説明

充電状態管理システム及び充電状態管理方法

【課題】バッテリーの使用可能な充電率を保ち、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置への走行を開始するタイミングを判定してバッテリーの充放電を制御する。
【解決手段】充電状態データ取得部11と、荷役エネルギーを算出する荷役エネルギー算出部12と、荷役装置30が荷役を行う場所から、バッテリー41を充電するための給電位置まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出する帰還エネルギー算出部13と、充電状態データ取得部11が取得したデータによって示されるバッテリー41の現在の充電状態と、荷役エネルギー算出部12が算出した荷役エネルギーと、帰還エネルギー算出部13が算出した帰還エネルギーとに基づいて、バッテリー41の現在の充電状態において、荷役装置30が荷役を行った後に給電位置まで帰還することができるか否かを判定する荷役可否判定部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーで駆動されるタイヤ式門型クレーン(Rubber Tired Gantry Crane;RTG)のバッテリーの充電状態管理システム及び充電状態管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充電状態管理システム及び充電状態管理方法として、車両が現在地から充電拠点まで走行する為に必要なエネルギーを推定する必要エネルギー推定部と、実際の走行に必要なパワーを推定する必要パワー推定部と、発電モータが発電した電力で充電可能なバッテリーの目標残容量を設定する目標残容量設定部と、発電モータを制御する発電電力制御部とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の充電状態管理システム及び充電状態管理方法は、目標残容量設定部が、必要パワーに基づきバッテリーの下限残容量を設定し、必要エネルギー推定部によって推定された必要エネルギーに相当するバッテリー残容量が下限残容量を下回るときは下限残容量を目標残容量として設定し、発電電力制御部が、バッテリー残容量検出手段によって検出されたバッテリーの残容量が目標残容量となるように発電モータを制御する。
【0004】
これにより、特許文献1の充電状態管理システム及び充電状態管理方法は、予め定められた下限残容量までバッテリーの電力を効率よく使用して充電拠点に到達できる。
【0005】
また、充電状態管理システム及び充電状態管理方法として、車両の予定された走行経路に関する情報、例えば道路の種別やその高低差、更には制限速度等の情報を取得し、この走行経路に関する情報と車両の重量や走行抵抗等に依存する消費エネルギー特性とに基づいて車両が走行経路を走行するに必要な駆動エネルギー量を求め、そして、予測された駆動エネルギー量に従って二次電池に対する充放電を制御するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の充電状態管理システム及び充電状態管理方法は、車両の予定された走行経路を走行するに必要な駆動エネルギー量に着目して、車両の走行エネルギー源としての二次電池のエネルギー管理を行い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−183785号公報
【特許文献2】特開2000−287302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、バッテリーで駆動され、給電位置で充電されるバッテリー駆動のタイヤ式門型クレーンにおいては、1回の充電で、できるだけ多くの荷役作業を続けられることが望まれる。
しかし、上述した特許文献1の充電状態管理システム及び充電状態管理方法と特許文献2の充電状態管理システム及び充電状態管理方法とは、いずれも、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置への走行を開始するタイミングを判定してバッテリーの充放電を制御することができない。
従って、上述した特許文献1の充電状態管理システム及び充電状態管理方法と特許文献2の充電状態管理システム及び充電状態管理方法とは、いずれも、充電のために給電位置への走行を開始するタイミングを判定できずに、走行不能に陥る虞がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、バッテリーの使用可能な充電率(SOC)を保ち、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置への走行を開始するタイミングを判定してバッテリーの充放電を制御できる充電状態管理システム及び充電状態管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の充電状態管理システムによると、バッテリーを用いて走行すると共に、荷役を行う荷役装置における前記バッテリーの充電状態を管理する充電状態管理システムであって、前記バッテリーの現在の充電状態を示すデータを取得する充電状態データ取得部と、前記荷役装置が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出する荷役エネルギー算出部と、前記荷役装置が荷役を行う場所から、前記バッテリーを充電するための給電位置まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出する帰還エネルギー算出部と、前記充電状態データ取得部が取得したデータによって示される前記バッテリーの現在の充電状態と、前記荷役エネルギー算出部が算出した荷役エネルギーと、前記帰還エネルギー算出部が算出した帰還エネルギーとに基づいて、前記バッテリーの現在の充電状態において、前記荷役装置が荷役を行った後に前記給電位置まで帰還することができるか否かを判定する荷役可否判定部とを備える。
