説明

充電装置

【課題】電圧検出器等の新たな構成を追加することなく、中間タップ付きのバッテリーを過不足なく充電することができる充電装置を提供する。
【解決手段】全電圧と中間電圧とを出力可能なバッテリー3を充電する充電装置1であって、バッテリー3に直流電圧を出力する出力回路4と、出力回路4の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御する制御回路5とを備え、制御回路5は、全電圧検出手段10と、充電を開始してから全電圧検出手段10で検出された電圧値が設定電圧値に達するまでの第1充電時間を測定する第1充電時間測定手段11と、設定電圧値に達してから充電が完了するまでの第2充電時間を算出する第2充電時間算出手段12とを有し、設定電圧値は、中間電圧が転極点をむかえるときの全電圧の電圧値に設定されており、第2充電時間は、全電圧の電圧値および充電時間の相互関係を示す充電特性と、第1充電時間とに基づいて算出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の車両に搭載されるバッテリーを充電するための充電装置に関し、特に、中間タップ付きのバッテリーを充電するための充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォークリフト等の車両に搭載されるバッテリーを充電するための充電装置として、特許文献1の従来技術に記載されているように、準定電圧方式のものが知られている。
【0003】
図5に、準定電圧方式の充電装置101を示す。同図に示すように、この充電装置101は、直列接続された複数のセルからなるバッテリー103を充電するためのものであり、交流電源102からの交流電圧をオフ時に遮断するスイッチ106、該スイッチ106を介して供給された交流電圧を昇圧または降圧するトランス107、および該トランス107で昇圧または降圧された交流電圧を直流電圧に変換する整流器108を有する出力回路104と、該出力回路104の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御する制御回路105とを備えている。
【0004】
制御回路105は、不図示の電圧検出手段によりバッテリー電圧の電圧値Vを検出しつつ、図6に示す充電時間とバッテリー電圧との相互関係を示す充電特性に基づいて、電圧値Vが充電開始時(充電容量0%時)の電圧値V’1から転極点(電圧が急激に上昇し始める点)をむかえる電圧値(以下、転極点電圧値)V’Pに達するまでの第1充電時間T’1を測定し、該第1充電時間T’1を用いて電圧値Vが満充電状態における電圧値V’2に達するまでの第2充電時間T’2を算出する。
なお、転極点電圧値V’Pは、単セルの転極点電圧値(鉛バッテリーの場合は、2.4V)に全セル数を乗算した値に設定されている。
【0005】
また、制御回路105は、第2充電時間T’2が経過するまでスイッチ106をオン状態に維持させる一方、第2充電時間T’2が経過するとスイッチ106をオン状態からオフ状態に切り替えて充電を停止させる。
【0006】
これにより、充電装置101は、バッテリー103を過不足なく充電することができる。また、充電装置101は、検出対象がバッテリー電圧の電圧値Vだけであり、バッテリー103に供給される充電電流等を検出する必要がないため、比較的安価で簡易な構成とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−79215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、フォークリフト等の車両に搭載されるバッテリーとして、中間タップ付きのバッテリーが用いられることがある。この中間タップ付きのバッテリーは、バッテリーを構成する複数のセルの中間から引き出された中間タップを使用することで、バッテリーの両端電圧(以下、「全電圧」)よりも低い電圧(以下「中間電圧」)を出力することができる。フォークリフトでは、例えば、走行モータ等の駆動系には全電圧が出力され、照明装置等の補機には中間電圧が出力される。
【0009】
このような中間タップ付きのバッテリーでは、バッテリーを構成する全セルのうち中間電圧を出力するセルは、全電圧を出力する際にも使用されるので、中間電圧を出力しないセルと比べて消費電力が大きくなり、充電開始時の電圧値が低くなる。
【0010】
このため、中間タップ付きのバッテリーでは、中間電圧を出力するセルの電圧値が転極点電圧値に達するまでの時間と中間電圧を出力しないセルの電圧値が転極点電圧値に達するまでの時間とに差が生じ、転極点が2つ現れることになる。
【0011】
しかしながら、従来の充電装置101は、転極点が1つのバッテリー103を充電することを前提として、バッテリー電圧の電圧値Vが転極点電圧値V’Pに達するまでの第1充電時間T’1を用いて転極点電圧値V’P到達後の第2充電時間T’2を算出するものであるため、転極点が2つ現れる中間タップ付きのバッテリーを充電する場合、従来の充電装置101をそのまま適用することができなかった。
