説明

傾斜運搬装置

【課題】 重量物である資材を安定した状態で安全に足場上を昇降させて運搬することができる傾斜運搬装置を提供する。
【解決手段】 地表に所定間隔に等間隔に2列平行に対向して縦の支柱1を立設し、この縦の支柱1に横の支柱2を水平に取り付けて格子状に組み立てて足場200を構成し、前記縦の支柱1の内側あるいは外側に縦の支柱1に固定したブラケットによってレール4を取り付け、このレール4に沿って運搬手段であるカゴ10を駆動手段20によって昇降させて資材を足場200の上部に運搬する傾斜運搬装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場における足場を構成する支柱に対して傾斜して取り付けて、作業に必要な機材等を足場へ運搬する傾斜運搬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の足場への機材等の運搬は、水平もしくは垂直なリフトによって行われていた。
例えば、特許文献1に提案されている建物用のリフト装置は、ガラス等の建築資材の載台を有するフレームと、このフレームを、建物に接近して垂直に固定される足場の垂直ロッドに沿って移動させる車輪と、フレームをワイヤで吊り上げて、足場に沿って上下に移動させるウィンチとを備え、フレームは、足場と建物との間にできる隙間を上下に移動でき、かつ、足場の垂直ロッドから離して、建物に向かって引き寄せできるように、車輪を介して足場に連結されてなることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−314889号公報
【0004】
前記特許文献1記載の発明によれば、重い建築資材を、楽に、しかも安全に建物に搬送できる。建物に接近して設置する足場を除くことなく、足場とリフト装置の両方を便利に使用できるのである。
【0005】
しかしながら、前記発明によれば、重い建築資材を建物に接近して垂直に搬送するため、重心が安定しないという問題点があった。
すなわち、垂直型のリフト装置は重心が運搬手段の先端に近いため運搬手段の強度によって重心を支持するため強度が要求され重量物となる。
さらに細長い管や支柱等は運搬手段に対して垂直に立てなくてはならず、重心が安定せず転びやすく危険であった。特に資材を運搬手段から出す時が危険であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来例の問題点を解決するもので、足場を構成する縦の支柱に対してレールを傾斜して取り付け、このレール上を運搬手段によって資材を運搬するもので、安定した状態で重量物や長尺物やボード等の各種資材を安全に足場上を昇降させて運搬することができ、特に長尺物と通常物の混在する資材の運搬時の安定走行に効果を発揮する傾斜運搬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、縦の支柱と横の支柱によって構成した足場において、前記縦の支柱の内側に、縦の支柱に対して傾斜して取り付けたレールと、前記レールを足場に取り付けるためのブラケットと、前記レール上を移動して資材を運搬する運搬手段と、前記運搬手段を昇降させるための駆動手段とからなる傾斜運搬装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、縦の支柱と横の支柱によって構成した足場において、前記縦の支柱の外側に、縦の支柱に対して傾斜して取り付けたレールと、前記レールを足場に取り付けるためのブラケットと、前記レール上を移動して資材を運搬する運搬手段と、前記運搬手段を昇降させるための駆動手段とからなる傾斜運搬装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記ブラケットに、垂直杆の上端に水平に張り出した2本のアームの間にワイヤを掛けるための滑車を回動自在に軸支し、前記アームの上部にリミット装置を取り付けた傾斜運搬装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記レールを、一側面に開放面を構成した断面略コ字状に構成し、端部にレール同士を接続するための接続具を設けると