説明

充電システム

【課題】充電器と電動車両との間の通電状態を正確に判定する。
【解決手段】充電器の充電ケーブルを電動車両に接続し、充電器側の供給電圧Vsを一時的に上下させる。充電器と電動車両とは接続されるため、電動車両側の受給電圧Vrについても供給電圧Vsに連動して上下する。これにより、供給電圧Vsにフィルタ処理を施した充電器側データDsに特徴点α1が付与され、受給電圧Vrにフィルタ処理を施した車両側データDrに特徴点α2が付与される。そして、特徴点α1,α2に基づいてフィルタ処理に起因する充電器側データDsと車両側データDrとの間の時間遅れTが算出される。充電器と電動車両との間の絶縁不良等を判定する際には、時間遅れTに基づいて充電器側データDsと車両側データDrとを同期させた上で比較される。これにより、データDs,Drを適切に比較することができ、絶縁不良等を正確に判定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器と電動車両とを充電ケーブルを介して接続し、電動車両に搭載される蓄電デバイスを充電する充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動力源として電動モータを備える電動車両の開発が進められている。電動車両に搭載されるバッテリ等の蓄電デバイスを充電する際には、充電器から伸びる充電ケーブルが電動車両の充電口に接続される(例えば、特許文献1参照)。また、動力源としてエンジンおよび電動モータを備えるハイブリッド型の電動車両においても、充電器によって蓄電デバイスを充電可能とした所謂プラグイン方式のハイブリッド型電動車両が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電器から電動車両に対する供給電力は高電圧かつ高容量であることから、漏電等を未然に防いで充電時の安全性を確保するためには、絶縁不良や充電ケーブルの断線等を監視する必要がある。絶縁不良等の監視方法としては、充電器側の供給電圧と電動車両側の受給電圧とを比較する方法や、充電器側の供給電流と電動車両側の受給電流とを比較する方法が挙げられる。供給電圧と受給電圧とが大きく乖離している場合や、供給電流と受給電流とが大きく乖離している場合には、電動車両以外にも電力が流れ込んでいることが想定されるため、絶縁不良等が発生していると判定されることになる。
【0005】
このように絶縁不良等を検出する際には、電圧センサや電流センサから出力された電圧データや電流データを用いることになるが、これらのデータを利用する際には、移動平均処理等のフィルタ処理を施してノイズの影響を排除することが一般的である。しかしながら、フィルタ処理後の電圧データや電流データには時間遅れが生じていることから、単に充電器側と電動車両側とで電圧データ等を比較することは、絶縁不良等の誤判定を招く要因となっていた。すなわち、充電器側と電動車両側との遅れ時間に差が生じており、充電器側と電動車両側とのデータが同期していない場合には、絶縁不良等が発生していないにも拘わらず双方のデータが大きく乖離したり、絶縁不良等が発生しているにも拘わらず双方のデータが乖離したりしないことも考えられる。
【0006】
本発明の目的は、充電器と電動車両との間の通電状態が正常であるか否かを正確に判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の充電システムは、充電器と電動車両とを充電ケーブルを介して接続し、前記電動車両に搭載される蓄電デバイスを充電する充電システムであって、前記充電器内の供給電圧、供給電流または供給電力に所定のフィルタ処理を施して供給側処理データを算出する供給側処理手段と、前記電動車両内の受給電圧、受給電流または受給電力に所定のフィルタ処理を施して受給側処理データを算出する受給側処理手段と、供給電圧、供給電流、受給電圧および受給電流の少なくともいずれか1つを変化させ、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与える特徴付与手段と、前記供給側処理データと前記受給側処理データとの特徴点に基づいて、前記供給側処理データと前記受給側処理データとを同期させるデータ同期手段と、同期させた前記供給側処理データと前記受給側処理データとを比較し、前記充電器と前記電動車両との間の通電状態が正常であるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の充電システムは、前記供給側処理手段によるフィルタ処理と前記受給側処理手段によるフィルタ処理とは相違することを特徴とする。
