説明

傾斜する背もたれを備えた椅子

【課題】椅子の傾斜する背もたれを支持構造体に連結する弾性的に変形可能な連結部が設けられると共に、連結部には背もたれの後方への傾斜を制限する単純且つ安価な構造体を有する運動の終端が設けられる、背もたれを有する椅子を提供する。
【解決手段】第1の連結部分(34)および第2の連結部分(36)を有する基本構造体(12)と、座席(14)と、背もたれ(16)と、背もたれ(16)を基本構造体(12)に連結する連結部(32)とを備える椅子。第2の連結部分(36)は第1のアーム(40)および第2のアーム(42)からなる。第2のアーム(42)および基本構造体(12)には、基本構造体(12)に対して長手方向に移動可能な第2のアーム(42)の前方部(54)の可動範囲を制限し背もたれ(16)の後方への傾斜の移動の終端を決定する停止要素(56、58)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜する背もたれを備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、本発明は、基本構造体と、基本構造体の座席と、背もたれと、背もたれを基本構造体に連結するプラスチック材料からなる少なくとも1つの連結部とを備える椅子に関する。連結部は背もたれに固定されるか、背もたれと一体的に形成される第1の連結部分と、基本構造体に連結される第2の連結部分とを有する。連結部は弾性を備え変形自在であり、これにより、背もたれは、休止位置と、使用者による後方への推力下にて後方に傾斜される位置との間を運動自在である。
【0003】
本出願人が出願した特許文献1は、傾斜する背もたれを備える椅子を開示する。背もたれは、比較的剛性を備えた2つの側面の直立物と、これらの直立物の底面と一体的に形成される2つの連結要素とを有する。側面の連結要素は、略L字状をなし、横断方向に延びる固定部分が椅子の支持構造体に固定される。連結要素は使用者による後方への推力下にて背もたれが後方に傾斜されるように弾性的に柔軟である。
【0004】
特許文献1に記載された解決手段の主要な短所は、椅子の背もたれを基本構造体に連結する弾力的に柔軟な連結要素には、背もたれの後方への傾斜を制限する運動の終端が設けられていないという点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1557115号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、椅子の傾斜する背もたれを支持構造体に連結する弾性的に変形可能な連結部が設けられると共に、連結部には背もたれの後方への傾斜を制限する単純且つ安価な構造体を有する運動の終端が設けられる、背もたれを有する椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述した課題は、請求項1の主要部をなす特徴を有する椅子によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例における椅子を示す斜視図。
【図2】図1の椅子を示す斜視分解図。
【図3】図2中の矢印IIIによって示される基本構造体を示す斜視図。
【図4】図2の線IV−IVにおける部分断面斜視図。
【図5】本発明による椅子の作動を示す概略図。
【図6】本発明による椅子の作動を示す概略図。
【図7】図5の椅子の作動に対応する本発明の変形を示す概略図。
【図8】図6の椅子の作動に対応する本発明の変形を示す概略図。
【図9】本発明の第2の実施例を示す斜視分解図。
【図10】本発明の第3の実施例を示す斜視図。
【図11】本発明の第3の実施例を示す斜視分解図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して本発明を後述するが、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。
図1および2は、参照符号10によって示される本発明による椅子を示す。椅子10は、座席14および背もたれ16を備える基本構造体12を含む。
図示の実施例において、基本構造体12は、横断要素20によって相互に連結される2つの側面要素18を備え、これらの側面要素18は、それぞれ前脚22および後脚24を備える。しかしながら、この構造体に限定されるものではなく、条件に応じて変更が可能である。例えば、オフィスの椅子の場合において、基本構造体12は高さ調整可能な直立部、および直立部の底面に設けられ放射状をなすキャスタ付きアームにより形成される。
【0010】
図3に示すように、実施例において、基本構造体12は、側面要素18および後方の横断要素20にそれぞれ固定される2つのC字状金属ブラケット26を備える。2つのブラケット26はそれぞれ横断方向に延びる頂壁28と同頂壁28から下方へ延びる2つの側面30とを有する。
【0011】
図1乃至3に示すように、椅子10は、基本構造体12に背もたれ16を連結する弾性的に変形可能な2つの連結部32を含む。ここで2つの連結部32を設けることは任意である。別例において、例えばオフィスの椅子の場合等に、1つの連結部32が中央部に設けられてもよい。
【0012】
連結部32はそれぞれ、プラスチック材料により一片に好適に構成される。連結部32は、後述するように背もたれ16に固定されるか背もたれ16と一体的に形成される第1の連結部分34、および基本構造体12に連結される第2の連結部分36を有する。図示の実施例において、連結部32の第1の連結部分34は、背もたれ16の側部38底部にそれぞれ挿入され、固定される。これに代えて、連結部分34は背もたれ16の側部底部と一体的に形成されてもよい。
【0013】
