像保持体及びこれを用いた画像形成装置
【課題】画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性を向上し、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐ。
【解決手段】潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体1であって、移動可能な支持体1aと、この支持体1a上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極1bと、この画素電極1b表面及び画素電極1b間を保護する保護層6とを備え、保護層6は、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層7と、この絶縁層7の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層8とを有するものとなっている。
【解決手段】潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体1であって、移動可能な支持体1aと、この支持体1a上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極1bと、この画素電極1b表面及び画素電極1b間を保護する保護層6とを備え、保護層6は、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層7と、この絶縁層7の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層8とを有するものとなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像保持体及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式として電子写真方式が用いられる。これは、コロナ放電器や帯電ロール等の帯電器によって帯電された感光体に対して、レーザやLEDアレイを用いて光イメージを照射することで静電潜像を形成し、この形成された静電潜像に対し帯電したトナーを用いて現像することで可視像化するようにしたものである。そして、このように電子写真方式を利用した画像形成装置は、オンデマンド性に優れ、普通紙への画像形成が可能なことから、オフィスを中心に広く普及している。
【0003】
一方、電子写真方式での環境影響への配慮などから、マトリクス状に電極を配列し、帯電器を使用しない方式の画像形成装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。特許文献1では、画素毎に設けた薄膜トランジスタ(TFT)をマトリクス状に形成すると共に蓄積容量を夫々のTFTに設け、蓄積容量での電荷蓄積効果により安定した現像を行うようにした方式の画像形成装置が提案されている。また、特許文献2では、スイッチング素子をマトリクス状に構成し、レーザ照射することで、画素毎に発生する表面電位を変化させるようにした方式の画像形成装置が提案されている。更に、特許文献3では、マトリクス状に配列したスイッチング素子毎に二層分割された蓄積容量を持たせ、画像部/非画像部の電位を調整した構成が提案されている。そして、特許文献4では、マトリクス状に配列したスイッチング素子を使って画素毎の潜像を形成する方式の画像形成装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3233463号公報(実施例、図4)
【特許文献2】特開2002−326382号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献3】特開2003−32440号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献4】特開2004−219635号公報(実施の形態1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性を向上し、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐ像保持体及びこの像保持体を用いた画像形成装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体であって、移動可能な支持体と、この支持体上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極と、この画素電極表面及び画素電極間を保護する保護層とを備え、保護層は、画素電極間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層と、この絶縁層の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層とを有する像保持体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、前記疎水性表面層は、前記絶縁層表面に撥水剤を塗布することで形成するようにした像保持体である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、更に、前記疎水性表面層への水分の付着を防ぐための加熱手段を備える像保持体である。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る像保持体を製造するに際し、前記疎水性表面層は、前記絶縁層の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものである像保持体である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る像保持体のうち、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様において、前記絶縁層はCVD法におけるシランガスと窒素ガスとの所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、前記疎水性表面層は前記絶縁層上に絶縁層より水素の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス中でプラズマ処理した像保持体である。
請求項6に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、前記疎水性表面層は、前記絶縁層上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素中でプラズマ処理した像保持体である。
【0009】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備えた画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記画素電極夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段とを備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、疎水性表面層の形成が容易になされるようになる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、疎水性表面層に付着する親水性官能基や水分を加熱により積極的に除去することができるようになり、環境安定性が更に向上する。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、絶縁層の表面層から酸素や水素を減少させることができ、疎水性能を向上させた疎水性表面層を形成できる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、絶縁層形成後にそのまま連続して疎水性表面層を形成できるようになり、また、最終の窒素ガス中でのプラズマ処理が容易になされるようになり、高い撥水性の膜が容易に得られるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、有機皮膜での高い撥水性が得られるようになる。
【0012】
請求項7に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができ、更に、転写性能を向上させた画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要を説明する。
◎実施の形態モデルの概要
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示すものである。同図において、画像形成装置は、支持体1a上に画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、この現像手段3にて現像されたトナー像を転写媒体5に転写する転写手段4とを備えている。
【0014】
そして、このような画像形成装置に用いられる像保持体1の代表的モデルの一つは、潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体1であって、移動可能な支持体1aと、この支持体1a上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極1bと、この画素電極1b表面及び画素電極1b間を保護する保護層6とを備え、保護層6は、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層7と、この絶縁層7の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層8とを有するものとなっている。
【0015】
ここで、画素電極1bは支持体1a上に形成されるものであり、支持体1aとしては、その形状は特に限定されないが、画像形成装置を小型化する観点からすれば、回転可能な態様が好適である。また、画素電極1bは、画素単位で縦横に配列されていればよく、画素電極1bの数量は特に限定されないが、通常の画像が形成できる解像度を実現できる程度になっていることが好ましい。
【0016】
また、現像手段3は潜像形成手段2にて像保持体1上に形成された潜像をトナーにて現像できるものであればよく、使用されるトナーも特に制限されるものではなく、絶縁性トナーや導電性トナーを用いるようにすればよい。更に、転写手段4の転写方式は、コロトロン等の像保持体1に非接触なタイプであってもよいし、転写ロール等の接触するタイプであってもよいが、転写動作を安定化させる観点からすれば、転写ロールを使用することが好適である。そして、転写手段4によって像保持体1上のトナー像が転写される転写媒体5としては中間転写体の態様であってもよいし、記録材の態様であっても差し支えない。
【0017】
そして、保護層6としては、画素電極1b及び画素電極1b間を保護するものであり、このとき、画素電極1bに印加される潜像電圧が漏洩しないような絶縁性機能と、保護層6表面への親水性官能基や水分の付着を抑える疎水性機能とを有する。
ここで、保護層6としては、画素電極1b間の狭小さから考えると、高耐圧の絶縁性が必要となる。一方、保護層6表面に着目すると、表面に親水性官能基や水分の付着があると、画素電極1bの潜像電圧が、特に、隣り合う画素電極1b間で相互に影響し合い、画素電極1bの潜像電圧による潜像パターンが不明瞭となる。したがって、保護層6としては、画素電極1bに接する深部側での絶縁性機能と表面側での疎水性機能との両者が必要となる。
【0018】
このような保護層6を一層で構成しようとすると、上述した二つの機能を持った保護層6が必要となるが、疎水性が良好な例えば撥水剤を適用しようとすると、絶縁性が不足したり、絶縁性の高い例えば無機の絶縁膜を用いると表面の疎水性が不足するようになる。そこで、本件発明者らは、二つの機能を二つの層構成に夫々分離させ、絶縁性を確保する層と疎水性を確保する層とに機能分離することを考慮することで、本願を案出するに至ったものである。
【0019】
そのため、絶縁層7としては、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧を作用させたときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなるものを用いるようにして、絶縁性を確保するようにした。このとき、絶縁層7としては、酸化シリコンSiOx(好ましくはSiO2)、酸化タンタルTaOx(好ましくはTa2O5)、窒化シリコンSiNx(好ましくはSi3N4)のうちいずれかで構成される。
【0020】
また、疎水性表面層8としては、水の接触角が80度以上であれば、十分疎水性能を発揮できるようになる。尚、疎水性表面層8は、絶縁層7より耐圧が低くても差し支えないが、画素電極1b間の潜像電圧の影響を防ぐには、画素電極1b間での潜像電圧が互いに影響しない程度の絶縁性を備えていることが必要である。尚、水の接触角は、疎水性表面層8が形成された後、安定した膜質においての状態であることは云うまでもない。
【0021】
ここで、疎水性表面層8としては、水の接触角が80度以上となるものであればその成膜方法は特に限定されず、絶縁層7上に例えば撥水剤を塗布するようにしてもよいし、無機物で形成された絶縁層7表面にプラズマ処理等の各種処理を施して、表面を疎水化させるようにしても差し支えない。このように、像保持体1の表面が水の接触角が80度以上の表面になるようにすることで、像保持体1が適用されるべき高湿環境下においても、像保持体1表面に対する親水性官能基や水分の付着を抑え、夫々の画素電極1bに印加された潜像電圧を安定的に保つことが可能になり、潜像のコントラストの低下を防ぐことができるようになる。一方、像保持体1表面の水の接触角が80度を下回るような場合には、特に、高湿環境下での像保持体1表面に対する親水性官能基や水分の付着が増加し、これによる隣り合う画素電極1b間での電位の漏洩が生じ、潜像のコントラストが低下することによる像流れ(deletion)等の画質劣化が発生するようになる。
【0022】
更に、このような疎水性表面層8を容易に得られるようにする観点から、疎水性表面層8は、絶縁層7表面に撥水剤を塗布したものとすることが好ましい。この場合、撥水剤としては、一般的に知られるポリイミド等の疎水性高分子、メチル基やフッ素基等の疎水性官能基を有するもの、あるいは、疎水性シリカ化合物などを用いるようにすればよい。また、このとき、例えばシランカップリング剤等の表面処理剤を下地表面に塗布し撥水剤との密着性を向上させるようにしても差し支えない。
【0023】
このような態様において、更に、疎水性表面層8の疎水性を向上させる観点から、疎水性表面層8は、絶縁層7の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものとすることが好ましい。これによれば、例えばシランガスを用いたCVD法による成膜時に、形成される絶縁層7の表面層から酸素(O)や水素(H)を減少させることができ、表面層に酸素や水素の含有量が多いものに比べ、表面への親水性官能基や水分の付着を抑えることができるようになる。
【0024】
また、絶縁層7と疎水性表面層8とを連続して容易に形成する観点からすれば、絶縁層7として窒化シリコンを用いる態様において、絶縁層7はCVD法におけるシランガス(SiH4)と窒素ガス(N2)との所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、疎水性表面層8は絶縁層7上に絶縁層7より水素(H)の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス(N2)中でプラズマ処理することが好ましい。これによれば、絶縁層7の成膜速度も大きくなり、高耐圧の絶縁層7が容易に形成されるようになると共に、疎水性表面層8の成膜もそのまま容易になされ、更に、窒素ガス(N2)中でのプラズマ処理に際しても短時間でなされるようになる。
