説明

充填材、特に2つの金属構造部品の熱結合時に形成される接合継ぎ目の品質を改良するための充填材

【課題】本発明は、特に、2つの金属構造部品の熱結合時に形成される接合継ぎ目の品質を改良するための充填材1,4に関するものである。
【解決手段】本発明によれば、充填材1,4は、コア2,5と、少なくとも部分において当該コアを囲むコーティング3,15を備える。充填材がコア2,5上にコーティング3,15を備えるため、コーティング3,15のための合金材料は、コア2,5の基材に関する任意の可能な金属的要件に制限されることなく、広範囲から選択し得、その結果、本発明による異成分からなる充填材1,4を使用する際、コア2,5の材料成分に概して関係なく、結合される構造部品の最適な接合継ぎ目特性が常に得られる。充填材1,4の実質的にH字形の断面形状が用いられる場合、さらに、熱結合処理において結合される構造部品11,12の予備的な固定および配列が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]本願は、2006年1月24日出願の独国特許第102006003191.1号の利益を主張するものであり、参照によりその発明の開示を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、特に、2つの金属構造部品の熱結合時に形成される接合継ぎ目の品質を改良するための充填材(filler material)に関する。
【背景技術】
【0003】
構造部品の熱結合時において、継ぎ目の品質を高めるために、しばしば充填材が用いられる。
さまざまな構造部品材料に応じて、特に上記熱結合に適した充填材が用いられるが、この充填材は、例えば、半田付けまたは溶接時に継ぎ目形成領域内に付加される。
通常、充填材はストリップまたはワイヤの形状をして存在する。
最適な継ぎ目品質を得るには、一定品質の合金要素を充填材に添加する必要がある。
しかしながら、母材における合金要素の溶解度に限界があるため、またその結果として分離問題が発生するため、これまで合金組成物を随意に実現することが可能ではなかった。
【0004】
既知の充填材は、合金要素が充填材の中において無限濃度で溶解するわけではないので、最適な継ぎ目品質に実際に必要とされる合金要素の濃度が達成できないという点で不都合である。
さらに、多くの場合、継ぎ目形成領域内に合金要素を均一に配置する難しさがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱接合接続部のための既知の充填材が抱える上記の不都合を回避するという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
充填材は、コアと、少なくとも部分において当該コアを囲むコーティングとを含むため、当該コーティングは、当該充填材のコアの金属成分に関するいかなる制約にも係わらず、熱結合処理時における最適な継ぎ目形成のためのほとんどいかなる濃度の合金添加を含んでもよい。
【0007】
本発明の充填材の例示的実施形態は、実質的に円形、長円形または楕円形の断面形状からなる充填材を備える。
このことは、充填材を、例えばロール形にして容易に保管することを可能にする。
【0008】
さらなる例示的実施形態は、実質的にH字形の断面形状からなる充填材を備える。
第1に、このことは、付加的な案内を必要としない、継ぎ目形成領域内における充填材の最適な配置を可能にする。
第2に、この設計は、熱結合によって接続される構造部品を付着または位置合わせさせることを可能にする。
この構成では、充填材自体の特別な形状配置によって位置合わせが生じる。
熱結合処理時に充填材の別途供給を施与する必要がないため、時間と費用の両方でかなりの節約を実現することができる。
【0009】
本発明の充填材に係るさらなる例示的実施形態によれば、各ケースにおいて、充填材の2つの突出部(limb)は、結合される構造部品の材料の厚さにほぼ一致した距離だけ間隔を置いて配置され、2つの構造部品が充填材によって固定される。
このようにして、継ぎ目形成領域内にある構造部品が充填材の突出部と突出部の間に少し押し込まれ、またはクランプされ、熱結合処理の前に充填材自体を用いて互いに構造部品の確かな位置固定が可能になる。
【0010】
本発明の充填材に係るさらなる例示的実施形態によれば、充填材の中央腹部の材料厚さは、形成される接合継ぎ目の幅にほぼ一致する。
このことは、接合継ぎ目の領域内において過度の材料注入がないことを保証する。
【0011】
さらなる例示的実施形態は、100μm未満の材料厚さを有するコーティングを備える。
このようにして、コーティングを容易に生産することができるのを保証すると同時に、溶接継ぎ目品質を高める、コーティング内への充分な量の付加的な材料の供給を保証する。
【0012】
さらなる例示的実施形態は、金属基材、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金を含むコアを備える。
このようにして、基材の成分は、実質的に、金属要件に関係なく選択することができ、コーティング内において合金材料の最適な接合継ぎ目特性を提供することができる。
