説明

傾斜部を備えた内視鏡キャップ

医療器具を患者の体内の選択された目標とする解剖学的構造へと導く内視鏡キャップが提供されている。該内視鏡キャップは傾斜部を備えており、該傾斜部は、内視鏡の近位部分から遠位部分へと進められた医療器具を偏向させるために使用される。該傾斜部は、該内視鏡キャップと一体化されるか、又は別の方法として該内視鏡に枢動可能に取り付けられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関し、更に特定すると傾斜部を備えている内視鏡キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、低侵襲性処置中に内視鏡を使用して、患者の解剖学的構造を可視化し、種々の状態を診断し、そして器具を治療部位へ送り込む。これらの器具は、典型的には内視鏡のワーキングチャネルを通して送り込まれるが、該ワーキングチャネルは、直径が一般に約2.0mm〜3.5mmの範囲内であり、カテーテル、鉗子、はさみ、ブラシ、スネア、バスケットを含むその他の細長い器具を導入するために使用される。ある種の特別な内視鏡においては、直径が5.0mmの比較的大きなワーキングチャネルが使用でき、該比較的大きなワーキングチャネルは、比較的大きな器具を通すために又は改良された吸引又は減圧の機能を提供するために使用される。しかしながら、幾つかの器具は使用できる内視鏡内を通すにはあまりにも大きすぎる。更に、比較的大きなワーキングチャネルを備えた特別な内視鏡は、剛性が高く且つ外径が大きいことにより高価であると共に挿管するのが難しい。
【0003】
内視鏡のワーキングチャネルに対して大き過ぎる器具は、代替的で侵襲性であることが多い処置、例えば腹腔鏡手術又は観血療法によって導入しなければならない。腹腔鏡外科手術は、患者の腹壁に0.5〜1.5cmの切開部を形成して腹腔鏡及びその他の器具を腹腔及び骨盤腔内へ導入することができるようにする手順を含んでいる。観血療法は、概ね、患者の体に1以上の切開部を形成し、その後、広い範囲におよぶ筋肉の剥離、長期に亘る組織の縮退、神経の麻痺、及び組織の脈管遮断を伴う。腹腔鏡外科手術及び観血療法は、比較的大きな器具の導入に対しては効果的であるけれども、患者に対する合併症及び外傷の虞れを増すと共に回復時間及び入院期間を延ばす。
【0004】
従って、侵襲性処置の使用を必要とさせることなく、内視鏡のワーキングチャネルに対して大きすぎる医療器具を内視鏡を介して導入するための器具及び方法が必要とされている。特に、医療器具を内視鏡に沿って且つ内視鏡の外側で導入する器具及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して、内視鏡好ましくは十二指腸内視鏡の遠位端に取り付けられる構造とされているキャップを提供している。該キャップは、器具を患者の解剖学的構造内の選択された目標部位へ給送する補助とするために使用することができる。該キャップは、器具を内視鏡に沿って進入させるための装置と共に使用されるのが好ましい。器具がひとたび内視鏡の遠位部分に達すると、該キャップが使用されて器具が選択された目標領域例えば膵管に向けて偏向される。一つの実施形態においては、該キャップは、器具を内視鏡に沿って引っ張るために使用されるテザー装置と共に使用される。該テザー装置は、器具を内視鏡の遠位部分を越えて進入させるためのガイド部材を備えている。別の実施形態においては、キャップは、器具を内視鏡に沿って進入させるために使用されるシース装置と共に使用される。もう一つ別の実施形態においては、キャップ、テザー、及びシースが組み合わせられて使用される。
【0006】
一つの特徴によると、器具を選択された目標とする解剖学的構造に向かって偏向させる内視鏡キャップが提供されている。該内視鏡キャップは、近位端と遠位端とを有している本体を備えている。該内視鏡キャップはまた第一の穴を備えており、該第一の穴は近位端に設けられており且つ内視鏡の遠位部分を収容する構造とされている。該内視鏡キャップは更に、近位端と遠位端との間に設けられている第一の傾斜部を備えている。該第一の傾斜部は、前記の本体から外方へ突出しており且つ内視鏡の外部に配置されている医療器具を該内視鏡から離れる方向に偏向させる構造とされている。該キャップは、第二の穴を備えているのが好ましく、該第二の穴は、遠位端の近位側に設けられており且つ内視鏡のワーキングチャネルの穴と適合する構造とされている。
【0007】
一つの実施形態においては、第一の傾斜部は本体と一体化されている。
【0008】
別の実施形態においては、該第一の傾斜部は、本体に枢動可能に取り付けられており且つ第一の形態から第二の形態まで枢動することができる。該第一の傾斜部は、該傾斜部内に設けられている第一の横断通路と第二の横断通路とを備えている。該内視鏡キャップは、前記本体に取り付けられており且つ前記第一の横断通路内に部分的に配置されている傾斜部回転支持部を備えている。該内視鏡キャップは、前記第一の傾斜部の近位側に設けられている第二の傾斜部を備えており且つ器具を第一の傾斜部に向けて導く構造とされている。
【0009】
一つの実施形態においては、内視鏡キャップは、内視鏡シースの管腔と結合する構造とされている結合部材を備えている。該内視鏡シースの管腔は、器具を内視鏡の近位部分から内視鏡の遠位部分まで進入させる構造とされているのが好ましい。前記の結合部材は、結合部材の近位部分と結合部材の遠位部分とを備えている。該結合部材は更に、該結合部材の近位部分から該結合部材の遠位部分まで延びている結合部材の管腔を備えている。該結合部材の管腔は、両端が開口しており且つ前記第一の傾斜部と整合されているのが好ましい。該結合部材の近位部分は、内視鏡シースの管腔の内面と摩擦係合する構造とされている外面を備えている。
【0010】
別の特徴によると、器具を選択された目標とする解剖学的構造に向けて進入させるための進入装置が提供されている。該進入装置は近位部分と遠位部分とを有している内視鏡を備えている。該進入装置は更に内視鏡キャップを備えており、該内視鏡キャップは第一の傾斜部を備えており、該第一の傾斜部は、該内視鏡の外面に沿って進められる細長い器具と係合して該細長い器具を偏向させる構造とされている。該内視鏡キャップは内視鏡の遠位部分に設けられている。前記の第一の傾斜部は、内視鏡キャップと一体化されるか、又は別の方法として該内視鏡キャップに枢動可能に取り付けられ且つ傾斜部の第一の形態から傾斜部の第二の形態まで枢動するようにしても良い。該進入装置は結合部材を備えおり、該結合部材は第一の取り付け部材と第二の取り付け部材とを備えている。該進入装置は、内視鏡の遠位部分に枢動可能に取り付けられている起子装置を備えている。該起子装置は、該起子装置の第一の形態から該起子装置の第二の形態まで枢動できるのが好ましい。該起子装置は、該起子装置内に設けられている第一、第二、第三の横断通路を備えている。内視鏡の遠位部分には起子回転支持部が取り付けられており、該起子回転支持部は前記第一の横断通路内に部分的に配置されている。該起子装置は第二の横断通路内に配置されている起子用ワイヤを備えており、該ワイヤは、内視鏡の近位部分に操作可能に結合されている。該進入装置は、第一の傾斜部内に設けられている第四の横断通路を備えており、前記の第一の取り付け部材が前記第三の横断通路内に配置され、前記の第二の取り付け部材が該第四の横通路内に配置される。該進入装置は更に第二の傾斜部を備えており、該第二の傾斜部は前記第一の傾斜部の近位側に設けられており且つ器具を前記の第一の傾斜部へ導く構造とされている。
