説明

充填ポリオレフィン組成物

(A)10重量%〜75重量%のポリプロピレン成分;(B)20重量%〜80重量%の充填剤;(C)3%〜50%のポリブテン−1成分;を含み、(A)、(B)、及び(C)の割合は(A)、(B)、及び(C)の合計に対するものである、充填ポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性と機械特性との改良されたバランスを有する、充填剤を含むポリオレフィン組成物に関する。
特に、本発明の組成物は、相当量及び更に非常に多量の充填剤の存在にもかかわらず、非常に好ましく独特の機械特性のバランスと関連して比較的高いメルトフローレート(以下、MFRと略称する)の値を達成することができる。
【背景技術】
【0002】
WO2008/074715において説明されているように、かかる特性の高いバランスは、プロピレンポリマーとエラストマーポリマーの特定のブレンドに充填剤を加えることによって達成することができることは既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/074715
【発明の概要】
【0004】
更なる研究の結果、この種の組成物において、耐クリープ性及び成形型を満たす能力を、複雑なデザインを有していても、溶融状態で、ポリブテン−1成分を加えることによって、エラストマー成分の不存在下においても著しく向上させることができることを見出した。
【0005】
したがって、本発明は、
(A)10重量%〜75重量%のポリプロピレン成分;
(B)20重量%〜80重量%の充填剤;
(C)3%〜50%のポリブテン−1成分;
を含み、(A)、(B)、及び(C)の割合は(A)、(B)、及び(C)の合計に対するものである、充填ポリオレフィン組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ポリプロピレン成分(A)は、好ましくは、プロピレンホモポリマー、5モル%以下のエチレン及び/又は1種類又は複数のC〜C10αオレフィンを含むプロピレンコポリマー、並びにかかるホモポリマー及びコポリマーの組合せから選択される。
【0007】
ISO−1133にしたがって2.16kgの負荷を用いて230℃において測定したポリプロピレン成分(A)のメルトフローレート(以下、MFRと呼ぶ)は、一般に0.3〜2500g/10分、好ましくは70〜2500g/10分、より好ましくは500〜2500g/10分、最も好ましくは1200〜2500g/10分である。
【0008】
成分(A)のMFR値は、異なるMFR値を有する種々のプロピレンのホモポリマー及び/又はコポリマーを混合することによって得ることができる。
かかる場合において、(A)に関するMFR値は、ポリオレフィン組成物のMFRと個々の成分のMFRとの間の公知の相関関係を用いて、単一のポリマーの量及びMFR値に基づいて容易に求めることができ、これは例えば2つのポリマー成分A及びAの場合には次式:
ln MFR=[W/(W+W)]×ln MFR+[W/(W+W)]×ln MFR
(ここで、W及びWは、それぞれ成分(A)及び(A)の重量を表し、一方、MFRは(A)に関するMFRの計算値を表し、MFR及びMFRは、それぞれ成分(A)及び(A)のMFRを表す)
のように表すことができる。
【0009】
かかるプロピレンのホモポリマー及び/又はコポリマーの組合せ(ブレンド)をポリプロピレン成分(A)として用いる場合には、その差が少なくとも3g/10分、好ましくは少なくとも10g/10分である異なるMFR値を有する少なくとも2種類のホモポリマー及び/又はコポリマーをブレンドすることが有利である。
【0010】
特に、及び好ましくはポリプロピレン成分(A)のMFRが500g/10分未満、より好ましくは0.3〜450g/10分、最も好ましくは0.3乃至70g/10分未満である場合には、かかる成分(A)はかかるプロピレンのホモポリマー及びコポリマーから選択される2種類のポリマーフラクション(A)及び(AII)を含んでいてよく、フラクション(AII)は(A)と比べてより高いMFR値を有し、かかるMFR値の差は上記に記載の通りである。好ましくは、フラクション(AII)は、500〜2500g/10分、より好ましくは1200〜2500g/10分のMFR値を有する。
【0011】
かかるフラクションの好ましい量は、全て(A)の全重量に対して、5〜80重量%の(A)及び20〜95重量%の(AII)、より好ましくは10〜70重量%の(A)及び30〜90重量%の(AII)である。
【0012】
更に、かかるMFR値は好ましくは分解処理を行わないで得られる。言い換えれば、ポリプロピレン成分(A)は、好ましくは重合後にMFR値を実質的に変化させることができる処理にかけていない重合したままのプロピレンポリマーから構成される。したがって、ポリプロピレン成分(A)の分子量も、実質的に、プロピレンポリマーを製造するのに用いる重合プロセスにおいて直接得られるものである。
【0013】
或いは(好ましくはないが)、かかるMFR値はより低いMFR値を有するプロピレンポリマーの分解(ビスブレーキング)によって得られる。
ポリプロピレン成分(A)に関するMFR値は全て、ISO−1133にしたがって2.16kgの負荷を用いて230℃において測定する。
【0014】
好ましくは、本発明の組成物は、(A)、(B)、及び(C)の合計重量に対して、10重量%〜60重量%、より好ましくは15重量%〜50重量%、特に20重量%又は22重量%〜50重量%の(A)、25重量%〜75重量%、より好ましくは40重量%〜70重量%の(B)、及び5重量%〜45重量%、より好ましくは8重量%〜40重量%、特に8重量%〜35重量%の(C)を含む。
【0015】
ポリプロピレン成分(A)中に存在させることができるプロピレンコポリマー中のコモノマーは、エチレン、及び/又は、例えばブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1のようなC〜C10αオレフィンから選択される。好ましいコモノマーはエチレン及びブテン−1である。
【0016】
ポリプロピレン成分(A)のプロピレンのポリマー及びコポリマーは全て、重合プロセスにおいてチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセンベースの触媒を用いることによって製造することができる。
【0017】
かかる触媒及び重合プロセスは当該技術において公知である。
連鎖移動剤(例えば水素又はZnEt)のような当該技術において公知の通常の分子量調整剤を用いることができる。
