説明

優先的にヒトCSF1R細胞外ドメイン4に結合する抗体及びそれらの使用

本発明はヒトCSF−1R(抗CSF−1R抗体)に対する抗体、それらの産生のための方法、該抗体を含む薬学的組成物、及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCSF−1R(抗CSF−1R抗体)に対する抗体、それらの産生の方法、該抗体を含む薬学的組成物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトCSF−1Rレセプター(CSF−1R;コロニー刺激因子1レセプター);同義語:M−CSFレセプター;マクロファージコロニー刺激因子1レセプター、Fms癌原遺伝子、c−fms、配列番号62)は1986年から知られている(Coussens, L., et al., Nature 320 (1986) 277-280)。CSF−1Rは、増殖因子であり、c−fms癌原遺伝子でコードされる(総説は例えば、in Roth, P., and Stanley, E.R., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 181 (1992) 141-67)。
【0003】
CSF−1RはCSF−1(マクロファージコロニー刺激因子1、またはM−CSF、マクロファージコロニー刺激因子とも呼ばれる)のレセプターであり、このサイトカインの生物学的作用を媒介する(Sherr, C.J., et al., Cell 41 (1985) 665-676)。コロニー刺激因子1レセプター(CSF−1R)(またはc−fmsとも呼ばれる)のクローニングは最初にRoussel, M.F., et al., Nature 325 (1987) 549-552に記述された。その出版物において、CSF−1RがCblを結合し、それによってレセプターの下方制御を制御する阻害性チロシン969のリン酸化の消失を含む、タンパク質のC末端部の変化に依存した形質転換能を有することが示された(Lee, P.S., et al., Embo J. 18 (1999) 3616-3628)。近年、インターロイキン34(IL−34)と命名されたCSF−1Rの第二のリガンドが同定された(Lin, H., et al, Science 320 (2008) 807-811)。
【0004】
サイトカインであるCSF−1(コロニー刺激因子1、M−CSF、マクロファージとも呼ばれる)はジスルフィド結合したホモダイマーとして細胞外に見いだされる(Stanley, E.R. et al., Journal of Cellular Biochemistry 21 (1983) 151-159; Stanley, E.R. et al., Stem Cells 12 Suppl. 1 (1995) 15-24)。
【0005】
CSF−1Rシグナル伝達の主要な生物学的作用は、造血前駆細胞のマクロファージ系統(破骨細胞を含む)への分化、増殖、遊走、および生存である。CSF−1Rの活性化は、そのリガンドのCSF−1(M−CSF)およびIL−34により媒介される。CSF−1(M−CSF)のCSF−1Rへの結合は、ホモダイマーの形成及びチロシンリン酸化によるキナーゼの活性化を誘導する(Li, W. et al, EMBO Journal.10 (1991) 277-288; Stanley, E.R., et al., Mol. Reprod. Dev. 46 (1997) 4-10)。
【0006】
生物学的に活性なホモダイマーCSF−1は、CSF−1レセプターの細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)のサブドメインD1からD3内で、CSF−1Rに結合する。CSF−1R−ECDは5つの免疫グロブリン様サブドメイン(D1からD5と命名)を包含する。細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)のサブドメインのD4からD5は、CSF−1の結合に関与していない。(Wang, Z., et al Molecular and Cellular Biology 13 (1993) 5348-5359)。サブドメインD4は2量体化に関与している(Yeung, Y-G., et al Molecular & Cellular Proteomics 2 (2003) 1143-1155; Pixley, F. J., et al., Trends Cell Biol 14 (2004) 628-638)。
【0007】
更なるシグナル伝達は、PI3K/AKT経路及びRas/MAPK経路へとそれぞれ接続するPI3Kのp85サブユニット及びGrb2により媒介される。これらの2つの重要なシグナル伝達経路は、増殖、生存およびアポトーシスを調節することができる。CSF−1Rのリン酸化された細胞内ドメインを結合する他のシグナル伝達分子は、STAT1、STAT3、PLCy、及びCblを含む(Bourette, R.P. and Rohrschneider, L.R., Growth Factors 17 (2000) 155-166)。
【0008】
CSF−1Rシグナル伝達は、免疫応答、骨のリモデリング及び生殖系において生理的役割を担っている。CSF−1 (Pollard, J.W., Mol. Reprod. Dev. 46 (1997) 54-61)又はCSF−1R(Dai, X.M., et al., Blood 99 (2002) 111-120)のどちらかをノックアウトした動物は、大理石骨病表現型、造血系表現型、組織マクロファージ表現型、及び生殖表現型(それぞれの細胞型におけるCSF−1Rの役割と一致する)を有することが示されている。
【0009】
Sherr, C.J., et al., Blood 73 (1989) 1786-1793は、CSF−1活性を阻害するCSF−1Rに対する幾つかの抗体に関連している(Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793を参照)。Ashmun, R.A., et al., Blood 73 (1989) 827-837は、CSF−1R抗体に関する。Lenda, D., et al., Journal of Immunology 170 (2003) 3254-3262は、CSF−1欠損マウスにおいて、マクロファージの補充、増殖及び活性化の減少が、腎臓の炎症時の尿細管アポトーシスの減少をもたらすことに関する。Kitaura, H., et al., Journal of Dental Research 87 (2008) 396-400 は、歯の矯正移動を妨げる抗CSF−1抗体に関する。国際公開第2001/030381号は、アンチセンスヌクレオチド及び抗体を含むCSF−1活性阻害剤を述べているが、CSF−1アンチセンスヌクレオチドのみ開示している。国際公開第2004/045532号は、CSF−1による転移及び骨量減少の予防及び転移性癌の治療に関し、アンタゴニストとして抗CSF−1抗体のみ開示している。国際公開第2005/046657号は、抗CSF−1抗体による炎症性腸疾患に治療に関する。米国特許出願公開第2002/0141994号はコロニー刺激因子の阻害剤に関する。国際公開第2006/096489号は抗CSF−1抗体による関節リウマチの治療に関する。国際公開第2009/026303号及び国際公開第2009/112245号は、細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)の最初の3つのサブドメイン(D1からD3)内でCSF−1Rへ結合する所定の抗CSF−1抗体に関する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ヒトCSF−1Rへの抗体結合を含み、抗体がヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(配列番号64)に、1:50か又はそれ以下の比率で結合することを特徴とする。
【0011】
本発明は、以下を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76である;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84である;
またはそれらのヒト化型。
【0012】
本発明は、以下を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
またはそれらのヒト化型。
【0013】
一実施態様において、本発明による抗体は以下を特徴とする。
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号56である。
【0014】
本発明は、以下を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含む;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含む;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含む。
【0015】
好ましくは、本発明による抗体はヒトIgG1サブクラス又はヒトIgG4サブクラスである。
【0016】
本発明の更なる実施態様は、本発明による抗体を含む薬学的組成物である。
【0017】
本発明はCSF−1R介在性疾患の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用を更に含む。
【0018】
本発明は、癌の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用を更に含む。
【0019】
本発明は、骨量減少の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用を更に含む。
【0020】
本発明は、転移の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用を更に含む。
【0021】
本発明は、炎症性疾患の治療のための医薬の製造のための、本発明による抗体の使用を更に含む。
【0022】
本発明は、CSF−1R介在性疾患の治療のための、本発明による抗体を更に含む。
【0023】
本発明は、癌の治療のための、本発明による抗体を更に含む。
【0024】
本発明は、骨量減少の治療のための、本発明による抗体を更に含む。
【0025】
本発明は、転移の治療のための、本発明による抗体を更に含む。
【0026】
本発明は、炎症性疾患の治療のための、本発明による抗体を更に含む。
【0027】
本発明の更なる実施態様は、以下を特徴とする本発明による抗体をコードする核酸を含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含む;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含む;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含む。
【0028】
本発明の更なる実施態様は、以下を特徴とする本発明による抗体をコードする核酸を含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76である;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84である;
またはそれらのヒト化型。
【0029】
本発明の更なる実施態様は、以下を特徴とする本発明による抗体をコードする核酸を含む。
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号56である。
【0030】
本発明は、原核または真核宿主細胞中で前記核酸を発現することができる本発明による核酸を含有する発現ベクター、および本発明による抗体の組換え産生のためのそうしたベクターを含有する宿主細胞を更に提供する。
【0031】
本発明は、本発明によるベクターを含有する原核または真核宿主細胞を更に含む。
【0032】
本発明は、本発明による核酸を、原核または真核宿主細胞中で発現させ、かつ該抗体を該細胞又は細胞培養上清から回収することを特徴とする、本発明による組換えヒト抗体又はヒト化抗体の産生のための方法を更に含む。本発明は、そうした組換え法により得られた抗体を更に含む。
【0033】
本発明による抗体は、CSF−1R標的療法を必要とする患者に対して利点を示す。本発明による抗体は、リガンド非依存性およびリガンド依存性増殖に対する有効な抗増殖活性を示し、従って、癌および転移の治療において特に有効である。
【0034】
本発明は、癌に罹患した患者を治療するための方法を更に提供し、そうした疾患を有すると診断された(従ってそのような治療を必要としている)患者に、本発明による抗体の有効量を投与することを包含する。
【0035】
本発明の更なる実施態様は、癌に罹患した患者を治療するために、本発明による抗体を患者に投与することを特徴とする方法である。
【0036】
驚くべきことに、ヒトCSF−1R−ECDのD4サブドメインが欠失したヒトCSF−1R断片delD4を用いて、本発明による新たな抗CSF−1R抗体が選択され得ることが見いだされた。これらの抗体は、全長の野生型CSF−1R(配列番号62)又は、変異体CSF−1RL301S Y969F(配列番号63)(変異体CSF−1R組換え細胞はCSF−1リガンドに依存せずに球状体を形成することができる)の何れかでレトロウイルス性に感染したNIH 3T3細胞の優れたリガンド依存的な細胞増殖阻害と同時にNIH 3T3細胞のリガンド非依存的な細胞増殖阻害などの有益な性質を示す。
【0037】
更に、本発明による抗体は、ヒト及びカニクイザル(の両方の)マクロファージ分化を阻害するが、その理由はそれらがヒトの単球及びカニクイザルの単球の生存を阻害するためである。
【0038】
本発明の詳細な記述
本発明は、ヒトCSF−1Rへの抗体結合を包含し、抗体がヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3及びD5を含む)(配列番号65)及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)に、1:50か又はそれ以下の比率で結合することを特徴とする。
【0039】
本発明は、重鎖可変ドメインCDR3領域として配列番号1のCDR3領域、配列番号9、配列番号23、配列番号31、配列番号39、配列番号47、又は配列番号55を含むことを特徴とする、本発明による抗体を更に含む。
【0040】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
またはそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0041】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76である;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84である;
またはそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0042】
本発明は、重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8であり、又はそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0043】
一実施態様において、本発明による抗体は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号56であることを特徴とする。
【0044】
一実施態様において、本発明による抗体は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48であることを特徴とする。
【0045】
一実施態様において、本発明による抗体は、重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24であることを特徴とし、又は
一実施態様において、本発明による抗体は、重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32であることを特徴とする。
【0046】
一実施態様において、本発明による抗体は、重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40であることを特徴とする。
【0047】
一実施態様において、本発明による抗体は、重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48であることを特徴とする。
【0048】
本発明は、重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16であり、又はそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0049】
本発明は、重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76であり、又はそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0050】
本発明は、重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84であり、又はそれらのヒト化型を特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0051】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含むことを特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0052】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含む;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含む;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含むことを特徴とする本発明による抗体を更に含む。
【0053】
一実施態様において、本発明による抗体は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0054】
一実施態様において、本発明による抗体は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0055】
一実施態様において、本発明による抗体は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0056】
一実施態様において、本発明による抗体は、
重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0057】
一実施態様において、本発明による抗体は、
重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0058】
一実施態様において、本発明による抗体は、
重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0059】
一実施態様において、本発明による抗体は、
重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含むことを特徴とする。
【0060】
一実施態様において、抗体がヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)及びヒトCSF−1R−ECD(配列番号64)に対して1:50又はそれ以下の比率で結合することを特徴とするヒトCSF−1Rへの抗体結合が、ヒトCSF−1R断片D1−D3(配列番号66)へ結合しないことを更に特徴とする。
【0061】
用語「抗体」は、限定されないが、全抗体、抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、T細胞エピトープ枯渇抗体、及び、本発明に係る特徴的性質が維持される限り更に遺伝子的に改変された抗体を含む様々な形態の抗体を包含する。「抗体断片」は、全長抗体の一部分、好ましくはその可変ドメイン、又は少なくともその抗原結合部位を含む。抗体断片の例は、ダイアボディ、単鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。scFv抗体は、例えば、Houston, J.S., Methods in Enzymol. 203 (1991) 46-88)に記載される。加えて、抗体断片は、CSF−1Rへ結合するVドメインの特徴を有する、すなわち、Vドメインとともに機能性抗原結合部位に集合することができる単鎖ポリペプチド、又はCSF−1Rへ結合するVドメインの特徴を有する、すなわち、Vドメインとともに機能性抗原結合部位に集合することができる単鎖ポリペプチドを含み、それによって性質を与える。
【0062】
本明細書中で用いる用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を言う。
【0063】
用語「キメラ抗体」とは、通常は組換えDNA技術により調製された、マウス由来の可変領域、すなわち結合領域、及び異なる起源又は種に由来した定常領域の少なくとも一部分を含むモノクローナル抗体を言う。マウス可変領域とヒト定常領域とを含んでなるキメラ抗体が特に好ましい。そのようなラット/ヒトキメラ抗体は、ラット免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、ヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントとを含んでなる、発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明により包含される「キメラ抗体」の別の形態は、クラス又はサブクラスが元の抗体のものから修飾又は変更されているものである。そのような「キメラ抗体」は、「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体を作製する方法は、現在当該分野で良く知られた従来の組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術を含む。例えばMorrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855 ; 米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照のこと。
【0064】
用語「ヒト化抗体」は、フレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が親の免疫グロブリンのものと比較して異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含んでなるように変更されている抗体を言う。好ましい実施態様において、マウスCDRがヒト抗体のフレームワーク領域に移植されて「ヒト化抗体」を調製する。例えばRiechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327 ; Neuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270を参照のこと。場合によっては、フレームワーク領域は更なる変異により改変されうる。また、CDRは、例えば、Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327及びQueen, C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033、その他により記載されるように、分子モデリングにもとずく変異誘発により、一以上の変異により改変され、本発明による抗体を産生する。特に好ましいCDRは、キメラ抗体に関する上記の抗原を認識する配列を表わしているものに対応する。「本発明による抗体のヒト化型」(例えばマウス起源である)は、VおよびVが標準的な技術(CDR移植法、及び場合によってはフレームワーク領域及びCDRの所定のアミノ酸の後の変異誘発を含む)によりヒト化されるマウス抗体配列にもとずく抗体を言う。好ましくは、そのようなヒト化型はヒト定常領域によりキメラ化される(例えば、配列番号57−61の配列を参照)。
【0065】
本発明により包含される「ヒト化抗体」の別の形態は、本発明による性質、特にC1q結合及び/又はFcレセプター(FcR)結合に関する性質を生みだすために、定常領域がもとの抗体のものから更に改変されるか又は変更されたものである。
【0066】
以下の実施例において、用語「Mab」又は「muMab」はマウスモノクローナル抗体、例えばMab 2F11又はMab 2E10を言い、一方用語「hMab」はそうしたマウス抗体のヒト化モノクローナル型、例えば、hMab 2F11−c11、hMab 2F11−d8、hMab 2F11−e7、hMab 2F11−f12等を言う。
【0067】
本明細書で用いられる用語「ヒト抗体」は、ヒトの生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。ヒト抗体は最新技術において良く知られている(van Dijk, M.A.,及びvan de Winkel, J.G., Curr. Opin. Chem. Biol. 5 (2001) 368-374)。ヒト抗体はまた、内因性の免疫グロブリン産生が無い場合に、免疫感作時に、ヒト抗体の完全なレパートリー又は選択を産生することができる、トランスジェニック動物(例えばマウス)で作成することが可能である。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列をそうした生殖系列変異マウスへ転移すると、抗原曝露によるヒト抗体の産生をもたらし得る(例えば、Jakobovits, A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 2551-2555; Jakobovits, A., et al., Nature 362 (1993) 255-258; Brueggemann, M., et al., Year Immunol. 7 (1993) 33-40を参照)。ヒト抗体はまたファージディスプレイライブラリーで産生できる(Hoogenboom, H.R.及びWinter, G.J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J.D., et al., J. Mol. Biol. 222 (1991) 581-597)。Cole, et al., 及びBoerner他による技術はまたヒトモノクローナル抗体の調製において利用可能である(Cole, S.P.C., et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); and Boerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95)。本発明によるキメラ抗体及びヒト化抗体について既に述べたように、本発明で用いられる用語「ヒト抗体」はまた、本発明による性質、とりわけ、例えば「クラススイッチ」、すなわちFc部分の変化又は変異(例えばIgG1からIgG4及び/又はIgG1/IgG4変異)による、C1q結合及び/又はFcR結合に関する性質を生みだすために、定常領域において改変された当該抗体をも含む。
【0068】
本明細書で用いられる用語「組み換えヒト抗体」は、組み換え手段により調製、発現、作製又は単離された全てのヒト抗体を包含するものであり、例えばNS0もしくはCHO細胞のような宿主細胞から又は宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使って発現されたヒト免疫グロブリン遺伝子もしくは抗体に対してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体である。そのような組み換えヒト抗体は再配列された形で可変領域及び定常領域を有する。本発明に係る組み換えヒト抗体は、生体内体細胞超変異にされている。よって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列から誘導されそしてそれに関連する配列であり、生体内のヒト抗体生殖細胞系列レパートリーの中には天然に存在しない場合がある。
【0069】
本発明による抗体は、加えて、本発明による抗体の上述された特性に影響を及ぼさない、または変更しないヌクレオチドおよびアミノ酸配列改変である、「保存的配列改変」を有するような抗体を含む。改変は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発のような、当技術分野において公知である標準的技術によって導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と置換されるものを含む。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。このように、ヒト抗CSF−1R抗体において予想される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基と置換され得る。
【0070】
アミノ酸置換は、Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327およびQueen, C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033によって記述されるような、分子モデリングに基づく変異誘発によって行われ得る。
【0071】
ヒトCSF−1Rレセプター(CSF−1レセプター;同義語:M−CSFレセプター;マクロファージコロニー刺激因子1レセプター、Fms癌原遺伝子、c−fms、配列番号22)は、1986年から知られている(Coussens, L., et al., Nature 320 (1986) 277-280)。CSF−1Rは増殖因子であって、c−fms癌原遺伝子によりコードされる(総説は例えば、in Roth, P. and Stanley, E.R., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 181 (1992) 141-67)。
【0072】
CSF−1RはCSF−1(マクロファージコロニー刺激因子、M−CSFとも呼ばれる)及びIL−34に対するレセプターであり、これらのサイトカインの生物学的作用を媒介する(Sherr, C.J., et al., Cell 41 (1985) 665-676 (Lin, H., et al., Science 320 (2008) 807-811)。コロニー刺激因子1レセプター(c−fmsとも呼ばれる)は、最初にRoussel, M.F., et al., Nature 325 (1987) 549-552に記載された。その出版物において、CSF−1RがCblを結合し、それによってレセプターのダウンレギュレーションを制御する阻害性チロシン969のリン酸化の消失を含む、タンパク質のC末端部の変化に依存した形質転換能を有することが示された。
【0073】
CSF−1Rは単鎖の膜貫通レセプターチロシンキナーゼ(RTK)であり、免疫グロブリン(Ig)モチーフを含有PTKのファミリーの一員であり、レセプターの細胞外ドメイン(ECD)の5回反復Ig様サブドメイン、D1−D5を特徴とする(Wang, Z., et al Molecular and Cellular Biology 13 (1993) 5348-5359)。ヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(配列番号64)は、5つの細胞外Ig様サブドメイン、D1−D5を全て含む。ヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)は、細胞外Ig様サブドメイン、D1−D3及びD5を含むが、D4サブドメインが欠けている。ヒトCSF−1R断片D1−D3(配列番号66)は、各サブドメインD1−D3を含む。配列はシグナルペプチドのMGSGPGVLLL LLVATAWHGQ G(配列番号67)無しで載せられている。
【0074】
細胞内タンパク質チロシンキナーゼドメインは、血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)、幹細胞増殖因子レセプター(c−Kit)及びfins様サイトカインレセプター(FLT3)を含む、他の関連したPTKクラスIIIファミリーメンバーにも存在する、固有の挿入ドメインで中断される。この増殖因子レセプターのファミリー間の構造的相同性にもかかわらず、それらは異なった組織特異的機能を持っている。
【0075】
CSF−1Rは、単球系統の細胞、及び女性生殖器管と胎盤の細胞において主に発現される。加えて、CSF−1Rの発現は、皮膚のランゲルハンス細胞、平滑筋細胞のサブセット(Inaba, T., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 5693-5699)、B細胞(Baker, A.H., et al., Oncogene 8 (1993) 371-378)及びミクログリア(Sawada, M., et al., Brain Res. 509 (1990) 119-124)において報告されている。変異型ヒトCSF−1R(配列番号23)を持つ細胞は、リガンド刺激に非依存的に増殖することが知られている。
【0076】
本明細書で使用されるように、「ヒトCSF−1Rへの結合」又は「ヒトCSF−1Rへの特異的結合」とは、KD値が35℃で1.0x10−8mol/lか又はそれ以下である結合親和性で、一実施態様では、KD値が35℃で1.0x10−9mol/lか又はそれ以下である結合親和性で、ヒトCSF−1R抗原に特異的に結合する抗体を言う。結合親和性は、35℃で標準的な結合アッセイにより、例えば表面プラズモン共鳴法(BIAcore(登録商標)、GE−Healthcare Uppsala,Sweden)で決定される。結合親和性のKD値を決定する方法は実施例9に記載される。従って、本明細書で使用されるように、「ヒトCSF−1Rへの抗体結合」は、35℃でKDが1.0x10−8mol/l又はそれ以下(好ましくは、1.0x10−8mol/l−1.0x10−12mol/l)、好ましくは35℃でKDが1.0x10−9mol/l又はそれ以下(好ましくは、1.0x10−9mol/l−1.0x10−12mol/l)で、ヒトCSF−1R抗原に対する抗体特異的結合を言う。
【0077】
本明細書で使用される「ヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(配列番号64)への結合」は、実施例4に記載されるように表面プラズモン共鳴アッセイ(Biacore assay)により測定される。ヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)又はヒトCSF−1R細胞外ドメイン(配列番号64)は、それぞれ、表面に(別々の表面に各々は)捕獲され、(別々の測定で各々に)試験抗体が添加され、それぞれの結合シグナル(応答単位(RU))が決定された。基準シグナル(ブランク表面)が差し引かれた。試験抗体非結合のシグナルがわずかに0未満であった場合、その値は0として設定された。次いで、それぞれの結合シグナルの比率(ヒトCSF−1R断片delD4への結合シグナル(RU)/ヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合シグナル(RU))が決定される。本発明による抗体は、結合シグナル(RU(delD4)/RU(CSF−1R−ECD)が1:50又はそれ以下、好ましくは1:100かそれ以下の比率を有する(下限は0を含む(例えばRUが0であれば比率は0:50又は0:100である))。
【0078】
これは本発明によるそうした抗CSF−1R抗体はヒトCSF−1R断片delD4に結合せず(DSMZにて2004年8月18日にDSM ACC 2683として寄託された)抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5と同様に)、抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5の範囲において、ヒトCSF−1R断片delD4へ結合する結合シグナルを有することを意味し、そのシグナルは実施例4に示された表面プラスモン共鳴(BIAcore)アッセイで20RU(反応単位)未満、好ましくは10RU未満である。
【0079】
用語「ヒトCSF−1R断片D1−D3への結合」とは、表面プラスモン共鳴アッセイ(Biacore assay)による結合親和性の決定を言う。試験抗体は表面へ捕獲され、ヒトCSF−1R断片D1−D3(配列番号66)が添加され、それぞれの結合親和性が決定された。「ヒトCSF−1R断片D1−D3への非結合」とは、そうしたアッセイにおいて、検出されたシグナルがバックグランドシグナルのわずか1.2倍の領域にあり、従って、有意な結合は検出できず、結合親和性が決定できないことを意味する(実施例10)。
【0080】
本発明の一実施態様は、本発明による抗体を選択するためのスクリーニング方法であり、以下の工程を含む:
a)ヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(配列番号64)に対する抗CSF−1R抗体の結合シグナル(反応単位(RU))を表面プラスモン共鳴アッセイ(Biacore assay)により決定する。