従って、基材は、例えば、容易な処理可能性および/または低生産コストを視野に入れてターゲットを絞った態様で最適化することができる。
好ましくは、基材は、実質的にアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。
【0013】
さらなる例示的実施形態は、金属合金材料、特に銅、シリコン、リチウム等を含むコーティングを備える。
このようにして、コーティング用金属合金材料の成分または品質は、主として基金属が満たさなければならない要件とは無関係に、目標を定めて最適な接合継ぎ目特性を達成することに焦点を合わせることができる。
接合継ぎ目の最適な特性を達成するため、コーティング用金属合金材料は、好ましくは銅、シリコン、リチウム、またはこれらの組み合わせを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面では、同一構成要素について同じ参照文字を使用している。
図1は、第1の実施形態の変形における、本発明による充填材の断面を示す。
【0015】
本発明による熱結合処理、特に溶接または半田付け処理における接合継ぎ目の品質を改良するための異成分からなる(heterogeneous)充填材1は、実質的に円形の断面形状を備える。
充填材1は、コア2およびコア2を囲むコーティングによって形成される。
図示した例示的実施形態においては、コーティング3が同心円状にコア2を取り囲んでいる。
充填材1の実質的に円形の断面形状(ワイヤの円柱形状)は、充填材1を、例えばロール形にして容易に保存することを可能にし、さらに、特に自動熱結合処理の場合に重要になる、継ぎ目形成領域に対する当該充填材の容易な注入または供給を保証することを可能にする。
例えば、多角形、長円形、または楕円形の断面形状等の他の断面形状も考えられる。
【0016】
充填材1のコア2は、基材として、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の非貴金属を用いて形成してもよい。
コア2のコーティング3は、合金材料、例えば、銅、シリコン、リチウム、またはこれら材料のいかなる所望の組み合わせをも含んでもよい。
本発明による充填材1は、熱結合される構造部品の材料組成において継ぎ目品質を高める補助的な結合材料として用いられており、コア2およびコーティング3は、この材料組成に応じて、上記と異なる金属、金属合金の少なくとも一方を含んでもよい。
コア2の化学成分に関するいかなる金属学上の制約とも全く関係なく、コーティング3の合金成分を選択することができるという事実は何よりも重要である。
【0017】
図2は、充填材1の長手方向断面を示す。
コア2は、完全に、即ち同軸状に、コーティング3によって取り囲まれている。
これと異なる態様においては、部分においてのみコーティング3によってコア2が取り囲まれてもよい。
例えば、コーティング3は、ワイヤ形の充填材1の長手方向に合金材料から成るストリップの形態にして設計され、これらストリップは、コア2上に配列され、放射線状方向に互いに等しく間隔を置いて配置される。
【0018】
例えば、コーティング3は、例えば、ガルバニックコーティング法、ペースト状の金属合金材料を刷毛で塗る、金属合金材料上に噴霧する、またはPVDコーティング処理等の既知の方法によってコア2に塗布することができる。
【0019】
図3は、第2の実施形態の変形における充填材の断面を示す。
【0020】
この実施形態の変形において、充填材4は、実質的にH字形またはダブルT字形の断面形状を備えたコア5を含む。
充填材4のコア5は、ここでも基材として、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の非貴金属を含んでもよい。
コア5は、全部で4つの突出部6,7,8,9を備えており、これら突出部は、実質的に垂直に伸びる中央腹部10によって互いに接続されている。
突出部6,7ならびに8,9は、水平に対して30度未満の角度で、少しV字形をして、内側に向いている。
充填材4の実質的にH字形の断面形状および少しV字形の突出部6,7,8,9の配列の結果として、熱結合処理によって接続される構造部品11,12が突出部6と8との間、ならびに突出部7と9との間でクランプされてもよく、また互いに対して位置合わせされて固定されてもよい。
構造部品11,12の主としてずれ保証クランピングを確保するために、突出部6と8との間または突出部7と9との間の距離は、構造部品11,12の材料13,14の厚さよりやや小さい。
【0021】
例えば、構造部品11,12は、薄板状の構造、例えば、アルミニウム板金またはアルミニウム合金を含む板金であり得る。
さらに、構造部品11,12は、線形構造(linear structures)、例えばアルミまたはアルミ合金を含む強化断面(reinforcement profiles)であってもよい。
【0022】
図示した例示的実施形態において、充填材4のコア5は、ここでもコーティング15を全体に含んでおり、コーティング15は、好適な合金材料、例えば、銅、シリコン、リチウム、またはこれら金属の組み合わせを含み、異成分から成る(heterogeneous)充填材4が作製される。
また、コーティング15は、一定部分においてのみ適所にあってもよい。
【0023】
