説明

充填材組成物

【課題】
本発明は、ゴム、エアラストマー、樹脂等に対する充填材として使用する古紙由来の充填材組成物において、マトリックスであるゴム、エラストマー、樹脂等との混和安定性に優れるとともに、マトリックスの強度、弾性、耐摩耗性等の特性を向上させることができる優れた充填材組成物を提供する。
【解決手段】
解繊処理を施した古紙由来のパルプ繊維に樹脂エマルションを添加混合し、乾燥することにより得た古紙−樹脂複合繊維をゴムや樹脂等のマトリックスへの充填材として用いることにより良好な混和安定性を発揮するとともにマトリックスの強度、弾性、耐摩耗性等を向上させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂やゴム等への充填材組成物に関し、更に詳しくは、マトリックスとなる樹脂やゴム等への混和安定性に優れるとともに強度、弾性、耐摩耗性等の特性を向上させることができる充填材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム、エアラストマー、樹脂等の強化方法として有機繊維や無機繊維を短く切断したものをマトリックスであるゴム、エアラストマー、樹脂等に混合する方法が知られている。短繊維を配合することでゴムの弾性率や引き裂き強度等が向上し、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品におけるゴムの使用量が削減でき、省資源や軽量化に効果的である。しかしながら、これらに配合される繊維材料は、短繊維強化用として新たに紡糸した繊維を繊維メーカーで切断されたものが通常用いられており、価格的には高いものとなってしまう(特許文献1)。
【0003】
また、強化材として紙等を利用したものも知られている(特許文献2〜4)が、ゴム中へのセルロース繊維の分散が不十分であり、強度等の特性向上の効果も不十分というのが現状である。
【0004】
植物繊維を充填材として添加混合することは、マトリックスとなるゴム、エラストマー、樹脂等の粘度特性を変化させ、安定性を付与するとともに、マトリックス間に構造体をつくることで強度補完するために有効である。また、安価な植物繊維として古紙を使用することは、環境面でリサイクルやリユースの志向に合致するものである。しかし、従来の充填用植物繊維について、ハンドリング性の向上方法、繊維長によって変化する粘度特性、古紙原料の種類による品質安定性や特性向上効果の点で、その最適化の検討が未だ十分ではなかった。
【特許文献1】特開平9−12770号公報
【特許文献2】特開昭62−104851号公報
【特許文献3】特開2002−37929号公報
【特許文献4】特開平11−217466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴム、エアラストマー、樹脂等に対する充填材として使用する古紙由来の充填材組成物において、充填材をマトリックスであるゴム、エラストマー、樹脂等への混和安定性を改善させ、ひいてはマトリックスの強度、弾性、耐摩耗性等の特性を向上させる、優れた品質を有する充填材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、古紙由来のパルプ繊維をゴムや樹脂等のマトリックスに添加混合し、混和安定性を向上させるとともに、強度等を改善する手段を鋭意検討した。その結果、解繊処理を施した古紙由来のパルプ繊維スラリーに樹脂エマルションを添加混合し、乾燥することにより得た古紙繊維−高分子樹脂複合繊維をマトリックスの充填材として用いることにより混和安定性を向上させつつ、強度、弾性、耐摩耗性を改善することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)古紙を解繊処理したパルプ繊維スラリーに樹脂エマルションを添加混合し、乾燥して得た繊維に樹脂が複合されている充填材組成物。
【0008】
(2)前記古紙が上白、カード、特白、中白、白マニラ、模造、色上、切付、中更反古、雑誌、段ボール、印刷古紙から選択される少なくとも1種である(1)に記載の充填材組成物。
【0009】
(3)印刷古紙が新聞紙、微塗工紙、高灰分の塗工紙、非塗工紙から選択される少なくとも1種である(1)または(2)に記載の充填材組成物。
【0010】
(4)前記樹脂エマルションが未変性のスチレン−ブタジエン共重合体である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の充填材組成物。
【0011】
(5)古紙パルプ100質量部に対して固形分換算で樹脂エマルション20〜100質量部が添加混合されてなる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の充填材組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、マトリックスと充填材との混和安定性を向上させつつ、強度、弾性、耐摩耗性に優れた充填材組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、解繊処理を施した古紙由来のパルプ繊維スラリーに樹脂エマルションを添加混合し、乾燥することにより得られる繊維に樹脂が複合化されていることに大きな特徴を有する。すなわち、樹脂、ゴム、エラストマー等のマトリックスと相溶性の高い樹脂を古紙パルプ繊維と複合化させることにより、古紙パルプ繊維単体でマトリックスに充填する場合に比して格段に混和安定性が向上し、ひいてはマトリックスの強度、弾性、耐摩耗性等の特性を向上させるものと考えられる。なお、複合とは(a)形状、材質の異なった複数の構成素材を合体させる、あるいは、(b)複数のマクロ組成相を生成させることによって、素材単体あるいは単なる混合ではもちえなかった特性、機能を発現させることをいう。
【0014】
本発明において用いられる古紙としては、家庭または工場、事業場等から排出される新聞古紙、段ボール古紙、雑誌古紙等当業界公知のものを挙げることができる。具体的には、使用済みの新聞、書籍、雑誌、電話帳、カタログ類、上質紙、包装用箱、段ボール箱、上白、カード、特白、中白、白マニラ、模造、色上、切付、中更反古、パルプモールド、紙製緩衝材、あるいは抄紙、印刷、製本、製箱、段ボール製造などの工場・事業場から排出される裁落、損紙等が挙げられる。なかでも、新聞紙、微塗工紙、高灰分の塗工紙、非塗工紙等の印刷古紙が好ましい。