【0025】
更に、疎水性を有機皮膜で構成する観点からすれば、疎水性表面層8は、絶縁層7上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理することが好ましい。これにより、絶縁膜表面を例えばフッ素ラジカルによる改質を行うことができ、改質前に比べ、親水性官能基や水分の付着を抑えることができるようになる。
【0026】
そして、本実施の形態モデルでは、保護層6のうち、絶縁層7の耐圧としては、例えば画素電極1b間の距離を1μmとしたときに電位差100Vが保持できる程度の絶縁性を要するものとし、安定係数を5として算出すると、5MV/cm以上であることが好ましい。一方、疎水性表面層8としては、現像時の画素電極1b間での相互の電圧の影響を防ぐことからすれば、1MV/cm以上あることが好ましい。
【0027】
また、疎水性表面層8に付着する親水性官能基や水分を積極的に除去して疎水性能を維持する観点からすれば、疎水性表面層8への水分の付着を防ぐための加熱手段を備えることが好ましい。このとき、加熱手段としては、疎水性表面層8が加熱できればその設置場所は特に限定されず、画素電極1bと同様の製造プロセスでヒータ素子(加熱手段に相当)を成膜して形成するようにしてもよいし、像保持体1が回転体の態様の場合には支持体1aの内部にヒータ(加熱手段に相当)を設けるようにしてもよい。また、像保持体1が平板の態様においては、画素電極1bの裏面側に設けるようにしてもよい。更には、像保持体1が回転体又は平板のいずれの態様にあっても、像保持体1の表面近傍にヒータ(加熱手段に相当)を備えるようにしても差し支えない。ここで、このような加熱手段による加熱は、像保持体1が稼働中に行うようにしてもよいが、像保持体1上に付着するトナーへの影響を抑える観点からすれば、像保持体1が非稼働中のとき、つまり、例えば装置のウォーミングアップ時等に加熱手段を作動させることが好ましい。更には、環境条件を検知する環境検知手段を備え、この環境検知手段による検知情報に基づいて加熱手段を適宜作動させるようにしてもよい。
【0028】
尚、参考の態様としては、加熱手段による加熱を行うことを前提とすれば、水の接触角が80度を下回るような疎水性表面層8が用いられても、加熱手段により疎水性表面層8への親水性官能基や水分の付着を抑えることができ、像保持体1として良好な特性を維持する可能性がある。また、このことは、疎水性表面層8を備えずに、絶縁層7のみの場合も可能であり、水の接触角が60度程度を確保できるようになっていれば、環境安定性を確保できる可能性がある。
【0029】
また、本実施の形態モデルでの画像形成装置の他の態様としては、像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで現像手段3にて現像されたトナー像に対し転写媒体5に転写する転写電界を作用させる転写手段4とを備えるものが挙げられる。この場合、転写時にも画素電極1bに画像信号に基づいた転写電圧が印加されるようになり、画素電極1b上のトナー付着量が異なるような事態に際しても、転写媒体5へのトナーの転写を良好に行うことができるようになる。
【0030】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、上述の実施の形態モデルが適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体10内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK))の各色トナー像が形成される像保持体20(20a〜20d)を略垂直方向に並列配置すると共に、これらの像保持体20に対向して循環回転する転写媒体としての中間転写ベルト50を略垂直方向に架け渡し、この中間転写ベルト50上で像保持体20上の各色トナー像を多重化するようにしたものである。
【0031】
像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像器41や、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃部材42が設けられ、また、像保持体20と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、現像された像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50に転写する転写器43が設けられている。尚、符号41aは現像器41内にて像保持体20に直接トナーを供給する現像ロールを示している。
【0032】
ここで、現像器41としては、像保持体20に形成された静電潜像に対し、像保持体20と現像器41との対向領域である現像領域にて、現像器41の現像ロール41aと像保持体20との間の現像電界により像保持体20上に静電潜像に応じたトナー付着が行われるものであり、公知の一成分現像方式あるいは二成分現像方式のいずれを用いても差し支えない。
【0033】
一方、中間転写ベルト50は、複数の張架ロール51〜53(本例では3個)に張架され、例えば張架ロール51を駆動ロールとして循環回転するようになっており、また、中間転写ベルト50の表面側には、張架ロール53と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置に二次転写器60を設け、中間転写ベルト50上で多重化された多重トナー像を後述する記録材供給部12から供給される記録材に一括転写するようになっている。尚、このとき、二次転写器60は張架ロール53をバックアップロールとして、両者の間に所定の二次転写バイアスが印加されるようになっている。
【0034】
そして、装置筐体10内の下方には、記録材を供給する記録材供給部12が設けられ、例えば供給容器13内に収容された記録材が、供給ロール14及び捌き機構15にて1枚毎に下流側の記録材搬送路16に向かって供給されるようになっている。
また、本実施の形態における記録材搬送系は次のようになっている。すなわち、記録材供給部12から記録材搬送路16に供給された記録材が、記録材搬送路16の途中に配置された位置決めロール17にて一旦位置決めされた後、所定のタイミングで下流側の二次転写器60側に搬送される。その後、二次転写器60と張架ロール53との対向部位である二次転写部位にて中間転写ベルト50上の多重トナー像が記録材に一括転写され、定着器18にてトナー像が定着された後、排出ロール19から装置筐体10の一部で構成される記録材排出受け11に排出されるようになる。尚、記録材搬送路16には、記録材を搬送するための搬送部材や案内部材(例えば搬送ロール等)が適宜設けられていることは云うまでもない。
【0035】
次に、本実施の形態の像保持体20について詳述する。
図3に示すように、本実施の形態における像保持体20は、IC製造プロセス等で用いられる薄膜形成技術を用いて多数の画素が所謂マトリクス状に配列されたマトリクスパネル30を、回転可能な支持体であるアルミ合金パイプ等からなる剛体ドラム21上に直接形成するようにしたものである。マトリクスパネル30内の画素は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン(主走査方向)とし、回転方向に沿った方向を走査ライン(副走査方向)としている。そのため、マトリクスパネル30のデータライン及び走査ラインには、各画素に接続される複数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が適宜数設けられ、これらのドライバ31,32への入力端子は更にまとめられて本数を少なくした段階でマトリクスパネル30の端部に接続端子として集結されている。
【0036】
剛体ドラム21は、その外周面の一部に回転軸方向に沿った開口部21aが設けられる一方、剛体ドラム21の軸方向端部には、剛体ドラム21の内周面に沿って嵌め込まれる側壁部材26を備えており、この側壁部材26の中心には、側壁部材26に対しベアリング27を介して設けられるスリップリング24が配置されている。スリップリング24は、マトリクスパネル30と外部との電気的接続を行うために設けられたもので、そのため、剛体ドラム21は固定されたスリップリング24の周囲を回転するようになっている。
【0037】
剛体ドラム21の内周面側には、図4(a)(b)に示すように、スリップリング24との電気的接続を図るために、適宜数の端子22が剛体ドラム21に固定して設けられており、これらの端子22は夫々マトリクスパネル30の接続端子(後述する)から例えばフレキシブル配線板33に形成された導電通路を介して接続されるようになっている。更に、これらの端子22には、夫々剛体ドラム21の回転軸中心方向で且つ夫々の端部が互いに離間する方向に延びる略V字状のスライダ23が接続されており、このスライダ23の凹部にスリップリング24の集電環24a部位が装着されるようになっている。そして、これらの集電環24aは、リード線25と夫々接続されている。尚、スリップリング24の集電環24a部位は、両側の絶縁環24bより径が小さくなっており、剛体ドラム21の回転によってもスライダ23がその対向する集電環24aに常時接触した状態を保つようになっている。
【0038】
次に、マトリクスパネル30から端子22への電気的接続について詳述する。図5に示すように、本実施の形態では、マトリクスパネル30の各接続端子301及び剛体ドラム21の裏面側に設けられた端子22に対応して、フレキシブル配線板33には導電通路となる導体配線331が施され、導体配線331は例えばポリイミド樹脂層等の絶縁コート層332,333によって挟まれ互いに絶縁されている。マトリクスパネル30側の接続端子301に対しては、例えば異方導電性フィルムや接着剤からなる接続層34を挟んで、フレキシブル配線板33を剛体ドラム21側に加圧加熱することで、マトリクスパネル30の接続端子301とフレキシブル配線板33の導体配線331とが接続されるようになる。
【0039】
一方、フレキシブル配線板33の導体配線331と剛体ドラム21の端子22との接続は次のようになされる。ここで、端子22は、剛体ドラム21に固定される部分が絶縁体で構成された端子基体222になっており、この端子基体222は剛体ドラム21から離れる方向に沿って広がる形状を呈している。また、この端子基体222には、導電性の端子本体221が接続して設けられ、この端子本体221の一部にスライダ23が固定されている。そのため、フレキシブル配線板33の導体配線331は、端子22の端子基体222に支持されるような形で端子本体221側に挿入(具体的には端子本体221を挟むように横から挿入)された後、端子本体221とフレキシブル配線板33の導体配線331との間でろう付けや導電性塗料によって電気的な接合部35が形成されるようになっている。
【0040】
そのため、マトリクスパネル30と外部との信号の伝達は、スリップリング24の集電環24aに対応してスリップリング24内に配線されたリード線25から、集電環24a及びスライダ23を介してマトリクスパネル30との間で行われるようになり、剛体ドラム21が回転しても、マトリクスパネル30との信号の伝達が適切に行えるようになっている。尚、剛体ドラム21の回転方法は、特に限定されず、例えば剛体ドラム21の外周面端部側を回転ロールに圧接させて回転させるようにしてもよいし、スリップリング24の挿入側とは異なる側に剛体ドラム21自体を回転させる回転軸を備えるようにしても差し支えない。尚、剛体ドラム21の開口部21aは、例えばシールテープにて塞がれており、像保持体20が回転する際の気流の抵抗を低減させると共に、現像時のトナーの影響も防ぐようになっている。
【0041】
次に、マトリクスパネル30について説明する。
本実施の形態のマトリクスパネル30は、図6(a)に示すように、縦横に画素が配列されたものであって、各画素は、図6(b)に示すように、所謂アクティブマトリクス方式に構成されており、スイッチング素子である例えばTFT(Thin Film Transistor)36、画素電極37、蓄積容量38及び配線(ソース線、ゲート線等)等が夫々形成されている。各画素及び画素間の結線は、データライン毎にTFT36のソースがまとめて結線されるソース線、走査ライン毎にTFT36のゲートがまとめて結線されるゲート線として夫々まとめられている。また、TFT36のドレインには画素電極37と蓄積容量38が並列に接続されており、蓄積容量38の一方は走査ライン毎にまとめられ、図6(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0042】
マトリクスパネル30は、このように各画素を多数並べた構成のため、そのドライブ方式は次のように行われる。
つまり、マトリクスパネル30は、図7に示すように、データライン及び走査ライン毎に所定数の画素がまとめられ、TFT36のソース側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT36のゲート側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されており、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、画像形成装置内に設けられた画素電極駆動装置70によって駆動制御されるようになっている。そのため、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、所定の画素に所定の電圧が印加できるようになる。データ用ドライバ31としては、例えばサンプルホールド付きのシフトレジスタ、ラッチ、バッファ等で構成され、走査用ドライバ32としては、例えばカウンタ、ラッチ、バッファ等で構成される。
【0043】
次に、マトリクスパネル30を形成するプロセスについて一画素当たりを中心に説明する。図8に示すように、本実施の形態では、剛体ドラム21上に例えばCVD法によるアモルファスシリコン膜(a-シリコン)を形成した後、酸化処理にて絶縁性の酸化シリコン下地層101とし、剛体ドラム21との絶縁性を確保する。更に、その上にa-シリコンを形成した後、エキシマレーザ等で部分アニール処理を行い、ポリシリコン層102を形成する。ポリシリコン層102に部分的なイオン注入を行って電極とのオーミックコンタクトが形成されるように高濃度層103,104を形成した後、エッチング処理にて不要な部分を取り除くことで、図中のポリシリコン層102の部分を残し、ここにトランジスタ(TFT36に相当)が形成されるようになる。
【0044】
更に表面を酸化して、酸化シリコンの高絶縁層105を形成した後、この上にゲート電極106を形成すると共にトランジスタの横に蓄積容量38の電極107を形成する。その上から全体に例えばプラズマCVD法による窒化シリコン層108を形成し、コンタクトホールを開設した後、例えばスパッタ法による導体層を形成し、トランジスタ(TFT36に相当)のソース(S)、ゲート(G)、ドレイン(D)が形成される。また、このとき、ドレイン(D)の一端側から画素電極37が形成されることで、画素電極37と電極107との間で蓄積容量38も形成されるようになる。
その後、全体表面に亘ってプラズマCVD法による窒化シリコン層(絶縁層に相当する)109が形成される。そして、本実施の形態では、この窒化シリコン層109の上に更に窒化シリコン層の形成及びプラズマCVD法による窒化処理を行い、疎水性表面層110を設けている。
【0045】
