説明

充電装置

【課題】二次電池の次回の使用までの時間を充分に活用し、電池容量の異なる二次電池であっても電流値が過大となることを防止して充電する。
【解決手段】充電制御手段は、充電開始後充電電流を徐々に増加させ、端子電圧と開放電圧Vとの差が予め定めた電圧差設定値ΔVに達した時の充電電流を最大充電電流Iとして決定し、最大充電電流による予充電を行い予充電時間tに対する端子電圧増加分ΔVから、最大充電電流での充電により端子電圧が変曲点電圧Vp0に達するまでの時間tp0を求め、これに基づき充電を終了する最短終了時刻Tminを算出すると共に残充電量を算出し、終了目標時刻Tが最短終了時刻以降のときは、残充電量、第一定電流充電及び第二定電流充電の充電時間関係式、及び第一電流値Iと第二電流値Iとの関係式に基づき、終了目標時刻に第二定電流充電が終了するように第一電流値及び第二電流値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電を行う充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電した二次電池が充電される過程では、二次電池の端子電圧が上昇して行くが、満充電に近づくと充電時間に対する端子電圧曲線に変曲点が現れる。この変曲点を端子電圧が超えると、二次電池に供給された電気エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が急激に増大し、充電効率が悪くなることに加え、発熱によって二次電池がダメージを受けるおそれがある。そこで、従来、端子電圧が変曲点に達するまで、あるいは変曲点より僅かに小さな電圧に達するまでは、比較的大きな電流値(以下、「電流値Ia」と称する)で定電流充電を行うことによって、できるだけ満充電に近い状態にしておき、その後に比較的小さな電流値(以下、「電流値Ib」と称する)で定電流充電を行うことによって、発熱を抑制しつつ満充電まで充電を行う充電方法が行われている。
【0003】
本発明者は、このような充電方法において、総充電時間の長さを可変とすると共に、総充電時間の長さに応じて電流値Ibの大きさを設定することができる充電方法を提案している(特許文献1参照)。この方法によれば、二次電池の使用が終了してから次に使用が開始されるまでの時間の変動に対応し、その時間を充分に活用して電流値Ibを小さく抑えて充電を行うことにより、発熱を抑制して二次電池のダメージを低減することができる。また、使用が開始される直前に充電を終了させることができるため、充電された二次電池が次に使用されるまで長時間放置されることがなく、二次電池の自然放電による充電状態の低下を防止することができると共に、二次電池の温度低下による化学反応の活性の低下を防止することができる。
【0004】
ところが、特許文献1の充電方法は、充電に先立ち、二次電池の電池容量に応じて電流値Iaを入力する必要がある点で、改善の余地があるものであった。また、比較的大きな電流値Iaによる定電流充電における二次電池の発熱を、抑制することに対する要請もあった。
【0005】
ここで、二次電池の電池容量に応じて、定電流充電における電流値を調整する充電装置も提案されている(特許文献2参照)。これは、定電流充電に先立ち、一定の電流を流しつつ二次電池の開放電圧を複数回測定し、二以上の開放電圧、それぞれの測定点間の時間、及び、充電電流値によって電池容量を推定し、推定された電池容量と予め定めた充電時間に基づいて、定電流充電を行う電流値を定めるものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−20894号公報
【特許文献2】特開2008−61373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の充電装置では、総充電時間は所定の固定値であるため、二次電池が次に使用されるまでの時間を充分に活用することができず、自然放電によって充電状態が低下し、温度低下よって二次電池における化学反応の活性が低下するおそれがあった。加えて、特許文献2の充電装置では、開放電圧を複数回測定するために、電源部と二次電池との電気的な接続のオンとオフを繰り返す必要があり、その制御が煩雑であった。