【0011】
もう一つ別の特徴に従って、医療器具を患者の体内の治療部位へ送り込む方法が提供されている。該方法は内視鏡キャップを使用する。該内視鏡キャップは、近位端と遠位端とを有している本体を備えており、該近位端には第一の穴が設けられており、該第一の穴は内視鏡の遠位部分を受け入れる形状とされている。該内視鏡キャップはまた、近位端と遠位端との間に設けられている第一の傾斜部をも備えている。該方法は、器具を内視鏡の遠位部分へと進入させるステップと、該器具を前記第一の傾斜部上へと進入させるステップと、該器具を前記第一の傾斜部から選択された目標とする解剖学的構造に向けて進入させるステップとを含んでいる。
【0012】
この他の装置、方法、特徴、及び利点は、図面及び以下の詳細な説明を精査することにより当業者に明らかとなるであろう。このような付加的な装置、方法、特徴、及び利点の全てが、この記載内に含まれ、本発明の範囲内に含まれ、特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
該装置は、図面及び以下の説明を参照することによって更によく理解できる。図面に示されている構成部品は、必ずしも等尺ではなく、本発明の原理を示す際に強調されている。更に、図面において、種々の図面を通して同様の符号は対応する部品を示している。
【0014】
【図1A】図1Aは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【図1B】図1Bは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【図1C】図1Cは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【図1D】図1Dは、固定された傾斜部を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【0015】
【図2A】図2Aは、傾斜部220が枢動可能に取り付けられている内視鏡キャップ100を示している図である。
【図2B】図2Bは、傾斜部220が枢動可能に取り付けられている内視鏡キャップ100を示している図である。
【図2C】図2Cは、傾斜部220が枢動可能に取り付けられている内視鏡キャップ100を示している図である。
【0016】
【図2D】図2Dは結合部材240を示している図である。
【0017】
【図3】図3は医療器具320を示している図である。
【0018】
【図4】図4は、キャップ100とテザー装置とを示している図である。
【0019】
【図5A】図5Aは、ガイド器具400を示している図である。
【図5B】図5Bは、ガイド器具400を示している図である。
【図5C】図5Cは、ガイド器具400を示している図である。
【0020】
【図5D】図5Dは、ガイド装置400をテザー及びガイドワイヤ上に装填する方法を示している図である。
【0021】
【図5E】図5Eは、内視鏡キャップ100とガイド器具400とを示している図である。
【0022】
【図6】図6は、内視鏡キャップ100とシース500とを示している図である。
【0023】
【図7】図7は、内視鏡キャップ100とシース500とを示している図である。
【0024】
【図8】図8は、結合部材140を備えている内視鏡キャップ100を示している図である。
【0025】
【図9A】図9Aは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【図9B】図9Bは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【図9C】図9Cは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【図9D】図9Dは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【図9E】図9Eは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【図9F】図9Fは、内視鏡キャップ100を使用して大きな柔軟な胆管ステントを総胆管内へ給送する方法を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[定義]
他の意味として規定されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者が通常理解している意味と同じ意味を有している。矛盾する場合には、定義を含む本明細書によって支配されるであろう。以下、好ましい方法及び材料を記載するが、ここに記載されているものと類似している又は等価な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用することができる。ここに記載している材料、方法、及び実施例は単に例示的なものであり、限定されることを意図したものではない。
【0027】
本明細書において使用されている、“備えている”、“含んでいる”、“有している”、“ことができる”、“包含している”という用語及びそれらの変形は、状況に応じて変形され得る伝統的な語句、用語、又は文字であることを意図されており、付加的な作用又は構造の可能性を排除するものではない。本発明はまた、明示的に記載されているか否かに拘わらず、ここに記載されている実施形態又は部材を“含む”、“からなる”、及び“から実質的に構成されている”他の実施形態をも意図している。
【0028】
本明細書において使用されている“生体適合性の”という用語は、それが意図されている生体内の使用環境内で実質的に無害であり且つ患者の生理系によって実質的に拒絶されない材料を指している。生体適合性構造又は材料は、大多数の患者の体内に導入されたときに、不所望に有害な、長期に亘る、又は増大する生物学的反応又は応答を生じさせない。このような反応は、典型的には、外科手術又は生体系内への異物の埋め込みに伴う極端ではない一時的な炎症とは区別される。
【0029】
本明細書において使用されている“遠位”という用語は、医療処置中に患者の解剖学的構造の目標部位に概ね近づく方向を指している。
【0030】
本明細書において使用されている“近位”