b)結合シグナル(ヒトCSF−1R断片delD4/ヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD))の比率が50:1又はそれ以下である抗体を選択する。
【0081】
一実施態様において、その決定は25℃で実施される。
【0082】
一実施態様において、そのスクリーニング法は更なる工程として、ヒトCSF−1R断片D1−D3(配列番号66)(D1−D3)への抗CSF−1R抗体の結合を測定し、前記断片に対する結合を示さない抗体を選択することを含む。
【0083】
用語「エピトープ」は、抗体への特異的結合が可能であるタンパク質抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性を有する表面配置からなり、かつ、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的な電荷特性を有する。コンフォメーションおよび非コンフォメーションエピトープは、前者への結合は変性溶媒の存在下で失われるが、後者への結合は失われないことで識別される。好ましくは、本発明による抗体は、天然型CSF−1R及び変性CSF−1Rに結合する。
【0084】
「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(V)、重鎖の可変ドメイン(V))は、本明細書において使用されるとき、抗体を抗原に結合させることに直接関与する軽鎖および重鎖の対のそれぞれを示す。可変軽鎖および重鎖のドメインは、同一の一般的な構造を有し、および、各ドメインは、配列が広く保存され、3個の「超可変領域」(または、相補性決定領域、CDR)によって連結される、4個のフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採り、および、CDRは、βシート構造を連結するループを形成してもよい。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によって三次元構造に保持され、および、もう一方の鎖由来のCDRとともに抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖および軽鎖CDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たし、およびそのために、本発明の更なる目的を提供する。
【0085】
用語「抗体の抗原結合部分」とは、本明細書において使用されるとき、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部位は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」または「FR」領域は、本明細書において定義されるとき、超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。そのため、抗体の軽鎖および重鎖可変鎖は、N末端からC末端へ、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与し、かつ、抗体を定義する領域である。CDRおよびFR領域は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的定義、および/または「超可変ループ」由来の残基によって決定される。
【0086】
用語「核酸」又は「核酸分子」とは、本明細書において使用されるとき、DNA分子およびRNA分子を含むように意図される。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0087】
用語「アミノ酸」は、本出願にて使用される場合、天然に生じるカルボキシαアミノ酸の群を意味し、アラニン(3文字コード:ala、一文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、メチオニンイソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、(pro、P)プロリン、セリン(seer、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む。
【0088】
一実施態様において、本発明による抗体はCSF−1のCSF−1Rへの結合を阻害する。一実施態様において、IC50が200ng/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が50ng/ml又はそれ以下である。CSF−1のCSF−1Rへの結合の阻害のIC50は、実施例2に示されるように決定されうる。
【0089】
一実施態様において、本発明による抗体はCSF−1誘導性CSF−1Rリン酸化を(NIH3T3−CSF−1R組換え細胞において)阻害する。
【0090】
一実施態様において、IC50が800ng/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が600ng/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が250ng/ml又はそれ以下である。CSF−1誘導性CSF−1Rリン酸化のIC50は、実施例3に示されるように決定されうる。
【0091】
一実施態様において、本発明による抗体は、ヒトCSF−1R(配列番号62)を発現する組換えNIH3T3細胞の増殖を阻害する。一実施態様において、IC50が10μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が5μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が2μg/ml又はそれ以下である。一実施態様において、IC30が10μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC30が5μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC30が2μg/ml又はそれ以下である。IC50の値、IC30の値、又は%増殖阻害は実施例5に示されるように決定される。
【0092】
一実施態様において、本発明による抗体は、変異体CSF−1RのL301S Y969F(配列番号63)を発現する組換えNIH3T3細胞の増殖を阻害する。一実施態様において、IC50が15μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が10μg/ml又はそれ以下である。一実施態様において、IC30が10μg/ml又はそれ以下であり、一実施態様において、IC50が5μg/ml又はそれ以下であり;一実施態様において、IC50が2μg/ml又はそれ以下である。IC50の値、IC30の値又は%増殖阻害は実施例5に示されるように決定される。
【0093】
一実施態様において、本発明による抗体はBeWo腫瘍細胞(ATCC CCL−98)の増殖を65%かそれ以上(抗体濃度で10μg/ml;抗体の非存在と比較して)阻害する。%増殖阻害は実施例8に示されるように決定される。例えば、Mab 2F11は70%のBeWo腫瘍細胞の増殖阻害を示す。
【0094】
一実施態様において、本発明による抗体は、ヒト及びカニクイザルのマクロファージ分化の両方を阻害する(実施例7及び8に示すように、ヒト及びカニクイザルの単球の生存の阻害により示される)。一実施態様において、本発明による抗体は、ヒト単球の生存をIC50が0.15μg/ml又はそれ以下で阻害し、一実施態様において、IC50が0.10μg/ml又はそれ以下で阻害する。ヒト単球の生存の阻害は実施例7に示されるように決定される。一実施態様において、本発明による抗体は、カニクイザルの単球の生存を80%か又はそれ以上で、一実施態様において90%か又はそれ以上で(抗体濃度で5μg/ml;抗体の非存在と比較して)、阻害する。ヒト単球の生存の阻害は、実施例8に示されるように決定される。
【0095】
本発明の更なる実施態様は、CSF−1Rに対する抗体の産生のための方法であって、本発明によるヒトCSF−1Rへ結合するヒトIgG1クラス抗体の重鎖をコードする核酸の配列、前記修飾された核酸及び前記抗体の軽鎖をコードする核酸の配列が発現ベクターへ挿入され、該ベクターが真核生物の宿主細胞に挿入され、コードされたタンパク質が発現され、宿主細胞又はその上清から回収されることを特徴とする。
【0096】
本発明による抗体は、好ましくは組換え手法により産生される。従って、抗体は好ましくは単離されたモノクローナル抗体である。そのような組換え法は最先端で広く知られており、原核生物及び真核生物におけるタンパク質の発現と、続く抗体ポリペプチドの単離及び通常は薬学的に許容される純度への精製を伴うことを含む。タンパク質発現について、軽鎖及び重鎖またはそれらの断片をコードする核酸は、標準的な方法で発現ベクターへ挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、または大腸菌細胞など適切な原核宿主細胞または真核宿主細胞で行われ、そして抗体は細胞(上清又は溶解後の細胞)から回収される。
【0097】
抗体の組換え生産は、当技術分野では周知であり、および、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S. et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説論文において記載されている。
【0098】
抗体は、細胞全体において、細胞溶解物において、または、部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態において存在し得る。他の細胞成分または他の夾雑物、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質を除去するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野において周知である他のものを含む標準的技術により、精製を行う。Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照。
【0099】
NS0細胞における発現は、例えば、Barnes, L.M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270により記載されている。一過性発現は、例えば、Durocher, Y., et al., Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9により記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; Norderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87により記載されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.-J. and Christensen, K., in Cytotechnology 30 (1999) 71-83により、およびSchlaeger, E.-J., in J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199により記載されている。
【0100】
例えば原核生物に適する調節配列は、プロモーター、任意的にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0101】
核酸は、それが他の核酸配列と機能的な関連性をもって配置されるとき、「操作可能な形で連結され」ている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるとき、ポリペプチドに関してDNAと操作可能な形で連結している;プロモーター又はエンハンサーは、それがその配列の転写に影響するとき、コード配列と操作可能な形で連結されている; 又は、リボソーム結合部位は、それが転写を促進するように配置されているとき、コード配列に操作可能な形で連結されている。一般的に、「操作可能な形で連結された」は、連結されたDNA配列が隣接し、そして、分泌リーダーの場合は、隣接し、且つ読み枠にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要は無い。連結は、都合の良い制限部位でライゲーションを行うことにより達成される。そのような部位が存在しなければ、通常の慣例に従い、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0102】
モノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の、従来のイムノグロブリン精製手段により、培養培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、従来の手順を用いて、容易に単離され、配列が決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNA及びRNAの供給源としての機能を果たし得る。ひとたび単離されると、DNAは発現ベクターへ挿入され得、次いで、免疫グロブリンタンパク質をそれ以外の場合では産生しない、HEK293細胞、CHO細胞、又はミエローマ細胞などの宿主細胞へトランスフェクトされ、宿主細胞中に組換えモノクローナル抗体の合成を得る。
【0103】
本明細書において使用されるとき、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」という表現は、交換可能なように使用され、および、そのような名称のすべては、子孫を含む。このように、「形質転換体」および「形質転換された細胞」という単語は、プライマリーの対象細胞および、トランスファーの数に関係なくそれ由来の培養物を含む。意図的または偶然の変異に起因するため、すべての子孫がDNAの内容において正確に同一ではない可能性があることもまた、理解される。当初形質転換された細胞についてスクリーニングされたのと同一の機能または生物活性を有する、変異体子孫が含まれる。
【0104】
抗体の「Fc部分」は、抗原への抗体の結合に直接的には関与していないが、種々のエフェクター機能を示す。「抗体のFc部分」は当業者には周知の用語であり、そして抗体のパパインによる切断に基づいて定義される。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体または免疫グロブリンはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMというクラスに分類され、そしてこれらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、IgA1およびIgA2にさらに分類され得る。重鎖定常領域に従って、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。抗体のFc部分は、補体活性化、C1qへの結合およびFcレセプター結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞障害作用)およびCDC(補体依存性細胞障害作用)に直接的に関与する。補体活性化(CDC)は、大半のIgG抗体サブクラスのFc部分への補因子C1qの結合によって開始される。補体系に対する抗体の影響は特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc部分において規定された結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は当技術分野の水準において公知であり、そして例えばBoakle, R.J. et al., Nature 282 (1979) 742-743; Lukas, T.J. et al., J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560; Brunhouse, R. and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917 ; Burton, D.R. et al., Nature 288 (1980) 338-344 ; Thommesen, J.E. et al., Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004 ; Idusogie, E.E. et al., J. Immunol.164 (2000) 4178-4184 ; Hezareh, M. et al., J. Virology 75 (2001) 12161-12168 ; Morgan, A. et al., Immunology 86 (1995) 319-324;欧州特許第0307434号によって記載されている。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331およびP329(KabatのEUインデックスによる番号付け、以下を参照されたい)である。IgG1、IgG2およびIgG3サブクラスの抗体は通常、補体活性化およびC1qおよびC3への結合を示すが、一方、IgG4は補体系を活性化せず、そしてC1qおよびC3に結合しない。
【0105】
一実施態様において、本発明による抗体はヒト起源由来のFc部分、好ましくはヒト定常領域の全ての他の部分を含む。本明細書において使用されるとき、用語「ヒト起源由来のFc部分」は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒト抗体のFc部分、好ましくはヒトIgG1サブクラス由来のFc部分、ヒトIgG1サブクラス由来の変異Fc部分(好ましくはL234A+L235Aの変異を伴う)、ヒトIgG4サブクラス由来のFc部分、又はヒトIgG4サブクラス由来の変異されたFc部分(好ましくはS228Pの変異を伴う)のいずれかであるFc部分を示す。最も好ましいのは、配列番号58(ヒトIgG1サブクラス)、配列番号59(変異L234A及びL235Aを伴うヒトIgG1サブクラス)、配列番号60 ヒトIgG4サブクラス)、又は配列番号61(変異S228Pを伴うヒトIgG4サブクラス)のヒト重鎖定常領域である。
【0106】
好ましくは、本発明による抗体は、ヒトIgG1サブクラス又はヒトIgG4サブクラスのものである。一実施態様において、本発明による抗体はヒトIgG1サブクラスのものである。一実施態様において、本発明による抗体はヒトIgG4サブクラスのものである。
【0107】
一実施態様において、本発明による抗体は、定常鎖がヒト起源のものであることを特徴とする。そのような定常鎖は最先端で良く知られており、例えばKabat,E.A.に記載されている(例えば、Johnson, G. and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218を参照)。例えば、有用なヒト重鎖定常領域は、配列番号58のアミノ酸配列を含む。例えば、有用なヒト軽鎖定常領域は、配列番号57のカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0108】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
またはそれらのヒト化型を特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0109】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8である;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16である;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76である;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84である;
またはそれらのヒト化型を特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0110】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号7であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号8であり、又はそれらのヒト化型を特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0111】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号56であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0112】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0113】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号23であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号24であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体であり、又は
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号31であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号32であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0114】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号39であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号40であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0115】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号47であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号48であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0116】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号15であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号16であり、又はそれらのヒト化型であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0117】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号75であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号76であり、又はそれらのヒト化型であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0118】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号83であり、及び軽鎖可変ドメインが配列番号84であり、又はそれらのヒト化型であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0119】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含む;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含む;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0120】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含む;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0121】
本発明の別の態様は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含む;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含む;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含む;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0122】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0123】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0124】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0125】
本発明の別の態様は、重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含むことを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体である。
【0126】
本発明は、治療を必要としている患者の治療のための方法を包含し、本発明による抗体の治療的有効量を患者に投与することを特徴とする。
【0127】
本発明は、治療のための本発明による抗体の使用を包含する。
【0128】
本発明の一つの好ましい実施態様は、「CSF−1R介在性疾患」の治療における使用のための本発明のCSF−1R抗体、又は「CSF−1R介在性疾患」の治療における医薬の製造を目的とした使用のための本発明のCSF−1R抗体であり、以下のように記載され得る:
CSF−1Rシグナル伝達が腫瘍の増殖および転移に関与している可能性がある3つの異なるメカニズムがある。第一はCSFリガンド及びレセプターの発現が女性の生殖系に由来する腫瘍細胞(乳癌、卵巣癌、子宮内膜、子宮頸部)で見いだされ(Scholl, S.M., et al., J. Natl. Cancer Inst. 86 (1994) 120-126; Kacinski, B.M., Mol. Reprod. Dev. 46 (1997) 71-74; Ngan, H.Y., et al., Eur. J. Cancer 35 (1999) 1546-1550; Kirma, N., et al., Cancer Res 67 (2007) 1918-1926)、その発現が乳癌患者の乳癌異種移植片の増殖並びに予後不良に関連付けられていることである。一研究において、CSF−1Rに2つの点変異が、急性骨髄性白血病患者、慢性骨髄性白血病患者及び骨髄異形成患者のおよそ10−20%に認められ、変異の一つがレセプター代謝回転を妨害ことが判明した(Ridge, S.A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 87 (1990) 1377-1380)。しかしながら、変異の発生率はその後の研究で確認することができなかった(Abu-Duhier, F.M., et al., Br. J. Haematol. 120 (2003) 464-470)。変異はまた、肝細胞癌(Yang, D.H., et al., Hepatobiliary Pancreat. Dis. Int. 3 (2004) 86-89)及び特発性骨髄線維症(Abu-Duhier, F.M., et al., Br. J. Haematol. 120 (2003) 464-470)のいくつかのケースで見いだされた。近年、骨髄単芽球性白血病の患者由来のGDM−1細胞株で、CSF−1RのY571D変異が同定された(Chase, A., et al., Leukemia 23 (2009) 358-364)。色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)およびTenosynovial巨大細胞腫瘍(TGCT)は、コラーゲン遺伝子COL6A3へM−CSF遺伝子を融合する転座の結果として発生する可能性があり、M−CSFの過剰発現をもたらす(West, R.B., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 690-695)。景観効果(landscape effect)は、M−CSFを発現する細胞により誘引される単球細胞からなる腫瘤の発生に関与していると提案される。TGCTは、最も生じる指から比較的容易に取り除くことが可能な小さな腫瘍である。PVNSは大関節で再発する可能性があり、外科的に容易に管理されないものであるため、より侵攻性である。
【0129】
第二のメカニズムは、破骨細胞、骨吸収および溶骨性骨病変を誘導する骨の転移部位でM−CSF/CSF−1Rを介したシグナル伝達を遮断することに基づく。乳癌、多発性骨髄腫及び肺癌は、骨に転移し、溶骨性骨疾患を引き起こし、骨格の合併症を生じることが見出された癌の例である。腫瘍細胞及び間質から放出されたM−CSFは、核内因子カッパBリガンドRANKLの受容体活性化因子と共同で、造血骨髄単球前駆細胞の成熟破骨細胞への分化を誘導する。この過程の間、M−CSFは破骨細胞に生存シグナルを与えることによって、許容因子として働く (Tanaka, S., et al., J. Clin. Invest. 91 (1993) 257-263)。抗CSF−1R抗体による破骨細胞の分化、及び成熟過程におけるCSF−1R活性の阻害は、転移性疾患において溶骨性疾患及び関連した骨格関連事象を引き起こす、破骨細胞の不均衡な活性を妨げる可能性がある。乳癌、肺癌、多発性骨髄腫は、通常、溶骨性病変が生じるのに対し、前立腺癌の骨への転移は、最初は造骨細胞の外観を有し、そこでは骨形成活性の増大が、正常な骨の典型的なラメラ構造とは異なる「線維性骨」を生じる。疾患の進行中に、骨病変は有意な溶骨性成分ならびに骨吸収の高い血清レベルを提示し、抗骨吸収療法が有用であることを示唆している。ビスフォスフォネート製剤は、溶骨性病変の形成を阻害することが示され、ホルモン不応性転移性前立腺癌の男性においてのみ骨関連事象の数を減少させるが、この点で、造骨性病変へのその作用は議論があり、今日までビスフォスフォネート製剤は、骨転移又はホルモン応答性前立腺癌の予防に有益ではなかった。溶骨性/造骨性が混合した前立腺癌における抗骨吸収剤の作用は、なお臨床で毛研究されている(Choueiri, M.B., et al., Cancer Metastasis Rev. 25 (2006) 601-609; Vessella, R.L. and Corey, E., Clin. Cancer Res. 12 (20 Pt 2) (2006) 6285s-6290s)。
【0130】
第三のメカニズムは、乳癌、前立腺癌、卵巣癌および子宮頸癌の固形腫瘍に見いだされた腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、予後不良と相関するという最近の見解に基づいている(Bingle, L., et al., J. Pathol. 196 (2002) 254-265; Pollard, J.W., Nat. Rev. Cancer 4 (2004) 71-78)。マクロファージはM−CSF及び他のケモカインによって腫瘍に補充される。マクロファージは次に、血管新生因子、プロテアーゼ及び他の増殖因子及びサイトカインの分泌を介して腫瘍の増殖の一因となり得、CSF−1Rシグナル伝達の阻害により遮断され得る。最近、Zins ら(Zins, K., et al., Cancer Res. 67 (2007) 1038-1045)は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)、M−CSF又は両方の組合わせのsiRNAの発現が、それぞれのsiRNAを腫瘍内へ注入後、マウス異種移植モデルにおいて34%から50%の間で腫瘍増殖を減少させ得ることを示した。ヒトSW620細胞により分泌されたTNFアルファを標的とするsiRNAは、マウスのM−CSFレベルを減少させ、腫瘍中のマクロファージの減少へと導いた。更に、MCF7腫瘍異種移植片のM−CSFに対する抗原結合断片による治療は、化学療法剤と併用して与えられた場合、40%の腫瘍増殖阻害をもたらし、化学療法剤に対する耐性を逆転させ、マウスの生存を改善した(Paulus, P., et al., Cancer Res. 66 (2006) 4349-4356)。
【0131】
TAMは、慢性炎症と癌の間の新たな関連性の一例である。炎症と癌との間の関連性の更なる証拠があり、その理由は、多くの慢性疾患が癌のリスクの増大と関連し、癌が慢性炎症の部位で起き、炎症のケミカルメディエーターが多くの癌で発見され;炎症の細胞性メディエーター又はケミカルメディエーターの欠失が実験的な癌の発生を抑制し、抗炎症薬の長期使用がいくつかの癌のリスクを減らすためである。胃癌に対するピロリ菌誘導性胃炎、膀胱癌に対する住血吸虫症、カポジ肉腫に対するHHVX、卵巣癌に対する子宮内膜症、前立腺癌に対する前立腺炎など、多くの炎症性疾患について癌に対する相関が存在する(Balkwill, F., et al., Cancer Cell 7 (2005) 211-217)。マクロファージは慢性炎症で鍵となる細胞であり、それらの微小環境に差動的に応答する。機能的な状態の連続における両極端と見なされるマクロファージの2つの型がある:M1マクロファージは、1型の反応に関与している。これらの反応は、微生物産物による活性化、及び結果として病原性微生物の死滅を伴い、活性酸素中間体を生じる。極度のもう一方の端は、2型反応に関与するM2マクロファージであり、細胞増殖を促進し、炎症及び獲得免疫を調整し、組織リモデリング、血管新生および修復を促進する(Mantovani, A., et al., Trends Immunol. 25 (2004) 677-686)。確定した新生組織形成をもたらす慢性炎症は、一般にM2マクロファージに関連する。炎症反応を媒介する重要なサイトカインはTNFアルファであり、その名のとおり、高用量では抗腫瘍免疫及び出血性壊死を刺激することができるが、また近年、腫瘍細胞により発現されて、発癌プロモーターとして働くことが見いだされた(Zins, K., et al., Cancer Res. 67 (2007) 1038-1045; Balkwill, F., Cancer Metastasis Rev. 25 (2006) 409-416)。腫瘍に関してマクロファージの特異的な役割は、それらの機能上の空間的および時間的依存性の可能性、及び特異的な腫瘍型に対する関連性を含み、まだよく理解する必要がある。
【0132】
従って、本発明の一実施態様は、癌の治療における使用を目的とした本発明のCSF−1R抗体である。本明細書で使用されるように用語「癌」は、例えば、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞上皮肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部位の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜癌、子宮頚部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓または尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、多形性神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン細胞腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮細胞癌、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病、上記癌の任意の抵抗性のもの、または上記癌の1つ以上の組合せでもよい。好ましくは、そうした癌は、乳癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌または前立腺癌である。好ましくはそのような癌は、CSF−1又はCSF−1Rの発現又は過剰発現により更に特徴付けられる。本発明の一つの更なる実施態様は、原発性腫瘍及び新規転移の同時治療における使用のための本発明のCSF−1R抗体である。
【0133】
従って、本発明の別の実施態様は、歯周炎、ヒスチオサイトーシスX、骨粗しょう症、骨のパジェット病(PDB)、癌治療に起因する骨量減少、プロテーゼ周囲の骨溶解、グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症、関節リウマチ、乾癬性(psiratic)関節炎、変形性関節症、炎症性関節炎(arthridities)、及び炎症の治療における使用のための本発明のCSF−1R抗体である。Rabello, D., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 347 (2006) 791-796 は、CSF1遺伝子のSNPは、悪性歯周炎(歯槽骨の再吸収による歯の喪失を引き起こす歯周組織の炎症性疾患)と明らかな関連を示すことを実証している。
【0134】