更に、電源部との電気的な接続が複数回オフされる度に、二次電池の端子電圧が大きく低下するため、電池容量を推定するための処理中は充電がほとんど進行せず、全体として充電効率が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、二次電池の使用が終了してから次の使用開始までの変動する可能性のある時間を充分に活用し、電池容量の異なる二次電池であっても、発熱を抑制すべく電流値が過度に大となることを防止しつつ、効率よく充電することができる充電装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる充電装置は、「二次電池に直流電力を供給する電源部と、該電源部から前記二次電池に流れる充電電流を検出する充電電流検出部と、前記二次電池の端子電圧を検出する端子電圧検出部と、時刻を出力する時計手段と、該時計手段による時刻の出力、前記時計手段から出力された時刻に基づく時間の計測、前記充電電流検出部による前記充電電流の検出、及び、前記端子電圧検出部による前記端子電圧の検出に基づいて、前記電源部から前記二次電池への直流電力の供給を制御することにより、第一電流値による第一定電流充電及び前記第一電流値より小さい第二電流値による第二定電流充電の実行を制御する充電制御手段とを具備し、前記充電制御手段は、充電前の前記二次電池の開放電圧を取得し、充電を開始すると共に前記充電電流を徐々に増加させ、前記端子電圧と前記開放電圧との差が予め定めた電圧差設定値に達したときの前記充電電流を最大充電電流として決定し、該最大充電電流による予充電を行う予充電時間及び前記予充電に伴う端子電圧増加分の何れか一方の値を予め定めて前記予充電を実行して他方の値を算出し、前記予充電時間に対する前記端子電圧増加分から、前記最大充電電流による充電を継続すると仮定した場合に前記端子電圧が変曲点電圧に達するまでの所要時間を算出し、該所要時間に基づき充電を終了する最短終了時刻を算出すると共に、前記予充電の終了時から前記最短終了時刻までの充電量を残充電量として算出し、充電の開始に先立ち記憶された終了目標時刻が前記最短終了時刻以降のときは、前記第一定電流充電による充電量及び前記第二定電流充電による充電量の関係式として予め定めた配分式に基づき、前記終了目標時刻に前記第二定電流充電が終了するように前記残充電量を前記第一定電流充電及び前記第二定電流充電に配分して前記第一電流値及び前記第二電流値を決定し、決定された前記第一電流値による前記第一定電流充電及び前記第二電流値による前記第二定電流充電をそれぞれ実行する」ものである。
【0010】
上記構成の本発明の充電装置によれば、最初に最大充電電流を求め、最大充電電流による予充電から最短終了時刻を算出し、終了目標時刻が最短終了時刻以降の場合は、終了目標時刻に第二定電流充電が終了するように、第一定電流充電及び第二定電流充電に残充電量を配分する。従って、終了目標時刻までの時間を充分に活用し、第一電流値及び第二電流値を共に小さく抑えて、二次電池の充電をすることが可能となる。
【0011】
これにより、比較的大きな電流値で定電流充電を行って、できるだけ満充電に近い状態にしておき、その後に比較的小さな電流値で定電流充電を行っていた従来の充電に比べ、充電に伴う発熱によって二次電池がダメージを受けるおそれを大幅に低減することができる。また、終了目標時刻に第二定電流充電が終了するように第一電流値及び第二電流値を定めるため、使用が開始される直前に二次電池の充電を終了させることができる。これにより、自然放電による充電状態の低下を防止することができると共に、二次電池の温度低下による化学反応の活性の低下を防止することができる。
【0012】
また、電圧差設定値が同一であっても、電池容量が異なれば端子電圧がその電圧差だけ増加したときの充電電流、換言すれば最大充電電流の大きさは異なる。すなわち、二次電池の電池容量が大きいほど、内部インピーダンスが小さいため同じだけ電流を流したときの電圧増加分は小さく、電圧差設定値が同一であれば電池容量が大きいほど最大充電電流は大きくなる。従って、本発明によれば、二次電池の電池容量自体を測定しなくても、電池容量の相違を充電条件に反映させることができ、電池容量に適した条件で充電を行うことができる。
【0013】
更に、最短終了時刻を算出するために行う予充電中も二次電池は充電されるため、全体として効率よく充電を行うことができる。