共に、下面に前記ブラケットに締結するための2個のクランプをレールの中央から等距離の位置に設け、前記開放面を互いに反対側に向けて設置した傾斜運搬装置である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記運搬手段を、長尺の側杆と連結杆からなる長方形の枠体と、前記側杆の上に立設した安全柵と、前記枠体の底部に構成したレールの上面を走行する前部タイヤと後部タイヤ及びレールの裏面に接触して走行する内部タイヤと、前記枠体の底部に回動自在に取りつけた可動底板と、前記枠体の底部に設けた安全装置によって構成した傾斜運搬装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記駆動手段を、地表に設置する基台とこの基台の端部に直角に取り付けた固定部と、前記基台の上に前後方向移動可能に取り付けたウィンチと、前記基台の底部に設けたウィンチ移動用の圧縮バネと、前記基台の前部に設けた過積載防止リミットスイッチと、前記固定部に取り付けた固定具によって構成した傾斜運搬装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の傾斜運搬装置によれば、縦の支柱の内側に傾斜して取り付けたレール上を長尺物やボード等の各種資材を運搬するため、運搬手段が外部に露出せず、かつ運搬手段や資材の重心が安定するため、重量物の運搬作業が安全かつ迅速に行え、長尺物と通常物の混在する資材の運搬も安定して行える。
また重心が安定するため運搬手段の小型化が可能となると共に、資材を扉等で固定する必要もなくなり、資材の出し入れも容易に行える等、作業能率が向上する。
【0014】
請求項2記載の傾斜運搬装置によれば、縦の支柱の外側に傾斜して取り付けたレール上を移動して資材を運搬するため、縦の支柱の間隔に制約されることなく運搬手段からはみ出すような大型の資材を運搬することができる。またレールの幅も運搬手段や資材の大きさ等によって自由に決められるため、運搬作業に自由度が増す。
また前述の通り運搬手段や資材の重心が安定するため、重量物等の運搬作業が安全かつ迅速に行える。また重心が安定するため、運搬手段の小型化が可能となると共に、資材を頑強な扉等で固定手段を特定することなく、資材の出し入れも容易に行え、作業能率が向上する。
【0015】
請求項3記載の傾斜運搬装置によれば、前記ブラケットにリミット装置を取り付けたため、運搬手段がレールの最上端に到達したことをリミット装置によって感知して駆動装置を停止させることができるため、運搬手段のレールからの脱輪や転落を回避することができる。
【0016】
請求項4記載の傾斜運搬装置によれば、前記レールを、断面略コ字状に構成し、レールの接続具を設け下面にクランプを固定したため、運搬手段のタイヤが確実にレールを掴み脱輪の恐れがない。また、必要に応じてレールの長さを伸ばすことができる。
【0017】
請求項5記載の傾斜運搬装置によれば、運搬手段を長方形の枠体と安全柵によって作成するため、小さい重量で堅牢な構造となり、各種タイヤによって運搬手段がレール上を確実に走行することできる。
また、可動底板により、大型の資材や長尺物と小型の資材を積載する場合に対応した適切な資材の配置をすることができ重心が安定して安全である。更には安全装置により、緊急時に運搬手段を安全に停止させることができ事故を未然に防止できる。
【0018】
請求項6記載の傾斜運搬装置によれば、前記駆動手段を基台の上に圧縮バネの作用で前後方向に移動可能としたウィンチと過積載防止リミットスイッチによって構成したため、ワイヤに大きな荷重がかかりすぎ過積載となった場合には、運搬手段を停止させることができ、安全である。また、クランプやクサビ等の固定具の働きによって確実に支柱等に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の傾斜運搬装置の実施形態1の概略を示す斜視図
【図2】レールの斜視図
【図3】図1の部分拡大図
【図4】内部用レールブラケットの平面図(A)及び同正面図(B)
【図5】内部用レールブラケットの斜視図
【図6】リミット装置の斜視図
【図7】運搬手段の平面図
【図8】運搬手段の正面図