中央腹部10の領域内では、構造部品11,12の隣接する端部と端部の間の熱結合処理において接合継ぎ目(図3に図示せず)が隆起して、構造部品11,12の材料と、コア5の基材と、コーティング15の合金材料の完全な混合が生じる。
本構成において、中央腹部10の幅16は、好ましくは、形成されるまたは作製される接合継ぎ目の幅に実質的に一致する。
上述した態様とは異なる態様において、中央腹部10の幅16はより狭くまたはより広くてもよい。
【0024】
本発明によれば、充填材4は、実質的にH字形となる断面形状のため、基材および/または合金材料の継ぎ目形成領域への注入は、正確な位置配置および正確な計測により生じる。
従来の補助的な溶接または半田付け材料内に別途注入する必要がないので、その結果、時間と費用の両方でかなりの節約を実現する可能性がある。
【0025】
図4は、第2の実施形態の変形による充填材4を示す平面図である。
【0026】
構造部品11,12は、あとに続く結合処理のために固定または位置合わせされ、かつ中央腹部10によって接続される突出部6,7と、突出部6,7の下に配置される突出部8,9(図4に図示せず)とによって共に保持される。
【0027】
なお、用語「含む、備える」は、他の構成要素または工程を除外するものではなく、また「一つ」は、複数を除外するものではない点に留意されたい。
また、他の実施形態に関連して記載されている構成要素を組み合わせてもよい。
【0028】
また、特許請求の範囲における参照符号は、本発明の請求の範囲を制限するものとして解釈されない点にも留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態の変形における、本発明による充填材の断面を示す図である。
【図2】第1の実施形態の変形における、充填材の長手方向断面を示す図である。
【図3】熱結合される2つの構造部品を用いた、第2の実施形態の変形における、充填材の断面を示す図である。
【図4】第2の実施形態の変形における、2つの構造部品を用いた充填材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 充填材
2 コア
3 コーティング
4 充填材
5 コア
6 突出部
7 突出部
8 突出部
9 突出部
10 中央腹部
11 構造部品
12 構造部品
13 材料厚さ
14 材料厚さ
15 コーティング
16 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属からなる構造部品(11,12)の熱結合時に接合継ぎ目を形成するように形状が変化する充填材(1,4)であって、
前記充填材(1,4)は、
コア(2,5)と、
少なくとも部分において前記コアを囲むコーティング(3,15)とを備え、
前記充填材(1,4)は、実質的にH字形の断面形状を有し、
前記充填材(4)の間隔を置いた2つの突出部(6,8,7,9)が、結合される前記構造部品(11,12)の材料厚さ(13,14)にほぼ一致した距離だけ間隔を置いて配置され、前記2つの構造部品(11,12)が前記充填材(4)によって固定される、ことを特徴とする充填材。
【請求項2】
前記充填材(4)の中央腹部(10)の材料厚さは、形成される接合継ぎ目の幅(16)にほぼ一致している、ことを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
前記コーティング(3,15)は、100μm未満の材料厚さを備える、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充填材(1,4)。
【請求項4】
前記コア(2,5)は、金属基材としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の充填材(1,4)。
【請求項5】
前記コーティング(3,15)は、金属合金材料として銅、シリコン、またはリチウムを含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の充填材(1,4)。
【請求項6】
前記充填材(4)の間隔を置いた各2つの突出部(6,8,7,9)は、互いに対して傾けられ、結合される前記2つの構造部品(11,12)を位置合わせして固定するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の充填材(1,4)。
【請求項7】
接合継ぎ目の形成処理において、構造部品(11,12)を固定するための、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の充填材の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−523614(P2009−523614A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550695(P2008−550695)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000480
【国際公開番号】WO2007/085389
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)