【0012】
なお、中間電圧を出力するセルと中間電圧を出力しないセルとの電圧差を解消するために、中間電圧を検出する電圧検出器を別途設け、中間電圧が所定の電圧値以下に低下した際に中間電圧を出力するセルのみを充電することも考えられるが、この場合、電圧検出器を別途設けたことによるコスト上昇といった新たな問題が発生する。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、新たな検出器等を追加することなく、中間タップ付きのバッテリーを過不足なく充電することができる充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電装置は、直列接続された複数のセルの全電圧と中間電圧とを異なる負荷に出力可能なバッテリーを充電する充電装置であって、
バッテリーに直流電圧を出力する出力回路と、出力回路の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御する制御回路とを備え、制御回路は、全電圧を検出する全電圧検出手段と、充電を開始してから全電圧検出手段で検出された全電圧の電圧値が所定の設定電圧値に達するまでの第1充電時間を測定する第1充電時間測定手段と、全電圧の電圧値が設定電圧値に達してから充電が完了するまでの第2充電時間を算出する第2充電時間算出手段と、第2充電時間が経過するまで出力状態をオン状態に維持させるとともに、第2充電時間が経過すると出力状態をオフ状態に切り替える切替手段とを有し、
設定電圧値は、中間電圧が転極点をむかえるときの全電圧の電圧値に設定されており、
第2充電時間は、全電圧の電圧値および充電時間の相互関係を示す充電特性と、第1充電時間とに基づいて算出されることを特徴とする。
【0015】
具体的には、上記設定電圧値は、中間電圧を出力するセルの転極点電圧値と、満充電状態における全電圧の電圧値に中間電圧を出力しないセルのセル数を乗算して全セル数で除算した値との和であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新たな検出器等を追加することなく、中間タップ付きのバッテリーを過不足なく充電できる充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る充電装置のブロック図である。
【図2】本発明における中間タップ付きバッテリーを説明するための図である。
【図3】本発明における中間タップ付きバッテリーの充電特性図であって、(A)は全セルの充電特性図、(B)は中間電圧を出力しないセルの充電特性図、(C)は中間電圧を出力するセルの充電特性図である。
【図4】本発明に係る充電装置の充電方法を示すフローチャートである。
【図5】従来の充電装置のブロック図である。
【図6】中間タップのないバッテリーの充電特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態について説明する。
【0019】
[充電装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態に係る充電装置1のブロック図を示す。同図に示すように、充電装置1は、準定電圧方式の充電装置であり、交流電源2から供給された交流電圧を直流電圧に変換して中間タップ付きのバッテリー3に出力する出力回路4と、該出力回路4の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御する制御回路5とを備えている。
【0020】
バッテリー3は、図2に示すように、複数(本実施形態では、24個)の鉛バッテリーセルが直列接続された鉛バッテリーであり、中間電圧(セル電圧VB)を出力するセル3bのセル数N1と中間電圧を出力しない(セル電圧VAを出力する)セル3aのセル数N2とが同数(N1=N2=12)になるように、該24個のセルの中間から中間タップ3cが引き出されている。セル3aおよびセル3bから出力される全電圧Vは、走行モータ等の駆動系(負荷1)に供給され、セル3bから出力される中間電圧VBは、照明装置等の補機(負荷2)に供給される。
鉛バッテリーの場合、単セルのセル電圧が転極点をむかえる電圧値(以下、転極点電圧値)は2.4Vであり、単セルの満充電時における電圧値は2.75Vである。また、バッテリー3の満充電時における電圧値は、2.75V×24=66Vである。
【0021】
出力回路4は、オフ時に交流電圧の供給を遮断するスイッチ6と、該スイッチ6を介して交流電圧を昇圧または降圧するトランス7と、該トランス7で昇圧または降圧された交流電圧を直流電圧に変換する整流器8とを有している。
【0022】
制御回路5は、データ格納手段9と、全電圧検出手段10と、第1充電時間測定手段11と、第2充電時間算出手段12と、切替手段13とを有している。
