説明

充填装置

【課題】容器への液の充填を行う空間の無菌環境を確実に維持することのできる充填装置を提供することを目的とする。
【解決手段】液分配装置30とチャンバー壁の天部カバー53の開口部53aとの隙間をリングプレート60Aで塞ぐようにした。リングプレート60Aは、外径を開口部53aよりも大きくしてリングプレート60Aの径方向に一定寸法の範囲内で移動可能とし、前記の隙間を確実に塞ぐ。また、リングプレート60Aはこれを固定する押さえ金具61と干渉しないようにし、ジョイントホルダ32と天部カバー53との間に位置ズレが生じていても、リングプレート60Aをジョイントホルダ32側のリング部材37に取り付けた状態で、その外周部が天部カバー53や押さえ金具61に接触して径方向に応力が作用しないようにし、各部のシール性が損なわれるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の液体を容器に充填するための充填装置に関し、特に無菌環境下で充填を行う充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料水等の液体をPETボトルやガラス瓶、ボトル缶等の容器に充填する装置として、回転式の充填装置が用いられている。この回転式の充填装置は、回転する円形のホイールの外周部に複数の充填バルブを備えており、ホイールがほぼ1回転して容器が周方向に搬送される間に、充填バルブから容器内への充填を行う。そして、容器への液体の充填が終了した後、キャッパ(打栓機)により容器へのキャップの装着が行われる。
【0003】
ところで、飲料水等の場合、雑菌等の容器内への混入を防ぐことが必須であり、このため、クリーンルーム内で、容器殺菌、キャップ殺菌、製品液の充填及びキャップ装着といった一連の工程を行ういわゆる無菌充填方式や、充填する液体を高温に加熱しておき、搬送工程でキャッピングされた容器全体を横又は上下倒立させた状態に転倒させて、容器内の液体未接触部位の殺菌をこの液体自体の熱によって行う、高温充填方式が採用されている。
【0004】
前者の無菌充填方式においては、充填装置は、装置のベース架台の上方の空間にチャンバー壁(囲い)が設けられ、チャンバー壁内に過酢酸や過酸化水素、熱水、次亜塩素酸水等、無菌充填に必要な殺菌効果を有する液体や気体状態の殺菌剤が供給され、これによってチャンバー壁内の空間が無菌室とされる。そして、充填バルブが備えられたホイールが無菌室の無菌雰囲気中に露出し、チャンバー壁内の無菌環境下で容器への液充填が行われるようになっている。なお、ホイールを回転させるための駆動機構や駆動源は、無菌室外に配置され、無菌雰囲気中にこれらが露出しないようになっている。これは、駆動部分に使用される潤滑油等が、無菌雰囲気中に浸入して無菌環境を損なうのを防ぐためである。
【0005】
ホイールに設けられた複数の充填バルブには、無菌室の外部に設けられた液タンクから供給管を介して送り込まれる液が、液分配装置によって分配されて供給される。
ここで、充填バルブはホイールとともに回転するため、液分配装置においては、液タンクからの供給管をそれぞれの充填バルブに分岐するとともに、供給管から分岐したそれぞれの配管がホイールと一体に回転するロータリー機構を備えている。このようなロータリー機構も、回転部分に使用される潤滑油等の浸入による無菌環境の汚染を防ぐため、シール部材を設ける等の対策を講ずる必要がある。
ここで、液分配装置は、ホイールの上方に設けられているのが通常であり、無菌室を構成するために設けられたチャンバー壁を貫通するように設けられている。チャンバー壁と液分配装置の隙間についても、無菌環境の汚染を防ぐために確実に塞ぐ必要があり、従来、ゴム製のダイヤフラムを用いた構造が提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特許第3460415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液分配装置は、充填装置のベース架台に支持されて設けられる。一方、無菌室を構成するためのチャンバー壁は、充填装置のベース架台等にフレームを設け、このフレームに、無菌環境とすべき空間の側方を囲う側部カバー、上方を覆う天部カバーとが取り付けられることで構成されている。そして、天部カバーに開口部が形成され、この開口部を貫通するように液分配装置が配置されているのである。