【0011】
本発明の充電状態管理システムによると、前記荷役装置の走行距離と走行時間と走行エネルギーとをデータテーブルにあらかじめ保存する。
【0012】
本発明の充電状態管理システムによると、前記荷役装置の荷役時間と荷役エネルギーとをデータテーブルにあらかじめ保存する。
【0013】
本発明の充電状態管理方法によると、バッテリーを用いて走行すると共に、荷役を行う荷役装置における前記バッテリーの充電状態を管理する充電状態管理方法であって、前記バッテリーの現在の充電状態を示すデータを取得し、前記荷役装置が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出し、前記荷役装置が荷役を行う場所から、前記バッテリーを充電するための給電位置まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出し、前記充電状態と、前記荷役エネルギーと、前記帰還エネルギーとに基づいて、前記バッテリーの現在の充電状態において、前記荷役装置が荷役を行った後に前記給電位置まで帰還することができるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の充電状態管理システム及び充電状態管理方法によれば、バッテリーの使用可能な充電率(SOC)を保ち、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置への走行を開始するタイミングを判定してバッテリーの充放電を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る充電状態管理システムが電力を供給するタイヤ式門型クレーンの外観の一例を示す外形図である。
【図2】充電状態管理システムのブロック構成図である。
【図3】充電状態管理システムに用いられる走行距離と走行時間と走行エネルギーとの関係のテーブルの一例である。
【図4】充電状態管理システムに用いられる荷役経路とパターンと荷役時間と荷役エネルギーとの関係図である。
【図5】充電状態管理システムの搬出の代表経路の模式図である。
【図6】充電状態管理システムの搬入の代表経路の模式図である。
【図7】充電状態管理システムの搬出の最短経路の模式図である。
【図8】充電状態管理システムの搬入の最短経路の模式図である。
【図9】充電状態管理システムの搬出の最長経路の模式図である。
【図10】充電状態管理システムの搬入の最長経路の模式図である。
【図11】充電状態管理方法の制御動作を説明するフローチャートである。
【図12】充電状態管理方法の制御動作のうちの給電走行への移行判定部分におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組
み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
本発明の一実施形態に係る充電状態管理方法を実行する充電状態管理システム10は、タイヤ式門型クレーン30に適用される。
図1に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31と、タイヤ32と、バッテリー収納室33と、集電機構34と、電気室35とを備える。
また、タイヤ式門型クレーン30は、電源装置36を備えており、電源装置36は、高圧盤37と、変圧器38と、配線ケーブル39と、ブスバー(Bus Bar)40とを備える。
【0018】
クレーン本体31は、コンテナ等の荷物を掴み上げる部分であり、レーンLの長手方向に移動する。
また、クレーン本体31は、ロープの巻き上げ及び巻き下げによってコンテナを上下に移動させることができる。
そして、クレーン本体31は、タイヤ式門型クレーン30の上部に設けられるレールに支持されて長手方向と直行する横方向にコンテナを移動させることができる。
タイヤ32は、タイヤ式門型クレーン30がレーンLの長手方向に移動するための移動手段である。
【0019】
バッテリー収納室33は、タイヤ式門型クレーン30の各部に電力を供給するリチウムイオン電池であるバッテリー41を収納する。
集電機構34は、ブスバー40と接触可能であり、ブスバー40との接触時に、ブスバー40から受電する。
電気室35は、タイヤ式門型クレーン30の各部を制御するコントローラ42を含む電気機器を収納する。
【0020】
高圧盤37は、例えば商用の高圧電力の入力を受けて変圧器38に出力する。変圧器38は、高圧盤37から与えるための高圧電力を、タイヤ式門型クレーン30に供給可能な所定の電圧に降圧する。
配線ケーブル39は、変圧器38が降圧した電力をブスバー40へ伝導する。
ブスバー40は、集電機構34と接触可能であり、集電機構34との接触時に、変圧器38が降圧して配線ケーブル39が伝導する電力を集電機構34に与える。
【0021】
タイヤ式門型クレーン30は、バッテリー収納室33に収納されているバッテリー41の電力により動作し、コントローラ42により、バッテリー41の現在の充電状態において、荷役を行った後に給電位置C10まで帰還することができるときに、ブスバー40の位置(受電ポイント)である給電位置C10まで帰還してバッテリー41が充電される。
【0022】
図2に示すように、充電状態管理システム10は、コントローラ42に、充電状態データ取得部11と、荷役エネルギー算出部12と、帰還エネルギー算出部13と、荷役可否判定部14とを備え、バッテリー41を用いて走行すると共に、荷役を行うタイヤ式門型クレーン30におけるバッテリー41の充電状態を管理する。
充電状態データ取得部11は、バッテリー41の現在の充電状態を示すデータを取得する。
【0023】
