説明

充放電システム

【課題】マスタースレーブ方式によりシステムの大小の変化に対応し、マスター或いは各スレーブにおける充放電制御も独立して行う。
【解決手段】
マスター基板Mとこれに接続されたスレーブ基板Sとを備える。マスター基板とスレーブ基板には、それぞれ発電装置1M,1Sを接続すると共に、各基板を前記発電装置1M,1Sからの電力を蓄電する二次電池EDLCに接続する。各基板1M,1Sには、それぞれLED照明装置その他の負荷を接続する。各基板には、それぞれに接続した発電装置からの電力を二次電池に蓄電するための充電制御部2と、各基板にそれぞれ接続した負荷に対して二次電池から電力を供給するための放電制御部3を設ける。マスター基板1Mには、各基板に共通の制御信号を送出する通信制御部4を設ける。マスター基板の優先度記憶部5に各スレーブ基板の優先度を記憶しておき、この優先度に従って各スレーブ基板がその充放電制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置、風力発電装置などの自然エネルギー発電装置で発電した電力を、電気二重層キャパシタなどの二次電池に蓄電し、二次電池からの放電によりLED照明装置など負荷を運転するための充放電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギー発電装置、例えば太陽光発電装置を用いたソーラーシステムにおいては、発電電力を平準化するために、電気二重層キャパシタなどの二次電池が使用される。この二次電池に対する充放電システムとしては、従来から特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、蓄電池を接続した複数台のPCS(電力変換システム)を光ケーブルなどで連携して、いずれかのPCSをマスターとし、他のPCSをスレーブとして同期制御を行うことが記載されている(段落0017参照)。特許文献2には、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を有する複数のスレーブをマスター制御装置に接続し、マスター制御装置からの指令で各スレーブの蓄電素子に対する充放電制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−72774号公報
【特許文献2】特開2008−54409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、様々な用途にソーラーシステムが採用されている。そのため、発電用のパネル数、蓄電する二次電池の容量、電力を使用する照明その他の負荷の数や種類は、システムの用途や規模に応じて異なる。従来では、システムの用途や規模に合わせて、ソーラーパネルに接続する二次電池の充放電システムを一から設計していたため、要求される様々なシステムを容易に構築することが困難であった。このような問題点は、ソーラーシステムに限らず、他の自然エネルギーを使用した発電装置の充放電システムでも存在した。
【0006】
この問題点を解決する手法として、前記特許文献1や特許文献2に記載のマスタースレーブ方式を充放電制御に採用することが考えられる。これら特許文献の発明を利用すれば、マスターによって制御されるスレーブごとに発電装置(太陽光パネル)と二次電池を接続しておき、スレーブ数を増減させることでシステムの大小に対応することができる。
【0007】
しかし、これら特許文献に記載の発明は、マスターによって複数のスレーブを一律に制御するものであり、電力を使用する照明その他の負荷が複数有り、その種類が異なる場合や、負荷が同一であっても電力の使用態様が異なる場合には、適用できなかった。例えば、非常灯のように常時点灯が要求されるものと、重要度の低い照明装置とでは、二次電池の残容量に応じて供給する電力が異なることが望ましい。しかし、前記特許文献に記載の技術では、このような各スレーブに充放電制御を行うことは不可能であった。