【0023】
データ格納手段9は、図3(A)に示す充電時間と全電圧との相互関係を示す充電特性に関するデータを格納するためのものである。具体的には、データ格納手段9は、充電開始時(充電容量0%時)の全電圧の電圧値V1、第1充電時間T1の測定を終了させる電圧値である設定電圧値VQおよび満充電状態における全電圧の電圧値V2等に関するデータを格納している。
なお、設定電圧値VQや電圧値V2は、バッテリー3の種類等により異なるので、バッテリー3の種類等に応じた複数の値をデータ格納手段9に格納しておき、充電開始時にデータ格納手段9を参照して適宜選択することが好ましい。
【0024】
第1充電時間測定手段11は、充電を開始してから全電圧検出手段10で検出された全電圧の電圧値Vが設定電圧値VQに達するまでの第1充電時間T1を測定するためのものである。
【0025】
本実施形態に係る充電装置1では、設定電圧値VQを、セル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したときの電圧値(=VQ)に設定している(図3(A)および(C)参照)。すなわち、設定電圧値VQは、転極点電圧値VQB(VQB=単セルの転極点電圧値(2.4V)×N1)に、セル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したときのセル電圧VAの電圧値VQAを加算した値となる。
【0026】
セル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したときにセル3aが満充電状態である場合、電圧値VQAは、満充電状態における全電圧の電圧値V2にセル3aのセル数N2を乗算して全セル数Nで除算した値となるので、設定電圧値VQは、VQ=VQB+VQA=(2.4V×12)+(66V×12/24)=61.8Vとなる。
【0027】
第2充電時間算出手段12は、第1充電時間測定手段11で測定された第1充電時間T1を用いて、電圧値Vが設定電圧値VQに達してから充電が完了する(電圧値V2に達する)までの第2充電時間T2を算出するためのものである。
図3(A)に示す充電特性は、図3(B)に示す充電特性と図3(C)に示す充電特性とを足し合わせたものであるため、図3(A)に示す充電特性においてセル3bに着目すると、第1充電時間T1と第2充電時間T2との関係は、次式で表わすことができる。
【数1】

上記(1)式において、αはバッテリー3の種類に応じて決定される定数であり、βは温度等の充電条件に応じて決定される定数(補正係数)である。αおよびβは、予めデータ格納手段9に複数の値が格納されており、充電開始時にバッテリー3の種類や充電条件に応じて適宜選択される。
【0028】
切替手段13は、スイッチ6のオン/オフ状態を切り替えて出力回路4の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御するためのものである。具体的には、切替手段13は、第2充電時間算出手段12により算出された第2充電時間T2が経過するまでスイッチ6をオン状態に維持させることで、出力回路4の出力状態をオン状態に維持させる一方、第2充電時間T2が経過するとスイッチ6をオン状態からオフ状態に切り替えることで、出力回路4の出力状態をオフ状態に切り替えて充電を停止させる。
【0029】
本実施形態に係る充電装置1によれば、第1充電時間T1の測定を終了させる設定電圧値VQを、セル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したときの電圧値(=VQ)に設定して第1充電時間T1を測定し、該第1充電時間T1を用いて算出した第2充電時間T2が経過するまで充電を継続させることで、セル電圧VBを検出するための電圧検出器等を新たに設けることなく、バッテリー3を過不足なく充電することができ、特に、セル3bが充電不足となるのを防ぐことができる。
【0030】
[充電方法]
続いて、図4を参照しつつ、本実施形態に係る充電装置1を用いた充電方法について説明する。
なお、以下の説明において、データ格納手段9には、設定電圧値VQ、満充電状態における全電圧の電圧値V2、上記(1)式におけるαおよびβに関する複数の値が格納されており、これら設定電圧値VQ、電圧値V2、αおよびβの値は、充電開始時に第1充電時間測定手段11や第2充電時間算出手段12において適宜選択されるものとする。
また、セル3bのセル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したとき、セル3aは満充電状態であるものとする。
【0031】
充電装置1において、切替手段13によりスイッチ6がオンされて充電が開始されると、第1充電時間測定手段11により第1充電時間T1の測定が開始される(S1)。
【0032】