ヒスチオサイトーシスX(ランゲルハンス細胞組織球増加症、LCHとも呼ばれる)は、骨と余分な骨のLCH病変中で、破骨細胞へ分化するように見えるランゲルハンス樹状細胞の増殖性疾患である。ランゲルハンス細胞は、循環している単球から派生している。血清および病変中において測定されるM−CSFレベルの増加は、疾患の重篤性と相関することが見いだされた(da Costa, C.E., et al., J. Exp. Med. 201 (2005) 687-693)。その疾患は主に小児科の患者集団で発生し、病気が全身性になるか、または再発性のある場合に、化学療法で治療する必要がある。
【0135】
骨粗しょう症の病態は、骨を形成する骨芽細胞の消失、及び破骨細胞依存性の骨吸収の増加によって媒介される。支持するデータはCenciらにより記載されており、抗M−CSF抗体の注入は骨密度を維持し、卵巣摘出マウスにおける骨再吸収を抑制することを示している(Cenci, S., et al., J. Clin. Invest. 105 (2000) 1279-1287)。最近、エストロゲン欠乏による閉経後の骨の損失の間につながりがある可能性が同定され、TNFアルファを産生するT細胞の存在が、骨代謝に影響を与えることが見いだされた(Roggia, C., et al., Minerva Med. 95 (2004) 125-132)。可能性のあるメカニズムは生体内におけるTNFアルファによるM−CSFの誘導であろう。TNFアルファ誘導性破骨細胞におけるM−CSFの重要な役割は、マウスにおいてTNFアルファ誘導性骨溶解を遮断するM−CSFに対する抗体の作用により確かめられ、それによりCSF−1Rシグナル伝達の阻害剤を、炎症性関節炎に対する潜在的標的としている(Kitaura, H., et al., J. Clin. Invest. 115 (2005) 3418-3427)。
【0136】
骨のパジェット病(PDB)は、骨粗しょう症に次ぐ最も一般的な骨代謝疾患であり、増加した骨代謝回転の限局性異常は、骨の痛み、変形、病的骨折及び難聴などの合併症につながる。4つの遺伝子の突然変異が、通常の破骨細胞機能を調節し、PDBおよび関連疾患に個体をかかりやすくすることが確認されている:破骨細胞機能の重要な調節因子である核内因子(NF)カッパBの受容体活性化因子(RANK)をコードするTNFRSF11Aの挿入変異、オステオプロテグリン(RANKリガンドのデコイレセプター)をコードするTNFRSF11Bの不活性化変異、NFカッパB経路で重要なスキャフォールドタンパク質をコードするセクエストソーム(sequestosome)1遺伝子(SQSTM1)の突然変異、及びバロシン含有タンパク質(VCP)遺伝子の突然変異。この遺伝子は、プロテアソームによる分解に対する、NFカッパBの阻害剤の標的において役割を有するVCPをコードする(Daroszewska, A. and Ralston, S.H., Nat. Clin. Pract. Rheumatol. 2 (2006) 270-277)。標的とされたCSF−1R阻害剤は、間接的にRANKLシグナル伝達の調節解除を遮断する機会を与え、現在使用されているビスフォスフォネートに対して追加治療の選択肢を加える。
【0137】
特に乳癌および前立腺癌患者における癌治療誘発性骨量減少は付加的な適応症であり、標的とされたCSF−1R阻害剤が骨量減少を予防することができる可能性がある(Lester, J.E., et al., Br. J. Cancer 94 (2006) 30-35)。早期乳癌にたいする予後の改良に伴い、アジュバント療法の長期的影響はより重要となり、その理由は、化学療法、放射線照射、アロマターゼ阻害剤及び卵巣の切除を含む治療法のいくつかは、骨ミネラル濃度を減少させることにより骨代謝に影響を与え、骨粗しょう症及び関連する骨折のリスク増加をもたらすためである(Lester, J.E., et al., Br. J. Cancer 94 (2006) 30-35)。乳癌におけるアジュバントアロマターゼ阻害剤療法に同等なのは、前立腺癌のアンドロゲン除去治療であり、骨ミネラル濃度の低下につながり、大幅に骨粗しょう症に関連する骨折のリスクを増大させる(Stoch, S.A., et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 86 (2001) 2787-2791)。
【0138】
CSF−1Rシグナル伝達の標的とされた阻害は、標的とされた細胞型が破骨細胞及びマクロファージを含む場合、例えば、関節リウマチの結果としての関節置換術に応答した特定の合併症の治療など、別の適応症で同様に有益である可能性がある。人工関節(プロテーゼ)周囲の骨の損失によるインプラントの失敗は人工関節置換の主要な合併症であり、個々の患者や医療システムにおいて高い社会経済的な負担を伴う反復手術を必要とする。今日まで、人工関節周囲の骨溶解を防止または抑制するための承認された薬物療法はない(Drees, P., et al., Nat. Clin. Pract. Rheumatol. 3 (2007) 165-171)。
【0139】
グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症(GIOP)は、慢性閉塞性肺疾患、喘息、関節リウマチなどを含む様々な疾患の結果として与えられるグルココルチコイドの長期使用後の骨量減少を、CSF−1R阻害剤が予防しうる別の適応症である(Guzman-Clark, J.R., et al., Arthritis Rheum. 57 (2007) 140-146; Feldstein, A.C., et al., Osteoporos. Int. 16 (2005) 2168-2174)。
【0140】
関節リウマチ、乾癬性(psioratic)関節炎および炎症性関節炎は、マクロファージ成分及び様々な程度に骨破壊からなるという点で、それ自体がCSF−1Rシグナル伝達の阻害剤の可能性がある(Ritchlin, C.T., et al., J. Clin. Invest. 111 (2003) 821-831)。変形性関節症及び関節リウマチは、結合組織中のマクロファージの蓄積、及び少なくとも一部はM−CSFにより媒介される関節滑液へのマクロファージの浸潤により引き起こされる炎症性自己免疫疾患である。Campbell, I., K., et al., J. Leukoc. Biol. 68 (2000) 144-150は、M−CSFは、インビトロでのヒト関節組織細胞(軟骨細胞、滑膜線維芽細胞)によって産生され、関節リウマチ患者の滑液中に検出されることを実証し、それが滑膜組織の増殖、及び疾患の病因に関連付けられているマクロファージの浸潤に寄与することを示唆している。CSF−1Rシグナル伝達の阻害は、関節のマクロファージの数を調節し、関連した骨破壊の痛みを軽減する可能性がある。副作用の影響を最小限に抑え、これらの適応症におけるCSF−1Rシグナル伝達の影響を更に理解するため、一つの方法は、数多く他のキナーゼ、例えばRafキナーゼなどを標的とせずに、特にCSF−1Rを阻害することである。
【0141】
最近の文献報告は、循環するM−CSFの増大を、慢性冠動脈疾患における予後不良およびアテローム性動脈硬化の進行と関連付けている(Saitoh, T., et al., J. Am. Coll. Cardiol. 35 (2000) 655-665; Ikonomidis, I., et al., Eur. Heart. J. 26 (2005) p. 1618-1624);M−CSFは、CSF−1Rを発現し初期プラークを代表する泡沫細胞(摂取した酸化LDLによるマクロファージ)の形成を助けることによってアテローム性動脈硬化過程に影響を与える(Murayama, T., et al., Circulation 99 (1999) 1740-1746)。
【0142】
M−CSF及びCSF−1Rの発現及びシグナル伝達は活性化ミクログリアで見いだされる。中枢神経系の常駐マクロファージであるミクログリアは、感染および外傷を含む様々な傷害によって活性化することができる。M−CSFは、脳内の炎症反応の重要な調節因子と考えられており、M−CSFレベルはHIV−1、脳炎、アルツハイマー病(AD)および脳腫瘍において増大する。M−CSF/CSF−1Rによる自己分泌シグナル伝達の結果としての小神経膠細胞症は、例えば実験的な神経損傷モデルを用いて実証されるように、放出される炎症性サイトカインおよび酸化窒素の誘導を生じる(Hao, A.J., et al., Neuroscience 112 (2002) 889-900; Murphy, G.M., Jr., et al., J. Biol. Chem. 273 (1998) 20967-20971)。CSF−1Rの発現が増大したミクログリアは、アルツハイマー病において、及びアミロイド前駆体タンパク質V717Fトランスジェニックアルツハイマー病マウスモデルにおいて、プラークを取り囲むことが見いだされる(Murphy, G.M., Jr., et al., Am. J. Pathol. 157 (2000) 895-904)。一方、脳内のミクログリアが少ないop/opマウスは、正常コントロールに比較して、A−ベータの繊維状沈着及びニューロンの欠損を生じ、ミクログリアがADの発症においてop/opマウスに欠けている神経保護機能を持つことを示唆している(Kaku, M., et al., Brain Res. Brain Res. Protoc. 12 (2003) 104-108)。
【0143】
M−CSF及びCSF−1Rの発現及びシグナル伝達は、炎症性腸疾患(IBD)と関連している(国際公開第2005/046657号)。用語「炎症性腸疾患」は、消化管の重篤な慢性疾患を言い、消化管内のさまざまな部位での慢性炎症を特徴とし、特に潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病が含まれる。
【0144】
本発明は、癌の治療のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含む。
【0145】
本発明は、骨量減少の治療のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含む。
【0146】
本発明は、転移の予防又は治療のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含む。
【0147】
本発明は、炎症性疾患の治療のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含む。
【0148】
本発明は、癌の治療のために、又は代わりに癌の治療のための医薬の製造のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含むことを特徴する抗体の使用を含む。
【0149】
本発明は、骨量減少の治療のために、又は代わりに骨量減少の治療のための医薬の製造のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含むことを特徴する抗体の使用を含む。
【0150】
本発明は、転移の予防及び治療のために、又は代わりに転移の予防又は治療のための医薬の製造のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含むことを特徴する抗体の使用を含む。
【0151】
本発明は、炎症性疾患の治療のために、又は代わりに炎症性疾患の治療のための医薬の製造のために、上記のエピトープ結合特性によって、又は代わりに上記のアミノ酸配列及びアミノ酸配列断片によって特徴付けられる、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体を含むことを特徴する抗体の使用を含む。
【0152】
本発明の更なる実施態様は、CSF−1Rに対する抗体の生産のための方法であって、本発明によるヒトCSF−1Rへ結合するヒトIgG1クラス抗体の重鎖をコードする核酸の配列、該改変された核酸及び該抗体の軽鎖をコードする核酸が発現ベクター中へ挿入され、該ベクターが真核生物宿主細胞へ挿入され、コードされたタンパク質が発現され、宿主細胞又は上清から回収されることを特徴とする。
【0153】
本発明による抗体は、好ましくは、組換え手段によって生産される。そのような方法は、当技術分野の最先端において広く公知であり、かつ、その後の抗体ポリペプチドの単離、および、通常薬学的に許容される純度への精製を伴う、原核生物および真核生物細胞におけるタンパク質発現を含む。タンパク質発現のために、軽鎖および重鎖、またはそれらの断片をコードする核酸が、標準的方法によって発現ベクターに挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、または大腸菌(E.coli)細胞のような、適切な原核生物または真核生物宿主細胞において行われ、および、抗体が細胞(上清または溶解後の細胞)から回収される。
【0154】
抗体の組換え生産は、当技術分野の最先端において周知であり、かつ、例えば、Makrides,S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説論文において記述されている。
【0155】
抗体は、細胞全体、細胞溶解物、または、部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形態において存在してもよい。精製は、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質を除去するために、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および、当技術分野において周知である他のものを含む、標準的技術によって行われる。Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照。
【0156】
NS0細胞における発現は、例えば、Barnes, L.M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123およびBarnes, L.M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270によって記述されている。一過性発現は、例えば、Durocher, Y., et al., Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9によって記述されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289およびNorderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87によって記述されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.-J., and Christensen, K., in Cytotechnology 30 (1999) 71-83およびSchlaeger, E.-J., in J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199によって記述されている。
【0157】
抗CSF−1R抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野において公知である様々な方法によって調製される。これらの方法は、天然供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、または、ヒト化抗CSF−1R抗体の以前に調製された変異体または非変異体型のオリゴヌクレオチド媒介(もしくは部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、および、カセット変異誘発による調製を含むが、それらに限定されない。
【0158】
本発明による重鎖および軽鎖可変ドメインは、発現ベクターコンストラクトを形成するために、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3'非翻訳領域、ポリアデニル化、および転写終結の配列と併用される。重鎖および軽鎖発現コンストラクトは、単一のベクターに結合され得、コトランスフェクションされ得、連続的にトランスフェクションされ得、または、宿主細胞に別々にトランスフェクションされ得、その後、双方の鎖を発現する単一の宿主細胞を形成するように融合される。
【0159】
別の態様において、本発明は、本発明のモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分の一つまたは組み合わせを含み、薬学的に許容される担体とともに製剤化された、組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0160】
本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される担体」は、任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合性のある同様のものを含む。好ましくは、担体は、注射または点滴に適する。
【0161】
本発明の組成物は、当技術分野において公知である様々な方法によって投与され得る。当業者によって評価されるであろうように、投与の経路および/または形式は、所望の結果に依存して変化するであろう。
【0162】
薬学的に許容される担体は、無菌の水性溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の調製のための無菌パウダーを含む。薬学的に活性な物質のための、そのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において公知である。担体は、水に加えて、例えば、等張緩衝生理食塩水であり得る。
【0163】
選択された投与の経路にかかわらず、適当な水和した形態において使用されてもよい本発明の化合物、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である通常の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0164】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者にとって毒性であること無く、特定の患者、組成物、および投与の形式について所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るために、変更されてもよい(有効量)。選択された投与量レベルは、使用された本発明の特定の組成物、またはそれらのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用された特定の化合物、使用された特定の組成物と組み合わせて使用された他の薬物、化合物および/または材料の排出速度、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康状態および事前治療歴、ならびに、医療技術分野において周知である同様の因子を含む様々な薬物動態因子に依存するであろう。
【0165】
本発明は、癌、とりわけ大腸、肺又は膵臓癌に罹患した患者の治療のために、本発明による抗体の使用を含む。
【0166】
本発明はまた、そのような疾患に罹患した患者の治療のための方法をも含む。
【0167】
本発明は更に、本発明によるよる抗体の有効量を、薬学的に許容される担体と一緒に含む薬学的組成物の製造の方法、及びそのような方法のための本発明による抗体の使用を提供する。
【0168】
本発明は更に、癌に罹患した患者の治療のために、医薬品の製造のために、有効な量での本発明による抗体の使用を、好ましくは薬学的に許容される担体とともに、提供する。
【0169】
本発明はまた、癌に罹患した患者の治療のために、医薬品の製造のために、有効な量での本発明による抗体の使用を、好ましくは薬学的に許容される担体とともに、提供する。
【0170】
以下の実施例、配列一覧及び図は、本発明の理解を支援するために与えられ、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、改変が定められた手順で行われ得ることが理解される。
【0171】
配列の説明
配列番号1 重鎖CDR3、Mab 2F11
配列番号2 重鎖CDR2、Mab 2F11
配列番号3 重鎖CDR1、Mab 2F11
配列番号4 軽鎖CDR3、Mab 2F11
配列番号5 軽鎖CDR2、Mab 2F11
配列番号6 軽鎖CDR1、Mab 2F11
配列番号7 重鎖可変ドメイン、Mab 2F11
配列番号8 軽鎖可変ドメイン、Mab 2F11
配列番号9 重鎖CDR3、Mab 2E10
配列番号10 重鎖CDR2、Mab 2E10
配列番号11 重鎖CDR1、Mab 2E10
配列番号12 軽鎖CDR3、Mab 2E10
配列番号13 軽鎖CDR2、Mab 2E10
配列番号14 軽鎖CDR1、Mab 2E10
配列番号15 重鎖可変ドメイン、Mab 2E10
配列番号16 軽鎖可変ドメイン、Mab 2E10
配列番号17 重鎖CDR3、hMab 2F11−c11
配列番号18 重鎖CDR2、hMab 2F11−c11
配列番号19 重鎖CDR1、hMab 2F11−c11
配列番号20 軽鎖CDR3、hMab 2F11−c11
配列番号21 軽鎖CDR2、hMab 2F11−c11
配列番号22 軽鎖CDR1、hMab 2F11−c11
配列番号23 重鎖可変ドメイン、hMab 2F11−c11
配列番号24 軽鎖可変ドメイン、hMab 2F11−c11
配列番号25 重鎖CDR3、hMab 2F11−d8
配列番号26 重鎖CDR2、hMab 2F11−d8
配列番号27 重鎖CDR1、hMab 2F11−d8
配列番号28 軽鎖CDR3、hMab 2F11−d8
配列番号29 軽鎖CDR2、hMab 2F11−d8
配列番号30 軽鎖CDR1、hMab 2F11−d8
配列番号31 重鎖可変ドメイン、hMab 2F11−d8
配列番号32 軽鎖可変ドメイン、hMab 2F11−d8
配列番号33 重鎖CDR3、hMab 2F11−e7
配列番号34 重鎖CDR2、hMab 2F11−e7
配列番号35 重鎖CDR1、hMab 2F11−e7
配列番号36 軽鎖CDR3、hMab 2F11−e7
配列番号37 軽鎖CDR2、hMab 2F11−e7
配列番号38 軽鎖CDR1、hMab 2F11−e7
配列番号39 重鎖可変ドメイン、hMab 2F11−e7
配列番号40 軽鎖可変ドメイン、hMab 2F11−e7
配列番号41 重鎖CDR3、hMab 2F11−f12
配列番号42 重鎖CDR2、hMab 2F11−f12
配列番号43 重鎖CDR1、hMab 2F11−f12
配列番号44 軽鎖CDR3、hMab 2F11−f12
配列番号45 軽鎖CDR2、hMab 2F11−f12
配列番号46 軽鎖CDR1、hMab 2F11−f12
配列番号47 重鎖可変ドメイン、hMab 2F11−f12
配列番号48 軽鎖可変ドメイン、hMab 2F11−f12
配列番号49 重鎖CDR3、hMab 2F11−g1
配列番号50 重鎖CDR2、hMab 2F11−g1
配列番号51 重鎖CDR1、hMab 2F11−g1
配列番号52 軽鎖CDR3、hMab 2F11−g1
配列番号53 軽鎖CDR2、hMab 2F11−g1
配列番号54 軽鎖CDR1、hMab 2F11−g1
配列番号55 重鎖可変ドメイン、hMab 2F11−g1
配列番号56 軽鎖可変ドメイン、hMab 2F11−g1
配列番号57 ヒトカッパ軽鎖定常領域
配列番号58 IgG1由来ヒト重鎖定常領域
配列番号59 L234A及びL235Aで変異されたIgG1由来ヒト重鎖定常領域
配列番号60 IgG4由来ヒト重鎖定常領域
配列番号61 S228Pで変異されたIgG4由来ヒト重鎖定常領域
配列番号62 ヒト野生型CSF−1R(wt CSF−1R)
配列番号63 ヒト変異体CSF−1R L301S Y969F
配列番号64 ヒトCSF−1R細胞外ドメイン
配列番号65 ヒトCSF−1R断片delD4
配列番号66 ヒトCSF−1R断片D1−D3
配列番号67 シグナルペプチド
配列番号68 プライマー
配列番号69 重鎖CDR3、Mab 1G10
配列番号70 重鎖CDR2、Mab 1G10
配列番号71 重鎖CDR1、Mab 1G10
配列番号72 軽鎖CDR3、Mab 1G10
配列番号73 軽鎖CDR2、Mab 1G10
配列番号74 軽鎖CDR1、Mab 1G10
配列番号75 重鎖可変ドメイン、Mab 1G10
配列番号76 軽鎖可変ドメイン、Mab 1G10
配列番号77 重鎖CDR3、Mab 2H7
配列番号78 重鎖CDR2、Mab 2H7
配列番号79 重鎖CDR1、Mab 2H7
配列番号80 軽鎖CDR3、Mab 2H7
配列番号81 軽鎖CDR2、Mab 2H7
配列番号82 軽鎖CDR1、Mab 2H7
配列番号83 重鎖可変ドメイン、Mab 2H7
配列番号84 軽鎖可変ドメイン、Mab 2H7
【0172】
以下の実施例、配列一覧及び図は、本発明の理解を支援するために与えられ、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、改変が定められた手順で行われ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】3次元培養における、異なる抗CSF−1Rモノクローナル抗体を10μg/mlの濃度で処置されたBeWo腫瘍細胞の増殖阻害。X軸:細胞のATP含有量に対応する生存率規格化平均相対発光量(CellTiterGloアッセイ)。Y軸:試験されたプローブ:最小培地(0.5%FBS)、マウスIgG1(mIgG1、10μg/ml)、マウスIgG2a(mIgG2a 10μg/ml)、CSF−1のみ、Mab 2F11、Mab 2E10、Mab2H7、Mab1G10およびSC 2−4A5。CSF−1誘導性増殖の最大阻害は本発明による抗CSF−1R抗体で観察された。
【図2a】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3及びD5を含む)(配列番号65)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル)、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間):抗体Mab 3291およびsc 2−4A5は明らかにこのdelD4断片への結合を示すが、本発明による抗体、例えばMab 2F11およびMab 2E10はCSF−1R断片delD4へ結合しなかった。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5もまたCSF−1R断片delD4へ結合しなかった。
【図2b】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間))::全ての抗CSF−1R抗体はCSF−1R−ECDへの結合を示す。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5はCSF−1R−ECDへ結合しなかった。
【図2c】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3,及びD5を含む)(配列番号65)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間)):Mab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7はCSF−1R断片delD4に結合しなかった。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5もまたCSF−1R断片delD4に結合しなかった。
【図2d】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間)):全ての抗CSF−1R抗体Mab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7はCSF−1R−ECDへの結合を示した。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5はCSF−1R−ECDへ結合しなかった。
【図2e】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3,及びD5を含む)(配列番号65)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間)):全ての抗CSF−1R抗体 1.2.SM、CXIIG6、ab10676およびMAB3291はCSF−1R断片delD4への結合を示した。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5はCSF−1R断片delD4へ結合しなかった。
【図2f】異なる抗CSF−1R抗体の固定化したヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)への結合のビアコアセンサーグラム(y軸:反応単位(RU)の結合シグナル、ベースライン=0RU、x軸:秒単位(s)の時間))::全ての抗CSF−1R抗体 1.2.SM、CXIIG6、ab10676及びMAB3291はCSF−1R−ECDへの結合を示す。コントロールの抗CCR5抗体m<CCR5>Pz03.1C5はCSF−1R−ECDへ結合しなかった。
【図3a−d】本発明による抗CSF−1R抗体の異なる投与量を適用した後のカニクイザルにおけるCSF−1レベル。
【図4】インビボ有効性−乳癌BT20異種移植における本発明に係る抗CSF−1R抗体の腫瘍増殖阻害
【実施例】
【0174】
実施例1
抗CSF−1R抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の生成
NMRIマウスの免疫化の手順
NMRIマウスは、エレクトロポレーションを利用することにより、huCSF−1Rの細胞外ドメインをコードする発現ベクターpDisplayTM (Invitrogen, USA)で免疫化された。すべてのマウスは100μgのDNAで4回免疫した。抗huCSF−1Rの血清力価が十分であることが判明したとき、マウスは200μlのPBS中の1:1の混合huCSF−1R ECD/huCSF−1R ECDhuFcキメラを50μgで、融合の4日及び3日前に、静脈内投与して一回追加免疫された。
【0175】
抗原特異的ELISA
免疫したマウスの血清中の抗CSF−1Rの力価は、抗原特異的ELISAにより決定した。
0.3μg/mlのhuCSF−1R−huFcキメラ(可溶性細胞外ドメイン)は、0.1mg/mlのビオチン化抗Fcg(Jackson ImmunoResearch.,Cat.No.109−066−098)でストレプトアビジンプレート(MaxiSorb;MicroCoat,DE,Cat.No.11974998/MC1099)上に捕獲され、PBS/0.05% Tween20/0.5%BSA中で1/800に希釈された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合F(ab’)抗IgG(GE Healthcare,UK,Cat.No.NA9310V)が添加された。全タップからの血清はPBS/0.05% Tween20/0.5%BSA中で1/40に希釈されて、1/1638400まで連続的に希釈された。希釈された血清はウエルへ添加された。プレタップ血清を陰性コントロールとして用いた。CSF−1R Mab3291(R&D Systems,UK)の500ng/mlから0,25ng/mlへの希釈系列を陽性コントロールとして用いた。全ての構成要素を1、5時間一緒にインキュベートした。ウエルはPBST(PBS/0.2% Tween20)で6回洗浄し、測定法は、新鮮に調製されたABTS(登録商標)溶液(1mg/ml)(ABTS:2,2'-アジノ ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)を用いて室温で10分間にたいして開発された。吸収が405nmで測定された。
【0176】
ハイブリドーマの生成
ハイブリドーマを生成するため、PEGベースの標準プロトコルを使用して、マウスリンパ球を単離し、マウス骨髄腫細胞株と融合することができる。得られたハイブリドーマは、その後、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングされる。例えば、免疫したマウスの脾臓由来リンパ球の単一細胞懸濁液が、50%PEGとともにAg8非分泌マウス骨髄腫細胞P3X63Ag8.653(ATCC,CRL−1580)へ融合される。細胞は平底96穴マイクロタイタープレート中におよそ10蒔かれ、その後選択培地中で約2週間インキュベートされる。個々のウェルは、ヒト抗CSF−1RモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてELISAによってスクリーニングされる。一度広範にハイブリドーマの増殖がおきると、抗体を分泌するハイブリドーマが再播種され再びスクリーニングされ、ヒトIgGについてなお陽性であれば、抗CSF−1Rモノクローナル抗体をFACSによってサブクローニングすることができる。安定なサブクローンはその後インビトロで培養され、特性評価のための組織培養培地中に抗体を生成する。本発明による抗体は、実施例4に記載のように、抗CSF−1R抗体のヒトCSF−1R断片delD4への結合、及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合の決定、並びに実施例5に記載のように、抗CSF−1Rモノクローナル抗体による処置の下で、野生型CSF−1R(リガンド依存性シグナル伝達)又は変異体CSF−1R L301S Y969F(リガンド非依存性シグナル伝達)でトランスフェクトされたNIH3T3細胞の増殖阻害の決定を用いて選択され得る。
【0177】
ハイブリドーマの培養
生成されたmuMAbハイブリドーマは、2mMのLグルタミン(GIBCO−カタログ番号35050−038)、1mMのNaピルビン酸(Na−Pyruvat)(GIBCO−カタログ番号11360−039)、1×NEAA(GIBCO−カタログ番号11140−035)、10%FCS(PAA−カタログ番号A15−649)、1×Pen Strep(Roche−カタログ番号1074440)、1×ニュートリドーマCS(Roche−カタログ番号1363743)、50μMのメルカプトエタノール(GIBCO−カタログ番号31350−010)および50U/mlのIL(インターロイキン)6マウス(Roche−カタログ番号1 444 581)を補充された、RPMI 1640(PAN−カタログ番号(Cat.No.)PO4−17500)中、37℃、5%COで培養された。得られたマウス抗体の幾つかはヒト化され(例えば、Mab 2F11)、組換えにより発現されてた。
【0178】
実施例2
CSF−1のCSF−1Rへの結合の阻害(ELISA)
アッセイ法をセットアップし、最初に、抗CSF−1R抗体のCSF−1R−ECDへの結合を可能にし、その後レセプターへ結合していないリガンドを検出することによって、リガンド置換抗体及び二量体阻害剤抗CSF−1R抗体の両方を試験することができる。試験は384穴のマイクロタイタープレート上(MicroCoat、DE、カタログ番号464718)で室温にて実施された。各インキュベーションの後、プレートはPBSTで3回洗浄された。
【0179】
初めに、プレートは、0.5mg/mlのヤギF(ab’)2、ビオチン化抗Fcg(Jackson ImmunoResearch.,カタログ番号109−006−170)で1時間被覆した。
【0180】
その後、ウエルは0.2%のTween(登録商標)-20および2%BSA(Roche Diagnostics GmbH,DE)を補充したPBSで0.5時間遮断された。75ng/mlのhuCSF−1R−huFcキメラ(huCSF−1Rの二量体可溶性細胞外ドメインを形成する)がプレートへ1時間固定された。その後、精製された抗体のPBS/0.05% Tween20/0.5%BSAによる希釈物を1時間インキュベートした。3ng/mlのCSF−1(Biomol,DE,カタログ番号60530)、50ng/mlのビオチン化抗CSF−1クローンBAF216(R&D Systems,UK)及び1:5000に希釈されたストレプトアビジンHRP(Roche Diagnostics GmbH,DE,カタログ番号11089153001)の混合物を1時間で添加後、プレートはPBSTで6回洗浄された。抗CSF−1R SC 2−4A5(Santa Cruz Biotechnology, US)(これはリガンド−レセプター相互作用を阻害する)が陽性コントロールとして使用された。プレートは新鮮に調製されたBMブルー(登録商標)POD基質溶液(BMブルー(登録商標):3,3´-5,5´-テトラメチルベンジジン、Roche Diagnostics GmbH,DE,カタログ番号11484281001)により室温で30分間生育させた。吸光度を370nmで測定した。抗CSF−1R抗体が二量体複合体からのCSF−1の放出を引き起こす場合に、吸光度の減少が見いだされた。全ての抗CSF−1R抗体は、CSF−1のCSF−1Rとの相互作用の著しい阻害を示した(表1を参照)。抗CSF−1R SC 2−4A5(Santa Cruz Biotechnology,US、Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793も参照)(リガンド−レセプター相互作用を阻害する)が参照コントロールとして用いられた。