各連結部32の第2の連結部分36は、第1のアーム40および第2のアーム42からなる。アーム40および42は長手方向に延び、上下方向にて相互に所定の距離だけ離間するように構成される。第1のアーム40および第2のアーム42はそれぞれ第1の連結部分34の底面44に連結される後方端部を有する。第1のアーム40は、基本構造体12の各ブラケット26に固定される前方部46を有する。固定は、例えば各ブラケット26の横断方向頂壁28に形成される穴にネジ48を螺入させることにより行われる。第1のアーム40は、各ブラケット26の後方端部から片持ち梁状に突出し且つ前方部46に対して弾性的に変形可能な背面部50を有する。
【0014】
金属材料からなる弾性を備えた薄板、即ち板バネ52が、第1のアーム40の底面と各ブラケット26の横断方向頂壁28との間に設けられる。弾性を備えた薄板、即ち板バネ52が設けられる場合に、薄板、即ち板バネ52は、ブラケット26を超えて背面に向かって第1のアーム40の背面部50の下方を片持ち梁状に延びる。弾性を備えた薄板、即ち板バネ52は、各ブラケット26に第1のアーム40を固定したものと同じネジ48によって各ブラケット26に固定される。
【0015】
第2のアーム42は、各ブラケット26に対して制限のある可動範囲内にて長手方向に移動可能な前方部54を有する。第2のアーム42の前方部54は摺動するブロックのような形状に形成され、各ブラケット26の側面30と頂壁28との間にて摺動するように挿入され、長手方向に延びる案内部を形成する。
【0016】
第2のアーム42の前方部54および各ブラケット26には、相互に協動して前方部54の長手方向における移動の範囲を制限する停止要素が設けられる。図示の実施例において、上記停止要素はピンおよびスリットの連結体の形態に形成される。より詳細には、前方部54には、ブラケット26に固定されたピン58が嵌入する長手方向に延びるスロット56が設けられる。図示の実施例において、ピン58は、ブラケット26の側面30に対して直交する方向に延びる。
【0017】
スロット56の長手方向における長さにより、第2のアーム42の前方部54の長手方向における最大の可動範囲が決定される。
図5および6は連結部32の基本的な動作を概略的に示す。図5は、背もたれ16の休止位置に対応する休止位置における連結部32を示す。図5および6において、ピン58の機能は、ブラケット26に第1のアーム40の前方部46を固定するネジ48のうちの1つの端部によって行なわれる。図5の休止位置において、ピン58は、スロット56の前方端部に支持される。
【0018】
使用者によって背もたれ16に後方への推力が作用されると、図6に示すように、第1のアーム40は弾性的に変形する。この第1のアーム40の変形により、背もたれ16は後方に傾斜する。同時に、第1のアーム40の弾性的な屈曲により、第2のアーム42の前方部54は前方に移動する。図6は、背もたれ16を後方に最大限に傾斜させた位置に対応する連結部32の位置を示す。この状態において、ピン58がスロット56の背面に支持されることにより停止部が形成され、第1のアーム40のさらなる屈曲が防止される。
【0019】
背もたれ16に使用者によって作用された圧力は、ピン58によって形成された停止部に対する第2のアーム42における圧縮力によって補償される。使用者による後方への推力の作用が中断すると、連結部32は、連結部32を構成する材料の弾性特性により、図5に示す休止位置に復帰する。薄板、即ち板バネ52が設けられる場合に、薄板、即ち板バネ52は、弾性による復帰の運動を補助し、使用者によって背もたれ16に対して後方に作用された推力を打ち消す付加的な弾性力を供給する。
【0020】
図7および8は、本発明による連結部32の変形を示す。上述した実施例において、第1のアーム40は上方の位置に配置され、第2のアームは下方の位置に配置される。図7および8に示すように、第1のアーム(即ち、基本構造体12に固定されたもの)を下方の位置に、第2のアーム(即ち、基本構造体12に対して移動可能なもの)を上方の位置に配置することによっても同じ効果が得られる。この変形の作動は、上述したものと略同じであるが、この例において、図8に示す背もたれの後方への最大傾斜位置において第2のアーム42が上述した実施例に示すような圧縮力に代えて張力に暴露される点において相違する。
【0021】
図9は、本発明の第2の実施例における椅子を示す。上述した要素に対応する要素は同じ参照符号にて示される。
図9の変形において、連結部32の第2の連結部分36は座席14と一体的に形成される。より正確には、連結部32の第1のアーム40は、背面に向かって片持ち梁状に突出する座席14の弾性的に変形可能な側部によって形成される。上述したように、連結部32の第2のアーム42が形成される。連結部32の第2の連結部分36は座席14を介して基本構造体12に連結される。
【0022】
上述した実施例と同様に、連結部32の第1の連結部分34は、背もたれ16の側部底部と一体的に形成されるか、あるいは第1の連結部分34は、背もたれ16の各側部38底部に挿入され固定されてもよい。
【0023】
図10および11に本発明の第3の実施例における椅子を示す。上述した要素に対応する要素は同じ参照符号にて示される。
図10および11に示す実施例において、座席14および背もたれ16は可撓性を備えたキャンバス60によって形成され、その両側部端部が連結部32によって形成される各側部支持体に固定される。特に連結部32の第1の連結部分34は2つの直立物を形成し、背もたれ16を形成するキャンバス60の部分の両側部端部がこれらに固定される。連結部32の第1のアーム40は、2つの横断方向支持体を形成し、座席14を形成するキャンバス60の部分の両側部端部がこれらに固定される。図1乃至3を参照して上述したように、第2の連結部分36の第2のアーム42が形成される。
【0024】
第1の連結部分34は、背もたれ16の高さの略全体にわたって延び、第2の連結部分の第1のアーム40は、座席14の長さの略全体にわたって延びる。
クロス部材62は、背もたれ16の頂部を形成し、第1の連結部分34の頂部に固定される。
【0025】