【0014】
なお、定電流充電において端子電圧が変曲点電圧に達した時の充電量は、通常、満充電の80〜90%であるとされており、変曲点以降の端子電圧の増加特性は、二次電池の種類や充電電流値によって相違する。従って、変曲点電圧に達した後どのくらいの時間充電を行えば、より満充電に近い状態で充電を終了することができるかを考慮し、変曲点電圧に達するまでの所要時間と変曲点電圧に達した時以降の充電時間との関係式あるいはテーブルを、経験に基づいて予め定めておくことにより、上記構成における「該所要時間に基づき充電を終了する最短終了時刻を算出する」処理を行うことができる。
【0015】
本発明にかかる充電装置は、「前記配分式は、充電開始時から前記第一定電流充電を終了するまでの時間と前記第二定電流充電を行う時間との関係を予め定めた充電時間関係式、及び、前記第一電流値と前記第二電流値との関係を予め定めた電流値関係式から構成される」ものとすることができる。
【0016】
上記構成により、本発明の充電装置によれば、最短終了時刻から終了目標時刻までの時間の長さ、換言すれば、最短終了時刻までどのくらい時間の余裕があるかに応じて、第一電流値、第二電流値、第一定電流充電を終了するまでの時間、及び第二定電流を行う時間の四つファクターを、何れも変動させることができる。これにより、残充電量を第一定電流充電及び第二定電流充電に配分するに当たり、第一電流値及び第二電流値を適切な値に設定し易く、二次電池の受けるダメージをより低減しつつ終了目標時刻までの時間を充分に活用して充電を行うことができる。
【0017】
本発明にかかる充電装置は、上記構成に加え、「電圧差と開放電圧とを関連付けたテーブルを記憶する記憶装置を更に具備し、前記充電制御手段は、取得した開放電圧と関連付けられた電圧差を前記テーブルから読み出して電圧差設定値として定め、最大充電電流を決定する処理を行う」ものとすることができる。
【0018】
上記構成により、本発明の充電装置によれば、電圧差設定値を電圧差−開放電圧テーブルを参照して設定するため、放電が深く開放電圧が小さい場合ほど、電圧差設定値として大きな値を用いる設定とすることが可能となる。これにより、二次電池の放電量に応じた適切な充電条件を定めて、充電を行うことが可能となる。
【0019】
本発明にかかる充電装置は、「前記充電制御手段は、前記第一定電流充電と前記第二定電流充電との間で、充電を継続しつつ前記充電電流を減少させる定電圧充電または可変電圧充電を行う」ものとすることができる。ここで、「定電圧充電」が電圧値を一定として行う充電であるのに対し、電圧値を変化させながら行う充電を「可変電圧充電」と称している。
【0020】
仮に、第一定電流充電の終了後に直ぐ第二定電流充電に切り替える場合は、充電電流の不連続な低下により二次電池の端子電圧が大きく落ち込むおそれがある。これに対し、本発明では、第一定電流充電が終了してから第二定電流充電に移行する前に、定電圧充電または可変電圧充電を行うことにより、充電しながら電流値を徐々に減少させているため、全体として効率よく二次電池を充電することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の効果として、二次電池の使用が終了してから次の使用開始までの変動する可能性のある時間を充分に活用し、電池容量の異なる二次電池であっても、発熱を抑制すべく電流値が過度に大となることを防止しつつ、効率よく充電することができる充電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の一実施形態である充電装置について、図1乃至図7を用いて説明する。ここで、図1は本実施形態の充電装置の構成を示すブロック図であり、図2乃至図4は図1の充電装置による二次電池の充電について充電時間と充電電流及び端子電圧との関係を示すグラフであって、それぞれ終了目標時刻がT,T,Tの場合であり、図5は充電電流の時間による積分値A及びAを説明するグラフであり、図6及び図7は図1の充電装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
【0023】