荷役エネルギー算出部12は、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出する。
帰還エネルギー算出部13は、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行う場所から、バッテリー41を充電するための給電位置C10まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出する。
荷役可否判定部14は、充電状態データ取得部11が取得したデータによって示されるバッテリー41の現在の充電状態と、荷役エネルギー算出部12が算出した荷役エネルギーと、帰還エネルギー算出部13が算出した帰還エネルギーとに基づいて、バッテリー41の現在の充電状態において、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行った後に給電位置C10まで帰還することができるか否かを判定する。
【0024】
図3に示すように、コントローラ42は、走行距離(m)と走行時間(s)と走行エネルギー(Wh)と関係を以下のデータテーブル50に格納する。
このデータテーブル50には、例えば、走行距離が10mから300mまでを10m間隔で、走行時間および走行エネルギーの数値が予め格納されている。
そのため、コントローラ42は、そのときの走行距離に基づいて、データテーブル50から走行時間および走行エネルギーの数値を選択して算出に用いる。
【0025】
図4に示すように、コントローラ42は、2.5ton,25ton,40tonにおける荷役時間と、2.5ton,25ton,40tonにおける荷役エネルギーとの関係を試算したデータテーブル60を格納する。
このデータテーブル60には、コンテナの重さに対応する荷役時間および荷役エネルギーの数値が予め格納されている。
そのため、コントローラ42は、それぞれのコンテナの重量タイプに応じて、データテーブル60から荷役時間および荷役エネルギーの数値を選択して算出に用いる。
【0026】
図5に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、代表経路であるAの搬出荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬出位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0027】
図6に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、代表経路であるBの搬入荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬入位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0028】
図7に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、最短経路であるCの搬出荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬出位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0029】
図8に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、最短経路であるDの搬入荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬入位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0030】
図9に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、最長経路であるEの搬出荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬出位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0031】
図10に示すように、タイヤ式門型クレーン30は、クレーン本体31が、最長経路であるFの搬入荷役作業パターンにおいて、スタート位置(1)から荷役作業を開始し、コンテナを搬入位置(2)からピックアップして載置位置(3)に載置し、待機位置(1)に戻る荷役作業を行う。
【0032】
次に、充電状態管理方法について説明する。
図11に給電位置C10において充電が完了した状態から開始したタイヤ式門型クレーン30の動作説明図を示す。
給電位置C10において充電が完了すると、給電走行(複)によりタイヤ式門型クレーン30は荷役のための作業場所に走行する(STEP1)。
次に、待機状態となる(STEP2A)。
その後に、作業指令(運転手のノッチ操作)に応じて、待機、荷役、通常走行を組み合わせた動作が行われる(STEP2B)。
ここで、通常走行とは、次の荷役作業位置までの走行を意味する。
バッテリー41の容量が減り、給電が必要になると、給電走行(往)に移行し給電位置C10まで走行する(STEP3)。
その後、給電位置C10においてバッテリー41が充電される(STEP4)。
【0033】
次に、図12に、充電状態管理方法のうちの、図11中のSTEP2AからSTEP3に移行する判定(充電のために給電位置C10への走行を開始するタイミング判定)の制御動作を示す。
まず、給電位置C10までの走行エネルギー試算を実行する(STEP101)。
給電位置C10までの走行エネルギー試算は、現在位置と給電位置C10間の距離を走行距離とし、走行距離と走行時間、走行エネルギーの関係を示すデータテーブル50を参照し、走行時間ts[s]と走行エネルギーEs[Wh]の試算値として設定する。