【0015】
本発明においては、まず古紙パルプの解繊処理を行う。該処理は、古紙パルプの乾燥状態で行なっても良いし、湿潤状態で行なっても良いが、異物等の混入の可能性が低い乾燥状態での処理が好ましい。
【0016】
解繊に用いられる装置としては、例えば、ポケットグラインダー、チェーングラインダー、リンググラインダー等のグラインダー類、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカル型リファイナー等のリファイナー類、ビーター等のその他叩解機類、ブレンダー、デフレーカー等の攪拌機類、デファイブレーター、デファイブライザー等の木材チップ解繊機、その他フラッファー等フラッシュ乾燥パルプ製造設備等が挙げられる。また、これらの中でも、加圧方式、スクリュー方式等のように強制的に原料供給できる機構を備えている装置は、解繊が連続的効率的に行えるので好ましい。また、これらは、一般的に湿潤繊維を処理する装置や乾燥繊維を処理する装置等、いろいろなタイプのものがあるが、乾湿に関わらず使用できれば適宜解繊処理装置として使用することができる。しかし、排水処理が容易な点で、全く水を使わないあるいは少量の水しか使わない乾式解繊が好ましい。湿式の場合には、解繊効率および後の脱水乾燥工程の負荷を抑えることができるという点で、固形分濃度が高い状態での解繊がより好ましい。
【0017】
本発明において用いられる解繊された古紙パルプ繊維としては、繊維幅について特に制限はないが、平均繊維長は0.1〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm程度のものである。因みに、古紙パルプ繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、解繊に多大なエネルギーを要し、マトリックス樹脂等との絡み合いが少なくなり、最終製品となる素材の強度低下をきたすおそれがある。また、平均繊維長が5.0mmを超えると、繊維同士の絡み合いが強くなり過ぎ、だま状態になって、マトリックス樹脂等との混和性が劣り、結果として最終製品となる素材の強度低下をきたすおそれがある。
【0018】
上記古紙由来のパルプ繊維は、使用される古紙として新聞古紙が好ましい。新聞古紙を使用すると平均繊維長が0.1〜5.0mmの範囲内に入り易くなるとともに、新聞紙抄紙時に配合される機械パルプが、パルプ表面にアルキル基を有するために疎水性を有し易いことから、マトリックスとなるゴムや樹脂等に分散させ易くなるという利点を有する。
【0019】
次に、本発明において用いられる樹脂エマルションについて説明する。該樹脂エマルションとしては、天然ゴム、変性天然ゴム、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−2−ビニルピリジン共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル/アクリル酸エステル系複合樹脂、ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が例示できるが、樹脂エマルションとしての品質バラツキの少ないスチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の合成樹脂エマルションが好ましい。なかでも、未変性のスチレン−ブタジエン共重合体は、古紙パルプ繊維との接着性とゴム、エラストマーとの混和性に優れるため、特に好ましい。ここで、樹脂エマルションのガラス転移温度(以下、Tgと称する)としては−60〜20℃のものが好ましい。この理由は、上記Tg範囲にある樹脂は常温で粘着性を発現し、親水性のセルロース繊維に対して適度な接着性を発現するためではないかと考えられる。また、樹脂エマルションとしてはコア−シェル型が望ましい。低Tgエマルションは造膜性が高く、常温でもゴム状であるため粘着性を発現し易く、セルロース繊維を接着する能力が高い。なお、濃度勾配型と呼ばれる、粒子の内部から外部への組成が連続的に変化しているエマルションについても同様の効果があるが、コアシェル型のほうがより明確にTg制御の影響が現れるため、好ましい。
【0020】
この場合、樹脂エマルションの添加量は古紙パルプ100質量部に対して固形分換算で20〜100質量部、好ましくは20〜70質量部に制御される。樹脂エマルションの添加量が20質量部未満であると、充填材組成物をマトリックスに添加混合した際、混和性が不十分となり、強度、弾性、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。逆に樹脂エマルションの添加量が100質量部を超えると、古紙パルプ由来の繊維に対する接着力が強くなり過ぎ、だま状態になって、マトリックス樹脂等との混和性が劣り、結果として最終製品となる素材の強度低下をきたすおそれがある。
【0021】
本発明において古紙由来のパルプ繊維と樹脂エマルションの混合はスラリー状態で混合されるが、使用される混合攪拌装置としては、特に限定されない。混合攪拌装置としては、例えばアジテータ、ホモミキサ、パイプラインミキサ、ニーダーなどの装置が好ましい。なお、ボールミルやサンドグラインダ等の粉砕機を用いることも可能ではあるが、微細繊維の増加やスラリーの増粘といった問題が生じる傾向があるため好ましくない。
【0022】
上記充填材組成物はスラリー状態から乾燥して用いられるが、スラリーの固形分濃度が低いと乾燥効率が低下してしまうため、濃縮することが好ましい。該濃縮装置としては特に限定されず、各種プレス装置、例えばスクリュープレス、シックナー等を挙げることができる。
【0023】
次に本発明において用いられる充填材組成物の乾燥方式としては、例えば熱風乾燥、乾燥キルンを用いた熱風乾燥、赤外線乾燥、マイクロウェーブ乾燥等、公知の方法を単独であるいは組み合わせて採用することができる。また、途中までの乾燥には熱風の代わりに加熱水蒸気を使うこともできる。中でも熱風乾燥法は、装置が安価で、充填材組成物に焦げが発生し難い等の理由で好ましい。中でも、加熱エアー(ガス)を湿潤状態の充填材組成物に注入する、あるいは充填材組成物の反対側から加熱エアーを入れながら吸引する等の方法で、繊維間空隙のエアーの流れを良くした通気乾燥は、乾燥が速くて充填材組成物の生産効率が極めて良く特に好ましい。熱風乾燥では通常80〜400℃の温度範囲の熱風が使われる。通気乾燥の通気量としては、乾燥初期で2リッター/cm・分以上が乾燥効率の点で好ましく、5リッター/cm・分以上が特に好ましい。