という用語は、医療処置中に概ね医師に近づく方向を指している。
【0031】
本明細書において使用されている“狭窄”という用語は、体管腔が隣接の管腔部分より狭くなっていることを指している。
【0032】
図1A〜1Bは内視鏡キャップ100を図示している。該キャップは、近位端104と遠位端106とを有している本体102を備えている。近位端104は、内視鏡の遠位部分を受け入れる構造とされている穴103を備えている。キャップ100は更に傾斜部105を備えており、傾斜部105は、医療器具を選択された目標とする解剖学的構造に向かって偏向させるために使用することができる。キャップ100は更に、内視鏡の視覚機器(例えば、カメラ、CCD、又は光ファイバ要素)を収容できる構造とされた側方穴107とワーキングチャネルとを備えている。
【0033】
本体102は硬質材料によって作られている。幾つかの実施形態においては、本体の全て又は一部は概ね透明である。例えば、該本体は透明なポリカーボネートポリマによって作ることができる。別の方法として、該本体は、ポリウレタン、アクリル樹脂、又はナイロンのような別の透明、半透明、又は不透明な高分子材料によって作ることができる。本体102は、その外径がキャップ100が使用される内視鏡の外径とほぼ同じであるような寸法とされているのが好ましい。例えば、本体102は、約8.5mm〜約12mmの外径を有していて、この寸法の外径を有する内視鏡と共に使用される。当業者は、本体102は、これより大きな又は小さな外径の内視鏡と共に使用できるように適当な寸法とすることができ、同様の形状の内視鏡と共に使用できる構造とされた断面積を有していても良いことがわかるであろう。
【0034】
幾つかの実施形態においては、該キャップは、該キャップを内視鏡に固定することができる構造とされている係合部分110を備えている。該係合部分は、キャップの近位端104と一体であっても良いし又は近位端104に取り付けてられても良い。該係合部分は、本体102から近位方向に延びているのが好ましく、摩擦内径面を提供する可撓性材料によって作ることができる。例えば、該係合部分は、本体102に成形された透明なポリウレタンによって作ることができる。別の実施形態においては、該係合部分は、例えばシリコーン又はその他の軟質ポリマーによって作ることができ、これは、キャップ100を内視鏡に取り付ける機能又は摩擦によって(しかしながら取り外し可能に)取り付ける機能を付与する。
【0035】
任意であるが、キャップ100は本体102に取り付けられたローラーを備え、該ローラーは、テザー及びその他の器具がキャップ100を越えて進入するのを容易にすることができる。例えば、図1C〜1Dは傾斜部105を図示しており、傾斜部105は、該傾斜部の頂部近くの該傾斜部の表面の凹部に設けられているローラー180を備えている。該ローラーはピン等によって支持されており、該ピンは、キャップ材料に取り付けられるか又は該材料内に部分的に埋め込まれている。別の方法として、該傾斜部は、ローラーを前記の凹部内の位置へスナップ式に嵌め込むことができるように作ることができる。該ローラーは、テザー及びその他の器具が該傾斜部を越えて進入したときの摩擦の低減に寄与する。該ローラーは、意図されている用途のための適当ないかなる寸法にも作ることができる。例えば、該ローラーは、図1C〜1Dに図示されているように、該傾斜部の幅の約3/4の長さを有していてもよい。
【0036】
該キャップは、キャップを内視鏡に取り付ける構造とされている適当な構造又は材料を含んでいる。例えば、該キャップは、接着剤、磁石、ねじが切られている面、戻り止め構造、又は当該技術において知られているその他の構造及び材料を備えている。もう一つ別の代替的な実施形態においては、内視鏡は、その遠位端の近くに、該キャップと係合するための構造、例えば相補形のねじが切られた面、連結タブ/長穴、又は該キャップを内視鏡に取り付ける構造とされているもう一つ別の構造を備えている。このような係合部分の例示的な例が米国特許出願公開第2009/05539号に見出される。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。
【0037】
図2A〜2Cは、キャップ100の別の実施形態を示しており、該キャップは、本体102に枢動可能に取り付けられている傾斜部220を備えている。該傾斜部は横断通路222及び224を備えている。任意であるが、各々対応する通路は金属スリーブ223,225を備えている。傾斜部220は、その一部分が部分的に横断通路224内に配置されている傾斜部回転支持部226によって該キャップに枢動可能に取り付けられている。該キャップは更に固定された傾斜部228を備えており、該固定された傾斜部228は、内視鏡の外面から傾斜部220までの滑らかな遷移部分を提供している。
【0038】
図2B〜2Cは、内視鏡302の遠位端に配置されている図2Aのキャップを図示している。内視鏡は起子230を備えており、起子230は、結合部材240によって傾斜部220に取り外し可能形態で結合されている。起子230は、横断通路232,234,236を備えている。任意であるが、各対応する通路は、金属スリーブ233,235,237を備えている。該起子は、起子回転支持部238によって内視鏡に枢動可能形態で取り付けられており、該起子回転支持部238の一部分は横断通路234内に部分的に配置されている。起子ワイヤ239は、一端が起子230に結合されており、他端が内視鏡302の近位部分に配置されている制御装置に操作可能に結合されている。該制御装置を操作することによって、起子ワイヤが内視鏡に対して動かされる。起子ワイヤが内視鏡の近位部分に向かって後退されると、起子230は起子回転支持部238を中心に動く。該起子は、内視鏡を介して送り込まれた器具を偏向させるために使用される。例えば、該起子は、ガイドワイヤを患者の胆管系内へと偏向させるために使用される。類似の内視鏡起子装置の更に詳細な説明が米国特許出願公開第2007/0208219号に見出され、この米国特許出願の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。
【0039】
結合部材240は、細長い部分242と2つの取り付け部材244とを備えており、該取り付け部材の各々が細長い部材の端部に配置される(図2D)。該結合部材は、前記の取り付け部材が横断通路222及び232内に挿入されることによって、起子230及び傾斜部220に取り付けられる。取り付け部材244は、細長い部分242に取り付けられるか又は該細長い部分242と一体化されている筒形状の構造である。該取り付け部材は、それらの対応する中心軸線を中心として軸線方向に動くことができるように係合しているのが好ましい。例えば、該取り付け部材は外側部分と内側部分とを備えており、これらの外側部分と内側部分とは、外側部分が取り付け部材の中心軸線を中心に回転するのを可能にする軸受によって分離されている。該取り付け部材は、起子230と傾斜部220とを係合させるのに必要な適切な構造部材を備えている。例えば、取り付け部材244と横断通路222,232とは、相補形のねじが切られている面を備えている。