第1充電時間測定手段11では、第1充電時間T1の測定と並行して、全電圧検出手段10により一定周期で検出された全電圧の電圧値Vと(S2)、充電開始時に選択した設定電圧値VQとの比較が行われる(S3)。
【0033】
設定電圧値VQは、図2に示すように、セル電圧VBが転極点電圧値VQBに達したときの電圧値(=VQ)に設定されており、具体的には、転極点電圧値VQBと、電圧値V2にセル数N2を乗算して全セル数Nで除算した値VQAとを加算した値に設定されている。
【0034】
電圧値Vと設定電圧値VQとの比較において、電圧値Vが設定電圧値VQ以上になると(S3でYES)、第1充電時間T1の測定が終了する(S4)。
【0035】
第1充電時間T1の測定が終了すると(S4)、第2充電時間算出手段12により第2充電時間T2が算出される(S5)。具体的には、第2充電時間T2は、第1充電時間測定手段11により算出された第1充電時間T1を用いて、充電開始時に選択したαおよびβを係数とする上記(1)式から算出される。
【0036】
そして、第2充電時間算出手段12により第2充電時間T2が算出されると(S5)、切替手段13により該第2充電時間T2が経過するまでスイッチ6のオン状態が維持されて充電が継続される(S6でNO)。
【0037】
一方、第2充電時間T2が経過すると(S6でYES)、切替手段13によりスイッチ6がオン状態からオフ状態に切り替えられて(S7)、出力回路4の出力状態がオフ状態となり充電が完了する。
【0038】
以上、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、バッテリー3として24個の鉛バッテリーセルが直列接続された鉛バッテリーを用いているが、バッテリー3の全セル数Nおよびセルの種類は任意に変更することができる。また、鉛バッテリーを用いる場合であっても、転極点電圧値が2.4Vであり、満充電時における電圧値が2.75Vの鉛バッテリーセルに限定されるものではない。
【0040】
さらに、上記実施形態では、セル3bのセル数N1とセル3aのセル数N2とを同数(N1=N2=12)にしているが、セル数N1、N2は中間タップ3cの引き出し位置を変えることにより任意に変更することができる。
【0041】
また、満充電状態における全電圧の電圧値V2は充電回数や温度等の充電条件によって異なるので、全電圧検出手段10により充電完了時における電圧値V2を検出するとともに、該電圧値V2をデータ格納手段9に格納しておき、次回の充電開始時に設定電圧値VQを設定する際に、該電圧値V2を満充電状態における全電圧の電圧値V2として用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 充電装置
2 交流電源
3 バッテリー
4 出力回路
5 制御回路
6 スイッチ
7 トランス
8 整流器
9 データ格納手段
10 全電圧検出手段
11 第1充電時間測定手段
12 第2充電時間算出手段
13 切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のセルの全電圧と中間電圧とを異なる負荷に出力可能なバッテリーを充電する充電装置であって、
前記バッテリーに直流電圧を出力する出力回路と、前記出力回路の出力状態をオン状態とオフ状態とに制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記全電圧を検出する全電圧検出手段と、
充電を開始してから前記全電圧検出手段で検出された前記全電圧の電圧値が所定の設定電圧値に達するまでの第1充電時間を測定する第1充電時間測定手段と、
前記全電圧の電圧値が前記設定電圧値に達してから充電が完了するまでの第2充電時間を算出する第2充電時間算出手段と、
前記第2充電時間が経過するまで前記出力状態をオン状態に維持させるとともに、前記第2充電時間が経過すると前記出力状態をオフ状態に切り替える切替手段と、
を有し、
前記設定電圧値は、前記中間電圧が転極点をむかえるときの前記全電圧の電圧値に設定されており、
前記第2充電時間は、前記全電圧の電圧値および充電時間の相互関係を示す充電特性と、前記第1充電時間とに基づいて算出されることを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記設定電圧値は、前記転極点の電圧値と、満充電状態における前記全電圧の電圧値に前記中間電圧を出力しないセルのセル数を乗算して全セル数で除算した値との和であることを特徴とする請求項1に記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102660(P2013−102660A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246115(P2011−246115)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】