【0008】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、マスタースレーブ方式によりシステムの大小に容易に対応することができ、しかも、マスター或いは各スレーブにおける充放電制御も独立して行うことができる充放電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の充放電システムは、マスター基板とこれに接続されたスレーブ基板とを備え、前記マスター基板とスレーブ基板にはそれぞれ発電装置を接続し、前記各基板には前記発電装置からの電力を蓄電する二次電池を接続し、前記各基板にはそれぞれ照明装置その他の負荷を接続し、前記各基板には各基板に接続した発電装置からの電力を前記二次電池に他の基板の制御とは独立して蓄電するための充電制御部と、前記二次電池からの電力を各基板にそれぞれ接続した負荷に他の基板の制御とは独立して供給するための放電制御部を設け、前記マスター基板には各基板に共通の制御信号を送出する通信制御部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記マスター基板に、各スレーブ基板の優先度を記憶する優先度記憶部を設け、マスター基板からの優先度に従って各スレーブ基板がその充放電制御を行うことも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0011】
前記のような構成を有する本発明の充放電システムでは、スレーブ基板数を増減させて、発電装置と負荷の数を増減させることによって、容量の異なるシステムを容易に構成することができる。また、個々のスレーブ基板がそれに接続した二次電池と負荷に対する充放電制御を他の基板とは独立して行うので、各基板に接続した負荷ごとに異なる制御を行うことができる。更に、発電装置が負荷ごとに独立しており、その充電制御も各基板が行うため、大容量のシステムを構築した場合でも各基板に流れる充放電電流は増大することがなく、制御用のFETなどのスイッチング素子に加わる負担も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の充放電システムの実施例を示す接続図。
【図2】マスター基板またはスレーブ基板の構成を示すブロック図。
【図3】本発明のマスター基板とスレーブ基板を使用したコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
(1)実施例の構成
以下、本発明の実施例の構成を図1及び図2に従って具体的に説明する。なお、本実施例は、1枚のマスター基板に2枚のスレーブ基板を接続することで、充放電システムを構成している。
【0014】
図1において、符号Mはマスター基板、Sはスレーブ基板であって、マスター基板Mとスレーブ基板Sとは通信線10によって接続されている。各基板M,Sは、それぞれ発電装置1M,1Sに充放電ケーブル11により接続されている。各基板M,Sの出力側は、充放電の制御対象である1台の二次電池であるEDLC(電気二重層キャパシタ)に、充放電ケーブル11により接続されている。また、各基板M,Sには、それぞれLED照明装置などの負荷が接続されている。この負荷としては、供給電力(二次電池からの放電量)によりその機能が変化する装置を使用するもので、本実施例では、各基板M,Sに調光機能を有するLED照明装置を使用する。
【0015】
図2に示すように、各基板M,Sには、充電制御部2、放電制御部3及び通信制御部4が設けられている。充電制御部2は、各基板M,Sにそれぞれ接続されている発電装置1M,1Sから、各基板M,Sが接続されたEDLCへの充電量を制御する。放電制御部3は、EDLCから各基板に接続された負荷に対する放電電流を制御する。
【0016】
そのため、これら充電制御部2及び放電制御部3のいずれかまたは双方には、発電装置1M,1Sの出力電圧及び出力電流の検出部、EDLCの電圧検出部、発電装置の発電容量やEDLCの蓄電容量の記憶部が設けられている。また、放電制御部3には、基板に接続した負荷(LED)の定格入力電圧や電流、供給する電力に対応した負荷の運転時間(調光度に応じたLEDの継続点灯時間)などのデータの記憶部が設けられている。更に、前記各検出部で検出したデータや、記憶部に記憶されているデータに基づいて、どのような充放電制御を行うかのプログラムも記憶されている。なお、この充電制御部2と放電制御部3の構成については、公知の蓄電装置としてEDLCを使用した太陽光発電装置の充放電装置を適宜使用できる。
【0017】
前記通信制御部4は、マスター基板Mとこれに接続されたスレーブ基板Sとの間でのデータの送受信を制御するものである。この送受信用のデータとしては、マスター基板と各スレーブ基板との接続確認用のデータに加えて、後述するデータ入力及び設定用の入力部6から入力されたマスターに設定された充放電制御用のデータ、各基板で検出された各発電装置の電圧やEDLCの充放電電流、残容量などのデータ、更には各基板を組み合わせて充放電用のコントローラを構成した場合に各基板の状態などをコントローラに表示するためのデータがある。