図9は、上述した工程の概略をブロック図に示したものであり、剛体ドラム21上に絶縁性下地層(本例では酸化シリコンを使用)を形成し、その上にTFT36を形成する。その後、窒化シリコン第一層を形成(配線を行うための下地絶縁層)した後、画素電極37を形成する。その上から、窒化シリコン第二層(絶縁層に相当する)を形成した後、この窒化シリコン第二層表面に疎水性表面層110を形成するようにしている。尚、成膜方法や各種レイアウトはこれに限られず、適宜選定するようにすればよい。
【0046】
図10は、本実施の形態における窒化シリコン層(絶縁層に相当)109や疎水性表面層110を形成するための窒化処理等が行われるプラズマCVD法の概略図を示したもので、内部に電極122(122a,122b)が設けられた反応容器121の中に試料が置かれ、電極122間に高周波電力が印加されることでプラズマが発生できるようになっている。また、反応容器121には、内部のガス雰囲気を調整するための、バルブ123,124が設けられ、入口側のバルブ123には、流量計126,128を介して夫々ガスボンベ125,127が接続されている。ここでは、窒化シリコン膜を形成するための原料ガスとして、モノシラン(SiH4)と窒素ガス(N2)のガスボンベ125,127が接続されている。
【0047】
本実施の形態における窒化シリコン層109は、図11に示すように、原料ガスをモノシラン(SiH4)と窒素ガス(N2)とし、その混合比率を当初SiH4/N2=0.2で行い、500Wの電力を用いプラズマを発生させながら試料上に成膜した。
更に、窒化シリコン層109を形成した後、試料をそのまま反応容器121内に残したまま、混合比率を0.05に切り替え、窒素量を増加させるようにして、窒化シリコン層を形成した後、流量計128側のバルブのみを開栓し、流量600sccm、パワー500W、試料温度210℃の条件で1時間窒素プラズマ処理を行い、疎水性表面層110(図8参照)の形成を行った。
【0048】
窒化シリコン層109と疎水性表面層110との間では、当初窒素量を減らした状態(混合比率0.2)でCVDを行うことで、膜中の水素は多くなるが、電気的特性に優れ、かつ、成膜速度も大きいことから好適な絶縁性を有する成膜がなされるようになる。しかしながら、このままでは、表面活性度がやや高く、酸化され易く、例えば高湿環境中では水分の付着等を来すようになる。そこで、窒素量を増やした状態(混合比率0.05)でCVDを行うことで、膜中の水素含有量を減らして窒素含有量を増やすことができ、よりストイキオメトリ(化学量論比)に近い組成の成膜がなされ、表面への水分がより付着し難い方向に変化させることができるようになる。そこで、このようにして疎水性表面層110の下地層を形成し、更にプラズマ処理を行うことで疎水性表面層110を完成させた。尚、混合比率を0.05より小さくすると、窒素が過剰になり過ぎ、成膜される窒化シリコンの安定性が損なわれ、剥離等の不具合を生じるようになる。
【0049】
本実施の形態では、このように成膜した絶縁層としての窒化シリコン層109に対し、更に、窒素含有量を増やした窒化シリコン層を形成し、その表面に窒素プラズマ処理を行うことで、絶縁層(窒化シリコン層109)の表面に形成された窒化シリコン層の表面層にて窒素の修飾が更になされ、表面層の改質が行われることで活性度が更に低下するようになる。そのため、より一層水分の付着等を抑えることができるようになる。つまり、この窒素プラズマ処理がなされることで、窒化シリコン層が良好な疎水性表面層110に改質されたものとなる。ここで、疎水性表面層110としては、絶縁層としての窒化シリコン層109ほど絶縁性が必要ではないものの、ある程度の絶縁性が必要となることは云うまでもない。つまり、絶縁性が小さ過ぎると、疎水性表面層110にて画素電極37のパターンが実質的に拡がったものとなり、例えば現像時に現像ロール41a(図2参照)と画素電極37との間で画素電極37の電位による電界が、疎水性表面層110上では拡がるようになり、画質のシャープさが低減するようにもなる。
【0050】
一方、画素電極駆動装置70は、図11に示すように、画像信号に基づく電圧信号や制御信号をマトリクスパネル30のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に伝達するようになっている。そのため、画素電極駆動装置70内には、画像信号から少なくとも一画像分の画像データを記憶するメモリ部71、画像信号に基づく潜像電圧を制御する潜像制御部72、潜像制御部72に各種の潜像電圧を供給可能な潜像電圧用電源76及び各種のタイミング制御を行うタイミング制御部77で構成されている。また、潜像制御部72は、メモリ部71からの画像データを階調変換する階調変換部73と、階調変換されたデータから画素電極37毎の潜像電圧レベルを決定するための潜像制御信号を生成する潜像制御信号生成部74及び潜像制御信号生成部74にて生成された潜像制御信号に基づいて具体的な潜像電圧を設定する潜像電圧設定部75にて構成されている。
【0051】
そして、画像信号や制御信号が画素電極駆動装置70に入力されることで、画素電極駆動装置70がデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動し、これらのデータ用ドライバ31や走査用ドライバ32が駆動されることで、画素電極37夫々に画像信号に基づいた潜像電圧が印加されるようになる。
【0052】
本実施の形態では、画素電極37に印加される潜像電圧が画像信号から階調変換部73を介した画像データによって算出されるようになっているため、潜像電圧を単なる二値化ではなく、それ以上の多値化が可能になり、画像濃度に合わせた潜像電圧を印加することができるようになる。このことを、図12に基づいて説明する。今、画像信号(画像データ)の濃度に対し、例えば3段階の閾値(図中、A,B,Cで示す)を設け、C以下であれば電圧を0とし、Cを超えB以下であればV/3、Bを超えA以下であれば2V/3、Aを超えればVとするようにすれば、4階調の潜像が形成されるようになる。
【0053】
次に、このように、4段階に分類された画像データを画素電極37に印加するための方式について図13を基に説明する。今、階調変換された信号が、図13(a)のような信号であり、データラインの主走査方向に沿って「…a,b,c,d…」、次の主走査方向に「…b,a,d,c…」の画像が得られたものとすると、潜像制御信号生成部74では、例えば図13(b)に示すように、a,b,c,dに合わせて二値化されたデータを生成する。つまり、「…00011011……01001110…」のようなデータ信号が生成される。そして、この生成信号から、潜像電圧設定部75では、「00」〜「11」までに対応する電圧を潜像電圧用電源76から夫々選択することで、4段階の潜像電圧波形が設定される。このように設定された潜像電圧波形をデータ用ドライバ31に伝達し、走査用ドライバ32にタイミング制御用の制御信号を伝達することで、図13(c)に示すように、画素電極37毎に濃度の異なる画像が形成されるようになる。
【0054】
このように、画素電極37に印加される潜像電圧を階調変換したものとすることで、現像により画素電極37上に付着するトナー量を変化させることができ、より画質のよい画像を形成することができるようになる。
ここで、階調数については特に限定されず、実用上問題ない範囲であればよく、また、階調を行わずに単に二値化された潜像電圧とするようにしてもよいことは云うまでもない。更に、ここでは、画像信号に基づく潜像電圧を印加する方法としてアクティブマトリクス方式で用いられる階調方式、すなわち、電圧振幅を所定の階調数とした電圧階調方式を示したが、例えばフレームレートで階調表示を行うフレームレート階調方式を用いるようにしてもよいことは云うまでもない。
【0055】
一方、このように画素電極37に潜像電圧を印加するには、画素電極37毎にTFT36のON/OFF制御を行う必要がある。図6(c)に示したごとく、画素電極37を動作させるには、TFT36の走査ライン側に接続されたゲート(ゲート線)にON電圧を印加すると、TFT36のソース−ドレイン間が導通状態となり、ソース電圧と等価になるまで蓄積容量38が充電される。この充電された電荷によって潜像電圧が形成されることで、静電潜像が形作られる。また、その状態でゲート(ゲート線)にOFF電圧が印加され、ソース−ドレイン間が遮断されても蓄積容量38の蓄積効果によって潜像電圧はそのまま保持されるため、以降にソース電圧が変化してもゲート(ゲート線)にON電圧が印加されない限り潜像電圧はそのまま保持された状態を保つ。
【0056】
そのため、各画素のTFT36のソース側へ像濃度に相当する信号電圧を印加すると共に、ゲート側へON電圧を印加することにより、データライン1ライン分の静電潜像が形成されるようになる。そして、ON電圧を印加するゲート線を像保持体20の回転方向と逆方向に順次移動(走査)させ、データラインに新たな信号電圧を印加することにより、二次元の潜像が形成されるようになる。
【0057】
このような画素電極37での潜像電圧を安定的に維持するには、蓄積容量38の安定化もさることながら、画素電極37やTFT36表面の疎水性能が重要な要因となる。仮に、像保持体20の表面の疎水性能が不足すると、大気中の水分が像保持体20の表面に付着し易くなり、画素電極37間での電荷漏洩が生じたり、TFT36自体の動作が不安定になったりするようになり、画素電極37上の電荷の減衰が生じ、結果的に潜像電圧の減衰が生じ、画像のコントラストが低下するようになる。
【0058】
そこで、本件発明者らは、先ず、電子写真技術にて使用される感光体表面について、表面の水の接触角と得られる画像との関係を調査したところ、感光体表面の水の接触角が80度を下回ると、像流れ(deletion)が発生することが判明した。このことは、本実施の形態の像保持体20においても同様で、像保持体20としては水の接触角が80度以上となるような表面を有する必要がある。一方、画素電極37相互の絶縁性を保つには、画素電極37間の絶縁性能が重要であり、距離1μmに対して電位差100Vが保持され、かつ、安定係数を5として算出すると、5MV/cm以上の絶縁耐圧が必要となる。
【0059】
したがって、本実施の形態における像保持体20は、十分な絶縁性能と十分な疎水性能の両方の機能が必要となる。しかしながら、両方の機能を同時にまかなう膜質を実現することは困難であることから、本実施の形態では、両者の機能を分離し、絶縁性能は絶縁層で確保し、疎水性能は疎水性表面層で確保するようにした。
本実施の形態では、絶縁層として窒化シリコン層109を用い、疎水性表面層110として、絶縁層と組成比の異なる窒化シリコン層を用い、更に表面に窒素中のプラズマ処理を施すようにしたので、絶縁性機能及び疎水性機能の両方の機能共に十分な像保持体20を形成することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、像保持体20としてマトリクス状に画素電極37と、画素電極37へ印加される電圧を切り替える切替回路とを設け、画素電極37及び切替回路を覆う絶縁層としての窒化シリコン層109と、この窒化シリコン層109上に疎水性表面層110を設けたので、コントラストを低下させることなく、シャープな画像を形成することができるようになる。また、各画素電極37へ画像信号に基づく電圧を印加するようにしたので、画素の位置及び形状はそのまま画素電極37の位置及び形状になり、更に、潜像電圧は画素電極37への印加電圧で決まるため、画素の位置、形状及び電位が一義的に決定され、濃度むら、色むら、すじ等の画像欠陥の発生が抑えられた高画質画像が得られるようになる。
そして、このような方式では帯電器を使用しないことから、帯電器自身がトナーに汚染されて帯電不良を起こしたり、帯電器から発生する放電生成物が像保持体20表面を変質させたり、また、放電生成物により清掃性能を低下させたりすることがない。
【0061】
また、本実施の形態では、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様を示したが、酸化シリコン、酸化タンタルを用いるようにしても同様の絶縁性を確保することができるようになるが、これに対して、絶縁層として例えば疎水性の有機絶縁体を用いるようにすると、疎水性は良好なものが得られるものの、像保持体20としての絶縁性を十分確保することが困難となる。
また、窒化シリコン層109を形成する際、CVD法に用いるガスとして窒素ガスを用いるようにしたが、モノシランとアンモニアガス(NH3)を用いるようにしてもよく、この場合、窒素ガスを用いるものに比べ、膜中の水素の取り込みがやや多くなり、密度が小さくなるものの電気的特性が良好となる点に注意を払えばよい。このことは、窒素ガスに比べ、アンモニアガスの方がプラズマ中でより分解され易いことによる。
更に、疎水性表面層110としては、絶縁層の上に、四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理を行い、フッ素樹脂膜を形成するようにしてもよい。
【0062】
そして、上述した本実施の形態では、疎水性表面層110として窒化シリコン層の表面をプラズマ処理する態様を示したが、図14に示すように、疎水性表面層110’(110に相当)として十分な疎水性の機能のみを有する撥水剤を塗布することも可能である。このような疎水性表面層110’としては、ポリイミド樹脂などの疎水性高分子材料や、メチル基やフッ素基などの疎水性官能基を有する高分子材料が挙げられ、水の接触角が80度以上のものであればよい。また、このような疎水性表面層110’を塗布する際、下地との密着性を上げるためにシランカップリング剤などの表面処理剤を用いるようにしてもよい。
【0063】
更には、これらの表面に微細な凹凸構造を形成するようにすれば、表面に付着する水滴をより球形にする効果があり、水の接触角を大きくすることが可能になる。このような表面改質としては、例えばポリプロピレン樹脂等の高分子膜表面を四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理を行うようにすればよい。
このように、像保持体20として必要な絶縁性機能と疎水性機能を機能分離し、絶縁性は絶縁耐圧の高い無機物(窒化シリコン等)によって行い、最表面の疎水性は高分子材料からなる疎水性表面層110’によって行うものとすることができる。しかしながら、この場合、画素電極37上の絶縁層及び疎水性表面層110’のトータル膜厚が厚くなることから、画素電極37に印加する潜像電圧として疎水性表面層が薄いものより大きな電圧を印加することが必要になる。
【0064】
本実施の形態では、像保持体20から中間転写ベルト50への転写を行う画像形成装置を示したが、これに限られず、像保持体20から直接記録材上に転写するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、画素毎に蓄積容量38を備える方式を示したが、像保持体20と現像器41との対向領域の近傍で、画素電極37に書き込む(ゲート側にON電圧を印加する)ようにすれば、蓄積容量38を備えていない場合でもTFT36自体の容量を利用することでトナー像を形成することは可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、像保持体20の数量を4個としたフルカラーの対応を示したが、像保持体20の数量はこれに限られず、例えば特色トナーや、透明トナーを適用するものを追加するようにしても差し支えない。更には、本実施の形態ではカラー対応の画像形成装置を説明したが、モノクロ対応の画像形成装置であってもよいことは云うまでもない。そして、本実施の形態では像保持体20を回転させる方式としたが、像保持体20を平板状に設け、像保持体20と現像器41あるいは転写器43の少なくとも一方を移動させるようにしてもよく、像保持体20が回転体の場合に比較して画像形成を繰り返す速度は低減される可能性があるものの、回転体と同様の画像を形成することができるようになる。尚、この場合、清掃部材42も現像器41あるいは転写器43同様、移動させるようにすればよい。