【0018】
チーグラー・ナッタ触媒の好ましい例は、トリアルキルアルミニウム化合物、場合によっては電子ドナー、並びに、無水塩化マグネシウム上に担持されている、Tiのハロゲン化物又はハロゲン−アルコラート及び場合によっては電子ドナー化合物を含む固体触媒成分を含む担持触媒系である。上記記載の特徴を有する触媒は特許文献において周知である。USP4,399,054及びEP−A−45977に記載されている触媒が特に有利である。他の例はUSP4,472,524において見ることができる。
【0019】
ポリプロピレン成分(A)のプロピレンポリマーを製造するのに適している具体的なチーグラー・ナッタ触媒及び重合プロセスの例は、EP0622380に開示されている。
好ましくは、かかるEP0622380において開示されているように、チーグラー・ナッタ触媒を用いてポリプロピレン成分(A)のプロピレンポリマーを製造する場合には、それらは600〜1000g/10分の範囲のMFRにおいて100,000〜60,000のMw値、及び1000g/10分より高いMFRにおいて140,000以上のMz値を有する。
【0020】
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されるかかるプロピレンポリマーに関する他の好ましい特徴は、
・2.5〜2.8のMz/Mw値;
・室温(約25℃)においてキシレン中に不溶の重量フラクションの観点で95%以上、より好ましくは97%以上のアイソタクチシティーインデックス;
である。
【0021】
或いは、上述したように、ポリプロピレン成分(A)のプロピレンポリマーは、メタロセンベースの触媒系の存在下での重合によって得られる。
重合条件は、一般にチーグラー・ナッタ触媒と共に用いるものと異なる必要はない。
【0022】
好ましいメタロセンベースの触媒系は、
(a)式(I):
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、
Mは、元素周期律表の第3、4、5、6族、又はランタニド族若しくはアクチニド族に属する遷移金属であり;好ましくは、Mはチタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり;
Xは、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、或いはR、OR、OSOCF、OCOR、SR、NR、又はPR基であり、ここでRは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で、環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;好ましくは、Rは線状又は分岐のC〜C20アルキル基であり;或いは2つのXは、場合によっては、置換若しくは非置換のブタジエニル基又はOR’O基を形成してもよく、ここでR’は、C〜C40アルキリデン、C〜C40アリーリデン、C〜C40アルキルアリーリデン、又はC〜C40アリールアルキリデン基から選択される2価の基であり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又はR基であり;より好ましくは、Xは塩素、又はC〜C10アルキル基、例えばメチル又はエチル基であり;
Lは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む2価のC〜C40炭化水素基、或いは5個以下のケイ素原子を含む2価のシリリデン基であり;好ましくは、Lは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、C〜C40アルキリデン、C〜C40シクロアルキリデン、C〜C40アリーリデン、C〜C40アルキルアリーリデン、又はC〜C40アリールアルキリデン基、並びに5個以下のケイ素原子を含むシリリエン基、例えばSiMe、SiPhから選択される2価の橋架基であり;好ましくは、Lは基:(Z(R”)であり;ここで、Zは炭素又はケイ素原子であり、nは1又は2であり、R”は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含むC〜C20炭化水素基であり;好ましくは、R”は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で、環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;より好ましくは、基:(Z(R”)は、Si(CH、SiPh、SiPhMe、SiMe(SiMe)、CH、(CH、及びC(CHであり;更により好ましくは、(Z(R”)はSi(CHであり;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含むC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、Rは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含む、線状又は分岐で、環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;より好ましくは、Rは、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;
、R、R、及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を含むC〜C40炭化水素基であり;或いはR、R、R、及びRの中の2つのR基は、不飽和であっても飽和であってもよく、場合によっては元素周期律表の第14〜16族に属するヘテロ原子を含むC〜C環を形成し;形成される環はC〜C20炭化水素置換基を有していてもよい)
のメタロセン化合物;
(b)少なくとも1種類のアルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;
を接触させることによって得ることができる。
【0025】
メタロセン化合物(a)の具体例は、rac−ジメチルシリルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドである。
アルモキサンは、式:
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、置換基Uは、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、但し少なくとも1つのUはハロゲンとは異なる)