【0018】
各基板には、基板ごとの優先度を格納する優先度記憶部5が設けられている。この優先度記憶部5は、例えば、EDLCの蓄電容量が減少した場合に、どの基板に接続された負荷を優先して運転するかを記憶する。この優先度は、必ずしも一つの基準によるだけでなく、発電装置の運転状況、システムの規模、負荷の種類(例えば、LED照明装置の場合であれば、どの照明装置に常時点灯が要求され、どの照明装置はある特定の時間についてのみ100%の調光が要求される)など種々の基準に応じて設定することができる。
【0019】
各基板には、データ入力及び設定用の入力部6が設けられている。この入力部6は、例えば次のようなデータや設定値を受け入れるものである。
【0020】
(1) 各基板M,Sを、マスター或いはスレーブのいずれかに設定する指令。
(2) マスター基板の優先度記憶部5に保存する各基板の優先度。
【0021】
(3) 各基板に接続した負荷の種類や、その制御方法。
例えば、EDLCの容量に応じて基板に接続されている負荷にどの程度の電力を供給するか、負荷に要求される運転時間(LEDの照明時間)に応じて負荷に供給する電力をどの程度絞るかなど。具体的には、LED照明装置の場合に、要求される点灯時間に合わせて調光度をどの程度とするか。
【0022】
(4) マスター基板で各スレーブ基板に共通して制御を行う項目。
例えば、すべての負荷を同時に運転・停止させる時間(LED照明装置の場合、点灯時間や消灯時間)や、雨天や曇天時と晴天時など各基板での充放電制御に参照する条件など。
【0023】
(2)実施例の作用
前記のような構成を有する本実施例において、発電装置が1台で利用する負荷が1つ(必ずしも1台の負荷に限らず、同時に制御される複数の負荷を1ユニットとした場合も含む)の小容量のシステムを構成する場合には、図3の(A)に示すように、システムの充放電を制御するコントローラCには、1枚の基板Mを組み込む。
【0024】
一方、より大容量のシステムが要求される場合、例えば、2倍の充放電量が要求される場合には、図3の(B)に示すように、コントローラCには2枚の基板を組み込み、一方をマスター基板Mとし、他方をスレーブ基板Sとして、両基板間を通信線10によって接続する。各基板M,Sは、それぞれ発電装置1M,1Sに接続すると共に、この発電装置1M,1Sからの電力を蓄電するEDLCとしては2倍の容量のものを用意する。また、各基板M,Sには、それぞれの基板によって独立に制御される負荷(LED照明装置など)を接続する。
【0025】
前記のようなシステムにおいて、各発電装置からの電力をEDLCに充電する場合には、各発電装置に接続されたマスター基板またはスレーブ基板に設けられた充電制御部2によって、その充電スケジュールが制御される。基板数及びそれに接続した発電装置が増加した場合、本実施例においては、それに応じた容量の大きな1台のEDLCが使用され、各基板はこの大容量のEDLCに並列に接続されている。EDLCの充放電容量は極めて大きいので、各基板が独自に充電制御をしても、EDLCは大きな充電電流にも耐えることができる。
【0026】
負荷の駆動時、すなわち放電時には、各基板はその放電制御部3に設定されたプログラムに従って、EDLCからの放電を制御する。これにより、各基板に接続された負荷は、他の負荷とは独立して制御されるので、種々の負荷をEDLCにより運転する場合に、負荷ごとに適切な制御が可能となる。マスター基板Mの放電制御部3には、各基板に共通する制御項目、例えば、負荷がLED照明装置であれば、点灯・消灯の時間などを予め設定しておき、これを通信制御部4を介してスレーブ基板Sに配信することで、各基板に共通する放電制御も実施できる。
【0027】
これらの各基板の放電制御部3の放電プログラムは、各基板に設けたデータ入力・設定部6によって、スレーブ基板とマスター基板の接続前に基板ごとに設定しても良いし、接続後にマスター基板から各スレーブ基板に配信しても良い。
【0028】
(3)実施例の効果