【図9】運搬手段の一部切欠き拡大図
【図10】安全装置の平面図
【図11】安全装置の作動状態の側面図
【図12】安全装置のワイヤ切断時の作動状態を示す説明図
【図13】駆動手段の平面図
【図14】駆動手段の底面図
【図15】駆動手段の側面図
【図16】駆動手段の作動状態を示す側面図
【図17】実施形態1の作用を示す模式図
【図18】本発明の傾斜運搬装置の実施形態2の概略を示す斜視図
【図19】外部用レールブラケットの斜視図
【図20】外部用レールブラケットの縦の支柱への取り付け状態を示す斜視図
【図21】外部用レールブラケットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1乃至図17に基づいて、傾斜運搬装置の実施形態1を説明する。
実施形態1の傾斜運搬装置を取り付ける足場200は、地表に所定間隔に縦の支柱1を等間隔に、かつ2列平行に対向して立設し、この縦の支柱1に等間隔にポケット部3を固定し、このポケット部3のポケット31に横の支柱2のクサビ21を挿入して、横の支柱2を水平に取り付けて格子状に組み立てて構成する。
前記縦の支柱1の内側、すなわち縦の支柱1,1の間にレール4を内部用レールブラケット5、6によって取り付け、このレール4に沿って運搬手段であるカゴ10を駆動手段20によって昇降させるものである。以下、この構成を詳細に説明する。
【0021】
前記レール4は、図2に示すように一側面に開放面4aを構成した断面コ字状のいわゆるC鋼であり、両端部にレール4同士を接続する対称形の接続具41(41a、41b)を設け、下面に2個のクランプ42をレールの中央から等距離の位置、すなわち対称の位置に固定してなる。
レール4を内部用レールブラケット5、6に取り付ける際には、図1に示すように、内部用レールブラケット5、6に対し各レール4の1個のクランプ42を使用するため、他の1個は使用されない余剰のクランプとなる。これは、レール4を対称形でかつ同一部材で作成したためである。
このレール4を2本設置し、前記開放面4aを互いに反対側に向けて内部用レールブラケット5、6に固定する。
【0022】
このレール4の内部用レールブラケット5への取り付け方法を、図3乃至図6に基づいて説明する。
まず、最下段の2本の横の支柱2の端部に2本のブラケットベース9を立設し、このブラケットベース9に固定してあるポケット部3のポケット31に横の支柱2のクサビ21を挿入して固定する。
【0023】
図4に示すように、パイプ状のバー51の両端にクサビ52を構成したレール固定用の内部用レールブラケット5を構成する。この内部用レールブラケット5の両端のクサビ52をブラケットベース9に設けたポケット部3のポケット31にそれぞれ挿入して固定し、その後レール4のクランプ42をレールガイドプレート53で位置決めして内部用レールブラケット5に締結する。
長いレール4が要求される場合は、縦の支柱1の上方に内部用レールブラケット5を取り付け、その内部用レールブラケット5にレール4のクランプ42を締結する。
【0024】
図5に示すように、レール4の上端に用いる内部用レールブラケット6は、パイプ状のバー61の両端にクサビ62を構成し、中央部にはリミット装置7を取り付けるための2個のリミット装置取付プレート64を一定間隔を有して対向して垂設してあり、このリミット装置取付プレート64には、上部に切り欠き部64bと、下部に孔64aを構成してある。
【0025】
前記クサビ62を縦の支柱1のポケット31に挿入して内部用レールブラケット6を取り付け、その後レール4のクランプ42を前記と同様に内部用レールブラケット6に締結して固定すると共に、レール4同士を接続具41によって接続して所定の長さに構成する。
このようにして、レール4,4は縦の支柱1,1に対して任意の角度を傾斜して固定されるのである。
【0026】
リミット装置7は図6に示すものであり、2本の垂直杆71を一定のスペース71aを有して構成し、上端にアーム72を水平に張り出して、このアーム72,72のスペース71aに滑車73を回動自在に軸支する。また、アーム72の上部にはリミットスイッチ74を固定する。
【0027】