【0181】
実施例3
NIH3T3−CSF−1R組換え細胞におけるCSF−1誘導性CSF−1Rリン酸化の阻害
全長CSF−1Rの発現ベクターでレトロウイルス感染された、4.5x10のNIH3T3細胞がDMEM(PAAカタログ番号E15−011)、2mMのLグルタミン(Sigma,カタログ番号G7513、2mMのピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、10%のFKS(PAA、カタログ番号A15−649)および100μg/mlのPenStrep(Sigma,カタログ番号P4333[10mg/ml])中で、コンフルエントに達するまで培養された。その後、細胞は亜セレン酸ナトリウム[5ng/ml](Sigma,カタログ番号S9133)、トランスフェリン[10μg/ml](Sigma,カタログ番号T8158)、BSA[400μg/ml](Roche Diagnostics GmbH,カタログ番号10735078)、4mMのLグルタミン(Sigma,カタログ番号G7513)、2mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco,カタログ番号11360)、1×非必須アミノ酸(Gibco,Cat:11140−035)、2メルカプトエタノール[0,05mM](Merck,カタログ番号M7522)、100μg/mlおよびPenStrep(Sigma,カタログ番号P4333)を補充された、無血清DMEM培地(PAAカタログ番号E15−011)で洗浄され、レセプターの上方制御を可能にするために、同じ培地30μl中で16時間インキュベートされた。10μlの希釈された抗CSF−1R抗体が細胞へ1.5時間添加された。ついで細胞は10μlの100ng/ml huM−CSF−1(Biomolカタログ番号60530)で5分間刺激された。インキュベートの後、上清が除かれ、細胞は80μlの氷冷されたPBSで2回洗浄され、50μlの新鮮に調製された氷冷溶解バッファー(150mMのNaCl/20mMのTris pH7.5/1mMのEDTA/1mMのEGTA/1%トリトンX−100/1つのプロテアーゼインヒビターの錠剤(Roche Diagnostics GmbHカタログ番号1 836 170)を10mlのバッファーあたりで10μl/mlホスファターゼインヒビターカクテル1(Sigmaカタログ番号P−2850,100×ストック)10μl/mlのプロテアーゼインヒビター1(Sigmaカタログ番号P−5726,100xストック)/10μl/ml 1MのNaF)が添加された。氷の上で30分経過後、プレートは3分間プレートシェーカー上で激しく振とうされ、その後10分間2200rpmで遠心分離された(Heraeus Megafuge 10)。
【0182】
細胞溶解物中のリン酸化された総CSF−1レセプターの存在はElisaで分析された。リン酸化レセプターの検出のために、R&D Systemsからのキット(カタログ番号DYC3268−2)が、供給者の指示に従って用いられた。全CSF−1Rの検出において、10μlの溶解物が、キットに含まれて捕捉抗体の使用によってプレート上に固定化された。その後、1:750に希釈されたビオチン化抗CSF−1R抗体BAF329(R&D Systems)および1:1000に希釈されたストレプトアビジンHRPコンジュゲートが添加された。60分後、プレートは新鮮に調製されたABTS(登録商標)溶液で生育され、吸光度が検出された。データは抗体の無い陽性コントロールの%、及びリン酸化/発現された全レセプターの比率値として計算された。陰性コントロールはM−CSF−1の添加無しで定義された。抗CSF−1R SC 2−4A5(Santa Cruz Biotechnology,US、Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793も参照)(リガンド−レセプター相互作用を阻害する)が、参照コントロールとして用いられた。