このような構造において、充填装置の製作・組立時において、液分配装置側と、チャンバー壁側とでは、組立誤差による位置ズレがそれぞれ生じる。また、自重によって天部カバーが撓み、これによってもチャンバー壁の開口部の位置ズレに繋がる。このような位置ズレによって液分配装置とチャンバー壁との間のシール性が損なわれないよう、特許文献1に記載の技術ではゴム製のダイヤフラムを用いているが、ゴム製のダイヤフラムはコストが高く、また耐久性にも問題がある。
【0008】
このほか、液分配装置には、液分配装置に液タンクから液を送り込むための供給管の自重が作用する。これによって液分配装置が応力を受けると、液分配装置やホイール等の回転機構部分においてシール性が損なわれることもある。また、供給管自重によって液分配装置の回転部分の軸受に過大な荷重が作用するため、軸受の異常摩耗が生じると言う問題もある。軸受の異常摩耗により液分配装置のメンテナンス頻度が高まる他、異常摩耗によって生じた粉塵により無菌環境が損なわれる可能性もある。
このように無菌充填式の充填装置においては、チャンバー壁外部からの汚染、チャンバー壁内部の機構部による汚染をいかに抑えるかが無菌環境を維持するのに重要となっている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、容器への液の充填を行う空間の無菌環境を確実に維持することのできる充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明の充填装置は、保持具で保持した容器を周方向に搬送しながら容器内に液を供給する充填装置であって、充填装置のベース上に回転可能に設けられ、外周部に周方向に間隔を隔てて容器の保持具を複数備えたホイールと、外部から液を送り込む供給管に接続され、それぞれの保持具に保持された容器に液を分配して供給する液分配装置と、容器への液の充填を、予め定められた環境下で行うため、ベース上においてホイールを含む空間を囲むチャンバー壁と、を備える。そして、液分配装置は、上端部が供給管に接続され、上端部側の一部がチャンバー壁を貫通して外部に突出した筒状のホルダー部材と、ホイール上に設けられてホイールと一体に回転し、上部がホルダー部材内に挿入されるとともに相対的に回転可能な状態で保持され、下部にそれぞれの保持具に保持された容器に液を供給するため複数に分配された分配管を有したマニホールドと、を備える。チャンバー壁をホルダー部材が貫通する部分においては、チャンバー壁に形成された開口部とホルダー部材の外周部との隙間がリング状のプレートによって塞がれるとともに、プレートは開口部の内径よりも大きな外径を有し、プレートの内周部がホルダー部材に固定された状態でプレートの外周部がチャンバー壁上に載置されて固定されていることを特徴とする。
プレートが、チャンバー壁の開口部の内径よりも大きな外径を有することで、プレートはその外周部をチャンバー壁上に載せた状態で置くことができ、プレートの外周部に接触する部材がない限り、プレートの位置は自在となる。そして、プレートの内周部をホルダー部材に先行して固定すると、プレートはホルダー部材側に同心状に位置決めされる。この状態でプレートの外周部をチャンバー壁に固定すれば、ホルダー部材とチャンバー壁との間に位置ズレが存在しても、プレートを介してチャンバー壁からホルダー部材に応力が作用することもない。
このようにするには、ホルダー部材およびチャンバー壁をそれぞれ設置した後に、まずプレートの内周部をホルダー部材に固定し、この状態でプレートの外周部をチャンバー壁に固定すればよい。
【0010】
このようなプレートは、内周部をホルダー部材に固定すれば、プレートの外周部をホルダー部材の自重によりチャンバー壁の上面に押圧することができ、プレートとチャンバー壁の間における気密性を高めることができる。
【0011】
また、ホルダー部材の外周部に、プレートを介してホルダー部材の軸線に直交する方向の力が作用したときに変形することでホルダー部材に作用する応力を緩和する応力緩和部材を設けることもできる。
【0012】
上記以外にも、チャンバー壁内の無菌環境を維持するには、充填装置各部における確実な対策が必要である。