のタイプの少なくとも1つの基を含む、線状、分岐、又は環式の化合物であると考えられる。
【0028】
特に、線状化合物の場合には、式:
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、nは0又は1〜40の整数であり、置換基Uは上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができ;或いは、環式化合物の場合には、式;
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、nは2〜40の整数であり、U置換基は上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができる。
好適なアルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ(2,4,4−トリメチルペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ(2,3−ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)、及びテトラ(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
【0033】
アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の例は、式:D(式中、Dは、ブレンステッド酸であり、プロトンを供与し、式(I)のメタロセンの置換基Xと不可逆的に反応することができ、Eは、適合しうるアニオンであり、2つの化合物の反応から生成する活性触媒種を安定化することができ、十分に不安定でオレフィン性モノマーによって除去することができる)の化合物である。好ましくは、アニオンEは1つ以上のホウ素原子を含む。より好ましくは、アニオンEは、式:BAr(−)(式中、置換基Arは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなアリール基である)のアニオンである。WO91/02012に記載されているテトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートが特に好ましい化合物である。更に、式:BArの化合物を好都合に用いることができる。このタイプの化合物は、例えば、国際特許出願WO92/00333に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の他の例は、式:BArP(式中、Pは、置換又は非置換ピロール基である)の化合物である。これらの化合物は、WO01/62764に記載されている。これらのホウ素原子を含む化合物は全て、約1:1〜約10:1、好ましくは1:1〜2:1の範囲、より好ましくは約1:1の、ホウ素とメタロセンの金属との間のモル比で用いることができる。
【0034】
メタロセンベースの触媒系を用いて製造されるかかるプロピレンポリマーに関する他の好ましい特徴は、
・4より低く、より好ましくは3より低く、最も好ましくは2.7より低い分子量分布Mw/Mn;
13C−NMRによって測定して90%より高く、より好ましくは92%より高いアイソタクチックペンタド(mmmm);
・2重量%より低く、より好ましくは1.6重量%より低い25℃におけるキシレン可溶分;
・DSCによって測定して143℃より高い融点;
である。
【0035】
ポリプロピレン成分(A)にはまた、0.1〜30g/10分のMFR値を有する上記に定義のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーから構成されるフラクション(A)を含ませることもできる。かかるフラクション(A)は、通常の重合プロセスにおいて通常の触媒(チーグラー・ナッタ又はメタロセンベース)を用いて製造することができる。
【0036】
かかるフラクション(A)の好ましい特徴は、
・0.5〜20g/10分のMFR値;
・室温(約25℃)においてキシレン中に不溶の重量フラクションの観点で、92%以上、より好ましくは95%以上のアイソタクチシティーインデックス;
・9モル%以下、より好ましくは5モル%以下の1種類又は複数のコモノマーの量;
・>4、より好ましくは>7、最も好ましくは>10のMw/Mn;
・230℃において測定して1.50cNより高く、特に1.60〜12.00cN、より好ましくは1.60〜8.00cNの範囲の溶融強度;
である。
【0037】
(A)中に存在させることができる1種類又は複数のコモノマーの例は、ポリプロピレン成分(A)に関して上記に定義したものと同じである。
10以上のMw/Mn値を有するプロピレンのホモポリマー及びコポリマーを製造するために、異なる量の分子量調整剤(特に水素)を用いて2以上の段階で重合プロセスを行うことができる。好ましくは気相中で行うかかる種類のプロセスの例がEP0573862に開示されている。
【0038】
また、少なくとも2つの相互接続重合区域内で行う気相重合プロセスを用いてかかるホモポリマー及びコポリマーを製造することもでき、好ましい。かかる重合プロセスは、ヨーロッパ特許EP782587及び国際特許出願WO00/02929に記載されている。
【0039】
このプロセスは第1及び第2の相互接続重合区域内において行い、そこに触媒系の存在下でプロピレンとエチレン又はプロピレンとα−オレフィンを供給し、そこから製造されたポリマーを排出する。成長ポリマー粒子を、迅速流動化条件下で第1のかかる重合区域(昇流管)を通して流し、かかる第1の重合区域から排出して第2のかかる重合区域(降流管)に導入し、これを通して重力の作用下において緻密化形態で流し、かかる第2の重合区域から排出してかかる第1の重合区域中に再導入し、これによって2つの重合区域の間のポリマーの循環を形成する。一般に、第1の重合区域内での迅速流動化条件は、モノマー気体混合物を成長ポリマーの再導入点より下側でかかる第1の重合区域中に供給することによって形成される。第1の重合区域中への輸送ガスの速度は、運転条件下における輸送速度よりも高く、通常は2〜15m/秒である。第2の重合区域においては、ポリマーが重力の作用下において緻密化形態で流れ、固体の密度がポリマーの嵩密度付近の高い値に達し、このため流れの方向に沿って圧力の正の利得を得ることができ、これによりポリマーを機械的手段を用いることなく第1の反応区域中に再導入することが可能になる。このようにして、2つの重合区域の間の圧力のバランス、及びシステム中へ導入されるヘッドロスによって画定される「ループ」循環が形成される。場合によっては、窒素又は脂肪族炭化水素のような1種類以上の不活性ガスを、不活性ガスの分圧の合計が好ましくは気体の全圧の5〜80%となるような量で重合区域内に保持する。例えば温度のような運転パラメーターは、気相オレフィン重合プロセスにおいて通常的なもの、例えば50℃〜120℃、好ましくは70℃〜90℃である。このプロセスは、0.5〜10MPa、好ましくは1.5〜6MPaの運転圧力下で行うことができる。好ましくは、種々の触媒成分は、第1の重合区域の任意の位置で第1の重合区域に供給する。しかしながら、これらは、第2の重合区域の任意の位置に供給することもできる。