さらに、本実施例において、薄板、即ち板バネ52が連結部32の弾性による復帰運動を補助すべく設けられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本構造体(12)と、座席(14)と、背もたれ(16)と、背もたれ(16)を基本構造体(12)に連結するプラスチック材料からなる少なくとも1つの連結部(32)とを備える椅子において、連結部(32)が背もたれ(16)に固定されるか背もたれ(16)と一体的に形成される第1の連結部分(34)と、基本構造体(12)に連結される第2の連結部分(36)とを有し、連結部(32)は弾性的に変形自在であり、これにより背もたれ(16)が、休止位置と、使用者による後方への推力下にて後方に傾斜される位置との間を運動自在である椅子であって、
該第2の連結部分(36)が長手方向に延び上下方向に所定の距離だけ離間するように設けられる第1のアーム(40)および第2のアーム(42)からなり、同第1のアームおよび第2のアーム(40、42)が該第1の連結部分の底部(44)に連結される背面をそれぞれ有することと、該第1のアーム(40)は、背もたれの休止位置に対応する休止位置と、背もたれが後方に傾斜される位置に対応する変形位置との間にて変形可能であることと、該第2のアーム(42)は、第1のアーム(40)の休止位置に対応する第1の位置と、第1のアーム(40)の変形位置に対応する第2の位置との間において基本構造体(12)に対して長手方向に移動可能な前方部(54)を有することと、第2のアーム(42)および基本構造体(12)には、第2のアーム(42)の前方部(54)の長手方向の移動の範囲を制限し背もたれ(16)の後方への傾斜の移動の終端を決定する停止要素(56、58)がそれぞれ設けられることとを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記停止要素(56、58)はピンおよびスリットの連結体からなることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記ピンおよびスリットの連結体は、前記第2のアーム(42)の前方部(54)に形成され長手方向に延びるスロット(56)、および前記基本構造体(12)に固定されるピン(58)からなることを特徴とする請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記第1のアーム(40)に設けられ金属材料からなる弾性を備えた薄板(52)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項5】
前記基本構造体(12)は、前記第1のアーム(40)の前方部(46)が固定される横断方向の壁(28)を有する少なくとも1のブラケット(26)を備えることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項6】
前記第1のアーム(40)は、前記ブラケット(26)から後方に片持ち梁状に突出する背面部(50)を有することを特徴とする請求項5に記載の椅子。
【請求項7】
前記第2のアーム(42)の前方部(54)は、前記ブラケット(26)の摺動するブロックとしての長尺状をなす案内部と係合することを特徴とする請求項6に記載の椅子。
【請求項8】
前記第1のアーム(40)は、前記第2のアーム(42)より高い位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項9】
前記第1のアーム(40)は、前記第2のアーム(42)より低い位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項10】
前記連結部(32)の第2の連結部分(36)は、座席(14)と一体的に形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項11】
前記連結部(32)の第1のアーム(40)は、座席(14)の弾性的に変形可能な側部によって形成され、該側部は、片持ち梁状に背面に向かって突出することを特徴とする請求項10に記載の椅子。
【請求項12】
前記座席(14)および背もたれ(16)は、可撓性を備えたキャンバス(60)によって形成され、同キャンバス(60)の両側部端部は、2つの連結部(32)によって形成される各側部支持体に固定されることを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項13】
前記連結部32の第1の連結部分(34)は2つの直立物を形成し、背もたれ(16)を形成するキャンバス(60)の部分の両側部端部が該直立物に固定されることと、連結部(32)の第1のアーム(40)は、2つの横断方向支持体を形成し、座席(14)を形成するキャンバス(60)の部分の両側部端部が該横断方向支持体に固定されることとを特徴とする請求項12に記載の椅子。
【請求項14】
第1の連結部分(34)は、背もたれ(16)の高さの略全体にわたって延び、第2の連結部分の第1のアーム(40)は、座席(14)の長さの略全体にわたって延びることを特徴とする請求項13に記載の椅子。
【請求項15】
クロス部材(62)が背もたれ(16)の頂部を形成し、第1連結部分(34)の頂部に固定されることを特徴とする請求項13に記載の椅子。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−20124(P2012−20124A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144692(P2011−144692)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(504452332)プロ−コード ソシエタ ペル アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】Pro−Cord Spa
【住所又は居所原語表記】Via del Battiferro, 4 I−40129 Bologna Italia
【Fターム(参考)】