【0009】
本発明の充電システムは、第1供給電力を上限に前記蓄電デバイスを充電する本充電モードと、前記第1供給電力よりも小さな第2供給電力を上限に前記蓄電デバイスを充電するプレ充電モードとを備える充電制御手段を有し、前記本充電モードの前に実施される前記プレ充電モードにおいて、前記特徴付与手段は、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与えることを特徴とする。
【0010】
本発明の充電システムは、前記特徴付与手段は、供給電流または受給電流を変化させ、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与えることを特徴とする。
【0011】
本発明の充電システムは、前記データ同期手段は、特徴点に基づいて前記供給側処理データと前記受給側処理データとの間の時間遅れを算出し、時間遅れに基づいて前記供給側処理データと前記受給側処理データとを同期させることを特徴とする。
【0012】
本発明の充電システムは、前記供給側処理手段、前記受給側処理手段、前記特徴付与手段、前記データ同期手段および前記判定手段は、前記充電器に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の充電システムは、前記電動車両内の受給電圧、受給電流または受給電力は、前記充電ケーブル内の通信線を介して前記受給側処理手段に送信されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、供給電圧、供給電流、受給電圧および受給電流の少なくともいずれか1つを変化させ、供給側処理データおよび受給側処理データに特徴点を付与するようにしたので、特徴点に基づいて供給側処理データと受給側処理データとを同期させることが可能となる。これにより、供給側処理データと受給側処理データとを適切に比較することができ、充電器と電動車両との間の通電状態が正常であるか否かを正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態である充電システムによる充電状況を示す概略図である。
【図2】充電システムを構成する電動車両の内部構造を示す概略図である。
【図3】充電システムを構成する充電器の内部構造を示す概略図である。
【図4】電動車両の充電口に対して充電器の充電ケーブルを接続した状態を示す概略図である。
【図5】(a)〜(c)は漏電や発熱を伴う不良状態の一例を示す説明図である。
【図6】フィルタ処理が受給電圧や供給電圧に与える影響を示す説明図である。
【図7】プレ充電モードおよび本充電モードにおける充電器側データと車両側データとの変動状態を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である充電システム10による充電状況を示す概略図である。また、図2は充電システム10を構成する電動車両11の内部構造を示す概略図である。さらに、図3は充電システム10を構成する充電器12の内部構造を示す概略図である。まず、図1に示すように、電動車両11には蓄電デバイスとしてバッテリ13が搭載されており、このバッテリ13を充電する際には充電器12の充電ケーブル14が電動車両11の充電口15に接続される。そして、充電器12は、電動車両11に供給する充電電流や充電電圧を制御しながら、所定の充電状態SOCまでバッテリ13を充電することになる。
【0017】
図2に示すように、電動車両11は動力源であるモータジェネレータ20を有しており、モータジェネレータ20は駆動軸21を介して駆動輪22に連結されている。また、モータジェネレータ20とバッテリ13とは、直流電力と交流電力とを双方向に変換するインバータ23を介して接続されている。なお、バッテリ13とインバータ23とを接続する通電ライン24,25にはメインリレー26が設けられている。また、車体側部の充電口15には受電コネクタ27が設置されており、受電コネクタ27には一対の受電端子27a,27bが設けられている。一方の受電端子27aは受電ライン28を介して正極側の通電ライン24に接続され、他方の受電端子27bは受電ライン29を介して負極側の通電ライン25に接続されている。また、電動車両11には、受電ライン28,29の電圧つまり受給電圧Vrを検出する電圧センサ30が設けられるとともに、受電ライン28の電流つまり受給電流Irを検出する電流センサ31が設けられている。さらに、受電コネクタ27には信号端子27cが設けられており、この信号端子27cには通信ライン32が接続されている。また、電動車両11には、車両全体を統合制御する車両制御ユニット33、バッテリ13を制御するバッテリ制御ユニット34、インバータ23を制御するモータ制御ユニット35が設けられている。これらの制御ユニット33〜35は、通信ネットワーク36を介して相互に接続されている。なお、各制御ユニット33〜35はCPUやメモリ等によって構成されている。