本実施形態の充電装置1は、図1に示すように、二次電池59に直流電力を供給する電源部5と、電源部5から二次電池59に流れる充電電流を検出する充電電流検出部6と、二次電池59の端子電圧を検出する端子電圧検出部7と、充電装置1による二次電池59の充電を制御する制御部10を機能的構成として備えるコンピュータ9とによって、主に構成されている。
【0024】
より詳細に説明すると、電源部5は全波整流回路を有する整流部2と、スイッチング式のDC−DC変換部3を備えており、交流電源51から供給された交流電力は整流部2で全波整流された後、DC−DC変換部3において異なる電圧に変換されて二次電池59に供給される。また、充電電流検出部6及び端子電圧検出部7は、それぞれ検出した充電電流及び二次電池59の端子電圧を制御部10に出力している。
【0025】
コンピュータ9は、ハード構成として中央処理装置、主記憶装置、及び補助記憶装置を有し、主記憶装置には充電制御手段20としてコンピュータ9を機能させるプログラムが記憶されている。また、コンピュータ9は、時刻を出力する時計手段13と、制御部10に対して終了目標時刻等の情報や種々の指令の入力を行うキーボード、ポンティングデバイス等の操作入力部11と、充電制御手段20による処理の過程や結果を表示手段40を介して出力するモニタ等の出力部12を備えている。
【0026】
更に、補助記憶装置30は、入力された終了目標時刻を記憶する終了目標時刻記憶部31、及び、充電を開始した充電開始時刻を記憶する充電開始時刻記憶部32を備えると共に、電圧差と開放電圧とを関連付けた電圧差−開放電圧テーブル35、電流値とその電流値における変曲点電圧とを関連付けた電流−変曲点電圧テーブル36を記憶している。なお、本実施形態の補助記憶装置が本発明の「記憶装置」に相当する。
【0027】
充電制御手段20は、時計手段の出力に基づき時間を計測する時間計測手段21と、充電電流を時間で積分する充電電流積分手段22と、取得した開放電圧と関連付けられた電圧差を電圧差−開放電圧テーブル35から読み出して電圧差設定値ΔVとして定める電圧差設定値決定手段23と、端子電圧と開放電圧との差が定められた電圧差設定値ΔVに達したときの充電電流を最大充電電流Iとして決定する最大充電電流決定手段24と、最大充電電流による予充電を予め定めた予充電時間t実行し、予充電時間tの経過後の端子電圧増加分ΔVを算出する予充電制御手段25と、予充電時間tに対する端子電圧増加分ΔVから、最大充電電流Iによる充電を継続すると仮定した場合に端子電圧が電流Iにおける変曲点電圧Vpoに達するまでの所要時間を算出し、この所要時間に基づき最短終了時刻Tminを算出すると共に残充電量を算出する最短終了時刻算出手段26と、終了目標時刻と最短終了時刻Tminとの関係、残充電量、充電時間関係式、及び、電流値関係式に基づいて、第一電流値I、第二電流値I、及び、可変電圧充電を終了して第二定電流充電に切り替える切替電流値I’を決定する電流値算出手段27と、予め定めた演算式に基づいて第一定電流充電から可変電圧充電に切り替える切替電圧Vを算出する切替電圧算出手段28と、第一定電流充電、可変電圧充電、及び第二定電流充電の実行を制御する定電流充電・可変電圧充電制御手段29とを具備している。
【0028】
次に、充電装置1における処理の流れについて、図2乃至図7を用いて説明する。まず、処理を開始すると、二次電池59への通電の開始に先立ち、端子電圧検出部7の検知に基づいて二次電池59の開放電圧Vを取得する(ステップS1)。また、終了目標時刻を設定する(ステップS2)。ここで、終了目標時刻が操作入力部11から入力された場合は、これを受け付けて終了目標時刻記憶部31に記憶する。或いは、始業開始時刻のように、二次電池59の使用を開始する時刻が毎日一定である場合などは、例えば始業開始時刻の一時間前などをデフォルト値として終了目標時刻記憶部31に記憶しておくこともでき、操作入力部11から終了目標時刻の入力がない場合は、デフォルト値或いは前回の処理における終了目標時刻として、終了目標時刻記憶部31に既に記憶されている時刻を終了目標時刻として設定することができる。
【0029】