【0040】
起子230と傾斜部220とが結合部材240によって取り付けられると、起子230の操作により傾斜部220が操作される。図2Bは、第一の形態にある起子230と傾斜部220とを示しており、該第一の形態においては、起子ワイヤ239は内視鏡の近位部分に向かって引かれていない。図2Cは、第二の形態にある起子230と傾斜部220とを示しており、該第二の形態においては、起子ワイヤは内視鏡の近位部分に向かって引かれている。医療器具が内視鏡に沿って進められると、傾斜部220は、第一の形態から第二の形態へと操作されて該器具を選択された目標とする解剖学的構造に向かって偏向させる。当業者は、場合によっては、傾斜部220は、第一の形態から第二の形態に向かって完全に操作される必要はなく、むしろ特定の処置のために必要とされる形態に向かって操作されても良いことがわかるであろう。
【0041】
ここに開示されている傾斜部は何らかの適当な生体適合性材料によって構成される。幾つかの実施形態においては、傾斜部は本体102と同じ材料によって作られている。別の実施形態においては、傾斜部は、本体102と異なる材料又はこれらを組み合わせた材料によって作られる。該傾斜部は高分子材料によって作られるのが好ましい。該傾斜部の特性、例えば可撓性/剛性は、当業者に公知の適当な高分子材料を選択することによって調整される。例えば、低摩擦係数の高分子材料は種々の実施形態に適しており、一方、摩擦係数が高い分子材料は、例えば傾斜部が給送される器具を把持する構造とされている実施形態のような他の実施形態に適している。適切な高分子材料としては、限定的ではないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、パーフルオロエストラマ、フルオロエラストマ、ニトリル、ネオプレン、ポリウレタン、シリコーン、スチレンブタジエン、ラバー、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン、又はこれらの組み合わせがある。
【0042】
該傾斜部は本体102に対して種々の仰角に形成される。しかしながら、一般的には、該傾斜部は、本体102に対して約1度〜90度、好ましくは約5度〜約75度、更に好ましくは約10度〜約60度、最も好ましくは約20度〜約45度の範囲内の仰角を提供する。該傾斜部の傾斜面は、均一な平らな面か又は代替的には曲面とされている。該傾斜面は非外傷性の形状とされているのが好ましい。例えば、図2Aに示されている傾斜部220は、傾斜部の面に沿って丸い端縁を備えている非外傷性の外形を提供している。
【0043】
幾つかの実施形態においては、該傾斜部は、給送された器具を受け入れる形状とされた面構造を備えている。例えば、傾斜部105及び220は、別の器具を把持する構造とされている把持用の長穴を備えていても良い。該把持用の長穴は、器具を把持するための何らかの適当な形状又は形態をとることができる。適切な把持形状が米国特許出願公開第2007/0208219号に開示されており、これはここに開示されている傾斜部に適用することができる。
【0044】
図3は、選択された目標とする解剖学的構造へと送り込まれる器具320を図示している。器具320はここに開示されている内視鏡キャップによって偏向させることができる器具の一般的にあることが意図されている。器具320は、選択された目標とする解剖学的構造に対する治療又は診断を提供するようになされた器具、又は代替的には選択された目標とする解剖学的な構造に対する別の治療又は診断器具を送り込む構造とされている器具である。器具320は、例えば、経鼻挿管、PEG−JチューブのJ部分、結腸減圧チューブ、胆管ステント、給送カテーテル、オーバーチューブ、導入器シース、又はその他の器具とすることができる。器具320は、近位端324と遠位端326とを備えている。幾つかの実施例においては、以下に更に詳しく説明するように、器具320は、別の結合部材と相補形であり且つ該別の結合部材と結合する構造とされている結合部材322を備えている。他の実施形態においては、結合部材322は器具320に備えられていなくても良い。
【0045】
図4は、内視鏡302の遠位端に設けられているキャップ100を示しており、この場合には内視鏡がテザー装置を備えている。該テザー装置は、器具を、内視鏡に沿って近位部分306から遠位部分308へと引くために使用される。内視鏡302は、近位部分から遠位部分まで延びているワーキングチャネル310を備えている。該ワーキングチャネルは、遠位部分に設けられている穴312につながっている。穴312はキャップ100の穴107と整合している。テザー304は内視鏡に沿って内視鏡の近位部分306から遠位部分308まで延びており且つ穴107,312を介してワーキングチャネル内へ入っている。テザーは、ワーキングチャネル内を近位部分306まで戻るように延びており且つポート314から出て行っている。該テザーは第一の端部305と第二の端部307とを備えている。該テザーは、好ましくは第二の端部307に配置されている結合部材316を備えている。該結合部材は、テザー304に取り付けられるか又はテザー304と一体に形成されている。該結合部材は、例えば、糊、接着、又は縫合糸によってテザーに取り付けられている。ひとたび内視鏡302が選択された目標とする解剖学的構造に達し、器具320がテザーに結合されると、テザーをワーキングチャネル310を介してポート314から引き戻すことによって、該器具は内視鏡の遠位部分へと進められる。、テザーがその遠位端326を引っ張るために使用されている間に、器具320はその近位端324を押すことができるようになっているのが好ましい。
【0046】
テザー304は、ストラップ、ワイヤ、縫合糸、紐、又は意図されている使用方法に適したテザーとして機能することができる何らかの他の器具とすることができる。該テザーは、捩れることなく曲がる構造であるのが好ましい。付加的な器具が内視鏡のワーキングチャネル内に導入されるか又はワーキングチャネルが吸引又は減圧を提供するために使用される場合には、テザーは、該ワーキングチャネル内で最小の空間を占め且つ実質的に処置を妨げないことが好ましい。一つの実施形態においては、テザーは、直径が0.035ミリメートルのワイヤであり且つ例えば管腔径が4.8ミリメートルの内視鏡と共に使用することができる。もう一つ別の実施形態においては、テザーは、内視鏡のワーキングチャネルの内側面と合致する構造とされているナイロンストラップのような可撓性のストラップとされている。テザーは、合金及び高分子材料を含む種々の生体適合性材料によって作ることができる。適切な高分子材料としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、又はポリプロピレンがある。適切な合金としては、例えばニッケル−チタン合金がある。テザーには1以上の材料をコーティングすることができる。テザーの少なくとも一部分を、患者の解剖学的構造内へテザーを進入させる補助とすることができる親水性材料又はその他の潤滑性材料によってコーティングするのが好ましい。テザーは、例えば、ニューヨーク州ヘンリエッタにあるSTS Biopolymer, Inc.,によるSLIP-COAT(登録商標)Biopolymerをコーティングすることができる。