本実施例では、基板ごとに1つの発電装置と負荷が設けられており、各基板の充電制御部2や放電制御部3が受け持つ充放電電流は、個々の発電装置や負荷の定格にあったもので良い。すなわち、大容量のソーラーシステムでは使用する太陽光発電装置(太陽電池)やEDLCの容量も大きくなるため、その充放電制御装置に使用するFETなどの素子も大電流に耐えるものが必要となる。しかし、本実施例では、基板ごとに発電装置1Mまたは1Sとそれに対応した充電制御部2が設けられ、また各基板の負荷に対応した放電制御部3が設けられているので、多数の発電装置や負荷を有する大容量ソーラーシステムであっても、個々の基板を流れる充放電電流は小さく、制御用のスイッチング素子の大容量化は不要である。
【0029】
例えば、1枚の基板が発電装置入力27V、7A、EDLC出力20V、LED出力40V、0.4Aとした場合に、6枚の基板を使用し、その1枚をマスター、他の5枚をスレーブとすれば、最大発電装置入力27V、42A、EDLC出力20V、LED出力40V、2.4Aまで対応可能となる。また、充電方式をMPPT機能(最大電力点追従機能)にすれば、各基板の最大充電電流を20Aとした場合、120Aまでの充電が可能となり、二次電池が内部抵抗の低く高い充放電電流に耐えるEDLCであれば、多数の基板を使用して同時に充放電しても、問題はない。
【0030】
本発明をソーラーシステムを利用した照明装置に適用した場合に、それぞれの負荷に対する充放電の制御は各基板で別々に行い、昼夜の切り替え、点灯・消灯のタイミングのみマスター基板からの指令で同時に制御することで、ソーラーシステムの基本的な機能は共通のまま、システムを設置する箇所の照明の種類や用途に合わせて、個別の照明装置ごとに適切な点灯・調光制御を行うことができる。
【0031】
本実施例では、複数のスレーブ基板Sを接続した場合に、各基板に優先度を付けて置き、その順位をマスター基板Mに記憶する。そのため、非常灯や誘導灯のように、他の照明装置などの負荷をオフとしても常時点灯(運転)が要求される優先度の高い負荷については、EDLCの残容量が低下した場合に他の負荷に対する給電を停止することで、長時間の点灯(運転)を維持することができる。また、この優先度を適用する条件を、EDLCの残容量以外のもの、例えば、昼夜、季節、気温、発電装置稼働率などのシステムの環境を加味するものとすれば、種々な負荷をその使用態様に適した条件で運転することができる。
【0032】
(4)他の実施例
前記実施例は、個々の基板にそれぞれ専用の負荷を接続したが、複数の基板を共通の負荷に接続することも可能である。その場合は、各基板で制御する放電電流を一つの負荷に集中させることが可能になるので、個々の基板に接続する負荷に比較して、大容量の負荷を運転することが可能になる。また、容量が同じ負荷であれば、長時間の運転が可能になる。
【符号の説明】
【0033】
M…マスター基板
S…基板S
1M,1S…発電装置
2…充電制御部
3…放電制御部
4…通信制御部
5…優先度記憶部
6…データ入力・設定部
EDLC…二次電池(電気二重層キャパシタ)
LED…負荷(LED照明装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター基板とこれに接続されたスレーブ基板とを備え、
前記マスター基板とスレーブ基板にはそれぞれ発電装置を接続し、
前記各基板には前記発電装置からの電力を蓄電する二次電池を接続し、
前記各基板にはそれぞれ照明装置その他の負荷を接続し、
前記各基板には、各基板に接続した発電装置からの電力を前記二次電池に他の基板の制御とは独立して蓄電するための充電制御部と、前記二次電池からの電力を各基板にそれぞれ接続した負荷に他の基板の制御とは独立して供給するための放電制御部を設け、
前記マスター基板には各基板に共通の制御信号を送出する通信制御部を設けたことを特徴とする充放電システム。
【請求項2】
前記マスター基板に、各スレーブ基板の優先度を記憶する優先度記憶部を設け、マスター基板からの優先度に従って各スレーブ基板がその充放電制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の充放電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−211794(P2011−211794A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75395(P2010−75395)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】