【0066】
更に、本実施の形態では、画素電極37に潜像電圧を印加し、転写時には転写器43と像保持体20との間に転写電界を作用させる態様を示したが、転写時にも画素電極37夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加し、転写器43と画素電極37との間の電界作用によって像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50(転写媒体に相当)に転写するようにすることも可能である。
図15は、このような転写を行う際の画素電極駆動装置70’を示したもので、図11に示す画素電極駆動装置70と略同様の構成であるが、画素電極37へ転写電圧を印加するための転写制御部82や、転写制御部82への転写用電圧を供給する転写電圧用電源86を備える点、潜像制御部72又は転写制御部82からの信号のうち、いずれか一方の信号をデータ用ドライバ31へ伝達するように切り替える切替部88を備える点が異なる。
【0067】
ここでは、潜像制御部72は、図11と同様の構成であるため、ここではその説明を省略し、主として転写制御部82について説明する。
この転写制御部82は、メモリ部71からの画像データに基づいて画素電極37毎の転写電圧レベルを決定するための転写制御信号生成部84と、この転写制御信号生成部84にて生成された転写制御信号に基づいて具体的な転写電圧を設定する転写電圧設定部85にて構成されている。そして、この転写電圧設定部85は、各種の転写電圧を供給可能な転写電圧用電源86から所定の電圧を設定できるようになっている。
【0068】
そのため、本例においては、画像信号や制御信号が画素電極駆動装置70’に入力されることで、像保持体20に対する現像や転写のタイミングに対応して、画素電極37に潜像電圧あるいは転写電圧が印加されるようになる。
【0069】
特に、転写時に画素電極37へ画像信号に基づいた転写電圧を印加することで、転写前に画素電極37に付着しているトナー量に合った転写電界を画素電極37と転写器43(図2参照)の間に作用させることができ、良好なトナーの転写性を確保することができるようになり、画質を更に向上させることができるようになる。
【0070】
◎実施の形態2
図16は、画像形成装置に用いられる実施の形態2の像保持体の一画素当たりの概略構成を示すもので、実施の形態1の構成(図8参照)と略同様に構成されるが、窒化シリコン層109の表面に例えば画素電極37部分を回避して設けられる加熱手段としてのヒータ層130を備えた点が実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施の形態では、ヒータ層130として窒化シリコン層109上に例えばニッケル/クロムをスパッタリングで成膜し、所定のパターンにエッチングする。その上から再度窒化シリコンを形成し、表面をプラズマ処理することで疎水性表面層110を形成する。
このようにヒータ層130を設け、適宜ヒータ層130に通電を行うことで、ヒータ層130による発熱によって疎水性表面層110が暖められ、疎水性表面層110に付着する親水性官能基や水分の除去を行うことができるようになる。更には、環境センサを設け、この環境センサで高湿条件となっている場合にヒータ層130に通電を行い、加熱するようにしてもよい。
【0072】
本実施の形態では、疎水性表面層110の疎水性能を積極的に維持することができ、高湿環境下でも一層安定した潜像を形成することができるようになる。
【0073】
本実施の形態では、ヒータ層130を窒化シリコン層109上に設ける態様を示したが、ヒータ層130を画素電極37の下層側に設けるようにしても差し支えない。ただし、この場合、蓄積容量38の形成を損なわないようにヒータ層130が設けられることは云うまでもない。また、ヒータ層130として、ニッケル/クロムを用いる態様を示したが、薄膜技術で使用される抵抗材料であれば、例えば導体を細線化して用いるようにしても差し支えない。
【0074】
また、マトリクスパネル30内にこのようなヒータ層130を用いる代わりに、加熱手段を像保持体20の剛体ドラム21中に設け、像保持体20内部から疎水性表面層110を加熱するようにしてもよいし、像保持体20の外部に例えばランプヒータ等の加熱部を設け、像保持体20の外部から疎水性表面層110を加熱するようにしてもよい。
図17は、像保持体20の内部に加熱手段を備えた態様を示すもので、加熱手段として像保持体20の剛体ドラム21中に略同心円状に複数(本例では10本)の棒状ヒータ131を備えるようにしたものとなっている。尚、剛体ドラム21と棒状ヒータ131とは絶縁されていることは云うまでもなく、また、棒状ヒータ131への通電は、スリップリング24(図3,4参照)を介して行うようにしてもよいし、棒状ヒータ131の両端側に、夫々、電極としてスライド片を設け、このスライド片が外部に設けられたドーナツ型の固定電極を常時スライドするようにして、像保持体20の回転時にも安定して棒状ヒータ131へ通電できるようにしてもよい。
【0075】
また、このような加熱手段を、清掃部材42(図2参照)内に設け、清掃部材42を介して像保持体20を加熱するようにしてもよい。
更に、加熱手段の代わりに、像保持体20表面に風を吹き付ける方法を採ることもできるが、この場合、画素電極37上に現像によってトナー像が付着していないタイミングで風を送るようにすればよい。
【0076】
◎実施の形態3
図18は、実施の形態3の画像形成装置の概略構成を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置と異なり、一つの像保持体の周りに複数の現像器410を設けたものとなっている。
【0077】
すなわち、実施の形態1の像保持体20と同様に、本実施の形態の像保持体200にもマトリクス状に構成された画素電極群が形成され、画素電極に画像信号に基づいた信号電圧を印加することで静電潜像が形成できるようになっている。この像保持体200の周囲には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色に対応した現像器410(410a〜410d)が配設され、像保持体200に形成された静電潜像を各現像器410で順次現像して像保持体200上に多重化されたトナー像を形成するようになっている。また、像保持体200の周囲には、現像器410dと現像器410aとの間に像保持体200上に形成されたトナー像を記録材上に転写する転写器430が設けられ、更に、この転写器430と現像器410aとの間には清掃部材420が設けられている。
【0078】
このような画像形成装置では、先ず、現像器410aの現像領域に達するまでに、像保持体200にはイエローの画像信号に基づいた潜像が形成される。像保持体200上のこの静電潜像を現像器410aにて現像した後に、次の現像器410bの現像領域に達するまでに、マゼンタの画像信号に基づいた潜像が形成されて、現像器410bにて現像される。同様にして、シアン及びブラックの潜像が形成されて現像され、結果的に、現像器410dを通過した像保持体200上には、各色トナー像が多重化されたトナー像が形成されるようになる。
【0079】
ここで、良好な多重化を行うには、例えば二番目の現像器410bで現像する際、像保持体200側の画素電極では、一番目の潜像電圧が重畳された電圧とすることがよく、以降も三番目には一番目と二番目の潜像電圧を重畳し、四番目には一番目から三番目までの潜像電圧を重畳するようにする。このことで、夫々の現像時には像保持体200側に既存のトナーと、現像器410側のトナーとに加わる電界強度を略等しくすることができ、像保持体200側に十分トナーを付着させることができるようになり、良好な多重化がなされるようになる。そして、像保持体200上で多重化されたトナー像は、像保持体200と転写器430とが対向する転写部位にて、記録材上に一括転写される。
【0080】
このように、像保持体200上で各色トナー像を多重化する方式は、構成部品を少なくすることができ、また、小型化や低コスト化にとっても有利な方式となっている。尚、ここでは、四色の現像器410を有する画像形成装置を説明したが、現像器410の数量は特に限定されず、幾つ設けるようにしても差し支えなく、各色の配置もこれに限定されず、例えば透明色や特色を用いるようにしてもよいし、例えば同一色を複数箇所設けるようにしてもよい。
【実施例】
【0081】
◎実施例1
本実施例は、本件の像保持体における必要な疎水性能を確認するために、感光体での水の接触角と像流れとの関係について評価したものである。水(純水を使用)の接触角は、協和界面化学社製の接触角計を用いて行い、水の接触角が測定された感光体を用いて高温高湿中(例えば28℃85%RH)で画像を形成し、形成された画像を目視評価することで像流れ状況を確認した。
結果は、図19に示すように、水の接触角が80度を下回る場合には像流れが発生することが確認され、このことから、水の接触角は80度以上必要であることが判明した。ここで、評価には感光体を用いたが、画素電極を有する像保持体でも同様であることから、表面での水の接触角が80度以上の像保持体を用いれば、像流れの懸念が解消されることが確認された。
【0082】
◎実施例2
本実施例は、絶縁耐圧の高い絶縁層として用いられる酸化シリコン(SiOx:好ましくはSiO2)、酸化タンタル(TaOx:好ましくはTa2O5)、窒化シリコン(SiNx:好ましくはSi3N4)の水の接触角を測定したもので、酸化シリコン及び窒化シリコンは石英ガラス基板上にCVD法にて作製し、一方、酸化タンタルは酸素を含むガス雰囲気中で酸化タンタルのターゲットを用いてスパッタリングで作製した。
水の接触角の測定結果は、図20に示すように、酸化シリコンが43度、酸化タンタルが65度、窒化シリコンが51度であった。したがって、このままでは、良好な疎水性表面層ではないことが判明した。
【0083】
◎実施例3
本実施例は、窒化シリコンを作製する際、SiH4/N2混合比を変化させたときに成膜される窒化シリコン膜の水の接触角を測定評価したものであり、同時に、プラズマ処理されたものも加えた。
結果は、図21に示すように、混合比0.05では75度、0.1では57度、0.2では56度が得られた。また、混合比0.05で成膜した後に窒素プラズマ処理を行ったものでは、94度が得られた。
【0084】
このような像保持体の画質を調査したところ、混合比0.05では△(明確な像流れは確認されなかったが若干像流れが発生している状態)、混合比0.1や0.2では×(像流れが明確に確認される)、混合比0.05で成膜した後に窒素プラズマ処理を行ったものでは○(像流れの発生は確認されない)となった。
【0085】
本発明者らは、更に繰り返しの検討を行い、水の接触角が80度以上であれば、像流れの発生はないことを確認した。尚、水の接触角は、例えば22℃55%RHの条件にて測定した値とした。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の像保持体を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)は実施の形態1の像保持体の内部構造を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の像保持体のマトリクスパネルと像保持体裏面側の端子との接続構造を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の画素構造を示す説明図であり、(a)は画素群、(b)は一つの画素、(c)は画素間の接続の様子を示す。
【図7】実施の形態1の像保持体のマトリクスパネル駆動方式を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の一画素当たりの構成を示す説明図である。
【図9】実施の形態1のマトリクスパネルの製造方法を示すブロック図である。
【図10】実施の形態1の絶縁層及び疎水性表面層を作製するCVD法を示す説明図である。
【図11】実施の形態1の画素電極駆動装置の機能ブロック図である。
【図12】実施の形態1における階調方式を示す説明図である。
【図13】実施の形態1の具体例として潜像電圧の作用を示す説明図であり、(a)は画像信号が階調変換された信号、(b)は潜像電圧設定のための生成信号として潜像制御信号生成部にて生成された制御信号、(c)は設定された潜像電圧が画素電極に割り当てられた様子を示す。
【図14】実施の形態1の一画素当たりの構成の変形例を示す説明図である。
【図15】実施の形態1の画素電極駆動装置の変形例の機能ブロック図である。
【図16】実施の形態2に係る一画素当たりの構成を示す説明図である。
【図17】実施の形態2の変形例としての加熱手段を備える像保持体の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態3に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図19】実施例1の結果を示すグラフである。
【図20】実施例2の結果を示すグラフである。
【図21】実施例3の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0087】
1…像保持体,1a…支持体,1b…画素電極,2…潜像形成手段,3…現像手段,4…転写手段,5…転写媒体,6…保護層,7…絶縁層,8…疎水性表面層
【技術分野】
【0001】
本発明は、像保持体及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置で用いられる画像形成方式として電子写真方式が用いられる。これは、コロナ放電器や帯電ロール等の帯電器によって帯電された感光体に対して、レーザやLEDアレイを用いて光イメージを照射することで静電潜像を形成し、この形成された静電潜像に対し帯電したトナーを用いて現像することで可視像化するようにしたものである。そして、このように電子写真方式を利用した画像形成装置は、オンデマンド性に優れ、普通紙への画像形成が可能なことから、オフィスを中心に広く普及している。
【0003】
一方、電子写真方式での環境影響への配慮などから、マトリクス状に電極を配列し、帯電器を使用しない方式の画像形成装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。特許文献1では、画素毎に設けた薄膜トランジスタ(TFT)をマトリクス状に形成すると共に蓄積容量を夫々のTFTに設け、蓄積容量での電荷蓄積効果により安定した現像を行うようにした方式の画像形成装置が提案されている。また、特許文献2では、スイッチング素子をマトリクス状に構成し、レーザ照射することで、画素毎に発生する表面電位を変化させるようにした方式の画像形成装置が提案されている。更に、特許文献3では、マトリクス状に配列したスイッチング素子毎に二層分割された蓄積容量を持たせ、画像部/非画像部の電位を調整した構成が提案されている。そして、特許文献4では、マトリクス状に配列したスイッチング素子を使って画素毎の潜像を形成する方式の画像形成装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3233463号公報(実施例、図4)
【特許文献2】特開2002−326382号公報(実施の形態1、図1)
【特許文献3】特開2003−32440号公報(発明の実施の形態、図1)