【0024】
本発明の充填材組成物を添加するマトリックス樹脂であるゴム、エラストマー成分としては、天然ゴム(NR)もしくはジエン系合成ゴムのうち少なくともいずれか一方を含むゴム成分を挙げることができ、ジエン系合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などを挙げることができ、ゴム成分中に1種類または2種類以上含まれていてもよい。なお、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とは、エチレン−プロピレンゴム(EPM)に第三ジエン成分を含むものであり、ここで第三ジエン成分とは、炭素数5〜20の非共役ジエンであり、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエンや、例えば1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジエン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネンなどのアルケニルノルボルネンなどが挙げられ、特にジエンの中では、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが好ましく用いられる。
【0025】
ゴム成分、エラストマー成分には、加硫促進剤、加硫剤、軟化剤、老化防止剤、白色充填剤、発泡剤、カップリング剤、可塑剤、スコーチ防止剤などを含有させることも可能である。
【0026】
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用することが可能であり、有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどが挙げられる。これらの中では硫黄が好ましい。
【0027】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。スルフェンアミド系としては、例えばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などを使用することができる。チアゾール系としては、例えばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物などを使用することができる。チウラム系としては、例えばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物を使用することができる。チオウレア系としては、例えばチオカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などを使用することができる。グアニジン系としては、例えばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物を使用することができる。ジチオカルバミン酸系としては、例えばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などが挙げられる。アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、例えばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系化合物などが挙げられる。イミダゾリン系としては、例えば2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物などが挙げられる。キサンテート系としては、例えばジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物などが挙げられる。
【0028】
老化防止剤(劣化防止剤)としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩、ワックスなどが挙げられる。
【0029】
所望により練り加工性を一層向上させるために軟化剤を併用することもできる。このような軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜蝋、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類;リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0030】
ゴム成分、エラストマー成分には白色充填剤を含有させることもできる。ただし、白色充填剤の含有量が多くなるとゴム成分、エラストマー成分の強度、弾性、耐摩耗性等が低下するおそれがある。白色充填剤としては例えば、シリカ、クレー、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0031】
発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーンなどの有機系や、NaHCO3などの無機系のものが挙げられる。
【0032】
用途に応じてカップリング剤を含有させることも可能である。カップリング剤としては、アルミネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤などを使用することが可能である。アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを挙げることができる。シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどが挙げられる。
【0033】