【0018】
図3に示すように、充電器12には、外部電源40からの交流電力を充電用の直流電力に変換する電力変換部41が設けられている。この電力変換部41は、整流回路、変圧器、スイッチング回路等によって構成されている。また、充電器12に設けられる充電ケーブル14の先端には、受電コネクタ27に対して着脱自在となる給電コネクタ42が設けられている。この給電コネクタ42には、受電コネクタ27の受電端子27a,27bに対応する一対の給電端子42a,42bが設けられている。一方の給電端子42aは給電ライン43を介して電力変換部41の正極端子41aに接続され、他方の給電端子42bは給電ライン44を介して電力変換部41の負極端子41bに接続されている。また、充電器12には、給電ライン43,44の電圧つまり供給電圧Vsを検出する電圧センサ45が設けられるとともに、給電ライン43の電流つまり供給電流Isを検出する電流センサ46が設けられている。さらに、給電コネクタ42には信号端子42cが設けられており、この信号端子42cには通信ライン(通信線)47が接続されている。また、充電器12にはCPUやメモリ等によって構成される充電制御ユニット48が設けられており、充電制御ユニット48から電力変換部41に対して制御信号が出力されている。
【0019】
ここで、図4は電動車両11の充電口15に対して充電器12の充電ケーブル14を接続した状態を示す概略図である。図4に示すように、充電口15の受電コネクタ27に充電ケーブル14の給電コネクタ42を接続することにより、給電ライン43,44および受電ライン28,29を介して電力変換部41とバッテリ13とが接続された状態となる。また、充電口15の受電コネクタ27に充電ケーブル14の給電コネクタ42を接続することにより、通信ライン32,47を介して車両制御ユニット33と充電制御ユニット48とが接続された状態となる。このように充電器12と電動車両11とが接続される充電時においては、バッテリ制御ユニット34から車両制御ユニット33に向けて各種バッテリ情報(電流指令値、電圧指令値、実電流値、実電圧値、セル温度、充電状態SOC等)が送信されるとともに、これらのバッテリ情報が車両制御ユニット33から通信ライン32,47を介して充電制御ユニット48に送信される。そして、充電制御ユニット48は、電流指令値に対応する供給電流Isや電圧指令値に対応する供給電圧Vsを得るべく電力変換部41に制御信号を出力し、所定の充電状態SOCに達するまでバッテリ13を充電することになる。なお、前述の説明では、電動車両11から充電器12に充電電流等を指示しているが、これに限られることはなく、充電状態SOC等に基づいて充電器12の充電制御ユニット48が充電電流等を設定しても良い。
【0020】
このような充電時においては、充電器12から電動車両11に向けて高電圧かつ高容量の電力(例えばDC400V,100A)が供給されることから、絶縁不良や給電ライン43,44の断線等を監視して漏電や発熱等を未然に防止することが重要である。そこで、充電制御ユニット48は、充電中に受給電圧Vrと供給電圧Vsとを比較判定している。そして、受給電圧Vrと供給電圧Vsとが所定量を超えて大きく乖離した場合に、充電制御ユニット48は、図5(a)に示すような給電ライン43,44の断線やコネクタ27,42の接続不良等が発生していると判定して充電を中止する。また、充電制御ユニット48は、充電中に受給電流Irと供給電流Isとを比較判定している。そして、受給電流Irと供給電流Isとが所定量を超えて大きく乖離した場合に、充電制御ユニット48は、図5(b)および(c)に示すような給電ライン43,44の短絡や地絡等が発生していると判定して充電を中止する。なお、図5(a)〜(c)は漏電や発熱を伴う不良状態の一例を示す説明図である。このように、判定手段として機能する充電制御ユニット48は、受給電圧Vrと供給電圧Vsとを比較するとともに、受給電流Irと供給電流Isとを比較することにより、充電器12と電動車両11との間の通電状態が正常であるか否かを判定している。しかしながら、電圧センサ30,45や電流センサ31,46によって検出された受給電圧Vr、供給電圧Vs、受給電流Ir、供給電流Isを利用する際には、移動平均処理や加重平均処理等のフィルタ処理を施してノイズの影響を排除する必要がある。