【特許文献4】特開2004−219635号公報(実施の形態1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性を向上し、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐ像保持体及びこの像保持体を用いた画像形成装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体であって、移動可能な支持体と、この支持体上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極と、この画素電極表面及び画素電極間を保護する保護層とを備え、保護層は、画素電極間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層と、この絶縁層の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層とを有する像保持体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、前記疎水性表面層は、前記絶縁層表面に撥水剤を塗布することで形成するようにした像保持体である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、更に、前記疎水性表面層への水分の付着を防ぐための加熱手段を備える像保持体である。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る像保持体を製造するに際し、前記疎水性表面層は、前記絶縁層の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものである像保持体である。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る像保持体のうち、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様において、前記絶縁層はCVD法におけるシランガスと窒素ガスとの所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、前記疎水性表面層は前記絶縁層上に絶縁層より水素の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス中でプラズマ処理した像保持体である。
請求項6に係る発明は、請求項1に係る像保持体において、前記疎水性表面層は、前記絶縁層上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素中でプラズマ処理した像保持体である。
【0009】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備えた画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに係る像保持体と、前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、前記画素電極夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段とを備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、疎水性表面層の形成が容易になされるようになる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、疎水性表面層に付着する親水性官能基や水分を加熱により積極的に除去することができるようになり、環境安定性が更に向上する。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、絶縁層の表面層から酸素や水素を減少させることができ、疎水性能を向上させた疎水性表面層を形成できる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、絶縁層形成後にそのまま連続して疎水性表面層を形成できるようになり、また、最終の窒素ガス中でのプラズマ処理が容易になされるようになり、高い撥水性の膜が容易に得られるようになる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しないものに比べ、有機皮膜での高い撥水性が得られるようになる。
【0012】
請求項7に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができる画像形成装置を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、画素単位で縦横に配列された画素電極を有しトナーを保持可能な像保持体にて、環境適応性が向上され、高湿環境下においてもコントラストの低下等の画質劣化を防ぐことができ、更に、転写性能を向上させた画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要を説明する。
◎実施の形態モデルの概要
図1は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示すものである。同図において、画像形成装置は、支持体1a上に画素単位で縦横に配列された画素電極1bを有する像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、この現像手段3にて現像されたトナー像を転写媒体5に転写する転写手段4とを備えている。
【0014】
そして、このような画像形成装置に用いられる像保持体1の代表的モデルの一つは、潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体1であって、移動可能な支持体1aと、この支持体1a上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極1bと、この画素電極1b表面及び画素電極1b間を保護する保護層6とを備え、保護層6は、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層7と、この絶縁層7の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層8とを有するものとなっている。
【0015】
ここで、画素電極1bは支持体1a上に形成されるものであり、支持体1aとしては、その形状は特に限定されないが、画像形成装置を小型化する観点からすれば、回転可能な態様が好適である。また、画素電極1bは、画素単位で縦横に配列されていればよく、画素電極1bの数量は特に限定されないが、通常の画像が形成できる解像度を実現できる程度になっていることが好ましい。
【0016】
また、現像手段3は潜像形成手段2にて像保持体1上に形成された潜像をトナーにて現像できるものであればよく、使用されるトナーも特に制限されるものではなく、絶縁性トナーや導電性トナーを用いるようにすればよい。更に、転写手段4の転写方式は、コロトロン等の像保持体1に非接触なタイプであってもよいし、転写ロール等の接触するタイプであってもよいが、転写動作を安定化させる観点からすれば、転写ロールを使用することが好適である。そして、転写手段4によって像保持体1上のトナー像が転写される転写媒体5としては中間転写体の態様であってもよいし、記録材の態様であっても差し支えない。
【0017】
そして、保護層6としては、画素電極1b及び画素電極1b間を保護するものであり、このとき、画素電極1bに印加される潜像電圧が漏洩しないような絶縁性機能と、保護層6表面への親水性官能基や水分の付着を抑える疎水性機能とを有する。
ここで、保護層6としては、画素電極1b間の狭小さから考えると、高耐圧の絶縁性が必要となる。一方、保護層6表面に着目すると、表面に親水性官能基や水分の付着があると、画素電極1bの潜像電圧が、特に、隣り合う画素電極1b間で相互に影響し合い、画素電極1bの潜像電圧による潜像パターンが不明瞭となる。したがって、保護層6としては、画素電極1bに接する深部側での絶縁性機能と表面側での疎水性機能との両者が必要となる。
【0018】
このような保護層6を一層で構成しようとすると、上述した二つの機能を持った保護層6が必要となるが、疎水性が良好な例えば撥水剤を適用しようとすると、絶縁性が不足したり、絶縁性の高い例えば無機の絶縁膜を用いると表面の疎水性が不足するようになる。そこで、本件発明者らは、二つの機能を二つの層構成に夫々分離させ、絶縁性を確保する層と疎水性を確保する層とに機能分離することを考慮することで、本願を案出するに至ったものである。
【0019】
そのため、絶縁層7としては、画素電極1b間に最大潜像電圧に相当する電圧を作用させたときに画素電極1b間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなるものを用いるようにして、絶縁性を確保するようにした。このとき、絶縁層7としては、酸化シリコンSiOx(好ましくはSiO2)、酸化タンタルTaOx(好ましくはTa2O5)、窒化シリコンSiNx(好ましくはSi3N4)のうちいずれかで構成される。
【0020】
また、疎水性表面層8としては、水の接触角が80度以上であれば、十分疎水性能を発揮できるようになる。尚、疎水性表面層8は、絶縁層7より耐圧が低くても差し支えないが、画素電極1b間の潜像電圧の影響を防ぐには、画素電極1b間での潜像電圧が互いに影響しない程度の絶縁性を備えていることが必要である。尚、水の接触角は、疎水性表面層8が形成された後、安定した膜質においての状態であることは云うまでもない。
【0021】
ここで、疎水性表面層8としては、水の接触角が80度以上となるものであればその成膜方法は特に限定されず、絶縁層7上に例えば撥水剤を塗布するようにしてもよいし、無機物で形成された絶縁層7表面にプラズマ処理等の各種処理を施して、表面を疎水化させるようにしても差し支えない。このように、像保持体1の表面が水の接触角が80度以上の表面になるようにすることで、像保持体1が適用されるべき高湿環境下においても、像保持体1表面に対する親水性官能基や水分の付着を抑え、夫々の画素電極1bに印加された潜像電圧を安定的に保つことが可能になり、潜像のコントラストの低下を防ぐことができるようになる。一方、像保持体1表面の水の接触角が80度を下回るような場合には、特に、高湿環境下での像保持体1表面に対する親水性官能基や水分の付着が増加し、これによる隣り合う画素電極1b間での電位の漏洩が生じ、潜像のコントラストが低下することによる像流れ(deletion)等の画質劣化が発生するようになる。
【0022】
更に、このような疎水性表面層8を容易に得られるようにする観点から、疎水性表面層8は、絶縁層7表面に撥水剤を塗布したものとすることが好ましい。この場合、撥水剤としては、一般的に知られるポリイミド等の疎水性高分子、メチル基やフッ素基等の疎水性官能基を有するもの、あるいは、疎水性シリカ化合物などを用いるようにすればよい。また、このとき、例えばシランカップリング剤等の表面処理剤を下地表面に塗布し撥水剤との密着性を向上させるようにしても差し支えない。
【0023】
このような態様において、更に、疎水性表面層8の疎水性を向上させる観点から、疎水性表面層8は、絶縁層7の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものとすることが好ましい。これによれば、例えばシランガスを用いたCVD法による成膜時に、形成される絶縁層7の表面層から酸素(O)や水素(H)を減少させることができ、表面層に酸素や水素の含有量が多いものに比べ、表面への親水性官能基や水分の付着を抑えることができるようになる。
【0024】
また、絶縁層7と疎水性表面層8とを連続して容易に形成する観点からすれば、絶縁層7として窒化シリコンを用いる態様において、絶縁層7はCVD法におけるシランガス(SiH4)と窒素ガス(N2)との所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、疎水性表面層8は絶縁層7上に絶縁層7より水素(H)の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス(N2)中でプラズマ処理することが好ましい。これによれば、絶縁層7の成膜速度も大きくなり、高耐圧の絶縁層7が容易に形成されるようになると共に、疎水性表面層8の成膜もそのまま容易になされ、更に、窒素ガス(N2)中でのプラズマ処理に際しても短時間でなされるようになる。
【0025】
更に、疎水性を有機皮膜で構成する観点からすれば、疎水性表面層8は、絶縁層7上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理することが好ましい。これにより、絶縁膜表面を例えばフッ素ラジカルによる改質を行うことができ、改質前に比べ、親水性官能基や水分の付着を抑えることができるようになる。
【0026】
そして、本実施の形態モデルでは、保護層6のうち、絶縁層7の耐圧としては、例えば画素電極1b間の距離を1μmとしたときに電位差100Vが保持できる程度の絶縁性を要するものとし、安定係数を5として算出すると、5MV/cm以上であることが好ましい。一方、疎水性表面層8としては、現像時の画素電極1b間での相互の電圧の影響を防ぐことからすれば、1MV/cm以上あることが好ましい。
【0027】
また、疎水性表面層8に付着する親水性官能基や水分を積極的に除去して疎水性能を維持する観点からすれば、疎水性表面層8への水分の付着を防ぐための加熱手段を備えることが好ましい。このとき、加熱手段としては、疎水性表面層8が加熱できればその設置場所は特に限定されず、画素電極1bと同様の製造プロセスでヒータ素子(加熱手段に相当)を成膜して形成するようにしてもよいし、像保持体1が回転体の態様の場合には支持体1aの内部にヒータ(加熱手段に相当)を設けるようにしてもよい。また、像保持体1が平板の態様においては、画素電極1bの裏面側に設けるようにしてもよい。更には、像保持体1が回転体又は平板のいずれの態様にあっても、像保持体1の表面近傍にヒータ(加熱手段に相当)を備えるようにしても差し支えない。ここで、このような加熱手段による加熱は、像保持体1が稼働中に行うようにしてもよいが、像保持体1上に付着するトナーへの影響を抑える観点からすれば、像保持体1が非稼働中のとき、つまり、例えば装置のウォーミングアップ時等に加熱手段を作動させることが好ましい。更には、環境条件を検知する環境検知手段を備え、この環境検知手段による検知情報に基づいて加熱手段を適宜作動させるようにしてもよい。
【0028】
尚、参考の態様としては、加熱手段による加熱を行うことを前提とすれば、水の接触角が80度を下回るような疎水性表面層8が用いられても、加熱手段により疎水性表面層8への親水性官能基や水分の付着を抑えることができ、像保持体1として良好な特性を維持する可能性がある。また、このことは、疎水性表面層8を備えずに、絶縁層7のみの場合も可能であり、水の接触角が60度程度を確保できるようになっていれば、環境安定性を確保できる可能性がある。
【0029】
また、本実施の形態モデルでの画像形成装置の他の態様としては、像保持体1と、画素電極1b夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段2と、この潜像形成手段2にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段3と、画素電極1b夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで現像手段3にて現像されたトナー像に対し転写媒体5に転写する転写電界を作用させる転写手段4とを備えるものが挙げられる。この場合、転写時にも画素電極1bに画像信号に基づいた転写電圧が印加されるようになり、画素電極1b上のトナー付着量が異なるような事態に際しても、転写媒体5へのトナーの転写を良好に行うことができるようになる。