前記垂直杆71の下部には、2個の取付部75、76を、前記アーム72と同方向に上下に一定間隔を有して張り出して設ける。このうち上部の取付部75には、ピン75bを両側水平方向に張り出して構成し、下部の取付部76には、ピン孔76aを穿設し、このピン孔76aに挿通するピン77を備えている。
【0028】
リミット装置7は、カゴ10がリミットスイッチ74に接触することで、カゴ10がレール4の最上端に到達したことを感知して駆動装置20に知らせて、運搬手段を安全に停止させて事故を未然に防止する働きをする。
【0029】
運搬手段であるカゴ10は、図7乃至図9に示すように、一定間隔を有して配置した長尺の側杆11a,11aの前後を連結杆11b,11bで連結して長方形の枠体11を構成し、この側杆11a,11aの上に安全柵13を立設したものである。
【0030】
前記安全柵13は、前記側杆11aに立設した5本の支持杆13aと、この支持杆13aの上端を連結した連結固定杆13bで構成する。
カゴ10の底面の側杆11a,11aの間には、連結杆11bと平行な連結杆14a、14b、14c、14d、14eが掛け渡してある。
【0031】
カゴ10の進行方向である前方(図7左方)底面にレール4の上面を走行する前部タイヤT1を連結杆14aに取り付け、後方底面にはレール4の上面を走行する後部タイヤT2と、レール4の裏面に接触して前記後部タイヤT2とレール4を挟みながら走行する内部タイヤT3を連結杆14eに取り付けている。カゴ10の後部上端には、カゴ10を地上で運搬するときに使用する運搬用タイヤT4が設けられている。
【0032】
前記連結杆14bは、後述の安全装置8のカゴ締結プレート95に締結する角パイプであり、連結杆14cは、安全装置8のフック91bに係合するパイプである。
【0033】
また、カゴ10の底面には、前方と後方に網部15,15を構成し、かつ後方の両側部には網部16を構成してある。これら網部は、積載した資材の落下を防ぐ等、作業の安全上のためである。
【0034】
さらにカゴ10の前方底面には、可動底板17を蝶番で回動自在に取りつけてある。小型の資材を運搬する場合には可動底板17を矢印方向に起伏させて図7、図8のように立設して、可動底板17に小型の資材19を載せて運搬する(図17(B)参照)。長尺の資材を運搬する時は、図9に示すように可動底板17を矢印方向に倒して底面に収納しカゴ10全体に資材を収納する(図17(A)参照)。
さらにカゴ10の底面には安全装置8が設けられている。
【0035】
安全装置8は、図10乃至図12に示すように固定バー81、82の両端にそれぞれ2枚の固定プレート83を固定し、この固定プレート83に回転軸84を取り付け、この回転軸84にタイヤ85を回動自在に軸支すると共に、タイヤ85の両側に一対の爪一体プレート87を回動自在に軸支する。
この爪一体プレート87は、後方(図10下方)に向かって舌片87aを延出し、後方下端には爪88を構成してある。前記舌片87aには、後方が高くなるように傾斜した長孔87bを穿設している。
【0036】
前記固定バー81の中央に、ワイヤ取付部93の軸93aを後方に向かって水平方向に貫通せしめ、その後方端を作動バー94の中央に固定すると共に、軸93aの前方端には環状のワイヤ固定部93bを設けてある。また、前記ワイヤ取付部93の軸93aには圧縮バネ92が巻装されていて、作動バー94を常時後方に付勢している。
【0037】
前記軸93aの両側には、軸93aと平行なフック板91を固定バー81、82に固定して設ける。このフック板91には、前記作動バー94を挿入する長孔91aを水平方向に穿設すると共に、後方上端にはフック91bが構成されている。
また、固定バー81の前方には安全装置8をカゴ10に取り付けるためのカゴ締結プレート95と挟持部材95aを設けてある。
【0038】
次に駆動手段20について、図13乃至図16に基づいて説明する。
駆動手段20はカゴ10をレール4に沿って昇降させるための装置であり、地表に設置した基台101と、この基台101の端部に直角に固定した固定部120と、基台101の上に設置したワイヤ巻き取り用のウィンチ116等からなる。
【0039】