【0183】
実施例4
抗CSF−1R抗体のヒトCSF−1R断片delD4への結合及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合の決定
配列番号64のヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む、hCSF−1R−ECD)の調製
pCMV−preS−Fc−hCSF−1R−ECD(7836塩基対)は、CMVプロモーターの制御下で、C末端がPreScissionプロテアーゼ切断部位に融合し、続いてヒトIgG1のアミノ酸100−330及び6xヒスタグが続く、ヒトCSF−1Rの完全なECD(配列番号64)をコードする。天然のシグナルペプチドは、BamHI制限酵素部位をつくるために、最初のMの後にアミノ酸のG及びSを挿入することにより変えられている。
【0184】
配列番号65のヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3、及びD5を含む、hCSF−1R−delD4):
hCSF1R−delD4−V1−PreSc−hFc−Hisは、ストラタジーン社のQuikChange XL部位特異的突然変異誘発のプロトコルを用いて、フォワードプライマーとして配列CACCTCCATGTTCTTCCGGTACCCCCCAGAGGTAAG(配列番号68)を有するdelD4−forを使用し、リバースプライマーとして逆相補配列を有するdelD4−revを使用して、pCMV−preS−Fc−hCSF−1R−ECDからクローニングされた。BioTechniques 26(1999)680に出版されたプロトコールの変法が使用され、ストラタジーン社の正規プロトコルに先行する3つのサイクルにおいて別々反応で両方のプライマーを拡張した。
【0185】
2つの独立した50μlの反応混合物が製造者のマニュアルに従い設定され、各々は鋳型としてプラスミドpCMV−preS−Fc−hCSF1R−ECDを10ng、プライマーのdelD4−for又はdelD4−revの一方を10pM,及びキットで提供されたPfu DNAポリメラーゼを0.5μl含有する。3回のPCRサイクル、95Cで30秒/55Cで60秒/68Cで8分が実行され、その後両方の反応混合物の各々25μlが新しいチューブに混合され、0.5μlの新鮮なPfu DNAポリメラーゼが添加された。ストラタジーン社によってキットのマニュアルに指定された18の温度サイクルによる正規のPCRプロトコールが実施され、続いてキットに提供されたDpn1制限酵素で2時間最終の消化を行った。欠失を有するクローンはCEL II及びNot Iによる消化によって検出され、シークエンシングにより確認された。
【0186】
タンパク質は、製造元の仕様に従って、Hek293 FreeStyle懸濁細胞システム(Invitrogen)中で一過性トランスフェクションによって調製した。1週間後、500mlの上清が濾過され、1mlのHiTrap MabSelect Xtra(GE healthcare)プロテインAカラムへロードされた(0.2ml/分)。カラムは最初にPBSで洗浄され、その後50mMのTris/150mMのNaCl/1mMのEDTA/pH7,3で洗浄された。同じバッファーの375μlに希釈された75μlのPreScission Protease(GE #27−0843−01)がカラムにロードされて、クローズドカラムは4℃でローリングさせながら一晩インキュベートした。カラムは1mlのGSTrap FFカラム(GE helthcare)の上にマウントされ、望みのタンパク質が溶出された(0.2ml/分,0.2mlフラクション)。プールされたフラクションは、3kナノセップ(Nanosep)での遠心限外ろ過により、1.8mlから0.4mlへ濃縮され、PBS中でS200 HR SEC上でクロマトグラフされた(0.5ml/分)。
【0187】
ヒトCSF−1R断片delD4は2つのフラクションで得られ、二量体分子として(プール1、V=1.5ml;c=0.30mg/ml;SDSページでの見かけの質量は83kDa,換算質量62kDa)、及び単量体として(プール2、V=1.4ml;c=0.25mg/ml;SDSページでの見かけの質量は62kDa)。二量体形態が全ての実験で使用された。
【0188】
抗CSF−1R抗体のヒトCSF−1R断片delD4への結合及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合の決定(反応単位(RU)としての結合シグナル):
【0189】
計測器:ビアコアT100(GE Healthcare)
ソフトウエア:T100コントロール、バージョン2.0.1
T100エバルエーション、バージョン2.0.2
アッセイ形式チップ:CM5
温度:25℃
【0190】
CSF−1R断片はアミンカップリングを介して固定された。本発明による抗体による異なる抗CSF−1R抗体の結合を比較するため、試験抗体の一つの濃度が注入された。抗CSF−1RのMab3291(R&D−Systems)及びSC 2−4A5(Santa Cruz Biotechnology,US− Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793も参照)が、参照コントロールとして使用され、抗CCR5の<CCR5>Pz03.1C5(2004年8月18日にDSMZにDSM ACC 2683として寄託された)が陰性コントロールとして使用され、全ては本発明による抗CSF−1R抗体と同じ条件下で使用された。
【0191】
CSF−1R断片のアミンカップリング
製造者の指示に従った標準的なアミンカップリング:ランニングバッファー:PBS−T(Roche:11 666 789+0.05% Tween20:11 332 465)、EDC/NHSの混合物による活性化、ヒトCSF−1R断片delD4(細胞外サブドメインD1−D3及びD5を含む)(配列番号65)及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)を600秒、流速10μl/分で注入;カップリングバッファーNaAc、pH5.0、c=10μg/mLで希釈し;最後に残りの活性化カルボキシル基は、1Mのエタノールアミンの注入によってブロックされた。
【0192】
<CSF−1R>Mab2F11、Mab2E10、Mab3291及びsc2−4A5、及び他の抗CSF−1R抗体のヒトCSF−1R断片delD4及びヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への25℃における結合
【0193】
ランニングバッファー:PBS−T(Roche:11 666 789+0.05%のTween20:11 332 465)
【0194】
分析物サンプル:
結合は、分析物を濃度c=10nMで1回の注入により、30μL/分の流速で測定された。(Mab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7については第二の実験で)。各注入は700秒の長さであり、その後180秒の分離段階が続いた。最終の再生は、各サイクル後に50mMのNaOHを用い、接触時間60秒、流速30μL/分で行われた。
【0195】
シグナルは注入終了後10秒の報告点により測定された。参照シグナル(空の参照フローセル(EDC/NHS及びエタノールアミンのみで処置)由来のシグナル)が差し引かれて、結合シグナルを(RUとして)与えた。非結合抗体の結合シグナルがわずかに0未満であった場合には(Mab 2F11=−3;Mab 2E10=−2;Mab 1G10=−6,Mab 2H7=−9;及びヒト化hMab 2F11−e7=−7)、値は0に設定された。