【0047】
結合部材316,322は2つの医療器具を一時的に結合させる構造とされている何らかの適当な構造を備えている。例えば、結合部材は、図3及び図4に図示されている閉ループ構造を有していても良い。該結合部材としては、解くことができるか又は切断することができる縫合糸、一時的な若しくは溶解可能なボンド若しくは接着剤、磁石、又はこれらの組み合わせがある。該結合部材は生体適合性のボールを備えており、該ボールは、クリンプされ、接着され、さもなければ十分な大きさの引っ張り力(例えば、3ポンド(1.36キログラム))をかけることによって滑り出るか又は外れるように設計されており、その後に胃腸系を安全に通されるか又は胃腸系によって吸収される。任意であるが、器具320は、例えば、分解可能か又は溶解可能な縫合糸によってテザーに直に結合される。
【0048】
該テザー装置は更に、器具を内視鏡の遠位部分を越えて進入させるために使用されるガイド器具を更に備えている(図5A〜5E)。ガイド器具400は、可撓性又は半可撓性の細長い部材402、支点404、及び剛性が可変のケーブル406を備えている。細長い部材402は遠位部分410と近位部分412とを備えている。該細長い部材は、使用される内視鏡のワーキングチャネルのサイズ及び行なわれる処置に応じてある範囲の長さ及び直径を有している。一般的には、細長い部材402の長さは約100cm〜約300cmの範囲内である。断面の直径は、概ね約1mm〜約3mmの範囲内であり且つ内視鏡のワーキングチャネル内を進入させることができる構造とされているのが好ましい。当業者は、ここに提供されている全ての寸法が例示のみを意図したものであり、種々の寸法のガイド器具を特別な用途のために代用することができることがわかるであろう。
【0049】
細長い部材402は、剛性が可変のケーブル406を包囲して患者の解剖学的構造に直に曝されないように遮蔽する生体適合性材料からなる。該材料は、例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、又はポリウレタンとすることができる。例示的な実施形態においては、細長い部材402は、熱収縮ポリテトラフルオロエチレンチューブのような熱収縮チューブを剛性が可変のケーブル406の外周に配置し、その後に該チューブをその位置で熱収縮させることによって作られる。該細長い部材は、解剖学的構造の蛇行した領域を横切らせるために、該シャフトに、十分な剛性、可撓性、及び耐圧縮性を付与する1以上の材料からなる。このような材料としては、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、又はこれらの組み合わせがある。しかしながら、当業者は、該細長い部材は、所望の特性を付与するために当該技術において知られている他の生体適合性材料によって作ることができることがわかるであろう。
【0050】
支点404が細長い部材402の遠位部分410に取り付けられるか又はこの部分と一体に形成されている。該支点は、テザー304を受け入れ且つ該テザーをその中又はその近くを進入させることができる場所を提供する構造とされている何らかの適切な構造である。支点404は、例えば、単一ループ構造(図5A)、双ループ構造(図5B)、又は内部に管腔405が延びている円筒形構造(図5C)とすることができる。該支点は、直径が約1mm〜約3mmの範囲内であるのが好ましい。幾つかの実施形態においては、該支点は、ワイヤ、縫合糸、又は紐によって作られる。他の実施形態においては、該支点は更に硬質な材料によって作られる。しかしながら、一般的には、支点404は意図されている用途に適した何らかの材料によって構成される。該支点は、例えば、ナイロンのような高分子材料及び/又はニッケル−チタン合金のような金属材料を含んでいる。
【0051】
前記のガイド器具の一部には1以上の材料をコーティングすることができる。細長い部材402の少なくとも一部分は、親水性の材料又はその他の潤滑性材料によってコーティングされるのが好ましい。親水性コーティング又はその他の潤滑性コーティングは、患者の解剖学的構造又は導入器器具内での器具の進入を補助するものとして知られている。幾つかの実施形態においては、支点404は、その中を通るテザーの滑らかな進入を補助する材料によって作られ且つ/又は該材料をコーティングされている。好ましい材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ナイロン、及びポリオキシメチレンがある。
【0052】
剛性が可変のケーブル406が細長い部材402内に設けられており、ケーブル406は、近位部分412から支点404の近くの遠位部分410まで延びているらせん状のばね442を含んでいる。ばね442は隣接する巻き間のピッチが狭い。ステンレス鋼ワイヤのようなワイヤ444がばね442の中心穴を貫通して延びており、該ワイヤはばねの遠位端に固定されている。別の方法として、ワイヤ444とばね442との両方が遠位先端に固定されていても良い。ワイヤ444は、近位部分412の近位側に配置されているハンドアセンブリ413に操作可能に結合されている。ハンドアセンブリ413はアクチュエータ414を備えており、アクチュエータ414は、ばね442を圧縮したり又は展開したりするために使用できる。例えば、幾つかの実施形態においては、アクチュエータ414を近位方向に後退させることによってワイヤ444が後退される。ワイヤ444の後退によって、ばね442内の巻き間の距離が狭められ、その結果、ばねの可撓性が小さくなる。剛性が可変のケーブルの付加的な例が米国特許第4,215,703号及び第3,854,473号に開示されている。これらの米国特許の開示内容は、これに言及することによってその開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれている。
【0053】