さらに所要に応じて可塑剤を含有させることも可能である。具体的には、DMP(フタル酸ジメチル)、DEP(フタル酸ジエチル)、DBP(フタル酸ジブチル)、DHP(フタル酸ジヘプチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DIDP(フタル酸ジイソデシル)、BBP(フタル酸ブチルベンジル)、DLP(フタル酸ジラウリル)、DCHP(フタル酸ジシクロヘキシル)、無水ヒドロフタル酸エステル、TCP(リン酸トリクレジル)、TEP(トリエチルホスフェート)、TBP(トリブチルホスフェート)、TOP(トリオクチルホスフェート)、TCEP(リン酸トリ(クロロエチル))、TDCPP(トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)ホスフェート)、TBXP(リン酸トリブトキシエチル)、TCPP(トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)、TPP(トリフェニルホスフェート)、オクチルジフェニルホスフェート、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、DOA(ジオクチルアジペート)、DINA(アジピン酸ジイソノニル)、DIDA(アジピン酸ジイソデシル)、D610A(アジピン酸ジn−アルキル:(株)ジェイ・プラス社製)、BXA(ジブチルジグリコールアジペート)、DOZ(アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル)、DBS(セバシン酸ジブチル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、DBM(マレイン酸ジブチル)、DOM(マレイン酸−2−エチルヘキシル)、DBF(フマル酸ジブチル)などが挙げられる。
【0034】
スコーチ防止剤は別名焼け防止剤といい、スコーチを防止または遅延させる薬剤である。具体的には、無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸などの有機酸、N−ニトロソジフェニルアミンなどのニトロソ化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミドなどが挙げられる。さらに、ゴム、エラストマー樹脂にはカーボンブラックを配合させることも可能である。
【0035】
また、マトリックスとなるゴム、エラストマー成分以外の樹脂としては、充填材組成物にコゲが発生する等の不具合を回避するために溶融加工温度が250℃以下である樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタ−ル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル−スチレン共重合系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂などのポリオレフィン系樹脂やジエチレングリコールビスアリルカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、生分解性樹脂など)、ポリフェニレンスルフイド系樹脂、カーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0036】
中でも、加工性および得られる素材の性能から、ポリオレフィン系樹脂に対して好適に用いられる。また、同様の観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびネオペンチルグリコール等を共重合成分として20〜40モル%含むポリエチレンテレフタレート樹脂(イーストマン・ケミカル社製:PET G)などの非晶性樹脂などが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の充填材組成物との親和性が優れるため、反応性基および極性基などを有する樹脂も好適に使用でき、例えば、高流動ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
なお、上記マトリックス樹脂は、必要に応じて2種以上を併用することもできる。さらに、樹脂には必要に応じて、色材(顔料、染料など)、安定剤、難燃剤、帯電防止剤などを加えることもできる。
【0039】
本発明の充填材組成物は、ゴム成分、エラストマー成分あるいはその他樹脂成分100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは2〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部配合される。配合量が1質量部よりも少ない場合にあっては最終製品となる素材の強度低下をきたすおそれがある。逆に、配合量が30質量部よりも多くなる場合にあっては、得られた最終製品となる素材の弾性が高くなり過ぎるおそれがある。
【0040】
本発明の充填材組成物は、上述のように古紙パルプ繊維に樹脂が複合化されているのでマトリックスであるゴム、エラストマー、その他の樹脂との混和性に極めて優れている。このため、マトリックスに充填材を配合された組成物は均一な混合状態となり、組成物の強度試験においてもクラックの発生がほとんどなく、優れた特性を示すものと考えられる。同様に、弾性、耐摩耗性も向上するものと考えられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、%は、全て質量%である。
【0042】
マトリックスとして用いるゴムとして表1に示す処方の組成物を用いた。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例1)
水分6質量%の新聞古紙をパルプ粗砕機(商品名:「FR−160」、瑞光鉄工社製)を用いて粗砕後、パルプ粉砕機(商品名:「P−270」、瑞光鉄工社製)を用いて乾式で解繊し、古紙パルプ繊維を得た。得られた古紙パルプ繊維の長さ加重平均繊維長は1.20mmであった。
上記古紙パルプ繊維をディスインテグレーターで離解し(パルプ濃度:5質量%)、未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルション(商品名:「J−9049」、固形分濃度:49質量%、Tg:−40℃、日本エイアンドエル社製)を添加し、ホモミキサを用いて混合した。古紙パルプ繊維と未変性スチレン−ブタジエン共重合体の混合割合は古紙パルプ繊維100質量部に対して未変性スチレン−ブタジエン共重合体40質量部の割合であった。
続いて上記古紙−樹脂複合物をスクリュープレスにて固形分20質量%まで脱水した後、105℃の熱風乾燥機にて1昼夜乾燥して本発明の古紙パルプ繊維にスチレン−ブタジエン共重合体樹脂が複合化されている充填材組成物を得た。