タイヤ式門型クレーン30の加減速度、定速走行速度は、設計により規定されるため、速度パターンが定まり、走行時間を推算することができる。
また、タイヤ式門型クレーン30の重量、走行抵抗、速度パターンからなる運動方程式より動力を導出し、機器の効率を考慮することにより走行エネルギーを推算することができる。これにより、データテーブル50が事前に作成される。
【0034】
次に、補機エネルギー試算を行う(STEP102)。
補機エネルギー試算は、現在の補機電力値P[W]を用いて、補機エネルギーEAS[Wh]を数式1により試算する。
【0035】
【数1】

【0036】
続いて、待機判定を実行する(STEP103)。
待機判定は、上位からの荷役作業指令(運転士のノッチ動作)から、現在が待機状態にあるかどうかを判定する。
荷役作業指令をコントローラ42が受信するまでは、待機状態と判定する(STEP104)。
荷役作業指令をコントローラ42が受信し、待機状態を脱した場合には、荷役または通常走行判定を実行する(STEP105)。
【0037】
次に、給電走行判定を行う。
給電走行判定は、数式2を満たす場合に、図11に示すSTEP3に移行する。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、ηDBは、バッテリー41とバッテリー41の充放電制御装置の電力効率、Nはバッテリー41の直列数、Nはバッテリー41の並列数、Qはバッテリーセルの電流容量[Ah]、Vcellはバッテリーセルの公称電圧[V]、SOCは現在のバッテリー充電率[%]、SOCChargeは充電を開始すべきバッテリー充電率[%]である。
【0040】
次に、次の処理が荷役または通常走行判定を実行する(STEP105)。
このとき、次の処理が荷役の場合、荷役エネルギーを試算する(STEP106)。
これとは異なり、次の処理が通常走行の場合、走行+荷役エネルギー試算を実行する(STEP107)。
【0041】
STEP106の荷役エネルギー試算は、荷役経路パターンと荷役時間、荷役エネルギーの関係を、データテーブル60を参照し、荷役時間t[s]と荷役エネルギーE[Wh]を試算値として設定する。
荷役時の巻き、横行動作の加減速度、定速走行速度は、設計により規定されるため、速度パターンが定まり、作業時間を推算することができる。
また、負荷重量、機械抵抗、速度パターンからなる運動方程式より動力を導出し、機器の効率を考慮することにより荷役エネルギーを推算することができる。
コンテナ重量は荷役を開始するまで不明なため、平均的な重量で試算する。これにより、データテーブル60が事前に作成される。
【0042】
STEP107の走行+荷役エネルギー試算は、走行距離と走行時間、走行エネルギーの関係を示すデータテーブル50を参照し、通常走行時間と走行エネルギーを試算値として設定する。
さらに、走行後の次の荷役に関し、経路パターンと荷役時間、荷役エネルギーの関係を示すデータテーブル60を参照し、荷役時間と荷役エネルギーを設定する。
これを、先に計算した走行時間、走行エネルギーにそれぞれ加算することにより、走行+荷役時間t[s]と走行+荷役エネルギーE[Wh]を試算値として設定する。
走行距離と方向を参照し、走行した場合の走行終了後の位置を設定する。
この走行した場合の位置を用いてSTEP101〜STEP102の処理を再度実施し、E[Wh]とEAS[Wh]を更新する。
【0043】
次に、補機エネルギー試算を実行する(STEP108)。
補機エネルギー試算は、現在の補機電力値P[W]を用いて、以下の数式3を用いて補機エネルギーEAW[Wh]を試算する。
【0044】
【数3】

【0045】
次に、荷役または走行可否判定を実行する(STEP109)。
荷役または走行可否判定において、以下の数式4を満たす場合は、図11に示したSTEP2Bの荷役/通常走行に移行する。
荷役または走行可否判定において、以下の数式4を満たさない場合は、図11に示したSTEP3の給電走行(往)に移行する。
【0046】
【数4】

【0047】
なお、本発明において、バッテリー41の内部抵抗は温度が低い方が大きい。バッテリー41の損失は内部抵抗に比例する。従って、バッテリー温度をモニタし、ηDBをバッテリー特性の温度依存性に応じたものとすることにより、推算精度が向上する。
【0048】
このように、充電状態管理システム10は、充電状態データ取得部11が、バッテリー41の現在の充電状態を示すデータを取得し、荷役エネルギー算出部12が、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出し、帰還エネルギー算出部13が、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行う場所から、バッテリー41を充電するための給電位置C10まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出し、荷役可否判定部14が、充電状態データ取得部11が取得したデータによって示されるバッテリー41の現在の充電状態と、荷役エネルギー算出部12が算出した荷役エネルギーと、帰還エネルギー算出部13が算出した帰還エネルギーとに基づいて、バッテリー41の現在の充電状態において、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行った後に給電位置C10まで帰還することができるか否かを判定する。
【0049】