【0040】
重合プロセスにおいては、昇流管内に存在する気体及び/又は液体混合物が降流管に侵入することを完全か又は部分的に抑止し、昇流管内に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体及び/又は液体混合物を降流管中に導入することができる手段を与える。好ましい態様によれば、1以上の導入ラインを通して、昇流管内に存在する気体混合物とは異なる組成を有するかかる気体及び/又は液体混合物を降流管中へ導入することは、昇流管内に存在する気体混合物が降流管に侵入するのを抑止するのに有効である。降流管に供給する異なる組成の気体及び/又は液体混合物は、場合によっては、部分的か又は完全に液化した形態で供給することができる。成長ポリマーの分子量分布は、国際特許出願WO00/02929の図4に図示されている反応器内で重合プロセスを行い、且つ1種類又は複数のコモノマー及び通常の分子量調整剤、特に水素を、少なくとも1つの重合区域中、好ましくは昇流管中に異なる割合で独立して計量投入することによって好都合に調整することができる。
【0041】
本発明の組成物において用いる充填剤成分(B)は有機又は無機であってよい。
有機及び無機の両方の繊維、並びに他の無機充填剤(繊維とは異なる)、例えば金属フレーク、ガラスフレーク、粉砕ガラス、ガラス小球体、及び無機充填剤、例えばタルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪灰石又は一般的にシリケート、カオリン、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物が好ましい。
【0042】
他の好適な充填剤は木粉である。
本組成物に好適な繊維としては、フィラメント形態の、ガラス、金属、セラミック、黒鉛、及び有機ポリマー、例えばポリエステル、及びナイロン、例えばアラミドで構成されている繊維が挙げられ、これらは全て商業的に入手できる。
【0043】
ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維は、ガラス切断繊維又はガラス長繊維のいずれかであってよく、或いは連続フィラメント繊維の形態であってよいが、短繊維又はチョップドストランドとしても知られるガラス切断繊維を用いることが好ましい。
【0044】
一般に、ガラス繊維は1〜50mmの長さを有していてよい。
本発明の組成物において用いるガラス切断繊維又は短繊維は、好ましくは、1〜6mm、より好ましくは3〜4.5mmの長さ、及び10〜20μm、より好ましくは12〜14μmの直径を有する。
【0045】
充填剤へのポリマー材料の最適の接着を達成するために、本発明のポリオレフィン組成物に相溶化剤(Q)を含ませることもできる。
用いることができる1つのタイプは、充填剤をより疎水性、したがってポリマーとより相溶性にするように働く反応性極性基を有する低分子量化合物である。好適な化合物は、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アミドシラン、又はアクリロシランのようなシラン類である。
【0046】
しかしながら、相溶化剤は、好ましくは、変性(官能化)ポリマー、及び場合によっては反応性極性基を有する低分子量化合物を含む。変性オレフィンポリマー、特にプロピレン及びブテン−1のホモポリマー及びコポリマー、例えばエチレン及びプロピレンの互いとのコポリマーか又は他のα−オレフィンとのコポリマーが、本発明の組成物の成分(A)及び(C)と非常に相溶性であるので最も好ましい。変性ポリエチレンも同様に用いることができる。
【0047】
構造の観点からは、変性ポリマーは、好ましくはグラフト又はブロックコポリマーから選択される。
これに関し、特に酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、第1級及び第2級アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリン、及びエポキシド、並びにイオン性化合物から選択される極性化合物から誘導される基を含む変性ポリマーが好ましい。
【0048】
かかる極性化合物の具体例は、不飽和環式無水物及びそれらの脂肪族ジエステル、並びに二酸誘導体である。特に、無水マレイン酸、並びにC〜C10線状及び分岐ジアルキルマレエート、C〜C10線状及び分岐ジアルキルフマレート、無水イタコン酸、C〜C10線状及び分岐イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの混合物から選択される化合物を用いることができる。
【0049】
変性ポリマーとして無水マレイン酸をグラフトしたプロピレン又はブテン−1ポリマーを用いることが特に好ましい。
低分子量化合物は、充填剤を変性ポリマーに結合させ、それによってそれをプロピレンポリマー成分(A)にしっかりと結合させるように働く。これらは通常は二官能性化合物であり、この場合、1つの官能基は充填剤との結合相互作用に寄与することができ、第2の官能基は変性ポリマーとの結合相互作用に寄与することができる。低分子量化合物は、好ましくはアミノ又はエポキシシラン、より好ましくはアミノシランである。
【0050】
充填剤(B)がガラス繊維を含む場合には、アミノシランはシランヒドロキシル基によってガラス繊維に結合し、一方、アミノ基は例えば無水マレイン酸をグラフとしたポリプロピレンとの安定なアミド結合を形成する。
【0051】
ガラス繊維を組成物中に導入する前に、低分子量化合物をガラス繊維に施すことが特に有利である。
変性ポリマーは、簡単な方法で、例えばEP0572028に開示されているように遊離基生成剤(例えば有機ペルオキシド)の存在下でのポリマーの例えば無水マレイン酸と一緒の反応性押出によって製造することができる。
【0052】