例えば、ホルダー部材の下端部とマニホールドの境界部分には、ホルダー部材の下端部とマニホールドの隙間よりも大きな厚さを有したシール部材を介在させるのが好ましい。ホルダー部材の自重によりシール部材が押圧されることによって、この部分におけるシール性を向上でき、ホルダー部材内部においてマニホールドの上部を回転可能に支持するために用いる潤滑剤等の漏出を防止できる。
また、この部分には、殺菌液を噴霧するノズルを設けるのも好ましい。これにより、万が一潤滑剤等の漏出が生じても、無菌環境の汚染を抑えることができる。
【0013】
ところで、液分配装置に外部から液を送り込むための供給管は、供給管および内部の液の自重が液分配装置に作用する支持構造となっていると、液分配装置およびその下方のホイールの軸受等に過大な荷重が作用してしまう。その結果、軸受に異常摩耗が生じ、その摩耗粉等が無菌環境内に浸入すれば、無菌環境を汚染してしまう。そこで、供給管の支持部材を、液分配装置およびホイールを除く他の部分、例えばチャンバー壁の支柱や装置周囲の床等、に取り付けるのが好ましい。これにより、液分配装置およびホイールに作用する供給管から受ける荷重を低減できる。
また、供給管と液分配装置との間に、可撓性を有したフレキシブルホースを介在させて設けるのも、液分配装置およびホイールに作用する供給管から受ける荷重を低減するのに有効である。
加えて、ホイールの外周部の下端部と、ベースとの境界部分に、ラビリンス形状を有した水封シール部を設けるのが好ましい。これにより、ホイールの下部に設けられる、軸受をはじめとする、ホイールを回転させるための機構を無菌環境外に確実に置くことができ、万が一の場合にも無菌環境の汚染を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チャンバー壁をホルダー部材が貫通する部分に、チャンバー壁に形成された開口部とホルダー部材の外周部との隙間を塞ぐリング状のプレートを設けるようにした。そしてこのプレートを、開口部の内径よりも大きな外径を有し、プレートの内周部がホルダー部材に固定された状態でプレートの外周部がチャンバー壁上に載置されて固定されるようにした。
このようにして、プレートの内周部をホルダー部材に先行して固定した後、プレートの外周部をチャンバー壁に固定することが可能となり、ホルダー部材とチャンバー壁との間に位置ズレが存在しても、プレートを介してチャンバー壁からホルダー部材に応力が作用するのを抑えることができる。またこのようなプレートは、金属等、剛性を有した材料で形成するため、ゴム製のマニホールド等に比較して製作コストを抑えることができ、耐久性にも優れる。
また、液分配装置に外部から液を供給する供給管も、液分配装置やホイールに作用する荷重を低減させる支持構造とすることで、ホルダー部材に応力が作用するのを抑えることができる。
これによって、液分配装置に作用する応力によってシール性が損なわれたり、軸受の異常摩耗が生じたりするのを防ぐことができ、無菌環境が損なわれるのを防止することが可能となる。
これ以外にも、液分配装置のホルダー部材とマニホールドの境界部部分やプレート等、各部におけるシール性を高めることでも、無菌環境が損なわれるのを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における飲料充填機の全体構成を説明するための図である。図1に示す飲料充填機は、無菌充填方式に適用されるものである。
図1に示すように、飲料充填機は、容器100を殺菌する殺菌装置11、容器100をすすぐすすぎ装置12、容器100に液体を充填する充填装置20、液体が充填された容器100にキャップを装着するキャッパ(図示省略)を主に備えている。
これら殺菌装置11、すすぎ装置12、充填装置20、キャッパ間には、搬送スターホイール13等が設けられ、これによって、容器100の受け渡し等が行われるようになっている。
【0016】
図2は、充填装置20の構成を示す図である。
図2に示すように、充填装置20は、ベース架台(ベース)21上に、軸受22によって回転可能に支持された回転軸23が設けられている。この回転軸23には円盤状のホイール24が支持され、ホイール24はモータ等の駆動源25によって回転駆動されることでほぼ水平面内で回転するようになっている。
ホイール24の外周部には、液を充填すべき容器100を保持するグリッパ(保持具)26と、グリッパ26で保持した容器100に液を充填するための充填ノズル27とが、ホイール24の周方向に一定間隔ごとに配置されている。