【0030】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、上述の実施の形態モデルが適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、装置筐体10内に例えば電子写真方式にて各色成分(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK))の各色トナー像が形成される像保持体20(20a〜20d)を略垂直方向に並列配置すると共に、これらの像保持体20に対向して循環回転する転写媒体としての中間転写ベルト50を略垂直方向に架け渡し、この中間転写ベルト50上で像保持体20上の各色トナー像を多重化するようにしたものである。
【0031】
像保持体20の周囲には、像保持体20上に形成された静電潜像をトナーにて現像して可視像化する現像器41や、像保持体20上の残留トナーを清掃する清掃部材42が設けられ、また、像保持体20と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、現像された像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50に転写する転写器43が設けられている。尚、符号41aは現像器41内にて像保持体20に直接トナーを供給する現像ロールを示している。
【0032】
ここで、現像器41としては、像保持体20に形成された静電潜像に対し、像保持体20と現像器41との対向領域である現像領域にて、現像器41の現像ロール41aと像保持体20との間の現像電界により像保持体20上に静電潜像に応じたトナー付着が行われるものであり、公知の一成分現像方式あるいは二成分現像方式のいずれを用いても差し支えない。
【0033】
一方、中間転写ベルト50は、複数の張架ロール51〜53(本例では3個)に張架され、例えば張架ロール51を駆動ロールとして循環回転するようになっており、また、中間転写ベルト50の表面側には、張架ロール53と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置に二次転写器60を設け、中間転写ベルト50上で多重化された多重トナー像を後述する記録材供給部12から供給される記録材に一括転写するようになっている。尚、このとき、二次転写器60は張架ロール53をバックアップロールとして、両者の間に所定の二次転写バイアスが印加されるようになっている。
【0034】
そして、装置筐体10内の下方には、記録材を供給する記録材供給部12が設けられ、例えば供給容器13内に収容された記録材が、供給ロール14及び捌き機構15にて1枚毎に下流側の記録材搬送路16に向かって供給されるようになっている。
また、本実施の形態における記録材搬送系は次のようになっている。すなわち、記録材供給部12から記録材搬送路16に供給された記録材が、記録材搬送路16の途中に配置された位置決めロール17にて一旦位置決めされた後、所定のタイミングで下流側の二次転写器60側に搬送される。その後、二次転写器60と張架ロール53との対向部位である二次転写部位にて中間転写ベルト50上の多重トナー像が記録材に一括転写され、定着器18にてトナー像が定着された後、排出ロール19から装置筐体10の一部で構成される記録材排出受け11に排出されるようになる。尚、記録材搬送路16には、記録材を搬送するための搬送部材や案内部材(例えば搬送ロール等)が適宜設けられていることは云うまでもない。
【0035】
次に、本実施の形態の像保持体20について詳述する。
図3に示すように、本実施の形態における像保持体20は、IC製造プロセス等で用いられる薄膜形成技術を用いて多数の画素が所謂マトリクス状に配列されたマトリクスパネル30を、回転可能な支持体であるアルミ合金パイプ等からなる剛体ドラム21上に直接形成するようにしたものである。マトリクスパネル30内の画素は、例えば剛体ドラム21の回転軸方向に沿った方向をデータライン(主走査方向)とし、回転方向に沿った方向を走査ライン(副走査方向)としている。そのため、マトリクスパネル30のデータライン及び走査ラインには、各画素に接続される複数のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32が適宜数設けられ、これらのドライバ31,32への入力端子は更にまとめられて本数を少なくした段階でマトリクスパネル30の端部に接続端子として集結されている。
【0036】
剛体ドラム21は、その外周面の一部に回転軸方向に沿った開口部21aが設けられる一方、剛体ドラム21の軸方向端部には、剛体ドラム21の内周面に沿って嵌め込まれる側壁部材26を備えており、この側壁部材26の中心には、側壁部材26に対しベアリング27を介して設けられるスリップリング24が配置されている。スリップリング24は、マトリクスパネル30と外部との電気的接続を行うために設けられたもので、そのため、剛体ドラム21は固定されたスリップリング24の周囲を回転するようになっている。
【0037】
剛体ドラム21の内周面側には、図4(a)(b)に示すように、スリップリング24との電気的接続を図るために、適宜数の端子22が剛体ドラム21に固定して設けられており、これらの端子22は夫々マトリクスパネル30の接続端子(後述する)から例えばフレキシブル配線板33に形成された導電通路を介して接続されるようになっている。更に、これらの端子22には、夫々剛体ドラム21の回転軸中心方向で且つ夫々の端部が互いに離間する方向に延びる略V字状のスライダ23が接続されており、このスライダ23の凹部にスリップリング24の集電環24a部位が装着されるようになっている。そして、これらの集電環24aは、リード線25と夫々接続されている。尚、スリップリング24の集電環24a部位は、両側の絶縁環24bより径が小さくなっており、剛体ドラム21の回転によってもスライダ23がその対向する集電環24aに常時接触した状態を保つようになっている。
【0038】
次に、マトリクスパネル30から端子22への電気的接続について詳述する。図5に示すように、本実施の形態では、マトリクスパネル30の各接続端子301及び剛体ドラム21の裏面側に設けられた端子22に対応して、フレキシブル配線板33には導電通路となる導体配線331が施され、導体配線331は例えばポリイミド樹脂層等の絶縁コート層332,333によって挟まれ互いに絶縁されている。マトリクスパネル30側の接続端子301に対しては、例えば異方導電性フィルムや接着剤からなる接続層34を挟んで、フレキシブル配線板33を剛体ドラム21側に加圧加熱することで、マトリクスパネル30の接続端子301とフレキシブル配線板33の導体配線331とが接続されるようになる。
【0039】
一方、フレキシブル配線板33の導体配線331と剛体ドラム21の端子22との接続は次のようになされる。ここで、端子22は、剛体ドラム21に固定される部分が絶縁体で構成された端子基体222になっており、この端子基体222は剛体ドラム21から離れる方向に沿って広がる形状を呈している。また、この端子基体222には、導電性の端子本体221が接続して設けられ、この端子本体221の一部にスライダ23が固定されている。そのため、フレキシブル配線板33の導体配線331は、端子22の端子基体222に支持されるような形で端子本体221側に挿入(具体的には端子本体221を挟むように横から挿入)された後、端子本体221とフレキシブル配線板33の導体配線331との間でろう付けや導電性塗料によって電気的な接合部35が形成されるようになっている。
【0040】
そのため、マトリクスパネル30と外部との信号の伝達は、スリップリング24の集電環24aに対応してスリップリング24内に配線されたリード線25から、集電環24a及びスライダ23を介してマトリクスパネル30との間で行われるようになり、剛体ドラム21が回転しても、マトリクスパネル30との信号の伝達が適切に行えるようになっている。尚、剛体ドラム21の回転方法は、特に限定されず、例えば剛体ドラム21の外周面端部側を回転ロールに圧接させて回転させるようにしてもよいし、スリップリング24の挿入側とは異なる側に剛体ドラム21自体を回転させる回転軸を備えるようにしても差し支えない。尚、剛体ドラム21の開口部21aは、例えばシールテープにて塞がれており、像保持体20が回転する際の気流の抵抗を低減させると共に、現像時のトナーの影響も防ぐようになっている。
【0041】
次に、マトリクスパネル30について説明する。
本実施の形態のマトリクスパネル30は、図6(a)に示すように、縦横に画素が配列されたものであって、各画素は、図6(b)に示すように、所謂アクティブマトリクス方式に構成されており、スイッチング素子である例えばTFT(Thin Film Transistor)36、画素電極37、蓄積容量38及び配線(ソース線、ゲート線等)等が夫々形成されている。各画素及び画素間の結線は、データライン毎にTFT36のソースがまとめて結線されるソース線、走査ライン毎にTFT36のゲートがまとめて結線されるゲート線として夫々まとめられている。また、TFT36のドレインには画素電極37と蓄積容量38が並列に接続されており、蓄積容量38の一方は走査ライン毎にまとめられ、図6(c)のような等価回路を呈するように構成されている。
【0042】
マトリクスパネル30は、このように各画素を多数並べた構成のため、そのドライブ方式は次のように行われる。
つまり、マトリクスパネル30は、図7に示すように、データライン及び走査ライン毎に所定数の画素がまとめられ、TFT36のソース側がデータライン毎に夫々データ用ドライバ31へ接続される一方、TFT36のゲート側が走査ライン毎に夫々走査用ドライバ32に接続されており、データ用ドライバ31及び走査用ドライバ32は、画像形成装置内に設けられた画素電極駆動装置70によって駆動制御されるようになっている。そのため、これらのデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動することで、所定の画素に所定の電圧が印加できるようになる。データ用ドライバ31としては、例えばサンプルホールド付きのシフトレジスタ、ラッチ、バッファ等で構成され、走査用ドライバ32としては、例えばカウンタ、ラッチ、バッファ等で構成される。
【0043】
次に、マトリクスパネル30を形成するプロセスについて一画素当たりを中心に説明する。図8に示すように、本実施の形態では、剛体ドラム21上に例えばCVD法によるアモルファスシリコン膜(a-シリコン)を形成した後、酸化処理にて絶縁性の酸化シリコン下地層101とし、剛体ドラム21との絶縁性を確保する。更に、その上にa-シリコンを形成した後、エキシマレーザ等で部分アニール処理を行い、ポリシリコン層102を形成する。ポリシリコン層102に部分的なイオン注入を行って電極とのオーミックコンタクトが形成されるように高濃度層103,104を形成した後、エッチング処理にて不要な部分を取り除くことで、図中のポリシリコン層102の部分を残し、ここにトランジスタ(TFT36に相当)が形成されるようになる。
【0044】
更に表面を酸化して、酸化シリコンの高絶縁層105を形成した後、この上にゲート電極106を形成すると共にトランジスタの横に蓄積容量38の電極107を形成する。その上から全体に例えばプラズマCVD法による窒化シリコン層108を形成し、コンタクトホールを開設した後、例えばスパッタ法による導体層を形成し、トランジスタ(TFT36に相当)のソース(S)、ゲート(G)、ドレイン(D)が形成される。また、このとき、ドレイン(D)の一端側から画素電極37が形成されることで、画素電極37と電極107との間で蓄積容量38も形成されるようになる。
その後、全体表面に亘ってプラズマCVD法による窒化シリコン層(絶縁層に相当する)109が形成される。そして、本実施の形態では、この窒化シリコン層109の上に更に窒化シリコン層の形成及びプラズマCVD法による窒化処理を行い、疎水性表面層110を設けている。
【0045】
図9は、上述した工程の概略をブロック図に示したものであり、剛体ドラム21上に絶縁性下地層(本例では酸化シリコンを使用)を形成し、その上にTFT36を形成する。その後、窒化シリコン第一層を形成(配線を行うための下地絶縁層)した後、画素電極37を形成する。その上から、窒化シリコン第二層(絶縁層に相当する)を形成した後、この窒化シリコン第二層表面に疎水性表面層110を形成するようにしている。尚、成膜方法や各種レイアウトはこれに限られず、適宜選定するようにすればよい。
【0046】
図10は、本実施の形態における窒化シリコン層(絶縁層に相当)109や疎水性表面層110を形成するための窒化処理等が行われるプラズマCVD法の概略図を示したもので、内部に電極122(122a,122b)が設けられた反応容器121の中に試料が置かれ、電極122間に高周波電力が印加されることでプラズマが発生できるようになっている。また、反応容器121には、内部のガス雰囲気を調整するための、バルブ123,124が設けられ、入口側のバルブ123には、流量計126,128を介して夫々ガスボンベ125,127が接続されている。ここでは、窒化シリコン膜を形成するための原料ガスとして、モノシラン(SiH4)と窒素ガス(N2)のガスボンベ125,127が接続されている。
【0047】
本実施の形態における窒化シリコン層109は、図11に示すように、原料ガスをモノシラン(SiH4)と窒素ガス(N2)とし、その混合比率を当初SiH4/N2=0.2で行い、500Wの電力を用いプラズマを発生させながら試料上に成膜した。
更に、窒化シリコン層109を形成した後、試料をそのまま反応容器121内に残したまま、混合比率を0.05に切り替え、窒素量を増加させるようにして、窒化シリコン層を形成した後、流量計128側のバルブのみを開栓し、流量600sccm、パワー500W、試料温度210℃の条件で1時間窒素プラズマ処理を行い、疎水性表面層110(図8参照)の形成を行った。
【0048】
窒化シリコン層109と疎水性表面層110との間では、当初窒素量を減らした状態(混合比率0.2)でCVDを行うことで、膜中の水素は多くなるが、電気的特性に優れ、かつ、成膜速度も大きいことから好適な絶縁性を有する成膜がなされるようになる。しかしながら、このままでは、表面活性度がやや高く、酸化され易く、例えば高湿環境中では水分の付着等を来すようになる。そこで、窒素量を増やした状態(混合比率0.05)でCVDを行うことで、膜中の水素含有量を減らして窒素含有量を増やすことができ、よりストイキオメトリ(化学量論比)に近い組成の成膜がなされ、表面への水分がより付着し難い方向に変化させることができるようになる。そこで、このようにして疎水性表面層110の下地層を形成し、更にプラズマ処理を行うことで疎水性表面層110を完成させた。尚、混合比率を0.05より小さくすると、窒素が過剰になり過ぎ、成膜される窒化シリコンの安定性が損なわれ、剥離等の不具合を生じるようになる。
【0049】
本実施の形態では、このように成膜した絶縁層としての窒化シリコン層109に対し、更に、窒素含有量を増やした窒化シリコン層を形成し、その表面に窒素プラズマ処理を行うことで、絶縁層(窒化シリコン層109)の表面に形成された窒化シリコン層の表面層にて窒素の修飾が更になされ、表面層の改質が行われることで活性度が更に低下するようになる。そのため、より一層水分の付着等を抑えることができるようになる。つまり、この窒素プラズマ処理がなされることで、窒化シリコン層が良好な疎水性表面層110に改質されたものとなる。ここで、疎水性表面層110としては、絶縁層としての窒化シリコン層109ほど絶縁性が必要ではないものの、ある程度の絶縁性が必要となることは云うまでもない。つまり、絶縁性が小さ過ぎると、疎水性表面層110にて画素電極37のパターンが実質的に拡がったものとなり、例えば現像時に現像ロール41a(図2参照)と画素電極37との間で画素電極37の電位による電界が、疎水性表面層110上では拡がるようになり、画質のシャープさが低減するようにもなる。
【0050】