ガイド器具400は、テザー304の第一の端部305を支点404に通すことによって内視鏡の近位部分においてテザー304上に装着される。ガイド器具400はまた、ポート314を出たガイドワイヤ450の近位端上にも装着されており、目標とする解剖学的構造にカニューレを挿入するために使用される。テザーとガイドワイヤとは、例えば図5Dに図示されているように双ループの支点404内を通すことができる。次いで、細長い部材402がポート314を介してワーキングチャネル310内へと進められる。その後に、該細長い部材は、ワーキングチャネル内を進められ、穴107,312を出て、遠位部分308を越えて選択された目標とする解剖学的構造へと進められる。幾つかの実施形態においては、起子230のような内視鏡の起子装置が、細長い部材402を選択された目標領域内へ進入させるのを補助するために使用される。該細長い部材が、内視鏡の遠位部分を越えて進入すると、テザーは支点の周りにループ状になり且つ目標とする解剖学的構造内へ引っ張り込まれるのが好ましい。
【0054】
ひとたび細長い部材402の遠位部分410が目標の解剖学的構造に到達すると、剛性が可変のケーブル406が使用されて補強され且つ細長い部材が定位置に係留される(図5E)。次いで、テザーが、ワーキングチャネル310を介してポート314から引っ張り戻され、該テザーに結合されている器具320が内視鏡の遠位部分308に向かって進められる。器具320は、内視鏡の遠位部分に到達すると傾斜部105上を進められる。テザーによって連続的に引っ張り且つ任意であるが近位端から押すことによって、器具320は、傾斜部105によって偏向されてガイドワイヤに沿って目標とする解剖学的構造に向かって進入し続ける。
【0055】
内視鏡を導入する際及びガイドワイヤを目標とする解剖学的構造内へと伸長させる際に、テザーは必要に応じて固定保持される。テザーは、内視鏡とガイド器具とが目標とする解剖学的構造へ進められている間、両端における制御が維持されるように十分に長いのが好ましい。別の言い方をすると、テザーは内視鏡の長さの2倍より長いのが好ましい。ガイド器具を使用している実施形態においては、テザーは、内視鏡の付加的な長さと穴312から目標とする解剖学的構造まで延びている細長い部材402の部分の長さとの2倍より長いのが好ましい。ポート314を出て行っているテザーの部分は、例えば係止器具(例えば、ノースカロライナ州ウィンストン−セレムにあるCook Endoscopy Inc.,によるfusion
(登録商標)ガイドワイヤ係止器具)によってポートに固定保持することができる。同様に、テザーの他端特に内視鏡に沿って近位部分306まで延びているテザーの部分は、係止機構若しくはこれと似た器具によって又はテザーを保持することによって固定保持することができる。細長い部材402又は器具320が目標とする解剖学的構造内に進められると、テザーは必要に応じて係止を解かれる。
【0056】
図6は、シ−ス500を備えている内視鏡の遠位端に設けられているキャップ100を示している。シース500は、近位部分502と遠位部分504とを備えている。該シースは、内視鏡用の第一の管腔510と、該内視鏡に沿って送り込まれる器具用の第二の管腔520とを備えている。第二の管腔520は、近位部分502から遠位部分504まで伸長しており且つ遠位側に配置されている穴522と近位側に配置されている穴524とを備えている。器具320は、管腔520内を進められ、その後に、選択された目標とする解剖学的構造に向かって偏向される。一つの実施形態においては、器具は、任意であるが、押し込みカテーテル又はその他の類似の器具によってシースの管腔内へと押し込まれる。図7は、管腔520内に押し込まれ且つその後に傾斜部105によって偏向された把持器具320を示している。他の実施形態においては、該器具は上記したテザーによって管腔520内を進められる。この場合に、テザーの一部分は、処置を開始するために管腔520の全長を貫通して配置されている。他の実施形態においては、該器具は、該器具の遠位端326において引かれながら器具の近位端324から押し込むことによって管腔520内を進められる。図示されているように、内視鏡302は管腔510内に配置されており、シースは、内視鏡の近位部分306を越えて遠位部分308まで延びている。該シースは、使用される内視鏡のサイズに応じたある範囲の幅及び長さを有している。一般的には、シースの長さは約100cm〜約200cmの範囲内であり、シースの壁厚は約0.1mm〜約8mmである。一つの実施形態においては、シースは発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)によって作られている。シースとキャップとは、シースの遠位端とキャップの近位端104とが一体となるように取り付けられる。別の方法として、キャップは、シースの遠位端の外周に嵌る構造とされている。例えば、キャップは、上記したように内視鏡の外面及び/又はシースの外面と摩擦係合する形状とされている構造を有している。
【0057】
図8は、結合部材140を備えているキャップ100を示しており、この結合部材140は、シース500の穴522において管腔520と係合する構造とされている。結合部材140は近位部分142と遠位部分144とを備えている。該結合部材は更に管腔146を備えており、管腔146は近位部分142を通り遠位部分144まで延びており且つ両端が開口している。管腔146は傾斜部105と整合されていて、器具320がシースの管腔及び結合部材の管腔146を出て行くと、器具320は傾斜部105を横切って偏向されるようになされている。近位部分142は穴522においてシースの管腔520内へ滑り込み且つ管腔520の内面と摩擦係合し、その結果、前記の結合部材が管腔に固定される。
【0058】
図9A〜9Fは、医療器具を内視鏡に沿って選択された目標とする解剖学的構造へと導入する方法を示している。一つの例示的な実施形態においては、内視鏡キャップは、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP)において使用することができる。ERCPは十二指腸内視鏡が患者の口の中、食道、胃、十二指腸内を介して、胆樹及び膵臓の導管が十二指腸内へと開口している領域内に到達するまで挿入するステップを含んでいる。内視鏡のワーキングチャネルを介して送り込まれた器具は、次いで、導管系へアクセスするためにファータ乳頭を横切る。この位置で、これらの器具は診断及び治療処置を行なうために使用することができる。このような器具の例としては、ガイドワイヤ、バスケット、スネア、ステント、エクスラクションバルーン、導入器ブラシ、カテ−テル、及び通常は直径が約0.8mm〜4mmの子内視鏡がある。
【0059】