【0017】
ホイール24の上方には、各充填ノズル27に液を分配する液分配装置30が設けられている。液分配装置30は、外部に設けられた液タンク(図示無し)から配管40を通して液が送り込まれ、複数に分岐して各充填ノズル27に連結された分配管31を通して、それぞれの充填ノズル27に液を分配供給する。
【0018】
ベース架台21上には、充填装置20における容器100への液充填を無菌環境下で行うため、ホイール24、充填ノズル27等を覆うチャンバー壁50が設けられている。
このチャンバー壁50は、ベース架台21のテーブル21a上に設けられた支柱(支持部材)51に、側方を囲う側部カバー52と、上方を覆う天部カバー53とが設けられることで構成されている。
そして、チャンバー壁50内の空間には、外部から殺菌液(例えば過酢酸や過酸化水素、苛性ソーダ等)のミストが供給されることで、この空間が無菌環境とされている。
このとき、ホイール24の外周部の下端と、ベース架台21のテーブル21aの上面との境界部分は、ラビリンス構造を用いた水封シール部28とされている。これによってホイール24の下端部分における気密性を確保し、無菌環境を維持している。
【0019】
図3に示すように、液分配装置30は、配管40に接続されたジョイントホルダ(ホルダー部材)32と、ホイール24と一体に回転するように設けられた回転マニホールド(マニホールド)33と、を備えている。
ジョイントホルダ32は、全体として筒状をなし、内部に回転マニホールド33を回転自在に保持するようになっている。ジョイントホルダ32の上部には、配管40に対する接続口32aが形成され、この接続口32aから液が送り込まれるようになっている。このジョイントホルダ32は、後述するリングプレート(プレート)60Aを介して天部カバー53に連結されることで、その回転および位置が拘束されている。
回転マニホールド33は、上部がジョイントホルダ32内に挿入される筒体34とされている。この筒体34の下端部には円盤状の分配ロータ35が一体に形成されている。図2に示したように、分配ロータ35はホイール24に連結部材36を介して連結されており、これによって回転マニホールド33はホイール24と一体に回転するようになっている。図3に示したように、分配ロータ35の内部には、筒体34の流路34aに連続して、流路34aを放射状に複数に分岐する分配流路35aが形成されている。そして、分配ロータ35の外周部には、各分配流路35aに対応した位置に接続口35bが形成されており、この接続口35bに前記の分配管31が接続されている。
【0020】
このようなジョイントホルダ32と回転マニホールド33との間の回転摺動部分には、スライドブッシュ70A、70Bが介在しており、これによってジョイントホルダ32と回転マニホールド33とが相対的に回転可能となっている。
【0021】
また、回転マニホールド33の筒体34の上端部とジョイントホルダ32の接続口32aの下方部分との間には、この部分からジョイントホルダ32の内周面と筒体34の外周面との間への液の漏出を防ぐため、メカニカルシールユニット71が設けられている。このメカニカルシールユニット71は既製品で、上部71aがジョイントホルダ32側に固定され、下部71bが筒体34側に固定され、双方の相対的な回転を許容しつつ固定側と回転側との間のシール性を保つ機構を有し、さらにその外周部には外部から供給ポンプ71cによってシール液が送り込まれることでシール性を高める構造となっている。
【0022】
さらに、ジョイントホルダ32の下端部と回転マニホールド33との間には円盤状のシールリング(シール部材)72が設けられている。このシールリング72は、回転マニホールド33の分配ロータ35の上面35cと、ジョイントホルダ32の下端部において上面35cに平行な面32bとの間に介在している。シールリング72の厚さは、分配ロータ35の上面35cとジョイントホルダ32の面32bとの間隙よりも若干大きな寸法に設定されている。そして、シールリング72は、ジョイントホルダ32の自重で押圧されることによって弾性変形可能な弾性と、ジョイントホルダ32と回転マニホールド33の相対的な回転を阻害しないような低い摩擦係数とを有する材料、例えば樹脂系材料によって形成されている。これにより、シールリング72は、ジョイントホルダ32の自重で押圧されて弾性変形した状態でジョイントホルダ32と回転マニホールド33との間に介在し、ジョイントホルダ32の下端部におけるシール性を高めるようになっている。
