は、ドーパミン−D特性とクロザピンのような5−HT2Aレセプターアンタゴニスト特性の両者を有する化合物の臨床上の導入である。上記化合物は、慢性精神分裂病の負の症状を治療するのに有効であると解される。実験において、コントロール動物において抗鬱病効果を生じない投与量で、リタンセリン、リスペリドン、及びクロザピンは、マウスにおける強制水泳試験での不動化のPCP誘導性増大を減じた。かくして、繰り返されるPCP処理によって誘導された挙動の変化は、このモデルにおけるこれらの抗精神病薬の減弱効果がその臨床上の有効性を反映するため、精神分裂病の負の症状についての有用なモデルであることが明らかであろう。
【0073】
実験の開始時点で25−27gの体重のC57黒色株のマウスを使用する。動物をプラスチック製のかごで飼育し、12時間/12時間の明暗サイクルを有する制御された環境(23+/−1℃、50+/−5%の湿度)で維持する。餌及び飲み水を任意に与える。マウスを強制水泳試験で試験する。
【0074】
不動性の第一の測定
第1日目に、各マウスを個々に透明なガラスシリンダー(20cmの高さ、8cmの直径)中に配置し、該シリンダーは、8cmの深さの水を含み、3分間泳ぎを強制させる。不動の継続時間(不動時間)を、デジタルカウンターで測定する(不動性の第一の測定)。マウスを不動性の第一の測定における不動時間の結果に従って組み合わせ、各種の治療群に分割する。
【0075】
薬剤治療:第2日目に、薬剤治療を開始する。塩水、ヒトにおいて負の症状を生ずるPCP、及びBAC−3(10mg/kg、腹膜内)を、13日間一日一回投与する。第15日目に、塩水で治療した動物を、塩水(コントロール群)、PCP(10mg/kg、皮下、単一PCP治療群)及びBAC−3(10mg/kg、腹膜内、繰り返しBAC−3群)のそれぞれでチャレンジする。他の動物は、9日間塩水を受け取り、次いで4日間PCお(10mg/kg、皮下)で治療される。第15日目に、上記マウスは、PCお(10mg/kg、皮下)及びBAC−3(10mg/kg、腹膜内)でチャレンジされる。
【0076】
不動性の第二の測定
第16日目に、各マウスを3分間再び水中に配置し、不動時間を記録する。BAC−3が、不動性の第二の測定の1時間前で腹膜内に投与される。コントロールマウスは、ビヒクルのみを受け取り、同じ操作が実施される。
【0077】
統計学的分析
個々の群についての値の統計学的差異を、Dunnett's複数比較試験及びStudents t試験で測定する。
【0078】
アテローム性動脈硬化症(心臓血管疾患)についての動物モデル
カイロミクロンレムナント及び中密度リポタンパク質粒子は、apoEと第一に肝臓によってLDLレセプター様タンパク質のいずれかのLDLレセプターの相互作用によって、典型的に血液から迅速にクリアランスされる非常にアテローム発生性粒子である。apoE遺伝子における遺伝的変異またはapoE欠損を有するヒトにおいて、この方法は悪化し、これらの粒子は血漿内に蓄積し、成熟前のアテローム性動脈硬化症を導く。apoE欠損マウスにおいて、サルに特有の現象が観察される。apoE欠損マウスは、これらのリポタンパク質レムナントの非常に高い血漿濃度を有する。低脂肪、低コレステロール餌において、VLDLの濃度は500mg/DLを越える。これらのマウスは、広範なアテローム性動脈硬化症を形成する。広範な病理学的研究により、これらの病変の質がヒトのモノと同様であることが示されている。それらは、早期の内膜下気泡細胞沈着物として開始し、ヒトアテローム性動脈硬化症の徴候である、実質的に筋肉内膜の過形成と細胞外マトリックスを含む、進行性の線維症増殖的アテローム性動脈硬化症病変に進行する。
【0079】
器官移植拒絶の予防
器官移植拒絶の予防におけるラムノリピドの使用は、ネズミ膵島のモデル、またはラット及び/若しくはマウスモデルにおける対宿主性移植片後反応状態及び対宿主性移植片非反応状態における同種異型骨髄、若しくは後足同種移植のラットモデルのいずれかで実施される。全てのモデルにおいて、三種の群が研究される:加熱されない移植片;術後7日目で10−30mg/kg/日のラムノリピドを受け始める移植片、及び9日目で10mg/kg/日のラムノリピドを受け始める移植片。上述の条件の少なくとも一つは、移植器官拒絶の予防におけるモデルとして使用される。
【0080】
本出願は、1998年2月24日に米国特許庁に提出された米国予備出願第60/075,959に基づき、その全内容がここに参考として取り込まれる。
【0081】
明らかに、本発明のさらなる修正及び変異型が、上述の教示に照らして可能である。従って、添付された請求の範囲の範囲内で、本発明は特にここに記載された以上の他の態様で実施可能であると解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下の式1:
【化1】