【0196】
Mab 2F11及びMab 2E10はヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合を示した(図2bを参照);しかし、CSF−1R断片delD4に対しては結合は検出されなかった(図2a参照)。
【0197】
Sc2−4A5およびMAB3291はCSF−1R−ECD及びdel D4への結合を示した(図2b及び2aを参照)。
【0198】
従って、抗CSF−1R抗体Mab 2F11及びMab 2E10のCSF1R断片delD4への結合/抗CSF−1R抗体Mab 2F11及びMab 2E10のCSF−1R−ECDへの結合の比率は明らかに1:50(=0.02)未満であったが、MAB3291及びSc2−4Aの結合比率はそれぞれ1.61及び1.50であって、1:50(=0.02)を超えて大きかった。陰性コントロール抗体m<CCR5>Pz03.1C5はいかなる結合をも示さなかった(予想された通り)。
【0199】
Mab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7はヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)への結合を示したが(図2dを参照);しかしCSF−1R断片delD4に対して、結合は検出されなかった(図2cを参照)。従って、抗CSF1R抗体のMab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7のCSF1R断片delD4への結合/抗CSF1R抗体のMab 1G10、Mab 2H7及びヒト化hMab 2F11−e7のCSF−1R−ECDへの結合の比率は、明らかに1:50(=0.02)未満であった。
【0200】
更なる実験にて、抗CSF−1R抗体1.2.SM(国際公開第2009026303号に記載されたリガンド置換CSF−1R抗体)、CXIIG6(国際公開第2009/112245号に記載されたリガンド置換CSF−1R抗体)、ヤギポリクローナル抗CSF−1R抗体ab10676(abcam)が調べられた。抗CSF−1R抗体のMab3291(R&D−Systems)が参照コントロールとして用いられた。抗CCR5 m<CCR5>Pz03.1C5(DSMZに2004年8月18日にDSM ACC 2683として寄託された)が陰性コントロールとして使用された。