変性ポリマー中の極性化合物から誘導される基の好ましい量は0.5〜3重量%である。
変性ポリマーに関するMFRの好ましい値は50〜400g/10分である。
【0053】
また、充填剤及び相溶化剤を予め混合した形態で含むマスターバッチを用いることもできる。
一般に、本発明のポリオレフィン組成物中の相溶化剤(Q)の量は、(A)、(B)、(C)、及び(Q)の合計重量に対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0054】
本発明のポリオレフィン組成物において用いるポリブテン−1成分(C)は、一般に、ブテン−1のホモポリマー、ブテン−1と、エチレン、プロピレン、並びに、例えばペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1のようなC〜C10α−オレフィンから選択される少なくとも1種類のコモノマーとのコポリマー、並びにかかるホモポリマー及びコポリマーの組合せから選択される。
【0055】
かかるホモポリマー及びコポリマーはアモルファス又は結晶質であってよい。
結晶質の場合には、これらは好ましくは、NMRを用いてmmmmペンタド/全ペンタド、及び0℃においてキシレン中に可溶の物質の重量の量の両方として測定して25〜99%、より好ましくは40〜99%のアイソタクチシティーインデックスを有する。
【0056】
ブテン−1の好適なコポリマーは、好ましくは、30モル%以下、より好ましくは1〜25モル%のかかるコモノマーを含むものである。
ISO−1133にしたがって2.16kgの負荷を用いて190℃において測定した成分(C)のMFR(以下、MFRと呼ぶ)は、好ましくは0.1〜1500g/10分である。
【0057】
具体的には、(C)に関して好ましいMFR値は0.1〜5g/10分である。
ポリブテン−1成分(C)としてブテン−1のかかるホモポリマー及び/又はコポリマーの組合せ(ブレンド)を用いる場合には、MFRの異なる値を有し、差が少なくとも0.4g/10分である少なくとも2種類のホモポリマー及び/又はコポリマーをブレンドすることが有利である可能性がある。
【0058】
特に、成分(C)には、ブテン−1のかかるホモポリマー及びコポリマーから選択される2種類のポリマーフラクション(C)及び(CII)(ここでフラクション(CII)は(C)と比べてより高いMFR値を有し、かかるMFR値の差は上記に記載の通りである)を含ませることができる。
【0059】
好ましくは、フラクション(C)は0.01〜12g/10分のMFR値を有し、フラクション(CII)は、0.7〜1200g/10分、より好ましくは2〜1000g/10分のMFR値を有する。
【0060】
かかるフラクションの好ましい量は、(C)の全重量に対して20〜95重量%の(C)及び5〜80重量%の(CII)である。
かかるホモ及びコポリマーは、ブテン−1の低圧チーグラー・ナッタ重合によって、例えばブテン−1(及び任意のコモノマー)を、TiClベースの触媒、又は塩化マグネシウム上に担持されているチタンのハロゲン化化合物(特にTiCl)、並びに好適な共触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物)を用いて重合することによって得ることができる。
【0061】
例えばWO03/042258に開示されているように、ブテンポリマーはまた、メタロセン化合物をアルモキサンと接触させることによって得られる触媒の存在下での重合によって製造することもできる。
【0062】
本発明によるポリオレフィン組成物は成分を溶融及び混合することによって得ることができ、混合は、混合装置内において、一般に180〜310℃、好ましくは190〜280℃、より好ましくは200〜250℃の温度で行う。
【0063】
この目的のために任意の公知の装置及び技術を用いることができる。
これに関して有用な混合装置は、特に押出機又は混練機であり、二軸押出機が特に好ましい。また、成分を混合装置内において室温で予め混合することもできる。
【0064】
混合装置内の摩擦及び繊維の破断(充填剤として繊維を用いる場合)を減少させるために、成分(A)、(C)、及び場合によっては成分(Q)を初めに溶融し、続いて成分(B)を溶融体と混合することが好ましい。
【0065】
本発明のポリオレフィン組成物の製造中においては、主成分(A)、(B)、及び(C)、及び場合によっては若干の相溶化剤(Q)に加えて、安定剤(熱、光、UVに対する)、可塑剤、耐酸剤、静電防止剤、及び撥水剤のような当該技術において通常的に用いられている添加剤を導入することができる。特に、本発明のポリオレフィン組成物には成核剤を含ませることもできる。
【0066】
成核剤の例は、ナトリウム2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、タルク、安息香酸ナトリウム、N,N’−エチレンビスステアラミド、ステアラミド、ジベンジリデンソルビトール及びその誘導体、例えば特にメチルベンジリデンソルビトール及び3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール、アルミニウムビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、並びにWO2008/064957及びWO2008/064958に開示されている化合物である。
【0067】
一般に、成核剤は組成物の全重量に対して0.03〜1重量%の量で存在させる。
本発明の組成物に関する特に好ましい特徴は、
・密度:1.05〜2kg/dm
・曲げ弾性率:2000〜17000MPa、より好ましくは4000〜15000MPa;
・引張弾性率:2000〜18000MPa、より好ましくは4000〜16000MPa;
・23℃におけるノッチなしシャルピー:30〜200kJ/m、より好ましくは50〜85kJ/m
・−30℃におけるノッチなしシャルピー:30〜150kJ/m、より好ましくは50〜90kJ/m
・23℃におけるノッチ付きシャルピー:6〜200kJ/m、より好ましくは12〜25kJ/m
・−30℃におけるノッチ付きシャルピー:6〜150kJ/m、より好ましくは8〜30kJ/m
・破断点引張強さ:50〜140MPa、より好ましくは80〜135MPa;
・破断点伸び:1〜200%、特に1.5〜30%;
・HDT1.8MPa:60〜155℃、より好ましくは110〜155℃;
・破断までの時間:105℃、17MPaにおけるクリープ試験において、18〜300時間、より好ましくは50〜200時間;