【0023】
加えて、ジョイントホルダ32の下端部と回転マニホールド33の分配ロータ35の境界部分には、スプレーノズル(ノズル)75から殺菌液を噴霧するのが好ましい。これにより、万が一、継ぎ目の部分から潤滑油等の漏出があった場合にも、無菌環境を維持できる。
【0024】
このような液分配装置30において、ジョイントホルダ32は、その殆どの部分がチャンバー壁50内に収められて、一部のみが天部カバー53よりも上方に突出するように設けられている。このため、天部カバー53には開口部53aが形成され、ジョイントホルダ32と天部カバー53の開口部53aとの間は前記のリングプレート60Aによって塞がれ、チャンバー壁50内の無菌環境を維持するようになっている。
リングプレート60Aは、その外径が天部カバー53の開口部53aの内径よりも大きく形成されている。これにより、リングプレート60Aは、その外周部60aが天部カバー53の開口部53aの内周縁部に設けられたフランジ53b上に載置される。リングプレート60Aは、この状態で、天部カバー53側に設けられた押さえ金具61によって固定されている。この押さえ金具61は、リングプレート60Aがジョイントホルダ32の軸線に直交する面内で一定寸法の範囲内で移動可能となるよう、リングプレート60Aの外周部と干渉しない位置に配置されている。
【0025】
ジョイントホルダ32の外周部には、円筒状のリング部材(応力緩和部材)37が設けられている。このリング部材37は、その下端部がサポート部材38によって保持されている。リング部材37の内径は、リング部材37を設けた位置におけるジョイントホルダ32の外径よりも大きく設定されており、これによってリング部材37は、ジョイントホルダ32の外周面から外周側に離間した状態で保持されている。
リングプレート60Aは、中央部に開口部60bが形成されており、開口部60bの内周面にリング部材37が対向している。リング部材37の外周面には、外方に突出する突起37aが設けられており、リングプレート60Aはこの突起37aの下面に上端部が連結固定されている。リングプレート60Aの開口部60bとリング部材37の外周面との間にはOリング62が設けられており、この部分における気密性を確保している。また、リングプレート60Aの外周部60aの下面と天部カバー53のフランジ53bとの間にはOリング63が設けられており、この部分における気密性を確保している。
【0026】
液分配装置30は、充填装置20の製作組立時において、ベース架台21側から上方に向けて、軸受22、回転軸23、ホイール24、回転マニホールド33、ジョイントホルダ32を所定の位置精度内に収まるように順次組み付けていく。一方、チャンバー壁50は、ベース架台21上に支柱51、側部カバー52、天部カバー53を所定の位置精度内に収まるように順次組み付けていく。しかし、液分配装置30自体とチャンバー壁50は別々に組み付けられるため、それぞれが所定の位置精度内に収まっていても、双方の間には位置ズレが生じ得る。
前記したように、リングプレート60Aは、その外径が天部カバー53の開口部53aよりも大きく、その外周部60aが天部カバー53の開口部53a上に載置された状態で、リングプレート60Aの径方向に一定寸法の範囲内で移動可能となっており、リングプレート60Aを固定する押さえ金具61と干渉しないようになっている。これにより、ジョイントホルダ32と天部カバー53との間に位置ズレが生じていても、リングプレート60Aをジョイントホルダ32側のリング部材37に取り付けた状態で、その外周部60aが天部カバー53や押さえ金具61に接触して径方向に応力を受けることもない。過大な応力を受けると、ジョイントホルダ32の下端部のシールリング72や、メカニカルシールユニット71のシール性が損なわれる可能性があるが、上記構造によってこれを回避することができる。
また、このようなリングプレート60Aは、金属や樹脂等、ゴム以外の材料で形成できるので、その製作コストも抑えることができ、耐久性、耐食性にも優れる。
【0027】