続いて、電圧差−開放電圧テーブル35を参照して、取得した開放電圧Vに関連付けられた電圧差を読み出し、この値を電圧差設定値ΔVとして決定する(ステップS3)。そして、時計手段の出力により現在時刻を充電開始時刻として充電開始時刻記憶部32に記憶すると共に、電源部5を制御して二次電池59への充電を開始し(ステップS4)、充電電流を徐々に増加させる(ステップS5)。そして、端子電圧と開放電圧との差が電圧差設定値ΔVに達するまでは一定の割合で徐々に充電電流を増加させ(ステップS6においてNo)、端子電圧と開放電圧との差がΔVに達したら(ステップS6においてYes)、このときの充電電流を最大充電電流Iとして決定する(ステップS7)。なお、経過時間は、時計手段の出力に基づき時間計測手段により常時計測される。また、充電量は、充電電流の時間による積分値として充電電流積分手段により常時算出される。
【0030】
次に、決定された最大充電電流Iで予め定めた予充電時間tだけ定電流で予充電を行う(ステップS8)。時間tの経過後、端子電圧Vt0の検出に基づいて、予充電における端子電圧増加分ΔV=Vt0−ΔV−Vを算出する(ステップS9)。そして、電流−変曲点電圧テーブル36から電流Iのときの変曲点電圧Vpを読み出す。予充電における充電時間−端子電圧曲線の傾き(ΔV/t)から、最大充電電流Iによる充電を継続すると仮定した場合に、予充電開始時から端子電圧が変曲点電圧Vp0に達するまでの時間tp0が分かる。通常、定電流充電において端子電圧が変曲点電圧Vp0に達したときの充電量は満充電の80〜90%であるとされており、経験に基づいて予め定めた関係式(例えば、t=αtpo+β)により、予充電開始時からほぼ満充電に達したと判断して充電を終了するまでの時間tを算出する。
【0031】
そして、予充電を開始した時刻は時計手段による出力に基づき把握できるため、予充電開始時から時間tの経過後の時刻Tminを求め、この時刻を最短終了時刻Tminとする(ステップS10)。また、予充電終了時からほぼ満充電に達する最短終了時刻Tminまでの充電量を算出し、残充電量とする(ステップS11)。
【0032】
更に、最短終了時刻Tminを終了目標時刻と対比し、終了目標時刻が最短終了時刻以降の場合は(ステップS12においてYes)、残充電量、充電開始から第一定電流充電を終了するまでの時間tと第二定電流充電を行う時間tとの関係を予め定めた充電時間関係式(例えば、t=0.4×t+0.4(h))、及び、第一電流値Iと第二電流値Iとの関係を予め定めた電流値関係式(例えば、I=k×I,0<k<1)に基づいて、第一電流値I及び第二電流値Iを決定する(ステップS13)。このとき、決定された第二電流値Iに基づき、後述の関係式により第二定電流充電に切り替える切替電流値I’も決定することができる。
【0033】
これにより、予充電後に、第一電流値Iによる第一定電流充電を、充電開始時から時間tが経過する時点まで行い、第二電流値Iによる第二定電流充電を時間t行った場合に、ほぼ終了目標時刻に第二定電流充電が終了することとなるが、本実施形態では、第一定電流充電及び第二定電流充電を時間で管理するのではなく、第一定電流充電は実際の二次電池59の端子電圧によって管理し、第二定電流充電は後述のように充電量によって管理することとしている。具体的には、第一定電流充電を終了する切替電圧Vは、演算式V=(I/I)m+Vp0によって定める(ステップS14)。ここで、mは負の係数であり、切替電圧Vは最大充電電流Iで充電した場合の変曲点電圧Vp0より若干小さな値となる。
【0034】
そして、端子電圧が定められた切替電圧Vに達するまでは、第一電流値Iで第一定電流充電を行う(ステップS15,ステップS16においてNo)。端子電圧が切替電圧Vに達したら(ステップS16においてYes)、第一定電流充電を終了し、この時点までの充電量を充電電流の時間による積分値Aとして把握すると共に積分値Aから後述するAを算出し(ステップS17)、可変電圧充電に移行する(ステップS18)。
【0035】
可変電圧充電では、充電電流検出部6によって刻々と検出される充電電流Iと端子電圧Vとが比例関係となるように、予め定めた演算式V=K×I+nからVを求め、制御部10を制御して二次電池59に印加される電圧がVとなるように調整する。そして、第二電流値Iより僅かに大きい切替電流値I’となるまでは、上記処理により充電電流を徐々に低下させる(ステップS19においてNo)。なお、本実施形態では、関係式I’=k’×I(0<k<k’<1)を用い、切替電流値I’が第二電流値Iより僅かに大きな値となるように設定している。
【0036】