一方、画素電極駆動装置70は、図11に示すように、画像信号に基づく電圧信号や制御信号をマトリクスパネル30のデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32に伝達するようになっている。そのため、画素電極駆動装置70内には、画像信号から少なくとも一画像分の画像データを記憶するメモリ部71、画像信号に基づく潜像電圧を制御する潜像制御部72、潜像制御部72に各種の潜像電圧を供給可能な潜像電圧用電源76及び各種のタイミング制御を行うタイミング制御部77で構成されている。また、潜像制御部72は、メモリ部71からの画像データを階調変換する階調変換部73と、階調変換されたデータから画素電極37毎の潜像電圧レベルを決定するための潜像制御信号を生成する潜像制御信号生成部74及び潜像制御信号生成部74にて生成された潜像制御信号に基づいて具体的な潜像電圧を設定する潜像電圧設定部75にて構成されている。
【0051】
そして、画像信号や制御信号が画素電極駆動装置70に入力されることで、画素電極駆動装置70がデータ用ドライバ31及び走査用ドライバ32を駆動し、これらのデータ用ドライバ31や走査用ドライバ32が駆動されることで、画素電極37夫々に画像信号に基づいた潜像電圧が印加されるようになる。
【0052】
本実施の形態では、画素電極37に印加される潜像電圧が画像信号から階調変換部73を介した画像データによって算出されるようになっているため、潜像電圧を単なる二値化ではなく、それ以上の多値化が可能になり、画像濃度に合わせた潜像電圧を印加することができるようになる。このことを、図12に基づいて説明する。今、画像信号(画像データ)の濃度に対し、例えば3段階の閾値(図中、A,B,Cで示す)を設け、C以下であれば電圧を0とし、Cを超えB以下であればV/3、Bを超えA以下であれば2V/3、Aを超えればVとするようにすれば、4階調の潜像が形成されるようになる。
【0053】
次に、このように、4段階に分類された画像データを画素電極37に印加するための方式について図13を基に説明する。今、階調変換された信号が、図13(a)のような信号であり、データラインの主走査方向に沿って「…a,b,c,d…」、次の主走査方向に「…b,a,d,c…」の画像が得られたものとすると、潜像制御信号生成部74では、例えば図13(b)に示すように、a,b,c,dに合わせて二値化されたデータを生成する。つまり、「…00011011……01001110…」のようなデータ信号が生成される。そして、この生成信号から、潜像電圧設定部75では、「00」〜「11」までに対応する電圧を潜像電圧用電源76から夫々選択することで、4段階の潜像電圧波形が設定される。このように設定された潜像電圧波形をデータ用ドライバ31に伝達し、走査用ドライバ32にタイミング制御用の制御信号を伝達することで、図13(c)に示すように、画素電極37毎に濃度の異なる画像が形成されるようになる。
【0054】
このように、画素電極37に印加される潜像電圧を階調変換したものとすることで、現像により画素電極37上に付着するトナー量を変化させることができ、より画質のよい画像を形成することができるようになる。
ここで、階調数については特に限定されず、実用上問題ない範囲であればよく、また、階調を行わずに単に二値化された潜像電圧とするようにしてもよいことは云うまでもない。更に、ここでは、画像信号に基づく潜像電圧を印加する方法としてアクティブマトリクス方式で用いられる階調方式、すなわち、電圧振幅を所定の階調数とした電圧階調方式を示したが、例えばフレームレートで階調表示を行うフレームレート階調方式を用いるようにしてもよいことは云うまでもない。
【0055】
一方、このように画素電極37に潜像電圧を印加するには、画素電極37毎にTFT36のON/OFF制御を行う必要がある。図6(c)に示したごとく、画素電極37を動作させるには、TFT36の走査ライン側に接続されたゲート(ゲート線)にON電圧を印加すると、TFT36のソース−ドレイン間が導通状態となり、ソース電圧と等価になるまで蓄積容量38が充電される。この充電された電荷によって潜像電圧が形成されることで、静電潜像が形作られる。また、その状態でゲート(ゲート線)にOFF電圧が印加され、ソース−ドレイン間が遮断されても蓄積容量38の蓄積効果によって潜像電圧はそのまま保持されるため、以降にソース電圧が変化してもゲート(ゲート線)にON電圧が印加されない限り潜像電圧はそのまま保持された状態を保つ。
【0056】
そのため、各画素のTFT36のソース側へ像濃度に相当する信号電圧を印加すると共に、ゲート側へON電圧を印加することにより、データライン1ライン分の静電潜像が形成されるようになる。そして、ON電圧を印加するゲート線を像保持体20の回転方向と逆方向に順次移動(走査)させ、データラインに新たな信号電圧を印加することにより、二次元の潜像が形成されるようになる。
【0057】
このような画素電極37での潜像電圧を安定的に維持するには、蓄積容量38の安定化もさることながら、画素電極37やTFT36表面の疎水性能が重要な要因となる。仮に、像保持体20の表面の疎水性能が不足すると、大気中の水分が像保持体20の表面に付着し易くなり、画素電極37間での電荷漏洩が生じたり、TFT36自体の動作が不安定になったりするようになり、画素電極37上の電荷の減衰が生じ、結果的に潜像電圧の減衰が生じ、画像のコントラストが低下するようになる。
【0058】
そこで、本件発明者らは、先ず、電子写真技術にて使用される感光体表面について、表面の水の接触角と得られる画像との関係を調査したところ、感光体表面の水の接触角が80度を下回ると、像流れ(deletion)が発生することが判明した。このことは、本実施の形態の像保持体20においても同様で、像保持体20としては水の接触角が80度以上となるような表面を有する必要がある。一方、画素電極37相互の絶縁性を保つには、画素電極37間の絶縁性能が重要であり、距離1μmに対して電位差100Vが保持され、かつ、安定係数を5として算出すると、5MV/cm以上の絶縁耐圧が必要となる。
【0059】
したがって、本実施の形態における像保持体20は、十分な絶縁性能と十分な疎水性能の両方の機能が必要となる。しかしながら、両方の機能を同時にまかなう膜質を実現することは困難であることから、本実施の形態では、両者の機能を分離し、絶縁性能は絶縁層で確保し、疎水性能は疎水性表面層で確保するようにした。
本実施の形態では、絶縁層として窒化シリコン層109を用い、疎水性表面層110として、絶縁層と組成比の異なる窒化シリコン層を用い、更に表面に窒素中のプラズマ処理を施すようにしたので、絶縁性機能及び疎水性機能の両方の機能共に十分な像保持体20を形成することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、像保持体20としてマトリクス状に画素電極37と、画素電極37へ印加される電圧を切り替える切替回路とを設け、画素電極37及び切替回路を覆う絶縁層としての窒化シリコン層109と、この窒化シリコン層109上に疎水性表面層110を設けたので、コントラストを低下させることなく、シャープな画像を形成することができるようになる。また、各画素電極37へ画像信号に基づく電圧を印加するようにしたので、画素の位置及び形状はそのまま画素電極37の位置及び形状になり、更に、潜像電圧は画素電極37への印加電圧で決まるため、画素の位置、形状及び電位が一義的に決定され、濃度むら、色むら、すじ等の画像欠陥の発生が抑えられた高画質画像が得られるようになる。
そして、このような方式では帯電器を使用しないことから、帯電器自身がトナーに汚染されて帯電不良を起こしたり、帯電器から発生する放電生成物が像保持体20表面を変質させたり、また、放電生成物により清掃性能を低下させたりすることがない。
【0061】
また、本実施の形態では、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様を示したが、酸化シリコン、酸化タンタルを用いるようにしても同様の絶縁性を確保することができるようになるが、これに対して、絶縁層として例えば疎水性の有機絶縁体を用いるようにすると、疎水性は良好なものが得られるものの、像保持体20としての絶縁性を十分確保することが困難となる。
また、窒化シリコン層109を形成する際、CVD法に用いるガスとして窒素ガスを用いるようにしたが、モノシランとアンモニアガス(NH3)を用いるようにしてもよく、この場合、窒素ガスを用いるものに比べ、膜中の水素の取り込みがやや多くなり、密度が小さくなるものの電気的特性が良好となる点に注意を払えばよい。このことは、窒素ガスに比べ、アンモニアガスの方がプラズマ中でより分解され易いことによる。
更に、疎水性表面層110としては、絶縁層の上に、四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理を行い、フッ素樹脂膜を形成するようにしてもよい。
【0062】
そして、上述した本実施の形態では、疎水性表面層110として窒化シリコン層の表面をプラズマ処理する態様を示したが、図14に示すように、疎水性表面層110’(110に相当)として十分な疎水性の機能のみを有する撥水剤を塗布することも可能である。このような疎水性表面層110’としては、ポリイミド樹脂などの疎水性高分子材料や、メチル基やフッ素基などの疎水性官能基を有する高分子材料が挙げられ、水の接触角が80度以上のものであればよい。また、このような疎水性表面層110’を塗布する際、下地との密着性を上げるためにシランカップリング剤などの表面処理剤を用いるようにしてもよい。
【0063】
更には、これらの表面に微細な凹凸構造を形成するようにすれば、表面に付着する水滴をより球形にする効果があり、水の接触角を大きくすることが可能になる。このような表面改質としては、例えばポリプロピレン樹脂等の高分子膜表面を四フッ化炭素(CF4)中でプラズマ処理を行うようにすればよい。
このように、像保持体20として必要な絶縁性機能と疎水性機能を機能分離し、絶縁性は絶縁耐圧の高い無機物(窒化シリコン等)によって行い、最表面の疎水性は高分子材料からなる疎水性表面層110’によって行うものとすることができる。しかしながら、この場合、画素電極37上の絶縁層及び疎水性表面層110’のトータル膜厚が厚くなることから、画素電極37に印加する潜像電圧として疎水性表面層が薄いものより大きな電圧を印加することが必要になる。
【0064】
本実施の形態では、像保持体20から中間転写ベルト50への転写を行う画像形成装置を示したが、これに限られず、像保持体20から直接記録材上に転写するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、画素毎に蓄積容量38を備える方式を示したが、像保持体20と現像器41との対向領域の近傍で、画素電極37に書き込む(ゲート側にON電圧を印加する)ようにすれば、蓄積容量38を備えていない場合でもTFT36自体の容量を利用することでトナー像を形成することは可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、像保持体20の数量を4個としたフルカラーの対応を示したが、像保持体20の数量はこれに限られず、例えば特色トナーや、透明トナーを適用するものを追加するようにしても差し支えない。更には、本実施の形態ではカラー対応の画像形成装置を説明したが、モノクロ対応の画像形成装置であってもよいことは云うまでもない。そして、本実施の形態では像保持体20を回転させる方式としたが、像保持体20を平板状に設け、像保持体20と現像器41あるいは転写器43の少なくとも一方を移動させるようにしてもよく、像保持体20が回転体の場合に比較して画像形成を繰り返す速度は低減される可能性があるものの、回転体と同様の画像を形成することができるようになる。尚、この場合、清掃部材42も現像器41あるいは転写器43同様、移動させるようにすればよい。
【0066】
更に、本実施の形態では、画素電極37に潜像電圧を印加し、転写時には転写器43と像保持体20との間に転写電界を作用させる態様を示したが、転写時にも画素電極37夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加し、転写器43と画素電極37との間の電界作用によって像保持体20上のトナー像を中間転写ベルト50(転写媒体に相当)に転写するようにすることも可能である。
図15は、このような転写を行う際の画素電極駆動装置70’を示したもので、図11に示す画素電極駆動装置70と略同様の構成であるが、画素電極37へ転写電圧を印加するための転写制御部82や、転写制御部82への転写用電圧を供給する転写電圧用電源86を備える点、潜像制御部72又は転写制御部82からの信号のうち、いずれか一方の信号をデータ用ドライバ31へ伝達するように切り替える切替部88を備える点が異なる。
【0067】
ここでは、潜像制御部72は、図11と同様の構成であるため、ここではその説明を省略し、主として転写制御部82について説明する。
この転写制御部82は、メモリ部71からの画像データに基づいて画素電極37毎の転写電圧レベルを決定するための転写制御信号生成部84と、この転写制御信号生成部84にて生成された転写制御信号に基づいて具体的な転写電圧を設定する転写電圧設定部85にて構成されている。そして、この転写電圧設定部85は、各種の転写電圧を供給可能な転写電圧用電源86から所定の電圧を設定できるようになっている。
【0068】
そのため、本例においては、画像信号や制御信号が画素電極駆動装置70’に入力されることで、像保持体20に対する現像や転写のタイミングに対応して、画素電極37に潜像電圧あるいは転写電圧が印加されるようになる。
【0069】
特に、転写時に画素電極37へ画像信号に基づいた転写電圧を印加することで、転写前に画素電極37に付着しているトナー量に合った転写電界を画素電極37と転写器43(図2参照)の間に作用させることができ、良好なトナーの転写性を確保することができるようになり、画質を更に向上させることができるようになる。
【0070】
◎実施の形態2
図16は、画像形成装置に用いられる実施の形態2の像保持体の一画素当たりの概略構成を示すもので、実施の形態1の構成(図8参照)と略同様に構成されるが、窒化シリコン層109の表面に例えば画素電極37部分を回避して設けられる加熱手段としてのヒータ層130を備えた点が実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施の形態では、ヒータ層130として窒化シリコン層109上に例えばニッケル/クロムをスパッタリングで成膜し、所定のパターンにエッチングする。その上から再度窒化シリコンを形成し、表面をプラズマ処理することで疎水性表面層110を形成する。
このようにヒータ層130を設け、適宜ヒータ層130に通電を行うことで、ヒータ層130による発熱によって疎水性表面層110が暖められ、疎水性表面層110に付着する親水性官能基や水分の除去を行うことができるようになる。更には、環境センサを設け、この環境センサで高湿条件となっている場合にヒータ層130に通電を行い、加熱するようにしてもよい。
【0072】
本実施の形態では、疎水性表面層110の疎水性能を積極的に維持することができ、高湿環境下でも一層安定した潜像を形成することができるようになる。
【0073】
本実施の形態では、ヒータ層130を窒化シリコン層109上に設ける態様を示したが、ヒータ層130を画素電極37の下層側に設けるようにしても差し支えない。ただし、この場合、蓄積容量38の形成を損なわないようにヒータ層130が設けられることは云うまでもない。また、ヒータ層130として、ニッケル/クロムを用いる態様を示したが、薄膜技術で使用される抵抗材料であれば、例えば導体を細線化して用いるようにしても差し支えない。
【0074】