一つのERCP処置は、狭窄によって流体の排出が遮られている胆臓又は膵管の領域内へ柔軟な胆管ステントを送り込むことを含んでいる。この閉塞は胆管又は膵管内の腫瘍によって惹き起される。典型的には、症状が患者の体内に現れるまで、腫瘍は進行段階にあり且つ手術不能であると考えられる。その結果、腫瘍の管理は、通常は腫瘍を抑止することに焦点が絞られる。抑止のためのバイパス外科処置の代替例として、ステントがERCPによって送り込まれ且つ閉塞された領域内に位置決めされ、流体が該閉塞された領域を通り越して流れる経路が維持される。しかしながら、柔軟な胆管ステントの最大直径は、一般に内視鏡のワーキングチャネルの直径に依存する。その結果、幾つかの例においては、多数のステントを狭窄部内に配置して十分な排出を可能にしなければならない。ここに開示されている内視鏡キャップを使用すると、直径が内視鏡のワーキングチャネルよりも大きい可塑性の胆管ステントを胆管又は膵管へ送り込むことができる。これらの比較的大きなチューブは、導管の更に効率の良い排出を補助し且つそれらの比較的小さな対抗品と比較して詰まりを受け難い。
【0060】
図9A〜9Fは、傾斜部105を備えているキャップ100を使用して、大きな柔軟な胆管ステント610を総胆管内へ送り込む方法を図示している。テザー304、ガイド器具400、及びシース500もまたステントを送り込むために使用されている。該処置は、図9Aに示されているように、テザーを管腔520内に配置し且つ管腔310内を戻すことによって始められる。次いで、内視鏡が患者の体内へ進められて十二指腸602内に位置決めされ、総胆管606及び膵管への穴の位置にあるオッディ括約筋及びファータ乳頭604が見えるようにされる。次いで、ガイドワイヤ450が穴107,312からファータ膨大部を通って胆臓系内へと伸長される(図9B)。ガイドワイヤは、狭窄部608を通されて進められるのが好ましい。導管内へのカニューレの挿入を補助するために、拡張管カテーテルが必要に応じて使用される。拡張管カテーテルの補助によって総胆管にカニューレを挿入する方法の更に詳細な説明が米国特許出願公開第2005/0059890号に開示されている。該米国特許出願公開の開示内容は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。ガイド器具400は、内視鏡の近位部分においてガイドワイヤ及びテザー304の外周に装填される。該ガイド器具の細長い部材402は、内視鏡のワーキングチャネル内を進められ、その後に、穴107,312から導管系内へと伸長され、その間ずっと支点404を介してガイドワイヤの外周に沿って進入している(図9C)。該内視鏡は、上記した起子装置を備えており、該起子装置は、ガイド器具を胆臓に向かって偏向させるために使用される。細長い部材402が導管系内へ進入するにつれて、テザーもまた支点404との接触を介して進められる。支点404は、狭窄部608を通過して進められ、胆管ステントは、目標とする解剖学的構造内へ進められるときに定位置へと引き込まれるのが好ましい。細長い部材402が所望の位置まで進められると、アクチュエータ414を操作することによって剛性が可変のケーブル406が係合され、その結果、細長い部材402の補強がなされる。この補強によって、該細長い部材が定位置に係留され且つ器具320の給送中の巻きつぶれを防止することができる剛性が付与される。
【0061】
次に、胆管ステントが内視鏡の近位部分においてテザーに結合される。該ステントは、テザーに結合する構造とされている給送カテーテルを介して装填され且つ送り込まれるのが好ましい。器具320としての該給送カテーテルは、テザーに結合するための結合部材322を備えており且つカテーテルがその近位端324から押されるように補強部材又は部分的に堅牢な部分を備えているのが好ましい。ステント又は給送カテーテルを押し込むことによって、導入中にテザーにかかる引っ張り力が減じられ且つ粘膜の外傷の発生が減じられる。器具320がひとたび結合されると、器具320は穴524において管腔520内へ進められる。器具320は、管腔520内を進められ、その後に内視鏡の遠位部分へ進められる。器具320が穴522から管腔520を出ると、傾斜部105によってファーテル乳頭604に向かう方向へ偏向される(図9D)。
【0062】
該給送カテーテルは、テザー304によって引っ張られながら近位端から押され続けることによって、ガイド器具400の細長い部材402に沿って進められる。該給送カテーテルは、遠位部分410従って目標とする解剖学的構造へと進められるのが好ましい(図9E)。給送カテーテルがひとたび目標部位(すなわち、狭窄部)に達すると、該給送カテーテルは次いでテザーから分離される。例えば、該給送カテーテルは近位端を保持され、一方、テザーは箇所314において結合部材316を結合部材322から分離させるのに十分な力で引き戻され、その結果、前記給送カテーテルは前記テザーから分離される。次いで、テザーが導管系から引っ張り出され、内視鏡のワーキングチャネル内へ戻される。ガイド部材400とそれに続いてガイドワイヤ450とが導管系から進められて内視鏡内へ戻される。次に、内側押し込みカテーテルを使用してステントを給送カテーテルから押し出すことによって、胆管ステント610が狭窄部位608へと送り込まれる(図9F)。次いで、給送カテーテルが患者の解剖学的構造から取り外される。当業者は、アクセスするステップ、送り込むステップ、分離させるステップ、及び器具を目標とする解剖学的構造から取り外すステップは、必要に応じて変更することができることがわかるであろう。例えば、ガイドワイヤを使用して追加の処置がなされるべきである場合には、ガイドワイヤを胆管からほんの部分的に後退させることが好ましい。
【0063】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明の範囲内で更に多くの実施形態及び具体例が可能であることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物が参考にされることを除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0064】
100 内視鏡キャップ、 102 キャップ本体、
103 穴、 104 キャップの近位端、
105 傾斜部、 106 キャップの遠位端、
107 側方穴、 110 係合部分、
140 結合部材、 142 結合部材の近位部分、
144 結合部材の遠位部分、 146 結合部材の管腔、
180 ローラー、 220 傾斜部、
222 横断通路、 223 金属スリーブ、
224 横断通路、 225 金属スリーブ、
226 傾斜部回転支持部、 228 固定された傾斜部、
230 起子、 232 横断通路、
233 金属スリーブ、 234 横断通路、
235 金属スリーブ、 236 横断通路、
237 金属スリーブ、 238 起子回転支持部、
239 起子ワイヤ、 240 結合部材、
242 細長い部分、 244 取り付け部材、
302 内視鏡、 304 テザー、
305 テザーの第一の端部、 306 内視鏡の近位部分、
308 内視鏡の近位部分、 310 ワーキングチャネル、
312 穴、 314 ポート、
316 結合部材、 320 器具、把持器具、
322 結合部材、 324 近位端、