充電電流が切替電流I’に達したら(ステップS19においてYes)、第二電流値Iに切り替え、第二定電流充電を行う(ステップS20)。この第二定電流充電は、図5に示すように、充電電流積分手段による算出に基づいて、第一定電流充電の終了時以降の充電電流の時間による積分値がAに達するまで行う(ステップS21においてNo)。ここで、Aは、充電開始時から第一定電流充電の終了時まで充電電流を時間で積分した積分値Aに対する比率を予め定めておくことにより、あるいはAとAとの関係式を予め定めておくことにより算出することができる。そして、第一定電流充電の終了時以降の充電電流の時間による積分値がAに達したら(ステップS21においてYes)、二次電池59の充電を終了する。なお、図5におけるVp2は第二電流値Iのときの変曲点電圧Vp2である。通常、定電流充電において端子電圧が変曲点電圧に達した時の充電量は満充電の80〜90%であるとされているが、本実施形態では充電電流の時間による積分値がAとなるまで第二定電流充電を行うため、端子電圧がVp2に達した後も、小さい電流値である第二電流値Iで継続して充電が行われる。
【0037】
上記の処理により、終了目標時刻が最短終了時刻Tmin以降の場合は、図2及び図3に充電時間に対する充電電流曲線及び端子電圧曲線を示したように、二次電流の充電が行われる。ここで、図2は終了目標時刻がTの場合であり、図3は終了目標時刻がTより早い時刻Tの場合である。これらのグラフから明らかなように、最短終了時刻Tminから終了目標時刻までの時間の長さに応じて残充電量が第一定電流充電及び第二定電流充電に配分されるため、終了目標時刻まで時間的余裕があるほど、第一電流値I及び第二電流値Iを、共により小さな値に抑えて充電を行うことができる。
【0038】
一方、図4に示すように、終了目標時刻Tが最短終了時刻Tminより前の場合は(ステップS12においてNo)、最大充電電流Iで第一定電流充電を行うこととし(I=I)、上記の電流値関係式からI及びI’を算出し(ステップP1)、上記と同様にVを算出する(ステップP2)。
【0039】
以降の処理は上述の処理と同様であるが(ステップP3〜P9)、図4の例では、充電電流の時間による積分値がAに達する前に終了目標時刻Tが到来する。そのため、本実施形態では、第二定電流充電の途中であっても、使用者による手動入力等によって終了指令が入力されれば(ステップP10においてYes)、充電を終了する処理としている。
【0040】
上記のように、本実施形態の充電装置1によれば、終了目標時刻までの時間を充分に活用し、第一電流値I及び第二電流値Iを共に小さく抑え、二次電池59がダメージを受けるおそれを低減して二次電池59の充電をすることができる。
【0041】
また、電圧差設定値ΔVが同一であっても、電池容量が異なれば最大充電電流Iの大きさは異なるため、二次電池59の電池容量自体を測定することなく、電池容量の相違を充電条件に反映させて、電池容量に適した条件で充電を行うことができる。
【0042】
加えて、本実施形態では、電圧差−開放電圧テーブル35を参照することにより、二次電池59の開放電圧に基づいてΔVを決定している。これにより、例えば、放電が深い場合はΔVを大きく設定し、逆に放電が浅い場合はΔVを小さく設定することができ、放電量に応じた適切な充電条件を定めて充電を行うことができる。
【0043】
また、最短終了時刻Tminを算出するために行う予充電中も二次電池59は充電されるため、全体として効率よく充電を行うことができる。更に、第一定電流充電が終了してから第二定電流充電に移行する前に、第二電流値Iに近い電流値I’まで、充電を継続しつつ電流値を徐々に減少させているため、第一定電流充電から第二定電流充電に直接切り替える場合とは異なり端子電圧が大きく落ち込むことがなく、全体として効率よく二次電池59を充電することができる。
【0044】
更に、本実施形態では、第一定電流充電の終了後に、充電しつつ電流値を徐々に減少させる充電として、刻々と変化し減少する充電電流と比例関係となるように電圧を低下させる可変電圧充電を行っている。従来、二つの定電流充電の間で、後に行う定電流充電の電流値まで電流値を変化させる充電を行う場合は、後に行う定電流充電の電流値に相当する電圧値で定電圧充電を行うのが一般的であり、この場合は後に行う定電流充電の電流値に到達するまでに時間を要する。これに対し、本実施形態では、高い電圧値から徐々に電圧値を減少させるため充電効率が高く、切替電流値I’に達するまでより早く電流を降下させることができる。