また、マトリクスパネル30内にこのようなヒータ層130を用いる代わりに、加熱手段を像保持体20の剛体ドラム21中に設け、像保持体20内部から疎水性表面層110を加熱するようにしてもよいし、像保持体20の外部に例えばランプヒータ等の加熱部を設け、像保持体20の外部から疎水性表面層110を加熱するようにしてもよい。
図17は、像保持体20の内部に加熱手段を備えた態様を示すもので、加熱手段として像保持体20の剛体ドラム21中に略同心円状に複数(本例では10本)の棒状ヒータ131を備えるようにしたものとなっている。尚、剛体ドラム21と棒状ヒータ131とは絶縁されていることは云うまでもなく、また、棒状ヒータ131への通電は、スリップリング24(図3,4参照)を介して行うようにしてもよいし、棒状ヒータ131の両端側に、夫々、電極としてスライド片を設け、このスライド片が外部に設けられたドーナツ型の固定電極を常時スライドするようにして、像保持体20の回転時にも安定して棒状ヒータ131へ通電できるようにしてもよい。
【0075】
また、このような加熱手段を、清掃部材42(図2参照)内に設け、清掃部材42を介して像保持体20を加熱するようにしてもよい。
更に、加熱手段の代わりに、像保持体20表面に風を吹き付ける方法を採ることもできるが、この場合、画素電極37上に現像によってトナー像が付着していないタイミングで風を送るようにすればよい。
【0076】
◎実施の形態3
図18は、実施の形態3の画像形成装置の概略構成を示す。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置と異なり、一つの像保持体の周りに複数の現像器410を設けたものとなっている。
【0077】
すなわち、実施の形態1の像保持体20と同様に、本実施の形態の像保持体200にもマトリクス状に構成された画素電極群が形成され、画素電極に画像信号に基づいた信号電圧を印加することで静電潜像が形成できるようになっている。この像保持体200の周囲には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の各色に対応した現像器410(410a〜410d)が配設され、像保持体200に形成された静電潜像を各現像器410で順次現像して像保持体200上に多重化されたトナー像を形成するようになっている。また、像保持体200の周囲には、現像器410dと現像器410aとの間に像保持体200上に形成されたトナー像を記録材上に転写する転写器430が設けられ、更に、この転写器430と現像器410aとの間には清掃部材420が設けられている。
【0078】
このような画像形成装置では、先ず、現像器410aの現像領域に達するまでに、像保持体200にはイエローの画像信号に基づいた潜像が形成される。像保持体200上のこの静電潜像を現像器410aにて現像した後に、次の現像器410bの現像領域に達するまでに、マゼンタの画像信号に基づいた潜像が形成されて、現像器410bにて現像される。同様にして、シアン及びブラックの潜像が形成されて現像され、結果的に、現像器410dを通過した像保持体200上には、各色トナー像が多重化されたトナー像が形成されるようになる。
【0079】
ここで、良好な多重化を行うには、例えば二番目の現像器410bで現像する際、像保持体200側の画素電極では、一番目の潜像電圧が重畳された電圧とすることがよく、以降も三番目には一番目と二番目の潜像電圧を重畳し、四番目には一番目から三番目までの潜像電圧を重畳するようにする。このことで、夫々の現像時には像保持体200側に既存のトナーと、現像器410側のトナーとに加わる電界強度を略等しくすることができ、像保持体200側に十分トナーを付着させることができるようになり、良好な多重化がなされるようになる。そして、像保持体200上で多重化されたトナー像は、像保持体200と転写器430とが対向する転写部位にて、記録材上に一括転写される。
【0080】
このように、像保持体200上で各色トナー像を多重化する方式は、構成部品を少なくすることができ、また、小型化や低コスト化にとっても有利な方式となっている。尚、ここでは、四色の現像器410を有する画像形成装置を説明したが、現像器410の数量は特に限定されず、幾つ設けるようにしても差し支えなく、各色の配置もこれに限定されず、例えば透明色や特色を用いるようにしてもよいし、例えば同一色を複数箇所設けるようにしてもよい。
【実施例】
【0081】
◎実施例1
本実施例は、本件の像保持体における必要な疎水性能を確認するために、感光体での水の接触角と像流れとの関係について評価したものである。水(純水を使用)の接触角は、協和界面化学社製の接触角計を用いて行い、水の接触角が測定された感光体を用いて高温高湿中(例えば28℃85%RH)で画像を形成し、形成された画像を目視評価することで像流れ状況を確認した。
結果は、図19に示すように、水の接触角が80度を下回る場合には像流れが発生することが確認され、このことから、水の接触角は80度以上必要であることが判明した。ここで、評価には感光体を用いたが、画素電極を有する像保持体でも同様であることから、表面での水の接触角が80度以上の像保持体を用いれば、像流れの懸念が解消されることが確認された。
【0082】
◎実施例2
本実施例は、絶縁耐圧の高い絶縁層として用いられる酸化シリコン(SiOx:好ましくはSiO2)、酸化タンタル(TaOx:好ましくはTa2O5)、窒化シリコン(SiNx:好ましくはSi3N4)の水の接触角を測定したもので、酸化シリコン及び窒化シリコンは石英ガラス基板上にCVD法にて作製し、一方、酸化タンタルは酸素を含むガス雰囲気中で酸化タンタルのターゲットを用いてスパッタリングで作製した。
水の接触角の測定結果は、図20に示すように、酸化シリコンが43度、酸化タンタルが65度、窒化シリコンが51度であった。したがって、このままでは、良好な疎水性表面層ではないことが判明した。
【0083】
◎実施例3
本実施例は、窒化シリコンを作製する際、SiH4/N2混合比を変化させたときに成膜される窒化シリコン膜の水の接触角を測定評価したものであり、同時に、プラズマ処理されたものも加えた。
結果は、図21に示すように、混合比0.05では75度、0.1では57度、0.2では56度が得られた。また、混合比0.05で成膜した後に窒素プラズマ処理を行ったものでは、94度が得られた。
【0084】
このような像保持体の画質を調査したところ、混合比0.05では△(明確な像流れは確認されなかったが若干像流れが発生している状態)、混合比0.1や0.2では×(像流れが明確に確認される)、混合比0.05で成膜した後に窒素プラズマ処理を行ったものでは○(像流れの発生は確認されない)となった。
【0085】
本発明者らは、更に繰り返しの検討を行い、水の接触角が80度以上であれば、像流れの発生はないことを確認した。尚、水の接触角は、例えば22℃55%RHの条件にて測定した値とした。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を具現化する実施の形態モデルに係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の像保持体を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)は実施の形態1の像保持体の内部構造を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の像保持体のマトリクスパネルと像保持体裏面側の端子との接続構造を示す説明図である。
【図6】実施の形態1の画素構造を示す説明図であり、(a)は画素群、(b)は一つの画素、(c)は画素間の接続の様子を示す。
【図7】実施の形態1の像保持体のマトリクスパネル駆動方式を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の一画素当たりの構成を示す説明図である。
【図9】実施の形態1のマトリクスパネルの製造方法を示すブロック図である。
【図10】実施の形態1の絶縁層及び疎水性表面層を作製するCVD法を示す説明図である。
【図11】実施の形態1の画素電極駆動装置の機能ブロック図である。
【図12】実施の形態1における階調方式を示す説明図である。
【図13】実施の形態1の具体例として潜像電圧の作用を示す説明図であり、(a)は画像信号が階調変換された信号、(b)は潜像電圧設定のための生成信号として潜像制御信号生成部にて生成された制御信号、(c)は設定された潜像電圧が画素電極に割り当てられた様子を示す。
【図14】実施の形態1の一画素当たりの構成の変形例を示す説明図である。
【図15】実施の形態1の画素電極駆動装置の変形例の機能ブロック図である。
【図16】実施の形態2に係る一画素当たりの構成を示す説明図である。
【図17】実施の形態2の変形例としての加熱手段を備える像保持体の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態3に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図19】実施例1の結果を示すグラフである。
【図20】実施例2の結果を示すグラフである。
【図21】実施例3の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0087】
1…像保持体,1a…支持体,1b…画素電極,2…潜像形成手段,3…現像手段,4…転写手段,5…転写媒体,6…保護層,7…絶縁層,8…疎水性表面層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体であって、
移動可能な支持体と、
この支持体上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極と、
この画素電極表面及び画素電極間を保護する保護層とを備え、
保護層は、
画素電極間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層と、
この絶縁層の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層とを有することを特徴とする像保持体。
【請求項2】
請求項1記載の像保持体において、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層表面に撥水剤を塗布することで形成するようにしたことを特徴とする像保持体。
【請求項3】
請求項1記載の像保持体において、
更に、前記疎水性表面層への水分の付着を防ぐための加熱手段を備えることを特徴とする像保持体。
【請求項4】
請求項1記載の像保持体を製造するに際し、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項5】
請求項1記載の像保持体のうち、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様において、
前記絶縁層はCVD法におけるシランガスと窒素ガスとの所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、
前記疎水性表面層は前記絶縁層上に絶縁層より水素の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス中でプラズマ処理したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項6】
請求項1記載の像保持体において、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素中でプラズマ処理したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、
この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、
前記画素電極夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
潜像が形成され且つこの潜像に基づいたトナー像を保持可能な像保持体であって、
移動可能な支持体と、
この支持体上に形成され、画素単位で縦横に配列されて画像信号に基づいた潜像電圧が画素単位に印加されることで潜像が形成される多数の画素電極と、
この画素電極表面及び画素電極間を保護する保護層とを備え、
保護層は、
画素電極間に最大潜像電圧に相当する電圧が作用したときに画素電極間の絶縁性が維持される程度に高耐圧で、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化タンタルのいずれかからなる絶縁層と、
この絶縁層の表面に形成され且つ水の接触角が80度以上となる疎水性表面層とを有することを特徴とする像保持体。
【請求項2】
請求項1記載の像保持体において、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層表面に撥水剤を塗布することで形成するようにしたことを特徴とする像保持体。
【請求項3】
請求項1記載の像保持体において、
更に、前記疎水性表面層への水分の付着を防ぐための加熱手段を備えることを特徴とする像保持体。
【請求項4】
請求項1記載の像保持体を製造するに際し、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層の表面をフッ素修飾又は窒素修飾したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項5】
請求項1記載の像保持体のうち、絶縁層として窒化シリコンを用いる態様において、
前記絶縁層はCVD法におけるシランガスと窒素ガスとの所定の混合比率にて形成された窒化シリコン層であり、
前記疎水性表面層は前記絶縁層上に絶縁層より水素の含有比率が小さくなるように前記混合比率を調整して窒化シリコン層を形成し、その表面を窒素ガス中でプラズマ処理したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項6】
請求項1記載の像保持体において、
前記疎水性表面層は、前記絶縁層上に有機物からなる絶縁膜を塗布し、この絶縁膜表面を四フッ化炭素中でプラズマ処理したものであることを特徴とする像保持体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、
この現像手段にて現像されたトナー像を転写媒体に転写する転写手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の像保持体と、
前記画素電極夫々に対し画像信号に基づいた潜像電圧を印加することで潜像形成を行う潜像形成手段と、
この潜像形成手段にて形成された潜像をトナーにて現像する現像手段と、
前記画素電極夫々に画像信号に基づいた転写電圧を印加することで前記現像手段にて現像されたトナー像に対し転写媒体に転写する転写電界を作用させる転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【図2】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図18】
【図19】
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【図21】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2009−208292(P2009−208292A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51873(P2008−51873)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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