前記ウィンチ116は、内部に設けたモータ(図示せず)とワイヤ100を巻き取るためのドラム117からなり、載置台111上に固定されている。前記載置台111は長方形であり、両側には平行な筒部112を設けると共に、中央にはバネ押え板114を垂設してある。
【0040】
基台101は略台形状の枠体であり、後方の後枠101aの中央部には、圧縮バネ104を巻装したバネ取付部103が前方(図13上方)に向かって水平に突出して設けられ、前方の前枠101bには、過積載防止リミットスイッチ107が設けられている。
【0041】
前記バネ取付部103の両側で、後枠101aと前枠101bの間に、丸パイプ102が平行に設けてある。この丸パイプ102はウィンチ116を移動可能に支持するためのものである。
すなわちウィンチ116を基台101上に載置するには、前記ウィンチ116の下部両側に設けた筒部112の中に、前記丸パイプ102を挿通して取り付ける。このときウィンチ116は圧縮バネ104の弾発力によって前方に付勢され過積載防止リミットスイッチ107に接触していて、スイッチを常時オンの状態としている。
【0042】
カゴ10の積載量がオーバーした場合には、ワイヤ100が前方に強く引かれるためウィンチ116も圧縮バネ104の弾発力に抗して前方に移動してリミットスイッチ107から離れ、その結果リミットスイッチ107がオフとなり、ウィンチ116のワイヤの巻取りが停止する。
【0043】
前記固定部120の上端両側には、駆動手段20をブラケットベース9あるいは縦の支柱1に固定するための固定具であるクランプ121を備えている。また固定部120の上端中央には、ワイヤ100を誘導するためのシーブ123が取付台122に回動自在に取り付けられている。
【0044】
上記のように構成した実施形態1の作用を説明する。
まず、前述のようにレール4を、内部用レールブラケット5、6を用いて足場200の縦の支柱1,1の間に固定する。このとき、上端の内部用レールブラケット6には、リミット装置7を次のように固定する。
【0045】
図6に示すリミット装置7の取付部75、76を、内部用レールブラケット6の2個のリミット装置取付プレート64の間に挿入し、上部の取付部75のピン75bをリミット装置取付プレート64の切り欠き部64bに係合させる。
同時にピン77を下部の取付部76のピン孔76aとリミット装置取付プレート64のピン孔64aに貫通して固定する。これによりリミット装置7は、内部用レールブラケット6に迅速に取り付けることができる。
【0046】
足場200を上方に高く組み立てていくに伴い、内部用レールブラケット6も、次々と足場200の高い位置に取り付けられていくため、最も高い位置にある内部用レールブラケット6は、次々と変わっていくのである。一方、リミット装置7は、最も高い位置の内部用レールブラケット6に取り付ける必要がある。
【0047】
そのためリミット装置7は、足場200の高さに伴って変わっていく最上部に位置する内部用レールブラケット6に順次付け替えなくてはならない。そのためリミット装置7は前記のように構成したので、内部用レールブラケット6に対して、取り付け取り外しが容易かつ迅速にでき、かつ確実に固定されるという効果がある。
【0048】
次にカゴ10に安全装置8を取り付ける。
この場合、まず安全装置8のフック91bをカゴ10の連結杆14cに係合し、次いでカゴ締結プレート95と挟持部材95aの間に連結杆14bを挟み、カゴ締結プレート95を締結して連結杆14に挟持部材95aを押圧して固定する。
同時に、カゴ10の前部タイヤT1と後部タイヤT2をレール4上に載せ、内部タイヤT3をレール4の裏面に接触せしめて、前記後部タイヤT2と内部タイヤT3とでレール4を挟みながら走行可能とする。
【0049】
上記のように構成したカゴ10をレール4に取り付け、レール4下端に駆動手段20を備え付ける。その後、駆動手段20のワイヤ100を上端の内部用レールブラケット6に固定したリミット装置7の滑車73に掛け渡し、その後、前記安全装置8のワイヤ固定部93bに締結する。その後、駆動手段20をオンにしてワイヤ100を巻き上げると、カゴ10は上昇していく。
【0050】
次に、前記安全装置の働きを説明する。