さらに、リングプレート60Aは、リング部材37に設けられた突起37aを介し、ジョイントホルダ32の自重がリングプレート60Aにも伝達されるようになっている。これにより、リングプレート60Aの外周部が天部カバー53の開口部53aのフランジ53bに押圧されて、Oリング63によるリングプレート60Aの外周部における気密性を保つことができる。
加えて、リング部材37は、サポート部材38から上方に延びるように設けられている。これにより、万が一リングプレート60Aを介してその径方向の外力が入力された場合、リング部材37のサポート部材38から立ち上がったリング部材37が弾性変形(場合によっては塑性変形)することで、外力を吸収することができる。これによって、組立時の寸法誤差等によって液分配装置30に過大な応力が作用するのを防ぐことができ、確実なシール性を確保できる。
【0028】
上記のような液分配装置30に対して液を供給する配管40は、その自重(管内の液を含む)が液分配装置30に作用しないよう、図2に示したように、サポート部材41を介し、チャンバー壁50の支柱51や建屋の天井や床等、液分配装置30およびホイール24を除く他の部分に支持されている。さらに、配管40の先端部と液分配装置30のジョイントホルダ32の接続口32aとの間には、柔軟性を有した樹脂やゴム等の材料から形成されたフレキシブルホース42が介在しており、これも配管40の自重を液分配装置30に作用させないことに寄与している。
このようにして、リングプレート60Aの固定構造だけでなく、配管40の支持・接続構造についても工夫を凝らすことで、液分配装置30に不要な外力が作用するのを避け、軸受22に過大な力が作用するのを抑えることができるようになっている。これによって、軸受22が異常摩耗して摩耗粉等が発生するのを防ぎ、無菌環境が汚染されるのを抑えている。
【0029】
ところで、図3に示した構成においては、リングプレート60AとOリング62、63によって気密性を確保しているが、これに限るものではない。例えば図4に示すように、天部カバー53の開口部53aの内周部に、リングプレート(プレート)60Bの外周部の下面に当接する弾性を有したゴム等から形成されたベローズ65を設け、このベローズ65をリングプレート60Bの外周部の下面に対して押圧させることで、リングプレート60Bの外周部と天部カバー53との間におけるシール性を確保するような構成とすることも可能である。
また、リングプレート60Bの固定構造についても、押さえ金具61に代えて、ハンドル66aを回転させることで押さえ部66bが回転しながら下降して締付力を発揮するようなコックハンドル66を用い、リングプレート60Bの外周部を天部カバー53の開口部53aのフランジ53bに押さえつけて固定しても良い。
このような構成においては、コックハンドル66によってリングプレート60Bを下方に押さえつけることができる。図3に示した構成のように液分配装置30の自重をリングプレート60Aに伝達することによって、リングプレート60Aの外周部をフランジ53bに押さえつける構成に比較すれば、リングプレート60Bを薄く軽量なものとすることができる。
【0030】
また、スライドブッシュ70A、70Bに代えて、図5に示すように、ベアリング73A、73Bを用い、ジョイントホルダ32と回転マニホールド33を相対的に回転可能とすることも可能である。この場合、ベアリング73A、73Bに必要な潤滑油の漏出を防ぐため、オイルシール74A、74Bをジョイントホルダ32と回転マニホールド33との間に設ける。
さらに、ジョイントホルダ32の下端部と回転マニホールド33の上面との隙間におけるシール性を高めるため、ゴム等の弾性を有したベローズ76を備えるのが好ましい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、組立部品を統合したり、組立の順番を変えたり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態における飲料充填機の構成を示す概略レイアウト図である。
【図2】充填装置を示す立面図である。
【図3】充填装置の液分配装置を示す断面図である。
【図4】液分配装置の他の例を示す断面図である。
【図5】液分配装置のさらに他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