【0201】
1.2.SM、CXIIG6、ab10676及びMAB3291は、CSF−1R−ECDへ及びdel D4への結合を示した(図2f及び2eを参照)。
【0202】
1.2.SM、CXIIG6、ab10676及びMAB3291の結合比率は1:50(=0.02)を超えて大きかった。陰性コントロール抗体m<CCR5>Pz03.1C5はいかなる結合をも示さなかった(予想された通り)。
【0203】
実施例5
抗CSF−1Rモノクローナル抗体による処置下での3次元培養におけるNIH3T3−CSF−1R組換え細胞の増殖阻害(CellTiterGlo−アッセイ)
【0204】
全長の野生型CSF−1R(配列番号62)又は変異体CSF−1R L301S Y969F(配列番号63)の何れかでレトロウイルス性に感染させたNIH 3T3細胞が、プラスチック表面への付着を防ぐためにポリ−HEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))(Polysciences,Warrington,PA,USA))でコーティングされたディッシュ上で、2mMのL−グルタミン、2mmのピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸及び10%ウシ胎児血清(Sigma,Taufkirchen,Germany)を補充されたDMEM高グルコース培地(PAA,Pasching,Austria)で培養された。細胞は、血清を5ng/ml亜セレン酸ナトリウム、10mg/mlトランスフェリン、400μg/mlBSA及び0.05mMの2−メルカプトエタノールで置き換えた培地に播種される。100ng/mlのhuCSF−1(Biomol,Hamburg,Germany)で処置されると、wtCSF−1R発現細胞は3次元的に成長する高密度球状体を形成し、足場非依存性と呼ばれている特性である。これらの球状体はインサイツで固形腫瘍の3次元的な構築と組織化に密接に類似している。変異体CSF−1R組換え細胞はCSF−1リガンドと無関係な球状体を形成する。球状体培養物はIC50(細胞生存率の50パーセント阻害の濃度)を決定するため、異なる濃度の抗体の存在下、3日間インキュベートされた。CellTiterGloアッセイは、細胞のATP含有量の測定により細胞生存率を検出するために用いられた。

【0205】
参照コントロールのMab R&D−Systems 3291は変異体CSF−1R組換え細胞増殖の阻害を示さなかった。
【0206】
さらなる実験では、本発明による抗CSF−1R抗体、hMab 2F11−e7、及び抗CSF−1R抗体、1.2.SM(国際公開第2009026303号に記載されたリガンド置換CSF−1R抗体)、CXIIG6(国際公開第2009/112245号に記載されたリガンド置換CSF−1R抗体)、ヤギポリクローナル抗CSF−1R抗体のab10676(abcam)、及び2−4A5(Santa Cruz Biotechnology,US− Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793も参照)が調べられた。
【0207】
球状体培養物はIC30(細胞生存率の30パーセント阻害の濃度)を決定するため、異なる濃度の抗体の存在下、3日間インキュベートされた。最大濃度は20μg/mlであった。CellTiterGloアッセイは、細胞のATP含有量の測定により細胞生存率を検出するために用いられた。

【0208】
実施例6
抗CSF−1Rモノクローナル抗体で処置下の3次元培養物におけるBeWo腫瘍細胞の増殖阻害(CellTiterGlo−アッセイ)
BeWo絨毛癌細胞(ATCC CCL−98)が、10%FBS及び2mMのL−グルタミンを補充されたF12K培地(Sigma,Steinheim,Germany)で培養された。5x10細胞/ウエルが96穴のポリHEMA(ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))でコーティングされた、0.5%FBS及び5%BSAを補充されたF12K培地を含むプレートに播種された。付随して、200ng/mlのhuCSF−1及び10μg/mlの異なる抗CSF−1Rモノクローナル抗体が添加され、6日間インキュベートされた。細胞生存率を、その細胞のATP含有量を測定することにより相対発光量(RLU)で検出するために、CellTiterGloアッセイが用いられた。BeWo球状体培養物が別々の抗CSF−1R抗体(10μg/ml)で処置されると、CSF−1誘導性増殖の阻害が観察された。抗体媒介性阻害を計算するために、非刺激BeWo細胞の平均のRLU値が全てのサンプルから差し引かれた。CSF−1刺激細胞の平均のRLU値は任意で100%に設定された。CSF−1で刺激され、かつ抗CSF−1R抗体で処置された細胞の平均のRLU値は、CSF−1で刺激されたRLUの%で計算された。表6は、抗CSF−1Rモノクローナル抗体で処置される3次元培養におけるBeWo腫瘍細胞の増殖阻害についての計算されたデータを示す;図1a及びbは規格化された平均のRLU値を表わす。

【0209】
実施例7
抗CSF−1Rモノクローナル抗体による処置下でのヒトマクロファージ分化の阻害(CellTiterGlo−アッセイ)
ヒトの単球がRosetteSepTMヒト単球濃縮カクテル(Human Monocyte Enrichment Cocktail)(StemCell Tech.カタログ番号15028)を用いて末梢血から単離された。濃縮された単球個体群は、37℃、5%のCOの加湿した大気中で、10%FCS(GIBCO−カタログ番号011−090014M),4mMのL−グルタミン(GIBCO−カタログ番号25030)及び1xPenStrep(Roche カタログ番号1 074 440)を補充された100μlのRPMI 1640(Gibco−カタログ番号31870)を含む96穴のマイクロタイタープレートへ播種された(2.5x10細胞/ウエル)。培地に150ng/mlのhuCSF−1が添加されると、接着性マクロファージへの明確な分化が観察された。この分化は抗CSF−1R抗体の添加で阻害された。更に、単球の生存が影響を受けており、CellTiterGlo(CTG)分析により分析することができた。抗体処置による単球の生存の濃度依存性阻害からIC50が計算された(図7を参照)。

【0210】
別の試験シリーズにおいて、Mab 2 F11のヒト化型、例えば、hMab 2F11−c11、hMab 2F11−d8、hMab 2F11−e7、hMab 2F11−f12、は、IC50の値として、0.07μg/ml(hMab 2F11−c11)、0.07μg/ml(hMab 2F11−d8)、0.04μg/ml(hMab 2F11−e7)及び0.09μg/ml(hMab 2F11−f12)を示した。
【0211】
実施例8
抗CSF−1Rモノクローナル抗体による処置下でのカニクイザルマクロファージ分化の阻害(CellTiterGlo−アッセイ)
カニクイザル単球は、CD14 MicroBeadsの非ヒト霊長類キット(Miltenyi Biotec−カタログ番号130−091−097)を製造者の記述に従って使用して、末梢血から単離された。濃縮された単球個体群は、37℃、5%のCOの加湿した大気中で、10%FCS(GIBCO−カタログ番号011−090014M),4mMのL−グルタミン(GIBCO−カタログ番号25030)及び1xPenStrep(Roche カタログ番号1 074 440)を補充された100μlのRPMI 1640(Gibco−カタログ番号31870)を含む96穴のマイクロタイタープレートへ播種された(1−3x10細胞/ウエル)。培地に150ng/mlのhuCSF−1が添加されると、接着性マクロファージへの明確な分化が観察された。この分化は抗CSF−1R抗体の添加で阻害された。更に、単球の生存が影響を受けており、CellTiterGlo(CTG)分析により分析することができた。生存率は 5 μg/ml 濃度の抗体処置で分析された(図8を参照)。

【0212】
実施例9
ヒトCSF−1Rへの抗CSF−1R抗体の結合親和性の決定
【0213】
計測器:ビアコア(登録商標)A100
チップ:CM5(ビアコアBR−1006−68)
カップリング:アミンカップリング
バッファー:PBS(ビアコアBR−1006−72)、pH7.4、35℃
【0214】
親和性の測定において、36μg/mlの抗マウスFcg抗体(ヤギ由来、Jackson Immuno Reasearch JIR115−005−071)が、CSF−1Rに対する抗体を捕獲するためにチップ表面へ結合された。ヒトCSF−1R細胞外ドメイン(CSF−1R−ECD)(細胞外サブドメインD1−D5を含む)(配列番号64)(R&D−Systems 329−MR又はサブクローニングされたpCMV−presS−HisAvitag−hCSF−1R−ECD)が、様々な濃度で溶液に添加された。会合は35℃で1.5分のCSF−1R注入により測定された;解離は35℃で10分間、バッファーでチップ表面を洗浄することで測定された。反応速度論的パラメーターの計算についてはラングミュア1:1モデルが使用された。