表1のゴム組成物100質量部に対して上記充填材組成物を9質量部配合して、バンバリーミキサで約150℃の条件下で5分間混練りを行った。その後、2軸オープンロールで約80℃の条件下で5分間練りこみ、ゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0045】
(実施例2)
実施例1において未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルションを20質量部添加混合した以外は実施例1と同様にして本発明の古紙パルプ繊維に樹脂が複合化されている充填材組成物を得た。続いて、実施例1と同様にしてゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0046】
(実施例3)
実施例1において未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルションを80質量部添加混合した以外は実施例1と同様にして本発明の古紙パルプ繊維に樹脂が複合化されている充填材組成物を得た。続いて、実施例1と同様にしてゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0047】
(実施例4)
実施例1において未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルションに替えてエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション(商品名:「スミカフレックス205HQ」、固形分濃度:55質量%、Tg:−20℃、ケムテック社製)を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の古紙パルプ繊維に樹脂が複合化されている充填材組成物を得た。
ポリプロピレン樹脂(商品名:「プライムポリプロJ−356HP」、プライムポリマー社製)100質量部に対して上記充填材組成物を9質量部配合して、射出成型機で約180℃の条件下で複合化されたプロピレンシートを作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0048】
(実施例5)
実施例1において新聞古紙に替えて段ボール古紙を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の古紙に樹脂が複合化されている充填材組成物を得た。続いて、実施例1と同様にしてゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0049】
(比較例1)
実施例1において、乾式で解繊し、古紙パルプ繊維を得、ディスインテグレーターで離解し、(パルプ濃度:5質量%)、未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルションを添加混合しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂が複合化されていない充填材組成物を得た。続いて、実施例1と同様にしてゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0050】
(比較例2)
実施例1において、乾式で解繊せず、水分6質量%の新聞古紙をディスインテグレーターで離解し、(パルプ濃度:5質量%)、未変性スチレン−ブタジエン共重合体エマルションを添加混合しなかった以外は実施例1と同様にして樹脂が複合化されていない充填材組成物を得た。続いて、実施例1と同様にしてゴム組成物を作成し、マトリックスと充填材組成物の混和性を評価した。
【0051】
<評価基準>
マトリックスと充填材組成物の混和状態を電子顕微鏡観察により判断した。
◎:マトリックスと充填材組成物の混和性に極めて優れている。
○:マトリックスと充填材組成物の混和性に優れている。
△:マトリックスと充填材組成物が若干分離しているが、実用上問題ないレベルである。
×:混和性が非常に悪く、ダマができてマトリックスと充填材組成物が分離している。
【0052】
【表2】

【0053】
表2から明らかなように、本発明の方法で得られた充填材組成物は、マトリックスとの混和性に極めて優れ、ひいては強度、弾性、耐摩耗性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の充填材組成物は、軽量で、マトリックスであるゴム、エラストマー、樹脂等への混和安定性に優れるとともに、ひいては強度、弾性、耐摩耗性等の特性を向上させることができ、充填材組成物として極めて優れた特性を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を解繊処理したパルプ繊維スラリーに樹脂エマルションを添加混合し、乾燥して得た繊維に樹脂が複合されていることを特徴とする充填材組成物。
【請求項2】
前記古紙が上白、カード、特白、中白、白マニラ、模造、色上、切付、中更反古、雑誌、段ボール、印刷古紙から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の充填材組成物。
【請求項3】
印刷古紙が新聞紙、微塗工紙、高灰分の塗工紙、非塗工紙から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充填材組成物。
【請求項4】
前記樹脂エマルションが未変性のスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填材組成物。
【請求項5】
古紙パルプ100質量部に対して固形分換算で樹脂エマルション20〜100質量部が添加混合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填材組成物。

【公開番号】特開2009−91388(P2009−91388A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260453(P2007−260453)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】