・スパイラルフロー長さ:実施例において報告する条件下で測定して10MPaにおいて1000mm以上、特に1200mm以上;
である。
【0068】
それらの好ましい特性のバランスのために、本発明の組成物は、射出成形物品、特に自動車用部品、電気器具、家具、又は一般的な成形物品、特にシート、電気器具用の部品、家具、家庭用品、パイプ及び接続システム、或いは超充填マスターバッチなどの多くの用途において用いることができる。
【0069】
特に、成分(B)の量が特に高い、例えば(A)、(B)、及び(C)の合計重量に対して60重量%〜80重量%である場合には、本発明の組成物は、更なるポリマーとブレンドすることによって充填剤をポリマー組成物、特にポリオレフィン組成物中に導入するための濃縮液として有利に用いることもできる。
【0070】
更に、本発明の組成物は、繊維/充填剤の痕跡が減少しているか又は存在しない特に平滑な表面を示す。これは、特定の自動車又は電気器具用などの好ましい美観特性を有する最終物品が好ましい場合に特に望ましい特性である。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は例示のために与えるものであり、限定目的ではない。
以下の分析法を用いて、明細書及び実施例において報告する特性を求めた。
メルトフローレート(MFR):ISO−1133にしたがって、プロピレンポリマーに関しては2.16kgの負荷を用いて230℃において、或いはブテン−1ポリマーに関しては2.16kgの負荷を用いて190℃において測定した。
【0072】
固有粘度:テトラヒドロナフタレン中135℃において測定した。
密度:ISO−1183にしたがった。
曲げ弾性率(セカント):ISO−178にしたがい、ISO−527−1タイプ1AのTバーからの80×10×4mmの長方形の試験片について測定した。
【0073】
引張弾性率(セカント):ISO−527/−1、−2にしたがい、タイプ1Aの試験片について、1mm/分の速度、50mmのスパンを用いて測定した。
ノッチなしシャルピー:ISO−179(タイプ1、エッジワイズ)にしたがい、ISO−527−1タイプ1AのTバーからの80×10×4mmの長方形の試験片について測定した。
【0074】
ノッチ付きシャルピー:ISO−179(タイプ1、エッジワイズ、ノッチA)にしたがい、ISO−527−1タイプ1AのTバーからの80×10×4mmの長方形の試験片について測定した。
【0075】
破断点引張強さ:ISO−527/−1、−2にしたがい、タイプ1Aの試験片について、50mm/分の速度、50mmのスパンを用いて測定した。
破断点伸び:ISO−527/−1、−2にしたがい、タイプ1Aの試験片について、50mm/分の速度、50mmのスパンを用いて測定した。
【0076】
HDT(1.80MPa)(熱撓み温度):ISO−75A−1、−2にしたがい、6項の試験片について測定した。
引張クリープ:ISO−899にしたがい、ISO−Tバー試験片(引張弾性率に関するものと同じ、ISO−527−タイプ1A)について測定した。
【0077】
Tバーの製造(射出成形):
試験法ISO−1873−2(1989)にしたがって試験片を射出成形した。
アイソタクチシティーインデックス(室温におけるキシレン中の溶解度、重量%)の測定:
冷却器及び磁気スターラーを取り付けたガラスフラスコ内に、2.5gのポリマー及び250cmのキシレンを導入した。温度を30分間で溶媒の沸点まで上昇させた。かくして得られた明澄な溶液を次に還流下に保持し、更に30分間撹拌した。次にフラスコを閉止し、氷水浴中に30分間、更に25℃の温度制御水浴中に30分間保持した。かくして形成された固体を迅速濾紙上で濾過した。100cmの濾液を予め秤量したアルミニウム容器内に注ぎ入れ、窒素流下において加熱プレート上で加熱して、蒸発によって溶媒を除去した。次に、一定重量が得られるまで、容器をオーブン内において真空下80℃に保持した。次に、室温においてキシレン中に可溶のポリマーの重量%を算出した。
【0078】
室温においてキシレン中に不溶のポリマーの重量%が、ポリマーのアイソタクチシティーインデックスと考えられる。この値は、定義によってポリプロピレンのアイソタクチシティーインデックスを構成する沸騰n−ヘプタンで抽出することによって求められるアイソタクチシティーインデックスに実質的に相当する。
【0079】
MWDの測定:
Mn及びMwの値は、13μmの粒径を有する3つの混合床カラムTosoHaas TSK GMHXL-HTを備えたAlliance GPCV 2000装置(Waters)を用いて145℃におけるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。カラムの寸法は、300×7.8mmであった。用いた移動相は真空蒸留1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)であり、流速は1.0mL/分に保持した。試料溶液は、試料をTCB中で撹拌下145℃において2時間加熱することによって調製した。濃度は1mg/mLであった。分解を抑止するために、0.1g/Lの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを加えた。326.5μLの溶液をカラムセット中に注入した。580〜7500000の範囲の分子量を有する10種類のポリスチレン標準試料(Polymer LaboratoriesによるEasiCalキット)を用いて較正曲線を得た。更に、同じ製造者からの11600000及び13200000のピーク分子量を有する2種類の他の標準試料を含ませた。Mark-Houwink関係式のK値は
ポリスチレン標準試料に関してはK=1.21×10−4dL/g及びα=0.706;
ポリプロピレン試料に関してはK=1.90×10−4dL/g及びα=0.725;
プロピレンコポリマー試料に関してはK=1.93×10−4dL/g及びα=0.725;
であると仮定した。
【0080】
実験データを内挿して較正曲線を得るために三次多項フィッティングを用いた。データの獲得及び処理は、WatersによるGPCVオプションを有するEmpower 1.0を用いることによって行った。
【0081】
融点:
ISO−3146にしたがい、20K/分の加熱速度を用いてDSCによって測定した。
【0082】
13C−NMR(メタロセン製造プロピレンポリマーに関して):