【0215】
CSF−1R ECDを使用する別のビアコア結合アッセイにおいて(データ非公開)、抗体Mab 2F11及びMab 2E10の抗体Ab SC−2−4A5との一部の競合が示された。しかし、Mab 2F11/Mab 2E10はヒトCSF−1R断片delD4に結合せず、一方Ab SC−2−4A5はこのdelD4断片に結合する(実施例4及び図2aを参照)。従って、Mab 2F11/Mab 2E10の結合領域はAb SC−2−4A5の結合領域とは明らかに異なるが、恐らく近傍領域に位置している。そうした競合アッセイにおいて、抗体Mab 2F11及びMab 2E10の両方ともR&D−SystemsのMab3291と競合しなかった(データ非公開)。
【0216】
実施例10
抗CSF−1R抗体のヒトCSF−1R断片D1−D3への結合の決定
【0217】
計測器:ビアコアT100(GE Healthcare)
ソフトウエア:T100コントロール,バージョン1.1.11
B3000エバルエーション、バージョン4.01
スクラバー、バージョン2.0a
アッセイ形式チップ:CM5−Chip
【0218】
CSF−1Rに対する抗体は、アミン結合の捕捉分子を介して捕獲された。単一サイクル反応速度論を用い、ヒトCSF−1R断片D1−D3(配列番号66)が、濃度を増加させながら5回注入された。ヒトCSF−1R断片D1−D3は、pCMV−presS−HisAvitag発現ベクターにサブクローニングされた。
【0219】
抗CSF−1R SC 2−4A5(Santa Cruz Biotechnology,US;Sherr, C.J. et al., Blood 73 (1989) 1786-1793)(リガンド−レセプター相互作用を阻害する)及びMab3291(R&D−Systems)が参照コントロールとして用いられた。
【0220】
捕獲分子:本発明による抗体として抗マウスFcg抗体(ヤギ由来、Jackson Immuno Reasearch JIR115−005−071)、及び参照コントロールの抗CSF−1R SC 2−4A5としてR&D−SystemsのコントロールMab3291及び抗ラットFcg抗体(ヤギ由来、Jackson Immuno Reasearch JIR115−005−071)。
【0221】
捕獲分子のアミンカップリング
製造者の指示に従った標準的なアミンカップリング:ランニングバッファー:HBS−Nバッファー、EDC/NHSの混合物による活性化、リガンド密度2000RUを目標;捕獲抗体(Ab)はカップリングバッファー、NaAc、pH4.5、c=10μg/mLで希釈された;最後に、残りの活性化カルボキシル基が1Mのエタノールアミンの注入によってブロックされた。
【0222】
37℃におけるMAbs<CSF−1R>へのヒトCSF−1R断片D1−D3の結合の反応速度論的特性評価
【0223】
ランニングバッファー:PBS(ビアコアBR−1006−72)
【0224】
フローセル2から4におけるMabs<CSF−1R>の捕獲:流速20μL/分、接触時間90秒、c(Abs<CSF−1R>)=50nM、ランニングバッファー+1mg/mLのBSAで希釈;
【0225】
分析物サンプル:
単一サイクル反応速度論が、再生無しで、濃度c=7.8、31.25、125 500および2000nMでの5回の連続した注入により、流速30μL/分で測定された。各注入は30秒の長さであり、その後最初の4回の注入について120秒の分離段階が、最終的に最高濃度において(最後の注入)1200秒の分離段階が続いた。
【0226】
最後の再生が各サイクル後、10mMのグリシンpH1.5(ビアコアBR−1003−54)、接触時間60秒、流速30μL/分を用いて実施された。
【0227】
反応速度論パラメーターは、通常の二重の参照(コントロール参照:分析物の捕獲分子への結合;フローセル:ブランクとしてサブドメインCSF−1Rの濃度「0」)及び「ドリフトを考慮した1:1結合の滴定反応速度論」モデルによる計算を使用することにより計算された。

【0228】
抗体のMab 2F11、Mab 2E10及びMab 1G10はヒトCSF−1R断片D1−D3への結合を示さなかった。
【0229】
また、参照コントロールのAb SC−2−4A5はヒトCSF−1R断片D1−D3へ結合しなかった。
【0230】
参照コントロールのMab R&D−Systems 3291はヒトCSF−1R断片D1−D3への結合を示した。
【0231】
実施例11
カニクイザルにおいてCSF−1R阻害の間CSF−1レベルは増大する。
血清のCSF−1レベルは、抗ヒトCSF−1R二量体阻害剤hMab 2F11−e7のCSF−1R中和活性の薬物動態マーカーを提供する。投与グループあたり一匹のオス及び一匹のメスのカニクイザル(1および10mg/kg)に、抗CSF−1R抗体hMab 2F11−e7が静脈内投与された。CSF−1レベルの分析のために血液サンプルが、処置の前(投与前)の1週間採取され、投与後2、24、48、72、96、168時間、及びその後の2週間について毎週採取された。CSF−1レベルは市販のELISAキット(Quantikine(登録商標)ヒトM−CSF)を使用して、製造業者(R&D Systems,UK)の指示に従って決定された。サルのCSF−1レベルは、キットに与えられたCSF−1の標準的な曲線サンプルと比較して決定された。
【0232】
hMab 2F11−e7の投与はおよそ1000倍というCSF−1の劇的な増大を誘導し、それは48時間(1mg/kg)又は15日間(10mg/kg)続いて投与された量に依存する。従って、CSF−1Rの二量体化阻害剤は、リガンド置換抗体とは対照的に、レセプターへの結合について劇的に上方制御されたリガンドと直接的には競合しないという利点を与える。
【0233】
実施例12
インビボでの有効性−SCIDベージュマウスにおける乳癌BT20の異種移植片腫瘍細胞における抗CSF−1R抗体の腫瘍増殖阻害
ヒト乳癌細胞株BT−20はヒトCSF−1Rを発現するが、CSF−1の発現を欠いている (Sapi, E. et al Cancer Res 59 (1999) 5578-5585)。CSF−1由来のマウスは腫瘍細胞でヒトCSF−1Rを活性化できないため、組換えヒトCSF−1(Biomol,Hamburg,Germany)は、連続的なCSF−1注入速度として2μg/日をもたらす浸透圧ミニポンプ(ALZET,Cupertino,CA)を介してを補充された(Martin,T.A.,Carcinogenesis 24(2003)1317−1323)。
【0234】
リガンド置換CSF−1R抗体によるCSF−1Rの2量体化を妨げる抗体の有効性を直接比較するため、我々は、BT−20異種移植モデルにおいて、キメラ抗CSF−1R Mab 2F11(CSF−1Rの2量体化を妨げる抗体)及び1.2.SM(国際公開第2009026303号に記載されたリガンド置換CSF−1R抗体)を調べた。
【0235】
SCIDベージュマウス(Charles River,Sulzfeld,Germany)に、1x10細胞のBT20細胞(ATCC HTB−19)および100μlのマトリゲルを一緒に皮下注射した。動物の治療は、平均的な腫瘍体積が100mmである、無作為の日に開始した。マウスは毎週1回、20mMのヒスチジン、140mMのNaCl、pH6.0のバファー中のそれぞれの抗体を腹腔内に処置される(図4参照)。腫瘍の寸法は、全治療期間中、診断日と、その後週に2回ノギスで測定される。腫瘍体積はNCIのプロトコールに従って計算される(腫瘍重量=1/2ab2、ここで「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の長径と短径である)。
【0236】
腫瘍増殖の分析は図4に示される。キメラ抗CSF−1R Mab 2F11による腫瘍細胞のヒトCSF−1Rの阻害は、抗CSF−1R抗体1.2.SM(国際公開第2009026303号に記載のCSF−1R抗体)よりも、腫瘍増殖阻害の媒介において統計的にさらに有効であった。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCSF−1Rへ結合する抗体であって、ヒトCSF−1R断片delD4(配列番号65)とヒトCSF−1R細胞外ドメイン(配列番号64)に1:50か又はそれ以下の比率で結合することを特徴とする抗体。
【請求項2】
a)重鎖可変ドメインが配列番号7で、軽鎖可変ドメインが配列番号8であり;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15で、軽鎖可変ドメインが配列番号16であり;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75で、軽鎖可変ドメインが配列番号76であり;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83で、軽鎖可変ドメインが配列番号84であり;
またはそれらのヒト化型であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
a)重鎖可変ドメインが配列番号23で、軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31で、軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39で、軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47で、軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55で、軽鎖可変ドメインが配列番号56であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含み;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含み;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含み;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含み;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含み;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含み;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含み;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含み;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
抗体がヒトIgG1サブクラスのものであるか又はヒトIgG4サブクラスのものであることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1から5に記載の抗体を含有することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項7】
癌の治療のための請求項1から5に記載の抗体。
【請求項8】
骨量減少の治療のための請求項1から5に記載の抗体。
【請求項9】
転移の予防又は治療のための請求項1から5に記載の抗体。
【請求項10】
炎症性疾患の治療のための請求項1から5に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が請求項2又は3に記載の可変ドメインを含むことを特徴とする、CSF−1Rへ結合する抗体の重鎖をコードする核酸。
【請求項12】
原核生物又は真核生物の宿主細胞において、請求項1から5に記載の抗体を発現させるために、請求項11に記載の核酸を含むことを特徴とする発現ベクタ−。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含む、原核生物又は真核生物の宿主細胞。
【請求項14】
請求項1から5に記載の組換え抗体を産生するための方法であって、原核生物又は真核生物の宿主細胞において請求項11に記載の核酸を発現させ、該抗体を該細胞から又は該細胞培養上清から回収することを特徴とする方法。
【請求項15】
癌の治療のための医薬の製造のための請求項1から5に記載の抗体の使用。
【請求項16】
骨量減少の治療のための医薬の製造のための請求項1から5に記載の抗体の使用。
【請求項17】
転移の治療のための医薬の製造のための請求項1から5に記載の抗体の使用。
【請求項18】
炎症性疾患の治療のための医薬の製造のための請求項1から5に記載の抗体の使用。
【請求項19】
患者に請求項1から5に記載の抗体を投与することを特徴とする、癌に罹患した患者の治療のための方法。
【請求項20】
患者に請求項1から5に記載の抗体を投与することを特徴とする、骨量減少に罹患した患者の治療のための方法。
【請求項21】
患者に請求項1から5に記載の抗体を投与することを特徴とする、転移に罹患した患者の治療のための方法。
【請求項22】
患者に請求項1から5に記載の抗体を投与することを特徴とする、炎症性疾患に罹患した患者の治療のための方法。
【請求項23】
a)重鎖可変ドメインが配列番号7で、軽鎖可変ドメインが配列番号8であり;
b)重鎖可変ドメインが配列番号15で、軽鎖可変ドメインが配列番号16であり;
c)重鎖可変ドメインが配列番号75で、軽鎖可変ドメインが配列番号76であり;
d)重鎖可変ドメインが配列番号83で、軽鎖可変ドメインが配列番号84であり;
またはそれらのヒト化型であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体。
【請求項24】
a)重鎖可変ドメインが配列番号23で、軽鎖可変ドメインが配列番号24である;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号31で、軽鎖可変ドメインが配列番号32である;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号39で、軽鎖可変ドメインが配列番号40である;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号47で、軽鎖可変ドメインが配列番号48である;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号55で、軽鎖可変ドメインが配列番号56であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体。
【請求項25】
a)重鎖可変ドメインが配列番号1のCDR3領域、配列番号2のCDR2領域、及び配列番号3のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号4のCDR3領域、配列番号5のCDR2領域、及び配列番号6のCDR1領域を含み;又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号9のCDR3領域、配列番号10のCDR2領域、及び配列番号11のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号12のCDR3領域、配列番号13のCDR2領域、及び配列番号14のCDR1領域を含み;又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号17のCDR3領域、配列番号18のCDR2領域、及び配列番号19のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号20のCDR3領域、配列番号21のCDR2領域、及び配列番号22のCDR1領域を含み;又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号25のCDR3領域、配列番号26のCDR2領域、及び配列番号27のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号28のCDR3領域、配列番号29のCDR2領域、及び配列番号30のCDR1領域を含み;又は
e)重鎖可変ドメインが配列番号33のCDR3領域、配列番号34のCDR2領域、及び配列番号35のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号36のCDR3領域、配列番号37のCDR2領域、及び配列番号38のCDR1領域を含み;又は
f)重鎖可変ドメインが配列番号41のCDR3領域、配列番号42のCDR2領域、及び配列番号43のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号44のCDR3領域、配列番号45のCDR2領域、及び配列番号46のCDR1領域を含み;又は
g)重鎖可変ドメインが配列番号49のCDR3領域、配列番号50のCDR2領域、及び配列番号51のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号52のCDR3領域、配列番号53のCDR2領域、及び配列番号54のCDR1領域を含み;又は
h)重鎖可変ドメインが配列番号69のCDR3領域、配列番号70のCDR2領域、及び配列番号71のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号72のCDR3領域、配列番号73のCDR2領域、及び配列番号74のCDR1領域を含み;又は
i)重鎖可変ドメインが配列番号77のCDR3領域、配列番号78のCDR2領域、及び配列番号79のCDR1領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号80のCDR3領域、配列番号81のCDR2領域、及び配列番号82のCDR1領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗体であることを特徴とする、ヒトCSF−1Rへ結合する抗体。
【請求項26】
抗体がヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする、請求項23から25の何れか一項に記載の抗体。
【請求項27】
請求項23から26に記載の抗体を含有することを特徴とする薬学的組成物。

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図2e】
image rotate

【図2f】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−513367(P2013−513367A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542522(P2012−542522)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069090
【国際公開番号】WO2011/070024
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】