図11に示すように、カゴ10がレール4上をワイヤ100で引き上げられているときは、ワイヤ100の引張力でワイヤ取付部93は前方に強く引かれるため圧縮バネ92の弾発力に抗して前方に移動し、その先端に固定した作動バー94も前方に移動し、フック板91の長孔91aと舌片87aの長孔87bの最前端に位置するため、爪一体プレート87は回転軸84を中心に上方に回動し、爪88はレール4表面に接触しないのである。
【0051】
図12に示すように、カゴ10の引き上げ中にワイヤ100が切断した場合には、ワイヤ100の引張力がなくなるため、カゴ10は下方に後退をすると同時に、ワイヤ取付部93と作動バー94は圧縮バネ92の弾発力によって後方に移動し、舌片87aの長孔87b内の最後端に位置することになる。
これによって、爪一体プレート87は回転軸84を中心に下方に回動し、それによって爪一体プレート87の下端に構成した爪88がレール4表面に強く押し付けられブレーキの役割を果たすため、カゴ10は後退を阻止され安全に停止する。
【0052】
カゴ10が上昇した結果、図17のようにカゴ10の中の資材C1、C2が作業者の近くまで運搬されるのである。
なお、図17(A)は長尺の資材C1を運搬する場合で、同(B)は小型の資材C2を運搬する場合を示している。
【0053】
本実施形態によれば、カゴ10は傾斜して運搬されるからカゴ10本体と資材C1、C2の重心が安定するため、安全、確実さらに迅速な資材運搬が可能となり、かつカゴ10の小型化が可能となる。また、カゴ10の構造のため、頑強な扉のようなものが必要でなく、必要であれば簡易的なチェーンや棒状のようなもので落下防止対策を図れ、かつ資材C1、C2のカゴ10からの出し入れが容易である。
さらには、カゴ10に取り付けた安全装置8の作用で、ワイヤ100が切断した場合などにもカゴ10に安全にブレーキがかかるのである。
【0054】
本発明装置の実施形態2を図18乃至図21に基づいて説明する。
実施形態2の傾斜運搬装置は、レール4が縦の支柱1の外側に設けられていて、カゴ10が足場200の外側を走行するものである。
【0055】
本実施形態で使用するブラケットは、レールベースブラケット150と外部用レールブラケット160である。
図19に示すように、レールベースブラケット150は、パイプ状のバー151の両端に支柱把持用のクランプ152を構成すると共に、レール4のクランプ42を位置決めするためのレールガイドプレート153を設けたものである。
【0056】
前記レールベースブラケット150を足場200に取り付ける際には、前記クランプ152を地表に立設したブラケットベース9と縦の支柱1に締結して固定する。その後、レール4のクランプ42をレールガイドプレート153で位置決めしてバー151に締結する。
【0057】
外部用レールブラケット160は図20に示すもので、パイプ状のバー161の中央には前記実施形態1と同形状のリミット装置取付プレート164を取り付け、バー161の一端には縦の支柱1に取り付けるためのクサビ162を構成すると共に、他端には下方に向かって略L字状の補強部材166を取り付け、この補強部材166の端部には支柱把持用のクランプ165を構成してある。
【0058】
縦の支柱1への取り付けに際しては、前記支柱把持用のクランプ165を縦の支柱1に締結し、クサビ162を縦の支柱1に固定したポケット部3のポケット31に挿入する。その後、リミット装置取付プレート164にリミット装置7を前記実施形態1と同様に取り付ける。
【0059】
その後2本のレール4を前記レールベースブラケット150と外部用レールブラケット160に掛け渡して固定することで、レール4は縦の支柱1に対して任意の角度を傾斜して固定されるのである。
その他、カゴや安全装置の取り付け方法は、前記実施形態1と同様のため省略する。
【0060】
本実施形態によれば、前記実施形態1の効果に加えて、レール4を足場200の外部で組み立てるから組み立て作業が容易であると共に、運送する資材がカゴ10からはみ出るような形状のものを運搬できるというメリットがある。
【0061】