NMR分析:PPの13C−NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで120℃において100.61MHzで運転するDPX-400分光計上で獲得した。mmmmペンタド炭素のピークを、それぞれ21.8ppm及び29.9ppmにおける内部参照として用いた。試料を、5mmのチューブ内において、120℃において1,1,2,2−テトラクロロエタン−d中に8%wt/vの濃度で溶解した。それぞれのスペクトルは、90°のパルス、パルス間の遅延12秒、及びCPD(WALTZ16)を用いて獲得してH−13Cカップリングを除去した。6000Hzのスペクトルウインドウを用いて約2500の過渡スペクトルを32Kのデータ点で保存した。
【0083】
PPスペクトルの割り当ては、"Selectivity in Propylene Polymerization with Metallocene Catalysts", L. Resconi, L.Cavallo, A. Fait, F. Piemontesi, Chem. Rev., 100, 1253 (2000)にしたがって行った。
【0084】
鏡像異性部位モデルを用いてペンタド分布の実験値をモデリングしてmmmm含量を得た。2,1(E)及び1,3(H)エラーの高い含量を有するPPのmmmm含量は、
[mmmm]=100(Σ[CH]−5[mrrm]−5[E]−5[H])/(Σ[CH])
(ここで、Σ[CH]は全CH基の合計である)
として得られる。
【0085】
2,1及び3,1エラーの含量は、
[E]=100(E/Σ[CH])
[H]=100(0.5H/Σ[CH])
(ここで、Eは42.14ppmにおけるピークであり、Hは30.82ppmにおけるピークであり、Σ[CH]は全CH基の合計である)
として得られる。
【0086】
13C−NMR(ブテン−1ポリマーに関して):
13C−NMRスペクトルは、フーリエ変換モードで120℃において100.61MHzで運転するDPX-400分光計上で獲得した。試料を、120℃において1,1,2,2−テトラクロロエタン−d中に8%wt/vの濃度で溶解した。それぞれのスペクトルは、90°のパルス、パルス間の遅延15秒、及びCPD(waltz16)を用いて獲得してH−13Cカップリングを除去した。6000Hzのスペクトルウインドウを用いて約3000の過渡スペクトルを32Kのデータ点で保存した。アイソタクチシティーは、エチル分岐の特徴的なメチレンのmmmmペンタドピークの相対強度として定義される。27.73ppmにおけるこのピークを内部参照として用いた。ペンタドの割り当ては、Macromolecules, 1992, 25, 6814-6817にしたがって与えた。
【0087】
溶融強度:
用いた装置は、データ処理用のコンピュータを備えたToyo-Sieki Seisakusho Ltd.溶融張力試験器であった。方法は、特定の延伸速度で延伸した溶融ポリマーのストランドの引張強さを測定することから構成されていた。特に、試験するポリマーを、230℃において、長さ8mmで直径1mmの毛細孔を有するダイを通して0.2mm/分で押出した。次に、排出されるストランドを、牽引プーリーのシステムを用いることによって、0.0006m/秒の一定の加速度で、破断点まで張力を測定しながら延伸した。装置は、ストランドの張力値を延伸の関数として記録した。溶融強度は、ポリマーの破断時における溶融張力に対応する。
【0088】
スパイラルフロー試験:
2.5mmの深さを有する1個取りエンドレススパイラルフロー金型を用い、組成物を230℃の一定の溶融温度において、異なる射出圧力(8及び10MPa)で射出した。
【0089】
射出成形機は、190トンのクランプ力を有するSandrettoモデル190であり、成形型温度は40℃であった。
これらの条件下において、各射出圧力に関して、ミリメートルで表すフローパス長(これは材料の流動性に比例する)を測定した。
【0090】
表面粗さの視認等級:
200mm×100mm×3mmの射出成形試料(250℃の射出温度、50℃の成形型温度)の表面を視認評価することによって求めた。
【0091】
以下のランクを適用した。
*=粗い(表面上に繊維が明確に視認される);
**=やや平滑(表面の限られた部分のみに繊維が視認される);
***=平滑(視認される繊維を有しない非常に均質な表面)。
【0092】
光沢:
表面粗さの視認等級に関するものと同じ射出成形試験片について測定した。光沢度計によって、60°の入射角下で、評価した試験片の表面によって反射された光の流れのフラクションを測定した。表IIIに報告する値は、それぞれの試験したポリマーに関する10の試験片の平均光沢度値に相当する。
【0093】
用いた光沢度計は、60°の入射角を有する光度計ZehntnerモデルZGM 1020又は1022セットであった。測定原理は標準規格ASTM−D2457に与えられている。既知の光沢度値を有する試料を用いて装置の較正を行った。
【0094】
実施例1〜9及び比較例1:
成分(A)、(B)、(C)、及び(Q)として以下の材料を用いた。
成分(A):
PP−1:2300g/10分のMFR、2.6のMw/Mn、及び98.5%のキシレン中室温におけるアイソタクチシティーインデックス(92%より高いアイソタクチックペンタド(mmmm))、146℃の融点、0.47dL/gの固有粘度を有するペレットの形態のプロピレンホモポリマー;
PP−2:3g/10分のMFR、19.2のMw/Mn、及び96%のアイソタクチシティーを有する1.6重量%のエチレンを含むペレットの形態のプロピレンコポリマー;
PP−3:1800g/10分のMFR、2.6のMw/Mn、及び98.5%のキシレン中室温におけるアイソタクチシティーインデックス(92%より高いアイソタクチックペンタド(mmmm))、146℃のDSC融点、0.52dL/gの固有粘度を有するペレットの形態のプロピレンホモポリマー;
PP−1及びPP−3は、PCT/EP2004/007061において記載されているようにして、rac−ジメチルシリルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いることによって製造した触媒系を用いて得た。
【0095】
PCT/EP2004/007061において記載されているようにして得た触媒泥の形態の触媒系を予備接触容器内に導入し、この中で約5(kg/時)のプロパンで希釈した。予備接触容器から、触媒系を予備重合ループに供給し、この中にプロピレンを同時に供給した。予備重合温度は45℃であった。予備重合ループ内の触媒の滞留時間は8分間であった。次に、予備重合ループにおいて得られた予備重合触媒をループ反応器中に連続的に供給し、その中にプロピレンを340kg/時の速度で供給した。重合温度は70℃であった。ループ反応器からポリマーを排出し、未反応のモノマーから分離し、乾燥した。生成物のMFRは、水素の供給量をポリマーの求めるMFRが与えられるように調節することによって制御した。PP−1の場合には、水素濃度は1080ppmであった。