20…充填装置、21…ベース架台(ベース)、22…軸受、24…ホイール、26…グリッパ(保持具)、28…水封シール部、30…液分配装置、31…分配管、32…ジョイントホルダ(ホルダー部材)、33…回転マニホールド(マニホールド)、34…筒体、35…分配ロータ、37…リング部材(応力緩和部材)、40…配管、41…サポート部材、42…フレキシブルホース、50…チャンバー壁、51…支柱(支持部材)、53…天部カバー、53a…開口部、60A、60B…リングプレート(プレート)、72…シールリング(シール部材)、75…スプレーノズル(ノズル)、100…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持具で保持した容器を周方向に搬送しながら前記容器内に液を供給する充填装置であって、
前記充填装置のベース上に回転可能に設けられ、外周部に周方向に間隔を隔てて前記容器の前記保持具を複数備えたホイールと、
外部から前記液を送り込む供給管に接続され、それぞれの前記保持具に保持された前記容器に前記液を分配して供給する液分配装置と、
前記容器への前記液の充填を、予め定められた環境下で行うため、前記ベース上において前記ホイールを含む空間を囲むチャンバー壁と、を備え、
前記液分配装置は、
上端部が前記供給管に接続され、前記上端部側の一部が前記チャンバー壁を貫通して外部に突出した筒状のホルダー部材と、
前記ホイール上に設けられて前記ホイールと一体に回転し、上部が前記ホルダー部材内に挿入されるとともに相対的に回転可能な状態で保持され、下部にそれぞれの前記保持具に保持された前記容器に前記液を供給するため複数に分配された分配管を有したマニホールドと、を備え、
前記チャンバー壁を前記ホルダー部材が貫通する部分においては、前記チャンバー壁に形成された開口部と前記ホルダー部材の外周部との隙間がリング状のプレートによって塞がれるとともに、前記プレートは前記開口部の内径よりも大きな外径を有し、前記プレートの内周部が前記ホルダー部材に固定された状態で前記プレートの外周部が前記チャンバー壁上に載置されて固定されていることを特徴とする充填装置。
【請求項2】
前記プレートは、前記ホルダー部材および前記チャンバー壁の設置後に、内周部を前記ホルダー部材に固定した状態で外周部が前記チャンバー壁に固定されることを特徴とする請求項1に記載の充填装置。
【請求項3】
前記プレートは内周部が前記ホルダー部材に固定され、外周部が前記ホルダー部材の自重により前記チャンバー壁の上面に押圧されることを特徴とする請求項1または2に記載の充填装置。
【請求項4】
前記ホルダー部材の外周部に、前記プレートを介して前記ホルダー部材の軸線に直交する方向の力が作用したときに変形することで、前記ホルダー部材に作用する応力を緩和する応力緩和部材が設けられていることを特徴とする記載の請求項1から3のいずれかに充填装置。
【請求項5】
前記ホルダー部材の下端部と前記マニホールドの境界部分に、前記ホルダー部材の下端部と前記マニホールドの隙間よりも大きな厚さを有したシール部材が介在し、前記ホルダー部材の自重により前記シール部材が押圧されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の充填装置。
【請求項6】
前記ホルダー部材の下端部と前記マニホールドの境界部分に殺菌液を噴霧するノズルが設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の充填装置。
【請求項7】
前記供給管の支持部材が、前記液分配装置および前記ホイールを除く他の部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の充填装置。
【請求項8】
前記供給管と前記液分配装置との間に、可撓性を有したフレキシブルホースが介在して設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の充填装置。
【請求項9】
前記ホイールの外周部の下端部と、前記ベースとの境界部分に、ラビリンス形状を有した水封シール部が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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