【0021】
ここで、図6はフィルタ処理が受給電圧Vrや供給電圧Vsに与える影響を示す説明図である。なお、図6にはフィルタ処理が受給電圧Vrや供給電圧Vsに与える影響を示しているが、フィルタ処理は受給電流Irや供給電流Isに対しても同様の影響を与えることになる。図6に示すように、電圧センサ30,45によって検出された実測データにフィルタ処理を施し、実測データからフィルタ処理後の判定用データを加工した場合には、実測データと判定用データとの間に時間的な遅れが生じることになる。このフィルタ処理に伴う時間的な遅れの長さは、フィルタ処理の内容によって変化するものであった。すなわち、電動車両側の受給電圧Vrや受給電流Irに施されるフィルタ処理と、充電器側の供給電圧Vsや供給電流Isに施されるフィルタ処理とが相違している場合には、受給電圧Vrや受給電流Irに基づく車両側データ(受給側処理データ)Drと、供給電圧Vsや供給電流Isに基づく充電器側データ(供給側処理データ)Dsとの間に時間遅れが生じることになる。したがって、車両側データDrと充電器側データDsとを比較して絶縁不良や断線等を判定するためには、時間遅れを把握して車両側データDrと充電器側データDsとを同期させた上で互いに比較する必要がある。なお、充電制御ユニット48が、車両側データDrを算出する供給側処理手段として機能するとともに、充電器側データDsを算出する受給側処理手段として機能している。充電制御ユニット48には、電動車両側で検出された受給電圧Vrや受給電流Irが、車両制御ユニット33から通信ライン32,47を介して送信されている。
【0022】
そこで、充電制御手段として機能する充電制御ユニット48は、第1供給電力を上限にバッテリ13を充電する本充電モードを実施する前に、第1供給電力よりも小さな第2供給電力を上限にバッテリ13を充電するプレ充電モードを実施している。つまり、充電制御ユニット48は、小さな供給電力で充電を行うプレ充電モードを実施してから、大きな供給電力で充電を行う本充電モードを実施している。そして、充電制御ユニット48は、プレ充電モードにおいて供給側処理データと受給側処理データとの間の時間遅れを検出し、その後の本充電モードにおいて時間遅れに基づき供給側処理データと受給側処理データとを同期させた上で比較している。
【0023】
ここで、図7はプレ充電モードおよび本充電モードにおける充電器側データDsと車両側データDrとの変動状態を示す線図である。図7に示すように、特徴付与手段として機能する充電制御ユニット48は、プレ充電モード時に電力変換部41を用いて供給電圧Vsを一時的に上下させる。ここで、受電ライン28,29と給電ライン43,44とは接続されることから、図7の拡大部分に示すように、受給電圧Vrについても供給電圧Vsに連動して同じタイミングで一時的に変化することになる。これにより、供給電圧Vsにフィルタ処理を施した充電器側データDsは上側に凸となった曲線で表されるとともに、受給電圧Vrにフィルタ処理を施した車両側データDrも上側に凸となった曲線で表される。すなわち、供給電圧Vsを変化させることにより、充電器側データDsに特徴点α1が付与されるとともに、車両側データDrに特徴点α2が付与されることになる。なお、供給電圧Vsを変化させる方法としては、電力変換部41を用いて供給電流Isを意図的に変化させる方法が挙げられる。
【0024】
このように、充電器側データDsに付与された特徴点α1と、車両側データDrに付与された特徴点α2とは、同じタイミングを意味することから、データ同期手段として機能する充電制御ユニット48は、特徴点α1と特徴点α2との時間間隔を計測し、フィルタ処理に起因する充電器側データDsと車両側データDrとの時間遅れT(例えば0.5秒)を算出する。そして、本充電モードにおいて絶縁不良や断線等を判定する際には、時間遅れTを考慮して充電器側データDs(符号β1)と車両側データDr(符号β2)とが比較されることになる。すなわち、単に同じタイミングでデータ出力された充電器側データDs(符号β1)と車両側データDr(符号β3)とを比較した場合には、充電器側データDsと車両側データDrとが大きな差ΔV2で乖離していると誤判定することになる。これに対し、時間遅れTに基づいて車両側データDrと充電器側データDsとを同期させることにより、充電器側データDs(符号β1)と車両側データDr(符号β2)とを比較することが可能となる。これにより、充電器側データDsと車両側データDrとの差ΔV1を適切に認識することができ、絶縁不良や断線等を正確に判定することが可能となる。