図21に示す外部用レールブラケット170は前記外部用レールブラケット160の他例であり、縦の支柱1に取り付けるためのクサビ162に代えて、バー161の一端にホゾ支持部171を水平に張設し、このホゾ支持部171の孔172に枠組積み重ね用のホゾ173を嵌合して垂直に取り付けたものである。その他の部分は、前記外部用レールブラケット160と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
この外部用レールブラケット170によれば、縦の支柱1の継ぎ目にホゾ173を差し込むことで簡易に取り付けることができるのである。
【符号の説明】
【0062】
1 縦の支柱
2 横の支柱
3 ポケット部
4 レール
4a 開放面
41 接続具
42 クランプ
5 内部用レールブラケット
6 内部用レールブラケット
7 リミット装置
8 安全装置
10 カゴ(運搬手段)
11 枠体
11a 側杆
11b 連結杆
13 安全柵
17 可動底板
T1 前部タイヤ
T2 後部タイヤ
T3 内部タイヤ
20 駆動手段
100 ワイヤ
101 基台
104 圧縮バネ
107 過積載防止リミットスイッチ
116 ウィンチ
120 固定部
121 クランプ(固定具)
160 外部用レールブラケット
200 足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦の支柱と横の支柱によって構成した足場において、前記縦の支柱の内側に、縦の支柱に対して傾斜して取り付けたレールと、前記レールを足場に取り付けるためのブラケットと、前記レール上を移動して資材を運搬する運搬手段と、前記運搬手段を昇降させるための駆動手段とからなる傾斜運搬装置。
【請求項2】
縦の支柱と横の支柱によって構成した足場において、前記縦の支柱の外側に、縦の支柱に対して傾斜して取り付けたレールと、前記レールを足場に取り付けるためのブラケットと、前記レール上を移動して資材を運搬する運搬手段と、前記運搬手段を昇降させるための駆動手段とからなる傾斜運搬装置。
【請求項3】
前記ブラケットに、垂直杆の上端に水平に張り出した2本のアームの間にワイヤを掛けるための滑車を回動自在に軸支し、前記アームの上部にリミット装置を取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の傾斜運搬装置。
【請求項4】
前記レールを、一側面に開放面を構成した断面略コ字状に構成し、端部にレール同士を接続するための接続具を設けると共に、下面に前記ブラケットに締結するための2個のクランプをレールの中央から等距離の位置に設け、前記開放面を互いに反対側に向けて設置したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載の傾斜運搬装置。
【請求項5】
前記運搬手段を、長尺の側杆と連結杆からなる長方形の枠体と、前記側杆の上に立設した安全柵と、前記枠体の底部に構成したレールの上面を走行する前部タイヤと後部タイヤ及びレールの裏面に接触して走行する内部タイヤと、前記枠体の底部に回動自在に取りつけた可動底板と、前記枠体の底部に設けた安全装置によって構成したことを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の傾斜運搬装置。
【請求項6】
前記駆動手段を、地表に設置する基台とこの基台の端部に直角に取り付けた固定部と、前記基台の上に前後方向移動可能に取り付けたウィンチと、前記基台の底部に設けたウィンチ移動用の圧縮バネと、前記基台の前部に設けた過積載防止リミットスイッチと、前記固定部に取り付けた固定具によって構成したことを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5記載の傾斜運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−92026(P2013−92026A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236286(P2011−236286)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(505080758)キャンペックス工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】