326 遠位端、 400 ガイド器具、
402 細長い部材、 404 支点、
405 管腔、 406 ケーブル、
410 ガイド器具の遠位部分、 412 ガイド器具の近位部分、
413 ハンドルアセンブリ、 414 アクチュエータ、
442 螺旋状のばね、 444 ワイヤ、
450 ガイドワイヤ、 500 シース、
502 シースの近位部分、 504 シースの遠位部分、
510 第一の管腔、 520 第二の管腔、
522 穴、 524 穴、
602 十二指腸、 604 ファータ乳頭、
606 総胆管、 608 狭窄部、
610 胆管ステント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有している本体と、
前記近位端に設けられており且つ内視鏡の遠位部分を受け入れる構造とされている第一の穴と、
前記近位端と前記遠位端との間に設けられており且つ前記本体から外方に向かって突出している第一の傾斜部と、を備えており、
前記第一の傾斜部は、前記内視鏡の外部に配置された細長い医療器具を該内視鏡から離れる方向へと偏向させる構造とされている、ことを特徴とする内視鏡キャップ。
【請求項2】
前記遠位端の近位側に設けられている第二の穴を更に備えており、該第二の穴は前記内視鏡のワーキングチャネルの穴に適合する構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項3】
前記第一の傾斜部が前記本体と一体化されている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項4】
前記近位端の近位側に設けられた係合部分を更に備えており、該係合部分は、該内視鏡キャップを前記内視鏡に固定する構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項5】
前記本体が、ポリカーボネート、ポリウレタン、又はナイロンポリマーからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項6】
前記第一の傾斜部が、前記本体に枢動可能に取り付けられており、第一の形態から第二の形態まで枢動することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項7】
十二指腸内視鏡用の構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項8】
前記第一の傾斜部が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、パーフルオロエラストマ、フルオロエラストマ、ニトリル、ネオプレン、ポリウレタン、シリコーン、スチレン−ブタジエン、ラバー、ポリカーボネート、アクリル樹脂、若しくはナイロン、又はそれらの組合せからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項9】
前記第一の傾斜部が、前記本体に対して約1度〜約90度の範囲内の仰角を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項10】
前記第一の傾斜部が医療器具を受け入れることができる構造とされた把持用のスロット穴を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項11】
内視鏡シースの管腔と結合される構造とされている結合部材を備えており、該内視鏡シースの管腔は、器具を、前記内視鏡の近位部分から該内視鏡の遠位部分まで進入させることができる構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡キャップ。
【請求項12】
前記結合部材が、
結合部材の近位部分及び結合部材の遠位部分と、
前記結合部材の近位部分から前記結合部材の遠位部分まで延びており且つ両端が開口している結合部材の管腔と、を備えており、
前記結合部材の近位部分が、前記内視鏡シースの管腔の内面と摩擦係合する構造とされている外面を備えており、前記結合部材の管腔が前記第一の傾斜部と整合している、ことを特徴とする請求項11に記載の内視鏡キャップ。
【請求項13】
前記第一の傾斜部に配置されている第一の横断通路及び第二の横断通路と、
前記本体に取り付けられており且つ前記第一の横断通路内に部分的に配置されている傾斜部の回転支持部と、を備えている、ことを特徴とする請求項6に記載の内視鏡キャップ。
【請求項14】
前記第一の傾斜部の近位側に設けられている第二の傾斜部を備えている、ことを特徴とする請求項6に記載の内視鏡キャップ。
【請求項15】
近位部分及び遠位部分を備えている内視鏡と、
前記遠位部分上に設けられた内視鏡キャップであって、前記内視鏡の外側に沿って進められた細長い器具と係合して該細長い器具を偏向させる構造とされている第一の傾斜部を備えている内視鏡キャップと、を備えている進入装置。
【請求項16】
前記第一の傾斜部が前記内視鏡キャップと一体化されている、ことを特徴とする請求項15に記載の進入装置。
【請求項17】
前記第一の傾斜部が前記内視鏡キャップに枢動可能に取り付けられている、ことを特徴とする請求項15に記載の進入装置。
【請求項18】
第一の取り付け部材及び第二の取り付け部材を備えている結合部材と、
前記遠位部分に枢動可能に取り付けられている起子装置と、を更に備えており、
該起子装置が、
該起子装置内に設けられている、第一の横断通路、第二の横断通路、及び第三の横断通路と、
前記遠位部分に取り付けられ且つ前記第一の横断通路内に部分的に配置されている起子回転支持部と、
前記第二の横断通路内に配置されており且つ前記近位部分に操作可能に結合されている起子ワイヤと、を備えており、
前記第一の傾斜部内に設けられている第四の横断通路、を更に備えており、
前記第一の取り付け部材が前記第三の横断通路内に配置されており、前記第二の取り付け部材が前記第四の横断通路内に配置されている、ことを特徴とする請求項17に記載の進入装置。
【請求項19】
前記内視鏡キャップが、前記第一の傾斜部の近位側に設けられている第二の傾斜部を備えている、ことを特徴とする請求項18に記載の進入装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【公表番号】特表2013−514148(P2013−514148A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544739(P2012−544739)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060438
【国際公開番号】WO2011/075509
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】