【0045】
加えて、本実施形態では、第二電流値Iより僅かに大きな切替電流値I’で可変電圧充電を終了している。そのため、第二定電流充電の開始時に端子電圧が僅かながら不連続に低下し、そこから第二定電流充電に伴って端子電圧が増加していく。これにより、第二定電流充電への切り替え後まもなく電流値Iにおける変曲点電圧Vp2に達する場合であっても、これを把握し易い。
【0046】
また、端子電圧が変曲点電圧に達したときの充電量は、通常、満充電の80〜90%であるとされているが、本実施形態では、第一定電流充電における充電電流の時間による積分値Aに基づき、第一定電流充電終了後の充電電流の時間による積分値がAとなるまで第二定電流充電を行っているため、端子電圧が第二電流値Iのときの変曲点電圧Vp2に達した後も継続して充電が行われる。従って、小さい電流値である電流値Iで二次電池59の発熱を抑えつつ、より満充電に近い状態まで二次電池59を充電することができる。
【0047】
加えて、本実施形態では、第一電流値I及び第二電流値Iの決定に際しては、充電時間tとtとの関係式を用いているものの、第一定電流充電から可変電圧充電への切り替え、可変電圧充電から第二定電流充電への切り替え、及び、第二定電流充電の終了は、時間による制御ではなく、切替電圧V、切替電流I’、充電電流の時間による積分値Aによって制御している。このように、二次電池59の実際の充電状態を反映して充電の制御が行われるため、より適切に充電を行うことができる。
【0048】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0049】
例えば、上記では、予充電において予充電時間tを予め設定し、予充電時間t経過後の端子電圧増加分ΔVを検出することにより、充電時間に対する端子電圧曲線の傾きを求めたが、逆に、ΔVを予め定めた設定値とし、端子電圧がΔVだけ上昇するのに要する時間tを実測しても良い。なお、前者の場合は、端子電圧がΔVだけ増加するのに長時間を要してしまうことによって、充電時間全体における予充電の割合が大きくなるおそれを回避することができるメリットがある。
【0050】
また、ある電流値における変曲点電圧を電流−変曲点電圧テーブルから読み出す場合を例示したが、これに限定されず、電流値と変曲点電圧との関係を予め定めた演算式を用いて変曲点電圧を算出することもできる。
【0051】
また、最大充電電流を求める処理において、開放電圧に基づいてΔVを定める際に、電圧差−開放電圧テーブルを用いる場合を例示したが、電圧差と開放電圧との関係に更に二次電池の温度の要素を付加したテーブルを備えると共に、二次電池の温度を検出する温度検出部を備える構成とし、二次電池の温度及び開放電圧に基づいてΔVを定めることもできる。
【0052】
また、上記では充電時間関係式が予め設定されている場合を例示したが、これに限定されず、複数の充電時間関係式の中から使用者が選択できる構成とすることもできる。例えば、予充電が終了した段階で、異なる充電時間関係式に基づいて算出される第一電流値及び第二電流値を用いた場合の充電時間に対する充電電流曲線及び端子電圧曲線を、モニタ等の出力部12に複数表示し、その中から使用者が所望の充電電流曲線及び端子電圧曲線を選択して操作入力部11から入力することにより、充電時間関係式を設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態の充電装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の充電装置による二次電池の充電について充電時間と充電電流及び端子電圧との関係を示すグラフ(終了目標時刻がTの場合)である。
【図3】図1の充電装置による二次電池の充電について充電時間と充電電流及び端子電圧との関係を示すグラフ(終了目標時刻がTより早い時刻Tの場合)である。
【図4】図1の充電装置による二次電池の充電について充電時間と充電電流及び端子電圧との関係を示すグラフ(終了目標時刻Tが最短終了時刻Tminより早い場合)である。
【図5】充電電流を時間で積分した積分値A及びAを説明するグラフである。