【0025】
前述の説明では、プレ充電モードにおいて、供給電圧Vsを意図的に変化させることにより、受給電圧Vrを従動的に変化させているが、これに限られることはなく、受給電圧Vrを意図的に変化させることにより、供給電圧Vsを従動的に変化させても良い。この場合には、電動車両11に設けられる電気ヒータ等の電気負荷を一時的に作動させることにより、電動車両側の受給電圧Vrを意図的に変化させることが可能となる。また、前述の説明では、一時的に供給電圧Vsを上下させているが、これに限られることはなく、引き上げた供給電圧Vsをそのまま保持しても良い。また、前述の説明では、供給電圧Vsや受給電圧Vrを引き上げているが、これに限られることはなく、供給電圧Vsや受給電圧Vrを引き下げても良い。また、前述の説明では、充電器側データDsや車両側データDrに現れる変曲点を特徴点α1,α2として捉えているが、これに限られることはなく、所定の電圧変化量や電圧変化速度を上回る(下回る)箇所を特徴点として捉えても良く、所定の電圧値を上回る(下回る)箇所を特徴点として捉えても良い。更には、供給電圧ではなく供給電流を変化させることでも、供給電圧を変化させて変曲点を見出すことが可能である。例えば、供給電流を所定の電流値まで比較的短時間に上昇させ、その後一定値に保持するなどの操作を行い、供給電圧の上昇の度合いを監視することでも同様な変曲点を見出すことが可能である。
【0026】
また、図7に示す場合には、供給電圧Vsにフィルタ処理を施した充電器側データDsと、受給電圧Vrにフィルタ処理を施した車両側データDrとを比較しているが、これに限られることはなく、前述したように、供給電流Isにフィルタ処理を施した充電器側データDsと、受給電流Irにフィルタ処理を施した車両側データDrとを比較しても良い。この場合には、充電器側データDsおよび車両側データDrに特徴点を付与するため、供給電流Isや受給電流Irを変化させても良く、供給電圧Vsや受給電圧Vrを変化させても良い。さらに、前述の説明では、絶縁不良や断線等を判定するため、電動車両側の受給電圧Vrや受給電流Irにフィルタ処理を施した車両側データDrと、充電器側の供給電圧Vsや供給電流Isにフィルタ処理を施した充電器側データDsとを比較しているが、これに限られることはなく、電動車両側の受給電力Wr(=Ir×Vr)にフィルタ処理を施した車両側データDrと、充電器側の供給電力Ws(=Is×Vs)にフィルタ処理を施した充電器側データDsとを比較しても良い。この場合にも、充電器側データDsおよび車両側データDrに特徴点を付与する際には、供給電流Isや受給電流Irを変化させても良く、供給電圧Vsや受給電圧Vrを変化させても良い。
【0027】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、充電器12内の充電制御ユニット48を、供給側処理手段、受給側処理手段、特徴付与手段、データ同期手段、判定手段および充電制御手段として機能させているが、これに限られることはない。例えば、電動車両11内の車両制御ユニット33を、供給側処理手段、受給側処理手段、特徴付与手段、データ同期手段、判定手段および充電制御手段として機能させても良い。また、供給側処理手段、受給側処理手段、特徴付与手段、データ同期手段、判定手段および充電制御手段の各手段を、充電制御ユニット48と車両制御ユニット33とによって分担させても良い。
【0028】
また、車両側データDrを算出する際のフィルタ処理や、充電器側データDsを算出する際のフィルタ処理としては、移動平均処理や加重平均処理が挙げられるが、これらの処理方法に限られるものではない。また、電気回路を用いてハードウェア的にフィルタ処理を施しても良く、プログラムを用いてソフトウェア的にフィルタ処理を施しても良い。また、図示する電動車両11は、駆動源としてモータジェネレータ20のみを備えた電動車両11であるが、駆動源としてモータジェネレータ20およびエンジンを備えたハイブリッド型の電動車両であっても良い。また、蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等のバッテリ13を採用しているが、これに限られることはなく、蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタを用いても良い。なお、前述の説明では、充電ケーブル14に接触式の給電コネクタ42を備えたコンダクティブ方式の充電器12を用いているが、これに限られることはなく、充電ケーブルに非接触式の給電コネクタを備えたインダクティブ方式の充電器を用いても良い。