[式中、
=H、置換されていないα-L-ラムノピラノシル、2位で−O−C(=O)−CH=CH−Rの式の基で置換されているα-L-ラムノピラノシル、または−O−C(=O)−CH=CH−R
=H、低級アルキル、−CHR−CH−COOHまたは−CHR−CH−COOR
=−(CH−CH、ここでx=4−19;
=−(CH−CH、ここでy=1−19;
=−(CH−CH、ここでz=1−12;及び
=低級アルキル]
の一つ以上のラムノリピドを含む、皮膚の再上皮化用の製薬学的組成物
【請求項2】
式1の前記ラムノリピドが、以下の式:
【化2】

を有する(α-L-ラムノピラノシル-(1,2)-α-L-ラムノピラノシル)-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸である、請求項1記載の製薬学的組成物
【請求項3】
式1の一つ以上の前記ラムノリピドが
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH;及び
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOCH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH
である式1の化合物より成る群から選択される、請求項1記載の製薬学的組成物
【請求項4】
前記組成物が、ニートリキッド、懸濁液、分散物、エマルション、クリーム、チンキ剤、パウダー、軟膏及びローションより成る群から選択される形態で存在する、請求項1記載の製薬学的組成物
【請求項5】
前記組成物が軟膏である、請求項4記載の製薬学的組成物
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の全重量に基づいて、式1の一つ以上の前記ラムノリピドの0.001から5.0重量%を含む、請求項1記載の製薬学的組成物
【請求項7】
一つ以上の前記ラムノリピドが、前記組成物の全重量に基づいて、0.01から1重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項記載の製薬学的組成物
【請求項8】
下の式1:
【化3】

[式中、
=H、置換されていないα-L-ラムノピラノシル、2位で−O−C(=O)−CH=CH−Rの式の基で置換されているα-L-ラムノピラノシル、または−O−C(=O)−CH=CH−R
=H、低級アルキル、−CHR−CH−COOHまたは−CHR−CH−COOR
=−(CH−CH、ここでx=4−19;
=−(CH−CH、ここでy=1−19;
=−(CH−CH、ここでz=1−12;及び
=低級アルキル]
の一つ以上のラムノリピドを含む、火傷のショックの治療用の製薬学的組成物
【請求項9】
式1の前記ラムノリピドが、以下の式:
【化4】

を有する(α-L-ラムノピラノシル-(1,2)-α-L-ラムノピラノシル)-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸である、請求項記載の製薬学的組成物
【請求項10】
式1の一つ以上の前記ラムノリピドが:
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH及び
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOCH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH
である式1の化合物より成る群から選択される、請求項記載の製薬学的組成物
【請求項11】
下の式1:
【化5】

[式中、
=H、置換されていないα-L-ラムノピラノシル、2位で−O−C(=O)−CH=CH−Rの式の基で置換されているα-L-ラムノピラノシル、または−O−C(=O)−CH=CH−R
=H、低級アルキル、−CHR−CH−COOHまたは−CHR−CH−COOR
=−(CH−CH、ここでx=4−19;
=−(CH−CH、ここでy=1−19;
=−(CH−CH、ここでz=1−12;及び
=低級アルキル]
の一つ以上のラムノリピドを含む、シワの治療用の製薬学的組成物
【請求項12】
式1の前記ラムノリピドが、以下の式:
【化6】

を有する(α-L-ラムノピラノシル-(1,2)-α-L-ラムノピラノシル)-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸である、請求項11記載の製薬学的組成物
【請求項13】
式1の一つ以上の前記ラムノリピドが
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH及び
=−O−C(=O)−CH=CH−Rによって2位で置換されたα-L-ラムノピラノシル;R=−CHR−CH−COOCH;R=−(CH−CH;R=−(CH−CH;及びR=−(CH−CH
である式1の化合物より成る群から選択される、請求項11記載の製薬学的組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−1373(P2011−1373A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183906(P2010−183906)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【分割の表示】特願2000−533130(P2000−533130)の分割
【原出願日】平成11年2月24日(1999.2.24)
【出願人】(505094135)パラダイム・バイオメディカル・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】