【0096】
成分(B):
GF:3mmの繊維長さ及び13μmの直径を有するガラス繊維White ECS O3T 480(Nippon Electric Glass Company Ltd.);
珪灰石:0.82g/mLの嵩密度、8μmの中央粒径(Sedigraph)を有する、白色の自由流動粉末の形態の珪灰石Nyglos 8 10991(供給会社Nyco Minerals Inc.);
タルク:0.31g/mLのタンピング密度、及び95重量%より多い粒子が5μm未満の径を有する、視認検査で白色の粉末の形態のタルクHM05(供給会社IMI Fabi S.p.A.)。
【0097】
成分(C):
PB−1:200g/10分のMFR及び96%のアイソタクチシティーインデックスを有するブテン−1ホモポリマー;
PB−2:0.4g/10分のMFR及び97%のアイソタクチシティーインデックスを有するブテン−1ホモポリマー;
PB−3:4g/10分のMFR及び96%のアイソタクチシティーインデックスを有するブテン−1ホモポリマー。
【0098】
成分(Q):
PP−MA:115g/10分のMFR及び1重量%のMA含量を有する無水マレイン酸(MA)をグラフトしたプロピレンホモポリマー(Polybond 3200、Chemturaによって販売)。
【0099】
全ての組成物には通常の酸化防止添加剤及び耐酸剤も含ませた。
更に、実施例4の組成物には、0.1重量%のNA11(Asahi Denka Kogyoによって販売されている2,2−メチレンビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート)も含ませた。
【0100】
組成物は、二軸押出機モデルWerner & Pfleiderer ZSK40SCを用いて、押出によって製造した。
このラインは約43L/Dのプロセス長を有しており、重量式フィーダーを備えていた。強制側面供給によって、成分(A)、(C)、及び(Q)を第1のバレル中に供給し、成分(B)を第5のバレル中に供給した。
【0101】
冷却浴及びストランドカッターScheer SGS100を有するストランドダイプレートを用いてペレットを形成した。また、真空脱気(バレルNo.8)を適用してヒューム及び分解生成物を引き抜いた。
【0102】
運転条件:
スクリュー速度:200rpm;
生産量:50〜60kg/時;
バレル温度:実施例1〜7及び比較例1に関しては200〜220℃、実施例8及び9に関しては200〜230℃。
【0103】
かくして得られた組成物の最終特性を、成分の相対量と共に表Iに報告する。
【0104】
【表1−1】

【0105】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)10重量%〜75重量%のポリプロピレン成分;
(B)20重量%〜80重量%の充填剤;
(C)3%〜50%のポリブテン−1成分;
を含み、(A)、(B)、及び(C)の割合は(A)、(B)、及び(C)の合計に対するものである、充填ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
(A)、(B)、(C)、及び(Q)の合計重量に対して0.5〜10重量%の相溶化剤(Q)を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン成分(A)が70〜2500g/10分のMFR値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリプロピレン成分(A)が、差が少なくとも3g/10分である異なるMFR値を有する少なくとも2種類のプロピレンのホモポリマー及び/又はコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリプロピレン成分(A)が、いずれも、プロピレンホモポリマー、5モル%以下のエチレン及び/又は1種類又は複数のC〜C10α−オレフィンを含むプロピレンコポリマー、並びにかかるホモポリマー及びコポリマーの組合せから選択される5〜80重量%のフラクション(A)及び20〜95%のフラクション(AII)を含み、フラクション(AII)は(A)と比べてより高いMFR値を有し、かかるMFR値の差は少なくとも3g/10分であり、かかる重量の量は(A)の全重量に対するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーフラクション(AII)が500〜2500g/10分のMFR値を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリブテン−1成分(C)が、ブテン−1のホモポリマー、ブテン−1と、エチレン、プロピレン、及びC〜C10α−オレフィンから選択される少なくとも1種類のコモノマーとのコポリマー、並びにかかるホモポリマー及びコポリマーの組合せから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリブテン−1成分(C)が0.1〜5g/10分のMFR値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
充填剤(B)が無機充填剤及び繊維、又はこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
充填剤(B)としてガラス繊維を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含む、射出成形、押出、又は熱成形物品。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物から構成される濃縮液。

【公表番号】特表2012−512921(P2012−512921A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541409(P2011−541409)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067298
【国際公開番号】WO2010/069998
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】