【符号の説明】
【0029】
10 充電システム
11 電動車両
12 充電器
13 バッテリ(蓄電デバイス)
14 充電ケーブル
47 通信ライン(通信線)
48 充電制御ユニット(供給側処理手段,受給側処理手段,特徴付与手段、データ同期手段,判定手段,充電制御手段)
Vs 供給電圧
Vr 受給電圧
Is 供給電流
Ir 受給電流
Ws 供給電力
Wr 受給電力
Ds 充電器側データ(供給側処理データ)
Dr 車両側データ(受給側処理データ)
α1,α2 特徴点
T 時間遅れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器と電動車両とを充電ケーブルを介して接続し、前記電動車両に搭載される蓄電デバイスを充電する充電システムであって、
前記充電器内の供給電圧、供給電流または供給電力に所定のフィルタ処理を施して供給側処理データを算出する供給側処理手段と、
前記電動車両内の受給電圧、受給電流または受給電力に所定のフィルタ処理を施して受給側処理データを算出する受給側処理手段と、
供給電圧、供給電流、受給電圧および受給電流の少なくともいずれか1つを変化させ、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与える特徴付与手段と、
前記供給側処理データと前記受給側処理データとの特徴点に基づいて、前記供給側処理データと前記受給側処理データとを同期させるデータ同期手段と、
同期させた前記供給側処理データと前記受給側処理データとを比較し、前記充電器と前記電動車両との間の通電状態が正常であるか否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする充電システム。
【請求項2】
請求項1記載の充電システムにおいて、
前記供給側処理手段によるフィルタ処理と前記受給側処理手段によるフィルタ処理とは相違することを特徴とする充電システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の充電システムにおいて、
第1供給電力を上限に前記蓄電デバイスを充電する本充電モードと、前記第1供給電力よりも小さな第2供給電力を上限に前記蓄電デバイスを充電するプレ充電モードとを備える充電制御手段を有し、
前記本充電モードの前に実施される前記プレ充電モードにおいて、前記特徴付与手段は、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与えることを特徴とする充電システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電システムにおいて、
前記特徴付与手段は、供給電流または受給電流を変化させ、前記供給側処理データおよび前記受給側処理データに特徴点を与えることを特徴とする充電システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電システムにおいて、
前記データ同期手段は、特徴点に基づいて前記供給側処理データと前記受給側処理データとの間の時間遅れを算出し、時間遅れに基づいて前記供給側処理データと前記受給側処理データとを同期させることを特徴とする充電システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の充電システムにおいて、
前記供給側処理手段、前記受給側処理手段、前記特徴付与手段、前記データ同期手段および前記判定手段は、前記充電器に設けられることを特徴とする充電システム。
【請求項7】
請求項6記載の充電システムにおいて、
前記電動車両内の受給電圧、受給電流または受給電力は、前記充電ケーブル内の通信線を介して前記受給側処理手段に送信されることを特徴とする充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211860(P2012−211860A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78294(P2011−78294)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】