【図6】図1の充電装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図6に続き図1の充電装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 充電装置
5 電源部
6 充電電流検出部
7 端子電圧検出部
13 時計手段
20 充電制御手段
30 補助記憶装置(記憶装置)
35 電圧差−開放電圧テーブル
59 二次電池
第一電流値
第二電流値
最大充電電流
開放電圧
p0 電流Iにおける変曲点電圧
△V 電圧差設定値
△V 端子電圧増加分
予充電時間
p0 予充電開始時から端子電圧が変曲点電圧Vp0に達するまでの所要時間
min 最短終了時刻
,T,T 目標終了時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に直流電力を供給する電源部と、
該電源部から前記二次電池に流れる充電電流を検出する充電電流検出部と、
前記二次電池の端子電圧を検出する端子電圧検出部と、
時刻を出力する時計手段と、
該時計手段による時刻の出力、前記時計手段から出力された時刻に基づく時間の計測、前記充電電流検出部による前記充電電流の検出、及び、前記端子電圧検出部による前記端子電圧の検出に基づいて、前記電源部から前記二次電池への直流電力の供給を制御することにより、第一電流値による第一定電流充電及び前記第一電流値より小さい第二電流値による第二定電流充電の実行を制御する充電制御手段とを具備し、
前記充電制御手段は、
充電前の前記二次電池の開放電圧を取得し、
充電を開始すると共に前記充電電流を徐々に増加させ、前記端子電圧と前記開放電圧との差が予め定めた電圧差設定値に達したときの前記充電電流を最大充電電流として決定し、
該最大充電電流による予充電を行う予充電時間及び前記予充電に伴う端子電圧増加分の何れか一方の値を予め定めて前記予充電を実行して他方の値を算出し、
前記予充電時間に対する前記端子電圧増加分から、前記最大充電電流による充電を継続すると仮定した場合に前記端子電圧が変曲点電圧に達するまでの所要時間を算出し、該所要時間に基づき充電を終了する最短終了時刻を算出すると共に、前記予充電の終了時から前記最短終了時刻までの充電量を残充電量として算出し、
充電の開始に先立ち記憶された終了目標時刻が前記最短終了時刻以降のときは、前記第一定電流充電による充電量及び前記第二定電流充電による充電量の関係式として予め定めた配分式に基づき、前記終了目標時刻に前記第二定電流充電が終了するように前記残充電量を前記第一定電流充電及び前記第二定電流充電に配分して前記第一電流値及び前記第二電流値を決定し、決定された前記第一電流値による前記第一定電流充電及び前記第二電流値による前記第二定電流充電をそれぞれ実行する
ことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記配分式は、
充電開始時から前記第一定電流充電を終了するまでの時間と前記第二定電流充電を行う時間との関係を予め定めた充電時間関係式、及び、前記第一電流値と前記第二電流値との関係を予め定めた電流値関係式から構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の充電装置
【請求項3】
電圧差と開放電圧とを関連付けたテーブルを記憶する記憶装置を更に具備し、
前記充電制御手段は、取得した前記開放電圧と関連付けられた電圧差を前記テーブルから読み出して前記電圧差設定値として定める
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記充電制御手段は、
前記第一定電流充電と前記第二定電流充電との間で、充電を継続しつつ前記充電電流を減少させる定電圧充電または可変電圧充電の実行を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−136488(P2010−136488A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308065(P2008−308065)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】