以上、説明したように充電状態管理システム10によれば、充電状態データ取得部11が、バッテリー41の現在の充電状態を示すデータを取得し、荷役エネルギー算出部12が、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出し、帰還エネルギー算出部13が、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行う場所から、バッテリー41を充電するための給電位置C10まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出し、荷役可否判定部14が、充電状態データ取得部11が取得したデータによって示されるバッテリー41の現在の充電状態と、荷役エネルギー算出部12が算出した荷役エネルギーと、帰還エネルギー算出部13が算出した帰還エネルギーとに基づいて、バッテリー41の現在の充電状態において、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行った後に給電位置C10まで帰還することができるか否かを判定するために、バッテリー41の使用可能な充電率(SOC)を保ち、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置C10への走行を開始するタイミングを判定してバッテリー41の充放電を制御できる。
【0050】
充電状態管理システム10によれば、タイヤ式門型クレーン30の走行距離と走行時間と走行エネルギーとをデータテーブル50にあらかじめ保存するために、推測等を適用せずに正確な制御動作ができる。
【0051】
充電状態管理システム10によれば、タイヤ式門型クレーン30の荷役時間と荷役エネルギーとをデータテーブル60にあらかじめ保存するために、推測等を適用せずに正確な制御動作ができる。
【0052】
充電状態管理方法によれば、バッテリー41の現在の充電状態を示すデータを取得し、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出し、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行う場所から、バッテリー41を充電するための給電位置C10まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出し、バッテリー41の現在の充電状態と、荷役エネルギーと、帰還エネルギーとに基づいて、バッテリー41の現在の充電状態において、タイヤ式門型クレーン30が荷役を行った後に給電位置C10まで帰還することができるか否かを判定するために、バッテリー41の使用可能な充電率(SOC)を保ち、できるだけ荷役作業を続けられるようにするために、充電のために給電位置C10への走行を開始するタイミングを判定してバッテリー41の充放電を制御できる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えること
が可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0054】
10 充電状態管理システム
11 充電状態データ取得部
12 荷役エネルギー算出部
13 帰還エネルギー算出部
14 荷役可否判定部
30 タイヤ式門型クレーン(荷役装置)
41 バッテリー
50 データテーブル(テーブル)
60 データテーブル(テーブル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを用いて走行すると共に、荷役を行う荷役装置における前記バッテリーの充電状態を管理する充電状態管理システムであって、
前記バッテリーの現在の充電状態を示すデータを取得する充電状態データ取得部と、
前記荷役装置が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出する荷役エネルギー算出部と、
前記荷役装置が荷役を行う場所から、前記バッテリーを充電するための給電位置まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出する帰還エネルギー算出部と、
前記充電状態データ取得部が取得したデータによって示される前記バッテリーの現在の充電状態と、前記荷役エネルギー算出部が算出した荷役エネルギーと、前記帰還エネルギー算出部が算出した帰還エネルギーとに基づいて、前記バッテリーの現在の充電状態において、前記荷役装置が荷役を行った後に前記給電位置まで帰還することができるか否かを判定する荷役可否判定部とを備える充電状態管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電状態管理システムにおいて、
前記荷役装置の走行距離と走行時間と走行エネルギーとをデータテーブルにあらかじめ保存する充電状態管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の充電状態管理システムにおいて、
前記荷役装置の荷役時間と荷役エネルギーとをデータテーブルにあらかじめ保存する充電状態管理システム。
【請求項4】
バッテリーを用いて走行すると共に、荷役を行う荷役装置における前記バッテリーの充電状態を管理する充電状態管理方法であって、
前記バッテリーの現在の充電状態を示すデータを取得し、前記荷役装置が荷役を行うために必要な荷役エネルギーを算出し、前記荷役装置が荷役を行う場所から、前記バッテリーを充電するための給電位置まで帰還するために必要な帰還エネルギーを算出し、前記充電状態と、前記荷役エネルギーと、前記帰還エネルギーとに基づいて、前記バッテリーの現在の充電状態において、前記荷役装置が荷役を行った後に前記給電位置まで帰還することができるか否かを判定する充電状態管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−158435(P2012−158435A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19449(P2011−19449)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】